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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1336714
審判番号 不服2017-6375  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-02 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2015-533160「ディスプレイ一体型カメラアレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月27日国際公開、WO2014/047207、平成27年10月 5日国内公表、特表2015-529372、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年9月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月13日付けで拒絶理由通知がされ、同年8月16日付けで手続補正がされ、同年12月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年12月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



・請求項 1-5,8-13
・引用文献等 1-2,6-7

・請求項 6
・引用文献等 1-4,6-7

・請求項 7
・引用文献等 1-7

・請求項 14
・引用文献等 1-2,5-7

・請求項 15
・引用文献等 1-4,6-7

<引用文献等一覧>

1.米国特許出願公開第2012/0133945号明細書
2.特開2008-224935号公報
3.特開2005-108211号公報
4.国際公開第2010/038822号
5.特開2011-86220号公報
6.特開2008-59283号公報
7.国際公開第2012/124730号

第3 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成29年5月2日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
コンピューティングデバイスにおいて、
プロセッサと、
コンテンツを表示するディスプレイ画面と、
前記ディスプレイ画面を通して光が物体から反射されるようにする照明の源を提供するように動作可能な複数の照明源と、
前記物体によって反射され前記ディスプレイ画面を通過する光を検出するように各々が構成されている複数の検出器を含む検出器アレイと、
命令を含むメモリとを具備し、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されるときに、前記コンピューティングデバイスに、
異なる特定の時間に異なる方向から光を放射するように、前記物体の場所の決定のために用いられる前記複数の照明源のそれぞれを順に起動させ、
前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の位置を決定するために、前記検出器アレイによって検出される前記光に対するデータを分析させ、
前記特定の時間の各々に対して前記検出器アレイによって取り込まれる輝度データであって、前記複数の照明源のうちの少なくとも1つによって放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させ、
前記輝度データは、他の部分の輝度レベルより高い輝度レベルを有する部分を含み、前記特定の時間の各々に対する前記輝度データを含む統合データセットであって、前記検出器アレイ中の検出器の各々に対する少なくとも統合輝度情報を含む前記統合データセットを発生させ、
前記輝度データの前記部分と、前記輝度データの前記他の部分のうちの少なくとも1つとに少なくとも基づいて、前記物体の形状または深度の情報を決定させ、
前記物体の形状または深度の情報に少なくとも基づいて、前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の配向を決定させるコンピューティングデバイス。
【請求項2】
前記検出器は、基板上で少なくとも所定の距離によって分離されるフォトダイオードであり、
前記基板は、前記フォトダイオードの各々によって検出される値を読み取るように動作可能な回路に前記フォトダイオードを接続するためのラインを含む請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項3】
前記複数の照明源は、前記ディスプレイ画面を通して赤外線を放射するように構成されている少なくとも1つの赤外線発光ダイオードを含み、
前記検出器は、前記物体によって反射され前記ディスプレイ画面を通して戻る前記赤外線の少なくとも一部分を検出することが可能である請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項4】
前記複数の照明源は、前記ディスプレイ画面に対するバックライトを含む請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項5】
前記ディスプレイ画面と前記複数の照明源および前記検出器アレイを支持する基板との間に位置付けられている赤外線透過要素をさらに具備し、
前記赤外線透過要素は、可視光線が前記検出器アレイによって検出されることを防ぐ請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項6】
前記ディスプレイ画面からある距離を置いて前記コンピューティングデバイス上に位置付けられている少なくとも1つのカメラをさらに具備し、
前記少なくとも1つのカメラは、前記物体が前記少なくとも1つのカメラの視野内にあるときに、前記物体の場所または前記配向のうちの少なくとも1つを決定するために前記プロセッサによって分析することができる画像を取り込むように構成されており、
前記検出器アレイは、前記物体が前記少なくとも1つのカメラの視野外にあるときに、前記物体の前記場所または前記配向のうちの少なくとも1つを決定するために分析することができる画像データを取り込むように構成されている請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項7】
前記命令は、実行されるときに、さらに前記検出器アレイに、前記ディスプレイ画面の順次のアクティブ期間の合間の光を検出させる請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項8】
アクティブレイヤは、液晶材料を含み、
前記液晶材料は、前記ディスプレイ画面上の光入射の少なくとも一部分が前記ディスプレイ画面を通過することができるように活性化されるように構成されている請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項9】
前記命令は、実行されるときに、さらに前記コンピューティングデバイスに、前記物体を経時的に追跡させ、前記物体によって実行されるモーションまたはジェスチャのうちの少なくとも1つを前記コンピューティングデバイスが決定することができるようにする請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項10】
前記物体は、ユーザの指または手、あるいは、前記ユーザによって保持される物体、のうちの少なくとも1つを含む請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項11】
前記複数の照明源は、前記検出器アレイと共通の基板上にあり、
前記複数の照明源は、前記共通の基板の隅または端のうちの少なくとも1つに近接して位置付けられている請求項1記載のコンピューティングデバイス。
【請求項12】
コンピュータにより実現される方法において、
物体の場所の決定のために用いられる少なくとも2つの放射体のそれぞれを順に起動して、異なる特定の時間に異なる方向から光を放射させ、前記放射体は、コンピューティングデバイスのディスプレイ画面を通して前記光を放射するように構成されていることと、
前記特定の時間の各々に対して、検出器アレイによって取り込まれる輝度データを収集し、前記輝度データは、前記放射体のうちの少なくとも1つによって放射され前記コンピューティングデバイスの少なくとも検出範囲内で物体によって反射された光に対応し、前記物体によって反射された光は、前記検出器アレイによって検出される前に前記ディスプレイ画面を通して戻ることと、
前記輝度データは、他の部分の輝度レベルより高い輝度レベルを有する部分を含み、前記特定の時間の各々に対する前記輝度データを含む統合データセットであって、前記検出器アレイ中の各検出器に対する少なくとも統合輝度データを含む前記統合データセットを発生させることと、
前記輝度データの前記部分と、前記輝度データの前記他の部分のうちの少なくとも1つとに少なくとも基づいて、前記物体の形状または深度の情報を決定することと、
前記物体の形状または深度の情報に少なくとも基づいて、前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の配向を決定することとを含むコンピュータにより実現される方法。
【請求項13】
前記物体を経時的に追跡することをさらに含み、前記物体によって実行されるモーションまたはジェスチャのうちの少なくとも1つを前記コンピューティングデバイスが決定することができるようにする請求項12記載のコンピュータにより実現される方法。
【請求項14】
前記放射体は赤外線を放射し、
前記検出器アレイの検出器は、前記放射体によって放射された前記赤外線の反射された部分を検出し、
前記赤外線は、前記ディスプレイ画面の操作の間に検出することができる請求項12記載のコンピュータにより実現される方法。
【請求項15】
前記コンピューティングデバイスは、前記ディスプレイ画面からある距離を置いて位置付けられている少なくとも1つのカメラを具備し、
前記少なくとも1つのカメラは、前記物体が前記少なくとも1つのカメラの視野内にあるときに、前記物体の場所または前記配向のうちの少なくとも1つを決定するために分析することができる画像を取り込むように構成されており、
前記検出器アレイは、前記物体が前記少なくとも1つのカメラの視野外にあり、かつ前記検出範囲内にあるときに、前記物体の前記場所または前記配向のうちの少なくとも1つを決定するために分析することができる画像データを取り込むように構成されている請求項12記載のコンピュータにより実現される方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a)「[0040] FIG. 1 is the schematic sectional view of the interactive display device according to the first embodiment of the present invention. As shown in FIG. 1 , the interactive display device of this embodiment comprises the housing 101 , the user interface surface 102 coupled with the housing 101 , the display panel 105 disposed under the user interface surface 102 , the area light detector 106 disposed under the display panel 105 and configured to detect the invisible light reflected by the object which is on or adjacent to the user interface surface 102 , a plane light guide plate 103 disposed under the area light detector 106 , and an invisible light source 104 disposed at the side of the plane light guide plate 103 . The display panel 105 , the area light detector 106 , the plane light guide plate 103 and the invisible light source 104 are disposed within the housing 101 . In addition, a power supply 110 and a computer system (PC) 111 are disposed inside the housing 101 . In this embodiment, the user interface surface 102 can be virtual or actual. The invisible light source 104 can be a tubular infrared light source or an infrared point light source, in this way, the invisible light is infrared light. The display panel 105 can be a liquid crystal display (LCD) panel or a flat panel display (FPD) panel. The area light detector 106 is a photosensitive layer which may comprise phototransistor arrays. The lower surface of the photosensitive layer can transmit the infrared light and the upper surface thereof can receive the infrared light. The astigmatic plane (scattering plane) of the plane light guide plate 103 faces towards the user interface surface 102 .
[0041] The infrared light emitted by the invisible light source 104 , such as the infrared light source, is reflected and refracted by the plane light guide plate 103 , and reaches the user interface surface 102 . When touching or approaching the user interface surface 102 , a touch object 107 can reflect the infrared rays 108 , and the reflected infrared rays 109 reflected by the touch object 107 are received by the area light detector 106 such as the photosensitive layer. The light signals received by the photosensitive layer are provided to the PC system 111 connected to the photosensitive layer. The position of the touch object 107 can be obtained after analysis and processing, and the obtained position information of the touch object 107 is then transmitted to related devices.
[0042] The interactive display device of this embodiment replaces the infrared scanning light source in the existing interactive display devices with the plane light guide plate 103 and the invisible light source 104 disposed at the side of the plane light guide plate 103 , thereby significantly reducing the internal space of the interactive display device, and thus the interactive display device has smaller size and better appearance, so it is easy to be transported and more competitive.」(下線は当審で付与。以下、同様。)(当審訳:[0040] 図1は、本発明の第1実施態様に基づく対話型ディスプレイ装置を示す概略断面図である。図1に示すように、この実施態様の対話型ディスプレイ装置は、ハウジング101と、ハウジング101と結合されたユーザーインターフェイス表面102と、ユーザーインターフェイス表面102の下側に配置されたディスプレイ・パネル105と、ユーザーインターフェイス表面102上にあるか又は表面に隣接する物体によって反射させられる不可視光を検出するように形成された、ディスプレイ・パネル105の下側に配置されたエリア光検出器106と、エリア光検出器106の下側に配置された平面状導光板103と、平面状導光板103の側方に配置された不可視光源104とを含む。ディスプレイ・パネル105と、エリア光検出器106と、平面状導光板103と、不可視光源104とは、ハウジング101内部に配置されている。加えて、電源110及びコンピュータ・システム(PC)111もハウジング101内部に配置されている。この実施態様の場合、ユーザーインターフェイス表面102は仮想又は実在のものであってよい。不可視光源104は赤外線管状光源又は赤外線点光源であってよく、このように、不可視光は赤外線である。ディスプレイ・パネル105は液晶ディスプレイ(LCD)パネル又はフラット・ディスプレイ(FPD)パネルであってよい。エリア光検出器106は感光性層であり、感光性層はフォトトランジスタ・アレイを含んでよい。感光性層の下面は、赤外線を透過させることができ、そしてその上面は赤外線を受容することができる。平面状導光板103の非点収差面(散乱面)は、ユーザーインターフェイス表面102に向いている。
[0041] 不可視光源104、例えば赤外線源によって発せられた赤外線は、平面状導光板103によって反射させられ屈折させられ、そしてユーザーインターフェイス表面102に達する。ユーザーインターフェイス表面102に接触又は接近すると、接触物体107は、赤外線108を反射させることができ、そして接触物体107によって反射させられた反射赤外線109は、エリア光検出器106、例えば感光性層によって受容される。感光性層によって受容された光信号は、感光性層に接続されたPCシステム111に提供される。接触物体107の位置は分析及び処理の後に得ることができ、そして接触物体107の得られた位置情報は、次いで関連装置に伝送される。
[0042] この実施態様の対話型ディスプレイ装置は、現存の対話型ディスプレイ装置内の赤外走査線源を、平面状導光板103及び平面状導光板103の側方に配置された不可視光源104で置き換え、これにより対話型ディスプレイ装置の内部空間を著しく低減し、ひいてはこの対話型ディスプレイ装置はサイズが小さくなって、また外観が良くなり、従って搬送しやすく、そしてより高い競争力を持つようになる。)

上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、対話型ディスプレイ装置として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「対話型ディスプレイ装置は、ハウジング101と、ハウジング101と結合されたユーザーインターフェイス表面102と、ユーザーインターフェイス表面102の下側に配置されたディスプレイ・パネル105と、ユーザーインターフェイス表面102上にあるか又は表面に隣接する物体によって反射させられる不可視光を検出するように形成された、ディスプレイ・パネル105の下側に配置されたエリア光検出器106と、エリア光検出器106の下側に配置された平面状導光板103と、平面状導光板103の側方に配置された不可視光源104とを含み、
加えて、電源110及びコンピュータ・システム(PC)111もハウジング101内部に配置されており、
不可視光源104は赤外線管状光源又は赤外線点光源であり、
エリア光検出器106は感光性層であり、感光性層はフォトトランジスタ・アレイで、
感光性層の下面は、赤外線を透過させることができ、そしてその上面は赤外線を受容することができ、
平面状導光板103の非点収差面(散乱面)は、ユーザーインターフェイス表面102に向いており、
不可視光源104、例えば赤外線源によって発せられた赤外線は、平面状導光板103によって反射させられ屈折させられ、そしてユーザーインターフェイス表面102に達し、
ユーザーインターフェイス表面102に接触又は接近すると、接触物体107は、赤外線108を反射させ、
そして接触物体107によって反射させられた反射赤外線109は、エリア光検出器106、例えば感光性層によって受容され、
感光性層によって受容された光信号は、感光性層に接続されたPCシステム111に提供され、接触物体107の位置は分析及び処理の後に得ることができ、そして接触物体107の得られた位置情報は、次いで関連装置に伝送される、
対話型ディスプレイ装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0011】、【0089】-【0107】及び図10-15の記載からみて、当該引用文献2には、バックライト206から、第1期間T1においてパルス状に出射される光源光La1を表示面20sに向かって射出し、指Fの表面で反射された反射光Lb1をフォトダイオード212で検出し、指Fの画像部分F1を含む画像P1を生成し、バックライト206から、第2期間T2において出射される光源光La2を射出し、反射光Lb2をフォトダイオード212で検出し、指Fの画像部分F2を含む画像P2を生成し、バックライト206から、第3期間T3において出射される光源光La3を射出し、反射光Lb3をフォトダイオード212で検出し、指Fの画像部分F3を含む画像P3を生成し、画像P1及び画像P2の夫々の輝度データの差分値を算出することにより画像P12を生成し、画像P1及び画像P3の夫々の輝度データの差分値を算出することにより画像P13を生成し、画像P12について、指Fの画像部分F1及びF2において共通する部分である画像部分F1の中心座標C1を特定し、画像P13について、指Fの画像部分F1及びF3において共通する部分である画像部分F3の中心座標C2を特定し、中心座標C1及びC2の平均値を算出することによって、指Fの表示面20sの面内における位置を特定するという技術的事項、すなわち、複数の光源光を互いに異なる特定の時間に照射し、各特定の時間毎に撮像された画像の輝度データの差分値より指の位置を特定するという技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0022】-【0023】、及び図2の記載からみて、当該引用文献3には、プラズマディスプレイ58にカメラ70を収納し、タッチ面60の画像からポインタの存在を判断するという技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0020】、【0060】、及び図1の記載からみて、当該引用文献4には、筐体10の表示部16の上側に撮像部20が設けられ、撮像部20がユーザの指50を撮像して、ユーザの指が表示されている撮像画像内の領域を特定するという技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の段落【0007】の記載からみて、当該引用文献5には、液晶パネルの画像表示を休止するブランキング期間中、照明用光源を消灯状態とするとともに、位置検出用光源を点灯状態とし、位置検出部はブランキング期間における光検出器での検出結果に基づいて対象物体の位置を検出するという技術的事項が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
原査定で提示された上記引用文献6の段落【0008】、【0010】、【0022】及び図4の記載からみて、当該引用文献6には、照明が当たった特定部位を撮像し、撮像された画像データをもとに、特定部位の領域の影の付き方から指差し動作とその位置を検出するものにおいて、指差し動作によりできる影の角度の二等分線が鋭角に向かう方向を指差し動作の方向として検出するという技術的事項が記載されていると認められる。

7.引用文献7について
原査定で提示された上記引用文献7の段落【0023】、【0059】、【0063】、【0074】の記載からみて、当該引用文献7には、赤外線照射部11(照射部)が、検出対象面2上における指示部の先端部を検出する第1の赤外光と、第1の赤外光より検出対象面2から離れた領域に照射される第2の赤外光とを切り替えて照射し、検出部19は、第1の赤外光を照射することにより撮像された第1の画像及び第2の赤外光を照射することにより撮像部15によって撮像された第2の画像に基づいて、指示部の向きを検出するものにおいて、撮像部15が、さらに、第1の赤外光及び第2の赤外光がともに照射されない期間の画像である第3の画像を撮像し、検出部19は、第1の画像と第3の画像との差分画像、及び第2の画像と第3の画像との差分画像に基づいて、指示部の画像領域と先端部の画像領域とを抽出し、抽出した指示部の画像領域に基づいて、指示部の向きを検出するという技術的事項が記載されていると認められる。

8.その他の文献について
また、本願の優先日前に公開された特開2011-117750号公報(以下、「引用文献8」という。)の段落【0022】、【0023】-【0024】、【0026】、【0042】-【0044】及び図1-2の記載からみて、当該引用文献8には、タッチパネルとして利用される光学式位置検出装置10において、光源部11は複数の発光素子12を備え、係る発光素子12A、12Bは、X軸方向で離間する位置で発光面を透光部材40に向けており、発光素子12A、12Bは、赤外光からなる検出光を発散光として放出し、光源部11の発光素子12A、12Bが順次点灯して検出光L2a、L2bを出射すると、検出光L2a、L2bは、X軸方向で強度が変化するX座標検出用光強度分布(X座標検出用第1光強度分布L2XaおよびX座標検出用第2光強度分布L2Xb)を形成し、座標検出用第1光強度分布L2Xa、X座標検出用第2光強度分布L2Xb、および第1光検出器30での検出結果を利用して、透光部材40の面内方向(X軸方向)の対象物体Obの位置(X座標)を検出することができるものであり、まず、X座標検出用第1期間において、発光素子12Aを点灯させる一方、発光素子12Bを消灯させ、X軸方向の一方側X1から他方側X2に向かって強度が単調減少していくX座標検出用第1光強度分布L2Xaを形成し、また、X座標検出用第2期間において、発光素子12Aを消灯させる一方、発光素子12Bを点灯させ、X軸方向の他方側X2から一方側X1に向かって強度が単調減少していくX座標検出用第2光強度分布L2Xbを形成し、対象物体Obにより検出光L2が反射され、その反射光の一部が第1光検出器30により検出され、X座標検出用第1期間においてX座標検出用第1光強度分布L2Xaを形成した際の第1光検出器30での検出値LXaと、X座標検出用第2期間においてX座標検出用第2光強度分布L2Xbを形成した際の第1光検出器30での検出値LXbとを比較し、それらの差を求め、対象物体ObのX座標を検出するという技術的事項、すなわち、複数の発光素子を順次点灯して検出光を放出し、各発光素子の検出光毎にその反射光を検出し検出値を得、それらの差より対象物体の座標を検出するという技術事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア.引用発明の「対話型ディスプレイ装置」は、「電源110及びコンピュータ・システム(PC)111もハウジング101内部に配置」されたものであるから、本願発明1の「コンピューティングデバイス」に相当するといえる。
また、引用発明の「対話型ディスプレイ装置」に配置される「コンピュータ・システム(PC)111」がプロセッサを有することは明らかであるから、引用発明の「対話型ディスプレイ装置」に「コンピュータ・システム(PC)111」が配置されることは、本願発明1の「コンピューティングデバイス」が「プロセッサ」を具備することに相当する。

イ.引用発明の「ディスプレイ・パネル105」は、本願発明1の「コンテンツを表示するディスプレイ画面」に相当する。

ウ.引用発明の「不可視光源104」は、「ユーザーインターフェイス表面102」の下側に配置された「ディスプレイ・パネル105」の下側に配置された「エリア光検出器106」の下側に配置された「平面状導光板103」の側方に配置されたものであり、「不可視光源104、例えば赤外線源によって発せられた赤外線は、平面状導光板103によって反射させられ屈折させられ、そしてユーザーインターフェイス表面102に達し、ユーザーインターフェイス表面102に接触又は接近すると、接触物体107は、赤外線108を反射させ」るものであるから、「不可視光源104」によって発せられた赤外線は、「ディスプレイ・パネル105」を通過して「接触物体107」により反射されることは明らかであり、引用発明の「不可視光源104」は、本願発明1の「前記ディスプレイ画面を通して光が物体から反射されるようにする照明の源を提供するように動作可能な複数の照明源」と「前記ディスプレイ画面を通して光が物体から反射されるようにする照明の源を提供するように動作可能な照明源」である点では共通するといえる。

エ.引用発明の「エリア光検出器106」は、「感光性層であり、感光性層はフォトトランジスタ・アレイで」、「ディスプレイ・パネル105」の下側に配置されたものであり、「接触物体107によって反射させられた反射赤外線109は、エリア光検出器106、例えば感光性層によって受容され」るものであるから、「接触物体107によって反射させられた反射赤外線109」が「ディスプレイ・パネル105」を通過して「エリア光検出器106」の「フォトトランジスタ・アレイ」で検出されることは明らかであり、引用発明の「エリア光検出器106」は、本願発明1の「前記物体によって反射され前記ディスプレイ画面を通過する光を検出するように各々が構成されている複数の検出器を含む検出器アレイ」に相当する。

オ.引用発明の「対話型ディスプレイ装置」に配置される「コンピュータ・システム(PC)111」が命令を含むメモリを有することは明らかであるから、引用発明の「対話型ディスプレイ装置」に「コンピュータ・システム(PC)111」が配置されることは、本願発明1の「コンピューティングデバイス」が「命令を含むメモリ」を具備することに相当する。

カ.引用発明が「エリア光検出器106」である「感光性層によって受容された光信号は、感光性層に接続されたPCシステム111に提供され、接触物体107の位置は分析及び処理の後に得ることができ」るものであることは、本願発明1が「前記命令は、前記プロセッサによって実行されるときに、前記コンピューティングデバイスに、」「前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の位置を決定するために、前記検出器アレイによって検出される前記光に対するデータを分析させ」るものであることに相当する。

キ.引用発明が「接触物体107によって反射させられた反射赤外線109は、エリア光検出器106、例えば感光性層によって受容され、感光性層によって受容された光信号は、感光性層に接続されたPCシステム111に提供され」るものであることは、本願発明1が「前記特定の時間の各々に対して前記検出器アレイによって取り込まれる輝度データであって、前記複数の照明源のうちの少なくとも1つによって放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させ」るものであることと、「前記検出器アレイによって取り込まれる輝度データであって、前記照明源によって放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させ」るものである点で共通するといえる。

したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「コンピューティングデバイスにおいて、
プロセッサと、
コンテンツを表示するディスプレイ画面と、
前記ディスプレイ画面を通して光が物体から反射されるようにする照明の源を提供するように動作可能な照明源と、
前記物体によって反射され前記ディスプレイ画面を通過する光を検出するように各々が構成されている複数の検出器を含む検出器アレイと、
命令を含むメモリとを具備し、
前記命令は、前記プロセッサによって実行されるときに、前記コンピューティングデバイスに、
前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の位置を決定するために、前記検出器アレイによって検出される前記光に対するデータを分析させ、
前記検出器アレイによって取り込まれる輝度データであって、前記照明源によって放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させるコンピューティングデバイス。」

〈相違点〉
本願発明1は、「複数の照明源」を備えるものであり、
「異なる特定の時間に異なる方向から光を放射するように、前記物体の場所の決定のために用いられる前記複数の照明源のそれぞれを順に起動させ」、
「前記特定の時間の各々に対して前記検出器アレイによって取り込まれる輝度データであって、前記複数の照明源のうちの少なくとも1つによって放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させ、
前記輝度データは、他の部分の輝度レベルより高い輝度レベルを有する部分を含み、前記特定の時間の各々に対する前記輝度データを含む統合データセットであって、前記検出器アレイ中の検出器の各々に対する少なくとも統合輝度情報を含む前記統合データセットを発生させ、
前記輝度データの前記部分と、前記輝度データの前記他の部分のうちの少なくとも1つとに少なくとも基づいて、前記物体の形状または深度の情報を決定させ、
前記物体の形状または深度の情報に少なくとも基づいて、前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の配向を決定させる」
ものであるのに対し、引用発明はそのような構成を有するものではない点。

(2)相違点についての判断
引用文献2には、複数の光源光を互いに異なる特定の時間に照射し、各特定の時間毎に撮像された画像の輝度データの差分値より指の位置を特定するという技術的事項が記載され、引用文献8には、複数の発光素子を順次点灯して検出光を放出し、各発光素子の検出光毎にその反射光を検出し検出値を得、それらの差より対象物体の座標を検出するという技術事項が記載されているものの、これらの各文献に記載された技術的事項は、「複数の照明源」が「異なる方向から光を放射」し、「放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させ」、「前記輝度データは、他の部分の輝度レベルより高い輝度レベルを有する部分を含み、前記特定の時間の各々に対する前記輝度データを含む統合データセットを発生させ、前記輝度データの前記部分と、前記輝度データの前記他の部分のうちの少なくとも1つとに少なくとも基づいて、前記物体の形状または深度の情報を決定させ、前記物体の形状または深度の情報に少なくとも基づいて、前記コンピューティングデバイスに関する前記物体の配向を決定させる」るものではない。
また、引用文献6、引用文献7に記載された技術的事項は、検出対象物の向きを検出するものではあるものの、「複数の照明源」が「異なる方向から光を放射」し、「放射され前記物体によって反射された光に対する輝度データを含む前記輝度データを収集させ」、「前記輝度データは、他の部分の輝度レベルより高い輝度レベルを有する部分を含み、前記特定の時間の各々に対する前記輝度データを含む統合データセットを発生」させるものではない。
さらに、上記相違点に係る本願発明1の構成は、引用文献3-5にも記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.請求項2-11について
本願発明2-11は、本願発明1を引用して限定するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.請求項12について
本願発明12は、本願発明1を実質的に方法として記載したものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.請求項13-15について
本願発明13-15は、本願発明12を引用して限定するものであり、上記「3.請求項12について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
相違点に係る本願発明1の構成に関連して、原査定においては、照明源を複数の照明源とすることは設計事項にすぎず、また、光を反射させた物体の形状または深度の情報に基づいて物体の配向を決定することは引用文献6-7に示すように周知の技術である旨認定している。
しかしながら、上記「1.請求項1について」の「(2)相違点についての判断」に述べたように、引用文献6-7に記載された技術的事項は、「複数の照明源」が「異なる方向から光を放射」し、「他の部分の輝度レベルより高い輝度レベルを有する部分を含み、前記特定の時間の各々に対する前記輝度データを含む統合データセットを発生」させるものではなく、また、そのようなデータセットを発生することが、本願の優先日前周知の技術であるともいえないから、本願発明は、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-15は、当業者が引用発明及び引用文献2-8に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-29 
出願番号 特願2015-533160(P2015-533160)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 若林 治男  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 稲葉 和生
山田 正文
発明の名称 ディスプレイ一体型カメラアレイ  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  

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