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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H05K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
管理番号 1337022
異議申立番号 異議2017-700422  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-26 
確定日 2017-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6069505号発明「スイッチキャビネット内部に配置された部品の冷却設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6069505号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6069505号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6069505号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成25年8月8日(パリ優先権主張 2012年8月31日 ドイツ(DE))に特許出願されたものであって、平成29年1月6日に特許権の設定登録がされ、その特許に対し、平成29年4月26日に特許異議申立人伊神光則(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。その後、当審において同年10月19日付けで取消理由を通知し、特許権者のリッタル ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲーから同年11月14日付けで意見書および訂正請求書が提出されたものである。


第2 訂正請求による訂正の適否

1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
平成29年11月14日付け訂正請求された訂正(以下、「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第6069505号の特許請求の範囲を、訂正後の請求項1?7について訂正することを求める。」
というものである。
そして、本件訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「いずれの場合にも、前記凝縮ゾーン及び前記蒸発ゾーンが空気/冷却液熱交換器(10)を有することを特徴とする冷却設備。」と記載されているのを、
「いずれの場合にも、前記凝縮ゾーン及び前記蒸発ゾーンが空気/冷却液熱交換器(10)を有し、
前記蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)は、第1の冷却液のための第1のラインシステム(13)、及び該第1のラインシステム(13)から流体的に分離した、第2の冷却液のための第2のラインシステム(14)を有し、
前記第1及び第2のラインシステム(13,14)は相互に熱的に連結しており、
前記第1のラインシステム(13)は前記第1の冷却液回路(3)の一体部分であり、
前記第2のラインシステム(14)は前記第2の冷却液回路(4)の一体部分であることを特徴とする冷却設備。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、5?7も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、
「請求項4に記載の冷却設備。」と記載されているのを、
「請求項1?3のいずれか1項に記載の冷却設備。」に訂正する。(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6及び7も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1?5のいずれか1項に記載の冷却設備。」と記載されているのを、
「請求項1?3,5のいずれか1項に記載の冷却設備。」に訂正する。(請求項6の記載を直接的に引用する請求項7も同様に訂正する。)

2 訂正の適否の判断
(1)一群の請求項について
訂正事項1に係る本件訂正前の請求項1ないし7について、請求項2ないし7は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、本件訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし7は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。

(2)訂正事項1
ア.訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である「蒸発ゾーンの空気/冷却液熱交換器」の構成を具体的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ.新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項4に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.独立特許要件について
本件においては訂正前の請求項1及び2について特許異議申立がなされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
特許異議の申立てがされていない請求項3、5ないし7は、請求項1の訂正によって、訂正されることになったものであるから、独立特許要件について検討する必要がある。
ここで、下記「第5」から「第6」で示すように、訂正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号、同条第2項の規定により特許を受けることができないものには該当しない。そうすると、訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用する訂正後の請求項3、5ないし7に係る発明は、訂正後の請求項1よりも更に発明特定事項を追加したものであるから、同様の理由により特許法第29条第1項第3号、同条第2項の規定により特許を受けることができないものには該当しない。また、訂正後の請求項3、5ないし7に係る発明が、他に特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由があるとは認められない。よって、訂正後の請求項3、5ないし7に係る発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

(3)訂正事項2
ア.訂正の目的について
訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ.新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項3
ア.訂正の目的について
訂正前の請求項5は請求項4の記載を引用する記載であり、訂正前の請求項4は請求項1の記載を直接又は間接的に引用しているものである。そうすると、訂正後の請求項5は、請求項4を含んでなる訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用しているものだから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ.新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項3は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(5)訂正事項4
ア.訂正の目的について
訂正事項4は、訂正事項2(請求項4を削除)により、請求項4を引用していた訂正前の請求項6について請求項4の引用を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ.新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項4は、引用する請求項を一部削除したものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.特許出願の際に独立して特許を受けることができること
上記「(2)ウ」と同様に、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 本件特許発明

本件訂正は、上記「第2」のとおり認められたので、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、・・・「本件特許発明7」という。また、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正による特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を示す。

【請求項1】
スイッチキャビネット(1)と、
閉じた第1の冷却液回路(3)、及び該第1の冷却液回路(3)から流体的に分離した第2の冷却液回路(4)を有する冷却装置(2)と、
を備えた、前記スイッチキャビネット(1)の内部(9)に配置された部品の冷却設備であって、
前記第1の冷却液回路(3)は冷却機あるいは冷水装置を有し、
前記第2の冷却液回路(4)はヒートパイプ装置あるいは2相性の熱サイフォンを有し、
前記冷却装置(2)は、前記スイッチキャビネット(1)の周囲に開かれている第1の空気吸入口(6)及び第1の空気吹き出し口(7)を有する第1の通気道(5)と、前記スイッチキャビネット(1)の前記内部(9)に開かれている第2の空気吸入口(6)及び第2の空気吹き出し口(7)を有する第2の通気道(8)と、をさらに有し、
前記冷却機の凝縮器(11)あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器(12)、及び、前記ヒートパイプ装置の凝縮ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの凝縮ゾーンが、前記第1の通気道(5)に配置され、
前記冷却機の蒸発器あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器(12)、及び、前記ヒートパイプ装置の蒸発ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの蒸発ゾーンが、前記第2の通気道(8)に配置され、
いずれの場合にも、前記凝縮ゾーン及び前記蒸発ゾーンが空気/冷却液熱交換器(10)を有し、
前記蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)は、第1の冷却液のための第1のラインシステム(13)、及び該第1のラインシステム(13)から流体的に分離した、第2の冷却液のための第2のラインシステム(14)を有し、
前記第1及び第2のラインシステム(13,14)は相互に熱的に連結しており、
前記第1のラインシステム(13)は前記第1の冷却液回路(3)の一体部分であり、
前記第2のラインシステム(14)は前記第2の冷却液回路(4)の一体部分であることを特徴とする冷却設備。

【請求項2】
前記第1の通気道経由の空気の流れ方向において、前記冷却機の前記凝縮器(11)は、前記ヒートパイプ装置の前記凝縮ゾーン(11.2)の下流に配置され、
前記第2の通気道経由の空気の流れ方向において、前記冷却機の前記蒸発器(11.1)は、前記ヒートパイプ装置の前記蒸発ゾーン(11.3)の下流に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却設備。
【請求項3】
前記冷水装置の前記空気/水熱交換器(12)は、前記第1の通気道経由の空気の流れ方向における前記ヒートパイプ装置の前記凝縮ゾーンの下流、もしくは前記第2の通気道(8)経由の空気の流れ方向における前記ヒートパイプ装置の前記蒸発ゾーンの下流に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却設備。
【請求項4】 (削除)
【請求項5】
前記蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)の前記第1のラインシステム(13)は、前記冷却機の前記蒸発器、あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器(12)を有する、もしくは形成することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の冷却設備。
【請求項6】
前記凝縮ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)は、第1の冷却液のための第1のラインシステム(13)、及び該第1のラインシステム(13)から流体的に分離した、第2のための冷却液の第2のラインシステム(14)を有し、
前記第1及び第2のラインシステム(13,14)は相互に熱的に連結しており、
前記第1のラインシステム(13)は前記第1の冷却液回路(3)の一体部分であり、
前記第2のラインシステム(14)は前記第2の冷却液回路(4)の一体部分であることを特徴とする請求項1?3,5のいずれか1項に記載の冷却設備。
【請求項7】
前記凝縮ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)の前記第1のラインシステム(13)は、前記冷却機の凝縮器、あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器を有する、もしくは形成することを特徴とする請求項6に記載の冷却設備。


第4 申立理由の概要

異議申立人は、以下の申立理由1、2(以下、「理由1」「理由2」という。)により、請求項1、2に係る特許発明は取り消されるべきである旨を主張している。

<理由1>特許法第29条第1項第3号について(同法113条第2号)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明と同一である。

<理由2>特許法第29条第2項について(同法113条第2号)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 当審の判断

1 甲第1号証について
異議申立人が証拠として提出した甲第1号証(特開2007-129095号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0018】(第1実施形態) 本実施形態では、通信機器などが納められている携帯電話基地局の局舎内を冷却する基地局用冷却装置を例として説明する。
・・・(中略)・・・
【0020】 図2に示すように、本実施形態の冷却装置1は、筐体としての局舎2の扉3に取り付けられるものである。局舎2は、扉3が閉められた状態のとき、内部が外部から密閉される。また、局舎2の内部には、アンテナ4を介して、携帯電話機5や最寄りの交換局等と通信を行うための通信機器6が収納されており、この通信機器6が作動することで、通信機器6が発熱し、局舎2の内部空気(内気)の温度が上昇する。本実施形態では、この内気が高温流体に相当し、局舎2の外部空気(外気)が低温流体に相当する。」

イ.「【0030】 また、本実施形態では、ケース11の内部空間のうち、図1(a)中の左側が内気側領域31であり、局舎2の内気が流通する内気流路となり、図1(a)中の右側が外気側領域32であり、局舎2の外気が流通する外気流路となる。なお、内気側領域31、外気側領域32が、それぞれ、特許請求の範囲に記載の高温流体側流路、低温流体側流路に相当する。
【0031】 そして、図1(a)に示すように、内気側領域31には、ケース11の下側に内気側熱交換器12が配置され、ケース11の上側に内気用ファン14が配置されている。一方、外気側領域32には、ケース11の上側に外気側熱交換器13が配置され、ケース11の下側に外気用ファン15が配置されている。
【0032】 すなわち、本実施形態では、冷却装置1を正面から見たとき、内気側熱交換器12と外気側熱交換器13は、それぞれ、ケース内部の左下と右上という対角方向に配置されており、内気用ファン14と外気用ファン15は、それぞれ、ケース内部の左上と右下という対角方向に配置されている。
【0033】 2つの内気側熱交換器12は、1つが沸騰冷却用の内気側熱交換器(沸騰器)12bであり、もう1つが冷凍サイクル用の内気側熱交換器(蒸発器)12aである。本実施形態では、図1(b)、(d)に示すように、冷凍サイクル用の内気側熱交換器12aは、沸騰冷却用の内気側熱交換器12bよりもケース11の背面22に近い位置に配置されている。」

ウ.「【0038】 また、図1(b)、図2に示すように、ケース11の背面22のうち、内気用ファン14に対向する位置と、内気側熱交換器12に対向する位置とに、それぞれ、内気取り入れ口と、内気排出口となる開口部22a、22bが設けられている。
【0039】 これにより、図1(b)、図2に示すように、内気が、ケース11の上方に位置する内気取り入れ口22aから取り入れられ、内気側領域31を上から下に向かって流れ、ケース11の下方に位置する内気排出口22bから排出されるようになっている。このため、局舎2の内気は、図2に示すように、冷却装置1の内部でUターンするように、局舎2の内部を流れるようになっている。
【0040】 2つの外気側熱交換器13は、1つが沸騰冷却用の外気側熱交換器(凝縮器)13bであり、もう1つが冷凍サイクル用の外気側熱交換器(凝縮器)13aである。本実施形態では、図1(c)、(d)に示すように、冷凍サイクル用の外気側熱交換器13aは、沸騰冷却用の外気側熱交換器13bよりもケース11の前面21に近い位置に配置されている。」

エ.「【0046】 また、図1(c)に示すように、ケース11の前面21のうち、外気用ファン15に対向する位置と、外気側熱交換器13に対向する位置とに、それぞれ、外気取り入れ口と、外気排出口となる開口部21a、21bが設けられている。
【0047】 これにより、図1(c)に示すように、外気は、ケース11の下方に位置する外気取り入れ口21aから取り入れられ、外気側領域32を下から上に向かって流れ、ケース11の上方に位置する外気排出口21bから排出されるようになっている。このように、本実施形態の冷却装置1は、ケース11の内部に、内気と外気とを対向して流すことで、内気側熱交換器12と外気側熱交換器13を含む冷媒回路で、対向流式熱交換を行うようになっている。
【0048】 以上説明したように、本実施形態では、内気用ファン14は、内気流路(内気流れ)の上流側に配置され、内気側熱交換器12は、内気流路の下流側に配置されている。また、外気用ファン15は、外気流路(外気流れ)の上流側に配置され、外気側熱交換器13は、外気流路の下流側に配置されている。
【0049】 さらに、2つの内気側熱交換器12a、12bにおいては、沸騰冷却用の内気側熱交換器12bが、冷凍サイクル用の内気側熱交換器12aよりも内気流路の上流側に配置されている。同様に、2つの外気側熱交換器13a、13bにおいても、沸騰冷却用の外気側熱交換器13bが、冷凍サイクル用の外気側熱交換器13aよりも外気流路の上流側に配置されている。」

オ.「【0063】 本実施形態では、このように配置された沸騰冷却用のガス配管44bおよび液配管45bを介して、冷媒が沸騰冷却用の内気側熱交換器12bと外気側熱交換器13bとの間を循環するようになっている。同様に、冷凍サイクル用のガス配管44aおよび液配管45aを介して、冷媒が冷凍サイクル用の内気側熱交換器12aと外気側熱交換器13aとの間を循環するようになっている。
【0064】 このように、本実施形態の冷却装置1は、図4に示すように、沸騰冷却用の内気側熱交換器12bおよび外気側熱交換器13b、沸騰冷却用のガス配管44bおよび液配管45bにより、密閉された沸騰冷却方式の冷媒回路を形成し、冷凍サイクル用の内気側熱交換器12aおよび外気側熱交換器13a、冷凍サイクル用のガス配管44aおよび液配管45a、減圧膨張弁46、圧縮機47により、密閉された蒸気圧縮式冷凍サイクル方式の冷媒回路を形成している。なお、図4は、本実施形態の冷却装置が備える冷媒回路の概略構成を示している。」

カ.「【0075】 以上説明した構成の沸騰冷却方式の冷媒回路においては、内気側熱交換器12bでは、フィン54を介して、外気よりも高温である内気と、多穴チューブ51内に封入された液相冷媒との間で、熱交換がされる。これにより、液相冷媒が沸騰して、図5に示すように、多穴チューブ51内に気泡が発生する、すなわち、気相冷媒となり、内気が冷却される。
【0076】 一方、外気側熱交換器13bでは、フィン54を介して、内気よりも低温である外気と、多穴チューブ51内に封入された気相冷媒との間で熱交換がされる。これにより、気相冷媒が凝縮して、液滴となり、すなわち、液相冷媒となり、冷媒の熱が外気に放熱される。
【0077】 このとき、外気側熱交換器13bは、内気側熱交換器12bよりも上側に配置されているので、沸騰冷却方式の冷媒回路では、気相冷媒と液相冷媒との密度差により、冷媒は、内気側熱交換器12b→ガス配管44b→外気側熱交換器13b→液配管45b→内気側熱交換器12bの順(図1(a)、図5では時計回りの方向)に、自然循環する。
【0078】 また、冷凍サイクル方式の冷媒回路を構成する内気側熱交換器12a、外気側熱交換器13aとして、本実施形態では、沸騰冷却用の内気側熱交換器12b、外気側熱交換器13bと同様に、マルチフローパス型熱交換器を用いている。これらの内部構造については、上記した沸騰冷却用の内気側熱交換器12b、外気側熱交換器13bと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0079】 冷凍サイクル方式の冷媒回路では、冷媒は、図1(a)中において、圧縮機47から反時計回りの方向に流れる。すなわち、圧縮機47→ガス配管44a→外気側熱交換器13a→液配管45a→減圧膨張弁46→内気側熱交換器12a→液配管45a→内気側熱交換器12a→ガス配管44a→圧縮機47の順に、冷媒は圧縮機47によって強制的に循環する。」

上記アないしカによれば(特に下線部に注目。)、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「局舎と、それぞれ密閉された蒸気圧縮式冷凍サイクル方式の冷媒回路と沸騰冷却方式の冷媒回路を有する冷却装置と、を備え、内部に通信機を収納した局舎を冷却する基地局用冷却装置であって、
蒸気圧縮式冷凍サイクル方式の冷媒回路は、冷媒は圧縮機によって強制的に循環し、沸騰冷却方式の冷媒回路は、気相冷媒と液相冷媒との密度差により冷媒が自然循環し、
冷却装置は、局舎の外部に開かれた外気取り入れ口及び外気排出口を有する外気側領域と、局舎の内部に開かれた内気取り入れ口及び内気排出口を有する内気側領域と、を有し、
冷凍サイクル用の外気側熱交換器及び沸騰冷却用の外気側熱交換器が、外気側領域に配置され、冷凍サイクル用の内気側熱交換器及び沸騰冷却用の内気側熱交換器が、内気側領域に配置され、
沸騰冷却用の外気側熱交換器及び沸騰冷却用の内気側熱交換器が空気と冷媒の熱交換器を有する、
基地局用冷却装置。」

2 本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
甲1発明の「局舎」「通信機」「基地局用冷却装置」は、それぞれ本件特許発明1の「スイッチキャビネット」「部品」「冷却設備」に相当する。
また、甲1発明の「蒸気圧縮式冷凍サイクル方式の冷媒回路」「沸騰冷却方式の冷媒回路」「冷却装置」は、それぞれ本件特許発明1の「第1の冷却液回路」「第2の冷却液回路」「冷却装置」に相当する。そして、甲1発明の「冷凍サイクル用の外気側熱交換器」及び「沸騰冷却用の外気側熱交換器」は、それぞれ本件特許発明1の「冷却機の凝縮器」及び「ヒートパイプ装置の凝縮ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの凝縮ゾーン」に相当し、これらを合わせて本件特許発明1の「凝縮ゾーンの空気/冷却液熱交換器」を構成する。同様に、甲1発明の「冷凍サイクル用の内気側熱交換器」及び「沸騰冷却用の内気側熱交換器」は、それぞれ本件特許発明1の「冷却機の蒸発器」及び「ヒートパイプ装置の蒸発ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの蒸発ゾーン」に相当し、これらを合わせて本件特許発明1の「蒸発ゾーンの空気/冷却液熱交換器」を構成する。
また、甲1発明の「冷媒は圧縮機によって強制的に循環」する構成は、本件特許発明1の「冷却機」の構成に相当する。同様に、甲1発明の「気相冷媒と液相冷媒との密度差により冷媒が自然循環」する構成は、本件特許発明1の「ヒートパイプ装置あるいは2相性の熱サイフォン」の構成に相当する。
また、甲1発明の「外気取り入れ口及び外気排出口」及び「外気側領域」は、それぞれ本件特許発明1の「第1の空気吸入口及び第1の空気吹き出し口」及び「第1の通気道」に相当する。同様に、甲1発明の「内気取り入れ口及び内気排出口」及び「内気側領域」は、それぞれ本件特許発明1の「第2の空気吸入口及び第2の空気吹き出し口」及び「第2の通気道」に相当する。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の点で一致ないし相違する。
<一致点>
スイッチキャビネットと、
閉じた第1の冷却液回路、及び該第1の冷却液回路から流体的に分離した第2の冷却液回路を有する冷却装置と、
を備えた、前記スイッチキャビネットの内部に配置された部品の冷却設備であって、
前記第1の冷却液回路は冷却機を有し、
前記第2の冷却液回路はヒートパイプ装置あるいは2相性の熱サイフォンを有し、
前記冷却装置は、前記スイッチキャビネットの周囲に開かれている第1の空気吸入口及び第1の空気吹き出し口を有する第1の通気道と、前記スイッチキャビネットの前記内部に開かれている第2の空気吸入口及び第2の空気吹き出し口を有する第2の通気道と、をさらに有し、
前記冷却機の凝縮器、及び、前記ヒートパイプ装置の凝縮ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの凝縮ゾーンが、前記第1の通気道に配置され、
前記冷却機の蒸発器、及び、前記ヒートパイプ装置の蒸発ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの蒸発ゾーンが、前記第2の通気道に配置され、
いずれの場合にも、前記凝縮ゾーン及び前記蒸発ゾーンが空気/冷却液熱交換器を有する、
冷却設備。」

<相違点>
蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器について、本件特許発明1は「第1の冷却液のための第1のラインシステム、及び該第1のラインシステムから流体的に分離した、第2の冷却液のための第2のラインシステムを有する、前記第1及び第2のラインシステムは相互に熱的に連結しており、前記第1のラインシステムは前記第1の冷却液回路の一体部分であり、前記第2のラインシステムは前記第2の冷却液回路の一体部分である」のに対して、甲1発明にはその旨の特定がされていない点。

3 相違点についての判断
本件特許発明1における「蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器」の「第1のラインシステム」及び「第2のラインシステム」は、甲1発明の「冷凍サイクル用の内気側熱交換器」及び「沸騰冷却用の内気側熱交換器」に対応するものである。そこで、この2つの内気側熱交換器について甲第1号証の記載を参酌すると、互いの内気側熱交換器は「近接して配置」(段落【0037】、図1(d)を参照。)されているに過ぎず、本件特許発明1で特定された「相互に熱的に連結」した点は記載されていない。そして、この点を容易といえる証拠は他にない。
なお、異議申立人は、訂正前の請求項4に係る事項については特許異議の申立てを主張しておらず、訂正前の請求項1及び2に係る事項のみ特許異議の申立ての理由を主張したのであるから、本件特許発明1(訂正前の請求項4が実質的に付加された訂正後の請求項1)については、特許異議の申立ての理由はない。
よって、相違点は、甲1発明に記載された事項ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易になし得た事項とも認められない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
また、本件特許発明2は、本件特許発明1よりも更に発明特定事項を追加したものであるから、同様の理由により、甲第1号証に記載された発明と同一ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。


第6 むすび

特許異議申立書に記載した理由1及び2によっては、請求項1及び2係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチキャビネット(1)と、
閉じた第1の冷却液回路(3)、及び該第1の冷却液回路(3)から流体的に分離した第2の冷却液回路(4)を有する冷却装置(2)と、
を備えた、前記スイッチキャビネット(1)の内部(9)に配置された部品の冷却設備であって、
前記第1の冷却液回路(3)は冷却機あるいは冷水装置を有し、
前記第2の冷却液回路(4)はヒートパイプ装置あるいは2相性の熱サイフォンを有し、
前記冷却装置(2)は、前記スイッチキャビネット(1)の周囲に開かれている第1の空気吸入口(6)及び第1の空気吹き出し口(7)を有する第1の通気道(5)と、前記スイッチキャビネット(1)の前記内部(9)に開かれている第2の空気吸入口(6)及び第2の空気吹き出し口(7)を有する第2の通気道(8)と、をさらに有し、
前記冷却機の凝縮器(11)あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器(12)、及び、前記ヒートパイプ装置の凝縮ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの凝縮ゾーンが、前記第1の通気道(5)に配置され、
前記冷却機の蒸発器あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器(12)、及び、前記ヒートパイプ装置の蒸発ゾーンあるいは前記2相性の熱サイフォンの蒸発ゾーンが、前記第2の通気道(8)に配置され、
いずれの場合にも、前記凝縮ゾーン及び前記蒸発ゾーンが空気/冷却液熱交換器(10)を有し、
前記蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)は、第1の冷却液のための第1のラインシステム(13)、及び該第1のラインシステム(13)から流体的に分離した、第2の冷却液のための第2のラインシステム(14)を有し、
前記第1及び第2のラインシステム(13,14)は相互に熱的に連結しており、
前記第1のラインシステム(13)は前記第1の冷却液回路(3)の一体部分であり、
前記第2のラインシステム(14)は前記第2の冷却液回路(4)の一体部分であることを特徴とする冷却設備。
【請求項2】
前記第1の通気道経由の空気の流れ方向において、前記冷却機の前記凝縮器(11)は、前記ヒートパイプ装置の前記凝縮ゾーン(11.2)の下流に配置され、
前記第2の通気道経由の空気の流れ方向において、前記冷却機の前記蒸発器(11.1)は、前記ヒートパイプ装置の前記蒸発ゾーン(11.3)の下流に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却設備。
【請求項3】
前記冷水装置の前記空気/水熱交換器(12)は、前記第1の通気道経由の空気の流れ方向における前記ヒートパイプ装置の前記凝縮ゾーンの下流、もしくは前記第2の通気道(8)経由の空気の流れ方向における前記ヒートパイプ装置の前記蒸発ゾーンの下流に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却設備。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記蒸発ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)の前記第1のラインシステム(13)は、前記冷却機の前記蒸発器、あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器(12)を有する、もしくは形成することを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の冷却設備。
【請求項6】
前記凝縮ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)は、第1の冷却液のための第1のラインシステム(13)、及び該第1のラインシステム(13)から流体的に分離した、第2のための冷却液の第2のラインシステム(14)を有し、
前記第1及び第2のラインシステム(13,14)は相互に熱的に連結しており、
前記第1のラインシステム(13)は前記第1の冷却液回路(3)の一体部分であり、
前記第2のラインシステム(14)は前記第2の冷却液回路(4)の一体部分であることを特徴とする請求項1?3,5のいずれか1項に記載の冷却設備。
【請求項7】
前記凝縮ゾーンの前記空気/冷却液熱交換器(10)の前記第1のラインシステム(13)は、前記冷却機の凝縮器、あるいは前記冷水装置の空気/水熱交換器を有する、もしくは形成することを特徴とする請求項6に記載の冷却設備。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-12 
出願番号 特願2015-528872(P2015-528872)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (H05K)
P 1 652・ 121- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 酒井 朋広
國分 直樹
登録日 2017-01-06 
登録番号 特許第6069505号(P6069505)
権利者 リッタル ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
発明の名称 スイッチキャビネット内部に配置された部品の冷却設備  
代理人 牛木 護  
代理人 牛木 護  
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