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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A62C |
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管理番号 | 1336528 |
審判番号 | 不服2017-5218 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-12 |
確定日 | 2018-02-06 |
事件の表示 | 特願2013-553440「多段火炎抑制の方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日国際公開、WO2012/108968、平成26年 2月27日国内公表、特表2014-504942、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年1月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年2月9日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年9月2日付けで再び拒絶理由が通知され、平成28年11月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年2月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年4月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1ないし16に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2000-93537号公報(周知技術を示す文献) 2.特開昭51-122997号公報(周知技術を示す文献) 3.特開平10-24119号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2006-68294号公報(周知技術を示す文献) 5.特表2010-533907号公報 第3 本願発明 本願の請求項1ないし16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は、平成28年11月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、9及び14は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 第1の内部圧力を有するように構成された第1の圧力チューブと、第2の内部圧力を有するように構成された第2の圧力チューブとを備えた検出システムと、 前記検出システムに応答する放出システムと、を具備する空気圧式火炎検出及び抑制システムであって、 前記第1の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された第1の火炎に対応する第1のトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、第1の検出信号を発生させるように構成されており、 前記第2の圧力チューブの少なくとも一部が、前記検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎に対応する第2のトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、第2の検出信号を発生させるように構成されており、 前記放出システムは、前記第1の検出信号に応答して火炎抑制剤を放出するとともに、前記第2の検出信号に応答してコンテナ中にさらなる火炎抑制剤を放出するように構成されている、空気圧式火炎検出及び抑制システム。」 「【請求項9】 コンテナの内部部分に取着されるように構成された第1の圧力チューブと、前記コンテナの内部部分に取着されるように構成された第2の圧力チューブとを備えた検出システムを具備する、コンテナ用の多段火炎検出及び抑制システムであって、 前記第1の圧力チューブは第1の内部圧力を有するように構成され、前記第1の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された第1の火炎に対応する第1の第1のトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、第1の検出信号を発生させるように構成されており、 前記第2の圧力チューブは第2の内部圧力を有するように構成され、前記第2の圧力チューブの少なくとも一部が、前記検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎に対応する第2のトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、第2の検出信号を発生させるように構成されており、 前記抑制システムは、前記検出システムに結合され、前記コンテナ内に配置され、前記第1の検出信号に応答して火炎抑制剤を前記コンテナに放出するとともに、前記第2の検出信号に応答して前記コンテナ中にさらなる火炎抑制剤を放出するように構成されている、コンテナ用の多段火炎検出及び抑制システム。」 「【請求項14】 包囲されたコンテナ内の火炎を検出して抑制する方法であって、 前記コンテナの内面に隣接して第1の内部圧力を有するように構成された第1の圧力チューブを通すことと、 前記コンテナの内面に隣接して第2の内部圧力を有するように構成された第2の圧力チューブを通すことと、 前記第1及び第2の圧力チューブに、火炎抑制剤を備え、前記第1及び第2の圧力チューブに応答する抑制システムを結合させることと、 前記火炎に関連する少なくとも2つの連続して起こるトリガイベントを検出することであって、 第1のトリガイベントは、前記コンテナ内の温度が、火炎に対応する第1の所定の閾値であって、その閾値になったことに応答して前記第1の圧力チューブの少なくとも一部分に漏れを起こす第1の所定の閾値を超えることを含み、 第2のトリガイベントは、前記コンテナ内の温度が、前記第1の所定の閾値を超える第2の所定の閾値であって、火炎の不完全な抑制に対応し、前記第2の圧力チューブの少なくとも一部が、その閾値に達したことに応答して起こす漏れに対応する第2の所定の閾値に達することを含む、前記火炎に関連する少なくとも2つの連続して起こるトリガイベントを検出することと、 検出された各トリガイベントに応答して検出信号を発生させることと、 発生された第1の検出信号に応答して前記火炎抑制剤を前記コンテナに分散させることと、 発生された第2の検出信号に応答して前記コンテナ中にさらなる火炎抑制剤を分散させることと、 を具備する、火炎を検出して抑制する方法。」 また、本願発明2ないし8、10ないし13並びに15及び16の概要は以下のとおりである。 本願発明2ないし8は、本願発明1の全ての発明特定事項を含むものである。 本願発明10ないし13は、本願発明9の全ての発明特定事項を含むものである。 本願発明15及び16は、本願発明14の全ての発明特定事項を含むものである。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献5について (1)引用文献5の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記引用文献5(特表2010-533907号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) ア 「【0006】 ここで図1を参照すると、本発明のさまざまな局面に従って危険を制御する危険制御システム100が、制御物質(例えば、火災を消火する消火剤)を提供する制御物質供給源101を備え得る。危険制御システム100は、一つ以上の危険を検出する危険検出システム105(例えば、煙探知機、放射線検出器、熱センサー、またはガスセンサー)をさらに備え得る。危険制御システム100は、送達システム107(例えば、容器102に結合されたノズル108)をさらに備え、危険検出システム105に応答して制御物質を危険領域106に送達する。 【0007】 危険領域106は、危険を受け得る領域であり、危険は、危険制御システム100によって制御される。例えば、危険領域106は、キャビネット、デバイス、車両、エンクロージャ、および/または他の領域の内部を含み得る。あるいは、危険領域は、開いた領域を含み得、開いた領域は、危険制御システム100によって影響され得る。」(段落【0006】及び【0007】) イ 「【0010】 送達システム107は、制御物質を危険領域106に送達するように構成されている。送達システム107は、制御物質を送達するための任意の適切なシステムを備え得る。本実施形態において、送達システム107は、ノズル108を含み、ノズル108は、容器102に接続され、危険領域106の中または危険領域106に隣接して配置され、その結果、ノズル108から出る制御物質は、危険領域106の中に堆積される。例えば、火災が危険領域106の中で検出される場合には、消火剤が、容器102からノズル108を通って危険領域106に送られて、火災を消火する。 【0011】 ノズル108は、直接的または間接的に容器102と接続されて、制御物質を送達し得る。例えば、ノズル108は、配備弁103を介して間接的に容器102と接続され、配備弁103は、ノズル108を介する制御物質の配置を制御する。所望される場合には、配備弁103は、ノズル108を通じて制御物質の量またはタイプが送達されるかどうかを制御する。配備弁103は、任意の適切な機構を備え得、配備される制御物質をノズル108を介して選択的に提供し、任意の適切な機構は、例えば、ボールコック(ball cock)、ボール弁、水栓、ブラスト弁、蝶形弁、チェックバルブ、ダブルチェックバルブ、電気機械隔壁、電気機械ねじ、電気機械スイッチ、フリーズ(freeze)バルブ、ゲート弁、玉形弁、ハイドロリックバルブ、リーフ(leaf)バルブ、逆止め弁、パイロット弁、ピストン弁、プラグ弁、空気弁、プレスタ(Presta)バルブ、回転弁、シュレーダー(Shrader)バルブ、電磁弁などである。本実施形態において、配備弁103は、信号(例えば、危険検出システム105からの空気(pneumatic)信号)に応答し、それに応じてノズル108を介する消火剤の送達を制御する。」(段落【0010】及び【0011】) ウ 「【0012】 危険検出システム105は、検出された危険に応答して危険信号を生成する。危険検出システム105は、一つ以上の特定の危険を検出し、対応する信号を生成する任意の適切なシステム(例えば、煙、熱、毒物、放射線などを検出するシステム)を備え得る。本実施形態において、危険検出システム105は、火災を検出して配備弁103に対応する信号を提供するように構成されている。危険信号は、関連する情報を送信するための任意の適切な信号(例えば、電気パルスまたは電気信号、音響信号、機械信号、ワイヤレス信号、空気信号など)を備え得る。本実施形態において、危険信号は、空気信号を備え得、空気信号は、危険条件の検出に応答して生成され、配備弁103に提供され、配備弁103は、信号に応答して消火剤を送達する。危険検出システム105は、任意の適した態様で、例えば、従来の危険と連結して(例えば、煙探知機、ヒュージブルリンク、赤外線検出器、放射線検出器、または他の適したセンサー)、危険信号を生成し得る。危険検出システム105は、一つ以上の危険を検出して対応する信号を生成する(または終端させる)。 【0013】 本実施形態において、危険検出システム105は、圧力チューブ104を含み、圧力チューブ104は、圧力チューブ104内の圧力の変化に応答して信号を生成するように構成されている。危険検出システムは、危険検出器(例えば、火災検知器110)をさらに備え得、危険検出器は、危険条件を検出した際に、例えば、圧力チューブ104に接続された弁112を介して圧力チューブ104の中の圧力を放出するように構成されている。 【0014】 本実施形態において、危険検出システム105は、圧力チューブ104の中の圧力を変える(例えば、圧力チューブ104の中の圧力を放出する)ことによって空気信号を生成する。圧力チューブ104は、周囲圧力よりも高いかまたは低い内部圧力によって動作し得る。内部圧力を周囲圧力と等しくすることは、空気危険信号を生成する。内部圧力は、任意の適した態様で達成または持続され得、例えば、圧力チューブを加圧してシールすること、チューブをコンプレッサーまたは圧力ボトルのような独立した圧力供給源に接続すること、または圧力チューブ104を加圧された流体を有する容器102に接続することなどによって、達成または持続される。圧力チューブ104内の圧力の変化を送信するように構成され得る任意の流体が、用いられ得る。例えば、実質的に非圧縮性の流体(例えば、水ベースの流体)は、圧力の変化に応答して結合されたデバイスに信号を送るのに十分に、圧力チューブ104の温度の変化および/または圧力チューブ104の内部容積の変化に高感度であり得る。別の例として、実質的に不活性の流体(例えば、空気、窒素、またはアルゴン)は、圧力の変化に応答して結合されたデバイスに信号を送るのに十分に、圧力チューブ104の温度の変化および/または圧力チューブ104の内部容積の変化に高感度であり得る。圧力チューブ104は、適切な物質を備え得、適切な物質は、Firetrace^(TM)検出チュービング、アルミニウム、アルミニウム合金、セメント、セラミック、銅、銅合金、合成物、鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、有機物質、ポリマー、チタン、チタン合金、ゴムなどを含む。圧力チューブ104は、所望される設計上の考慮事項(例えば、腐食、コスト、変形、破損、結合など)に従って、任意の適切な形状、寸法、物質、およびコーティングに従って構成され得る 圧力チューブ104内の圧力変化は、任意の原因または条件に基づいて生じ得る。例えば、チューブ内の圧力は、圧力チューブ104内の圧力の放出に応答して変化し得、例えば、圧力制御弁112の作動に起因して変化し得る。あるいは、圧力変化は、圧力チューブ104内の流体の温度の変化または圧力チューブ104内の流体の容量の変化によってもたらされ得、例えば、圧力制御弁112または伝熱システムの作動に応答して、もたらされ得る。本実施形態において、チューブ圧力の変化は、複数の機構によって引き起こされ得る。例えば、圧力チューブ104は、危険条件(例えば、穿孔、裂け目、変形、火災による熱への曝露、腐食、放射線、音響圧、周囲圧力の変化、具体的な固体または流体、機械的変化(例えば、結合された犠牲要素の引張り特性または引張り構成の変化)など)に応答して、劣化または漏出するように構成され得る。劣化の際に、圧力チューブ104は、圧力を失い、空気信号を生成する。」(段落【0012】ないし【0014】) エ 「【0030】 他の実施形態において、危険制御システム100は、複数の容器102、圧力チューブ104、ノズル108、圧力制御弁112、危険検出器110、手動弁202、および/または補足的圧力スイッチ302とともに構成され得る。例えば、危険領域106を制御することが、一緒に貯蔵され得ない複数のタイプの消火剤を引き出すことを含む場合か、または、予測された危険を消すことが、異なる消火剤が異なる時間に適用されることを必要とし得る場合には、例えば、危険制御システムは、単一のノズル108および危険検出器110に結合される複数の容器102を含むように構成され得る。別の例として、危険制御システム100は、二つ以上の圧力チューブ104を含むように構成され得、二つ以上の圧力チューブ104は、単一のノズル108および危険検出器110に結合され、例えば、消火剤を送達する複数の経路を提供するか、または異なる火災条件に応答して異なる消火剤を引き出す。複数の要素の組み合わせを仮定すると、これらの例は、網羅的ではなく、例示的である。」(段落【0030】) オ 「【0031】 図4を参照すると、動作中、危険制御システム100は、危険検出システム105が危険条件の関連するインジケーターを感知し得るように最初に構成される(410)。例えば、圧力チューブ104は、部屋または他のエンクロージャの内部に曝露され得、その結果、火災の場合には、圧力チューブ104は、火災からの熱に曝露され得る。同様に、関連するセンサー(例えば、火災検知器110)は、危険が生じた場合には、関連する現象を管理するように位置決めされ得る。送達システム107はまた、制御物質を危険が生じ得る領域に送達するのに適しているように構成され得る(412)。 【0032】 危険が生じたとき、危険検出システムは、危険を検出して危険制御システム100を作動させ得る。例えば、火災の熱は、圧力チューブ104を劣化させ得(414)、圧力チューブ104の内部圧力が放出されることをもたらし、こうして空気信号を生成させる(420)。加えて、センサー(例えば、煙探知機)は、煙または別の関連する危険インジケーターを感知(416)して危険制御システム100を作動させ得る。例えば、センサーは、圧力制御弁112を開き、同様に圧力チューブ104の中の圧力を放出して空気信号を生成し得る。さらには、信号は、他のシステム(例えば、外部システムまたは手動バルブ202)によって生成され得る(418)。 【0033】 信号は、配備弁によって受信され、配備弁は、信号に応答して開き(422)、制御物質を送達する。制御物質は、送達システムを介して危険の領域に計量分配され(424)、危険を制御する傾向がある。信号はまた、受信および/または他のシステム(例えば、制御ユニット(426)および/または補足的圧力スイッチ302(428))に送信され得る。」(段落【0031】ないし【0033】) (2)上記(1)及び図面から分かること ア 上記(1)ウの記載によれば、危険検出システム105は、内部圧力を達成または持続する圧力チューブ104を備えることが分かる。 イ 上記(1)ア及び図1の記載によれば、危険制御システム100は、危険検出システム105と、危険検出システム105に応答する送達システム107と、を具備することが分かる。 ウ 上記(1)ウ及びオ並びに図2及び4の記載によれば、圧力チューブ104が、火災による熱への曝露に応答して漏出して、空気信号を生成させるように構成されていることが分かる。 エ 上記(1)エの記載によれば、危険制御システム100は、二つ以上の圧力チューブ104を備えることが分かる。 オ 上記(1)ア、イ及びオ並びに図1、2及び4の記載によれば、送達システム107は、空気信号に応答してキャビネット、デバイス、車両、エンクロージャ、および/または他の領域の内部を含む危険領域106に消火剤を送達するように構成されていることが分かる。 カ 上記(1)イ、ウ及びオの記載によれば、危険制御システム100は、空気の圧力による火災の検出及び消火を行うことが分かる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)を総合すると、上記引用文献5には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「内部圧力を達成または持続する二つ以上の圧力チューブ104を備えた危険検出システム105と、 危険検出システム105に応答する送達システム107と、を具備する空気の圧力による火災の検出及び消火を行う危険制御システム100であって、 二つ以上の圧力チューブ104が、火災による熱への曝露に応答して漏出して、空気信号を生成させるように構成されており、 送達システム107は、空気信号に応答してキャビネット、デバイス、車両、エンクロージャ、および/または他の領域の内部を含む危険領域106に消火剤を送達するように構成されている、空気の圧力による火災の検出及び消火を行う危険制御システム100。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、引用発明の「内部圧力」は本願発明1の「内部圧力」に相当し、以下同様に、「達成または持続する」は「有するように構成された」に、「二つ以上の圧力チューブ104」は「第1の圧力チューブ」及び「第2の圧力チューブ」に、「危険検出システム105」は「検出システム」に、「危険検出システム105に応答する」は「検出システムに応答する」に、「送達システム107」は「放出システム」に、「空気の圧力による火災の検出及び消火を行う危険制御システム100」は「空気圧式火炎検出及び抑制システム」に、「熱への曝露」は「トリガイベントを受けたこと」に、「漏出して」は「漏れて」に、「空気信号」は「検出信号」に、「生成させる」は「発生させる」に、「消火剤」は「火炎抑制剤」に、「キャビネット、デバイス、車両、エンクロージャ、および/または他の領域の内部を含む危険領域106に」は「コンテナ中に」に、「送達する」は「放出する」にそれぞれ相当する。 引用発明の「内部圧力を達成または持続する二つ以上の圧力チューブ104を備えた」ことと、本願発明1の「第1の内部圧力を有するように構成された第1の圧力チューブと、第2の内部圧力を有するように構成された第2の圧力チューブとを備えた」こととは、「内部圧力を有するように構成された第1の圧力チューブと、内部圧力を有するように構成された第2の圧力チューブとを備えた」という限りにおいて一致する。 引用発明の「二つ以上の圧力チューブ104が、火災による熱への曝露に応答して漏出して、空気信号を生成させるように構成されて」いることと、本願発明1の「第1の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された第1の火炎に対応する第1のトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、第1の検出信号を発生させるように構成されており、第2の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎に対応する第2のトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、第2の検出信号を発生させるように構成されて」いることとは、「第1の圧力チューブまたは第2の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された火炎に対応するトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、検出信号を発生させるように構成されて」いるという限りにおいて一致する。 引用発明の「送達システム107は、空気信号に応答してキャビネット、デバイス、車両、エンクロージャ、および/または他の領域の内部を含む危険領域106に消火剤を送達するように構成されている」ことと、本願発明1の「放出システムは、第1の検出信号に応答して火炎抑制剤を放出するとともに、第2の検出信号に応答してコンテナ中にさらなる火炎抑制剤を放出するように構成されている」こととは、「放出システムは、検出信号に応答してコンテナ中に火炎抑制剤を放出するように構成されている」という限りにおいて一致する。 してみると、本願発明1と引用発明とは、 「内部圧力を有するように構成された第1の圧力チューブと、内部圧力を有するように構成された第2の圧力チューブとを備えた検出システムと、 検出システムに応答する放出システムと、を具備する空気圧式火炎検出及び抑制システムであって、 第1の圧力チューブまたは第2の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された火炎に対応するトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、検出信号を発生させるように構成されており、 放出システムは、検出信号に応答してコンテナ中に火炎抑制剤を放出するように構成されている、空気圧式火炎検出及び抑制システム。」 の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 「内部圧力を有するように構成された第1の圧力チューブと、内部圧力を有するように構成された第2の圧力チューブとを備えた」に関して、 本願発明1においては、「第1の内部圧力」を有するように構成された第1の圧力チューブと、「第2の内部圧力」を有するように構成された第2の圧力チューブとを備えたのに対し、 引用発明においては、二つ以上の圧力チューブ104がそのように構成されているか不明である点(以下、「相違点1」という。)。 <相違点2> 「第1の圧力チューブまたは第2の圧力チューブの少なくとも一部が、検出された火炎に対応するトリガイベントを受けたことに応答して漏れて、検出信号を発生させるように構成されて」に関して、 本願発明1においては、「第1の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎」に対応する「第1のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第1の検出信号」を発生させるように構成されており、「第2の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎」に対応する「第2のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第2の検出信号」を発生させるように構成されているのに対し、 引用発明においては、二つ以上の圧力チューブ104がそのように構成されているか不明である点(以下、「相違点2」という。)。 <相違点3> 「放出システムは、検出信号に応答してコンテナ中に火炎抑制剤を放出するように構成されている」に関して、 本願発明1においては、放出システムは、「第1の検出信号」に応答して火炎抑制剤を放出するとともに、「第2の検出信号」に応答してコンテナ中に「さらなる火炎抑制剤」を放出するように構成されているのに対し、 引用発明においては、送達システム107がそのように構成されているか不明である点(以下、「相違点3」という。)。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。 本願発明1においては、第1の圧力チューブ及び第2の圧力チューブについて、「第1の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎」に対応する「第1のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第1の検出信号」を発生させ、「第2の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎」に対応する「第2のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第2の検出信号」を発生させるように構成している。 一方、引用発明においては、二つ以上の圧力チューブ104が、火災による熱への曝露に応答して漏出して、空気信号を生成させるように構成されているものであるが、二つ以上の圧力チューブ104、すなわち第1の圧力チューブ及び第2の圧力チューブについて、本願発明1のように、「第1の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎」に対応する「第1のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第1の検出信号」を発生させ、「第2の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎」に対応する「第2のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第2の検出信号」を発生させるように構成されているか不明である。 そして、原査定の理由に引用された上記引用文献1ないし4にも、「第1の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎」に対応する「第1のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第1の検出信号」を発生させ、「第2の圧力チューブ」の少なくとも一部が、「検出された第1の火炎の不十分な抑制の結果、検出された第2の火炎」に対応する「第2のトリガイベント」を受けたことに応答して漏れて、「第2の検出信号」を発生させるように構成されていることは、記載も示唆もされていない。 してみると、当業者といえども、引用発明に上記引用文献1ないし4に記載された発明を適用することにより、相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。 したがって、上記相違点1及び3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2.本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は、本願発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明9について 本願発明9は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明10ないし13 本願発明10ないし13は、本願発明9の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明9と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明14について 本願発明14は、「第1のトリガイベントは、コンテナ内の温度が、火炎に対応する第1の所定の閾値であって、その閾値になったことに応答して前記第1の圧力チューブの少なくとも一部分に漏れを起こす第1の所定の閾値を超えることを含み、第2のトリガイベントは、コンテナ内の温度が、第1の所定の閾値を超える第2の所定の閾値であって、火炎の不完全な抑制に対応し、第2の圧力チューブの少なくとも一部が、その閾値に達したことに応答して起こす漏れに対応する第2の所定の閾値に達することを含む、火炎に関連する少なくとも2つの連続して起こるトリガイベントを検出することと、検出された各トリガイベントに応答して検出信号を発生させることと」を具備することを発明特定事項としている。そして、当該発明特定事項は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を下位概念化したものであるといえる。 してみると、本願発明14は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 6.本願発明15及び16について 本願発明15及び16は、本願発明14の全ての発明特定事項を含むものであるから、本願発明14と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし16は、当業者が引用発明及び上記引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-01-22 |
出願番号 | 特願2013-553440(P2013-553440) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A62C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 飯島 尚郎、稲村 正義 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
西山 智宏 八木 誠 |
発明の名称 | 多段火炎抑制の方法及び装置 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 野河 信久 |