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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1336746
審判番号 不服2017-1783  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-07 
確定日 2018-02-06 
事件の表示 特願2016- 75525「ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜及び偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017-102421、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特願2016-75525号(以下「本件出願」という。)は、平成28年4月5日の特許出願(優先権主張:平成27年11月19日)であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 6月 9日付け:拒絶理由通知
平成28年 8月 9日付け:意見書
平成28年 8月 9日付け:手続補正書
平成28年10月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 2月 7日付け:審判請求
平成29年 2月 7日付け:手続補正書
(この手続補正書による補正を、以下「本件補正」という。)

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1-請求項4に係る発明(以下「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-請求項4に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
厚さ5?30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
【請求項2】
複屈折ΔNxyが0.001以下であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
ここでΔNxyは、幅方向(TD方向)の屈折率をnx、流れ方向(MD方向)の屈折率をnyとした場合に、下式(A)で算出される値である。
(A)ΔNxy=|nx-ny|
【請求項3】
請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムを用いてなることを特徴とする偏光膜。
【請求項4】
請求項3記載の偏光膜の少なくとも片面に保護フィルムを設けてなることを特徴とする偏光板。」

3 原査定の理由
本願発明1は、本件補正前の請求項1に係る発明であるところ、その原査定の拒絶の理由は、概略、当該発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例1に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用例1:国際公開第2014/050696号

第2 当合議体の判断
1 引用例1の記載及び引用発明
(1) 引用例1の記載
引用例1には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付した。
「[請求項1] フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下であるポリビニルアルコール系重合体フィルム。
[請求項2] 全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の平均値が0.6°以下である、請求項1に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
[請求項3] 前記配向軸の測定位置におけるレタデーション値が、全ての測定位置において5?100nmである、請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
[請求項4] 前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が45?90°である、請求項1?3のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。
[請求項5] 幅が2m以上である、請求項1?4のいずれか1項に記載のポリビニルアルコール系重合体フィルム。」

(2) 引用発明
引用例1の(請求項1-2-4を引用する)[請求項5]には、以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「フィルムの面内における配向軸をフィルムの幅方向に20mmピッチで測定した際に、隣接する2つの測定位置における配向軸同士がなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が、全ての隣接する2つの測定位置において2.3°以下であり、全ての隣接する2つの測定位置における前記角度の平均値が0.6°以下であり、前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が45?90°であり、幅が2m以上である、ポリビニルアルコール系重合体フィルム。」

2 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 引用発明の「幅が2m以上である、ポリビニルアルコール系重合体フィルム」と本願発明1の「厚さ5?30μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルム」は、「幅2m以上であるポリビニルアルコール系フィルム」である点で共通する。

イ 引用発明では、「前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が45?90°であ」るから、配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの幅方向とがなす角度は0?45°であるといえる。
そうすると、引用発明の「前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が45?90°であ」ることと本願発明1の「配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下」であることは、「配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が45°以下」である点で共通する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致(共通)する。
「幅2m以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が45°以下である、ポリビニルアルコール系フィルム。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「厚さ5?30μm」、「長さ2km以上」であるのに対して、引用発明は、厚さ、長さが特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1では、「配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)が20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)が、10°以下である」のに対し、引用発明では、「前記配向軸の測定位置のうちの少なくとも1つにおける配向軸とポリビニルアルコール系重合体フィルムの長さ方向とがなす角度(但し0?90°の範囲内にある)が45?90°であ」り、かつ、交差角θのふれΔθ(°)が特定されていない点。

(3) 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ポリビニルアルコール系フィルムにおいて、配向軸(遅相軸)と幅方向(TD方向)の交差角θ(°)を20°以下、かつ交差角θのふれΔθ(°)を、10°以下とすることは、公知又は周知の技術ではない。
また、本願発明1は、相違点2に係る構成を有することにより、「偏光膜製造時の延伸性に優れ、薄型の偏光膜を製造する場合でも破断が生じず、高い偏光性能を示し、かつ色ムラの少ない偏光膜を提供することができる。」という効果(本件出願明細書段落【0016】参照。)を奏するものである。
そうすると、相違点2に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者であっても容易になし得ることではない。

(4) 小括
相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

3 本願発明2-本願発明4について
本願発明2-本願発明4も、上記相違点2に係る本願発明1の構成を具備するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるということができない。

第3 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-22 
出願番号 特願2016-75525(P2016-75525)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 関根 洋之
宮澤 浩
発明の名称 ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜及び偏光板  
代理人 西藤 征彦  
代理人 井▲崎▼ 愛佳  
代理人 西藤 優子  

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