• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1336809
審判番号 不服2017-2373  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-17 
確定日 2018-01-24 
事件の表示 特願2015-509271「失明性疾患を処置および診断するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日国際公開、WO2013/163758、平成27年 8月13日国内公表、特表2015-523546〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成25年4月30日(パリ条約による優先権主張2012年5月1日(US)アメリカ合衆国、2012年5月2日(US)アメリカ合衆国、2012年8月24日(US)アメリカ合衆国、2013年3月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、出願以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成28年 4月25日付け 手続補正書
平成28年 5月24日付け 拒絶理由通知書
平成28年 8月30日付け 意見書・手続補正書・手続補足書
平成28年10月13日付け 拒絶査定
平成29年 2月17日付け 審判請求書
平成29年 2月17日付け 手続補正書
平成29年 3月29日付け 手続補正書(方式)
平成29年 6月 9日付け 前置報告書

第2 平成29年2月17日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月17日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.平成29年2月17日付け手続補正の内容
平成29年2月17日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の
「【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】


(式中、R_(1)およびR_(2)のそれぞれは、独立にHまたはC_(1)-C_(6)アルキルであり、R_(3)は、HまたはC_(1)-C_(6)アルキルである。)
または医薬的に許容可能なその塩の硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用。」

「【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】


(式中、R_(1)およびR_(2)のそれぞれは、独立にHまたはC_(1)-C_(6)アルキルであり、R_(3)は、HまたはC_(1)-C_(6)アルキルである。)
または医薬的に許容可能なその塩の硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用であって、前記乾性加齢性黄斑変性(AMD)は、網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより診断された、使用。」
とする補正を含むものである。

2.補正の適否
上記請求項1についての補正は、補正前の「乾性加齢性黄斑変性(AMD)」を、「網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより診断された」乾性加齢性黄斑変性(AMD)に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1.に記載したとおりの以下のものである。
「【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】


(式中、R_(1)およびR_(2)のそれぞれは、独立にHまたはC_(1)-C_(6)アルキルであり、R_(3)は、HまたはC_(1)-C_(6)アルキルである。)
または医薬的に許容可能なその塩の硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用であって、前記乾性加齢性黄斑変性(AMD)は、網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより診断された、使用。」

(2)特許法第36条第4項第1号について
ア.はじめに
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」(いわゆる実施可能要件)と定めている。
そして、本願補正発明は、「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に関する発明であるから、医薬の用途発明であるところ、医薬の用途発明においては、一般に、物質名、化学構造だけからその有用性を予測することは困難であり、発明の詳細な説明に有効量、投与方法、製剤化のための事項がある程度記載されている場合であっても、それだけでは当業者は当該医薬が実際にその用途において有用性があるか否かを知ることができないから、発明の詳細な説明に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をしてその用途の有用性を裏付ける必要があり、そのような記載がされていない場合には、実施可能要件を満たしていないというべきである。
以下、この点について検討する。

イ.発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0002】
本発明は、失明性疾患に対して有効である薬物の探索を含め、失明性疾患の診断、処置または予防に有用である方法および組成物に関する。」(【0002】)

(イ)「【0008】
別の態様において、本発明は、乾性AMDの処置または予防を必要とする対象に有効量の式Iの化合物:
【化1】

または医薬的に許容可能なその塩(式中、R_(1)およびR_(2)のそれぞれは、独立にHまたはC_(1)-C_(6)アルキルであり、R_(3)は、HまたはC_(1)-C_(6)アルキルである。)を投与することを含む、乾性AMDを処置または予防するための方法を提供する。」(【0008】)

(ウ)「【0031】
別の態様において、本発明は、乾性AMDの処置または予防を必要とする対象に有効量の式Iの化合物:
【化2】


または医薬的に許容可能なその塩(式中、R_(1)およびR_(2)のそれぞれは、独立にHまたはC_(1)-C_(6)アルキルであり、R_(3)は、HまたはC_(1)-C_(6)アルキルである。)を投与することを含む、乾性AMDを処置または予防するための方法を提供する。ある実施形態において、式Iの化合物はビンダリットである。」(【0031】)

(エ)「【0207】
ヒトに対して眼に、例えば硝子体内に投与する場合、例えば、例えば式I、メトトレキサートまたは医薬的に許容可能なその塩および/またはさらなる治療薬を含む本発明の薬剤の投与量は、通常、0.003mgから5.0mg/眼/投与または0.03mgから3.0mg/眼/投与または0.1mgから1.0mg/眼/投与である。ある実施形態において、投与量は、0.03mg、0.3mg、1.5mgまたは3.0mg/眼である。別の実施形態において、投与量は、0.5mg/眼である。投与量は、0.01mLから0.2mL投与/眼または0.03mLから0.15mL投与/眼または0.05mLから0.10mL投与/眼の範囲であり得る。ある実施形態において、投与は、少なくとも3カ月にわたり毎月400μgの化合物である。
【0208】
一般に、哺乳動物に経口投与する場合、本明細書中に記載の何らかの薬剤の投与量は、0.001mg/kg/日から100mg/kg/日、0.01mg/kg/日から50mg/kg/日または0.1mg/kg/日から10mg/kg/日であり得る。ヒトに経口投与する場合、本明細書中に記載の何らかの薬剤の投与量は、一般に、0.001mgから1000mg/日、1mgから600mg/日または5mgから30mg/日である。ある実施形態において、経口投与量は600mg/日である。ある実施形態において、経口投与量は、300mg用量/日を2回である。別の実施形態において、経口投与量は、7.5mg/週から15mg/週である。
【0209】
非経口注射による本明細書中に記載の何らかの薬剤の投与の場合、投与量は一般的に、0.1mgから250mg/日、1mgから20mg/日または3mgから5mg/日である。1日に最大4回まで、注射を行い得る。一般に、経口または非経口投与される場合、本明細書中に記載の何らかの薬剤の投与量は、一般的に、0.1mgから1500mg/日または0.5mgから10mg/日または0.5mgから5mg/日である。最大3000mg/日までの投与量が投与され得る。
【0210】
いくつかの実施形態において、1以上の本明細書中に記載の何らかの薬剤を眼に投与することが所望され得る。投与は、非限定例として、眼内、硝子体内、局所(点眼剤および軟膏を含むが限定されない。)、結膜下、テノン嚢下、経強膜的,脈絡膜上、網膜下およびイオン導入法を介したものであり得る。
【0211】
他の投与経路、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸、吸入による、または局所に、など、特に耳、鼻、眼または皮膚への経路も使用され得る。
【0212】
投与方式は、施術者の裁量に委ねられ得、医学的状態の部位に一部依存する。殆どの例において、投与の結果、本明細書中に記載の何らかの薬剤が血流に放出される。
【0213】
本明細書中に記載の何れの薬剤も経口投与され得る。このような薬剤は、何らかの他の従来からの経路によって、例えば、静脈内点滴またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の裏打ち(例えば、口腔粘膜、直腸および小腸粘膜など)を通じた吸収によっても投与され得、別の生物学的活性薬剤と一緒に投与され得る。投与は全身的または局所的であり得る。例えばリポソーム、微粒子、マイクロカプセル剤、カプセル剤での封入など、様々な送達系が知られており、投与するために使用され得る。
【0214】
投与のさらなる方法としては、眼内、硝子体内、眼の局所(点眼剤、軟膏および挿入物を含むが限定されない。)、結膜下、テノン嚢下、脈絡膜上、経強膜的、経皮、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、脳内、膣内、経皮、直腸的、吸入による、または局所的、特に耳、鼻、目または皮膚に対するものが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載の何らかの薬剤の複数を眼に投与する。投与は、非限定例として、眼内、硝子体内、局所(点眼剤および軟膏を含むが限定されない。)、結膜下、テノン嚢下、経強膜的およびイオン導入法であり得る。投与方式は、施術者の裁量に委ねられ得、一部、医学的状態の部位に依存する。殆どの例において、投与の結果、血流に放出される。
【0215】
具体的な実施形態において、処置が必要な領域に局所的に投与することが所望される得る。
【0216】
別の実施形態において、送達は、小胞、特にリポソーム中であり得る(Langer,1990,Science 249:1527-1533;Treatら、Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez-Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353-365(1989))。また別の実施形態において、送達は制御放出系であり得る。ある実施形態において、遅延放出眼内装置を使用し得る。いくつかの実施形態において、この装置は、局所的に送達される分解性または非分解性液体、ゲル、ポリマーなどからなる。
【0217】
別の実施形態において、ポリマー性材料を使用し得る(Medical Applications of Controlled Release,LangerおよびWise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Producuct Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61;Levyら、1985,Science 228:190;Duringら、1989,Ann.Neurol.25:351;Howardら、1989,J.Neurosurg.71:105も参照)。別の実施形態において、処置しようとする標的領域、例えば網膜、の近接部に制御放出系を設置し得、したがって必要であるのは全身性用量の一部のみである(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,前出、vol.2,pp.115-138(1984)参照)。Langer,1990,Science 249:1527-1533)による概説で論じられる他の制御放出系を使用し得る。
【0218】
本明細書中に記載の何らかの薬剤の投与は、独立に、1日1回から4回または1カ月に1回から4回または1年に1回から6回または2、3、4または5年ごとに1回であり得る。投与は、1日または1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年間、2年間、3年間の期間にわたり得、対象の生涯にもわたり得る。慢性的な長期投与は多くの症例において適応とされる。投与量は、単回用量としてまたは複数回に分割して投与され得る。一般に、長期にわたり、通常は少なくとも数週間または数ヶ月、設定間隔で所望の投与量を投与すべきであるが、数カ月または数年以上の長期投与が必要であり得る。
【0219】
対象のタイプ、人種、年齢、体重、性別および医学的状態、処置しようとする状態の重症度、投与経路;対象の腎臓または肝臓機能;個体の薬理ゲノム学的性質;および使用される本発明の具体的な化合物を含む様々な因子に従い、本明細書中に記載の何らかの薬剤を利用する投与量計画を選択し得る。単回1日用量で本明細書中に記載の何らかの薬剤を投与してもよいし、または総1日投与量を1日2、3または4回の分割用量で投与してもよい。さらに、投与計画を通じて間欠的ではなく連続的に本明細書中に記載の何らかの薬剤を投与し得る。
処置方法
【0220】
様々な態様において、本発明は、乾性AMDおよび/またはRPDを処置または予防するための方法を提供する。これらの態様において、「本発明の薬剤」は、単剤療法および併用療法(例えばさらなる治療薬として)の両方に有用な化合物を含む。一般に、単剤療法は、式Iの化合物、メトトレキサートまたは医薬的に許容可能なその塩の使用を含み、一方で、併用療法は、抗VEGF剤、ACE阻害剤、PPAR-γアゴニスト、レニン阻害剤、ステロイド、オートファジーを調節する薬剤 PPARγ調節物質、セマピモド、MIF阻害剤、CCR2阻害剤、CKR-2B、2-チオミダゾール、CAS445479-97-0、CCX140、クロドロネート、クロドネート(clodonate)-リポソーム製剤または塩化ガドリニウムの1以上を含むさらなる治療薬と併用して、式Iの化合物、メトトレキサートまたは医薬的に許容可能なその塩を含む。」(【0207】?【0220】)

(オ)「【0250】
次の非限定実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例)
(実施例1):RPE毒素、NaIO_(3)の全身注射は、AMDおよび/またはRPDと類似の複雑なFAFのパターンを誘導する。
(…中略…)
(実施例2):全身性ICG投与後のラットの眼のDNIRAによって、インビボで網膜色素上皮(RPE)層が特定される。
(…中略…)
(実施例3):失明性疾患の処置のための化合物の探索
(…中略…)
(実施例4):失明性疾患に対する化合物の活性の評価
(…後略…)」(【0250】?【0286】)

(カ)「(実施例5):ビンダリットでの乾性AMDの処置
【0287】
56歳から100歳以上のヒト対象は、次の臨床試験のうち1以上により診断されるように、乾性AMDを発症している:臨床検査、(何らかの波長での)FAF、近赤外および/または無赤色写真、異常血管過程の同定および局在確認を可能にするフルオレセイン血管造影;ヒト網膜および脈絡膜など、光学的散乱媒質内からの高解像度の断面または正面画像を提供するOCT;および、網膜色素上皮組織切片において小さな自発蛍光構造(リポフスチン顆粒)の蛍光分布を解像するために特別に設計された高解像度顕微鏡設定を用いた、構造化照明光顕微鏡。
【0288】
12週間にわたり1日1回、2x300mg経口用量で対象にビンダリットを投与する。最初の12週間の処置期間後、臨床転帰について対象を評価する。あるいは、薬物送達ビヒクルありかまたはなしで、患者にビヒクル含有ビンダリットの硝子体内注射を行う。
【0289】
当技術分野で周知であるような標準的な視力検査を用いて、最初の臨床的転帰を判定する。距離を置いたスネレン視力表上の印および物体を明確に見る能力について、対象を評価する。
【0290】
第二の臨床的転帰は、地図状萎縮の進行速度を評価する。これを行うために、網膜イメージング前に1.0%トロピカミドおよび2.5%フェニレフリンを用いて対象の瞳孔を拡張させる。Helbら、Acta Ophthalmol.2010 Dec;88(8):842-9に記載のような2枚の独立した走査ミラーにより、cSLOおよびスペクトル-ドメイン光干渉断層法(SD-OCT)の同時記録を可能にする機器(例えば、Spectralis HRA+OCT;Heidelberg Engineering,Heidelberg,Germany)を用いてイメージングを行う。5種類の操作モードを使用する:白色光、無赤色光、近赤外、FAFおよびOCT。
【0291】
近-赤外線反射率(λ=815nm)およびFAF(λ=488nmで励起、放射500-700nm)画像の取得を含む標準化操作プロトコールに従い、cSLO画像を得る。870nmの照明波長、40,000A-スキャンの取得速度および1.8mmのスキャン深度で同時SD-OCTイメージングを行う。およその中心窩の中央部を通じて、または、RPDの場合は網膜黄斑の血管アーケードに近接して、1回は垂直および1回は水平で、1つの眼あたり2回のSD-OCTスキャンを行う。必要に応じてフルオレセイン血管造影(λ=488nm、放射500-700nm、10%フルオレセイン色素)を行う。眼底カメラ(例えばFF450 Visupac ZK5;Carl Zeiss Meditec AG,Jena,Germany)を用いてカラー眼底写真を得る。
【0292】
臨床転帰データの解釈から、もしあればさらなる処置についての判断に関する情報が得られる。」(【0286】?【0292】)

(キ)「(実施例6):併用療法による乾性AMDの処置
【0293】
56歳から100歳以上のヒト対象は、次の臨床的な検査のうち1以上により診断されるように、乾性AMDを発症している:異常血管過程の特定および局在確認を可能にする、臨床検査、白色光眼底画像、何らかの波長でのFAF、近赤外および/または無赤色写真、青色光照明、および/またはフルオレセインまたはICG血管造影;ヒト網膜および脈絡膜など、光学的散乱媒質内からの高解像度の断面、三次元および正面画像を提供するOCT;および、網膜色素上皮組織または他の細胞および細胞層において小さな自発蛍光構造(リポフスチン、リポフスチン様または他の顆粒)の分布を解像するための、特別に設計された高解像度顕微鏡または検眼鏡設定を用いた、構造化照明光顕微鏡。
【0294】
12週間にわたり1日1回、2x300mg経口用量で対象にビンダリットを投与する。対象にまた、患眼あたり0.5mgの用量で1カ月(およそ28日)に1回、ラニビズマブ注射も行う。最初の12週間の処置期間後、臨床転帰について対象を評価する。
【0295】
当技術分野で周知であるような標準的な視力検査を用いて、最初の臨床転帰を判定する。距離を置いたスネレン視力表上の印および物体を明確に見る能力について、対象を評価する。
【0296】
第二の臨床転帰は、地図状萎縮の進行速度を評価する。これを行うために、網膜イメージング前に1.0%トロピカミドおよび2.5%フェニレフリンまたは同等の薬剤を用いて対象の瞳孔を拡張させる。Helbら、Acta Ophthalmol.2010 Dec;88(8):842-9に記載のような、cSLOおよびSD-OCTの同時記録を可能にする機器(例えば、Spectralis HRA+OCT;Heidelberg Engineering,Heidelberg,Germany)を用いてイメージングを行う。複数の操作モードを使用し得る:白色光、無赤色光、青色光、近赤外およびOCT。改変眼底カメラを用いても同様の分析を行い得る。
【0297】
近-赤外線反射率(λ=800-1000nm)およびFAF(λ=280-550nmで励起、放射350-700nm)画像の取得を含み得る、当技術分野で公知のプロトコールに従いcSLO画像を得る。例えば870nmの照明波長、40,000A-スキャンの取得速度および1.8mmのスキャン深度で、同時SD-OCTイメージングを行う。網膜黄斑を通して、さらにまたは、RPDの場合は網膜黄斑の血管アーケードに近接して、各眼あたり複数のSD-OCTスキャンを行う。他のOCTイメージング、例えば、時間ドメインおよび掃引ドメインなども使用し得る。必要に応じてフルオレセイン血管造影(λ=488nm、放射500-700nm、10%フルオレセイン色素)を行う。眼底カメラ(例えばFF450 Visupac ZK5;Carl Zeiss Meditec AG,Jena,Germany)を用いてカラー眼底写真を得る。
【0298】
臨床転帰データの解釈から、もしあればさらなる処置についての判断に関する情報が得られる。実例的データ分析には、黄斑キューブ(cube)分析および5ラインラスターが含まれる。」(【0292】?【0298】)

(ク)「(実施例7):薬剤に対する失明性疾患対象反応の検出および/または予測
(…中略…)
(実施例8):免疫細胞を標識する全身性ICG投与後の、インビボでのラットの眼のDNIRA
(…中略…)
実施例9:RPDの臨床インビボイメージングおよび拡散トリックリング(diffuse trickling)AMD:
(…後略…)」(【0298】?【0328】)

ウ.判断
発明の詳細な説明には、失明性疾患に対して有効である薬物の探索を含め、失明性疾患の診断、処置または予防に有用である方法に関して(摘記(ア))、乾性AMDの処置または予防を必要とする対象に有効量の式Iの化合物または医薬的に許容可能なその塩(以下、「式Iの化合物または医薬的に許容可能なその塩」をまとめて「式Iの化合物」という。)を投与することを含む方法が記載され(摘記(イ))、そのための有効量、投与方法についてはある程度記載がされているものの(摘記(エ))、それだけでは、本願補正発明の式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」という用途において実際に有用性があるか否かを知ることができないことは、上記ア.で述べたとおりである。
そして、発明の詳細な説明に、上記有用性を裏付ける薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載があるかについて検討すると、発明の詳細な説明の実施例5、6には、乾性AMDを発症しているヒト対象について、12週間にわたり1日1回、2x300mg経口用量でビンダリットを投与すること、或いは、ビヒクル含有ビンダリットの硝子体内注射を行うこと、及び、それを評価する方法について記載されているから(摘記(カ)、(キ))、発明の詳細な説明には、ビンダリット、すなわち、式Iの化合物(摘記(ウ))を乾性AMDの患者に投与して、それを評価する方法については記載されているといえる。
しかしながら、上記評価方法を実際に行ったことについては記載されておらず、さらに、その評価の結果、式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させる」ことができたか否かについては、全く記載されていない。
そうすると、上記実施例5、6は、式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があることを裏付ける薬理データであるとはいえず、また、上記有用性を裏付ける薬理データと同視すべき程度の記載であるともいえない。
そして、上記実施例5、6以外の実施例は、「(実施例1):RPE毒素、NaIO_(3)の全身注射は、AMDおよび/またはRPDと類似の複雑なFAFのパターンを誘導する、(実施例2):全身性ICG投与後のラットの眼のDNIRAによって、インビボで網膜色素上皮(RPE)層が特定される、(実施例3):失明性疾患の処置のための化合物の探索、(実施例4):失明性疾患に対する化合物の活性の評価、(実施例7):薬剤に対する失明性疾患対象反応の検出および/または予測、(実施例8):免疫細胞を標識する全身性ICG投与後の、インビボでのラットの眼のDNIRA、(実施例9):RPDの臨床インビボイメージングおよび拡散トリックリング(diffuse trickling)AMD」であって(摘記(オ)、(ク))、式Iの化合物とは何ら関係のない実施例であるから、これらの実施例は、式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があることを裏付ける薬理データではなく、また、上記有用性を裏付ける薬理データと同視すべき程度の記載でもない。
また、その他の発明の詳細な説明全体の記載を検討しても、式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があることを裏付ける薬理データは記載されておらず、また、上記有用性を裏付ける薬理データと同視すべき程度の記載もない。
以上によれば、発明の詳細な説明には、上記有用性を裏付ける薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載はないから、発明の詳細な説明の記載は、式Iの化合物の「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に関する本願補正発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分なものではない。

エ.まとめ
したがって、この出願の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)特許法第36条第6項第1号について
ア.はじめに
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号に規定する要件(いわゆる、サポート要件)に適合するか否かは、「特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」とされるから、この観点に立って検討する。

イ.判断
発明の詳細な説明には、乾性AMDの処置又は予防を必要とする対象に有効量の式Iの化合物を投与することを含む、乾性AMDを処置又は予防するための方法を提供すると記載されており(摘記(イ)、(ウ))、また、本願補正発明の発明特定事項からみて、本願補正発明の解決しようとする課題は、「式Iの化合物の硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」の提供であるといえる。
しかしながら、上記(2)ウ.で述べたとおり、発明の詳細な説明には、式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があることを裏付ける薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がされていないから、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できるとはいえない。
また、発明の詳細な説明に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載がなくとも、当業者であれば、「式Iの化合物の硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」ができ、上記課題を解決できると認識できる技術常識が出願時に存在していたものでもない。
そうすると、発明の詳細な説明には、本願補正発明の解決しようとする課題を解決できると当業者が認識できるような記載はされておらず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし上記課題を解決できると認識できるともいえないから、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

ウ.まとめ
したがって、本願補正発明の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成28年8月30日の意見書において、以下の点を挙げて、発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものであり、また、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものであると主張している。

「本願実施例5に記載されているように、本願の乾性黄斑変性(AMD)動物モデル(実施例1-2)における評価に基づいて、ビンダリットの硝子体内注入は乾性AMD患者の治療に用いられます。乾性AMDの進行速度を低下させることおよび地図状萎縮の拡大速度を低下させることを含む、乾性AMDの治療におけるビンダリットの驚くべき効果の証拠として、出願人は本発明の発明者であるボイド医師による実験データ(米国宣誓書(甲第1号証))を提出します。

当該実験データから明らかなように、ビンダリットの硝子体内注入による単剤治療は、乾性AMDの後の失明合併症及び疾患進行の指標である地図状萎縮のパッチの成長(拡大)を驚くほど著しく低下させました。実験データの図A及びB両方のTime 1(左パネル)において、地図状萎縮のパッチがラットの眼に確立されています。図Aは、本発明の動物モデルに存在するパッチの陰性コントロール(生理食塩水)による治療を示しています。図AのTime 2に示されているように、この生理食塩水により治療されたパッチは拡大しています(右パネルの矢印部分)。全く対照的に、図BのTime 2に示されているように、ビンダリットで治療されたパッチは拡大していません(右パネル(矢印はありません。))。これらのデータは図Cにまとめられています。眼にビンダリットが注入されたいずれの動物においても、地図状萎縮の拡大は示されませんでした。

本願発明に係る化合物の薬理効果は、実施例1及び2に記載の動物モデルを用い、実施例5及び6の方法を行うことによって容易に試験されうるものであり、それによって当業者は上述のデータを得ることができます。従って、発明の詳細な説明は当業者が本発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、また本発明は発明の詳細な説明に記載されたものであると思料します。」

しかしながら、上記データは、発明の詳細な説明に何らの記載もなく、また、この出願の出願時の技術常識に属する事項であったともいえないものであり、そのようなものが、この出願の出願後に提出されることによって、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4号第1号に規定する要件を満たす、とすること、及び、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たす、とすることは、いわゆる先願主義を採用する我が国の特許制度の趣旨に照らし許されないというべきである。
したがって、上記請求人の主張は、採用できない。

また、請求人は、平成29年3月29日付けで補正された請求の理由において、以下の点を挙げて、発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものであり、また、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものであると主張している。

「上述の補正により、請求項1及び6に記載の「乾性加齢性黄斑変性(AMD)」は、「網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより診断された」乾性加齢性黄斑変性(AMD)に限定された。当該補正は、本願の発明の詳細な説明に記載の事項を反映したものである。即ち当該補正は、本発明の化合物の用途、並びに乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させる方法において、網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより本発明の化合物の効果を具体的に評価することを請求項1及び6の記載に反映したものである。この方法は例えば、本願実施例1、2、8、並びに図3A、3B、3C、4A、4B、4C、5、6、7A、7B、8A、8B、8C、9A、9B、10に開示されている。網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することは、特に実施例1に詳細に説明されている。さらに、実施例1に開示された乾性黄斑変性(AMD)動物モデルにおける評価に基づいて、実施例5に記載されているように、当業者はビンダリットの硝子体内注入を乾性AMD患者の治療に用いることができると考える。
従って、上述の補正後の請求項に係る発明は、本願の発明の詳細な説明に当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されていると確信するものである。」

そこで、上記主張について検討すると、上記実施例1、2、8、並びに図3A、3B、3C、4A、4B、4C、5、6、7A、7B、8A、8B、8C、9A、9B、10に網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出する方法について記載されていても、自発蛍光構造を検出する方法と式Iの化合物が「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があるか否かについては何ら関係がないから、発明の詳細な説明に、上記自発蛍光構造を検出する方法が記載されていることに基づいて、式Iの化合物の「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があることを裏付ける薬理データが記載されているともそれと同視すべき程度の記載がされているともいえない。
そして、実施例1に動物モデルが記載され、実施例5に評価方法が記載されていてもそれにより、式Iの化合物の「硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用」に実際に有用性があることを裏付ける薬理データが記載されているとも、それと同視すべき程度の記載がされているともいえないことは、上記(2)ウ.で述べたとおりである。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものではなく、また、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、上記請求人の主張は、採用できない。

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、上記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明

1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたから、この出願の発明は、平成28年8月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】


(式中、R_(1)およびR_(2)のそれぞれは、独立にHまたはC_(1)-C_(6)アルキルであり、R_(3)は、HまたはC_(1)-C_(6)アルキルである。)
または医薬的に許容可能なその塩の硝子体内の乾性加齢性黄斑変性(AMD)の進行速度を低下させるための医薬の製造における使用。」

2.原査定の理由
原査定は、「この出願については、平成28年 5月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由2及び理由3によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、その「理由2及び理由3」は、上記通知書に記載された以下のとおりのものである。

「2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


(…中略…)
●理由2(実施可能要件)及び理由3(サポート要件)について

・請求項1-10
請求項1-10に係る発明は、式(I)の化合物の医薬用途に係るものとされている。
しかしながら、発明の詳細な説明には、当該医薬用途を裏付ける薬理試験については、実施例5,6(段落[0287]-[0298])にその試験方法に関する記載はあるものの、当該薬理試験の結果については、何ら具体的に開示されていない。
一方で、医薬化合物の分野においては、化合物の構造のみからその薬理作用を予測することは困難であることは技術常識であるところ、発明の詳細な説明には、式(I)の化合物の構造と、乾性加齢性黄斑変性における治療活性との関係について、技術的な根拠に基づく説明はなされていないし、また、当該化合物の乾性加齢性黄斑変性治療剤としての用途が出願時の技術常識から推認可能ともいえないから、当該化合物を該治療剤として使用できる程度に発明の詳細な説明が記載されているとはいえない。
したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が上記請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
また、上記のような発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮すると、この出願の発明の詳細な説明は、式(I)の化合物を乾性加齢性黄斑変性治療剤として提供するという発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。
したがって、上記請求項に係る発明は、発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。」

3.当審の判断
原査定の理由のとおり、発明の詳細な説明の記載は、本願発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分なものではないから、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、また、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。よって、この出願は、拒絶をすべきものである。
その理由は、以下のとおりである。

本願発明は、本願補正発明の「乾性加齢性黄斑変性(AMD)は、網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより診断された」との特定を有さない方法であるところ、本願発明が、「乾性加齢性黄斑変性(AMD)は、網膜色素上皮(RPE)組織における1つ以上の自発蛍光構造を検出することにより診断された」方法を含むことは明らかである。
そして、上記「第2 2.(2)」で述べたとおり、発明の詳細な説明の記載は、本願補正発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分なものではないから、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載は、本願発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分なものではなく、よって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない。
また、上記「第2 2.(3)」で述べたとおり、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、同様の理由により、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、よって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。

第4 むすび
以上のとおり、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではなく、また、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものでもないから、拒絶をすべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-23 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2015-509271(P2015-509271)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A61K)
P 1 8・ 537- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人深谷 良範  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 淺野 美奈
井上 千弥子
発明の名称 失明性疾患を処置および診断するための方法  
代理人 高岡 亮一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ