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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1337378
審判番号 不服2016-16362  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-02 
確定日 2018-02-27 
事件の表示 特願2012-174578「画像表示プログラム、画像表示装置、画像表示システム、および画像表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月24日出願公開、特開2014- 35550、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月7日の出願であって、平成28年4月14日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年6月15日付けで補正書が提出され、平成28年7月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年11月2日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成29年9月11日付けで当審から拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年11月10日付けで手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献A-Gに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2001-022946号公報
B.特開2010-118035号公報
C.特開2004-246891号公報
D.特開2009-271678号公報
E.国際公開第2011/114567号
F.特開2009-237747号公報
G.特開2002-091413号公報


第3 平成29年9月11日付け当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1、3-5、7、10、13-15に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-22946号公報 (拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2010-118035号公報 (拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2009-271678号公報 (拒絶査定時の引用文献D)
4.国際公開第2011/114567号 (拒絶査定時の引用文献E)
5.特開2002-91413号公報 (拒絶査定時の引用文献G)


第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成29年11月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-15は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
入力に応じた画像を表示装置に表示する装置に含まれるコンピュータで実行される画像表示プログラムであって、
前記コンピュータを、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
入力に応じて、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定する表示位置設定手段と、
前記操作子画像の表示位置に応じて、ユーザの操作対象に関する情報の設定を変更する設定変更手段と、
入力に応じて、前記設定変更手段によって変更された前記操作対象に関する情報に対する設定を確定する設定確定手段と、
前記設定確定手段が前記設定を確定した際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持する表示位置保持手段と、
前記表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段として機能させる、画像表示プログラム。
【請求項2】
前記操作対象は、前記表示装置に表示される仮想オブジェクトである、請求項1に記載の画像表示プログラム。
【請求項3】
前記操作対象は、前記入力受付手段により受け付けられるユーザの入力によって編集および/または作成可能である、請求項1または2に記載の画像表示プログラム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、現時点において前記表示装置に表示されている前記操作子画像の表示位置に応じて前記設定変更手段が前記設定を変更した結果を示す前記操作対象を示す画像を、さらに当該表示装置に表示する、請求項1乃至3の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項5】
前記表示制御手段は、少なくとも前記入力受付手段によるユーザの入力が受け付けられる毎に、当該ユーザの入力に応じて前記設定が変更された前記操作対象を示す画像を前記表示装置に表示する、請求項4に記載の画像表示プログラム。
【請求項6】
前記操作対象は、複数のパーツから構成されており、
前記表示位置設定手段は、前記複数のパーツ毎に、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定し、
前記設定変更手段は、前記複数のパーツ毎に、前記操作対象に関する情報の設定を変更し、
前記表示位置保持手段は、前記複数のパーツ毎に、前記設定確定手段が前記情報の設定を確定した際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持し、
前記表示制御手段は、前記複数のパーツの少なくとも1つに対応する前記操作子画像と前記過去位置画像とを前記表示装置に表示する、請求項1乃至5の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項7】
前記過去位置画像は、前記操作子画像と区別可能な画像である、請求項1乃至6の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項8】
前記過去位置画像は、前記操作子画像が表示されていた跡を示す画像である、請求項1乃至7の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項9】
前記表示位置設定手段は、入力に応じて、前記表示装置に表示された2次元平面上で前記表示位置を移動させ、
前記設定変更手段は、前記2次元平面に定義された2軸にそれぞれ対応する前記操作子画像の表示位置に応じて、前記操作対象に関する情報に対して複数の設定を変更する、請求項1乃至8の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項10】
前記表示位置設定手段は、所定の入力に応じて、前記操作子画像の表示位置として前記表示位置保持手段が保持している最新の確定位置を表す表示位置を設定する、請求項1乃至9の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項11】
前記操作対象は、前記表示装置に表示される操作対象画像であり、
前記設定変更手段は、前記操作子画像の表示位置に応じて、前記操作対象画像を構成する少なくとも1つのパーツに対する配置位置、配置方向、サイズ、および形状の少なくとも1つの設定を変更する、請求項1乃至10の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項12】
前記表示制御手段は、現時点において前記表示装置に表示されている前記操作子画像の現表示位置に応じて前記設定が変更された結果を示す前記操作対象を示す画像を当該表示装置に表示するとともに、現時点において前記表示装置に表示されている前記過去位置画像の表示位置に応じた設定を示す前記操作対象を示す画像を当該表示装置に表示する、請求項1乃至11の何れか1つに記載の画像表示プログラム。
【請求項13】
入力に応じた画像を表示装置に表示する画像表示装置であって、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
入力に応じて、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定する表示位置設定手段と、
前記操作子画像の表示位置に応じて、ユーザの操作対象に関する情報の設定を変更する設定変更手段と、
入力に応じて、前記設定変更手段によって変更された前記操作対象に関する情報に対する設定を確定する設定確定手段と、
前記設定確定手段が前記設定を確定した際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持する表示位置保持手段と、
前記表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段とを備える、画像表示装置。
【請求項14】
複数の装置が通信可能に構成され、入力に応じた画像を表示装置に表示する画像表示システムであって、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
入力に応じて、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定する表示位置設定手段と、
前記操作子画像の表示位置に応じて、ユーザの操作対象に関する情報の設定を変更する設定変更手段と、
入力に応じて、前記設定変更手段によって変更された前記操作対象に関する情報に対する設定を確定する設定確定手段と、
前記設定確定手段が前記設定を確定した際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持する表示位置保持手段と、
前記表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段とを備える、画像表示システム。
【請求項15】
入力に応じた画像を表示装置に表示する少なくとも1つの情報処理装置により構成されるシステムに含まれる1つのプロセッサまたは複数のプロセッサ間の協働により実行される画像表示方法であって、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付ステップと、
入力に応じて、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定する表示位置設定ステップと、
前記操作子画像の表示位置に応じて、ユーザの操作対象に関する情報の設定を変更する設定変更ステップと、
入力に応じて、前記設定変更ステップにおいて変更された前記操作対象に関する情報に対する設定を確定する設定確定ステップと、
前記設定確定ステップにおいて前記設定が確定された際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持する表示位置保持ステップと、
前記表示位置設定ステップにおいて設定されている表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持ステップにおいて保持されている前記設定確定ステップにおいて設定が確定された最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御ステップとを含む、画像表示方法。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成29年9月11日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0016】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る画面入力装置を備えた写真処理装置の一実施形態を示す概略構成図、図2はその制御系を示すブロック図である。
【0017】図1、図2に示すように、本実施形態に係る写真処理装置は、撮影済みフィルム等を撮像し画像データとして取り込むスキャナー11と、取り込んだ画像データに対し、マウス15等からの指示に従って、プリント補正を含む各種画像処理を行うパーソナルコンピュータ12と、画像処理中の各種情報を画面上に表示するモニター13と、画像処理結果に基づいてプリント出力を行うプリンター14とからなる。これらのうち、パーソナルコンピュータ12と、モニター13とで本発明の画面入力装置(以下、「本装置」という。)が構成される。なお、パーソナルコンピュータ12には、画像処理に用いられる現在の数値(確定された指示データ)を設定値保存変数に格納する記憶領域(第1のメモリ)12aと、前回の数値(確定される前の指示データ)を一時的に保存するバッファ(第2のメモリ)12bと、上記画像処理に関するあらゆる制御等を行うCPU12cとが備わっている。記憶領域12aは上記画像処理に用いられる現在の数値を記憶するのに十分な記憶容量を有し、バッファ12bは上記前回の数値を記憶するのに十分な記憶容量を有するものである。
【0018】本装置は、モニター13の画面上において、例えば図4に示すように、表示されるダイアログ中のスライドバー1、スピンボックス2、YES:OKボタン3、NO:キャンセルボタン4、リストアマーカ5等を備えており、これらの要素はいずれもパーソナルコンピュータ12のCPU12cに構築された所定のプログラムにより具現化される仮想のマーカ乃至ボタンである。なお、これらの要素に関するダイアログ中の配置等は周知の技術により、任意に設定できる。
【0019】スライドバー1は、指示データである数値を入力する機能(指示データ入力部)と、この入力された数値を表示する機能(指示データ表示部)を併有するものであり、画面上に表現された操作窓であるダイアログの略中央に左右方向に表示され、その上に目盛りが刻まれるとともに、この目盛り間に現在の数値を矢印の移動にて設定可能となっている。図4中では、スライドバー1上には、-99?0?+99の目盛りが刻まれており、現在の数値は+40付近に設定されている。
【0020】スピンボックス2も、上記スライドバー1と同様に、数値を入力する機能(指示データ入力部)と、この入力された数値を表示する機能(指示データ表示部)を併有するものであるが、スライドバー1が視覚的におおよその数値を表示、入力するためのものであるのに対し、スピンボックス2は正確な数値を表示、入力するためのものである。したがって、正確な数値を必要としない場合にはスピンボックス2を省略可能である。このスピンボックス2は、ダイアログの右下方に表示され、現在の数値を表示するためのボックス2aとこのボックス2a内の数値をアップダウンするための上下方向ボタン2bとからなる。図4中では、スピンボックス2のボックス2a内には、現在の数値である+40が表示されている。
【0021】これらスライドバー1とスピンボックス2には、パーソナルコンピュータ12の記憶領域12a内の設定値保存変数に格納された現在の数値が取り出されてそれぞれセットされるようになっているが、CPU12cの判断により、両者の数値が矛盾しないように、いずれか一方の数値入力により他方に同じ数値が自動的にセットされるようになっている。すなわち、スライドバー1に数値が入力されると、同じ数値がスピンボックス2にセットされ、逆に、スピンボックス2に数値が入力されると、同じ数値がスライドバー1にセットされる。
【0022】YES:OKボタン3は、スライドバー1又はスピンボックス2により入力された数値を確定する機能(指示データ確定部)を有し、ダイアログの最下部の略中央に表示されている。そして、この確定された数値はパーソナルコンピュータ12の記憶領域12a内の設定値保存変数に格納される。すなわち、CPU12cにより、数値が確定されたものと判断されると、設定値保存変数は前回の数値から現在値に置き換えられるが、この際、バッファ12b内にこの前回の数値が一時的に保存されるようになっている。
【0023】NO:キャンセルボタン4は、スライドバー1又はスピンボックス2により入力された数値をキャンセルするためのものであり、ダイアログの最下部の右側に表示されている。そして、CPU12cにより、NO:キャンセルボタン4が押されたものと判断されると、入力された数値はすべてキャンセルされる。
【0024】リストアマーカ5は、上記スライドバー1の下方に表示され、スライドバー1に沿って左右方向に移動することにより前回入力された数値を表示するマーカとしての機能(前回指示データ表示部)と、上記YES:OKボタン3により確定された数値を、前回入力された数値に戻すタッチボタンとしての機能(前回指示データ入力部)を併有する。このため、リストアマーカ5は、ダイアログ上でその指示先が明確な矢印形状を、ユーザがマウス15等を使用して画面上で押しやすいような矩形形状の上に重ねた構成としている。
【0025】そして、リストアマーカ5は、バッファ12bに一時的に保存された前回の数値をダイアログ上で表示する。例えば、図4中では、リストアマーカ5は、前回入力された数値がスライドバー1の目盛りで-60付近であることを示している。また、CPU12cにより、リストアマーカ5が押されたものと判断されると、表示中の前回の数値が、確定後の数値、つまり記憶領域12aに格納されている設定値保存変数に置き換わるが、これに伴い、スライドバー1とスピンボックス2の双方の数値が自動的にセットされるようになっている。」
イ.「【0029】本装置において、モニター13上にプリント補正画面を呼び出して、その画面にてパーソナルコンピュータ12に接続されたマウスをクリックすると、図3に示すような特殊補正画面が表示される。このときに画面に表示される画像は、プリント用のフル画面である。そして、例えば彩度調整をしたいときは、以下のように操作を行う。
【0030】画面右端にある「彩度調整」ボタン9を押すと、彩度調整モードに入る。この彩度調整モードに入ると、上記図4に示すようなダイアログが表示される。そして、目的の彩度になるように、スライドバー1又はスピンボックス2にて数値入力を行う。この入力に応じて画像の彩度が変更される。したがって、ダイアログを画面の一部に表示すると、ユーザは画面の残りに表示された画像の彩度を確認しながら、その調整を行うことができる。」
ウ.【図4】



・上記ア.の段落【0016】?【0018】の記載によれば、引用文献1には、
「取り込んだ画像データに対し、マウス15等からの指示に従って、プリント補正を含む各種画像処理を行うパーソナルコンピュータ12と、画像処理中の各種情報を画面上に表示するモニター13とから構成される画面入力装置のプログラムであって、
パーソナルコンピュータ12は、画像処理に用いられる現在の数値(確定された指示データ)を設定値保存変数に格納する記憶領域(第1のメモリ)12aと、前回の数値(確定される前の指示データ)を一時的に保存するバッファ(第2のメモリ)12bと、上記画像処理に関するあらゆる制御等を行うCPU12cとを備え、
パーソナルコンピュータ12のモニター13の画面上において、表示されるダイアログ中のスライドバー1、スピンボックス2、YES:OKボタン3、NO:キャンセルボタン4、リストアマーカ5等を備え、
これら仮想のマーカ乃至ボタンを具現化するための、CPU12cに構築された画面入力装置のプログラム。」が記載されている。
・上記ア.の段落【0019】の記載によれば、上記アの「スライドバー1」は、「指示データである数値を入力する機能(指示データ入力部)と、この入力された数値を表示する機能(指示データ表示部)とを有し、画面上に表現された操作窓であるダイアログの略中央に左右方向に表示され、その上に目盛りが刻まれるとともに、この目盛り間に現在の数値を矢印の移動にて設定可能とする」ものであり、さらに、上記イ.の段落【0030】の記載によれば、「彩度調整モード」では、「目的の彩度になるように、スライドバー1に数値入力を行うと、入力に応じて画像の彩度が変更され、ダイアログを画面の一部に表示しつつ、ユーザは画面の残りに表示された画像の彩度を確認しながら、その調整を行うことができる」ものである。
・上記ア.の段落【0022】の記載によれば、「YES:OKボタン3は、スライドバー1により入力された値を確定し、確定値は、記憶領域12a内の設定値保存変数に格納され、数値が確定されたものと判断されると、設定値保存変数は前回の数値から現在値に置き換えられ、バッファ12b内にこの前回の数値が一時的に保存される。」
・上記ア.の段落【0024】の記載によれば、「リストアマーカ5は、前記スライドバー1の下方に表示され、スライドバー1に沿って左右方向に移動することにより前回入力された数値を表示するマーカとしての機能(前回指示データ表示部)と、前記YES:OKボタン3により確定された数値を、前回入力された数値に戻すタッチボタンとしての機能(前回指示データ入力部)とを有」する。
・上記ア.の段落【0025】の記載によれば、「リストアマーカ5は、バッファ12bに一時的に保存された前回の数値をダイアログ上で表示し、CPU12cにより、リストアマーカ5が押されたものと判断されると、表示中の前回の数値が、確定後の数値、すなわち、記憶領域12aに格納されている設定値保存変数に置き換わり、スライドバー1とスピンボックス2の双方の数値が自動的にセットされる。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉

「取り込んだ画像データに対し、マウス15等からの指示に従って、プリント補正を含む各種画像処理を行うパーソナルコンピュータ12と、画像処理中の各種情報を画面上に表示するモニター13とから構成される画面入力装置のプログラムであって、
パーソナルコンピュータ12は、画像処理に用いられる現在の数値(確定された指示データ)を設定値保存変数に格納する記憶領域(第1のメモリ)12aと、前回の数値(確定される前の指示データ)を一時的に保存するバッファ(第2のメモリ)12bと、上記画像処理に関するあらゆる制御等を行うCPU12cとを備え、
パーソナルコンピュータ12のモニター13の画面上において、表示されるダイアログ中のスライドバー1、スピンボックス2、YES:OKボタン3、NO:キャンセルボタン4、リストアマーカ5等を備え、
前記スライドバー1は、指示データである数値を入力する機能(指示データ入力部)と、この入力された数値を表示する機能(指示データ表示部)とを有し、画面上に表現された操作窓であるダイアログの略中央に左右方向に表示され、その上に目盛りが刻まれるとともに、この目盛り間に現在の数値を矢印の移動にて設定可能であり、彩度調整モードでは、目的の彩度になるように、スライドバー1に数値入力を行うと、この入力に応じて画像の彩度が変更され、ダイアログを画面の一部に表示しつつ、ユーザは画面の残りに表示された画像の彩度を確認しながら、その調整を行うことができ、
YES:OKボタン3は、スライドバー1により入力された値を確定し、確定値は、記憶領域12a内の設定値保存変数に格納され、数値が確定されたものと判断されると、設定値保存変数は前回の数値から現在値に置き換えられ、バッファ12b内にこの前回の数値が一時的に保存され、
リストアマーカ5は、
前記スライドバー1の下方に表示され、スライドバー1に沿って左右方向に移動することにより前回入力された数値を表示するマーカとしての機能(前回指示データ表示部)と、前記YES:OKボタン3により確定された数値を、前回入力された数値に戻すタッチボタンとしての機能(前回指示データ入力部)とを有し、バッファ12bに一時的に保存された前回の数値をダイアログ上で表示し、CPU12cにより、リストアマーカ5が押されたものと判断されると、表示中の前回の数値が、確定後の数値、すなわち、記憶領域12aに格納されている設定値保存変数に置き換わり、スライドバー1とスピンボックス2の双方の数値を自動的にセットするものであり、
これら仮想のマーカ乃至ボタンを具現化するための、CPU12cに構築された画面入力装置のプログラム。」

2.引用文献2について
平成29年9月11日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2の段落【0042】、【0046】、図10、図12の記載からみて、当該引用文献2には「スライドバー(スライダ)を用いて、アバター(仮想オブジェクト)のモデルデータを編集する」という技術事項が記載されている。

3.引用文献3について
平成29年9月11日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3の段落【0045】、図11の記載からみて、当該引用文献3には「変更前の調整値を現在の調整値と異なる色で表示する」という技術事項が記載されている。

4.引用文献4について
平成29年9月11日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4の段落[0150]-[0153]、図23の記載からみて、当該引用文献4には「2軸のスライドバーで画像の調整を行う」という技術事項が記載されている。

5.引用文献5について
平成29年9月11日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5の【請求項1】の記載からみて、当該引用文献5には「画像を調整する際に、調整前の画像と調整後の画像とを表示装置に表示する」という技術事項が記載されている。


第6 対比・判断
(1)本願発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「取り込んだ画像データに対し、マウス15等からの指示に従って、プリント補正を含む各種画像処理を行うパーソナルコンピュータ12と、画像処理中の各種情報を画面上に表示するモニター13とから構成される画面入力装置のプログラムであって、」「仮想のマーカ乃至ボタンを具現化するための、CPU12cに構築された画面入力装置のプログラム。」は、本願発明と同様の「入力に応じた画像を表示装置に表示する装置に含まれるコンピュータで実行される画像表示プログラム」ということができる。
イ.引用発明の「取り込んだ画像データに対し、」「指示」を行う「マウス15等」は、本願発明の「入力手段」に相当し、パーソナルコンピュータ12は、マウス等による指示を受けるのであるから、引用発明は、本願発明と同様に、「入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段」を有することは明らかである。

ウ.引用発明の「矢印」は、本願発明の「操作子画像」に相当し、引用発明の「目盛りが刻まれ」た「スライドバー1」において、「矢印」を移動させることは、本願発明の「入力に応じて、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定する表示位置設定手段」に相当する。

エ.引用発明の「スライドバー1」における「指示データである数値を入力する機能(指示データ入力部)」は、「現在の数値を矢印の移動にて設定可能」であり、「彩度調整モードでは、目的の彩度になるように、スライドバー1に数値入力を行うと、この入力に応じて画像の彩度が変更され、ダイアログを画面の一部に表示しつつ、ユーザは画面の残りに表示された画像の彩度を確認しながら、その調整を行うことができ」るものであるから、本願発明の「前記操作子画像の表示位置に応じて、ユーザの操作対象に関する情報の設定を変更する設定変更手段」に相当する。

オ.引用発明の「スライドバー1により入力された値を確定」する「YES:OKボタン」は、本願発明の「入力に応じて、前記設定変更手段によって変更された前記操作対象に関する情報に対する設定を確定する設定確定手段」に相当する。

カ.引用発明の「スライドバー1により入力された値」の「確定値」が格納される「記憶領域12a内の設定値保存変数」は、引用発明の「前記設定確定手段が前記設定を確定した際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持する表示位置保持手段」に相当する。

キ.引用発明の「前記スライドバー1は、指示データである数値を入力する機能(指示データ入力部)と、この入力された数値を表示する機能(指示データ表示部)」を有するものであって、「現在の数値を矢印の移動にて設定可能」なものであるから、本願発明と同様に「前記表示位置設定手段が設定している表示位置に関操作子画像を表示する」「表示制御手段として機能する」ものといえる。
また、引用発明の「リストアマーカ5」の表示は、今回の「確定値」の確定前まで「記憶領域12a内の設定値保存変数」に格納され、現在、「バッファ12b」に格納されている「前回入力された数値を表示する」ものであって、「記憶領域12a内の設定値保存変数」が保持する最新の確定値ではないが過去の「矢印」の位置を表示するものであるから、引用発明の「リストアマーカ5」の表示と、本願発明1の「前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像」とは、「前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像」の点では共通し、さらに、引用発明の「リストアマーカ5」は、「前記スライドバー1の下方に表示され、スライドバー1に沿って左右方向に移動することにより」、「前回入力された数値を表示するマーカとしての機能(前回指示データ表示部)」を有するものであるから、引用発明の「リストアマーカ5」の該「マーカとしての機能」することと、本願発明1の「前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段として機能させる」ことは、「前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段として機能させる」点では共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「入力に応じた画像を表示装置に表示する装置に含まれるコンピュータで実行される画像表示プログラムであって、
前記コンピュータを、
入力手段からユーザの入力を受け付ける入力受付手段と、
入力に応じて、前記表示装置に表示される操作子画像の表示位置を設定する表示位置設定手段と、
前記操作子画像の表示位置に応じて、ユーザの操作対象に関する情報の設定を変更する設定変更手段と、
入力に応じて、前記設定変更手段によって変更された前記操作対象に関する情報に対する設定を確定する設定確定手段と、
前記設定確定手段が前記設定を確定した際に用いられた前記操作子画像の表示位置を保持する表示位置保持手段と、
前記表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段として機能させる、画像表示プログラム。」

(相違点)
一致点の「前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像」が、本願発明1では、「前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す」ものであるのに対して、引用発明では、バッファ12b」に格納された「前回入力された数値」の位置を表示するものである点。

(イ)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明の「リストアマーカ5」が、「バッファ12b内」の「前回入力された数値を表示する」ことは、「リストアマーカ5」が有する「機能」の1つであり、そのために「リストアマーカ5」は設けられるものであるから、引用発明の「リストアマーカ5」において、この機能をなくし、「記憶領域12a内の設定値保存変数」(本願発明1の「表示位置保持手段」)が保持している最新の「確定値」を表示するものとすることはできない。
また、引用文献2-5にも、「表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する」ことは記載されていない。
したがって、本願発明1は、引用発明ではないし、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5の技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-12について
本願発明2-9は、請求項1をさらに限定するものであって、上記相違点に係る本願発明1と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1、及び引用文献2-5の技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明13-15について
本願発明13-15は、本願発明1の「画像表示プログラム」を「画像表示装置」の観点から記載したに過ぎず、また、本願発明1の「画像表示プログラム」を「画像表示システム」の観点から記載したに過ぎず、さらに、本願発明1の「画像表示プログラム」を「画像表示方法」の観点から記載したに過ぎず、上記相違点に係る本願発明1と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではないし、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5の技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断
平成29年11月10日付けの補正により、補正後の請求項1-12は、「表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段」という事項を有し、また、請求項13、14、15は「表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段」に対応する構成を有するものとなった。当該「表示位置設定手段が設定している表示位置に前記操作子画像を表示するとともに、前記表示位置保持手段が保持している前記設定確定手段が設定を確定した最新の確定位置を表す前記操作子画像の表示位置を示す過去位置画像を前記表示装置に表示する表示制御手段」は、原査定における引用文献A-B(当審拒絶理由における引用文献1-2)、C、D(当審拒絶理由における引用文献3)、E(当審拒絶理由における引用文献4)、F、G(当審拒絶理由における引用文献5)には記載されておらず、本願前における周知技術でもないので、本願発明1-15は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Gに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-15 
出願番号 特願2012-174578(P2012-174578)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼瀬 健太郎浜岸 広明  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山澤 宏
稲葉 和生
発明の名称 画像表示プログラム、画像表示装置、画像表示システム、および画像表示方法  
代理人 寺本 亮  
代理人 小沢 昌弘  
代理人 寺本 亮  
代理人 小沢 昌弘  

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