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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1337309 |
審判番号 | 不服2017-1521 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-02 |
確定日 | 2018-02-05 |
事件の表示 | 特願2014-245879「連続的グルコースセンサからのセンサデータを処理するためのコンピュータシステムおよびコンピュータシステムの作動方法、および連続的グルコースセンサシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日出願公開、特開2015- 61662〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 本願は、2004年7月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年8月1日 米国)に国際出願した特願2006-522016号の一部を、平成19年11月13日に新たな特許出願とした特願2007-294586号の一部を、さらに平成23年8月15日に新たな特許出願とした特願2011-177557号の一部を、さらに平成26年12月4日に新たな特許出願としたものであって、平成27年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月8日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年2月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、その請求項1?15に係る発明は、上記平成28年4月8日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 連続的グルコースセンサからのセンサデータを処理するためのコンピュータシステムにおいて、 連続的グルコースセンサから1つ以上のセンサデータ点を含むセンサデータを受信するように構成されたセンサデータ受信モジュールと、 1つ以上の基準データ点を含む基準データを受信するように構成された基準データ受信モジュールと、 1つ以上の基準データ点と1つ以上の時間に対応するセンサデータ点とのマッチングを行うことによって、1つ以上のマッチするデータ対を形成するように構成されたデータマッチングモジュールと、 1つ以上のマッチするデータ対を含む較正集合を形成するように構成された較正集合モジュールと、 連続的グルコースセンサの安定性を判定するように構成された安定性判定モジュールとを備えていて、この安定性判定モジュールは、前記較正集合に基づいて前記連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動を評価して、この感度評価に少なくとも部分的に基づいて安定性を判定するように構成されていることを特徴とするコンピュータシステム。」 第2 引用刊行物及びその記載事項 1 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2002-541883号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。なお、引用発明の認定に関連する箇所に当審において下線を付与した。 (1ア)「【0002】 (技術分野) 本発明は、グルコースモニタシステムに関し、特定の実施形態によれば、グルコースモニタリングシステムの校正方法に関する。」 (1イ)「【0011】 好適な実施形態によれば、血糖測定装置から得られる少なくとも1つの血糖基準値は、所定の校正期間中に得られ、校正係数は、各所定の校正期間後、これらの値を用いて計算される。好適な実施形態によれば、所定の校正期間は24時間である。さらに、特定の実施形態によれば、所定の時間偏移を用いて、血糖測定装置から得られる少なくとも1つの血糖基準値と、所定のメモリ記憶割合において得られる少なくとも1つのグルコースモニタデータ点との相関関係が仮に明らかにされる。特定の実施形態によれば、所定の時間偏移は10分である。」 (1ウ)「【0015】 本発明の付加的実施形態によれば、グルコースモニタデータを校正する装置は、グルコースモニタと、グルコースセンサと、血糖メータと、プロセッサと、を備える。グルコースモニタは、グルコースモニタメモリを備え、グルコースモニタデータを記憶する。グルコースセンサは、グルコースモニタとエレクトロニクスによって接続されグルコースモニタデータを供給する。血糖測定装置は、少なくとも1つのグルコースモニタデータ点と仮に関連づけられる少なくとも1つの血糖基準値を提供する。また、プロセッサは、少なくとも1つのグルコースモニタデータ点と仮に関連づけられる少なくとも1つの血糖基準値を用いて、校正特性を計算するソフトウェアを含み、プロセッサは、校正特性をグルコースモニタデータに適用する。特定の実施形態によれば、少なくとも1つの血糖測定値が、グルコースモニタに入力される。特定の実施形態によれば、グルコースモニタは、プロセッサを備える。あるいは、プロセッサは、グルコースモニタデータをグルコースモニタから受け取る独立した装置である。 【0016】 本発明の他の実施形態によれば、グルコースモニタデータを校正する装置は、グルコースモニタデータを獲得する手段を備える。この校正装置は、少なくとも1つのグルコースモニタデータ値と仮に関連づけられる少なくとも1つの血糖基準値を他の血糖測定装置から得る手段を備える。少なくとも1つの血糖基準値と、対応する少なくとも1つのグルコースモニタデータ測定値と、を用いて校正式を計算する手段が備えられる。また、校正式を用いて、グルコースモニタデータを校正する手段も備えられる。」 (1エ)「【0031】 身体内に取付後、グルコースセンサ12は、初期化され、校正処理を開始する前に、定常状態の操作が実現される。・・・ 【0032】 初期化処理の使用によって、グルコースセンサ12安定化に要する時間が数時間から1時間以下に減少される。・・・他の実施形態によれば、身体特性センサによって必要とされない場合、またはタイミングが因子でない場合、安定化/初期化処理を省略することができる。あるいは、特性モニタまたはデータプロセッサ200は、あるアルゴリズムをセンサデータに適用して、何時、初期過渡現象が十分に減少し、センサが、校正を開始するため十分な安定状態にあるかを判定する。 【0033】 ・・・安定化/初期化が完了後、グルコースモニタ100は、校正され、新しく取り付けられたグルコースセンサ12から得られる値を正確に解釈する。 【0034】 初期化処理によって開始され、グルコースモニタ100は、利用者の身体の皮下組織に存在するグルコースの濃度に関してグルコースセンサ12によって生成される連続電流信号(ISIG)を測定する。好適な実施形態によれば、グルコースモニタ100は、図8a?cに示すように、10秒ごとに1回のサンプリング割合で、グルコースセンサ12からISIGをサンプリングする。サンプル値の例を、図8aにおいて符号A?ADによって示す。1分間に1回の間隔割合において、最大および最小のサンプル値(図8aにおいて円形で囲まれたサンプル値A、E、G、I、M、R、V、W、Y、およびAB)を無視し、1間隔から得られる残りの4点のサンプル値を平均して間隔値(図8aにおいて、F’、L’、R’、X’、およびAD’)を生成する。」 (1オ)「【0042】 他の実施形態によれば、クリッピング限界は、前述したセンサ特性に基づいて、直前の間隔値のナノアンペア単位の数字より小さくまたは大きくすることができるし、あるいはより小さいまたはより大きい百分率とすることができる。あるいは、クリッピング限界は、あらゆる以前の間隔値から、同じ百分率変化をプラスまたはマイナスして計算される。他のアルゴリズムは、幾つかの間隔値を用いて、次の間隔値を補外し、次の予測間隔値よりある割合高い値と低い値にクリッピング限界を設定する。また別の実施形態によれば、クリッピングは、サンプル値、間隔値、メモリ値、グルコース計算値、測定特性の推定値、またはそれらの値の任意の組合せに適用することができる。 【0043】 好適な実施形態によれば、すべての間隔値は、200ナノアンペアの範囲外限界と比較される。連続した3点の間隔値が範囲外限界以上である場合、センサ感度は過度に高いと見なされ、警告が作動され、再校正が必要とされるかまたはセンサを交換する必要があることが利用者に告げられる。別の実施形態によれば、範囲外限界は、センサ感度の範囲、センサの予測使用可能期間、許容測定値の範囲、などに応じて、高くまたは低く設定される。特定の実施形態によれば、範囲外限界は、サンプル値に適用される。他の実施形態によれば、範囲外限界は、メモリ記憶値に適用される。 【0044】 好適な実施形態によれば、不安定信号警告限界は、メモリ記憶値が相互間で過大に変化する場合、検出するように設定される。信号警告限界は、間隔値について前述したクリッピング限界と同様にして設定されるが、メモリ値間の時間は間隔値間より長いので、値のより大きな変化が考慮される。不安定信号警告が作動された場合、グルコースセンサ12の再校正または交換が必要となる。真実は、グルコースモニタ100は、グルコースセンサ12から得られるISIG(連続電流信号)に過大ノイズを検出した。」 (1カ)「【0048】 好適な実施形態によれば、利用者は、一般のグルコースメータ、または他の血糖測定装置から血糖基準値を得て、この血糖基準値をグルコースモニタ100に即時に入力する。血糖基準値は、正確であると仮定され、校正のための基準として用いられる。グルコースモニタ100、またはポストプロセッサ200は、血糖基準値と有効ISIG値との相関関係を仮に求めて、対校正データ点を設定する。」 (1キ)「【0050】 好適な実施形態によれば、血糖基準値は、使用期間中は毎日、定期的にグルコースモニタ100に入力される。好ましくは、校正は、グルコースセンサ12の初期化/安定化直後およびその後1日1回、実施される。しかし、校正は、グルコースセンサ12が交換されたか、校正取り消しイベントが発生したか、全期間中のグルコースセンサ12感度の安定性、などに応じて、より多い回数またはより少ない回数で実施することができる。」 (1ク)「【0066】 好適な実施形態によれば、1つ以上の対校正データ点が利用できる場合、変形線形回帰技術(図15のブロック図に示す)を用いる単独点校正法が改良される。図14に示すように、対校正データ点800は、最小2乗法を用いて線形回帰推定され、対校正データ点800の相関関係を示す最良あてはめ直線802が求められる。線形回帰から得られるこの直線の勾配は、グルコースモニタ100を校正するための校正係数として用いられる線形回帰感度比(LRSR)である。」 (1ケ)図14として、以下の図面が記載されている。 【図14】 2 引用発明について (1)上記1の摘記には「プロセッサ」、「データプロセッサ200」、「ポストプロセッサ200」との記載があるが、共通概念として「プロセッサ」と記載するものとする。 (2)上記摘記(1オ)の「間隔値は、200ナノアンペアの範囲外限界と比較される。連続した3点の間隔値が範囲外限界以上である場合、センサ感度は過度に高いと見なされ、警告が作動され、再校正が必要とされるかまたはセンサを交換する必要があることが利用者に告げられる」こと、「不安定信号警告限界は、メモリ記憶値が相互間で過大に変化する場合、検出するように設定される。信号警告限界は、間隔値について前述したクリッピング限界と同様にして設定されるが、メモリ値間の時間は間隔値間より長いので、値のより大きな変化が考慮される。不安定信号警告が作動された場合、グルコースセンサ12の再校正または交換が必要となる」ことについて、「間隔値」は上記摘記(1エ)からグルコースの濃度に関してグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)を測定したサンプル値から生成される値であり、「クリッピング限界」とはその電流信号の振幅(又は変動)を見ているものであるから、上記摘記(1オ)の下線部の記載は、グルコースセンサの感度をグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)についての振幅(又は変動)で評価し、それに基づいて不安定信号警告が作動されるものといえる。 (3)上記引用例の記載事項及び上記(1)及び(2)から、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。なお、図面番号は省略して記載する。 「グルコースモニタと、グルコースセンサと、血糖メータと、プロセッサと、を備えるグルコースモニタデータを校正する装置であって、 グルコースモニタデータを獲得する手段、少なくとも1つのグルコースモニタデータ値と仮に関連づけられる少なくとも1つの血糖基準値を他の血糖測定装置から得る手段を備え、 グルコースモニタは、利用者の身体の皮下組織に存在するグルコースの濃度に関してグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)を測定するものであり、 プロセッサは、少なくとも1つのグルコースモニタデータ点と仮に関連づけられる少なくとも1つの血糖基準値を用いて、校正特性を計算するソフトウェアを含み、血糖基準値と有効ISIG値との相関関係を仮に求めて、対校正データ点を設定するものであり、 グルコースセンサの感度をグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)についての振幅(又は変動)で評価し、それに基づいて不安定信号警告が作動される、 グルコースモニタデータを校正する装置。」(以下「引用発明」という。) 第3 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「連続電流信号(ISIG)」を「生成する」「グルコースセンサ」は、本願発明の「連続的グルコースセンサ」に相当し、引用発明の「プロセッサと、を備えるグルコースモニタデータを校正する装置」は、本願発明の「センサデータを処理するためのコンピュータシステム」に相当する。 (2)引用発明の「グルコースモニタは、利用者の身体の皮下組織に存在するグルコースの濃度に関してグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)を測定するもので」あるから、引用発明の「グルコースモニタデータ」は、本願発明の「連続的グルコースセンサから1つ以上のセンサデータ点を含むセンサデータ」に相当する。 してみれば、引用発明の「グルコースモニタデータを獲得する手段」は、本願発明の「連続的グルコースセンサから1つ以上のセンサデータ点を含むセンサデータを受信するように構成されたセンサデータ受信モジュール」に相当する。 (3)引用発明の「少なくとも1つの血糖基準値を他の血糖測定装置から得る手段」は、本願発明の「1つ以上の基準データ点を含む基準データを受信するように構成された基準データ受信モジュール」に相当する。 (4)引用発明の「少なくとも1つの血糖基準値」と「少なくとも1つのグルコースモニタデータ点」とを「仮に関連づけ」ることは、上記摘記(1イ)に記載されているように所定の時間偏移も考慮されているものであるから、両者は「時間に対応」するものであり、両者を「仮に関連づけ」ることはマッチするデータ対を形成しているといえる。 してみれば、引用発明の「プロセッサ」が「少なくとも1つの血糖基準値」と「少なくとも1つのグルコースモニタデータ点」とを「仮に関連づけ」することは、本願発明の「1つ以上の基準データ点と1つ以上の時間に対応するセンサデータ点とのマッチングを行うことによって、1つ以上のマッチするデータ対を形成するように構成されたデータマッチングモジュール」を有しているといえる。 (5)本願発明の「1つ以上のマッチするデータ対を含む較正集合を形成するように構成された較正集合モジュール」について、本願明細書には、 「【0331】 ブロック(64)では、プロセッサモジュールとも呼ばれる較正集合モジュールは、以下でブロック(67)を参照しつつ詳しく説明するように、基準アナライトデータとセンサアナライトデータとの関係を判定するために使用される1つまたは複数のマッチするデータ対の集合から初期較正集合を形成する。」と記載され、さらに、 「【0339】 ブロック(67)で、変換関数モジュールは、較正集合使用して変換関数を作成する。変換関数は、基準アナライトデータとアナライトセンサデータとの間の関係を実質的に定義する。 【0340】 較正集合から変換関数を作成するために、さまざまな知られている方法を好ましい実施形態とともに使用することができる。一実施形態では、複数のマッチするデータ点が初期較正集合を形成し、図7を参照しつつ説明されているように、初期較正集合上で線形最小二乗回帰が実行される。」と記載され、図7として、以下の図面が記載されている。 【図7】 これらの記載から、本願発明の「較正集合」とは、基準データとセンサデータとの関係(変換関数)を求めるために必要な基準データ点とセンサデータ点とをマッチングさせたデータ対を上記図7のようにプロットさせたものであるといえる。 一方、引用発明においても、「血糖基準値と有効ISIG値との相関関係を仮に求めて、対校正データ点を設定」しており、それは上記摘記(1ク)及び(1ケ)に記載されているように、本願発明と同じように基準データとセンサデータとの関係(変換関数)を求めるために使用されるものである。 してみれば、引用発明の「プロセッサ」が「血糖基準値と有効ISIG値との相関関係を仮に求めて、対校正データ点を設定する」ことは、本願発明の「1つ以上のマッチするデータ対を含む較正集合を形成するように構成された較正集合モジュール」を有しているといえる。 (6)引用発明の「不安定信号警告が作動される」ことは、上記摘記(1オ)に「不安定信号警告が作動された場合、グルコースセンサ12の再校正または交換が必要となる」と記載されていることから、グルコースセンサの安定性を判定して信号警告を作動しているといえる。してみれば、引用発明の「不安定信号警告が作動される」ことは、「連続的グルコースセンサの安定性を判定するように構成された安定性判定モジュール」を有しているといえる。 そして、引用発明の「グルコースセンサの感度をグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)についての振幅(又は変動)で評価し、それに基づいて不安定信号警告が作動される」ことは、本願発明の「連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動を評価して、この感度評価に少なくとも部分的に基づいて安定性を判定する」ことに相当する。 してみれば、本願発明と引用発明とは、 (一致点) 「連続的グルコースセンサからのセンサデータを処理するためのコンピュータシステムにおいて、 連続的グルコースセンサから1つ以上のセンサデータ点を含むセンサデータを受信するように構成されたセンサデータ受信モジュールと、 1つ以上の基準データ点を含む基準データを受信するように構成された基準データ受信モジュールと、 1つ以上の基準データ点と1つ以上の時間に対応するセンサデータ点とのマッチングを行うことによって、1つ以上のマッチするデータ対を形成するように構成されたデータマッチングモジュールと、 1つ以上のマッチするデータ対を含む較正集合を形成するように構成された較正集合モジュールと、 連続的グルコースセンサの安定性を判定するように構成された安定性判定モジュールとを備えていて、この安定性判定モジュールは、前記連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動を評価して、この感度評価に少なくとも部分的に基づいて安定性を判定するように構成されているコンピュータシステム。」 の点で一致し、以下の点で一応相違する。 (相違点) 連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動の評価が、本願発明では「較正集合に基づいて」行われるのに対し、引用発明では、そのように行われるものかどうか不明である点。 2 相違点についての判断 本願発明の「連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動の評価」について、本願明細書には、「いくつかの実施形態では、感度(例えば、アナライト濃度に関するセンサ信号強度)を使用して、センサの安定性を判定することができ、例えば、センサ感度の振幅および/またはバラツキを評価してセンサの安定性を判定することができる。」(【0335】)と記載されており、「較正集合」とは、上記1の(5)で述べたように、基準データとセンサデータとの関係(変換関数)を求めるために必要な基準データ点とセンサデータ点とをマッチングさせたデータ対を図7のようにプロットさせたものであるから、本願発明の「較正集合に基づいて」連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動を評価するということは、較正集合を形成するために必要な要素であるセンサデータ(アナライト濃度に関するセンサ信号強度)を使用して「連続的グルコースセンサと関連する感度の振幅または変動の評価」していると解される。 一方、引用発明の「グルコースセンサの感度をグルコースセンサによって生成される連続電流信号(ISIG)についての振幅(又は変動)で評価」することは、上記摘記(1エ)及び(1キ)に記載されているように、「安定化/初期化」以降の「校正」において行われるものであるから、引用発明の「血糖基準値と有効ISIG値との相関関係を仮に求めて、対校正データ点を設定する」際のISIG値を使用している、すなわち、較正集合を形成するために必要なISIG値を使用して評価しているといえることから、本願発明と同様に「較正集合に基づいて」行われているといえる。 してみれば、上記相違点は、実質的な相違点とはいえない。 3 請求人の主張について 請求人は、審判請求書で「引用文献1には、初期過渡現象におけるセンサの応答が安定するまでの間、センサの感度の評価が可能であることは開示されていない。換言すれば、センサの感度の評価は、センサの応答の安定化後に実施される。これに対して、本願では、センサの安定性を判定する前に、感度を評価することができる。」(ここで「引用文献1」は上記引用例である。)と主張している。この主張における「センサの感度の評価」が示すものが不明であるが、本願発明では、センサの安定性を判定する前に、較正集合を形成することができるものと認められる。 しかし、まず、本願発明は、初期較正であると特定されておらず、さらに、引用発明の「不安定信号警告」の作動は、較正後に行われるものであって、センサの安定性を判定する前に較正集合を形成しているといえることから、上記主張は当を得ないものである。 4 小括 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-04 |
結審通知日 | 2017-09-11 |
審決日 | 2017-09-26 |
出願番号 | 特願2014-245879(P2014-245879) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 門田 宏 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
松岡 智也 三崎 仁 |
発明の名称 | 連続的グルコースセンサからのセンサデータを処理するためのコンピュータシステムおよびコンピュータシステムの作動方法、および連続的グルコースセンサシステム |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 阿部 達彦 |
代理人 | 実広 信哉 |