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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1336878
審判番号 不服2016-16984  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-14 
確定日 2018-02-26 
事件の表示 特願2014-528757「搬入方法、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/100203、平成27年 2月 5日国内公表、特表2015-504236、請求項の数(41)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年(2012年)12月28日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年12月29日 米国、2011年12月29日 米国、2012年12月26日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成27年8月7日付けで手続補正がされ、平成28年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年5月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年9月7日付け(送達 同年同月13日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、平成29年8月25日付けで拒絶理由が通知され(以下「当審拒絶理由1」という。)、同年10月12日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年12月6日付けで再度拒絶理由が通知され(以下「当審拒絶理由2」という。)、平成30年1月22日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし41に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明41」という。)は、平成30年1月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし41に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1、8、12、14、17、21、29、35、37は以下のとおりである。
「【請求項1】
薄板状の物体を、ホルダを有するステージ上に搬入する搬入方法であって、
前記ステージの上方にて、第1支持部材により前記物体を上方から非接触で支持しつつ前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材により前記物体を下方から支持することと、
前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材をそれぞれ下降させ、前記第1、第2支持部材による前記物体の支持を解除することと、を含む搬入方法。」
「【請求項8】
薄板状の物体を、ホルダを有するステージ上に搬入する搬入方法であって、
前記ステージの上方で、第1支持部材によって上方から非接触で支持される前記物体を、前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材によって接触支持することと、
前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材と前記ホルダとを相対移動することと、
前記載置された物体を前記ホルダで保持することと、を含む搬入方法。」
「【請求項12】
薄板状の物体を、ホルダを有するステージ上に搬入する搬入方法であって、
第1支持部材によって上方から非接触で支持される物体の変形が制御されるように、前記第1支持部材によって、前記非接触支持する物体の少なくとも一部を鉛直方向に変位させることと、
前記変形が制御された物体が前記ホルダで保持されるように、前記第1支持部材と前記ホルダとを鉛直方向に相対移動することと、を含み、
前記物体は、前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材によって下方から接触支持され、
前記第1支持部材によって前記変形が制御された物体は、前記第1支持部材による前記物体の支持状態を維持したまま行われる前記第2支持部材と前記ホルダとの相対移動によって前記ホルダで保持される搬入方法。」
「【請求項14】
薄板状の物体を、ホルダを有するステージ上に搬入する搬入方法であって、
前記ステージの上方にて第1支持部材によって上方から非接触で支持される物体の下面が前記ホルダと接触するように、前記物体に対する、前記第1支持部材による非接触支持状態と、前記第1支持部材とは独立して上下動可能で前記物体を下方から支持可能な第2支持部材による支持状態と、を維持しつつ、前記第1支持部材と前記第2支持部材と前記ホルダとを相対移動することと、
前記下面が前記ホルダと接触した物体の少なくとも一部に対して、前記第1支持部材によって上方から下向きの力を与えることと、
前記下向きの力が与えられた物体を前記ホルダで保持することと、を含む搬入方法。」
「【請求項17】
光学系を介して照明光で基板を露光する露光方法であって、
前記光学系から離れて設定されるローディングポジションに配置される、前記基板を保持するホルダを有するステージの上方で、前記基板をその表面側から第1支持部材によって非接触で支持することと、
前記第1支持部材によって非接触で支持される基板を、前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材によって裏面側から接触支持することと、
前記基板を前記ステージに搬入するために、前記第1支持部材による前記基板の支持状態を維持しつつ、前記第1支持部材と、前記基板を支持した前記第2支持部材と、前記ホルダと、を相対移動することと、
前記基板を非接触で支持する第1支持部材によって、前記基板の変形を制御することと、を含む露光方法。」
「【請求項21】
光学系を介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持するホルダを有するステージと、
前記基板をその表面側から非接触で支持可能な第1支持部材を有し、前記光学系から離れて設定されるローディングポジションに前記基板を搬送する搬送系と、
前記第1支持部材によって非接触に支持される基板をその裏面側から支持可能で前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材と、
前記第1、第2支持部材を上下動する駆動装置と、
前記第1支持部材を含む前記搬送系の一部、及び前記駆動装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記ローディングポジションに配置される前記ステージの上方で、前記第1支持部材によって上方から非接触で支持される前記基板が下方から前記第2支持部材で支持されるとともに、前記基板が前記ホルダに載置されるように、前記制御装置によって、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持した状態で、前記第1、第2支持部材がそれぞれ下降され、前記第1、第2支持部材による前記基板の支持が解除される露光装置。」
「【請求項29】
光学系を介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持するホルダを有するステージと、
前記基板をその表面側から非接触で支持する第1支持部材を有する搬送系と、
前記基板をその裏面側から接触支持する、前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材と、
前記第1、第2支持部材を上下動する駆動装置と、
前記ステージ、前記第1支持部材を含む前記搬送系の一部、及び前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記基板が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記基板の支持状態を維持した状態で、少なくとも鉛直方向に関して前記第1、第2支持部材と前記ホルダとを相対移動する露光装置。」
「【請求項35】
光学系を介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持するホルダを有する基板ステージと、
前記基板をその表面側からかつ上方から負圧による上向きの力を利用して非接触で支持する第1支持部材を有する搬送系と、
前記第1支持部材とは独立して上下動可能で前記第1支持部材によって支持される前記基板を下方から支持可能な第2支持部材と、
前記第1、第2支持部材を上下動する駆動装置と、
前記ステージ、前記第1支持部材を含む前記搬送系の一部、及び前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1支持部材及び前記第2支持部材によって支持される基板が前記ホルダに載置されるように、前記基板に対する前記第1支持部材及び前記第2支持部材による支持状態を維持した状態で、少なくとも鉛直方向に関して前記第1支持部材と前記第2支持部材と前記ホルダとを相対移動するとともに、前記基板の少なくとも一部に対して、前記第1支持部材によって上方から下向きの力が与えられるように、前記第1支持部材を制御する露光装置。」
「【請求項37】
光学系を介して照明光で基板を露光する露光装置であって、
前記基板を保持するホルダを有するステージと、
前記基板をその表面側から非接触で支持可能な第1支持部材を有し、前記光学系から離れて設定されるローディングポジションに前記基板を搬送する搬送系と、
前記第1支持部材によって非接触で支持される基板を、その裏面側から支持可能で前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材と、
前記第1、第2支持部材を上下動する駆動装置と、
前記ステージ、前記第1支持部材を含む前記搬送系の一部、及び前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ローディングポジションに配置される前記ステージに前記基板が搬入されるように、前記第1支持部材による前記基板の支持状態を維持した状態で、前記第1支持部材と、前記基板を支持した前記第2支持部材と、前記ホルダと、を相対移動するとともに、前記基板の変形を制御するために前記第1支持部材を制御する露光装置。」

また、本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9ないし11は、本願発明8を減縮した発明であり、本願発明13は、本願発明12を減縮した発明であり、本願発明15及び16は、本願発明1ないし14を減縮した発明であり、本願発明18ないし20は、本願発明17を減縮した発明であり、本願発明22ないし28は、本願発明21を減縮した発明であり、本願発明30ないし34は、本願発明29を減縮した発明であり、本願発明36は、本願発明35を減縮した発明であり、本願発明38は、本願発明37を減縮した発明であり、本願発明39は、本願発明29ないし38を減縮した発明であり、本願発明40及び41は、本願発明21ないし39を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由1に引用された引用文献1(特開2011-3891号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)引用文献1には、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、物体交換方法、露光方法、搬送システム及び露光装置、並びにデバイス製造方法に係り、特に、保持部材上で薄板状の物体を交換する交換方法、該交換方法を利用する露光方法、薄板状の物体を搬送する搬送システム及び該搬送システムを備える露光装置、並びに前記露光方法又は前記露光装置を用いるデバイス製造方法に関する。」

イ 「【0026】
《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図1?図22(C)に基づいて説明する。
(・・・途中省略・・・)
【0038】
チャックユニット102は、図3に示されるように、メインフレームBDの下面に固定された駆動部104と、駆動部104によって上下方向(Z軸方向)に駆動される軸106と、軸106の下端に固定された保持部、例えば円盤状のベルヌーイ・チャック(又はフロートチャックとも呼ばれる)108と、を備えている。
【0039】
図2の平面図に示されるように、ベルヌーイ・チャック108の外周3箇所には、細長い板状の延設部110a、110b、110cが設けられている。延設部110cには、その先端にギャップセンサ112が取り付けられ、ギャップセンサ112の内側には、例えばCCD等の撮像素子114cが取り付けられている。また、延設部110a、110bの先端部近傍には、CCD等の撮像素子114a、114bがそれぞれ取り付けられている。
【0040】
ベルヌーイ・チャックは、周知の如く、ベルヌーイ効果を利用し、吹き出される流体(例えば空気)の流速を局所的に大きくし、対象物を非接触で固定(吸着)するチャックである。ここで、ベルヌーイ効果とは、流体の圧力は流速が増すにつれ減少するというベルヌーイの定理(原理)が、流体機械などに及ぼす効果を言う。ベルヌーイ・チャックでは、吸着(固定)対象物の重さ、及びチャックから吹き出される流体の流速で保持状態(吸着/浮遊状態)が決まる。すなわち、対象物の大きさが既知の場合、チャックから吹き出される流体の流速に応じて、保持の際のチャックと保持対象物との隙間の寸法が定まる。本実施形態では、ベルヌーイ・チャック108は、ウエハWの吸着(固定/保持)に用いられる。」

ウ 「【0042】
延設部110aは、ベルヌーイ・チャック108の中心から見て-Y方向に延びている。延設部110aには、ウエハW中心とベルヌーイ・チャック108の中心とがほぼ一致した状態で、ウエハWのノッチ(V字の切り欠き、不図示)に対向する位置に撮像素子114aが取り付けられている。また、残りの撮像素子114b、114cは、ウエハW中心とベルヌーイ・チャックの中心とがほぼ一致した状態で、ウエハWの外周の一部に対向する延設部110b、110c上の位置にそれぞれ取り付けられている。
【0043】
撮像素子114a?114cの撮像信号は、信号処理系116(図13参照)に送られ、信号処理系116は、例えば米国特許第6,624,433号明細書などに開示されている手法により、そこで、ウエハの切り欠き(ノッチなと)及びそれ以外の周縁部を検出して、ウエハWのX軸方向、Y軸方向の位置ずれと回転(θz回転)誤差とを求める。そして、それらの位置ずれと回転誤差との情報は、主制御装置20に供給される(図13参照)。」

エ 「【0072】
微動ステージWFS1の本体部81(より正確には、後述するカバーガラス)の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダWH(図4(A)及び図4(B)では不図示、図22(A)等参照)が設けられている。本実施形態では、例えば環状の凸部(リム部)内に、ウエハWを支持する複数の支持部(ピン部材)が形成される、いわゆるピンチャック方式のウエハホルダが用いられ、一面(表面)がウエハ載置面となるウエハホルダの他面(裏面)側に後述するグレーティングRGなどが設けられる。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFS1と一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。前者では、グレーティングRGは微動ステージWFS1の裏面側に設けられることになる。」

オ 「【0123】
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に保持された一方の微動ステージ(ここでは、一例としてWFS1であるものとする)に保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、そのウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。このステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、主制御装置20により、事前に行われた、ウエハアライメントの結果(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)により得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を第2基準マークを基準とする座標に変換した情報)、及びレチクルアライメントの結果等に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ微動ステージWFS1が移動されるショット間移動動作と、レチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で各ショット領域に転写する走査露光動作と、を繰り返すことにより、行われる。なお、上記の露光動作は、先端レンズ191とウエハWとの間に液体Lqを保持した状態で、すなわち液浸露光により行われる。また、+Y側に位置するショット領域から-Y側に位置するショット領域の順で行われる。なお、EGAについては、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。」

カ 「【0127】
上述した一方の微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光と並行して、他方の微動ステージWFS2上では、ウエハ交換、ウエハアライメント等が行われる。ウエハ交換は、微動ステージWFS2を支持する粗動ステージWCS2が、計測ステーション300の近傍の所定のウエハ交換位置(前述のチャックユニット102の下方の位置)にあるときに、チャックユニット102及びウエハ搬送アーム118によって、露光済みのウエハWが微動ステージWFS2上からアンロードされるとともに、新たなウエハWが微動ステージWFS2上へロードされることで行われる。」

キ 「【0128】
ここで、ウエハ交換について、詳述する。なお、ウエハホルダによるウエハの吸着及びその吸着の解除については、後に詳しく説明するものとし、ここでは主にウエハ交換時のチャックユニット102の動作について説明する。
【0129】
ウエハ交換が開始される前提として、露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS2が、チャックユニット102の下方のウエハ交換位置にあり、粗動ステージWCS2に支持されているものとする(図3参照)。
【0130】
まず、主制御装置20は、チャックユニット102の駆動部104を制御し、ベルヌーイ・チャック108を下方に駆動する(図14(A)参照)。この駆動中、主制御装置20は、ギャップセンサ112の計測値を、モニタする。そして、ギャップセンサ112の計測値が所定の値、例えば数μm程度になると、主制御装置20は、ベルヌーイ・チャック108の下降駆動を停止するとともに、その数μmのギャップを維持するようにベルヌーイ・チャック108から吹き出される空気の流速を調整する。これにより、数μm程度のクリアランスを介して、ウエハWがベルヌーイ・チャック108により上方から非接触で吸着保持される(図15(A)参照)。」

ク 「【0131】
次いで、主制御装置20は、駆動部104を制御し、ウエハWを非接触で吸着保持したベルヌーイ・チャック108を上昇駆動する(図14(B)参照)。そして、主制御装置20は、ベルヌーイ・チャック108に保持されたウエハWの下方に、ウエハ交換位置近傍の待機位置で待機していたウエハ搬送アーム118を挿入し(図14(B)、図15(B)参照)、ベルヌーイ・チャック108の吸着を解除した後、ベルヌーイ・チャック108を僅かに上昇駆動する。これにより、ウエハWが、ウエハ搬送アーム118に下方から保持される。
【0132】
そして、主制御装置20は、ウエハ搬送アーム118を介して、ウエハWを、チャックユニット102の下方のウエハ交換位置から+X方向に離れたウエハ搬出位置(例えばコータ・デベロッパとのウエハの受け渡し位置(搬出側))まで搬送し、そのウエハ搬出位置に載置する。図15(C)には、ウエハ搬送アーム118がウエハ交換位置から離れていく様子が示され、図14(C)には、ウエハ搬送アーム118がウエハ交換位置から離れた状態が示されている。」

ケ 「【0133】
次いで、微動ステージWFS2に対する新たな(露光前)のウエハWのロードが、大略、上記アンロードの場合と逆の手順で、主制御装置20によって行われる。
【0134】
すなわち、主制御装置20は、ウエハ搬送アーム118を制御し、そのウエハ搬送アーム118により、ウエハ搬入位置(例えばコータ・デベロッパとのウエハの受け渡し位置(搬入側))にあるウエハWを、チャックユニット102の下方のウエハ交換位置まで搬送する。
【0135】
次いで、主制御装置20は、ベルヌーイ・チャック108を僅かに下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を開始する。そして、主制御装置20は、ウエハWを吸着したベルヌーイ・チャック108を僅かに上昇駆動し、ウエハ搬送アーム118を前述の待機位置へ退避させる。
【0136】
次いで、主制御装置20は、前述の信号処理系116から送られるウエハWのX軸方向、Y軸方向の位置ずれと回転誤差との情報に基づいて、ウエハWの位置ずれと回転誤差とが補正されるように、相対位置計測器22Bとウエハステージ位置計測系16Bとの計測値をモニタしつつ、微動ステージ駆動系52B(及び粗動ステージ駆動系51B)を介して、微動ステージWFS2のXY平面内の位置(θz回転を含む)を調整する。
【0137】
次いで、主制御装置20は、ウエハWの裏面が微動ステージWFS2のウエハホルダに当接する位置まで、ベルヌーイ・チャック108を下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を解除した後、ベルヌーイ・チャック108を所定量上昇駆動する。これにより、新たなウエハWが、微動ステージWFS2上にロードされる。次いで、その新たなウエハWに対するアライメントが行われる。」

コ 「【0313】
また、上記各実施形態において、ベルヌーイ・チャックを用いる場合、ウエハとベルヌーイ・チャックとのギャップを計測するセンサは、必ずしも設けなくても良い。ギャップを計測する代わりに、ベルヌーイ・チャックと保持対象物との間の圧力(又はベルヌーイ・チャックから吹き出される流体の流速)を計測することで、ギャップを間接的に計測することもできる。また、ウエハのロード時にベルヌーイ・チャックに保持されるウエハのシフト及び/又は回転をキャンセルするため、微動ステージ(ウエハホルダ)の移動に代えて、あるいはそれとともに、ベルヌーイ・チャックを移動しても良い。」

(2)引用発明1
ア 上記(1)オの記載によれば、引用文献1には、「露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に保持された一方の微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光を行う露光装置100」が記載されている。

イ 上記(1)カの記載によれば、引用文献1には、「一方の微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光と並行して、他方の微動ステージWFS2上では、ウエハ交換が行われること」が記載されている。

ウ 上記(1)キの記載によれば、引用文献1には、「ウエハ交換に際しては、露光済みのウエハWをベルヌーイ・チャック108により上方から非接触で吸着保持すること」が記載されている。

エ 上記(1)ケの記載によれば、引用文献1には、「微動ステージWFS2に対する新たなウエハWのロードに際しては、ウエハ搬送アーム118により、ウエハWを、チャックユニット102の下方のウエハ交換位置まで搬送すること」が記載されている。また、「ベルヌーイ・チャック108を僅かに下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を開始すること」が記載されている。また、「ウエハWの裏面が微動ステージWFS2のウエハホルダに当接する位置まで、ベルヌーイ・チャック108を下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を解除すること」が記載されている。

オ 上記(1)エの記載によれば、引用文献1には、「微動ステージWFS1の本体部81の上面中央には、ウエハWを真空吸着によって保持するウエハホルダWHが設けられること」が記載されている。

カ 上記(1)イの記載によれば、引用文献1には、「ベルヌーイ・チャック108には、延設部110a、110b、110cが設けられ、延設部110a、110b、110cには、撮像素子114a、114b、114cがそれぞれ取り付けられること」が記載されている。

キ 上記(1)ウの記載によれば、引用文献1には、「撮像素子114a?114cの撮像信号は、信号処理系116に送られ、信号処理系116は、ウエハの切り欠き及びそれ以外の周縁部を検出して、ウエハWの位置ずれと回転誤差とを求めること」が記載されている。

ク 上記(1)コの記載によれば、引用文献1には、【0026】以下に記載の第1の実施形態の露光装置100と同様の露光装置について、「ウエハのロード時にベルヌーイ・チャックに保持されるウエハのシフト及び/又は回転をキャンセルするため、ベルヌーイ・チャックを移動すること」が記載されている。

以上によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。
「露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に保持された一方の微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光を行う露光装置100であって、
一方の微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光と並行して、他方の微動ステージWFS2上では、ウエハ交換が行われるものであり、
ウエハ交換に際しては、露光済みのウエハWをベルヌーイ・チャック108により上方から非接触で吸着保持し、
微動ステージWFS2に対する新たなウエハWのロードに際しては、ウエハ搬送アーム118により、ウエハWを、チャックユニット102の下方のウエハ交換位置まで搬送し、
ベルヌーイ・チャック108を僅かに下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を開始し、
ウエハWの裏面が微動ステージWFS2のウエハホルダに当接する位置まで、ベルヌーイ・チャック108を下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を解除するものであり、
微動ステージWFS1の本体部81の上面中央には、ウエハWを真空吸着によって保持するウエハホルダWHが設けられており、
ベルヌーイ・チャック108には、延設部110a、110b、110cが設けられ、延設部110a、110b、110cには、撮像素子114a、114b、114cがそれぞれ取り付けられており、
撮像素子114a?114cの撮像信号は、信号処理系116に送られ、信号処理系116は、ウエハの切り欠き及びそれ以外の周縁部を検出して、ウエハWの位置ずれと回転誤差とを求めるものであり、
ウエハのロード時にベルヌーイ・チャックに保持されるウエハのシフト及び/又は回転をキャンセルするため、ベルヌーイ・チャックを移動する露光装置100。」(以下「引用発明1」という。)

2 引用文献2について
(1)当審拒絶理由1に引用された引用文献2(特開2010-109369号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板テーブルを含み、その上に、基板上へのパターンの実際の転写を開始する前に、基板が正確に装荷されることになる。最初に、テーブルに設けられた穴から上方へ突出する1組の3つの細いエジェクタピン上へ基板を置くことにより、基板がテーブル上に装荷され得る。これらのピンは、垂直なZ方向、すなわち基板および/または一般にXY平面として示されるテーブルの上部面に対して垂直な方向に移動可能であるように構成される。これらのピンは互いに接続され、ピンの上方および下方への移動は共通の駆動装置を用いて行われる。基板がピン上に置かれた後、テーブルに組み込まれた真空デバイス(例えば真空ポンプ)によって基板が引きつけられるまで、ピンが低下する。その後、基板がテーブルによって全面的に支持されてその上にクランプされるまで、さらにピンが低下する。そのとき、基板は、もはやピンによって支持されない。」

イ 「【0032】
[0037] 図2aの拡大図に基板テーブルWTが示されており、その上に基板Wが例えば真空(例えば真空ポンプによってもたらされる)を用いて既にクランプされている。テーブルWTは、前述の第2の位置決めデバイスPWの一部分を形成するチャックの上に支持される。チャックならびにその上にクランプされたテーブルWTおよび基板Wの、Z方向すなわちテーブルWTの面に対する垂直方向の位置は、チャックに対してZ方向に作用する個々に移動可能な3つのショートストロークZアクチュエータを用いて正確に制御することができる。テーブルWTの下に3本のエジェクタピンの組立体が設けられ、ここには第1のエジェクタピン1および第2のエジェクタピン2だけが示されている。3本のピンは、テーブルWTの面にわたって均等に分配され、テーブルWTに対して基板Wを装荷および除荷する目的に役立つ。ピンは、互いに板ばね3で柔軟に接続され、したがって組立体を形成する。ピンの組立体を上方または下方へ移動するように構成されたアクチュエータ4が設けられる。アクチュエータ4内に高さセンサが設けられ、これは、ピンの組立体の高さhの変化を時間tの関数として検出するように構成される。」

ウ 「【0033】
[0038] リソグラフィプロセス中に、新規の基板Wが、各スキャンサイクルの開始時にテーブルWTに装荷されることになる。これは、最初にピンをテーブルWTから突出する位置へ移動し、次いでピンの最上部上に基板Wを置くことにより行われる。次に、基板Wが真空デバイスまたは別の適当なタイプのクランプによって基板テーブルWTに引きつけられるまで、ピンが低下する。ピンがさらに低下すると、基板WがテーブルWT上に完全に支持されてクランプされた状態になり、もはやピンによる支持はない。スキャン動作が実行された後に、テーブルWTから基板Wを取り外すために、ピンが再び上方へ移動される。」

エ 「【0042】
[0047] 別の実施形態では、較正は、ピンの装荷状態から除荷状態への移動中、またはその逆の移動中に、基板の非平坦性を測定することに基づく。除荷状態から装荷状態への移動が、図6a?図6bに一実施例として示されている。図6aは、基板Wが、ピン1、2上に、テーブルWTの上のわずかな間隔で支持されている状態を示す。次にテーブルWTのクランプを作動させることにより、基板がテーブルWT上にクランプされる。この装荷状態では、ピン1、2は、クランプされた基板Wに対して依然として力を与える。これは、図6bに示されるような、基板の検出可能な局所的変形をもたらすことになる。この局所的変形は、(ピン2に関して示されるように)テーブルWTの上にわずかに伸びるピン、および/または(ピン1に関して示されるように)テーブルWTの表面よりいくぶん下に伸びる一方で、これも基板Wに対してクランプ力を作用させるピンによってもたらされ得る。これによって、絶対変形値が測定され得る。有限要素法(FEM)から、特定のピン1、2の、例えば5mNのピン力である特定の力が、そのピン1、2のその位置で、例えば10nmの局所的基板たわみである特定の局所的基板変形をもたらすことになると計算され得る。ピン1、2の板ばね3の剛性も知ることができ、例えばおよそ5×103N/mにある。このようにして、特定のピン1、2の一定の高さのオフセット量を求めることが可能である。個々のピン1、2のオフセットの差から、基板がどのように傾けられたか知ることもできる。次いで、この傾斜を補正することができる。代替形態では、基板Wの変形が始まる瞬間または終了する瞬間を時間における不連続点として検出することも可能である。次いで、この不連続点は、テーブルWTによって基板Wがピン1、2からテイクオーバーされる瞬間、またはその逆のテイクオーバーの瞬間を示し、したがって、そこから最適のテイクオーバー高さおよび/または傾斜を求めることができる。」

オ 「【0043】
[0048] 様々な図には示されていないが、説明された傾斜および高さの較正は、好ましくはピン1、2に関して実行されるだけでなく、図示されていない第3のピンに関する測定も含むことが注目される。
【0044】
[0049] したがって、この方法で、ピンのすべての組に関して、傾斜および最適テイクオーバー高さの両方を正確に較正することが可能である。本発明の一実施形態による較正方法は、現況技術の較正方法より正確であることが理解されよう。この較正方法が、オーバーレイをより頑健にするので、すなわち基板装荷に関して様々なチャック間でのオーバーレイの幅を縮小するので、これは有益である。また、この較正方法には、基板に対する装荷時間および除荷時間の幅を縮小するという利益がある。本発明の一実施形態による較正方法は、組み込むのに比較的廉価であり、既存のリソグラフィ装置に容易に組み入れることができる。ハードウェア変更は不要であり、較正を行うためのいくつかの追加ソフトウエアを必要とするのみである。」

3 引用文献3について
当審拒絶理由1に引用された引用文献3(特開平5-102287号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、板状物搬送装置、特に、薄い板状物を搬送し処理室内に出し入れする板状物搬送装置に関し、例えば、半導体装置の製造工程において、半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という。)を搬送するのに利用して有効な技術に関する。」

イ 「【0017】本実施例において、本発明に係る板状物搬送装置は、レジストをウエハに塗布するレジスト塗布装置1において、ウエハを各処理室に搬送するウエハ搬送装置10として構成されている。このレジスト塗布装置1には、ウエハとレジストとの密着性を高めるための前処理を実施する前処理室2と、ウエハを余熱するためのベーキング処理室3と、ベーキング後のウエハ温度を一定に安定させる冷却処理室4と、ウエハにレジストが実際に塗布される処理室とが設備されている。これら処理室は半導体装置の製造工程において、クリーンルームに互いに隣接して直列に並設されている。」
(・・・途中省略・・・)
【0020】支軸17の上端部にはフレーム18が支持されており、フレーム18には第1アーム19および第2アーム20が互いに上下に配されて、ガイドレール11と直角方向(以下、Y方向ということがある。)であってレジスト塗布装置1の向きに突出され、摺動自在にそれぞれ支承されている。第1アーム19および第2アーム20はそれぞれ、フレーム18内に設備されたパルスモータを駆動源とするベルト伝動装置(図示せず)により駆動されるように構成されている。第1アーム19の先端部には第1ヘッド21が、第2アーム20の先端部には第2ヘッド22が互いに干渉しないように、それぞれ垂直方向下向きに据え付けられている。
【0021】第1ヘッド21および第2ヘッド22は同一構造に構成されているので、片方のヘッド21についてその構成を代表的に説明する。図2および図3に示されているように、ヘッド21は平面形状が板状物としてのウエハ9の外形よりも大きい平板形状に形成されている本体23と、本体23に設備された3台の非接触形吸着装置24と、本体23下面の外周辺部にウエハ9の外周と係合するように突設されている4個の係合部片25とを備えている。係合部片25はウエハ9が遊動するのを防止するのに必要な高さが本体23の下面から突出する方向に設けられている。」

ウ 「【0026】次に、前記構成に係るウエハ搬送装置10の作用を図4を参照にして、レジスト塗布装置1におけるベーキング処理室3にウエハ9を搬入搬出する場合について代表的に説明する。」

エ 「【0027】ここで、このベーキング処理室3はホットプレート構造に構成され、ヒータブロック5にウエハ9を密着させるか、または、近接させることにより、ウエハ9をベーキングするようになっている。このベーキング処理室3のヒータブロック5にはウエハ9を下から支えて保持するための突き上げピン6が複数本、上下方向に摺動するように挿通されている。
【0028】今、ベーキング処理が終了したウエハ9をベーキング処理室3から搬出し、次のウエハ9をベーキング処理室3に搬入する場合につき説明する。この場合、図4(a)に示されているように、第1ヘッド21はウエハ9を保持していない状態になっており、第2ヘッド22は次にベーキング処理するウエハ9を保持した状態になっている。そして、2台のヘッド21および22はX方向移動ブロック14およびフレーム18の移動によってベーキング処理室3の直前に搬送されて待期状態になっている。」

オ 「【0029】そして、図4(b)に示されているように、ベーキング処理が終了し、ウエハ9が突き上げピン6によりヒータブロック5の上方へ持ち上げられると、第1ヘッド21の係合片25とウエハ9とが干渉しない位置までフレーム18が上昇した後、第1ヘッド21が第1アーム19の伸長作動によってベーキング処理室3内に挿入され、ヒータブロック5の真上で停止される。
【0030】第1ヘッド21が停止した後、フレーム18は下降する。持ち上げられたウエハ9が第1ヘッド21の下面にきわめて接近すると、フレーム18は下降を停止し吹出口26からのエア吹出しによる静圧流体軸受の形成と、吸引口27からのエア吸引による負圧の発生により、ウエハ9は第1ヘッド21によって非接触にて保持される。
【0031】続いて、押力発生装置30において、給排気口34が排気されてチューブ33が収縮される。このチューブ33の収縮作動により、各板ばね36、36が閉じられるため、ウエハ9は当接片37、37を介して板ばね36の弾発力により、反対側の係合片25に押接されて遊動が防止された状態になる。
【0032】次いで、図4(c)に示されているように、第2ヘッド22の係合片25と突き上げピン6が干渉しない高さまでフレーム18が上昇された後、第1ヘッド21は第1アーム19の短縮作動によりベーキング処理室3から後退され、第1ヘッド21に吸着保持された処理済みのウエハ9がベーキング処理室3から搬出される。このとき、ウエハ9の第1ヘッド21に対する遊動は前記押力発生装置30により抑止されているため、チッピングや成膜の剥がれの発生は防止されることになる。」

カ 「【0033】その後、図4(c)に示されているように、第2ヘッド22が第2アーム20の伸長作動によってベーキング処理室3内に進入され、ヒータブロック5の真上で停止される。第2ヘッド22が停止すると、突き上げピン6とウエハ9がきわめて接近するまでフレーム18が下降する。
【0034】次いで、押力発生装置30の給排気口34に給気され、チューブ33が膨張されることにより、板ばね36によるウエハ9の押さえ作動が解除される。続いて、第2ヘッド22において非接触保持作動を実行していた非接触形吸着装置24のエアの吸吹が停止される。これにより、ウエハ9は第2ヘッド22による吸着保持を解除されるため、突き上げピン6上に移載されることになる。
【0035】ウエハ9を受け取ると、図4(d)に示されているように、突き上げピン6は下降される。これにより、ウエハ9はヒートブロック5上に移載されるか、または、ヒートブロック5にきわめて近接される。この状態で、ウエハ9はヒートブロック5により加熱されてベーキング処理される」

(2)引用発明3
ア 上記(1)ウの記載によれば、引用文献3には、「ベーキング処理室3にウエハ9を搬入搬出するウエハ搬送装置10」が記載されている。

イ 上記(1)イの記載によれば、引用文献3には、「フレーム18には第1アーム19及び第2アーム20が配され、第1アーム19、第2アーム20には第1ヘッド21、第2ヘッド22がそれぞれ据え付けられること」が記載されている。また、「第1ヘッド21及び第2ヘッド22は非接触型吸着装置24を備えること」が記載されている。

ウ 上記(1)オの記載によれば、引用文献3には、「ベーキング処理が終了したウエハ9を突き上げピン6によりヒータブロック5の上方へ持ち上げること」が記載されている。また、「ウエハ9を第1ヘッド21により保持すること」が記載されている。

エ 上記(1)エの記載によれば、引用文献3には、「第2ヘッド22により次にベーキング処理するウエハ9を保持すること」が記載されている。

オ 上記(1)カの記載によれば、引用文献3には、「突き上げピン6とウエハ9がきわめて接近するまでフレーム18が下降すること」が記載されている。また、「第2ヘッド22による吸着保持を解除することによりウエハ9を突き上げピン6上に移載すること」が記載されている。また、「突き上げピン6を下降することによりウエハ9をヒートブロック5上に移載すること」が記載されている。

以上によれば、引用文献3には、以下の発明が記載されている。
「ベーキング処理室3にウエハ9を搬入搬出するウエハ搬送装置10であって、
フレーム18には第1アーム19及び第2アーム20が配され、第1アーム19、第2アーム20には第1ヘッド21、第2ヘッド22がそれぞれ据え付けられ、
第1ヘッド21及び第2ヘッド22は非接触型吸着装置24を備えており、
ベーキング処理が終了したウエハ9を突き上げピン6によりヒータブロック5の上方へ持ち上げ、ウエハ9を第1ヘッド21により保持し、
第2ヘッド22により次にベーキング処理するウエハ9を保持し、
突き上げピン6とウエハ9がきわめて接近するまでフレーム18が下降し、第2ヘッド22による吸着保持を解除することによりウエハ9を突き上げピン6上に移載し、突き上げピン6を下降することによりウエハ9をヒートブロック5上に移載するウエハ搬送装置10」(以下「引用発明3」という。)

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「ウエハW」は、本願発明1の「薄板状の物体」に相当し、また引用発明1の「ウエハホルダWH」は、本願発明1の「ホルダ」に相当する。また、引用発明1の「ウエハ交換」は、「ウエハW」を「微動ステージWFS2」の「ウエハホルダWH」に搬入するものである。
そうすると、引用発明1と、本願発明1は、「薄板状の物体を、ホルダを有するステージ上に搬入する搬入方法」の点で一致する。

イ 引用発明1の「ベルヌーイ・チャック108」は、本願発明1の「第1支持部材」に相当する。そして、引用発明1において、「ウエハWの裏面が微動ステージWFS2のウエハホルダWHに当接する位置まで、ベルヌーイ・チャック108を下降駆動」するに際しては、「ウエハホルダWH」の上方にて、「ベルヌーイ・チャック108」により「ウエハW」を上方から非接触で支持するといえる。
そうすると、引用発明1と、本願発明1は、「前記ステージの上方にて、第1支持部材により前記物体を上方から非接触で支持・・・する」点で一致する。

ウ 引用発明1において、「ウエハWの裏面が微動ステージWFS2のウエハホルダWHに当接する位置まで、ベルヌーイ・チャック108を下降駆動し、ベルヌーイ・チャック108によるウエハWの吸着を解除する」に際しては、「ウエハW」が「ウエハホルダWH」に載置されるように、「ベルヌーイ・チャック108」を下降させ、「ベルヌーイ・チャック108」による「ウエハW」の支持を解除するといえる。
そうすると、引用発明1と、本願発明1は、「前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材・・・による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1支持部材・・・を・・・下降させ、前記第1・・・支持部材による前記物体の支持を解除する」点で一致する。

以上によれば、本願発明1と引用発明1は、
「薄板状の物体を、ホルダを有するステージ上に搬入する搬入方法であって、
前記ステージの上方にて、第1支持部材により前記物体を上方から非接触で支持することと、
前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1支持部材を下降させ、前記第1支持部材による前記物体の支持を解除することと、を含む搬入方法。」の点において一致し、以下の点において相違する。

相違点:本願発明1においては、「第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材」の構成を有し、「ステージの上方にて、第1支持部材により前記物体を上方から非接触で支持しつつ前記第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材により前記物体を下方から支持する」、「前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材をそれぞれ下降させ、前記第1、第2支持部材による前記物体の支持を解除する」とされるのに対し、引用発明1においては、「第1支持部材とは独立して上下動可能な第2支持部材」に係る上記構成を有していない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、上記「第3」「2」「ウ」の記載によれば、引用文献2には、ピンをテーブルWTから突出する位置へ移動し、次いでピンの最上部上に基板Wを置くこと、基板Wが真空デバイスによって基板テーブルWTに引きつけられるまで、ピンが低下すること、ピンがさらに低下すると、基板WがテーブルWT上に完全に支持されてクランプされた状態になり、もはやピンによる支持はなくなることが記載されている。
ここで、上記「第3」「2」「ア」及び「イ」の記載によれば、引用文献2の「ピン」は、基板テーブルに対して基板を正確に装荷するために採用されている構成であると解される。そして、基板テーブルに対して基板を正確に装荷することは、露光装置の技術分野において自明な技術課題である。
しかしながら、引用文献1及び2には、引用発明に引用文献2に記載のピンを適用するに際して、引用発明のベルヌーイ・チャック108と引用文献2に記載のピンによるウエハWの支持状態を維持しつつ、前記ベルヌーイ・チャック108、ピンをそれぞれ下降させ、前記ベルヌーイ・チャック108、ピンによる前記ウエハWの支持を解除する構成となすことまでは記載されておらず、また、このように構成する動機もなく、引用文献3にも記載されていないため、上記相違点にかかる本願発明1の「前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材をそれぞれ下降させ、前記第1、第2支持部材による前記物体の支持を解除する」構成となすことが、当業者であれば容易になし得たことであるということはできない。

2 本願発明8、12、14、17、21、29、35、37について
本願発明8、12、14、17、21、29、35、37も、本願発明1の「前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材をそれぞれ下降させ、前記第1、第2支持部材による前記物体の支持を解除する」との構成、ないし、当該構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明2ないし7、9ないし11、13、15、16、18ないし20、22ないし28、30ないし34、36、38ないし41について
本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9ないし11は、本願発明8を減縮した発明であり、本願発明13は、本願発明12を減縮した発明であり、本願発明15及び16は、本願発明1ないし14を減縮した発明であり、本願発明18ないし20は、本願発明17を減縮した発明であり、本願発明22ないし28は、本願発明21を減縮した発明であり、本願発明30ないし34は、本願発明29を減縮した発明であり、本願発明36は、本願発明35を減縮した発明であり、本願発明38は、本願発明37を減縮した発明であり、本願発明39は、本願発明29ないし38を減縮した発明であり、本願発明40及び41は、本願発明21ないし39を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、(平成28年5月20日付け手続補正による)請求項1?3、5?11、13?23、25?46について、特開2007-329447号公報(以下「引用文献4」という。)に記載された事項に基づいて、同請求項4?11、14?16、20、24?28、45?46について、引用文献3、4及び特開2008-227386号公報(以下「引用文献5」という。)に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年1月22日付け手続補正により補正された請求項1、8、12、14、17、21、29、35、37は、それぞれ「前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材をそれぞれ下降させ、前記第1、第2支持部材による前記物体の支持を解除する」との構成、ないし、当該構成に対応する構成を有するものとなっており、当該構成は引用文献3ないし5には記載されていないため、本願発明1ないし41は、引用文献3?5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。原査定を維持することはできない

第6 当審拒絶理由1、2について
1 当審拒絶理由1は、(平成28年5月20日付け手続補正による)請求項1ないし46について上記引用文献1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年1月22日付け手続補正により補正された請求項1、8、12、14、17、21、29、35、37は、それぞれ「前記物体が前記ホルダに載置されるように、前記第1支持部材及び前記第2支持部材による前記物体の支持状態を維持しつつ、前記第1、第2支持部材をそれぞれ下降させ、前記第1、第2支持部材による前記物体の支持を解除する」との構成、ないし、当該構成に対応する構成を有するものとなっており、上記第4のとおり、本願発明1ないし41は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、当審拒絶理由1は解消した。

2 当審拒絶理由2では(以下、当審拒絶理由2中の請求項はいずれも平成29年10月12日付け手続補正による。)、
(1)請求項42の「第2支持材」は誤記と思われる。
(2)特許請求の範囲、及び、発明の詳細な説明の特許請求の範囲を引用する段落には「保持装置」(段落【0009】?【0028】)、「コントローラ」(段落【0051】)、「変位装置」(段落【0050】)が記載されるが、発明の詳細な説明の(段落【0055】以降)には当該記載がない。
「保持装置」、「コントローラ」及び「変位装置」は、発明の詳細な説明の【発明を実施するための形態】(段落【0055】以降)の記載とどのように対応するのか不明確である。
(3)本願請求項21は、物の発明(装置発明)であるところ、「動作」をなす主体(主語)が明記されず不明確な記載である。
また、本願請求項29、35では、同様の「動作」を行う主体が「駆動装置」とされるが、本願請求項40、42では、同様の「動作」を行う主体が「駆動装置」であるのか「コントローラ」であるのか判然としない。
(4)本願請求項35(段落【0050】も同様)には「変位装置」との記載があるが、「駆動装置」とどのような関係であるのか、発明の詳細な説明の【発明を実施するための形態】(段落【0055】以降)には当該記載がなく不明である。
(5)本願請求項4、10、35(対応する発明の詳細な記載の箇所も同様)には、「先立って」あるいは「先立ち」と記載されるが、技術的にどのようなことを特定するのか不明確である。
(6)本願請求項35、38、39(対応する発明の詳細な記載の箇所も同様)における「接触部材」は、他の請求項ないし発明の詳細な記載における「第2支持部材」と同じ部材を意味するのか、あるいは、異なる部材を意味するのか不明である。
(7)本願請求項14、40、41における「下向きの力」が作用する状態で、「第1支持部材」(ベルヌーイ・チャック)が保持・支持を維持している、とはどのようなことを意味するのか不明である。
(8)本願請求項1、4、8、14、17、21、29、35、40、42における「支持しつつ」あるいは「維持しつつ」は機能的記載で、支持した状態、あるいは、維持した状態を意味するのか不明確である。
(9)本願請求項17、42は、「第1支持部材」が相対移動するとは特定していない。
「第1支持部材」が移動することなく、「前記第1支持部材による前記基板の支持状態を維持しつつ、前記基板を支持した前記第2支持部材と前記ホルダとを相対移動すること」とはどのようなことを意味するのか不明である。
(10)本願請求項1、6、8?14は「保持装置」、本願請求項4、24は「保持部材」、本願請求項5、25、26は「チャック部材」、本願請求項17?19、21、27、29、31、34、35、39?42は「ホルダ」、本願請求項15?17、21、29?31、35、39、40、42は「ステージ」を発明特定事項とするが、「保持装置」、「保持部材」、「チャック部材」、「ホルダ」及び「ステージ」が同じ部材を意味するのか別の部材を意味するのか、別の部材を意味するのであれば相互にどのような関係があるのか不明である。
上記不明確な請求項を引用する各請求項も同様に不明確である。
したがって、請求項1?46に係る発明は明確でない。
として、特許法第36条第6項第2号の拒絶の理由を通知しているが、平成30年1月22日付けの補正書のとおり補正した上で、同日付けの意見書で釈明した結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし41は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-14 
出願番号 特願2014-528757(P2014-528757)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 彰赤尾 隼人  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
野村 伸雄
発明の名称 搬入方法、露光方法及び露光装置、並びにデバイス製造方法  
代理人 立石 篤司  

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