• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1336811
審判番号 不服2017-2831  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-27 
確定日 2018-01-24 
事件の表示 特願2013-546300「組み立て用のより摩擦の小さい表面と実装用のより摩擦の大きい表面とを備える実装マット」拒絶査定不服審判事件〔2012年6月28日国際公開、WO2012/088003、平成26年2月3日国内公表、特表2014-502688〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2011年12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年12月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成25年6月21日に国内書面が提出され、平成25年7月22日に明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成26年12月22日に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年11月9日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月17日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年10月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成29年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成29年3月21日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1ないし17に係る発明は、明細書の翻訳文、平成28年5月17日の手続補正書により補正された特許請求の範囲及び国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に取り付けるための実装マットであって、
公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に実装するのに適した無機繊維及び任意選択的にその他の無機材料を含む少なくとも1つの無機層であって、前記少なくとも1つの無機層が対向する側面を有し、該側面のそれぞれが主表面領域を画定する、少なくとも1つの無機層、
前記少なくとも1つの無機層の前記側面の少なくとも一方の前記主表面領域の少なくとも一部に配置されることによって、前記無機材料の静止摩擦係数よりも高い静止摩擦係数を示す、より摩擦の大きな領域を画定する摩擦誘発性無機材料、及び
前記より摩擦の大きな領域の少なくとも一部を覆い、前記実装マットの露出表面領域を画定するように配置され、有機材料を含む、より摩擦の小さい層であって、前記露出表面領域が、前記より摩擦の大きな領域の静止摩擦係数よりも低い静止摩擦係数を示す、より摩擦の小さい層、を備え、
前記より摩擦の小さい層は、前記実装マットが前記公害防止エレメントを前記公害防止装置の前記ハウジング内に実装するために使用された後、前記より摩擦の大きな領域の実質的な部分を覆わなくなるように動作適合されている、実装マット。」

第3 引用文献に記載された発明

1 引用文献1の記載事項

原査定に引用され、本願の優先日の前に頒布された特表2009-508044号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)「【0025】
図1は、本発明にしたがう触媒コンバータの典型的な実施例を図解する側面図である。この図は、触媒コンバータの主要構成要素の構造の理解を容易にするために、その断面図を示している。図2は、図1の線分A-Aに沿った触媒コンバータの横断面図である。これらの図によると次の通りであり、触媒コンバータ10は、金属ケーシング4、金属ケーシング4内部に配置されたモノリシックの固体触媒担体1、及び金属ケーシング4と触媒担体1との間に配置された、本発明にしたがう触媒担体保持材料2を含む。本明細書の以下において非常に詳細に記載されるように、触媒担体保持材料2は、所定された厚さを有するマットの形態の好適な繊維材料を含み、及び触媒担体側のマットの内周表面上に、及び/又は金属ケーシング側の外周表面(表面領域)上に無機コロイド粒子を含む摩擦層を有する。図の中で、触媒担体保持材料(マット)2の表面領域の図3の横断面図から明らかなように、無機コロイド粒子5を含む摩擦層3は、金属ケーシング4側のマットの外周表面上に選択的に形成される。円錐形状の排気ガス入口12及び排気ガス出口13が、触媒コンバータ10に取り付けられている。」(段落【0025】。下線は、理解の一助のために当審で付した。以下同様。)

(2)「【0033】
触媒担体保持材料は、繊維材料、好ましくは無機繊維を含む。触媒担体保持材料を形成するために好ましい無機繊維には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、及びホウ素繊維が挙げられるが、必要であれば他の無機繊維が使用されてもよい。それらの無機繊維は、個々に、又はそれらの2以上の種類の組み合わせにより使用されてもよく、及び複合繊維の形態又は他の形態により使用されてもよい。それらの無機繊維の中で特に好ましいのは、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びアルミナ-シリカ繊維のようなセラミック繊維である。それらのセラミック繊維は、個々に、又はそれらの2以上の種類の組み合わせにより使用されてもよく、及び複合繊維の形態又は他の形態により使用されてもよい。他の無機材料が、添加材として、上記のセラミック繊維又は他の無機繊維と共に使用されてもよい。好適な添加材の例には、ジルコニア、マグネシア、カルシア、酸化クロム、酸化イットリウム、及び酸化ランタンが挙げられる。それらの添加材は、通常、粉末又は微粒子の形態で使用され、及び個々に又はそれらの2以上の混合物として使用されてもよい。」(段落【0033】)

(3)「【0039】
図3に概略的に示されたように、本発明にしたがう触媒担体保持材料は、所定の厚さを有する繊維材料のマット2を含み、これはケーシング4とその中に装填された触媒担体1との間に挿入され、マットは触媒担体1の外周表面の周りに巻かれる。このマット形状の触媒担体保持材料2には、ケーシング4との摩擦係数を増加することができる無機コロイド粒子5が選択的に配置され、及び摩擦層3がケーシング4側の保持材料の外周表面2aの中に形成され、特にこの表面領域に独占的に形成される。更に、必要であれば、無機コロイド粒子を含む摩擦層はまた、触媒担体1側の触媒担体保持材料2の内周表面2bの上に配置されてもよい。」(段落【0039】)

(4)「【0016】
そのため、保持材料の圧縮量を増やすことにより保持材料により生成された圧力を増やすこと、又は保持材料の摩擦係数を増加することは、汚染防止要素の保持力を高めるために用いることができる2つの一般的な手段である。本発明にしたがって、特有の無機コロイド粒子を含む摩擦層が、保持材料の表面上に、好ましくはマットの形態で形成される。その結果、この摩擦層の存在のために、保持材料の表面は、保持材料を構成するセラミック繊維又は他の無機繊維の表面のそれより高い摩擦係数を示す表面形状(高度の電気的、磁気的、及び/又は化学的相互作用を有する分子表面状態)を付与されることができる。・・・後略・・・」(段落【0016】)

(5)上記(1)ないし(4)及び図面の記載より分かること

ア 上記(1)及び図3の記載によれば、触媒担体保持材料2は、マットの形態の繊維材料と、無機コロイド粒子5を含む摩擦層3を含むことが分かる。

イ 上記(1)、(2)、図1及び図3の記載によれば、固体触媒担体1を触媒コンバータ10の金属ケーシング4内部に保持するのに適した繊維材料は、無機繊維であり、該繊維材料には、必要に応じて使用される、添加材としての他の無機材料も含むことが分かる。

ウ 上記(1)、(3),(4)、図3の記載によれば、マットの形態の繊維材料は、対向する外周表面2a及び内周表面2bを有し、外周表面2aに形成された、無機コロイド粒子5を含む摩擦層3の摩擦係数が前記繊維材料の摩擦係数よりも高いことが分かる。

2 引用発明1

上記(1)ないし(5)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

<引用発明1>

「固体触媒担体1を触媒コンバータ10の金属ケーシング4内部に保持するための触媒担体保持材料2であって、
固体触媒担体1を触媒コンバータ10の金属ケーシング4内部に保持するのに適した無機繊維及び必要に応じて使用される添加材を含むマットの形態の繊維材料であって、対向する外周表面2a及び内周表面2bを有する繊維材料、及び
繊維材料の外周表面2aに形成されることによって、無機コロイド粒子5を含み、繊維材料の摩擦係数よりも高い摩擦係数である摩擦層3を、備える触媒担体保持材料2。」

3 引用文献2の記載事項

原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された特開平11-280459号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、内燃機関などの排ガス浄化システムとして使用される触媒コンバーターや熱交換体の製造方法及び同方法に使用される部材に関し、更に詳しくは、これら触媒コンバーターや熱交換体を製造するに際して、セラミック製ハニカム構造体を金属製缶体に組み込むときに、低摩擦性保持部材を該構造体に巻き付て、更に、この保持部材を圧縮して該金属製缶体に組み込む方法、及び同方法に使用する低摩擦性の保持部材に関する。」(段落【0001】)

(2)「・・・前略・・・押し込み方式の場合には、溶接作業が必要でなく、その点では優れた方法と言えるが、保持部材として使用されるセラミック製の繊維マットと金属製缶体との摩擦が大きい為に、押し込み用ジグを使用して押し込んではいるが、現時点では触媒コンバーターとして実装中に繰り返し加えられる排ガスからの攻撃に耐え得るような均一な密度で保持部材を金属缶体に収納することが出来ないのが現状である。例えば、特開平7-777036号公報に開示の押し込み構造のセラミックスハニカム触媒コンバータの製造に於いては、リテナーリングを用いることが前提となって居る。これは、高い面圧が発生するような条件、即ち、マットを高圧縮し、摩擦抵抗が大きくなるような条件では、押し込みが不可能なために、リテナーリングを利用し、マットだけではハニカム体の保持が出来ないのを補い、ハニカム体の軸のずれを防止している。しかしながら、軸方向のずれ防止対策として、リテナーリングを利用したとしても、ハニカム端面の一部を塞ぐこととなり、排ガス浄化システムとしての性能の一部を失うこととなる。つまり、マットがハニカム端面にはみ出した場合と同様の悪影響が生ずることとなる。従って、リテナーリング等の軸方向のずれ防止対策を施すこと無く、マットのみで充分ハニカム体を保持し得る面圧を発生させる条件下での押し込みが可能となる押し込み方法の出現が望まれているのが現状である。」(段落【0002】)

(3)「【0005】
【発明の実施の形態】 本願発明に係るセラミック製ハニカム構造体を同構造体を保持する保持部材と共に該構造体の保護構造物である金属製缶体に押し込み方式により組み込む方法においては、該保持部材として該部材の金属製缶体に接する側の表面に低摩擦性層を形成した保持部材を使用することを特徴とする。低摩擦性層としては、表面の静止摩擦係数がJISK7125により測定したとき0.15以下、好ましくは、0.10以下の低摩擦性の層が好ましい。静止摩擦係数としては、理想的には零であることが好ましいことは当然であるが、材料的な制約から通常は0.01以下のものを入手することは困難である。上記の様な静止摩擦係数を有する低摩擦性層は通常セラミック製ハニカム構造体の保持部材として一般に使用されているセラミック繊維マット上に形成される。低摩擦性層は該マット上に接着材層を介し、または介さずに設けることが出来る。低摩擦性層は、紙、合成紙、又はこれらの材料の上に合成樹脂又は油等の潤滑性を有するものをコーティング又は浸漬により処理したものを上記セラミック繊維の上に直接又は接着材層を介して設けても良く、また、シリコン樹脂等の合成樹脂と所望によりシリカ等の添加剤と共に直接上記セラミック繊維マットの上にコーティングするか、あるいはセラミック繊維マットをこれらの材料を含む溶液に浸漬して設けてもよい。・・・後略・・・」(段落【0005】)

(4)「【0007】 上記のようなセラミック繊維マットの上に形成される低摩擦性層としては、JISK7125で試験したとき、0.15以下の静止摩擦係数を有するものが好ましい。特に、0.1以下の静止摩擦係数を有するものがより好適に使用される。低摩擦性層を形成するのに使用する材料としては上記の段落番号0005の欄に記載した材料で有れば、何れも好適に使用される。低摩擦性層を形成する材料は、本発明に係る部材の実使用時には、500℃以上の温度の排ガスに曝されるので、燃焼により消失してしまうので、消失後に保持部材と金属製缶体との間にギャップが生じることのない様に充分な配慮が必要である。・・・後略・・・」(段落【0007】)

(5)上記(3)及び(4)から分かること

上記(3)及び(4)の記載によれば、低摩擦性層は、セラミック繊維マットの金属製缶体に接する側の表面に形成され、保持部材の露出表面を構成し、また、セラミック製ハニカム構造体を触媒コンバータの金属製缶体に組み込むために利用され、その後の触媒コンバータの実使用時に、排ガスの熱による燃焼により消失することが分かる。

4 引用発明2

上記(1)、(3)ないし(5)を総合すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

<引用発明2>

「セラミック製ハニカム構造体を触媒コンバータの金属製缶体に組み込むための保持部材であって、
セラミック繊維マット、及び
前記セラミック繊維マットの金属製缶体に接する側の表面に形成され、保持部材の露出表面を構成し、紙等である低摩擦性層であって、前記露出表面が、上記セラミック繊維マットの金属製缶体に接する側の表面の静止摩擦係数よりも低い静止摩擦係数である、低摩擦性層を備え、
低摩擦性層は、セラミック製ハニカム構造体を触媒コンバータの金属製缶体に組み込むために利用され、その後の触媒コンバータの実使用時に、排ガスの熱による燃焼により消失する、保持部材。」

第4 対比・判断

本願発明と引用発明1とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明1における「固体触媒担体1」は、本願発明における「公害防止エレメント」に相当し、以下同様に、「触媒コンバータ10」は「公害防止装置」に、「金属ケーシング4」は「ハウジング」に、「内部」は「内」に、「保持する」は「取り付ける」に、「触媒担体保持材料2」は「実装マット」に、「必要に応じて使用される」は「任意選択的に」に、「添加材」は「その他の無機材料」に、「繊維材料」は「少なくとも1つの無機層」に、「外周表面2a」及び「内周表面2b」は「側面」に、「形成される」は「配置される」に、「摩擦層3」は「より摩擦の大きな領域」に、「無機コロイド粒子5」は「摩擦誘発性無機材料」に、それぞれ相当する。
引用発明1における「摩擦係数」は、触媒担体保持材料2を用いて、固体触媒担体1を触媒コンバータ10の金属ケーシング4内部に保持する際の摩擦係数であるから、本願発明における「静止摩擦係数」に相当し、引用発明1における「繊維材料の摩擦係数よりも高い摩擦係数である」は、本願発明における「無機材料の静止摩擦係数よりも高い静止摩擦係数を示す」に相当する。
そうすると、引用発明1における「無機コロイド粒子5を含み、繊維材料の摩擦係数よりも高い摩擦係数である摩擦層3を、備える」は、本願発明における「無機材料の静止摩擦係数よりも高い静止摩擦係数を示す、より摩擦の大きな領域を画定する摩擦誘発性無機材料、を備えた」に相当する。
また、引用発明1における「外周表面2a」及び「内周表面2b」は、それぞれが上記繊維材料の最も大きな表面を構成するものであるから、「それぞれが主表面領域を画定する」といえ、引用発明1における「繊維材料の外周表面2aに形成される」は、本願発明における「少なくとも1つの無機層の」「側面の少なくとも一方の」「主表面領域の少なくとも一部に配置される」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明1とは、
「公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に取り付けるための実装マットであって、
公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に実装するのに適した無機繊維及び任意選択的にその他の無機材料を含む少なくとも1つの無機層であって、前記少なくとも1つの無機層が対向する側面を有し、該側面のそれぞれが主表面領域を画定する、少なくとも1つの無機層、及び
前記少なくとも1つの無機層の前記側面の少なくとも一方の前記主表面領域の少なくとも一部に配置されることによって、前記無機材料の静止摩擦係数よりも高い静止摩擦係数を示す、より摩擦の大きな領域を画定する摩擦誘発性無機材料、を備えた、実装マット。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明においては、「より摩擦の大きな領域の少なくとも一部を覆い、実装マットの露出表面領域を画定するように配置され、有機材料を含む、より摩擦の小さい層であって、前記露出表面領域が、前記より摩擦の大きな領域の静止摩擦係数よりも低い静止摩擦係数を示す、より摩擦の小さい層、を備え、前記より摩擦の小さい層は、前記実装マットが公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に実装するために使用された後、前記より摩擦の大きな領域の実質的な部分を覆わなくなるように動作適合されている」のに対し、
引用発明1は、そのような構成を有していない点(以下、「相違点」という。)。

ここで、上記相違点について検討する。

本願発明と引用発明2とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明2における「セラミック製ハニカム構造体」は、本願発明における「公害防止エレメント」に相当し、以下同様に、「触媒コンバータ」は「公害防止装置」に、「金属製缶体に組み込む」ことは「ハウジング内に取り付ける」ことに、「保持部材」は「実装マット」に、「セラミック繊維マット」は「少なくとも1つの無機層」に、「露出表面」は「露出表面領域」に、「紙等である」は「有機材料を含む」に、「低摩擦性層」は「より摩擦の小さい層」に、「組み込むために利用され、その後の触媒コンバータの実使用時に」は「実装するために使用された後」に、それぞれ、相当する。
引用発明2における「セラミック繊維マット」は、マットであることから、本願発明における「対向する側面」に相当する面を有することは明らかであり、該「対向する側面」に相当する面は、それぞれが最も大きな表面を構成するものであるから、「それぞれが主表面領域を画定する」といえる。
引用発明2における「セラミック繊維マットの金属製缶体に接する側の表面」は、「低摩擦性層」が設けられていることから、本願発明における「より摩擦の大きな領域」とは、「無機層の主表面領域」という点で共通し、よって、引用発明2における「セラミック繊維マットの金属製缶体に接する側の表面に形成され」は、本願発明における「より摩擦の大きな領域の少なくとも一部を覆い」と、「無機層の主表面領域の少なくとも一部を覆い」という点で共通し、引用発明2における「排ガスの熱による燃焼により消失する」は、本願発明における「より摩擦の大きな領域の実質的な部分を覆わなくなるように動作適合されている」と、「無機層の主表面領域の実質的な部分を覆わなくなるように動作適合されている」という点で共通している。
また、引用発明2における「露出表面を構成し」は、本願発明における「露出表面領域を画定するように配置され、」に相当する。
してみると、引用発明2を本願発明の用語を用いて表現すると、以下のようになる。

<引用発明2>

「公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に取り付けるための実装マットにおいて、
対向する側面を有し、該側面のそれぞれが主表面領域を画定する、少なくとも1つの無機層、及び
無機層の主表面領域の少なくとも一部を覆い、実装マットの露出表面領域を画定するように配置され、有機材料を含む、より摩擦の小さい層であって、前記露出表面領域が、前記無機層の主表面領域の静止摩擦係数よりも低い静止摩擦係数を示す、より摩擦の小さい層、を備え、前記より摩擦の小さい層は、前記実装マットが公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に実装するために使用された後、無機層の主表面領域の実質的な部分を覆わなくなるように動作適合されている、実装マット。」

引用発明1及び引用発明2は、内燃機関の公害防止装置という同一の技術分野に属するものであり、公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に取り付けるという機能も共通している。
また、機械装置においては、一般的に、組立作業の効率化及び高精度化は普遍的かつ継続的な課題であると解されるところ、内燃機関の公害防止装置の技術分野に属する引用発明2が、上記3(2)で示されるように、公害防止エレメントと公害防止装置のハウジングとの摩擦が大きい場合に、公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に取り付けるのが難しいということを課題にしていることからみて、公害防止エレメントを公害防止装置のハウジング内に組み込む組立作業の効率化及び高精度化は、本願の優先日前に公知の課題である。
引用発明1は、上記2(4)で示されるように、公害防止装置のハウジング内における公害防止エレメントの保持力を高めるために、実装マットの摩擦係数を高めるものであり、公害防止エレメントを公害防止装置のハウジングに組み込むものであるから、引用発明2が解決しようとする上記課題と同様の課題を内在しているものと認められる。
そして、引用発明1において、内在している上記課題を解決するために、引用発明2を適用し、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

また、本願発明は、全体としてみても、引用発明1及び引用発明2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

以上のとおり、本件発明は、引用発明1及び引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび

上記第2ないし第5で述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-22 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2013-546300(P2013-546300)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 和彦稲村 正義  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 三島木 英宏
八木 誠
発明の名称 組み立て用のより摩擦の小さい表面と実装用のより摩擦の大きい表面とを備える実装マット  
代理人 阿部 寛  
代理人 戸津 洋介  
代理人 柳 康樹  
代理人 池田 成人  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 酒巻 順一郎  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ