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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1337009
異議申立番号 異議2017-700479  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-16 
確定日 2017-12-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6027696号発明「果実風味が付与された飲料」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6027696号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6027696号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯の概略
特許第6027696号(以下「本件特許」という。)に係る出願は,2015年4月7日(優先権主張:2014年4月7日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成28年10月21日に特許権の設定登録がなされたところ,平成29年5月16日に特許異議申立人山下桂により特許異議の申立てがなされた。当審において,平成29年7月21日付けで取消理由を通知したところ,特許権者より平成29年9月22日付けで意見書と訂正請求書が提出され,特許異議申立人より平成29年11月2日付けで意見書が提出された。以下,平成29年9月22日付けの訂正請求書を「本件訂正請求書」といい,これに係る訂正を「本件訂正」という。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は,本件特許の特許請求の範囲を,本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?7について訂正することを求めるものであって,その訂正の内容は次のとおりである。
(訂正事項)
特許請求の範囲の請求項1に「果実香料を配合して得られる果実風味が付与された飲料」と記載されているのを,「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。

2 本件訂正の適否について
(1) 前記訂正事項は,本件訂正後の請求項1に係る発明の「果実香料を配合して得られる果実風味が付与された飲料」について,「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料」と特定し,限定する訂正であるから,前記訂正事項に係る本件訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
そして,本件特許明細書には,果実風味が付与された飲料について「本発明の果実風味が付与された飲料とは,オレンジ,ミカン,マンダリン等のミカン科カンキツ属の果実の風味を有する飲料をいう。果実風味を付与するために,本発明の飲料には,柑橘果実の風味を呈する香料(本明細書中,「果実香料」ともいう)を配合する。」(【0012】)と記載されている。
よって,前記訂正事項は,新規事項を追加するものではなく,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。
(2) 以上のとおりであるから,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであって,同条4項及び同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
前記第2のとおり,本件訂正は認められるから,本件特許の請求項1?7に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい,総称して「本件発明」という。
【請求項1】
果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料であって,
(A) 香気成分としてバレンセン及びリナロールを含み,バレンセンの濃度(X)が0.01?0.2mg/L,リナロールの濃度(Y)が4.0mg/L以下であり,Y≧3.1X+0.85であり;
(B) 飲料の液色について,波長660nmにおける吸光度≦0.06,かつ,純水を基準とした場合のΔE値(色差)≦3.5であり;
(C) 透明な容器に充填されている上記飲料。
【請求項2】
純水を基準とした場合のΔE値(色差)が1.2以下である,請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
さらに,Y≦75X-2.0を満たす,請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
さらに,甘味成分を含有し,飲料のBrix値が3.0?6.0である,請求項1?3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
前記容器の飲み口となる開口部が1200mm^(2)以下であり,前記容器の容量が2000mL以下である,請求項1?4のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項6】
バレンセンの濃度が0.15mg/L以下である,請求項1?5のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
リナロールの濃度が2.5mg/L以下である,請求項1?6のいずれかに記載の飲料。

2 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由1及び2は,概ね,次のとおりである。
(1) 本件特許は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。すなわち,
ア 発明の詳細な説明には,オレンジのような香りと味わいを有する飲料についてのみがサポートされているのに対し(実施例1及び2),本件発明は,果実以外の香料を含んでもよく,柑橘系以外の果実香料を含んでもよいから,課題を解決できない態様を含むものである(特許異議申立書55?56頁)。
また,バレンセン及びリナロールのみをごく微量だけ含む実施例1の飲料や,香料として何を用いたのか不明である実施例2の飲料は,「果実系香料を配合して得られる」飲料,「果実風味が付与された飲料」,柑橘系の「果実風味が付与された飲料」に該当するとはいえず,発明の詳細な説明に「果実香料を配合して得られる果実風味が付与された飲料」が記載されているとはいえないから,課題を解決することができることを実施例の記載から理解することができない。加えて,柑橘果実以外の果実香料を含む飲料が実施例1及び2に記載されているとも解されない(同56?57頁)。
よって,発明の詳細な説明の実施例1及び2に開示された実験結果を請求項1の範囲全般にまで一般化ないし拡張することはできないから,本件発明は,発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであって,発明の詳細な説明に記載されたものではない(同58頁)。
イ 本件発明は,バレンセン及びリナロール以外の香気成分を高濃度で含んでもよいが,例えば,香気成分としてミルク系フレーバーを高濃度で含んだ場合,課題を解決することができない。さらに,香気成分に相互作用があることを踏まえると,本件発明は,課題を解決できない態様を含んでいる(同58頁)。
また,果実香料としてバレンセン及びリナロールのみを含む実施例1の結果から,それ以外の飲料においても,課題が解決できるとはいえない。実施例2は,発明特定事項(A)の技術的意義をサポートするものではない(同58?60頁)。
よって,本件発明は,発明の詳細な説明において裏付けられた範囲を超える発明を含むものであって,発明の詳細な説明に記載されたものではない(同60頁)。
ウ バレンセン及びリナロールの濃度について,実施例1は「配合量」で,実施例2は「測定値」であるから,実施例1及び2に開示された数値は,発明特定事項(A)で特定する「含有量」をサポートするものではない(同60?61頁)。
よって,本件発明は,発明の詳細な説明に記載された発明ではない(同61頁)。
(2) 本件特許は,特許請求の範囲の記載が不備のため,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。すなわち,
ア 請求項1に記載された発明特定事項(A)において,バレンセン及びリナロールの濃度が,飲料中に現に存在するバレンセン及びリナロールの含有量(存在量)を意味するのか,所定の測定方法にしたがって得られる測定値の比を意味するのか明確でない。
発明の詳細な説明の記載を参酌すると,実施例1では「配合量」で,実施例2では「測定値」であるから,バレンセン及びリナロールの濃度が不明確である(同62?63頁)。
イ 請求項1においてリナロールの濃度とは,飲料の製造直後であるのか,飲料摂取時であるのか等,どの時点での濃度であるのか不明である(同63頁)。
(3) 証拠方法
特許異議申立人が提出した証拠方法(甲1?16号証)は以下のとおりである。以下各証拠を,その証拠番号に従い「甲1」などという。
甲1:特開2005-143461号公報
甲2:特開2004-168936号公報
甲3:Aslaug Hognadottir,et al.,“Identification of aroma active compounds in orenge essence oil using gas chromatography-olfactometry and gas chromatography-mass spectrometry”,Journal of Chromatography A,998(2003),p.201-211
甲4の1:George A.Burdock,PH.D.,“FENAROLI'S HANDBOOK OF Flavor Ingredients SIXTH EDITION”,CRC Press,p.265-266,307-308,382,1090-1093,1481,1503-1504,1520,1873-1874,1987
甲4の2:甲4の1に係る国立国会図書館所蔵図書館資料に関する証明書
甲5:吉儀英記,“香料入門”,フレグランスジャーナル社,1版1刷,平成14年2月28日,p.11-40
甲6:“標準技術集(化学 18年度) 香料,特許庁,2007年3月14日掲載,p.353-355
<URL:https://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/kouryou/2-3-3.pdf#1>
甲7:アジレント・テクノロジー株式会社カタログ“Twisterを用いる驚異の抽出法:SBSE(スターバー抽出法)”,2007年11月
<URL:http://www.chem-agilent.com/cimg/MS-200711-005.pdf>
,及び同社ウェブページの印刷物
<URL:http://www.chem-agilent.com/appnote/applinote.php?pubno=MS-200711-005>
甲8:特開2008-178401号公報
甲9:特開2011-167144号公報
甲10:特開2000-295963号公報
甲11:特開2014-30377号公報
甲12:田村啓敏,“柑橘香気の客観的評価法”,日本食品科学工学会誌,1997年11月,44巻,11号,p.745-752
甲13:Yu Qiao,et al.,“Characterization of Aroma Active Compounds in Fruit Juice and Peel Oil of Jinchen Sweet Orange Fruit(Citrus sinensis(L.)Osbeck) by GC-MS and GC-O”,Molecules 2008,13,p.1333-1344
甲14:富山賢一,外3,“愛媛産とシチリア産タロッコ種ブラッドオレンジ(Citrus sinensis(L.)Osbeck)の香気成分”,第57回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会 講演要旨集,平成25年10月5日,p.31-33
甲15:特開平1-117769号公報
甲16:小竹佐知子,“食品咀嚼中の香気フレーバーリリース研究の基礎とその測定実例の紹介”,日本調理科学会誌,2008年,Vol.41,No.2,p.84-92

3 取消理由1(36条6項1号)について
(1) 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載について
ア 本件発明の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の記載によると,本件発明は,「果実風味が付与された飲料,特に,果実風味が付与されているが水のように無色透明な飲料に関する。」(本件特許明細書【0001】)ものであるところ,「ミネラルウォーターに香料やエキス,1%程度の果汁などのフレーバーを加えた飲料で,・・・水のような外観の飲料である」(同【0002】),「フレーバードウォーターは,・・・PETボトルのような開口部の狭い容器から直接に飲んだ場合には,・・・口中香が重要視される」が,「フレーバードウォーターで口中香に着目した飲料は開発されていない。フレーバードウォーター,特に,水のような無色透明な外観を有するものは,・・・その水のような外観を維持させるために,設計上,様々な制約が存在し,無色透明の飲料において特定の香り(口中香)を増強させることは,容易ではない。」(同【0006】)といった,従来の課題に鑑み,「水のように無色透明であるにもかかわらず,たとえPETボトルのような開口部の狭い容器から直接に飲んだ場合であっても,天然の果実のようなフレッシュな香りと味わいを感じることができる飲料を提供すること」(同【0007】)を目的とし,「果実香料を配合して得られる果実風味が付与された飲料において,特定の香気成分を特定の範囲の濃度となるように含有させることにより,無色透明でありながら,天然の果実を想起させるフレッシュな香り豊かな「戻り香」を奏する飲料となることを見出し」(同【0008】),本件発明を完成させたものであることがわかる。
また,発明の詳細な説明には,「本発明の果実風味が付与された飲料とは,オレンジ,ミカン,マンダリン等のミカン科カンキツ属の果実の風味を有する飲料をいう。果実風味を付与するために,本発明の飲料には,柑橘果実の風味を呈する香料(本明細書中,「果実香料」ともいう)を配合する。」(同【0012】)と記載されていることからすると,本件発明に係る「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料」(請求項1)とは,「柑橘果実の風味を呈する香料」を配合して得られる,「ミカン科カンキツ属の果実の風味を有する飲料」であることがわかる。
そうすると,本件発明の解決しようとする課題は,果実風味が付与されているが水のように無色透明な飲料に関し,ミカン科カンキツ属の果実のようなフレッシュな香りと味わいを感じることができる飲料を提供することにあると解される。
そして,本件発明は,請求項1?7に記載された事項を備えることにより,「水のように無色透明でありながら,飲用した際に果実の香り(戻り香)を鮮明に感じることができる飲料を提供することができる。戻り香を感じやすいため,・・・PETボトルのような消費者が容器に直接に口をつけて飲用することがある開口部の狭い容器(一般に戻り香を感じにくい)に詰めるのにも適している」(同【0010】)といった効果を奏するものである。本件発明に係る飲料が「豊かな戻り香を有するメカニズムは不明であるが,飲料を口に含んだ際に,飲料中のバレンセンやリナロール等の成分が咀嚼運動,口中の温度や湿度により喉から鼻を通じて戻ってきている可能性がある。」(同【0015】)もので,このような効果を奏することで,上記課題を解決するものである。
イ 本件発明の実施例について
発明の詳細な説明には,本件発明の実施例として,実施例1及び実施例2が開示されている。
(ア) 実施例1は,水にグラニュー糖を添加してBrix4.5に調整した溶液に,クエン酸を1.2質量%添加し,クエン酸三ナトリウムを加えてpHが3.6となるように調整し,これにリナロールとバレンセンのそれぞれを表1(本件特許明細書【0033】)に記載の濃度(単位:mg/L)となるように加えて試作品1?19を調製し,これをPETボトルに充填し,PETボトルから直接に飲用した際の香りの強さ,果実らしい味わい,飲料としての総合的な好ましさについて,3名のパネラーにより,5段階で評価したものである。なお,試作品1?19はいずれも,「無色透明」の水のような外観であり,波長660nmにおける吸光度が0.06以下,純水に対する透過光のΔEが1.2以下である。
そして,評価の結果,バレンセンの濃度(X)が0.01(試作品19)?0.2(試作品5,8,12)mg/L,リナロールの濃度(Y)が4.0(試作品9?12)mg/L以下であり,Y≧3.1X+0.85である,すなわち,請求項1に記載された発明特定事項(A)を満たす試作品1,5?19は「香りの強さ」の評価が3.5点以上で,さらに,Y≦75X-2.0,すなわち,請求項3に記載された発明特定事項を満たす試作品1,5,7,8,10?18は「飲料としての総合的な好ましさ」の評価が3.5点以上であったことが示されている(同【0032】?【0034】,表1,図1,2)。
(イ) 実施例2は,水に,果糖,グラニュー糖,果糖ぶどう糖液糖を添加してBrix4.2に調整した溶液に,クエン酸,クエン酸三ナトリウム,ビタミンCを合計酸度がクエン酸換算で0.14%になるように配合し,これに濃縮オレンジ果汁をストレート換算で1%となるように配合し,食塩,香料を加えて,試作品20とし,リナロールとバレンセンの量を測定し,実施例1と同様の評価をしたものである。
そして,その結果,バレンセンの濃度(X)が0.08mg/L,リナロールの濃度(Y)が1.6mg/Lで,Y≧3.1X+0.85を満たし(なお,Y≦75X-2.0も満たしている。),「香りの強さ」の評価が4.5点,「飲料としての総合的な好ましさ」の評価が4.6点で,果実の香りと味わいを強く感じることができることがわかることが示されている(同【0035】?【0038】,表2)。
(ウ) バレンセンはオレンジの精油中などに見られる成分で(同【0013】,甲3Table2,甲13Table1),オレンジの果皮や果汁に含まれる成分であるから(甲13Table1,甲14Table1,甲15例4),実施例1及び2において,少なくともバレンセンは本件発明の「果実香料」に該当するといえる。
また,実施例1及び2でいう,「香り」,「果実の香り」とは,本件発明の目的や発明の詳細な説明の前記記載(【0012】)に照らすと,ミカン科カンキツ属の果実の香りであると認められる(なお,実施例1における香りの種類が明示されていないが,濃縮オレンジ果汁を配合した実施例2が実施例1と同様の評価をした結果,果実の香りを感じるとされていることや(【0037】),発明の詳細な説明の記載を総合的にみれば,実施例1においてもミカン科カンキツ属の果実の香りを評価していることは明らかである。)。
ウ そうすると,実施例1及び2は,本件発明に係る「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料」に該当すると認められる。
そして,リナロールとバレンセンという特定の香気成分のみを含有する実施例1と,濃縮オレンジ果汁及び香料由来の香気成分を含有し,リナロールとバレンセン以外の香気成分も有すると解される実施例2の結果から,請求項1に記載された発明特定事項(A)を満たすことにより,ミカン科カンキツ属の果実のような香りを感じることができる,すなわち,本件発明の課題を解決し得ることがわかる。
(2) 本件発明は前記1のとおりであるところ,以上のような発明の詳細な説明の記載からすると,本件発明は,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
(3) 特許異議申立人の主張について検討する。
ア まず,前記2(1)アに関し,本件訂正により,本件発明は「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料」に係る発明であると特定され,本件発明における「果実香料」とは「柑橘果実の風味を呈する香料」(本件特許明細書【0012】)であるから,柑橘果実の風味を呈する香料を配合していないものを含まず,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与されていない態様を含むものではない。
そして,既に述べたとおり,実施例1及び2に係る飲料が,本件発明に係る「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料」に該当し,実施例1及び2の記載から,課題を解決し得るといえる。
なお,特許異議申立人は,リナロールの風味の閾値が5ppmであるから(甲4・1091?1092頁)実施例1は当該「飲料」に該当しない旨主張をしているが,これは風味の閾値(Taste threshold values)であって,香りの閾値とは解されない。
また,特許異議申立人は,バレンセン及びリナロールは,ミカン科カンキツ属に多数含まれる香気風味の一成分に過ぎないから,バレンセン及びリナロールのみを含む飲料においてもミカン科カンキツ属の果実風味が得られるかどうか不明であると主張しているが(意見書2頁),実施例1の結果に格別不合理なところはなく,バレンセン及びリナロールのみを含む飲料においても,ミカン科カンキツ属の果実風味が得られるものと認められる。
イ 前記2(1)イに関し,ミルク系フレーバーのような香気成分を高濃度で含んだ場合,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料とはいえないものは,もはや本件発明ではない。マスキング効果を有することが知られるシトラール(甲5・33頁)等を含んだ場合,香気成分に相互作用があるとしても,当然にミカン科カンキツ属の果実風味を奏しないとは認められず,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料とはいえないものは,本件発明ではない。
また,実施例2の結果から,本件発明が課題を解決し得るといえることは,既に述べたとおりである。
ウ 前記2(1)ウに関し,実施例1は,リナロールとバレンセンを正確に秤量して試作品を調整し,調整後速やかに評価をしていると認められるから,表1(本件特許明細書【0033】)に記載の「配合量」は「含有量」といって差し支えなく,実施例2においても,リナロールとバレンセンを所定の定量方法(同【0031】)によって正確に測定していると認められるから,表2(同【0037】)に記載の「測定値」は「含有量」といって差し支えない。
(4) 以上のとおりであるから,本件発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないとは認められない。

4 取消理由2(36条6項2号)について
(1) 請求項1の記載からすると(前記1),バレンセン及びリナロールの濃度とは,飲料中に現に存在するバレンセン及びリナロールの含有量(存在量)を意味することは明らかである。
この点に関し,発明の詳細な説明において,実施例1では「配合量」とし,実施例2では「測定値」としているが,いずれも「含有量」といって差し支えないから(前記3(3)ウ),発明の詳細な説明の記載は上記のように解釈することと整合している。
また,請求項1において,リナロールの濃度に関する記載に格別不明確なところはなく,どの時点において発明特定事項(A)を満たすべきかについて限定されていないことは明らかである。リナロール濃度が経時変化するとしても,発明特定事項(A)を満たすことで足りることは,その記載から明らかである。
そして,特許請求の範囲において,その他不明確なところは特段認められない。
(2) 以上のとおりであるから,特許請求の範囲において本件発明が明確でないとは認められない。

5 取消理由として採用しなかった特許異議申立ての理由(29条2項)について
(1) 甲1に記載された事項
甲1には,以下の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実成分及び甘味を有する基剤に加えて,以下の成分(a)及び(b);
(a)メントール,メントン,カンファー,プレゴール,イソプレゴール,シネオール,ハッカオイル,ペパーミントオイル,スペアーミントオイル及びユーカリプタスオイルからなる群より選ばれる1種以上の清涼感物質,
(b)3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール,N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド,3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール,p-メンタン-3,8-ジオール,2-l-メントキシエタン-1-オール,3-l-メントキシプロパン-1-オール及び4-l-メントキシブタン-1-オールからなる群より選ばれる1種以上の冷感剤物質,
を含有することを特徴とする果汁含有飲料。
・・・
【請求項6】
ストレート果汁又は濃縮果汁が,柑橘類,リンゴ,モモ,ブドウ,ブルーベリー,ウメ,カシス又はマルメロの果汁であることを特徴とする請求項2記載の果汁含有飲料。
【請求項7】
果汁含有飲料が果実飲料であり,該果実飲料が,果汁飲料,炭酸飲料,清涼飲料,スポーツ飲料,ニアウォーター,アルコール飲料及びドリンク類であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の果汁含有飲料。」
・「【0001】
本発明は,甘味を有する基材に起因するくどい甘みがなく,摂取時及び摂取後にさっぱり感が付与された,嗜好性の高い,甘味を有する基剤を含有する果実成分を含有する飲料製品(以下,「果汁含有飲料」という。)に関する。」
・「【0004】
本発明の目的は,上記従来の問題がない,すなわち果実成分及び甘味を有する基剤を含有するどのような果汁含有飲料に対しても,摂取時及び摂取後にくどい甘味を残さず,さっぱり感が持続的に与えられ,嗜好性が高く,かつ長期加温状態で保存した場合にもさっぱり感の減少が抑制される果汁含有飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,本発明者らは鋭意研究を行った結果,果実成分及び甘味を有する基剤を含有する果汁含有飲料に,メントールなどの清涼感物質及び3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールなどの冷感剤物質を含有させることにより摂取時及び摂取後にくどい甘味を残さず,さっぱり感を持続的に与えられ,嗜好性が高く,かつ長期加温状態で保存した場合にもさっぱり感の減少が抑制される果汁含有飲料を製造できること,またこのような効果は果汁含有飲料の種類によらないことを見出し,本発明を完成した。」
・「【0016】
以下,本発明について詳細に説明する。
本発明の果汁含有飲料とは,前記したとおり果実成分を含む飲料製品のことであり,果実成分とは,果汁,果実抽出物あるいはそれらを濃縮したエキス等の加工物のことをいう。・・・また本発明の果汁含有飲料には,果実飲料としては規格上認められないカテゴリーの「果汁系ニアウオーター」など,果汁の使用割合が10%に満たない新たなカテゴリーの果実成分含有飲料が含まれる。・・・
【0017】
果汁含有飲料の容器の形態は,従来から果汁含有飲料の容器形態として利用されているいずれの形態であってもよく,例えば,従来主として利用されている,内容物が見えるプラスチック容器やガラス瓶などの他,金属缶(スチール,アルミ),紙容器なども用いることができ,特に限定はされない。・・・
【0018】
果汁の種類は,特に限定されないが,例えば,柑橘類果汁(スイートオレンジ果汁,ミカン果汁,グレープフルーツ果汁,レモン果汁,ライム果汁,等),・・・などが挙げられ,好適には,柑橘類果汁,・・・などが挙げられ,さらに好適には,柑橘類果汁・・・などが挙げられる。」
・「【0028】
・・・通常,甘味を有する基剤の添加濃度は,果汁含有飲料全量に対して1?400g/L,好ましくは50?100g/Lの範囲とされる。」
・「【0036】
本発明においては,果汁含有飲料内にフレーバー(飲食品用香料)を共に配合してもよい。その結果,果汁含有飲料に心地よい香気を付与することができる。さらに果汁含有飲料を構成する成分によっては基質特有の異臭がごく僅か発生するときもあるが,そのようなときには異臭をマスキングすることができ,十分な消臭効果を発揮させることが可能になる。本発明において用いられるフレーバーとしては,フルーツノートを有するフレーバーが挙げられ,好ましくは使用する果実の香調のフレーバーを使用すればよい。フルーツノートを有するフレーバーとしては,・・・アルコール類,・・・炭化水素類,・・・などの合成香料及び天然香料などから調製することができる。」
・「【0038】
アルコール類としては,例えば,・・・テルペンアルコール(・・・リナロール,等),・・・などが好ましく例示される。」
・「【0046】
炭化水素類としては,例えば,・・・バレンセンなどを好ましいものとして例示することができる。」
・「【0081】
実施例8(ニアウォーター)
下記表11の処方の成分に精製水を加えて各成分を溶解させ,1000質量部のニアウォーターを調製した。得られたニアウォーターは,飲用時及び飲用後の後味はくどい甘みもなくさっぱりとしていた。
【0082】
【表11】


(2) 甲1に記載された発明
甲1の記載(特に,【0081】(実施例8),【0017】)からすると,甲1には次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明1)
「合計1000質量部に対し,砂糖53.0質量部,オレンジ5倍濃縮果汁2.0質量部,オレンジ様フルーツ香料1.0質量部,メントール0.0005質量部,2-1-メントキシエタン-1-オール0.0001質量部,バニリルブチルエーテル0.00002質量部を含み,内容物が見えるプラスチック容器に充填されるニアウォーター。」
また,甲1の記載(特に,【請求項1】,【請求項6】,【請求項7】,【0017】,【0028】,【0038】,【0046】)からすると,甲1には次の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。
(甲1発明2)
「柑橘類などの果実成分を有し,
リナロールなどのアルコール類,及びバレンセンなどの炭化水素類を含んでもよく,
ニアウォーターとすることができ,
さらに,甘みを含み,甘みを有する基材の添加濃度を果汁含有飲料全量に対して1?400g/Lの範囲としてもよく,
内容物が見えるプラスチック容器に充填される飲料。」
(3) 本件発明1について
ア 甲1発明1に関し
(ア) 本件発明1と甲1発明1とを,その有する機能に照らして対比すると,甲1発明1の「オレンジ5倍濃縮果汁」及び「オレンジ様フルーツ香料」は,本件発明1の「果実香料」に相当し,甲1発明の「ニアウォーター」は「オレンジ5倍濃縮果汁」及び「オレンジ様フルーツ香料」を含むことによって,本件発明1と同様に,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与されることは明らかである。
そして,甲1発明1の「内容物が見えるプラスチック容器」は,本件発明1の「透明な容器」に相当するから,両者は,以下の点で一致し,相違するといえる。
(一致点1)
「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料であって,
(C) 透明な容器に充填されている上記飲料。」
(相違点1)
本件発明1は,「(A) 香気成分としてバレンセン及びリナロールを含み,バレンセンの濃度(X)が0.01?0.2mg/L,リナロールの濃度(Y)が4.0mg/L以下であり,Y≧3.1X+0.85」であり,「(B) 飲料の液色について,波長660nmにおける吸光度≦0.06,かつ,純水を基準とした場合のΔE値(色差)≦3.5」であるのに対し,甲1発明1においては,これらの点が不明である点。
(イ) 上記相違点1について検討する。
バレンセン及びリナロールはオレンジ果汁に含まれる成分であるから(甲13Table1,甲14Table1,甲15例4),「オレンジ5倍濃縮果汁」及び「オレンジ様フルーツ香料」を含む甲1発明1においても,バレンセン及びリナロールが香気成分として含まれている可能性がある。
しかしながら,その具体的な濃度は不明であって,甲1発明1の目的に照らしても,香気成分としてバレンセン及びリナロールに着目しているものとは認められない。
甲10に,ニアウォーターの波長660nmにおける吸光度が,無色透明の酸性飲料では0.00?0.02,好ましくは0.00?0.01であることが記載され(【0019】,【0020】),甲1発明1がニアウォーターであることからして,純水を基準とした場合のΔE値(色差)≦3.5であることが可能性があるとしても,甲1に本件発明の課題に関する記載はなく,甲1発明1において,香気成分としてバレンセン及びリナロールに着目し,それを特定の範囲の濃度とすることについて,動機付けは特に認められない。
その他の証拠をみても,ニアウォーターにおいて,香気成分としてバレンセン及びリナロールに着目し,それを特定の範囲の濃度とすることに関する記載はない。
そして,本件発明1は,上記相違点1に係る構成を有することにより,前記のような格別の効果を奏するものであるから(前記3(1)ア),この点は単なる設計的事項ではない。
よって,甲1発明1において,上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えるものとすることが,当業者が容易に想到できた事項であるとは認められない。
(ウ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は,以下の主張をし,上記発明特定事項(A)とすることに技術的意義はないから,単なる設計的事項である旨主張している。
・バレンセン及びリナロールのみが喉から鼻を通じて戻るのか,他の香気成分も同様であるのか不明で,他の香気成分も同様であるなら,他の香気成分による影響があるから,本件発明1の課題を解決できると理解することができない(特許異議申立書43?44頁)。
・実施例1及び2を参酌しても,技術的意義を見出すことはできない。まず,合否の違いは極めて微差で,パネラーの人数,口中香の個人によるバラつき(甲16・88?89頁)を踏まえれば,直線Y=3.1X+0.85によって,口中香の効果が区別されるとは理解しがたく,リナロール及びバレンセンの濃度が極めて希薄で個人によるバラつきを排除しきれないから,実施例1の実験をもって,本件発明1の課題を解決できると理解することができない(同44?45頁)。次に,本件特許明細書の記載(【0031】)に基づいては,リナロール及びバレンセンの含有量を正確に測定することはできないから,実施例2の「測定値」は本件発明1の「含有量」とは一致せず,実施例1の「配合量」と本件発明1の「含有量」とは一致しないから,実施例1及び2を参酌しても,技術的意義を見出すことはできない(同45?48頁)。加えて,実施例2に関し,市販品1は比較対象として適切ではないから,試作品20が市販品1より優れているとしても,それが上記発明特定事項(A)によりもたらされるとは理解することはできない(同48?49頁)。
しかしながら,他の香気成分に相互作用があるとしても,当然にミカン科カンキツ属の果実風味を奏しないとは認められず,実施例1及び2の結果から,上記発明特定事項(A)を満たすことにより,本件発明の課題を解決し得ることがわかる。
通常,官能評価は専門のパネラーによるから,口中香の個人によるバラつきを考慮しても,実施例1及び2の結果の信用性に格別問題は認められず,実施例1の「配合量」,実施例2の「測定値」を,「含有量」といって差し支えないことは,既に述べたとおりである(前記3(3)ウ)。
また,実施例2に関し,試作品20と市販品1とは香気成分の組成や香気成分の合計量が相違するとしても,試作品20が所定の効果を発揮していることは明らかで,実施例1の結果も踏まえれば,それが上記発明特定事項(A)によりもたらされるものと認められる。
そして,本件発明1において,上記発明特定事項(A)とすることにより,格別の効果を奏するものであるから,この点に技術的意義は認められ,単なる設計的事項であるとは認められない。
よって,特許異議申立人の主張は採用することができない。
(エ) 以上のとおり,甲1発明1において,上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えるものとすることが,当業者が容易に想到できた事項であるとは認められないから,本件発明1は,甲1発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
イ 甲1発明2に関し
(ア) 本件発明1と甲1発明2とを,その有する機能に照らして対比すると,甲1発明2の「リナロール」及び「バレンセン」は,本件発明1の「果実香料」に相当し,バレンセン及びリナロールはオレンジ果汁に含まれる成分であるから(前記ア(イ)),甲1発明2の「飲料」は,本件発明1と同様に,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与されることは明らかである。
そして,甲1発明2の「内容物が見えるプラスチック容器」は,本件発明1の「透明な容器」に相当するから,両者は,以下の点で一致し,相違するといえる。
(一致点2)
「果実香料を配合して得られる,ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料であって,
(C) 透明な容器に充填されている上記飲料。」
(相違点2)
本件発明1は,「(A) 香気成分としてバレンセン及びリナロールを含み,バレンセンの濃度(X)が0.01?0.2mg/L,リナロールの濃度(Y)が4.0mg/L以下であり,Y≧3.1X+0.85」であり,「(B) 飲料の液色について,波長660nmにおける吸光度≦0.06,かつ,純水を基準とした場合のΔE値(色差)≦3.5」であるのに対し,甲1発明2においては,バレンセン及びリナロールを含むが,これらの点が不明である点。
(イ) 上記相違点2について検討する。
甲1発明2は,バレンセン及びリナロールが香気成分として含むが,その具体的な濃度は不明であって,いずれも,フルーツノートを有するフレーバーの一例として例示されているに過ぎず,甲1発明2の目的に照らしても,香気成分としてバレンセン及びリナロールに着目しているものとは認められない。
甲1発明2は,内容物が見えるプラスチック容器に充填される飲料であって,ニアウォーターとすることができるが,甲1に本件発明の課題に関する記載はなく,その場合に,香気成分としてバレンセン及びリナロールに着目し,それを特定の範囲の濃度とすることについて,動機付けは特に認められない。
その他の証拠をみても,ニアウォーターにおいて,香気成分としてバレンセン及びリナロールに着目し,それを特定の範囲の濃度とすることに関する記載はない。
そして,本件発明1は,上記相違点2に係る構成を有することにより,前記のような格別の効果を奏するものであるから(前記3(1)ア),この点は単なる設計的事項ではない。
よって,甲1発明2において,上記相違点2に係る本件発明1の構成を備えるものとすることが,当業者が容易に想到できた事項であるとは認められない。
(ウ) 特許異議申立人は,甲1発明1の場合と同様に,上記発明特定事項(A)とすることに技術的意義はないから,単なる設計的事項である旨主張しているが,特許異議申立人の主張は採用することができない(前記ア(ウ))。
(エ) 以上のとおり,甲1発明2において,上記相違点2に係る本件発明1の構成を備えるものとすることが,当業者が容易に想到できた事項であるとは認められないから,本件発明1は,甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(4) 本件発明2?7について
既に述べたとおり,本件発明1が,甲1発明1及び甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件発明1を特定するための事項をすべて含む本件発明2?7は,その余の事項を検討するまでもなく,同様に,甲1発明1及び甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
(5) まとめ
本件発明1?7は,甲1発明1及び甲1発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

第4 むすび
以上のとおり,本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
本件特許(請求項1?7に係る特許)は,特許法36条6項1号,同条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとは認められず,同法29条2項の規定に違反してされたものとは認められないから,前記取消理由及び特許異議申立て理由により取り消すことはできない。
また,他に本件特許(請求項1?7に係る特許)を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実香料を配合して得られる、ミカン科カンキツ属の果実風味が付与された飲料であって、
(A) 香気成分としてバレンセン及びリナロールを含み、バレンセンの濃度(X)が0.01?0.2mg/L、リナロールの濃度(Y)が4.0mg/L以下であり、Y≧3.1X+0.85であり;
(B) 飲料の液色について、波長660nmにおける吸光度≦0.06、かつ、純水を基準とした場合のΔE値(色差)≦3.5であり;
(C) 透明な容器に充填されている上記飲料。
【請求項2】
純水を基準とした場合のΔE値(色差)が1.2以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
さらに、Y≦75X-2.0を満たす、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
さらに、甘味成分を含有し、飲料のBrix値が3.0?6.0である、請求項1?3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
前記容器の飲み口となる開口部が1200mm^(2)以下であり、前記容器の容量が2000mL以下である、請求項1?4のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項6】
バレンセンの濃度が0.15mg/L以下である、請求項1?5のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
リナロールの濃度が2.5mg/L以下である、請求項1?6のいずれかに記載の飲料。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-15 
出願番号 特願2015-558677(P2015-558677)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 井上 哲男
窪田 治彦
登録日 2016-10-21 
登録番号 特許第6027696号(P6027696)
権利者 サントリーホールディングス株式会社
発明の名称 果実風味が付与された飲料  
代理人 中村 充利  
代理人 中村 充利  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  

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