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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A24F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A24F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A24F
管理番号 1337039
異議申立番号 異議2015-700329  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-12-21 
確定日 2018-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5739800号発明「電気式エーロゾル発生システムにおいて煙成分の形成を制御する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5739800号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-22〕について、訂正することを認める。 特許第5739800号の請求項1ないし22に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5739800号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし22に係る特許についての出願は、平成27年5月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 青木恭光 より特許異議の申立てがなされ、平成28年3月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成28年6月1日付けで意見書が提出され、平成28年7月4日付けで特許異議申立人より上申書が提出され、さらに、平成28年8月3日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成28年11月4日付けで意見書が提出され、平成28年11月22日付けで特許異議申立人より上申書が提出されたものである。そして、平成29年1月5日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内に特許権者より平成29年5月1日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、平成29年6月14日付けで特許異議申立人より意見書が提出され、平成29年7月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成29年10月17日付けで意見書及び訂正請求書が提出され、平成29年11月27日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
なお、平成29年5月1日付けの訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年10月17日付けの訂正請求書による訂正の請求の内容は、特許請求の範囲の記載を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「少なくとも1つの加熱要素」とある(5箇所)のを、いずれも「1つよりも多くの加熱要素」と訂正するとともに、「少なくとも1つ加熱要素」とあるのを、「1つよりも多くの加熱要素」と訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「エーロゾル形成基体とを含み、」とあるのを、「タバコ含有固形エーロゾル形成基体とを含み、」と訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「を含む、ことを特徴とする方法。」とあるのを、「を含み、もって加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させないことを特徴とする方法。」と訂正する。

(4) 訂正事項4ないし7、9、10、15ないし19
特許請求の範囲の請求項2ないし5、8、9、15ないし17、19及び22に「少なくとも1つの加熱要素」とある(ただし、請求項2及び5はそれぞれ2箇所)のを、それぞれ「1つよりも多くの加熱要素」と訂正する。

(5) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7に「前記請求項の周波数が」とあるのを、「前記所定の周波数が」と訂正する。

(6) 訂正事項11及び13
特許請求の範囲の請求項10及び11に「前記金属材料」とあるのを、「前記金属」と訂正する。

(7) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項10に「すくなくとも1つの加熱要素」とあるのを、「1つよりも多くの加熱要素」と訂正する。

(8) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項13に「少なくとも1つ加熱要素」とあるのを、「1つよりも多くの加熱要素」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1は、電気加熱式エーロゾル発生システムに含まれる加熱要素の数を、「少なくとも1つ」から1つである場合を除外して「1つよりも多く」である場合に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 電気加熱式エーロゾル発生システムが、1つよりも多くの加熱要素を含むことは、願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項1は、加熱要素の数に関する択一的な記載から、加熱要素の数が1つである場合を削除するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正事項2は、電気加熱式エーロゾル発生システムに含まれるエーロゾル形成基体がいかなるものであるかについて、特段特定されていなかったものをタバコ含有固形のエーロゾル形成基体に限定しているから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 電気加熱式エーロゾル発生システムに含まれるエーロゾル形成基体が、タバコ含有固形基体であることについては、願書に添付した明細書の段落【0010】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項2は、エーロゾル形成基体に関する構成要件を直列的に付加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3) 訂正事項3について
ア 訂正事項3は、電気加熱式エーロゾル発生システムからの揮発性化合物の放出を制御することが、具体的にどのような技術事項を意味するのかについて、特段特定されていなかったものを、加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させないものに限定しているから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 電気加熱式エーロゾル発生システムからの揮発性化合物の放出を制御することが、加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させないものであることについては、願書に添付した明細書の段落【0007】に記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項3は、揮発性化合物の放出を制御することに関する構成要件を直列的に付加するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4) 訂正事項4ないし7、9、10、12、14ないし19について
ア 訂正事項4ないし7、9、10、15ないし19は、いずれも特許請求の範囲の請求項1の従属項である請求項2ないし5、8、9、15ないし17、19及び22に「前記少なくとも1つの加熱要素」とあるのを、また、訂正事項12は、特許請求の範囲の請求項1の従属項である請求項10に「すくなくとも1つの加熱要素」とあるのを、さらに、訂正事項14は、特許請求の範囲の請求項1の従属項である請求項13に「前記少なくとも1つ加熱要素」とあるのを、訂正事項1による訂正後の請求項1の記載と平仄を合わせるため、それぞれ「前記1つよりも多くの加熱要素」と訂正するものであって、それ自体の記載内容が訂正後の請求項1の記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 電気加熱式エーロゾル発生システムが、1つよりも多くの加熱要素を含むことは、願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されているから、訂正事項4ないし7、9、10、12、14ないし19は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項4ないし7、9、10、12、14ないし19は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5) 訂正事項8について
ア 訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項6の従属項である請求項7に「前記請求項の周波数が」とあるのを、「前記所定の周波数が」と訂正するものであって、請求項6に記載された「所定の周波数」であることを明瞭にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 電気加熱式エーロゾル発生システムの制御方法が、その制御が行われる所定の周波数が100Hzから10kHzから選択されることは、願書に添付した明細書の段落【0022】に記載されているから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項8は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6) 訂正事項11及び13について
ア 訂正事項11及び13は、特許請求の範囲の請求項9の従属項である請求項10及び11に「前記金属材料」とあるのを、「前記金属」と訂正するものであって、請求項9に記載された「金属」であることを明瞭にするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 電気加熱式エーロゾル発生システムの加熱要素において、セラミック材料と金属が複合材料を形成すること、及び、金属がセラミック材料を覆っていることは、願書に添付した明細書の段落【0017】に記載されているから、訂正事項11及び13は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 訂正事項11及び13は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 むすび
したがって、上記訂正の請求による訂正事項1ないし19は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項の規定に適合し、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-22〕について、訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについての当審の判断
1 本件特許の請求項1ないし22に係る発明
本件特許の請求項1ないし22に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1ないし22」といい、それらを総合して「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、上記訂正の請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電気エネルギの供給源と、該電気エネルギの供給源に接続された1つよりも多くの加熱要素と、タバコ含有固形エーロゾル形成基体とを含み、該エーロゾル形成基体が加熱時に複数の揮発性化合物を放出し、該複数の揮発性化合物の各々が、その温度よりも高くなると該揮発性化合物が放出される最低放出温度を有する電気加熱式エーロゾル発生システムからの揮発性化合物の放出を制御する方法であって、
エーロゾル形成基体からの揮発性化合物の放出を防止するために該揮発性化合物のうちの少なくとも1つの最低放出温度よりも低い所定の最高作動温度を選択する段階と、
少なくとも1つの揮発性化合物が放出されるように1つよりも多くの加熱要素の温度を制御する段階と、
を含み、
前記制御する段階は、
前記1つよりも多くの加熱要素の抵抗率を測定する段階と、
前記抵抗率の測定値から前記1つよりも多くの加熱要素の実際の作動温度の値を導出する段階と、
前記実際の作動温度の値を前記所定の最高作動温度と比較する段階と、
前記1つよりも多くの加熱要素の前記実際の作動温度を前記所定の最高作動温度よりも低く保つために、該1つよりも多くの加熱要素に供給される電気エネルギを調節する段階と、
を含み、
もって加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記調節する段階は、前記1つよりも多くの加熱要素の前記実際の作動温度を前記所定の最高作動温度よりも低い所定範囲に保つために、該1つよりも多くの加熱要素に供給される前記電気エネルギを調節する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つよりも多くの加熱要素の前記実際の作動温度の値の前記導出は、抵抗率及び温度のルックアップテーブルから温度値を取り出す段階を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ルックアップテーブルは、所定の組成、長さ、及び断面を有する前記1つよりも多くの加熱要素に対して導出された温度対抵抗率の値を格納することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱要素温度の測定値の前記導出は、
ρ(T)=ρ_(0)*(1+α_(1)T+α_(2)T^(2))
の形式の多項式の値を求める段階を含み、ここで、ρ(T)は、前記1つよりも多くの加熱要素の前記測定抵抗率であり、ρ_(0)は、基準抵抗率であり、Tは、該1つよりも多くの加熱要素温度であり、α_(1)及びα_(2)は、多項式係数であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記制御が所定の周波数で行われることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の周波数が100Hzから10kHzから選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つよりも多くの加熱要素がさらに1つのセラミック材料を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つよりも多くの加熱要素がさらに1つの金属を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック材料と前記金属が1つよりも多くの加熱要素を含む複合材料を形成することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属が前記セラミック材料を覆っていることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記金属がプラチナまたは金のいずれかであることを特徴とする請求項9、10、または11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つよりも多くの加熱要素が加熱ブレードの形態を取ることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電気エネルギを調節する段階は、エネルギを節約するために吸煙の検出と連携して行われることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つよりも多くの加熱要素は鉄アルミニウム合金、チタン系合金、またはニッケル系合金の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
電気エネルギ供給源、
前記電気エネルギ供給源に接続された1つよりも多くの加熱要素、
エーロゾル形成基体、
及び前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコントローラとを備えた、
電気的に加熱されたエーロゾル発生装置。
【請求項17】
前記1つよりも多くの加熱要素がセラミック材料を含んでいる請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記加熱要素は、さらに、金属を含んでいる請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記セラミック材料と金属は前記1つよりも多くの加熱要素を含む複合材料を形成する請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記金属が前記セラミック材料を覆っている請求項18または19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記金属がプラチナまたは金のいずれかである請求項18、19または20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記1つよりも多くの加熱要素が加熱ブレードの形態である請求項18ないし21のいずれか1項に記載の装置。」

2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 平成29年7月13日付けの取消理由通知に記載した取消理由について
1) 取消理由の概要
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の「ア」及び「イ」の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
ア 請求項1に記載された「タバコベースの固形エーロゾル形成基体」は本件発明を不明確にしている。特に、「タバコベース」であるとされる「固形エーロゾル形成基体」に含まれる範囲が明確でない。したがって、請求項1に係る発明は明確でないし、請求項1を直接・間接的に引用する請求項2ないし22に係る発明は明確でない。

イ 請求項1に記載された「もって加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドの形成を減少させる」は本件発明を不明確にしている。特に、「揮発性化合物の数を低減」することと「ホルムアルデヒドの形成を減少させる」こととの関係が不明確であり、また、「ホルムアルデヒドの形成を減少させる」ことの減少前の基準が不明確であって、さらに、どの程度減少させることを特定しているのか不明確である。したがって、請求項1に係る発明は明確でないし、請求項1を直接・間接的に引用する請求項2ないし22に係る発明は明確でない。

2) 判断
上記「ア」及び「イ」は、取り下げられたものとみなされる平成29年5月1日付けの訂正の請求に係る特許請求の範囲の記載に対しての取消理由であって、本件特許の特許請求の範囲には上記「ア」に係る「タバコベースの固形エーロゾル形成基体」及び「イ」に係る「もって加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドの形成を減少させる」との記載はない。なお、「ア」に関し、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「タバコ含有固形エーロゾル形成基体」はその意味内容が明確であるし、「イ」に関し、同じく請求項1に記載された「もって加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させない」ことの意味内容も明確であるといえる。
したがって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が上記「ア」及び「イ」の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである、ということはできない。

(2) 平成28年8月3日付けの取消理由通知に記載した取消理由について
1) 取消理由の概要
本件発明1ないし22は、本件特許の出願(優先日)前日本国内または外国において頒布された刊行物1ないし4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

・刊行物1:特開2000-41654号公報(特許異議申立書の甲第1号証(以下、「甲1」等という。))
・刊行物2:特表2005-525131号公報(甲6)
・刊行物3:特表2005-517421号公報(甲5)
・刊行物4:特表平8-511176号公報(甲7)

なお、特許異議申立書の他の甲号証(甲2?4)は以下のとおりである。ただし、甲4は本件特許の出願(優先日)後に公開されたものである。
・甲2:大木道則、外3名編集、「化学大辞典」、株式会社東京化学同人、2001年6月1日発行、p.638、1667、2069、2261、2363
・甲3:J.Anal.Appl.Pyrolysis 80、2007年、p.297-311
・甲4:BUNSEKI KAGAKU、2011年、Vol.60、No.10、p.791-797

2) 本件発明1について
ア 刊行物1に記載された発明に基いて
(ア) 刊行物1には、次の事項が記載されている
・「【請求項2】 香味生成物品を所定温度に加熱制御する電気式香味生成物品加熱制御装置において、
直流定電圧を発生する定電圧発生手段と、この定電圧発生手段の直流定電圧を受けている通電時の発熱温度に応じて電気抵抗値が変化する発熱体と、通電時に発熱体に流れる電流値から電気抵抗値を検出する抵抗検出手段と、前記香味生成物品の香味熱分解の生じない発熱体の所望温度に応じた所定の電気抵抗値に設定する抵抗設定手段と、この所定の電気抵抗値と前記抵抗検出手段による検出電気抵抗値とを比較し、両値が一致したときに一致信号を出力する比較演算手段と、この比較演算手段からの一致信号を受けた後、前記発熱体への通電路をオン・オフ制御するシーケンス制御手段とを備えたことを特徴とする電気式香味生成物品加熱制御装置。」

・「【0002】
【従来の技術】被加熱物体を加熱制御する場合、その被加熱物体の温度を直接温度センサで検出し、この検出温度に基づいて被加熱物体の温度を制御するのが一般的であるが、エアロゾルシガレットのごとき香味生成物品では物性上の要因から温度センサを使用するのが難しい。しかも、香味生成物品は、一定温度以上の熱を与えたとき、熱分解等の悪影響を受けて所要の香味性能が得られなくなる。そこで、香味生成物品を加熱制御するために、間接的にヒータの発熱温度を制御することにより香味生成物品の加熱温度を制御する必要がある。」

・「【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、香味生成物品を所定温度に加熱制御する電気式香味生成物品加熱制御装置において、直流定電圧を発生する定電圧発生手段の出力側に発熱温度に応じて電気抵抗値が変化する香味生成物品用発熱体を接続し、温度センサを用いることなく、通電時に前記発熱体に流れる電流値から前記電気抵抗値を検出し、この検出電気抵抗値が所定の電気抵抗値に達したとき、前記発熱体への通電路を所定時間ごとにオン・オフ制御する構成である。」

・「【0009】また、別の発明は、直流定電圧を発生する定電圧発生手段と、この定電圧発生手段の直流定電圧を受けている通電時の発熱温度に応じて電気抵抗値が変化する発熱体と、通電時に発熱体に流れる電流値から電気抵抗値を検出する抵抗検出手段と、前記香味生成物品の香味熱分解の生じない発熱体の所望温度に応じた所定の電気抵抗値に設定する抵抗設定手段と、この所定の電気抵抗値と前記抵抗検出手段による検出電気抵抗値とを比較し、両値が一致したときに一致信号を出力する比較演算手段と、この比較演算手段からの一致信号を受けた後、前記発熱体への通電路をオン・オフ制御するシーケンス制御手段とを設けた電気式香味生成物品加熱制御装置である。
【0010】このような手段を講じたことにより、通電時に発熱温度に応じて電気抵抗値が変化する発熱体の電流値から電気抵抗値を検出し、一方、香味生成物品の香味熱分解が生じない発熱体の所望温度に応じた所定の電気抵抗値に設定し、これら設定電気抵抗値と前記検出電気抵抗値とを比較すれば、その両値の一致から発熱体が所望温度に達したことを検出でき、しかも温度センサを用いることなく、確実、かつ、高精度に検出できる。さらに、両値の一致信号を受けてシーケンス制御手段が発熱体への通電路を適切にオン・オフ制御することにより、発熱体を安定な状態で所望温度に制御できる。」

・「【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明装置の一実施の形態を説明するに先立ち、香味生成物品の概略構成について説明する。
【0015】(1) 香味生成物品について。
【0016】香味生成物品は、本出願人において既に出願済みであり(特願平9-335743号)、具体的には図5に示すような構成のものが提案されている。
【0017】この香味生成物品20は、通常のシガレットとほぼ同じ使用感および香味性能が得られるように、使用材料,外観,寸法等が市販のシガレットに準じて作られている。すなわち、香味生成物品20は、通常のシガレットのたばこ巻きに相当する部分となる主管21と、その主管21の一端部にチップペーパー22を介して接続されるフィルタ23とによって構成されている。主管21は硬質の厚紙からなり、その先端部分には後述するように香味成分等を含む固体状原料の筒状成形体30が同心状に内蔵され、一方、フィルタ23はプラグ巻取紙で巻かれたセルロースジアセテートなどの繊維濾過材が用いられている。
【0018】主管21およびチップペーパー22は香味生成物品20のガス流路24を規定するためのケーシング25を構成する。このケーシング25は主管21の先端側に空気を取込む空気取込口26が設けられ、一方、フィルタ23の端部には使用者において香味を吸引する吸引口27が設けられている。そして、空気取込口26と吸引口27との間のケーシング25内にガス流路24が設けられている。
【0019】ケーシング25は、市販のシガレットと同じ外径,すなわち使用者がシガレットと同様に口に自然にくわえることができる程度の外径をもった直線的な円筒形となっている。なお、ケーシング25の材料としては、通常のシガレットとほぼ同じ使用感を生み出すように紙が使用されるが、香味生成物品を燃焼させずに原料を加熱して吸引対象物である香味を生成することから、香味生成物品20の使用温度に応じて種々の材料が選択使用される。ケーシング25の材料として、例えば使用温度が200°C以下の場合には紙、200°C?400°Cの場合には耐熱性プラスチック、400°C以上の場合にはセラミックス,金属などが使用される。
【0020】前記筒状成形体30は、図5に示すような形状,つまり通気性の低い緻密な円筒体として形成されている。この成形体30の中心にはヒータ挿入穴31が形成され、この挿入穴31には成形体30を加熱する加熱用ヒータ1が着脱自在に挿入される。この挿入穴31の後端面中心にはヒータ挿入穴31よりも十分小径の透孔32が形成され、さらに成形体中実部分である円筒壁33の外側面の相対向する2個所には軸方向にそって溝34が形成されている。
【0021】これらヒータ挿入穴31、透孔32および溝34は、成形体30で生成される香味やエアロゾルの成分を含む加熱ガスを搬送するための通路の機能の他、香味やエアロゾルの成分を含む加熱ガスを効率よく生成するように成形体30上の蒸発面積を確保する機能をもっている。
【0022】28はケーシング25に形成されたガス流路24に冷却空気を導入する小径の透孔である。成形体30で生成される香味やエアロゾルの成分を含む加熱ガスは透孔28により導入された外気と混合冷却され、エアロゾルの生成が助長される。なお、外気導入用の透孔28に代え、ケーシング25の一部を通気性の材料で形成し、ケーシング25の壁の通気特性を利用して外気を導入することもありうる。
【0023】ところで、燃焼せずに加熱により香味を生成する媒体である原料の成形体30は、熱分解の影響を受けるバインダー、香味成分の揮散を防止する担持素材、香味成分、エアロゾル基剤および水などが含有されている。この成形体30は、押出し、プレス(金型、ラバー)、鋳込み、射出成形等の圧力による成形方法の何れを用いて、通気性の低い緻密な固体物として形成される。
【0024】前記バインダーは内容成分を混合後に固結し、成形体30に必要な機械的強度を付与するために用いられ、有機、無機に拘らず種々の材料を選択することができ、例えば鉱物系粘土、珪酸塩、リン酸塩、セメント、シリカ、石膏、石灰、でん粉、糖、海草、蛋白、たばこ粉末等を挙げることができる。香味を生成する香味成分およびエアロゾル煙を生成するエアロゾル基剤は、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。香味成分としては、例えばメンソール、カフェイン、或いは熱分解により香味を生成する配糖体等の前駆体或いはたばこ抽出物成分やたばこ煙凝縮物成分等のたばこ成分を用いることができる。
【0025】(2) 次に、以上のような香味生成物品20を装着して成形体30を加熱制御する加熱制御装置について説明する。
【0026】図1は本発明に係わる加熱制御装置の一実施の形態を示す構成図である。
【0027】同図において1は前述した香味生成物品20を加熱する加熱用ヒータ(発熱体)であって、この加熱用ヒータ1には直流電源2が定電圧発生回路3を介して印加されている。
【0028】この加熱用ヒータ1は、通電時の抵抗損失により発熱するヒータであって、図2に示すように発熱温度Tの上昇に伴って抵抗値Rが上昇する特性のものが使用される。加熱用ヒータ1は、具体的には成形体30のヒータ挿入穴31の穴径よりも小さい外径をもった円筒棒状の金属ヒータ(ステンレス鋼管)やセラミックスヒータなどが用いられる。セラミックスヒータは、昇温速度が速いこと、50°Cから800°Cの温度範囲まで発熱可能である一方、例えば30秒以内に香味生成物品を熱分解させない最高温度300°C程度に昇温加熱できるなどのメリットがある。以上のような昇温速度の点を考えれば、ニクロム線は昇温速度が遅いので、この種の香味生成物品の加熱用には不適当なものである。
【0029】前記直流電源2は例えば3.8V?12.0V内の何れかの直流電圧を発生する電池などが用いられる。この直流電源2の直流電圧は香味生成物品20を熱分解させずに所要の時間内に所望の香味性能を得るかに応じて決定される。因みに、香味生成物品20を熱分解させずに30秒以内に300°Cの温度に加熱するには7.2Vの直流電圧が必要となる。
【0030】前記定電圧発生回路3は、例えば三端子レギュレータが用いられ、加熱用ヒータ1などの負荷変動による電源電圧の変動を回避し常に加熱用ヒータ1に一定の電圧を印加する機能をもっている。
【0031】この定電圧発生回路3の両出力端子間には、加熱用ヒータ1、電流検出回路4およびスイッチ手段5からなる直列回路が接続されている。
【0032】この電流検出回路4は、例えば温度係数が小さく、かつ、温度依存性をもたない抵抗体が用いられ、加熱用ヒータ1の発熱温度の上昇による抵抗値の上昇に伴って変化する電流値を検出し、この検出電流に応じた電圧に変換して出力する。前記スイッチ手段5は、リレーまたは半導体スイッチング素子で構成され、外部からのオン・オフ制御信号を受けてオン・オフ動作する。
【0033】なお、定電圧発生回路3は加熱用ヒータ1に対し変動の伴わない一定の電圧印加状態に設定すること,つまり適切な抵抗測定条件を作り出す機能をもっていること、一方、電流検出回路4は加熱用ヒータ1の加熱により変化する抵抗値にのみ依存して変化する電流値を検出する機能をもっていることから、これら定電圧発生回路3および電流検出回路4は加熱用ヒータ1の変化する抵抗値を検出する機能をもった抵抗検出回路6と呼ぶことができる。
【0034】また、加熱制御装置には温度設定回路7および電圧変換回路8が設けられている。この温度設定回路7は、図2に示すように加熱用ヒータ1の最適発熱温度Tsのときの加熱用ヒータ1の抵抗値Rsが設定されるが、この最適発熱温度は香味成分物品20の成分含有量によって異なるものであり、そのため設定抵抗値Rsも任意に可変可能な構成とする。電圧変換回路8は温度設定回路7の設定抵抗値に応じた電圧を発生させるものである。これら温度設定回路7および電圧変換回路8は、具体的には例えば可変抵抗器の両端に所定の電圧を印加し、当該可変抵抗器のうち設定抵抗値Rsに相当する部分に予め設定される可動端子から設定抵抗値Rsにのみ依存する電圧を取り出す構成によって実現でき、これら温度設定回路7および電圧変換回路8は抵抗設定回路9と呼ぶことができる。
【0035】10は電流検出回路4から出力される検出電流に応じた電圧と電圧変換回路8から出力される電圧とを比較する比較演算回路であって、これら両電圧の比較結果がシーケンス制御回路11に送られる。このシーケンス制御回路11は、タイマーが内蔵され、電圧変換回路8から出力される電圧に一致する電圧が電流検出回路4で検出されたとき、つまり一致信号をうけたとき、香味生成物品20の熱分解を考慮しつつ予め設定された所定の時間のタイミングでオン・オフ制御を行うためのシーケンス制御信号を出力する機能をもっている。シーケンス制御回路11は、比較演算回路10から一致信号を受けたとき、例えば具体的には0.2秒?2秒間オフとするシーケンス制御信号を出力した後、本来の比較結果を取込んで同様の処理を繰り返すとか、或いは前記一致信号を受けたとき、所定の時間ごとにオフ・オンを繰り返し実行するシーケンス制御信号を出力することが挙げられる。
【0036】12はスイッチ駆動制御回路であって、これはシーケンス制御回路11から入力されるシーケンス制御信号に基づいてスイッチ手段5をオン・オフ制御するものである。
【0037】これら比較演算回路10、シーケンス制御回路11、スイッチ駆動制御回路12およびスイッチ手段5はヒータ電源制御装置13を構成するものである。
【0038】次に、以上のように構成された装置の動作について説明する。
【0039】先ず、抵抗設定回路9を用いて、香味生成物品の熱分解を起こさず、かつ、香味性能が得られる図2に示す加熱用ヒータ1の最適加熱温度Tsに対応する抵抗値Rsに設定する。
【0040】この状態において装置に電源を投入すると、シーケンス制御回路11が所定のシーケンス制御動作を開始し、スイッチ手段5をオンとするためのシーケンス制御信号を出力し、スイッチ駆動制御回路12を介してスイッチ手段5をオンに設定する。
【0041】ここで、スイッチ手段5がオンとなると、加熱用ヒータ1には定電圧発生回路3から予め定める一定の直流電圧が印加される。その結果、加熱用ヒータ1は、通電による抵抗損失で発熱し、この発熱温度の上昇に伴って加熱用ヒータ1の電気抵抗値が増大する。このとき、加熱用ヒータ1は常に一定の直流電圧が印加されているので、通電による発熱温度の上昇とともに抵抗値が増大し、逆に加熱用ヒータ1に流れる電流値が低下する。電流検出回路4は、発熱用ヒータ1に流れる電流を検出し、この検出電流を電圧値に変換し比較演算回路10に送出する。
【0042】ここで、比較演算回路10は、基準抵抗設定側となる電圧変換回路8から入力される設定抵抗に依存する所定電圧と電流検出回路4から出力される電圧とを比較し、電流検出回路4から出力される電圧が所定電圧に一致したとき、つまり設定温度に相当する抵抗値と加熱用ヒータ1の抵抗値とが等しくなったとき、例えばハイレベル信号Hを出力しシーケンス制御回路11に送出する。
【0043】このシーケンス制御回路11は比較演算回路10からハイレベル信号Hを受けると、オフとするシーケンス制御信号を出力し、スイッチ駆動制御回路12を介してスイッチ手段5をオフ制御にすると同時にタイマーを作動させる。これにより加熱用ヒータ1への低電圧電源の供給が停止する。
【0044】以後、シーケンス制御回路11は、所定のシーケンスプログラムに基づき、香味生成物品20の香味熱分解を考慮しつつ予め設定される所定の時間,例えばタイマーが例えば1秒経過した後、スイッチ駆動制御回路12を介してスイッチ手段5をオンとし、その後,比較演算回路10の比較結果に基づき、スイッチ手段5のオフ・オンを繰り返すとか、或いはハイレベル信号Hを受けてスイッチ手段5をオフとした後、予め定める所定時間ごとにオン・オフ制御を繰り返し実行する。
【0045】なお、スイッチ手段5のオン・オフ制御時間は、短時間であればあるほど制御時の温度範囲が狭くなるが、抵抗検出回路6側のオン・オフ接点の種類(リレー、半導体スイッチング素子)および被加熱物体の物性(比熱・熱伝達率)などの条件を考慮し、さらに香味生成物品20の熱分解および香味性能等を考慮し、0.2?2秒程度のインターバルで行うのが望ましいが、この時間も香味生成物品20の成分含有量の状態によって異なるものである。
【0046】また、筒状成形体30として例えば前述したようにバインダー、良伝熱素材、担持素材、香味成分、エアロゾル基剤および水などを含有成分とし、さらにバインダーとして例えば鉱物系粘土、珪酸塩、リン酸塩、セメント、シリカ、石膏、石灰、でん粉、糖、海草、蛋白、たばこ粉末等を適宜選択することにより、その香味生成物品の最適な加熱温度がほぼ300°C程度であるので、望ましくは300°C±30°Cの温度変化範囲であれば香味の熱分解がなく安定な香味性能が得られるが、例えばバインダーとして例えば鉱物系粘土を主成分とする場合には±60°Cの温度変化範囲であってもよい。
【0047】従って、以上のような実施の形態によれば、加熱用ヒータ1に定電圧発生回路3から常に一定の直流電圧を印加し、この通電時の抵抗損失による発熱温度の上昇に伴って変化する加熱用ヒータ1の抵抗値を利用し、当該加熱用ヒータ1の発熱温度を検出するので、温度センサを用いる必要がなく、また小形でかつ速い昇温速度を必要とする香味生成物品の加熱温度制御に非常に有効なものである。
【0048】また、通電時に発熱温度に応じて抵抗値が変化する加熱用ヒータ1の電流値から得られる抵抗値と予め香味生成物品の香味熱分解が生じない加熱用ヒータ1の所望温度に応じた所定の設定抵抗とを比較し、両抵抗値の一致から加熱用ヒータ1の所望の発熱温度を検出するので、確実、かつ、高精度に加熱用ヒータ1の所望の発熱温度,ひいては香味生成物品に最適な加熱温度に設定できる。
【0049】さらに、比較演算回路10から両抵抗値の一致信号を受けたとき、シーケンス制御回路11は、予め定めた任意のインターバルで加熱用ヒータ1の通電路をオン・オフ制御するので、香味生成物品の物性を考慮しつつ香味性能を安定、かつ、継続的に得ることができる。」

・図1には電気式香味生成物品加熱制御装置の一実施の形態を示す構成図が、図2には加熱制御装置に用いる加熱用ヒータの発熱温度と電気抵抗値との関係を説明する図が、図5には香味生成物品の部分断面図が、図6には香味生成物品の筒状成形体を示す横断面図および縦断面図が、それぞれ示されている。

以上のことを総合すると、刊行物1には、次の「刊行物1発明」が記載されていると認められる。

「直流電源2と、該直流電源2に接続された加熱用ヒータ1と、例えばメンソール、カフェイン、或いは熱分解により香味を生成する配糖体等の前駆体或いはたばこ抽出物成分やたばこ煙凝縮物成分等のたばこ成分を用いることができる香味成分やエアロゾル形成基材などが含有されて燃焼せずに加熱により香味を生成する媒体である原料の筒状成形体30を内蔵するエアロゾルシガレットのごとき香味生成物品20とを含み、該香味生成物品20が加熱時に香味やエアロゾルの成分を含む加熱ガスを生成する、香味生成物品20と電気式香味生成物品加熱制御装置において、香味生成物品20の熱分解を起こさず、かつ、所望の香味性能を得る所定温度に香味生成物品20を加熱制御する方法であって、
香味生成物品20の熱分解を起こさず、かつ、所望の香味性能を得る加熱用ヒータ1の最適発熱温度Tsのときの加熱用ヒータ1の抵抗値Rsを設定することと、
香味生成物品20の熱分解を起こさず、かつ、所望の香味性能を得るように加熱用ヒータ1の温度を制御することと、
を含み、
前記制御することは、
前記加熱用ヒータ1の電気抵抗値を検出することと、
前記検出した電気抵抗値と設定した加熱用ヒータ1の最適発熱温度Tsのときの加熱用ヒータ1の抵抗値Rsとを比較し、その両値の一致から加熱用ヒータ1が所望温度に達したことを検出することと、
シーケンス制御手段が加熱用ヒータ1への通電路を適切にオン・オフ制御することにより、前記加熱用ヒータ1を安定な状態で所望温度に制御することと、
を含み、
もって香味生成物品20の熱分解を起こさず、かつ、所望の香味性能を得る方法。」

(イ) 本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、本件発明1では「加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させない」方法であるのに対し、刊行物1発明では「香味生成物品20の熱分解を起こさず、かつ、所望の香味性能を得る」方法である点で相違する。この相違点については、刊行物1発明の「香味生成物品20の熱分解を起こさず、かつ、所望の香味性能を得る」ことと本件発明1の「加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドを形成させない」こととは、その着想が異なるのであって、特に、刊行物1発明においては香味成分である「配糖体等の前駆体」の「熱分解により香味を生成する」ことができることからして、筒状成形体30に含有される香味成分やエアロゾル形成基材などが熱分解されないとはいえないから、グリセリンやプロピレングリコールなどのエアロゾル形成基材が熱分解してホルムアルデヒドが生成されるとする甲3や甲4に記載された事項を参酌しても、刊行物1発明が「ホルムアルデヒドを形成させない」ものとはいえない。そして、既述のとおり、刊行物1発明にホルムアルデヒドを形成させないとする着想がないから、刊行物1発明をして上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

イ 刊行物2に記載された発明に基いて
(ア) 刊行物2には、次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
蒸発した材料をプログラム可能に発生する装置であって、
第1の開放端部を有する少なくとも1つの流路と、
前記流路に液体材料を供給するように動作可能な液体供給部と、
前記蒸発した材料が前記流路の前記開放端部から外に広がるように、前記流路内の液体の材料を蒸発させるのに十分な温度まで前記流路を加熱するように構成された少なくとも1つのヒータ機構と、
前記ヒータの動作を制御し、前記液体供給部の動作を制御するように動作可能なコントローラと、
前記コントローラにヒータ性能データを供給するように動作可能なモニタリング機構であって、所望の温度範囲に前記ヒータ機構を維持するために、前記ヒータ機構にパワーを供給するか、又は、前記ヒータ機構へのパワーを遮断するように、該データが前記コントローラによって用いられるモニタリング機構と、
前記装置に関連したパラメータを格納するように動作可能なメモリと、
を備えることを特徴とする装置。」

・「【請求項17】
請求項1に記載の装置を動作させる方法であって、
前記流路内で液体材料を蒸発させるのに十分な温度に対応する目標パラメータを選択する工程と、
前記流路に前記液体材料を供給する工程と、
前記ヒータ機構にエネルギを与える工程と、
前記ヒータ機構の抵抗加熱要素のモニタされたパラメータを周期的に決定する工程と、
前記モニタされたパラメータを前記目標パラメータと比較する工程と、
前記モニタされたパラメータが前記目標パラメータ以下の場合に、前記抵抗加熱要素にパワーを供給する工程と、
を含むことを特徴とする方法。」

・「【請求項20】
前記目標パラメータは目標抵抗であり、前記モニタされたパラメータはモニタされた抵抗であることを特徴とする請求項17に記載の方法。」

・「【0001】
本発明は、一般的には実験室の試験のための液体の蒸発によって、エアゾール(aerosols)及び蒸気を発生するフレキシブルプラットホーム(flexible platform)並びに蒸発された液体に対するアプリケーションの開発に関する。
【背景技術】
【0002】
本願に参照により組み込まれる米国特許第5,743,251号は、第1の開放端部(open end)を有するチューブを含むエアゾール発生器を開示している。このエアゾール発生器は、蒸発した材料がチューブの開放端部(open end)から外に広がって、外気と混合してエアゾールを形成するように、チューブ内の材料を液体の形で蒸発させるのに十分な温度までチューブを加熱するためのヒータを更に含む。」

・「【0004】
動作中は、液体の形で材料(不図示)がチューブ23に導入される。ヒータ27は、チューブ23の一部を液体材料が蒸発するのに十分な温度まで加熱する。有機液体材料(organic liquid material)の場合では、ヒータは、液体材料の丁度沸点まで液体材料を加熱することが望ましく、チューブ23の表面温度を400℃以下に保つのが望ましい。大部分の有機材料は、ある期間の間その温度以上の温度に晒されると、安定ではないである。蒸発した材料は、チューブ23の開放端部25から外に広がる。蒸発した材料は、チューブの外側で外気と混合し、凝結して(condensed)粒子を形成し、それによってエアゾールを形成する。」

・「【0015】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面と関連した以下の詳細な説明を読み取ることにより適切に理解される。本発明は、蒸発した液体が発生している間における制御と測定の機能を組み込んだ装置を提供する。この蒸発した液体は、エアゾールを形成するために外気中で凝縮されうる。本装置は、医学的、農業的、産業的及び科学的な目的で使用されうる。本装置は、ヒータ機構を組み込む。このヒータ機構は、液体材料を蒸発させるために用いられる。本装置は、様々な制御方式の下で、ヒータ機構に正確なエネルギを印加することを可能とし、それによって固体と液体のエアゾールを発生する。エアゾールは、単一の流路又は複数の流路機構から生成されうる。
エアゾールは、多種多様なアプリケーションで有用である。例えば、患者の肺に吸入される液体及び/又は固体(例えば、粉、薬物等)の、細かく分割された粒子のエアゾールスプレーを用いて呼吸器疾患を治療したり、或いは、これらを用いて薬物を供給したりすることが望ましい。エアゾールはまた、所望の香りを部屋に提供したり、皮膚の上に香りを付けたり、塗料や潤滑剤を供給したりする等の目的に使用される。エアゾールはまた、高性能エンジンやタービン用の燃料供給システムも対象として考慮される。これらの高性能エンジンやタービンでは、小さな粒子サイズが点火速度、燃焼効率及び火炎速度に影響を及ぼす。燃焼領域でのエアゾールの発生は、最初はエアゾール形成の原因となるが、点火後は燃焼で経験した温度によって蒸気だけを発生することに成り得る。」

・「【0017】
そのようなアプリケーションの開発は、現時点では利用可能ではないが、多種多様のユーザ制御要素、プログラマブル関数及び記録システムを用いて、エアゾール先行蒸気を作り出すことができる汎用のプラットホームを用いて調査されうる。本装置は、このような調査目的に対して用いられてもよいし、エアゾール又は1つ以上の材料の蒸発の結果として若しくはこれに関連して形成される製品の商業生産に対して用いられてもよい。」

・「【0030】
蒸発液体発生器は、上述の例に合わせたものであり、約2.5ボルトと0.8アンペアで連続的に動作したときに、液体プロピレングリコールから蒸気を発生する際に上手く動作することがわかった。このレベルで動作している電圧源に供給されるパワーは、大気圧で毎秒1.5ミリグラムの速度でプロピレングリコールを蒸発させるのに必要な最小限の所要電力に近く、蒸発液体発生器220が効率的に動作していることを示している。」

・「【0033】
図3は、液体材料の蒸発を制御するための装置300の実施形態を示す図である。本装置は、下流の第1の開放端部325と、流路323で液体材料を蒸発させるのに十分な温度まで流路323を加熱するためのヒータ310とを有する。その結果、蒸発した材料が流路の開放端部325から外に出て、必要に応じて、外気と混合してエアゾールを形成する。
【0034】
装置300は、ヒータ310を操作し、バルブ342とポンプ335の操作を介して液体供給源333から流路まで液体を供給するためのコントローラ350を含む。コントローラ350はまた、メモリ351に蒸発した液体の発生に関連したパラメータの格納を指示する。コントローラ350はまた、パワーをヒータ310に適用するために、切換機構又はスイッチ340を操作する。メモリ351は、格納操作プログラムだけでなく、液体材料の流速やエネルギ伝達等のパラメータを記録するために設けられる。先行蒸気及びエアゾールの実験を実行するとき又はこれらの特性をモニタしているときは、蒸発液体発生器の操作に関する関連パラメータの保持及び/又は記録が要求されうる。また、コントローラ350に関連するのは、動作中に視覚的にユーザを助けるディスプレイ352であり、また、ユーザ設定やメモリ351の内容も表示する。
【0035】
ヒータ310は、その電気伝導性の一部分又はその他の適当な機構に、電圧を印加することによって作動されうる。例えば、発熱体が、流路323に沿ってワイヤのコイル又は導電性材料層で構成されうる。流路を加熱するために、熱交換器の使用又は燃焼ガスへの暴露(exposure)が用いられうる。通路中の蒸発液体の化学的・機械的方法に加えて、レーザ及び電磁波も可能である。抵抗加熱機構は、特別な実施形態では、チューブ又は発熱体の電気抵抗及びそこに与えられた誘導電流の結果として、電気エネルギを熱エネルギーに変換することによって、流路内部の液体材料を加熱する。電圧は、電源329によって発熱体の327aと327bの端部にかけられる。ヒータ310への電圧の印加は、スイッチ340を介した手動入力又は動作プログラムを通して、コントローラ350によって調整される。本実施形態では、スイッチ340は、10ミリ秒未満、好適には1ミリ秒未満のサイクルによる高速スイッチングを可能にする電界効果トランジスタである。
【0036】
コントローラ350は、計測装置341と計測装置342から流路323への液体材料の流速に関連する入力とを通じて、流路323の温度に関係する入力を受信する。このような測定が可能なベンチュリ管通路、容量型ポンプ(positive displacement pumps)及びその他の装置が、計測装置342として使用されうる。流路323内の液体温度は、発熱体の測定された又は計算された抵抗に基づいて計算される。好適な実施形態では、ヒータ310は金属管の一部であるか、又は、ヒータは抵抗加熱材料の一片又はコイルであってもよい。コントローラ350は、ヒータの抵抗をモニタすることによって、流路323の温度を調節する。
【0037】
抵抗の制御は、ヒータ310の抵抗がその温度が増加するにつれて増加するという単純な原理に基づくことができる。スイッチ340を通してパワーが発熱体310に印加されると、その温度が抵抗加熱によって増加し、ヒータの実際の抵抗も増加する。パワーがオフされると、ヒータ310の温度が下がり、これに対応してその抵抗が減少する。したがって、ヒータのパラメータをモニタすることによって(例えば、抵抗を計算するために既知の電流を用いた、ヒータにかかる電圧)、そしてパワーの印加を制御することによって、コントローラ350は、ヒータ310を特定の抵抗目標値に対応する温度に維持することができる。1つ以上の抵抗素子の使用はまた、抵抗ヒータが流路で液体を加熱するために使用されない場合に、加熱された液体の温度を測定するのに利用されうる。
【0038】
抵抗目標値は、液体が蒸発して流路323の第1の開放端部325から外に広がるように、液体材料へ熱伝達を引き起こすのに十分な温度に対応するように選択される。コントローラ350は、加熱を始動するスイッチ340を閉じさせる。これによって、ヒータ310に継続時間の間エネルギを与え、そのような継続時間の後及び/又は間に、計測装置341からの入力を用いて、ヒータの実時間抵抗を決定する。好適な実施形態では、ヒータの抵抗は、ヒータ310と直列に存在する分流器(不図示)にかかる電圧を測定すること(それによって、ヒータに流れる電流を決定すること)、及び、ヒータにかかる電圧降下を測定すること(それによって、測定電圧と分流器を流れる電流とに基づく抵抗を決定すること)によって計算される。連続した測定を受けために、少量の電流が抵抗の計算を行う目的で分流器及びヒータを通して連続的に流されて、より高い電流のパルスが所望の温度までヒータの加熱するために用いられうる。
【0039】
必要ならば、ヒータを通る電流の測定からヒータ抵抗を導き出してもよいし、或いは、同じ情報を得るためにその他の方法が用いられてもよい。次に、コントローラ350は、ヒータ310に対する所望の抵抗目標値とコントローラ350によって決定される実抵抗(actual resistance)との間の差に基づいて、追加のエネルギ継続時間を送信するか否かに関する決定を行う。
【0040】
開発モデルでは、ヒータに供給されるパワー継続時間は、1ミリ秒に設定された。ヒータ310のモニタされた抵抗から調整値を引いた値が、抵抗目標値よりも小さい場合には、コントローラ350は、スイッチ340を閉じた(“オン”)位置にしておくことによって、エネルギの別の継続時間を供給するようにプログラムされる。調整値は、作動していないときのヒータの熱損失、計測装置のエラー、コントローラの周期的な期間(cyclic period)、切換装置及びその他の可能性等の要因を考慮する。実施には、ヒータの抵抗は、その温度の関数として変化するため、温度制御を実現するために抵抗制御が用いられうる。
【0041】
タイプ304のステンレス鋼に対する抵抗の温度係数の方程式は:
ρ(ohm-cm)=4.474x10^(-5)+l.0x10^(-7)T-3.091x10^(-11)T^(2) (4) である。ここで、Tは、ケルビン温度である。0。669オームの低温の抵抗(室温の24℃)で、28ゲージ、44mmの長い毛細管を備えるヒータの平均温度のプロットが、その抵抗を関数として、図5に示される。図5に示す値は、ヒータの平均温度を表す。すなわち、ヒータの長さに沿った実際の温度は、銅線からの熱損失及び流体の蒸発等の諸要因によって変動しうる。そして、流路323の端部331及び開放端部325に最も近いヒータの温度は、ヒータの中央よりも低くなる傾向があるだろう。」

・「【0044】
コントローラ350による抵抗の制御は、ヒータを制御するのにいくつかの利点がある。第1に、ヒータ310が最初に動き始めると、コントローラ350は、ヒータの初期のオーバーヒートを防ぐために、その動作抵抗目標値又はそれ以下の値に到達するまで、エネルギを連続的にヒータ310に送ることができる。その後、ヒータは、徐々に所望の温度まで加熱されうる。これによって、ヒータを最も速く始動することができる。第2に、コントローラは、少なくとも電源329の上限に、液体材料の供給速度に無関係に抵抗目標値を維持するための必要条件に適合するように、自動的にヒータに送られるエネルギを調整することができる。抵抗目標値及び対応する温度がヒータ310の材料限界値の範囲内に設定される限り、ヒータは、流体供給システムにおける故障のためにオーバーヒートすることはあり得ない。加熱サイクルの例は図6に示され、ここでは抵抗制御アルゴリズムのためのタイミングサイクルを示しており、この例での抵抗目標値は0.785オームである。これはまた、高く設定されすぎた電源電圧によるオーバーヒートを防止する。さらに、このシステムは、熱電対測定値に基づく実際の温度制御システムよりもはるかに速く応答することが分かった。
【0045】
パルス継続時間の端で、ヒータの測定抵抗から所定の調整値を引いた値が目標抵抗よりも大きい場合では、コントローラ350は、スイッチ340をオフし、これによりヒータ310からのエネルギを抑える。別の所定の継続時間の後では、コントローラは、スイッチ340をオンして、このプロセスを繰り返す。例えば、スイッチ340がオンされると、第2の所定継続時間が前回から8ミリ秒(例えば、2ミリ秒オンして6ミリ秒オフする又は4ミリ秒オンして4ミリ秒オフする等)に設定されうる。」

・「【0046】
図4は、蒸発した液体を発生するための装置の他の実施形態を詳細に示す図である。この実施形態では、材料が蒸発されて通路の開放端部から外に広がるように、流路及びそこを通る液体材料を加熱するための複数の別々のヒータが用いられる。前の実施形態のように、第1の開放端部425を有する流路423は、端部431を通して供給される液体材料を有し、バルブ442は、ポンプ435によって液体材料433の供給源から供給される液体の導入を制御する。この特定の実施形態では、流路と液体とを加熱するために、2つの別々のヒータ410と410'が使用される。加熱は、抵抗加熱を通して実行することができる。しかしながら、上述のように、加熱は、この方法に限定されない。
【0047】
パワーは、ヒータ410に対しては端部427a及び端部427bを介して、ヒータ410’に対しては端部427a’及び端部427b’を介して、各々のヒータに供給される。ヒータへのパワーの印加は、関連メモリ451及びディスプレイ452を用いてコントローラ450によって制御される。コントローラ450は、スイッチング回路440又はパワー制御のためのその他の適当な機構を通した電力の印加を制御する。スイッチング回路は、各々のヒータに独立にパワーを与えることができる。パワーは、電圧源429によって供給される。コントローラは、バルブ442からの入力に加え、計測装置441と441からの情報を用いて、ヒータへのパワーの印加を別々に制御する。コントローラは、自律的に機能するか、或いは、ユーザインタラクションに反応するようにプログラムされうる。
【0048】
この特定の実施形態における計測装置441と441'は、分流器を通して電流を測定し、ヒータの抵抗を決定するためにそれぞれのヒータにかかる電圧降下と結合され、上述のコントローラ450によって制御を容易にしている。上で議論したように、流路423にかかる温度は、液体材料が供給される端部431から材料が蒸気として出ていく開放端部425まで変動しうる。したがって、流路とその中の液体の温度を制御する別々の複数のヒータを使用することは、流路の一部にわたる異なった熱伝達特性のために有利である。液体への流路の熱伝達を更に調節するために、要求に応じて、更にヒータが追加されて制御されうる。」

・「【0076】
プロピレングリコール及びグリセロール等の液体材料は、所定の範囲で、マスメジアン粒径(mass median particle diameter)と温度を持つエアゾールを形成することが観察される。理論によって制約されることを望まないが、加熱された流路を出て行く蒸発した材料の急速な冷却と凝縮の結果として、極度に小さいエアゾールのマスメジアン粒径(mass median particle diameters)が実現されると、少なくとも幾分は考えられている。流路の内径、流路を規定する材料の伝熱特性、ヒータのヒータ容量、及び/又は液体の材料が流路に供給される速度等の、蒸発液体発生器のパラメータの動作は、エアゾール温度及びマスメジアン粒径(mass median particle diameter)に影響するように実行されうる。本装置は、エアゾールの形成を調査するのにブデソニド(budesonide)等の薬物に対して、液体キャリアとしてプロピレングリコールとリセロールを用いて、使用することができる。本装置はまた、エアゾールの形成及び/又は液体材料、例えば、ジェット燃料、殺虫剤、除草剤、塗料及び他のタイプの材料等の液体材料の蒸発された流体の特性を調査するのに用いられてもよい。」

・「【0079】
ヒータのための最適な抵抗目標値は、標準的な操作手順を用いて実験的に決定されうる。装置制御プログラムに入力された抵抗目標値がその最適値から低下するにつれて、エアゾールの質はすぐに低下する。特に、大きな液滴と余分な流体がヒータの端部から垂れる場合に、より多くの液体がヒータから放出されるだろう。抵抗目標値がその最適値を超えて増加するにつれて、エアゾールの特性も最終的には劣化するであろう。例えば、発生器は、エアゾールを発生するのに必要であるよりも多くのエネルギを使用し、より高い抵抗目標値では、エアゾール流体の著しい熱劣化(thermal degradation)が起こりうる。極限の場合では、ヒータは、赤く光り初めて、損傷を受けるかもしれない。」

・図1には従来技術に係るエアゾール発生器の概略図が、図3にはコントローラが流体の供給とヒータ機構とを操作する装置の実施形態を示す図が、図7にはコントローラが流体の供給とヒータ機構とを操作する装置の他の実施形態を示す図が、それぞれ示されている。

上記【0017】や【0076】等の記載から、「複数の液体の材料」を蒸発できることが記載されているといえる。

以上のことを総合すると、刊行物2には、次の「刊行物2発明」が記載されていると認められる。

「電源329と、該電源329に接続されたヒータ310と、バルブ342とポンプ335の操作を介して液体供給源333から供給される液体材料とを含み、該液体材料が加熱時に複数の液体の材料を蒸発させて開放端部325から外に出し、該複数の液体の材料の各々が、その温度よりも高くなると該液体の材料が蒸発して開放端部325から外に出るような蒸発する温度を有し、蒸発した材料が外気と混合してエアゾールを形成する装置300からの液体の材料の蒸発によって開放端部325から外に出ることを制御する方法であって、
開放端部325から外に出るエアゾール流体の著しい熱劣化が起こらないようにするために熱劣化が起こる温度よりも低い液体の材料が蒸発するのに十分な温度に対応する抵抗目標値を選択する工程と、
液体の材料が蒸発し開放端部325から外に出るようにヒータ310を所望の温度範囲に維持する工程と、
を含み、
前記ヒータ30を所望の温度範囲に維持する工程は、
前記ヒータ310の抵抗を周期的にモニタし決定する工程と、
前記抵抗のモニタし決定した値を液体材料が蒸発するのに十分な温度に対応する抵抗目標値と比較する工程と、
前記ヒータ310を液体の材料が蒸発するのに十分な温度である所望の温度範囲に維持するために、該ヒータ310にパワーを供給・遮断する工程と、
を含む方法。」

(イ) 本件発明1と刊行物2発明とを対比すると、本件発明1の「タバコ含有固形エーロゾル形成基体」と刊行物2発明の「バルブ342とポンプ335の操作を介して液体供給源333から供給される液体材料」とは「エーロゾル形成基体」の概念で一致しているから、両者は、少なくとも「エーロゾル形成基体」が、本件発明1では「タバコ含有固形エーロゾル形成基体」であるのに対し、刊行物2発明では「バルブ342とポンプ335の操作を介して液体供給源333から供給される液体材料」である点で相違し、この相違点については、刊行物2発明の「バルブ342とポンプ335の操作を介して液体供給源333から供給される液体材料」をして固形のものとすることは刊行物2発明を成り立たないものとすることであって阻害要因があるから、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、本件発明1は刊行物2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

3) 請求項2ないし22に係る発明について
本件発明2ないし22は、本件発明1を実質的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由で、刊行物1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、又、刊行物2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

4) まとめ
よって、本件発明1ないし22は、刊行物1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできず、その特許は取り消されるべきものではない。

(3) 平成28年3月2日付けの取消理由通知に記載した取消理由について
1) 取消理由の理由1(特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号)の概要
本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が次の「ア」ないし「エ」の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
ア 本件特許の請求項1に係る発明の全体構成が明確でない。すなわち、本件特許の請求項1に係る発明の方法に係る「電気加熱式エーロゾル発生システム」の具体的な実施例はどのようなものであるのか、明細書の記載を見ても明確でなく、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないし、請求項1に係る発明を明確に把握できない。また、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえる。

イ 請求項1に記載された「該エーロゾル形成基体が加熱時に複数の揮発性化合物を放出し、」は、その意味が明確でないところ、明細書及び図面の記載を参酌しても具体的な記載がない。よって、請求項1に係る発明は明確でないし、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえ、また、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

ウ 請求項1に記載された「エーロゾル形成基体からの揮発性化合物の放出を防止するため」の「揮発性化合物」が明確でないところ、明細書及び図面の記載を参酌しても具体的な記載がない。よって、請求項1に係る発明は明確でないし、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえ、また、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

エ 明細書の記載(【0007】参照。)からして、本件特許に係る発明は「エーロゾル形成基体の熱分解又は燃焼が防止されるように」「作動温度を制御することができる」ものと認められるものの、その旨の特定が請求項1に記載されていないから発明の課題を解決するための手段が反映されていないといえる。仮に、請求項1に記載された「最高作動温度」がこの「熱分解又は燃焼」に関わるとしても、両者がどのような関係であるのかや選択した最高作動温度の具体例等についての記載は明細書等にもないし、「熱分解又は燃焼」との関わりにおいて「最高作動温度」の意味が明確でない。

2) 上記理由1についての判断
上記「ア」については、本件特許の請求項1に係る発明の方法に係る「電気加熱式エーロゾル発生システム」が特許請求の範囲の請求項1の記載から特定できるものであって、その実施例としても図1や【0024】ないし【0026】の記載からして具体的に把握できることから、「電気加熱式エーロゾル発生システム」は明確でないとはいえず、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないともいえず、また、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえない。
上記「イ」については、特許請求の範囲の請求項1に記載された「該エーロゾル形成基体が加熱時に複数の揮発性化合物を放出し、」の意味は、その記載どおりに理解できるから明確でないとはいえず、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないともいえず、また、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえない。
上記「ウ」については、特許請求の範囲の請求項1に記載された「エーロゾル形成基体からの揮発性化合物の放出を防止するため」の「揮発性化合物」は、その記載どおりに理解できるから明確でないとはいえず、発明の詳細な説明は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないともいえず、また、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえない。
上記「エ」については、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、その記載どおりに理解でき、「エーロゾル形成基体の熱分解又は燃焼が防止されるように」「作動温度を制御することができる」ものに限られるものではないから、発明の詳細な説明の記載を超えるものともいえない。
したがって、本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が上記「ア」ないし「エ」の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号並びに第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである、ということはできない。

3) 取消理由の理油2(特許法第36条第4項第1号)の概要
本件特許は、明細書の記載が次の「ア」及び「イ」の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
ア 明細書の段落【0007】に記載された「エーロゾル形成基体の熱分解又は燃焼」とはどのようなことなのか、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
また、「エーロゾル形成基体の熱分解又は燃焼」と「揮発性化合物の放出」とはどのような関係にあるのか、さらに、「熱分解」と「放出」とはそれぞれ具体的にどのようなことをいい、両者の違いはどのようことなのか、明確でなく、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

イ 明細書の段落【0007】に記載された「ホルムアルデヒドの形成」とは、例えばどのような物質のどのような反応でホルムアルデヒドが形成されることを意味しているのか、発明の詳細な説明に具体的な記載がなく当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

4) 上記理由2についての判断
上記「ア」については、「エーロゾル形成基体の熱分解又は燃焼」とは、その記載どおりに理解でき、また、「エーロゾル形成基体の熱分解又は燃焼」と「揮発性化合物の放出」との関係や「熱分解」と「放出」との関係についても、その記載どおりに把握でき当業者は十分に理解できるといえるから、発明の詳細な説明に具体的な記載がないことをもって直ちに当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
上記「イ」については、ホルムアルデヒドが形成されることは当業者にとって技術常識といえる技術的事項であり、例えば、タバコ中の糖類(糖及びセルロースなど)が前駆体であることも同様の技術的事項であることから、発明の詳細な説明に具体的な記載がないことをもって直ちに当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
したがって、本件特許は、明細書の記載が上記「ア」及び「イ」の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである、ということはできない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
1) 理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1ないし4、8、16及び17は甲第1号証に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである。また、本件発明1及び16は甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである。

2) 理由2(特許法第36条第6項第2号)
請求項1に記載された「該揮発性化合物のうちの少なくとも1つ」は熱分解によって形成されたものか、当初のエーロゾル形成基体内に存在していた揮発性化合物であるのか不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3) 理由3(特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号)
本件発明のいうところの有害な物質は「熱分解で形成されたもの」に限定されるべきであるところ、そのような記載は発明の詳細な説明にないから、請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明には、それに関する具体的な成分名等についても何ら記載がないから同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を取り消すべきものである。

(2) 上記特許異議申立理由についての判断
1) 理由1(特許法第29条第1項第3号)について
上記「2 (2)」に記載したことからして、本件発明1ないし4、8、16及び17は、甲第1号証に記載の発明であるということはできないし、また、本件発明1及び16は、甲第6号証に記載の発明であるということもできないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、その特許を取り消すことはできない。したがって、上記理由1は理由がない。

2) 理由2(特許法第36条第6項第2号)及び理由3(特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号)について
仮に、本件特許の各請求項に記載された発明のいうところの有害な物質は「熱分解で形成されたもの」に限定されるべきであるとしても、本件特許の各請求項に記載された発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載されたとおりのものであって、「ホルムアルデヒド」を除き「有害な物質」に係るものに限定されないものとして明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものといえる。そして、請求項1に記載された「該揮発性化合物のうちの少なくとも1つ」は熱分解によって形成されたものか、当初のエーロゾル形成基体内に存在していた揮発性化合物であるのかに関わりはなく、「揮発性化合物」であればよいのであって、「揮発性化合物」についても請求項1においてタバコ含有固形エーロゾル形成基体が加熱時に放出し、最低放出温度を有するものである旨特定されているといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。また、発明の詳細な説明には、例えば【0024】ないし【0031】に特許発明1の実施例が記載されており、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。したがって、上記理由2及び理由3は理由がない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1ないし22についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし22についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギの供給源と、該電気エネルギの供給源に接続された1つよりも多くの加熱要素と、タバコベースの固形エーロゾル形成基体とを含み、該エーロゾル形成基体が加熱時に複数の揮発性化合物を放出し、該複数の揮発性化合物の各々が、その温度よりも高くなると該揮発性化合物が放出される最低放出温度を有する電気加熱式エーロゾル発生システムからの揮発性化合物の放出を制御する方法であって、
エーロゾル形成基体からの揮発性化合物の放出を防止するために該揮発性化合物のうちの少なくとも1つの最低放出温度よりも低い所定の最高作動温度を選択する段階と、
少なくとも1つの揮発性化合物が放出されるように1つよりも多くの加熱要素の温度を制御する段階と、
を含み、
前記制御する段階は、
前記1つよりも多くの加熱要素の抵抗率を測定する段階と、
前記抵抗率の測定値から前記1つよりも多くの加熱要素の実際の作動温度の値を導出する段階と、
前記実際の作動温度の値を前記所定の最高作動温度と比較する段階と、
前記1つよりも多くの加熱要素の前記実際の作動温度を前記所定の最高作動温度よりも低く保つために、該1つよりも多くの加熱要素に供給される電気エネルギを調節する段階と、
を含み、
もって加熱中に放出される揮発性化合物の数を低減し、ホルムアルデヒドの形成を減少させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記調節する段階は、前記1つよりも多くの加熱要素の前記実際の作動温度を前記所定の最高作動温度よりも低い所定範囲に保つために、該1つよりも多くの加熱要素に供給される前記電気エネルギを調節する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つよりも多くの加熱要素の前記実際の作動温度の値の前記導出は、抵抗率及び温度のルックアップテーブルから温度値を取り出す段階を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ルックアップテーブルは、所定の組成、長さ、及び断面を有する前記1つよりも多くの加熱要素に対して導出された温度対抵抗率の値を格納することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱要素温度の測定値の前記導出は、
ρ(T)=ρ_(0)*(1+α_(1)T+α_(2)T^(2))
の形式の多項式の値を求める段階を含み、ここで、ρ(T)は、前記1つよりも多くの加熱要素の前記測定抵抗率であり、ρ_(0)は、基準抵抗率であり、Tは、該1つよりも多くの加熱要素温度であり、α_(1)及びα_(2)は、多項式係数であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記制御が所定の周波数で行われることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記請求項の周波数が100Hzから10kHzから選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つよりも多くの加熱要素がさらに1つのセラミック材料を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つよりも多くの加熱要素がさらに1つの金属を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック材料と前記金属材料が1つよりも多くの加熱要素を含む複合材料を形成することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記金属材料が前記セラミック材料を覆っていることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記金属がプラチナまたは金のいずれかであることを特徴とする請求項9、10、または11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つよりも多くの加熱要素が加熱ブレードの形態を取ることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電気エネルギを調節する段階は、エネルギを節約するために吸煙の検出と連携して行われることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記1つよりも多くの加熱要素は鉄アルミニウム合金、チタン系合金、またはニッケル系合金の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
電気エネルギ供給源、
前記電気エネルギ供給源に接続された1つよりも多くの加熱要素、
エーロゾル形成基体、
及び前記請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコントローラとを備えた、
電気的に加熱されたエーロゾル発生装置。
【請求項17】
前記1つよりも多くの加熱要素がセラミック材料を含んでいる請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記加熱要素は、さらに、金属を含んでいる請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記セラミック材料と金属は前記1つよりも多くの加熱要素を含む複合材料を形成する請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記金属が前記セラミック材料を覆っている請求項18または19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記金属がプラチナまたは金のいずれかである請求項18、19または20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記1つよりも多くの加熱要素が加熱ブレードの形態である請求項18ないし21のいずれか1項に記載の装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-12-21 
出願番号 特願2011-501116(P2011-501116)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A24F)
P 1 651・ 121- YAA (A24F)
P 1 651・ 537- YAA (A24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田村 佳孝西田 侑以宮崎 賢司  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 佐々木 正章
田村 嘉章
登録日 2015-05-01 
登録番号 特許第5739800号(P5739800)
権利者 フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
発明の名称 電気式エーロゾル発生システムにおいて煙成分の形成を制御する方法  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 近藤 直樹  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 須田 洋之  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 大塚 文昭  
代理人 近藤 直樹  
代理人 弟子丸 健  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  

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