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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1336563
審判番号 不服2016-15807  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-24 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2015- 90008「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月29日出願公開、特開2015-187732、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月21日に出願した特願2010-236418号の一部を平成27年4月27日に新たな特許出願としたものであって、出願後の経緯は、以下のとおりである。
平成27年 4月27日 上申書
平成28年 1月20日 拒絶理由通知(同年1月26日発送)
平成28年 3月 2日 意見書・手続補正書
平成28年 9月 2日 拒絶査定(同年9月6日送達、以下「原査定」 という。)
平成28年10月24日 本件審判請求、手続補正書
平成29年 1月23日 上申書
平成29年10月20日 拒絶理由通知(同年10月24日発送、以下「 当審拒絶理由通知」という。)
平成29年12月 5日 意見書・手続補正書

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
本願の請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007-114737号公報(以下「引用文献1」という。)
2.特開平11-142818号公報(以下「引用文献2」という。)
3.特開2009-212700号公報(以下「引用文献3」という。)
4.特開平05-344454号公報(以下「引用文献4」という。)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
1 本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)「樹脂製保護板の表面を意匠面として用いる」とは、技術的にどのようなことを意味するのか不明である。
(2)請求項1に記載された「意匠用保護カバー」は、その技術的な意味が、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明瞭である。

2 本願は、原出願の一部を新たな特許出願としたものではないから、適法になされた分割出願とは認められない。よって、本願の出願日は、現実の出願日である平成27年4月27日である。
本願の請求項1-4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、この出願の請求項1-4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用刊行物等一覧
特開2012-88606号公報

第4 本願発明
本願の請求項1-4に係る発明(以下、その順に「本願発明1」等という。)は、平成29年12月5日付け手続補正により補正された請求項1-4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
画像を表示する表示面を有する表示パネルと、
透光性を有し、前記表示面を覆って保護する板状のガラス製平板と、
透光性を有し、前記表示面と前記ガラス製平板との間隙に配設され、当該表示面と当該ガラス製平板とを貼り合わせる第1透明接着材料と、
透光性を有し、前記ガラス製平板と比べて割れにくく前記ガラス製平板を前記第1透明接着材料と反対側で覆って保護するカバーであって、前記ガラス製平板の側が平坦面、当該平坦面の反対の側が不均一の厚みを有する意匠面とされた板状の樹脂製の意匠用保護カバーと、
透光性を有し、前記ガラス製平板と前記意匠用保護カバーとの間隙に配設され、当該ガラス製平板と当該意匠用保護カバーとを貼り合わせる第2透明接着材料と、
前記表示パネルの前記表示面を臨む開口が設けられ、前記表示パネルの周縁部を保持するとともに、前記表示パネルを内包するフレームとを備え、
前記ガラス製平板及び前記意匠用保護カバーは、前記フレームの前記開口を覆う状態で、前記ガラス製平板及び前記意匠用保護カバーの全てが前記フレームの外側に配設され、
前記意匠用保護カバーの中央部の厚みと、前記意匠用保護カバーの両端側の辺部の厚みとが異なる、表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記意匠用保護カバーの前記第2透明接着材料に貼り合わされた面と逆側の面が、断面視において湾曲している、表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記意匠用保護カバーの一端側の前記辺部の厚みが、前記中央部の厚みよりも薄い、表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記意匠用保護カバーの一端側の前記辺部の厚みが、前記中央部の厚みよりも厚い、表示装置。」

第5 引用文献、引用発明等
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2007-114737号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
一対の基板間に電気光学層を有してなる電気光学パネルと、前記基板の少なくとも一方に対して取り付けられ、前記電気光学パネルを保護する透光性基板からなる保護部材と、前記電気光学パネルを保持する保持部材とを備える電気光学装置であって、
前記保護部材には、前記透光性基板の厚みが厚い部分と、前記透光性基板の外縁に設けられた薄い部分とが設けられ、前記透光性基板の厚みが厚い部分と薄い部分との間に段差部とを有しており、
前記保持部材は、前記保護部材の前記段差部に対応して嵌合する嵌合部を有しており、
前記透光性基板と前記電気光学パネルは接着層によって貼り合わされていることを特徴とする電気光学装置。」(注:下線は、当審が付加した。以下、同様である。)

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電子機器、保護部材、及び保護部材の製造方法に関する。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】

【0006】
本発明は、…、その目的は、薄型化が可能で、防水性或いは防塵性に優れ、また耐衝撃性等に優れるとともに、視認性の高い電気光学装置及び保護部材と、その製造方法を提供することにある。
また、本発明はそのような電気光学装置を用いた電子機器とを提供することを目的としている。」

エ 「【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、一対の基板間に電気光学層を有してなる電気光学パネルと、前記基板の少なくとも一方に対して取り付けられ、前記電気光学パネルを保護する透光性基板からなる保護部材と、前記電気光学パネルを保持する保持部材とを備える電気光学装置であって、前記保護部材には、前記透光性基板の厚みが厚い部分と、前記透光性基板の外縁に設けられた薄い部分とが設けられ、前記透光性基板の厚みが厚い部分と薄い部分との間に段差部とを有しており、前記保持部材は、前記保護部材の前記段差部に対応して嵌合する嵌合部を有しており、前記透光性基板と前記電気光学パネルは接着層によって貼り合わされていることを特徴とする。
【0008】
このような電気光学装置によると、保護部材により当該電気光学装置内の電気光学パネルに対して耐衝撃性、防水性、防塵性を具備させることが可能となるとともに、保護部材を構成する透光性基板に段差部を設けたため、該段差部に保持部材を噛み合わせて(勘合させて)、保護部材付き電気光学パネルと保持部材とを一体化させることが可能となる。この場合、電気光学パネルを保持部材に取り付けるための特別の部材を別途用意する必要がないため、保持部材への取付けに伴う装置の大型化を防止でき、当該電気光学装置の薄型化に寄与することが可能となる。また、保護部材と電気光学パネルとを貼り合わせたため、当該保護部材と電気光学パネルとの間に空気層が形成されなくなり、電気光学パネルからの表示の視認性は非常に高いものとなる。」

オ 「【0092】
〔第7実施形態〕
図14は、携帯電話機10の表示部付近の断面構成を模式的に示す断面図、図15は、該携帯電話機10に備えられた表示装置(電気光学装置)の断面構成を模式的に示す断面図である。尚、上記第1実施形態と重複する説明については省略するとともに、同じ構成要素については同じ符号を付して以下に説明することにする。
【0093】
表示装置1aは、本実施形態では液晶装置から構成されており、液晶パネル(電気光学パネル)28と、保護部材19と、該保護部材19を液晶パネル28に取り付ける接着層22とを有している。ここで、表示装置1aは、筒状に構成された携帯電話機10の筐体(保持部材)14の内側に固定されており、保護部材19と筐体14とのそれぞれに形成された段差部D,14aを噛み合わせることで、該筐体14と一体化している。
【0094】
一方、接着層22を介して液晶パネル28に取り付けられた保護部材19は、強化ガラスからなる第1透光性基板18cと、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)若しくはガラスからなる第2透光性基板18dとが重ねられてなる積層体から構成されている。ここで、これら第1透光性基板18cと第2透光性基板18dとは互いに硬化性樹脂を介して貼り合わせられており、第2透光性基板18dの主面の面積(基板面積)が、第1透光性基板18cの主面の面積(基板面積)よりも小さく構成されている。
【0095】
さらに、第2透光性基板18dが第1透光性基板18cの平面視内側に配設されており、その結果、当該保護部材19の外縁には保護部材19の薄い部分18a及び段差部Dが形成されている。なお、第1透光性基板18cの厚さは0.2mm?0.8mm(例えば0.4mm)であり、第2透光性基板18dの厚さは0.2mm?0.8mm(例えば0.4mm)である。このような第1透光性基板18cと第2透光性基板18dとの貼合せにより構成された保護部材19は、当該携帯電話機10の落下衝撃等に耐えうる強度を有している。
【0096】
また、保護部材19の外縁に沿って形成された段差部D及び薄い部分18aには、携帯電話機10の筐体14の一部が噛み合わされている。ここでは、筐体14に配設された開口された保持部材の端部14aが前記保護部材19の薄い部分18aに対し、互いに段面が重なり合うように配置された状態で、保護部材19の段差部Dと保持部材の端部(嵌合部)14aが嵌合されており、これにより筐体14と保護部材19(つまり液晶パネル28)とが一体化されている。
【0097】
開口された保持部材の端部(嵌合部)14aは、筒状の筐体14の本体部14bから画面の端部表面を覆うように内側に突出する突起部として構成されている。つまり、筐体14は中空状の筒状体で構成され、その筒状体内部に液晶パネル28が収容される一方、その筒状体の内側に開口された保持部材の端部14aが段差部Dに嵌め込まれているとともに、(例えば図示されていない接着層を第1透光性基板18cと開口された保持部材の端部14aとの間に介在させて)相互に接着されている。従って、液晶パネル28は下記に記すように第1透光性基板18cとの間に接着層22を介して上面で固定されることになるので、結果として液晶パネル28は筐体14の中空状内部に宙吊り状態とされ、鉛直方向において下側からの支持はないものとされている。
【0098】
一方、段差部Dの高さ(第2透光性基板18dの表面と第1透光性基板18cの張り出し部の表面との間の高さ)は、開口された保持部材の端部14aの厚さに対応して設計され、段差部Dの高さは該開口された保持部材の端部14aの厚さと同じ大きさにて構成されている。その結果、保持部材の端部14aの表面(第1透光性基板18cと対向しない側の表面)と第2透光性基板18dの表面(第1透光性基板18cと対向しない側の表面)とがほぼ一致して平坦(面一)となって、それぞれ携帯電話機10の表層面を構成するものになっている。なお、第2透光性基板18dはアクリル樹脂の他、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等により構成することも可能である。

【0101】
上記のような本実施形態の携帯電話機10によれば、表示部1を構成する表示装置1aが、液晶パネル28の表面を保護部材19で覆ってなる液晶装置から構成されているため、耐衝撃性に優れ、液晶パネル28が落下時等の衝撃により損傷する等の不具合が生じ難いものとなっている。また、耐衝撃性に加えて、防水性、或いは防塵性を液晶パネル28に付与することが可能となる。
【0102】
さらに、保護部材19に段差部D及び薄い部分18aを設け、この段差部Dに保持部材たる筐体14の端部(嵌合部)14aを噛み合わせることにより、保護部材付きの液晶パネル28と筐体14とを一体化させることが可能となる。この場合、筐体14を液晶パネル28に取り付けるための特別の部材を別途用意する必要がないため、筐体14への取付けに伴う装置の大型化を防止でき、当該液晶装置1aの薄型化に寄与することが可能となる。
…」

カ 図14、図15は、以下のとおりである。

キ 以上によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「液晶パネル28と、保護部材19と、該保護部材19を液晶パネル28に取り付ける接着層22とを有する表示装置1aであって、
表示装置1aは、筒状に構成された携帯電話機10の筐体(保持部材)14の内側に固定されており、
保護部材19と筐体14とのそれぞれに形成された段差部D,14aを噛み合わせることで、該筐体14と一体化し、
保護部材19は、強化ガラスからなる第1透光性基板18cと、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)若しくはガラスからなる第2透光性基板18dとが重ねられてなる積層体から構成され、
第1透光性基板18cと第2透光性基板18dとは互いに硬化性樹脂を介して貼り合わせられている、
表示装置1a。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平11-142818号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0011】図3は本発明の第2実施例を示したものである。この実施例に係る液晶表示装置は、表示パネル8の本体部8aの上面11が曲面形状をして表示窓9の周囲より盛り上がっている他は、上記第1実施例と同様の構成からなるので詳細な説明は省略する。このように表示パネル8の上面11を曲面形状にすることでレンズ効果を持たせることができ、液晶表示素子Aで表示する文字や数字等が拡大されるため、見やすくなるといった効果がある。」

イ 図3は、以下のとおりである。


ウ 以上によれば、引用文献2には、「表示パネル8の本体部8aの上面11が曲面形状をして表示窓の周囲より盛り上がっている液晶表示装置。」が開示されている。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2009-212700号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、可動式の表示装置を具備する撮像装置、及び該撮像装置の表示装置用カバーに関する。」

イ 「【0065】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は第3の実施形態のカバー部材の斜視図である。図12は、カバー部材を画像表示部に取り付けた状態における断面図である。
【0066】
第3の実施形態は、上述した第1の実施形態に対してカバー部材の構成のみが異なる。よって、以下ではこの相違点のみを説明するものとし、また、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
【0067】
第3の実施形態では、図11及び12に示すように、カバー部材30の平板部31aの少なくとも一方の主面が、凸レンズ状の光学面として構成されるように形成されている。なお、平板部31aは厚さを抑制するために凸レンズと光学的に等価なフレネルレンズにより構成されてもよい。
【0068】
したがって、本実施形態では、カバー部材30を画像表示部20に固定した状態において、凸レンズ状の平板部31aは、表示面21aを保護すると共に、表示面21aを拡大する拡大鏡として働く。この場合、表示面21aと該表示面21aに対向する平板部31aの表面との距離を許容可能な範囲で大きくすることにより、より大きな拡大率を得ることが可能である。」

ウ 図11、図12は、以下のとおりである。

エ 以上によれば、引用文献3には、「カバー部材30の平板部31aの少なくとも一方の主面が、凸レンズ状の光学面として構成される表示装置」が開示されている。

(4)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平05-344454号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車載用のテレビジョン受像機やディスプレイモニタにおける液晶表示装置に関するものである。」

イ 「【0006】本発明はこのような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、前面パネルやグローブボックスに固定型の液晶表示装置において、その視野角を運転席側又は助手席側に最適となるよう変更することのできる液晶表示装置を提供することを目的とする。」

ウ 「【0009】
【実施例】本発明の一実施例における液晶表示装置の構成について図1?図3を用いて説明する。図1は本実施例の液晶表示装置の分解斜視図である。本図において液晶表示装置本体10は液晶パネルと前キャビネットを有するダッシュボード固定型の表示装置である。この液晶表示装置本体10は従来例と同様、図5に示すダッシュボードの中央部又は助手席側に埋め込まれて固定される。図1に示すように液晶表示装置本体10には前面板11が取付けられる。図2は前面板11の構造を示す断面図である。本図に示すように前面板11は矩形の平板部11aと、平板部11aよりやや小さい矩形の外形を有するくさび状パネル11bにより構成されている。平板部11a及びくさび状パネル11bは透明の樹脂で一体形成されもので、液晶パネルに表示される画像の左右の視野角を所定角だけずらすものである。
【0010】図2に示すようにくさび状パネル11bのテーパ角度θは例えば15°程度であり、その出射面及び平板部11aの入射面は映像が歪まないよう平坦にされている。液晶パネルの視野角は使用する液晶材料の配向角によって異なるが、矢印Aに示す方向から入射した映像は、透明樹脂の屈折率及びテーパ角度θに対応した角度αだけずれて出射される。(矢印B)
【0011】一方、液晶表示装置には図1に示すように前面板取付用ブラケット12が設けられている。前面板取付用ブラケット12は液晶表示パネルと同形の開口部を有し、前面板11を例えば接着により保持するブラケットである。図3の断面図に示すように、前面板取付ブラケット12の左右側面には係合用のフック12aが一体整形されている。前面板取付用ブラケット12はこのフック12aによって液晶表示装置本体10の前キャビネット10aに左右いずれにも取付けられるよう構成されている。」

エ 図1、図3は、以下のとおりである。


オ 以上によれば、引用文献4には、「液晶パネルに表示される画像の左右の視野角を所定角だけずらす前面板11が取り付けられた液晶表示装置本体10」が開示されている。

(5)また、特開2009-175701号公報(以下「引用文献5」という。引用文献5は、前置報告書で引用された文献であり、請求人は、平成29年1月23日付け上申書で引用文献5について検討している。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の表示面に透光性接着剤により透光性基板を貼り付けた表示装置の製造方法に関する。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による表示装置の製造方法を、図1を用いて工程順に説明する。図1(a)は配置工程を表す模式図である。表示装置の枠体10は上部に開口部11を備えている。表示パネル21を枠体10の内側の開口部11に近接して設置する。枠体10の開口端部12と表示パネル21の上面との間に間隙を設けても、接触させてもよい。図1(b)は第1接着層形成工程を表す模式図である。透光性の第1接着剤からなる第1接着層14は表示パネル21の上面に、枠体10の開口端部まで存在するように形成される。図1(c)は第2接着剤塗布工程を表す模式図である。透光性基板16の表面に透光性の第2接着剤17を塗布する。第2接着剤17は、透光性基板16の表面に点状に塗布する。例えば透光性基板16の表面中央部に1点、あるいは、更に隅部に4点塗布する。第2接着剤17の塗布量は、表示パネル21側全面に0.05?0.3mm程度の厚さに塗布することができる量とする。
【0016】
図1(d)は、貼り合せ工程を表す模式図である。上下を反転させた透光性基板16を第1接着層14の上方に配置する。配置の際には透光性基板16と表示パネル21及び枠体10との間の位置合わせを行う。第2接着剤17は重力の作用により液だれが形成される。この状態で、透光性基板16をゆっくり降下する。透光性基板16の降下は、液だれの表面に波紋が生じない程度の速度とする。例えば、5?100μm/secの速度で降下させる。例えば、使用する第2接着剤17の粘度が2000?3000mPa・sである場合には、降下速度を約20μm/secとする。そして、第2接着剤17と第1接着層14との間の接触面積を拡大させて透光性基板16の下面全体に第2接着剤17を充填する。図1(e)は、第2接着剤硬化工程を表す。第2接着剤17として熱硬化型接着剤を使用した場合には加熱し、UV硬化型接着剤の場合には紫外線を照射し、可視光硬化型接着剤のときは可視光を照射して硬化する。
【0017】
図2は、第2接着剤硬化工程後の表示装置の上面図を表す。枠体10の内側に透光性基板16が接着され、開口部11から表示パネル21の表示面が見えている。枠体10の開口端部12と表示パネル21の表面との間に形成される段差が、第1接着剤により埋められる、または段差が縮小するので、枠体10の上端コーナー部や角部に空隙が残らない。また、第1接着層14と第2接着剤17の屈折率を透光性基板16及び表示パネル21のそれぞれの屈折率に近似させることにより、透光性基板16と表示パネル21との間の光の反射損、及び第1接着層14と第2接着剤17との間の光の反射損を低減させることができる。
【0018】
上記表示装置の製造方法において、表示パネル21として、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の平面型表示パネルを使用することができる。また、透光性基板16として、表示面保護用のガラス基板、ポリカーボネートやアクリルなどの透明プラスチック基板、入力用タッチパネル等の平板透明基板を使用することができる。第1接着剤及び第2接着剤17として熱硬化型接着剤、UV硬化型接着剤、可視光硬化型接着剤等の透明接着剤を使用することができる。第1の接着剤と第2の接着剤は上記接着剤のうち異なる種類の接着剤を組み合わせてもよい。枠体10として、金属、プラスチック、セラミック等を使用することができる。」

ウ 図1は、以下のとおりである。

エ 上記ア、イの記載を踏まえて図2を見ると、表示面保護用のガラス基板である透光性基板16の全てを枠体10の外側に配設することが看て取れる。

第6 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「液晶パネル28」が本願発明1の「表示パネル」に相当し、以下同様に、「強化ガラスからなる第1透光性基板18c」が「ガラス製平板」に、「PMMA(ポリメタクリル酸メチル)…からなる第2透光性基板18d」が「透光性を有し、前記ガラス製平板と比べて割れにくく前記ガラス製平板を前記第1透明接着材料と反対側で覆って保護するカバー」に、「接着層22」が「第1透明接着材料」に、「第1透光性基板18cと第2透光性基板18dと」を互いに貼り合わせる「硬化性樹脂」が「第2透明接着材料」に、「筐体14」が「フレーム」に、それぞれ相当する。
してみると、両者は、
「画像を表示する表示面を有する表示パネルと、
透光性を有し、前記表示面を覆って保護する板状のガラス製平板と、
透光性を有し、前記表示面と前記ガラス製平板との間隙に配設され、当該表示面と当該ガラス製平板とを貼り合わせる第1透明接着材料と、
透光性を有し、前記ガラス製平板と比べて割れにくく前記ガラス製平板を前記第1透明接着材料と反対側で覆って保護するカバーと、
透光性を有し、前記ガラス製平板と前記保護カバーとの間隙に配設され、当該ガラス製平板と当該保護カバーとを貼り合わせる第2透明接着材料と、
前記表示パネルの前記表示面を臨む開口が設けられ、前記表示パネルの周縁部を保持するとともに、前記表示パネルを内包するフレームとを備える、
表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:保護カバーが、本願発明1は「前記ガラス製平板の側が平坦面、当該平坦面の反対の側が不均一の厚みを有する意匠面とされた板状の樹脂製の意匠用保護カバー」であって「前記意匠用保護カバーの中央部の厚みと、前記意匠用保護カバーの両端側の辺部の厚みとが異なる」るのに対し、引用発明は「第2透光性基板18d」がそのようなものなのか否か不明な点。

相違点2:本願発明1は、「前記フレームの前記開口を覆う状態で、前記ガラス製平板及び前記意匠用保護カバーの全てが前記フレームの外側に配設され」るのに対し、「保護部材19と筐体14とのそれぞれに形成された段差部D,14aを噛み合わせることで…一体化」している点。

イ 上記相違点について検討する。
事案に鑑み、はじめに、相違点2について検討する。引用文献1の記載によれば、引用発明は、「【0006】…薄型化が可能で、防水性或いは防塵性に優れ、また耐衝撃性等に優れるとともに、視認性の高い電気光学装置及び保護部材と、その製造方法を提供すること」を目的とし、「【0008】…保護部材を構成する透光性基板に段差部を設けたため、該段差部に保持部材を噛み合わせて(勘合させて)、保護部材付き電気光学パネルと保持部材とを一体化させること…」により、大型化を防止でき、当該電気光学装置の薄型化に寄与するものである。そうすると、引用発明における「保護部材19と筐体14とのそれぞれに形成された段差部D,14aを噛み合わせることで、該筐体14と一体化」する構成は、課題を解決する構成であり、該構成に代えて筐体14の外側に保護部材を配置することは、課題解決を阻害するものである。そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項の如くなすことは、当業者が容易に想到し得るものではない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく。本願発明1は、引用発明と引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2-4について
本願発明2-4は、本願発明1をさらに減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明と引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本願発明1-4は、引用発明と引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1 記載要件違反について
(1)特許法第36条第4項第1号について
平成29年12月5日付け手続補正により、樹脂製保護板の傾斜面自体や湾曲面自体がデザイン設計された意匠面であり、「樹脂製保護板の表面を意匠面として用いる」とは、樹脂製保護板の傾斜面自体や湾曲面自体を意匠面として用いること、が明確になったので、本願の明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす。
(2)平成29年12月5日付け手続補正により、意匠用保護カバーが、傾斜面及び湾曲面などの不均一の厚みを有する意匠面を有することが明確になったので、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たす。

2 不適法な分割出願に起因する新規性進歩性違反について
平成29年12月5日付け手続補正により、意匠用保護カバーが樹脂製デルことが特定され、本願は分割要件を満たすものとなった。したがって、本願の出願日は平成22年10月21日に遡及するから、特開2012-88606号公報は、本願の出願前に頒布された刊行物には該当しない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-30 
出願番号 特願2015-90008(P2015-90008)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G09F)
P 1 8・ 121- WY (G09F)
P 1 8・ 536- WY (G09F)
P 1 8・ 537- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 小松 徹三
松川 直樹
発明の名称 表示装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  

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