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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1337308
審判番号 不服2016-14809  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-03 
確定日 2018-02-05 
事件の表示 特願2013-543781「熱吸収性と高い耐候安定性とを有するポリマー組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年6月21日国際公開、WO2012/080395、平成25年12月26日国内公表、特表2013-545861〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年12月15日(パリ条約による優先権主張 2010年12月17日 (IT)イタリア)を国際出願日とする出願であって、平成27年9月28日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月30日に意見書が提出されたが、同年5月31日付けで拒絶査定がされたところ、同年10月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたので、特許法第162条所定の審査がされた結果、同年11月30日付けで同法第164条第3項所定の報告がされ、その後平成29年2月2日に上申書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定における拒絶の理由は次の理由を含むものである。

「(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」


第3 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

平成28年10月3日提出の手続補正書による手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容
平成28年10月3日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という)は、拒絶査定不服審判の請求と同時にしたものであるところ、本件補正前の請求項1?15及び本件補正後の請求項1?14の記載は次のとおりである。

本件補正前:
「【請求項1】
a)透明熱可塑性プラスチックの少なくとも1種、
b)ホウ化物化合物からなる群からの無機IR吸収剤の少なくとも1種、
c)無機ナノスケール顔料の少なくとも1種、
d)下記化合物:
1a、1b:
【化1】

[式中、RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、
それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
2a、2b:
【化2】

[式中、RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、
それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
3:
【化3】

[式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミン基からなる群から選択される]
からなる群から選択される着色剤の少なくとも1種、
e)下記化合物:
4:
【化4】

[式中、R3はハロゲンであり、n=4である]
5:
【化5】

6:
【化6】

7:
【化7】

[式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、
nは、0?4の自然数である]
8a、8b:
【化8】

[式中、基R(5?20)は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシル、フッ素、塩素、臭素、スルホンまたはCNであり、
Mは、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、銅およびマンガンからなる群から
選択される]
からなる群から選択される着色剤の少なくとも1種
を含有するポリマー組成物。
【請求項2】
1:1異性体混合物として化合物(1a)および(1b)および/または(2a)および(2b)の着色剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
純異性体としてのみ、それぞれの場合において化合物(1a)および(1b)および/または(2a)および(2b)の着色剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分d)の着色剤および成分e)の着色剤が1:3?3:1の比で存在することを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
下記群:
I. (1a)および/または(1b)、(4)、(2a)および/または(2b)
II. (1a)および/または(1b)、(5)、(2a)および/または(2b)
III. (1a)および/または(1b)、(7)
IV. (1a)および/または(1b)、(4)、(7)
V. (1a)および/または(1b)、(5)、(7)
VI. (4)、(2a)および/または(2b)
VII. (5)、(2a)および/または(2b)
VIII. (2a)および/または(2b)、(4)、(6)
IX. (2a)および/または(2b)、(5)、(6)
X. (3)、(4)
XI. (3)、(5)
XII. (3)、(4)、(6)
XIII. (3)、(5)、(6)
XIV. (3)、(4)、(7)
XV. (3)、(5)、(7)
XVI. (3)、(4)、(2a)および/または(2b)
XVII. (3)、(5)、(2a)および/または(2b)
XVIII.(6)、(1a)および/または(1b)
XIX. (6)、(1a)および/または(1b)、(7)
XX. (1a)および/または(1b)、(8)
から選択される着色剤組み合わせを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
熱可塑性プラスチックがポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ナノスケール顔料がカーボンブラックであり、IR吸収剤が六ホウ化ランタンであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
IR吸収剤が、ポリマー組成物全体における金属ホウ化物の固形分として計算して、0.00150重量%?0.01500重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ナノスケール顔料が、組成物全体に基づいて0.00020重量%?0.00350重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
成分d)の着色剤が、対象の個々の成分に基づいて0.00001重量%?0.30000重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
UV吸収剤、離型剤、熱安定剤および加工安定剤からなる群からの更なる添加剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
自動車用および建築用ガラスの製造における、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項1?11のいずれかに記載のポリマー組成物から製造された、自動車用ガラスまたは建築用ガラス。
【請求項14】
UV吸収剤含有耐引掻性被膜を有することを特徴とする、請求項13に記載の自動車用ガラスまたは建築用ガラス。
【請求項15】
ガラスがポリカーボネートガラスであり、0.75Wでキセノン照明を用いた3000時間の人工耐候性試験後の明度Eの変化が5.0未満であることを特徴とする、請求項13または14に記載の自動車用ガラスまたは建築用ガラス。」


本件補正後:
「【請求項1】
a)ポリカーボネートである透明熱可塑性プラスチックの少なくとも1種、
b)ホウ化物化合物からなる群からの無機IR吸収剤の少なくとも1種、
c)カーボンブラックである無機ナノスケール顔料の少なくとも1種、
d)下記化合物:
1a、1b:
【化1】

[式中、RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
3:
【化2】

[式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミン基からなる群から選択される]からなる群から選択される着色剤の少なくとも1種、
e)下記化合物:
4:
【化3】

[式中、R3はハロゲンであり、n=4である]
5:
【化4】

7:
【化5】

[式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、nは、0?4の自然数である]
8a、8b:
【化6】

[式中、基R(5?20)は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシル、フッ素、塩素、臭素、スルホンまたはCNであり、Mは、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、銅およびマンガンからなる群から選択される]からなる群から選択される着色剤の少なくとも1種を含有するポリマー組成物。
【請求項2】
1:1異性体混合物として化合物(1a)および(1b)の着色剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
純異性体としてのみ、それぞれの場合において化合物(1a)および(1b)の着色剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分d)の着色剤および成分e)の着色剤が1:3?3:1の比で存在することを特徴とする、請求項1?3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
下記群:
I. (1a)および/または(1b)、(7)
II. (1a)および/または(1b)、(4)、(7)
III. (1a)および/または(1b)、(5)、(7)
IV. (3)、(4)
V. (3)、(5)
VI. (3)、(4)、(7)
VII. (3)、(5)、(7)
VIII. (1a)および/または(1b)、(8)
から選択される着色剤組み合わせを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
IR吸収剤が六ホウ化ランタンであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
IR吸収剤が、ポリマー組成物全体における金属ホウ化物の固形分として計算して、0.00150重量%?0.01500重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ナノスケール顔料が、組成物全体に基づいて0.00020重量%?0.00350重量%の量で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
成分d)の着色剤が、対象の個々の成分に基づいて0.00001重量%?0.30000重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
UV吸収剤、離型剤、熱安定剤および加工安定剤からなる群からの更なる添加剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
自動車用および建築用ガラスの製造における、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項12】
請求項1?10のいずれかに記載のポリマー組成物から製造された、自動車用ガラスまたは建築用ガラス。
【請求項13】
UV吸収剤含有耐引掻性被膜を有することを特徴とする、請求項12に記載の自動車用ガラスまたは建築用ガラス。
【請求項14】
ガラスがポリカーボネートガラスであり、0.75Wでキセノン照明を用いた3000時間の人工耐候性試験後の明度Eの変化が5.0未満であることを特徴とする、請求項12または13に記載の自動車用ガラスまたは建築用ガラス。」

すなわち、本件補正は、概略下記ア)?オ)に示される補正を行うものである。
ア)本件補正前の請求項1のa)成分である「透明熱可塑性プラスチック」について、本件補正後の請求項1では「ポリカーボネートである」という限定を付し、これに伴って、本件補正前の請求項6を削除し、以降の請求項の項番を繰り上げる。

イ)本件補正前の請求項1のc)成分である「無機ナノスケール顔料」について、本件補正後の請求項1では「カーボンブラックである」という限定を付し、これに伴って、本件補正前の請求項7における「ナノスケール顔料がカーボンブラックであり、」を削除する。

ウ)本件補正前の請求項1のd)成分として挙げられている選択肢のうち、(2a)および(2b)で表される化合物を削除する。これに伴って、本件補正前の請求項2及び3においても、選択肢から(2a)および(2b)で表される化合物を削除する。

エ)本件補正前の請求項1のe)成分として挙げられている選択肢のうち、(6)で表される化合物を削除する。

オ)本件補正前の請求項5において、着色剤の組み合わせとして挙げられている選択肢の中から、「I.(1a)および/または(1b)、(4)、(2a)および/または(2b)」、「II.(1a)および/または(1b)、(5)、(2a)および/または(2b)」、「VI.(4)、(2a)および/または(2b)」、「VII.(5)、(2a)および/または(2b)」、「VIII. (2a)および/または(2b)、(4)、(6)」、「IX.(2a)および/または(2b)、(5)、(6)」、「XII. (3)、(4)、(6)」、「XIII. (3)、(5)、(6)」、「XVI. (3)、(4)、(2a)および/または(2b)」、「XVII. (3)、(5)、(2a)および/または(2b)」、「XVIII.(6)、(1a)および/または(1b)」及び「XIX.(6)、(1a)および/または(1b)、(7)」を削除した上で、残った選択肢に付されているローマ数字を繰り上げて整理し、改めてI?VIIIとする。

2.補正の適否

2-1 特許法第17条の2第5項について
特許法第17条の2第5項において、同条第1項第4号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は、同条第5項各号に掲げる事項(請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明)を目的とするものに限るとされているので、本件補正が、その規定を満たすかについて検討する。
本件補正後の請求項1は,本件補正前の請求項1に対して,本件補正前の請求項6及び7に記載されていた特定事項を追加することで,「透明熱可塑性プラスチック」と「無機ナノスケール顔料」の種類を限定し、さらに、d)成分とe)成分における化合物の選択肢の一部を削除するものである。そして,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,本件補正は特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。
また,本件補正後の請求項2、3及び5についても、それぞれ本件補正前の請求項2、3及び5の選択肢の一部を削除する補正がされたものであるから、上述と同様に,特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認められる。

2-2 特許法第17条の2第6項について
上記2-1のとおり、特許法第17条の2第5項第2号を目的とするものと認められる場合には、同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないので、この点を検討する。

2-3 本件補正発明
本件補正後の特許請求の範囲に係る発明は、前記1.に「本件補正後」として記載したとおりのものである(なお、本件補正後の請求項1?14に係る発明を、以下それぞれ「本件補正発明1」?「本件補正発明14」といい、さらにこれらを総称して「本件補正発明」という。)。

2-4 当審の判断
(ア)サポート要件の判断基準について
特許法36条6項1号は、特許請求の範囲の記載について、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要件として規定している。
そして、特許請求の範囲が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(イ)本願明細書の発明の詳細な説明の記載について
本願明細書の発明の詳細な説明には、おおむね、次の記載がある。

摘示ア
「【技術分野】
【0001】
本発明は、透明熱可塑性プラスチック、無機赤外線吸収剤(以下、IR吸収剤とも称する)、少なくとも1種の無機ナノスケール顔料、および特定の構造を有する少なくとも2種の有機着色剤の組み合わせを含有し、赤外線(IR)を吸収するポリマー組成物、本発明のポリマー組成物の製造方法および使用、並びに本発明のポリマー組成物から製造された製品に関する。
【0002】
特に本発明は、可視領域およびIR領域のいずれにおいても高い耐候安定性、特に高い色安定性を有する組成物に関する。
【0003】
本発明はまた、建物、自動車および鉄道車両または航空機に使用するためのガラスの製造における、そのようなIR吸収剤および着色剤組み合わせを含有する本発明のポリマー組成物の使用に関する。」

摘示イ
「【背景技術】
【0004】
透明熱可塑性ポリマー(例えばポリカーボネート)を含有する組成物から製造されたガラスは、自動車分野および建物において使用するための、ガラスから製造された従来のガラスと比べて、多くの利点をもたらす。そのような利点は、例えば、大きくなった破損抵抗および/または軽量化を包含し、自動車用ガラスの場合は、交通事故の際の乗員の安全性を高め、燃料消費量を削減する。最後に、透明熱可塑性ポリマーを含有する透明材料は、より成形しやすいので、設計自由度がかなり改善される。
【0005】
しかしながら、透明熱可塑性ポリマーの高い熱伝達性(即ち赤外線透過性)は、日光の作用による、自動車および建物の内部の望ましくない温度上昇をもたらす。内部の上昇した温度により、乗員または居住者の快適さは損なわれ、空調に対する要求が高まることになる。これによりエネルギー消費量が増加し、有益な効果が失われる。それにもかかわらず、乗員の高度の快適さに加えて、低いエネルギー消費量に対する要求を満たすために、適当な遮熱性を備えたガラスが必要とされている。これは特に、自動車分野について当てはまる。
【0006】
以前から知られているように、400nm?750nmの可視領域を除けば、太陽エネルギーの最大の部分は、750?2500nmのIR領域が占めている。透過した日射は、例えば車内に吸収され、5μm?15μmの波長を有する長波熱放射線として放射される。従来のガラス材料、特に可視領域で透明である熱可塑性ポリマーは、その領域については透過性ではないので、熱放射線は外部に放射されない。温室効果が生じ、車内の温度が上昇する。この効果を最小限に抑えるため、ガラスのIR透過率を可能な限り小さくすべきである。しかしながら、通常の透明熱可塑性ポリマー、例えばポリカーボネートは、可視領域およびIR領域のいずれについても透過性である。
【0007】
従って、例えば、スペクトルの可視領域についての透過性に悪影響を及ぼさずに、IRについて可能な限り低い透過性を示す添加剤が必要とされている。
【0008】
透明熱可塑性プラスチックの中では、ポリカーボネートおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)に基づくポリマーが、ガラス材料として使用するのに特に適している。ポリカーボネートは特に、その高い強度の故に、そのような使用にとって非常に良好な特性プロフィルを有する。
【0009】
透明熱可塑性プラスチックに赤外線吸収特性を付与するため、相応の赤外線吸収剤を添加剤として使用する。このために、IR領域(赤外線、750nm?2500nm)にブロードな吸収スペクトルを有すると同時に、可視領域においては低い吸収性(淡い固有の色)を有するIR吸収剤系に、特に関心が持たれている。対応するポリマー組成物は、優れた光安定性だけでなく、高い熱安定性も付加的に有すべきである。」

摘示ウ
「【0013】
しかしながら、IR吸収剤は、IR領域においてブロードな吸収バンドを示す場合であっても、全IR領域をカバーしてはいない。更に、IR吸収剤は、可視領域において吸収性を全くまたは僅かしか示さない。加えて、窓から建物または乗物に流入するエネルギーの約50%は、スペクトルの可視領域(400nm?750nm)の放射線に起因する。従って、低い全エネルギー透過性を確保するためには、IR吸収剤に加えて、可視領域の光を吸収する他の顔料および/または着色剤を使用することも必要である。
【0014】
加えて、輸送またはインフラ部門で使用されるガラスは、長い耐用期間を有さなければならないし、その間、脆化してはならない。更に、IR特性、即ち熱放射線に対する防護性と同様に、色および透明性も、ガラスの耐用期間中、全くまたは僅かしか変化してはならない。また、ガラスは、十分な耐引掻性を有さなければならない。
【0015】
非常に長い耐用期間が必要とされるので、ガラス材料として、ガラスが頻繁に使用されている。ガラスは、紫外線の影響を受けず、引掻きの影響もあまり受けず、その機械的性質は長期にわたって変化しない。例えば酸化鉄のような無機酸化物が、顔料およびIR吸収剤として使用されるので、IRおよび色特性は、長期にわたって実質的には変化しない。しかしながら、熱可塑性物質においてそのような顔料を使用することは、使用するマトリックスの曇りおよび/または分解の原因となるので不可能である。
【0016】
プラスチックの先に記載した利点の故に、熱可塑性プラスチックの良好な物理的性質と、相応に着色されたガラスの高い色およびIR安定性との両方を示す材料に対する要求が存在する。」

摘示エ
「【0019】
比較的新しい要求は、ガラスの日射直接透過率「ガラスの内側に透過する直接太陽エネルギー」(ISO 13837に従って測定されるTDS)または日射全透過率「ガラスの内側に透過する全太陽エネルギー」(ISO 13837に従って測定されるTTS)が、特定の値に達しなければならないこと、およびそれらの値が、ガラスの耐用期間中、実質的には変化してはならないことである。そのような要求は、気候防護性の故に今後ますます高まるであろう。
【0020】
着色剤の脱色は、色特性の変化だけでなく、より高いエネルギー透過率ももたらす。これは、要求されている透過率がもはや得られないことを意味する。IR領域における変化は目視では目立たないが、そのような変化も、T_(DS)値またはT_(TS)値に関する性能データが変化する原因となる。それに関連して建物または乗物内に流入する熱が増大すると、空調性能を高めなければならないので好ましくない。」

摘示オ
「【0023】
ホウ化物および/またはタングステン酸塩系無機IR吸収剤を含有するポリカーボネートに基づく組成物は、様々な文献に記載されている。
【0024】
WO 2007/008476 A1は、メガネに特に適しており、ホウ化物系IR吸収剤および特定のカーボンブラックを含有する成形材料を開示している。これらの成分を組み合わせることによって、IR吸収性に関する相乗効果が得られることが記載されている。しかしながら、同特許文献は、着色剤の耐候安定性および安定性を開示していない。
【0025】
JP 2005-047179、JP 2005-344006、JP 2006-249345、EP 1865027 A1、JP 07-033969、JP 2008-214596およびEP 2009057 A1は、特定のアントラキノン系着色剤と組み合わせたホウ化物系IR吸収剤を含有する組成物を開示している。しかしながら、本発明の範囲の安定な着色剤組み合わせは開示していない。
【0026】
JP 2006-307172およびJP 2007-169503は、無機IR吸収剤と、アントラキノン、フタロシアニンおよびペリノンからなる群からの様々な着色剤とを含有する組成物を開示している。着色剤または特定の着色剤組み合わせの耐候安定性は開示されていない。
【0027】
JP2008-156386は、IR吸収剤含有組成物中のインダンスレン着色剤を開示している。
【0028】
US 6476158は、特に高い耐候安定性および表面光沢保持性を有する、被覆された、即ち不透明なポリカーボネート-ポリエステル組成物を開示している。しかしながら、本発明のような透明組成物は開示されていない。
【0029】
上記文献のいずれも、組成物の耐候性、本発明の着色剤組み合わせ、または色およびIR安定性を開示していないので、本発明の目的の解決法は明らかにされていない。
【0030】
先行技術では、多くの着色剤が、光に対して特に堅牢なので安定であると記載されている。ポリカーボネートに使用することが意図されている、いわゆるMacrolex着色剤(Lanxessデータシート;技術情報、Lanxess Deutschland GmbH, Functional Chemicals, High Performance Additives, Colorants(ドイツ国レーフエルクーゼン51369))、例えば着色剤Macrolex(登録商標) Blue RR(Solvent Blue 97)、Macrolex(登録商標) Violet 3R(Solvent Violet 36)の耐光堅牢度(1%TiO_(2)(DIN EN ISO 4892-2に従ったPS2%TiO_(2))を用いて1/3標準濃度で測定;0.05%の着色剤での透明着色;8段階Blue Wool Scaleで評価)は、7?8(8=最大値)に分類されている。それにもかかわらず、本発明の試験では、ポリカーボネート組成物において光に対して堅牢であると形式上分類されている着色剤が、耐候性について本発明の安定性を示さないことがわかった。
【0031】
実際、特定の構造を有する非常に少ない着色剤しか適しておらず、極めて特定の限られた組み合わせだけが本発明の目的を達成することがわかった。更に、これは、特定の無機顔料と特定の無機IR吸収剤との組み合わせにおいてのみ可能であることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
(省略)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
従って、本発明の目的は、可視領域における良好な透過性、高い色および耐候安定性と組み合わせて高いIR特性を示し、熱可塑性物質に基づく組成物を提供することである。これらの特性値は、耐用期間中、僅かしか変化してはならない。」

摘示カ
「【0037】
意外なことに、特定の着色剤組み合わせ、無機ナノスケール顔料および特定のIR吸収剤を含有する、本発明の請求項1に記載の組成物によって、この目的を達成することができた。」

摘示キ
「【0042】
d)下記化合物から選択される着色剤の少なくとも1種。
【化1】

[式中、RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲン、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシルまたはCl、より好ましくは、メチルまたはCl、特に好ましくはClを表し、それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
【0043】
好ましい態様では、Raおよび/またはRbはClであり、アミン官能基を有する炭素原子に対してオルト位および/またはパラ位に存在し、例えば、ジ-オルトクロロナフタリノ、ジ-オルト、モノ-パラ-クロロナフタリノ、およびモノ-オルト-ナフタリノである。また、好ましい態様では、RaおよびRbはそれぞれ、好ましくは窒素官能基を有する炭素原子に対してメタ位に存在する、tert-ブチル基を表す。
【0044】
特に好ましい態様では、全ての環においてn=0なので、それぞれのRaおよびRbはHである。
【0045】
【化2】

[式中、RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲン、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシルまたはCl、より好ましくは、メチルまたはCl、特に好ましくはClを表し、それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
【0046】
好ましい態様では、Rcおよび/またはRdはClであり、アミン官能基を有する炭素原子に対してオルト位および/またはパラ位に存在し、例えば、ジ-オルトクロロナフタリノ、ジ-オルト、モノ-パラ-クロロナフタリノ、およびモノ-オルト-ナフタリノである。また、好ましい態様では、RcおよびRdはそれぞれ、好ましくは窒素官能基を有する炭素原子に対してメタ位に存在する、tert-ブチル基を表す。
【0047】
特に好ましい態様では、全ての環においてn=0なので、それぞれのRcおよびRdはHである。
【0048】
化合物(1a)と(1b)、(2a)と(2b)は、互いに異性体の関係である。それぞれの異性体は単独でまたは混合物として使用することができる。特定の態様では、(1a)と(1b)または(2a)と(2b)の1:1異性体混合物(重量%単位で異性体混合物中の異性体の量に基づく)を使用する。
【0049】
そのような着色剤の調製方法は、例えばDE 2148101またはWO 2009/074504 A1に開示されている。
【0050】
本発明の組成物は、好ましくは、化合物(1a)、(1b)、(2a)および(2b)の着色剤の少なくとも1種を含有する。化合物(1a)および(1b)の着色剤が特に好ましい。
【0051】
別の態様では、化合物(1a)、(1b)、(2a)および(2b)を純異性体としてそれぞれ使用する。純異性体は、例えば調製HPLCによって得ることができる。
【0052】
【化3】

Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミン基からなる群から選択され、好ましくはR=Hである。
【0053】
このような着色剤は、例えば、Lanxess AGからMacrolex(登録商標) Violet Bの商品名で入手することができる。特定の態様では、化合物(3)の着色剤は使用しない。」

摘示ク
【0054】
e)下記化合物からの化合物の少なくとも1種。
【化4】

[式中、R3は好ましくはハロゲン、特に好ましくはClを表し、nは特に好ましくは4である]
【0055】
別の好ましい態様は、n=0であってR3=Hである態様である。
そのような着色剤は、例えば、Lanxess AGからMacrolex(登録商標) Orange 3GまたはMacrolex(登録商標) Red EGの商品名で入手することができる。
【0056】
R3がClを表し、n=4である場合、同じ色特性を得るために、化合物(4)の着色剤に代えて、化合物(5)の着色剤を使用することができる。
【化5】

このような着色剤は、例えば、Lanxess AGからMacrolex(登録商標) Red E2Gの商品名で入手することができる。
【0057】
【化6】

このような着色剤は、例えば、Lanxess AGからMacrolex(登録商標) Green Gの商品名で入手することができる。
【0058】
【化7】

[式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲン、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシルまたはCl、より好ましくは、メチルまたはCl、特に好ましくはClを表し、nは、0?4の自然数である]
【0059】
特に好ましい態様では、全ての環においてn=0なので、それぞれのR1およびR2はHである。
【0060】
この化合物(7)の着色剤は、BASF AGからPaliogen Blueシリーズとして市販されている。
【0061】
化合物(7)の着色剤を使用する場合は、2L/kg?10L/kg、好ましくは3L/kg?8L/kgの(DIN ISO 787-11に従って測定される)嵩容積、5m^(2)/g?60m^(2)/g、好ましくは10m^(2)/g?55m^(2)/gの(DIN 66132に従って測定される)比表面積、および4?9の(DIN ISO 787-9に従って測定される)pH値を有する顔料が特に好ましい。
【0062】
【化8】

基R(5?20)は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシル、フッ素、塩素、臭素、スルホンまたはCNである。
基R(5?20)は、全ての位置において同じであることが好ましい。全ての位置において基R(5?20)がHであることがより好ましい。別の態様では、全ての位置において基R(5?20)はClである。
【0063】
Mは、好ましくは、アルミニウム(R=Hの場合はアルミニウムフタロシアニン、CAS:14154-42-8)、ニッケル(R=Hの場合はニッケルフタロシアニン、CAS:14055-02-8)、コバルト(R=Hの場合はコバルトフタロシアニン、CAS:3317-67-7)、鉄(R=Hの場合は鉄フタロシアニン、CAS:132-16-1)、亜鉛(R=Hの場合は亜鉛フタロシアニン、CAS:14320-04-08)、銅(R=Hの場合は銅フタロシアニン、CAS:147-14-8;R=HおよびClの場合はポリクロロ銅フタロシアニン、CAS:1328-53-6;R=Clの場合はヘキサデカクロロフタロシアニン、CAS:28888-81-5;R=Brの場合はヘキサデカブロモフタロシアニン、CAS:28746-04-5)、マンガン(R=Hの場合はマンガンフタロシアニン、CAS:14325-24-7)である。
【0064】
M=Cuと、全ての位置におけるR=Hとの組み合わせが特に好ましい。M=CuおよびR(5?20)=Hである化合物(8b)は、BASF AG(ルートヴィヒスハーフェン)製のHeliogen(登録商標) Blue K6911DまたはHeliogen(登録商標) Blue K7104KWとして入手することができる。
【0065】
化合物(8a)は、例えばBASF AG(ルートヴィヒスハーフェン)製のHeliogen(登録商標) Blue L7460として入手することができる。
【0066】
化合物(4)、(6)、(7)、(8a)または(8b)の中で、化合物(4)、(7)および(8b)が特に好ましく、先に記載したように、記載した条件下では化合物(4)を化合物(5)に置き換えることができる。化合物(7)の着色剤を使用することが最も好ましい。」

摘示ケ
「【0076】
d)およびe)として記載した着色剤の組み合わせとして、以下の組み合わせが特に適している(読点は「および」を意味する)。
I. (1a)および/または(1b)、(4)、(2a)および/または(2b)
II. (1a)および/または(1b)、(5)、(2a)および/または(2b)
III. (1a)および/または(1b)、(7)
IV. (1a)および/または(1b)、(4)、(7)
V. (1a)および/または(1b)、(5)、(7)
VI. (4)、(2a)および/または(2b)
VII. (5)、(2a)および/または(2b)
VIII. (2a)および/または(2b)、(4)、(6)
IX. (2a)および/または(2b)、(5)、(6)
X. (3)、(4)
XI. (3)、(5)
XII. (3)、(4)、(6)
XIII. (3)、(5)、(6)
XIV. (3)、(4)、(7)
XV. (3)、(5)、(7)
XVI. (3)、(4)、(2a)および/または(2b)
XVII. (3)、(5)、(2a)および/または(2b)
XVIII.(6)、(1a)および/または(1b)
XIX. (6)、(1a)および/または(1b)、(7)
XX. (1a)および/または(1b)、(8)」

摘示コ
「【0078】
本発明の組成物は、耐候性について安定であり、明度および日射直接透過率TDSまたは日射全透過率TTSは、僅かな変化しか示さない。
【0079】
0.75Wのキセノン照明を用いた3000時間の人工耐候性試験後の明度変化ΔEは、3.5未満、好ましくは3.0未満、特に好ましくは2.5未満である。
【0080】
0.75Wのキセノン照明を用いた3000時間の人工耐候性試験後の日射直接透過率変化ΔTDSは、0.90%未満、好ましくは0.80%未満、特に好ましくは0.75%未満である。
【0081】
成形品を無彩色に着色することが必要である。内装または内装材の視覚的印象は、多くの場合、濃く着色されたガラスによって変化するので、ガラスの着色は可能な限り無彩色でなければならない。カラーニュートラルグレが一般に好ましい。一部の態様では、着色を、ブルーグレー、グリーングレー、レッドグレーまたはイエローグレーに変えることができる。」

摘示サ
「【0207】
実施例1(比較例)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、配合によって調製した。
Macrolex Red EG(成分e)): 0.00313重量%
Macrolex Blue RR(比較例のための着色剤): 0.00320重量%
Lumogen IR 765(成分f)): 0.00180重量%
KHDS 06(成分b)): 0.01350重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00144重量%
PC1(成分a)): 9.97693重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0208】
実施例2(比較例)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Macrolex Red EG(成分e)): 0.00335重量%
Macrolex Blue RR(比較例のための着色剤): 0.00315重量%
Lumogen IR 765(成分f)): 0.00140重量%
KHDS 872G2(成分b)): 0.06000重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00128重量%
PC1(成分a)): 9.93082重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0209】
実施例3(比較例)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Macrolex Red EG(成分e)): 0.002450重量%
Macrolex Blue RR(比較例のための着色剤): 0.003090重量%
Heliogen Blue K6911D(成分e)): 0.000095重量%
KHDS 872G2(成分b)): 0.057000重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.001410重量%

PC1(成分a)): 9.935955重量%
PC2(成分a)): 90.000000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0210】
実施例4(比較例)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Macrolex Red EG(成分e)): 0.00550重量%
Macrolex Blue RR(比較例のための着色剤): 0.00392重量%
Heliogen Blue K6911D(成分e)): 0.00133重量%
KHDS 06(成分b)): 0.03130重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00167重量%
PC1(成分a)): 9.95628重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0211】
実施例5(比較例)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Macrolex Red EG(成分e)): 0.00370重量%
Macrolex Violet 3R Gran(比較例のための着色剤):0.00240重量%
Heliogen Blue K6911D(成分e)): 0.00230重量%
KHDS 06(成分b)): 0.03000重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00065重量%
PC1(成分a)): 9.96095重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0212】
実施例6(比較例)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Macrolex Red EG(成分e)): 0.00470重量%
Macrolex Violet 3R Gran(比較例のための着色剤): 0.00117重量%
Heliogen Blue K6911D(成分e)): 0.00262重量%
YMDS 874(ATO系IR吸収剤): 0.10000重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00188重量%
PC1(成分a)): 9.88963重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0213】
実施例7(本発明)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Paliogen Blue L6385(成分e)): 0.00210重量%
A.(1a)と(1b)との1:1混合物(重量%)(成分d)):
0.00147重量%
KHDS 872G2(成分b)): 0.07500重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00165重量%
PC1(成分a)): 9.91978重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0214】
実施例8(本発明)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Paliogen Blue L6385(成分e)): 0.00278重量%
(1a)と(1b)との1:1混合物(重量%)(成分d)):
0.00236重量%
KHDS 872G2(成分b)): 0.07000重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00220重量%
PC1(成分a)): 9.92266重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。

【0215】
実施例9(本発明)
以下の量の成分を含有するポリマー組成物を、先に記載したように(実施例1)調製した。
Paliogen Blue L6385(成分e)): 0.00211重量%
(1a)と(1b)との1:1混合物(重量%)(成分d)):
0.00248重量%
KHDS 872G2(成分b)): 0.09000重量%
FMDS 874(ATO系IR吸収剤): 0.12552重量%
BlackPearls 800(成分c)): 0.00139重量%
PC1(成分a)): 9.77850重量%
PC2(成分a)): 90.00000重量%
PC2は、PC2の段落で記載した添加剤を含有していた。PC2は、使用したPC2の量に基づいてそれぞれの場合に、0.270重量%の離型剤、0.025重量%の熱安定剤および0.200重量%のUV安定剤を含有していた。
【0216】
【表1】

【0217】
【表2】

【0218】
全体的にみて注目すべきことは、本発明の混合物だけが、高いIR安定性(ΔT_(DS))と組み合わさった所要の色安定性(ΔE)を示すことである。
【0219】
比較例は、着色剤を制限なく組み合わせることはできないことを示している。比較例1?6は、本発明の実施例と同じ色彩印象を有していたが、耐候性試験後は著しい望ましくない色シフトを示した。比較例の一部は、本発明の組成物においても使用した着色剤を含有していたが、その場合であっても耐候性試験に対して安定ではなかった。意外なことに、本発明の着色剤組み合わせを使用した場合のみ、所望の色安定性ポリマー組成物が得られることが見いだされた。相応の組み合わせにおいて本発明の着色剤または無機IR安定剤を、構造上類似した色付与物質または別の無機IR安定剤に置き換えることによっても、耐候性試験に対する色安定性は著しく損なわれた。

(ウ)本件補正発明の課題について
本願明細書の摘示アの【0001】によれば、本願明細書に記載された発明は、透明熱可塑性プラスチック、無機赤外線吸収剤(以下、IR吸収剤とも称する)、少なくとも1種の無機ナノスケール顔料、および特定の構造を有する少なくとも2種の有機着色剤の組み合わせを含有し、赤外線(IR)を吸収するポリマー組成物に関するものであるということができる。
そして、摘示イによれば、例えばポリカーボネートを含有する組成物から製造されたガラスは、建物や自動車等に使用されるものであるところ、熱伝達性(すなわち赤外線透過性)が高く、かつ長波熱放射線が外部に放射されないために、室内に望ましくない温室効果が生じる。これを抑制するため、摘示ウによれば、IR吸収剤とともに可視領域の光を吸収する着色剤を組成物に添加する技術が知られている。しかし、摘示オの【0030】によれば、光に対して堅牢であるとされる着色剤は、実際には十分な耐候性を示さないことがわかったと記載されている。
これらの背景を踏まえ、摘示オの【0033】によれば、本件補正発明の課題は、
「可視領域における良好な透過性、高い色および耐候安定性と組み合わせて高いIR特性を示す、熱可塑性物質に基づく組成物であって、これらの特性値は、耐用期間中、僅かしか変化しない組成物を提供すること」であると認められる。

(エ)本件補正発明のサポート要件の適合性について
本願明細書の摘示オの【0031】の記載に基づくと、上記本件補正発明の課題を解決するには、少なくとも極めて特定の限られた着色剤を組み合わせて用いることが必要であると解されるので、本件補正発明1に係る組成物を構成する成分のうち、特に着色剤に着目して検討する。
当該本件補正発明1は、着色剤として成分d)及びe)を有するものであり、当該成分d)は選択肢(1a)、(1b)及び(3)で表される化合物のうちの少なくとも一つであり、また当該成分e)は選択肢(4)、(5)、(7)、(8a)及び(8b)で表される化合物のうちの少なくとも一つである。

本願明細書の摘示キの【0049】には、(1a)、(1b)で表される化合物は国際公開第2009/74504号に開示された調製方法に基づいて得られるものであること、【0053】には、(3)で表される化合物が「Macrolex(登録商標) Violet B」という商品名で市販され入手可能な着色剤であることが記載されている。
また同様に、本願明細書の摘示クの【0054】から【0065】には、(4)は「Macrolex(登録商標) Orange 3G」または「Macrolex(登録商標) Red EG」という商品名で、(5)は「Macrolex(登録商標) Red E2G」という商品名で、(7)は「Paliogen blueシリーズ」として、(8a)は「Heliogen(登録商標) Blue L7460」という商品名で、上記(8b)は「Heliogen(登録商標) Blue K6911D」または「Heliogen(登録商標) Blue K7104KW」という商品名で、それぞれ市販され入手可能な着色剤であることが記載されている
そして、摘示ケには、成分d)と成分e)に関して、特に適した着色剤の組合わせとして、I.?XX.で示された20通りが列挙されている。
一方、本願明細書の実施例としては、摘示サにおいて「(本発明)」と記載された実施例7?9が本件補正発明1の実施態様を示すものと理解できるところ、それら実施例はすべて、成分d)として(1a)と(1b)との1:1混合物を用い、成分e)として「Paliogen Blue L6385」すなわち(7)を用いた場合となっている。そして、「(比較例)」と記載された実施例1?6は、成分e)である(4)や(8b)を用いているものの、成分d)に該当する着色剤を用いていない点で、本件補正発明の実施態様には該当しないものである。これら実施例1?9について、段落【0216】の「表1」を参照すると、「シート厚さ」を考慮すれば、実施例7?9は、「Ty」(光透過率)において十分な透過率を有することが理解でき、かつ、段落【0217】の「表2」を参照すると、実施例7?9は耐候性の指標である「ΔE」や「ΔT_(DS)」、「ΔT_(TS)」の点において、比較例よりも優れていることが理解できる。したがって、実施例7?9における着色剤の組合せ、すなわち、成分d)の(1a)と(1b)との1:1混合物及び成分e)の(7)の組み合わせを採用した場合には、上記本件補正発明の課題を解決できることが、本願明細書の記載から理解できる。
しかしながら、本願明細書の実施例には、成分d)の(1a)と(1b)との1:1混合物及び成分e)の(7)の組み合わせ以外の組み合わせについては、具体的に実証されていない。そして、比較例に相当する実施例1?6の記載はあるものの、これらは、成分e)として(4)や(8b)を採用し、他の着色剤は成分d)にもe)にも該当しないものを用いた例にすぎないため、成分d)の(1a)と(1b)との1:1混合物及び成分e)の(7)の組み合わせ以外の組み合わせについて、本件補正発明の課題を解決できることが推認できるような実験的な根拠はなく、かつ理論的な説明が明細書中でなされているわけでもない。
さらに、当該成分d)の選択肢同士を見比べると、(1a)と(1b)は化学構造式からみて、互いに異性体の関係にあるものと認められ、化学的性質が一定程度共通していることまでは理解できる。しかしながら、(3)については、(1a)や(1b)に対して、複素環の有無、5員環の有無及び環の数等の点からみて化学構造上の共通性が見出せないし、上記(1a)や(1b)に対して何らかの化学的な共通性があるかどうかについて本願明細書中に説明があるわけではない。また、成分d)の選択肢である(1a)、(1b)及び(3)に何らかの化学的な共通性があるという技術常識があるとも認められない。
また、当該成分e)の選択肢同士を見比べると、(8a)と(8b)は化学構造式からみて、金属配位子の有無の違いがあるのみでそれ以外の部分は共通しているものと認められ、化学的性質が一定程度共通していることまでは理解できる。しかしながら、本願明細書の実施例7?9で用いられた(7)は当該技術分野において有機着色剤によくみられるアントラキノン骨格を有していることが認められるところ、少なくとも当該(7)に対して、(4)、(5)、(8a)及び(8b)は、いずれも5員環の有無、キノン骨格の有無、金属配位子の有無及び環の数等の点からみて化学構造上の共通性が見出せない。また、(4)、(5)、(7)、(8a)及び(8b)の間に何らかの化学的な共通性があるかどうかについて本願明細書中に説明があるわけではないし、そのような共通性があるという技術常識があるとも認められない。
これに加えて、摘示サの【0219】においては、「比較例は、着色剤を制限なく組み合わせることはできないことを示している」という評価が記載されており、また、摘示オの段落【0031】においても同様に、「実際、特定の構造を有する非常に少ない着色剤しか適しておらず、極めて特定の限られた組み合わせだけが本発明の目的を達成することがわかった。」と記載されている。よって、着色剤の組合せについては、どのような組合せでもよいというわけではなく、実際に実験をして確認するまではその結果は予測できないものと理解できる。してみると、本願明細書の記載全体と化学構造上の検討を踏まえたとしても、成分d)の(1a)及び/又は(1b)と成分e)の(7)の組み合わせ以外の組み合わせについては、本願補正発明の課題を解決できるとは、当業者といえども理解することができない。
またそもそも、成分d)として(1a)、(1b)、(3)を一つのグループとした根拠並びに(e)成分として(4)、(5)、(7)、(8a)及び(8b)を一つのグループとした根拠自体も、化学構造上の共通性や着色剤としての色の共通性があるわけではなく、また実施例においてグループ化されるべき根拠も示されていない以上、まったく不明であるといわざるを得ないから、そのようなグループ分けの根拠が無い成分d)と成分e)を組み合わせること自体が、本件発明の課題を達成することに対して貢献しているとは認められない。
そして、どのような着色剤の種類及び組合せが、ポリカーボネートである成分a)、ホウ化物である成分b)及びカーボンブラックである成分c)との組み合わせにおいて本件補正発明の課題、すなわち良好な透明性を有しかつ高い耐候安定性を達成できるのかが、本願出願時の技術常識から明らかであったとも認められない。

以上のことからみて、本件補正発明1に成分d)及び成分e)として挙げられている着色剤の組み合わせであって、(1a)及び/又は(1b)と(7)の組み合わせ以外の組み合わせ、すなわち成分d)として(1a)及び/又は(1b)を採用して、成分e)として(4)、(5)、(8a)及び/又は(8b)を採用したときの組み合わせ、並びに成分d)として(3)を採用したときの全ての組み合わせの発明については、本願明細書の記載に基づいて、本件補正発明の課題が達成できるものとは認められない。
したがって、本件補正発明1は、明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に照らして、当業者が本件補正発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており、サポート要件に適合しない。

(オ) 審判請求人の主張について
平成28年10月7日の審判請求書において、請求人は「参考資料1:実験成績証明書」を提示しつつ、本件補正後の発明が、可視領域における良好な透過性、高い色および耐候安定性と組み合わせて高いIR特性を示すことは明らかである旨主張している。
上記実験成績証明書で提示された結果をまとめた表は次のとおりである。



そして、追加的に示された実施例における着色剤を組合せを整理してまとめると以下のとおりである。
実施例10: 成分d)=(1a)と(1b)の1:1混合物
成分e)=(8b)

実施例11: 成分d)=(3)
成分e)=(5)&(8b)

実施例12: 成分d)=(1a)と(1b)の1:1混合物
成分e)=(4)&(7)

実施例13: 成分d)=(3)
成分e)=(4)&(8b)

上記主張について検討する。
本願出願当初の明細書に記載されていなかった事項について、出願後に補充された実験結果等を参酌することは、特段の事情がない限り許されないというべきところ、上記実験成績証明書によって示された実験結果は、出願当初の明細書に記載されていなかった事項である。
そして、本願明細書の段落【0219】等にも記載されているように、着色剤を制限無く組み合わせても、本件補正発明の課題が達成できるわけではないという背景がある以上、単に本願明細書段落【0031】で「特定の構造を有する非常に少ない着色剤しか適しておらず、極めて特定の限られた組み合わせだけが本発明の目的を達成することがわかった。」といった定性的な記載があることをもって、上記実験成績証明書で示された実験結果を推認できるものとは認められない。
したがって、上記実験成績証明書による実験結果については、本件補正発明1をサポート要件に適合させるための根拠として採用することはできない。

なお仮に、上記実験成績証明書の実験結果の内容を考慮するとしても、結局のところ実験結果としては、本件補正発明1がサポート要件に適合することの十分な根拠になるとはいえない。
すなわち、例えば、成分e)の(4)や(5)については、追加的に示された実施例11?13で用いられているが、いずれも(8b)や(7)と併用して用いられているにとどまっているため、成分e)として(4)や(5)が単独で用いられたときに、本件補正発明の課題を達成できるものとは依然として認められない。
そして、平成29年2月2日提出の上申書に記載された「添付資料2:実験成績証明書」をみても、審判請求書で示された実験成績証明書と同じ着色剤の組合せしか示しておらず、また当該上申書に示された「添付資料1:特許請求の範囲の補正案」を参照しても、着色剤の選択肢の組合せに関しては本件補正発明と何ら変わっていないため、上申書の記載を考慮したとしても、本件補正発明1がサポート要件に適合しないという判断に変わりはない。

2-5 小括
以上検討したところによれば、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件補正後の本願は拒絶すべきものであるから、本件補正発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.結論

本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。


第4 本願発明について

1 本願発明
平成28年10月3日提出の手続補正書による手続補正は上記第3のとおり却下されたので、本願請求項1?15に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明は、(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。

本願発明1:
「【請求項1】
a)透明熱可塑性プラスチックの少なくとも1種、
b)ホウ化物化合物からなる群からの無機IR吸収剤の少なくとも1種、
c)無機ナノスケール顔料の少なくとも1種、
d)下記化合物:
1a、1b:
【化1】

[式中、RaおよびRbは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、
それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
2a、2b:
【化2】

[式中、RcおよびRdは、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、
それぞれのRのnは、独立して、0?3の自然数であり、n=0の場合の基はHである]
3:
【化3】

[式中、Rは、Hおよびp-メチルフェニルアミン基からなる群から選択される]
からなる群から選択される着色剤の少なくとも1種、
e)下記化合物:
4:
【化4】

[式中、R3はハロゲンであり、n=4である]
5:
【化5】

6:
【化6】

7:
【化7】

[式中、R1およびR2は、互いに独立して、直鎖または分岐アルキル基、或いはハロゲンを表し、
nは、0?4の自然数である]
8a、8b:
【化8】

[式中、基R(5?20)は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、テキシル、フッ素、塩素、臭素、スルホンまたはCNであり、
Mは、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、亜鉛、銅およびマンガンからなる群から
選択される]
からなる群から選択される着色剤の少なくとも1種
を含有するポリマー組成物。」

2.本願発明のサポート要件について

上記第3の1.で述べたとおり、本願発明1をさらに限定したものが本件補正発明1であり、本願発明1は本件補正発明1を包含するものであるところ、上記第3の2.の2-2?2-5で検討したとおり、本件補正発明1は、明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に照らして、当業者が本件補正発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており、サポート要件に適合しない。
そうすると、本件補正発明1を包含する本願発明1も、同様の理由によってサポート要件に適合しない。


第5 むすび

以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-13 
結審通知日 2017-09-15 
審決日 2017-09-26 
出願番号 特願2013-543781(P2013-543781)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (C08L)
P 1 8・ 575- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉江 渉新留 豊  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 佐久 敬
橋本 栄和
発明の名称 熱吸収性と高い耐候安定性とを有するポリマー組成物  
代理人 浅野 真理  
代理人 朝倉 悟  
代理人 反町 洋  
代理人 永井 浩之  
代理人 末盛 崇明  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  

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