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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21H
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D21H
管理番号 1337071
異議申立番号 異議2017-700759  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-01 
確定日 2018-01-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第6071148号発明「黒色板紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6071148号の請求項1?11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6071148号(以下「本件特許」という。)の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成26年2月6日の出願であって、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人松本紀子(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年9月14日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年11月20日に意見書が提出されたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?11に係る発明(以下「本件発明1?11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
表層と、裏層と、前記表層と前記裏層の間に設けられた1層以上の中層とからなり、前記各層がパルプを主成分とする多層抄き板紙であって、
前記表層と前記裏層には、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とが含まれ、且つ、前記黒色染料と前記黒色顔料との合計含有量が、パルプ100質量部に対して10質量部以上であることを特徴とする黒色多層抄き板紙。
【請求項2】
前記中層には、パルプ100質量部に対して1?5質量部の黒色顔料が含まれることを特徴とする請求項1に記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項3】
前記表層及び前記裏層には、パルプ100質量部に対して1?10質量部の染色助剤が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項4】
前記表層及び裏層の表面の色相が、JIS P 8150の方法による測定において、L*値が23.0以下、a*値が-1?+1、b*値が-2?+1の範囲であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項5】
前記表層及び前記裏層は、JIS P8119によるベック平滑度が20秒以上、且つJIS P 8142による75度鏡面光沢度が15以上であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項6】
前記表層及び前記裏層は、J.TAPPI 紙パルプ試験方法No.1 m-72による表面強さが10A以上であることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項7】
前記表層及び前記裏層には、更に、サイズ剤として、パルプ100質量部に対して0.1?1.0質量部の酸性ロジンサイズ剤と、紙力剤として、パルプ100質量部に対して1?2質量部のカチオン化澱粉と、パルプ100質量部に対して0.01?0.1質量部のポリアクリルアミド系紙力剤とが含まれることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項8】
前記表層及び前記裏層に用いるパルプの叩解度は、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)で400?600mlであることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項9】
全体の坪量が200?500g/m^(2)の範囲であり、且つ前記表層及び前記裏層の米坪は、30?150g/m^(2)の範囲であることを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の黒色多層抄き板紙。
【請求項10】
パルプと、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とを含む製紙原料を混合し、表裏層用パルプスラリーを調整するステップと、
パルプを含む製紙原料を混合し、中層用パルプスラリーを調整するステップと、
抄紙機で、前記表裏層用パルプスラリーを用いた表層と、前記中層用パルプスラリーを用いた1層以上の中層と、前記表裏層用パルプスラリーを用いた裏層とを抄き合わせて、黒色多層抄き板紙を抄造する抄紙ステップと、を含むことを特徴とする黒色多層抄き板紙の製造方法。
【請求項11】
パルプと、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とを含む製紙原料を混合し、表層用パルプスラリーを調整するステップと、
パルプと、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とを含む製紙原料を混合し、裏層用パルプスラリーを調整するステップと、
パルプを含む製紙原料を混合し、中層用パルプスラリーを調整するステップと、
抄紙機で、前記表層用パルプスラリーを用いた表層と、前記中層用パルプスラリーを用いた1層以上の中層と、前記裏層用パルプスラリーを用いた裏層とを抄き合わせて、黒色多層抄き板紙を抄造する抄紙ステップと、を含むことを特徴とする黒色多層抄き板紙の製造方法。」

第3 取消理由の概要
平成29年9月14日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
<理由1>
本件発明1、3、4及び9は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
<理由2>
本件発明1?11は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

以下、甲第1号証等を、単に「甲1」等という。また、甲1等に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲1発明」、「甲1記載事項」等という。
<刊行物>
甲1:特開2009-30186号公報
甲2:特開2006-118099号公報
甲3:特開2008-38287号公報
甲4:特開2005-105490公報
甲5:特開2009-191387号公報

<理由1>
(1)本件発明1及び4は、甲1発明である。
(2)本件発明1、3及び9は、甲2発明である。

<理由2>
(1)本件発明1、3及び9は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2、7及び8は、甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明5は、甲2発明及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明6は、甲2発明及び甲4?甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明10及び11は、甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 取消理由についての判断
1 理由1について
(1)甲各号証に記載された発明
ア 甲1発明
甲1には、以下の甲1発明が記載されている(特に、【0001】?【0003】、【0036】、【0048】?【0051】、【0057】及び表1の比較例1、2参照)。
「表層と、裏層と、前記表層と前記裏層の間に設けられた中層とからなり、前記各層がパルプを主成分とする多層抄き紙であって、
前記表層には、パルプ100質量部に対して4質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して6.0又は8.0質量部の黒色顔料(カーボンブラック顔料)とが含まれ、且つ、前記黒色染料と前記黒色顔料との合計含有量が、パルプ100質量部に対して10又は12質量部であり、
前記裏層の原料パルプについても、染料及び/または顔料を内添または外添することにより着色してもよい、黒色の多層抄き紙。」

イ 甲2発明
甲2には、以下の甲2発明が記載されている(特に、【請求項1】、【0001】?【0002】、【0013】?【0014】、【0030】?【0034】及び表1、表2の実施例6?12)。
「表層と、裏層と、前記表層と前記裏層の間に設けられた中層とからなり、前記各層がパルプを主成分とする、段ボールシートに使用されるカラーライナーであって、
前記表層には、叩解したパルプ(広葉樹晒クラフトパルプ100質量%、フリーネス300mlCSF)を水中に分散させ、染料(クラリアント社製、デルマカーボンBFN)、顔料(三国色素社製、グランドブラックYT-100)、顔料定着剤(クラリアント社製、カルタレチンFリキッド)、紙力剤(ハリマ化成社製、ハーマイドRB32)、硫酸バンド、サイズ剤(ハリマ化成社製、ハーサイズNES780-H:添加量10kg/t)を添加した紙料からなり、パルプ固形分100質量部に対して5質量部の黒色染料と、パルプ固形分100質量部に対して10質量部の黒色顔料とが含まれ、且つ、前記黒色染料と前記黒色顔料との合計含有量が、パルプ100質量部に対して15質量部であり、
前記中層と前記裏層は、段ボール古紙パルプ(フリーネス380mlCSF)を水中に分散させ、添加剤として硫酸バンド(添加量30kg/t)、サイズ剤(ハリマ化成社製、ハーサイズNES780-H:添加量8kg/t)を添加した紙料からなり、それらの紙料を抄紙した、黒色のカラーライナー。」

(2)本件発明1について
ア 甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1の黒色多層抄き板紙は、裏層も、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とが含まれ、且つ、前記黒色染料と前記黒色顔料との合計含有量が、パルプ100質量部に対して10質量部以上であるのに対して、甲1発明の黒色の多層抄き紙は、裏層の原料パルプについて、染料及び/または顔料を内添または外添することにより着色してもよいものの、染料や顔料の含有量が不明である点。

相違点1を検討すると、本件発明1では、パルプ100質量部に対して、黒色直接染料と黒色顔料それぞれの含有量及びそれらの合計含有量について特定されており、相違点1に係るこれらの特定により、色ムラが少なく、色調が鮮明で、光沢感にも優れたものとすることができることから、この相違点1に係る構成を設計上の微差又は単なる設計変更とすることはできず、相違点1は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。

イ 甲2発明との対比・判断
本件発明1と甲2発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点2>
本件発明1の黒色多層抄き板紙は、裏層も、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とが含まれ、且つ、前記黒色染料と前記黒色顔料との合計含有量が、パルプ100質量部に対して10質量部以上であるのに対して、甲2発明のカラーライナーは、段ボールシートに使用されるカラーライナーであって、裏層には黒色染料や黒色顔料が含まれない点。

相違点2を検討すると、本件発明1は、裏層にまで、パルプに対して特定の含有量の黒色直接染料と黒色顔料を含有させたものであって、それにより、色ムラが少なく、色調が鮮明で、光沢感にも優れたものとしたものであるから、これらの黒色直接染料と黒色顔料を含むか否かに係る相違点2は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲2発明であるとはいえない。

(3) 本件発明3及び9について
本件発明3及び9は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、本件発明3及び9と甲2発明とは、本件発明1と甲1発明との上記「(2)イ」に示した相違点2において少なくとも相違する。
そして、上記相違点2は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明3及び9は、甲2発明であるとはいえない。

(4) 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、本件発明4と甲1発明とは、本件発明1と甲1発明との上記相違点1において少なくとも相違する。
そして、上記相違点1は、実質的な相違点である。
したがって、本件発明4は、甲1発明であるとはいえない。

(5) 小括
以上のとおり、本件発明1及び4は、甲1発明ではなく、本件発明1、3及び9は、甲2発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、本件発明1、3、4及び9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではない。

2 理由2について
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点2において相違する。
そして、この相違点2については、上記「1(2)イ」で述べたように、カラーライナーの裏層は、表面から隠れるものであるから、表層のように色ムラの防止や色調の鮮明さは求められないから、甲2発明のカラーライナーの裏層に、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とが含まれ、且つ、前記黒色染料と前記黒色顔料との合計含有量が、パルプ100質量部に対して10質量部以上であるようにする、すなわち相違点2に係る発明特定事項とする動機付けがない。
そして、本件発明2は、相違点2に係る発明特定事項により、「色ムラが少なく、色調が鮮明で、光沢感にも優れ、高級感を黒多層抄き板紙が得られる」(本件特許明細書【0015】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本件発明3及び9について
本件発明3及び9に係る発明は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、本件発明3及び9に係る発明と甲2発明とは、本件発明1と甲2発明との上記相違点2において少なくとも相違する。
したがって、本件発明3及び9は、上記「2(1)」で述べた理由と同様な理由により、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3) 本件発明2、5?8に係る発明について
本件発明2、5?8に係る発明は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、本件発明2、5?8に係る発明と甲2発明とは、本件発明1と甲2発明との上記相違点2において少なくとも相違する。
そして、上記相違点2は、上記甲3?甲5のいずれにも記載されていない。
したがって、本件発明2、5?8は、上記「2(1)」で述べた理由と同様な理由により、甲2発明及び甲3?5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 本件発明10に係る発明について
本件発明10に係る発明と甲2発明とは、少なくとも以下の相違点3において相違する。

<相違点3>
本件発明10の黒色多層抄き板紙は、裏層には、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とを含むのに対して、甲2発明のカラーライナーは、裏層に黒色染料や黒色顔料が含まれない点。

相違点3を検討すると、上記「1(2)イ」でも述べたように、カラーライナーの裏層は表面から隠れるものであるから、カラーライナーの裏層は色ムラの防止や色調の鮮明さは要求されないから、甲2発明のカラーライナーの裏層に、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とを含むようにする、すなわち相違点3に係る発明特定事項とする動機付けがない。
また、相違点3に係る構成は、上記甲3にも記載されていない。
そして、本件発明10は、相違点3に係る発明特定事項により、「色ムラが少なく、色調が鮮明で、光沢感にも優れ、高級感を黒多層抄き板紙が得られる」(本件特許明細書【0015】)という作用効果を奏するものである。」
したがって、本件発明10は、甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5) 本件発明11に係る発明について
本件発明11に係る発明と甲2発明とは、少なくとも以下の相違点4において相違する。

<相違点4>
本件発明11の黒色多層抄き板紙は、裏層には、パルプ100質量部に対して1?8質量部の黒色直接染料と、パルプ100質量部に対して5?15質量部の黒色顔料とを含むのに対して、甲2発明のカラーライナーは、裏層に黒色染料や黒色顔料が含まれない点。

相違点4に係る本件発明11の構成と、上記「2(4)」の相違点3に係る本件発明10との構成とは実質的に同じである。
したがって、本件発明11は、上記「2(4)」の本件発明10について述べた理由と同様の理由により、甲2発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6) 小括
以上のとおり、本件発明1?3、5?11は、甲2発明、あるいは甲2発明及び甲3?5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1?3、5?11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人は、本件発明5は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明6は、甲4発明及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5、6は、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、本件発明8は、甲3発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する旨主張するので、以下に検討する。

2 甲3(請求項1、【0075】?【0076】)には、
「少なくとも表層、裏層、及び前記表層と前記裏層との間に配置される1層又は複数層から成る中間層を有する、坪量70?150g/m^(2)の多層抄き両面着色紙であって、
前記表層及び前記裏層の色調は、前記表層及び前記裏層の原料パルプに着色剤を添加することにより、
前記表層の表面及び前記裏層の裏面の明度(L値)が53以下で、
前記表層の表面及び前記裏層の裏面の色相(a値)が-33?33の範囲で、かつ、前記表層の表面の色調及び前記裏層の裏面の色調とが同程度になるように調整され、
また、前記中間層の明度(L値)が、前記表層の表面及び前記裏層の裏面の明度をL1、前記中間層の明度をL2として、-40≦L1-L2≦-8に調整されて、表層の離解フリーネスを400ccに調整した、多層抄き両面着色紙。」の発明が、
甲4(請求項1、【0049】)には、
「表層、裏層及び1層又は2層以上の中層からなる多層抄き板紙において、該多層抄き板紙の米坪が120?300g/m^(2)の範囲であり、表層表面と裏層表面の平滑度が共に10?400秒の範囲にあり、かつ表層表面と裏層表面のJISP8140による水との接触時間10秒の吸水度が3?200g/m^(2)の範囲にあり、表層表面と裏層表面に紙力増強層を設け、紙力増強層は、その塗工面のJIS P8129表面強さ試験のワックス法による表面強度が、8A?20Aである、多層抄き板紙。」の発明が、
甲5(請求項1、【0043】?【0044】)には、
「原紙が表層、中層、及び裏層の少なくとも3層から構成され、少なくとも前記表層を着色層とした多層抄き光沢板紙において、
前記着色層の表面に樹脂をオンマシンで塗工して光沢層を形成し、
光沢度を8%以上とし、
光沢板紙はJAPAN TAPPI No.1のワックスによる表面強さ試験方法に準拠して測定した表面強度が14A以上であり、
光沢板紙は、JIS-8119(1998)のベック平滑度試験機による平滑度試験方法に準拠して測定した平滑度が35秒以上である、多層抄き光沢板紙。」の発明が、それぞれ記載されている。

3 しかし、甲3?甲5には、いずれも本件発明5、6及び8が有する構成である裏層に黒色染料や黒色顔料が用いられていることについて、記載や示唆がされておらず、また、それらを用いようとする動機もない。
したがって、本件発明5、6及び8に対する甲3発明、甲4発明及び甲5発明に基づく申立人の上記主張は、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおり、上記取消理由及び特許異議申立理由の上記理由によっては、本件発明1?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-01-16 
出願番号 特願2014-21571(P2014-21571)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D21H)
P 1 651・ 113- Y (D21H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 小野田 達志
蓮井 雅之
登録日 2017-01-13 
登録番号 特許第6071148号(P6071148)
権利者 北越紀州製紙株式会社
発明の名称 黒色板紙  
代理人 飯塚 健  
代理人 飯塚 信市  

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