ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B |
---|---|
管理番号 | 1337414 |
審判番号 | 不服2016-18281 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-06 |
確定日 | 2018-02-27 |
事件の表示 | 特願2015-534411「偏光板およびこれを含む画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月24日国際公開、WO2014/204205、平成28年 1月14日国内公表、特表2016-500833、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年6月18日 韓国、2014年6月17日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成27年3月30日付けで手続補正がなされ、平成28年3月29日付けで拒絶理由が通知され、同年6月23日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年8月2日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年12月6日付けで拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がなされた。 その後、平成29年2月7日付けで前置報告書が作成され、当審において、同年9月20日付けで拒絶理由が通知され、その応答期間中の同年11月10日に意見書の提出とともに手続補正がなされた。 第2 本件発明 本願の請求項1?16に係る発明は、平成29年11月10日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「 【請求項1】 偏光子の少なくとも一面に、接着剤層、プライマー層、およびポリエチレンテレフタレートフィルムが当該順に備えられた偏光板であって、 前記接着剤層は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の第1エポキシ化合物、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下の第2エポキシ化合物、およびカチオン性光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型接着剤により形成され、 前記プライマー層は、ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成され、 前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、少なくとも片面に、屈折率が1.4?1.5の低屈折率層を有し、 前記低屈折率層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムは、全体屈折率が1.48?1.55であり、 前記ポリエチレンテレフタレートフィルムは、水蒸気透過速度が100g/m^(2)・day以下であり、含水率が1重量%以下であり、 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の前記第1エポキシ化合物100重量部に対して、前記カチオン性光重合開始剤0.5?20重量部を含み、 前記第1エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される1つ以上を含み、 前記第2エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物からなる群より選択された1種以上であり、 前記第2エポキシ化合物は、グリシジルエーテル基を1つ以上含み、 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、前記第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物を1:1?3:1の重量比で含み、 前記プライマー層表面の水接触角が40?100度である 偏光板。 【請求項2】 前記第1エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキサイドジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(エポキシシクロペンチル)エーテル、ビスフェノールA系エポキシ化合物、およびビスフェノールF系エポキシ化合物からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の偏光板。 【請求項3】 前記第2エポキシ化合物は、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、およびo-クレシル(Cresyl)グリシジルエーテルからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1または2に記載の偏光板。 【請求項4】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、分子内に少なくとも1個のオキセタニル基を有するオキセタン化合物100?400重量部をさらに含む、請求項1?3のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項5】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、ビニル系化合物を更に含み、前記ビニル系化合物の含有量は、接着剤全体の100重量部に対して、0.1?10重量部である、請求項1?4のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項6】 前記ビニル系化合物は、ヒドロキシC_(1-6)アルキルビニルエーテルおよびビニルアセテートからなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項5に記載の偏光板。 【請求項7】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、シランカップリング剤を更に含み、前記シランカップリング剤の含有量は、接着剤全体の100重量部に対して、0.1?5重量部である、請求項1?6のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項8】 前記シランカップリング剤は、エポキシ基、ビニル基、およびラジカル基からなる群より選択されるカチオン重合性官能基を含む、請求項7に記載の偏光板。 【請求項9】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、ラジカル重合性モノマーを更に含み、前記ラジカル重合性モノマーの含有量は、接着剤全体の100重量部に対して、0超過40重量部以下である、請求項1?8のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項10】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、光ラジカル重合開始剤を更に含み、前記光ラジカル重合開始剤の含有量は、接着剤全体の100重量部に対して、0.5?20重量部である、請求項9に記載の偏光板。 【請求項11】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化後のガラス転移温度が80℃?120℃である、請求項1?10のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項12】 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、25℃での粘度が15cP?50cPである、請求項1?11のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項13】 前記偏光子の片面にポリエチレンテレフタレートフィルムが配置され、 前記偏光子の他面に、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネートフィルム、およびアクリルフィルムからなる群より選択される透明高分子フィルムが配置される、請求項1?12のいずれか一項に記載の偏光板。 【請求項14】 前記偏光子の他面に付着する透明高分子フィルムは、位相差を有する一軸配向フィルムまたは二軸配向フィルムである、請求項13に記載の偏光板。 【請求項15】 請求項1?14のいずれか1項に記載の偏光板を含む、画像表示装置。 【請求項16】 前記画像表示装置は、液晶表示装置(LCD)または有機EL表示装置である、請求項15に記載の画像表示装置。」(以下、請求項1?請求項16に係る発明をそれぞれ、「本件発明1」?「本件発明16」という。) 第3 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である韓国公開特許第10-2013-0040725号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付与した。以下同様。) ア 「 (中略) (中略) (中略) 」 以下に翻訳文を示す。 「特許請求の範囲 請求項1 ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である第1エポキシ化合物100重量部と、 ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下である第2エポキシ化合物30?100重量部と、 カチオン性光重合開始剤0.5?20重量部と、を含む偏光板用接着剤組成物。 請求項2 前記第1エポキシ化合物は脂環式エポキシ化合物及び芳香族エポキシからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の偏光板用接着剤組成物。 (中略) 請求項4 前記第2エポキシ化合物は脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の偏光板用接着剤組成物。 請求項5 前記第2エポキシ化合物はグリシジルエーテル基を一つ以上含むものである、請求項4に記載の偏光板用接着剤組成物。 (中略) 請求項7 前記第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物の重量比が1:1?3:1である、請求項1に記載の偏光板用接着剤組成物。 (中略) 請求項17 偏光子、前記偏光子の少なくとも一面に形成される接着剤層及び前記接着剤層上に形成される透明基材フィルムを含む偏光板であって、 前記接着剤層は請求項1?16の何れか1項に記載の偏光板用接着剤により形成される偏光板。 請求項18 前記接着剤層と透明基材フィルムとの間にプライマー層をさらに含む、請求項17に記載の偏光板。 請求項19 前記プライマー層は1?50重量部のウレタン高分子と、水分散性微粒子0.1?10重量部及び残部の水を含むプライマー組成物により形成される、請求項18に記載の偏光板。」 イ 「 (中略) (中略) 」 以下に翻訳文を示す。 「[0017] 以下では、本発明をより具体的に説明する。 [0018] 本発明の発明者らは、接着力、耐水性及び耐熱性を低下させずに非水系接着剤の粘度を下げる方法に対して絶えず研究を繰り返した結果、ホモポリマーのガラス転移温度が特定範囲を満たす2種のエポキシ化合物を特定含量の範囲で含む場合、全体組成物のガラス転移温度を高く保持しながらも粘度を低く保持することができることを見出し、本発明を完成した。 [0019] より具体的には、本発明の偏光板用接着剤は(1)ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である第1エポキシ化合物100重量部、(2)ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下である第2エポキシ化合物30?100重量部、及び(3)光カチオン重合開始剤0.5?20重量部を含む。 (中略) [0023] 次に、上記第2エポキシ化合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下のエポキシ化合物であれば、特に制限なく用いてもよい。例えば、上記第2エポキシ化合物として、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物などを用いてもよい。 [0024] このとき、上記脂環式エポキシ化合物としては、2官能型エポキシ化合物、即ち、2個のエポキシを有する化合物を用いることが好ましく、上記2個のエポキシ基がともに脂環式エポキシ基である化合物を用いることがより好ましいが、これに制限されない。 [0025] 脂肪族エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基ではない脂肪族エポキシ基を有するエポキシ化合物を例示することができる。例えば、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のポリエステルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価カルボン酸のポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸のポリエステルポリカルボン酸のポリグリシジルエーテル;グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのビニル重合により得られるダイマー、オリゴマーまたはポリマー;またはグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートと異なるビニル系単量体のビニル重合により得られるオリゴマーまたはポリマーを例示することができ、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテルを用いることが好ましいが、これに制限されない。 (中略) [0033] 本発明の偏光板用接着剤組成物において、上記第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物の重量比が1:1?3:1程度であることがより好ましく、1:1?2:1の重量比であることがさらに好ましく、上記第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物を1:1の重量比で混合して使用することが最も好ましい。第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物の重量比率が上記範囲を満たすとき、ガラス転移温度及び接着力の面で最も好ましい物性が得られる。」 ウ 「 」 以下に翻訳文を示す。 「[0062] 次に、本発明による偏光板について説明する。 [0063] 本発明の偏光板は、偏光子、上記偏光子の少なくとも一面に形成される接着剤層及び上記接着剤層上に形成される透明基材フィルムを含み、上記接着剤層と透明基材フィルムの間にプライマー層が形成されたことをその特徴とする。即ち、本発明の偏光板は、偏光子/接着剤層/プライマー層/透明基材フィルムまたは透明基材フィルム/プライマー層/接着剤層/偏光子/接着剤層/プライマー層/透明基材フィルムの構造からなることができる。 [0064] このとき、上記偏光子は特に制限されず、当該技術分野によく知られている偏光子、例えば、ヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用してもよい。本明細書において、偏光子は保護フィルム(透明基材フィルム)を含まない状態を意味し、偏光板は保護フィルム(透明基材フィルム)を含む状態を意味する。 [0065] 次に、上記接着剤層は上記した本発明の偏光板用接着剤組成物により形成される。偏光板用接着剤組成物に対する具体的な内容は上記と同様であるため、その説明は省略する。一方、上記のような本発明の偏光板用接着剤組成物により形成される接着層の厚さは0超過10μm以下程度で、好ましくは0.1?5μm程度である。接着層の厚さが0.1μm未満では、接着剤層の均一度及び接着力が低下することがあり、接着層の厚さが10μmを超えると、偏光板の外観に皺ができるという問題が生じることがある。 [0066] 次に、上記プライマー層は、透明基材フィルムと接着剤層との接着力を向上させるためのもので、ウレタン高分子を含むプライマー組成物で形成されることが好ましい。例えば、上記プライマー組成物は、ウレタン高分子、水分散性微粒子及び水を含んでなり、より具体的には、プライマー組成物100重量部に対して、1?50重量部のウレタン高分子、水分散性微粒子0.1?10重量部及び残部の水を含んでなってもよい。」 エ 「 」 以下に翻訳文を示す。 「[0162] 実施例1?12 [0163] 製造例1により製造されたアクリルフィルムをコロナ処理した後、CK-PUD-F(Chokwang、ウレタン分散液)を純水で希釈して製造された10重量%のプライマー組成物にカルボジイミド系架橋剤(日清紡社製、カルボジライトSV-02)10重量部を添加したプライマー組成物を、その上に#7バーでコートした後、TD方向に130℃でテンターを用いて190%延伸し、プライマー層の厚さが400nmであるアクリルフィルムを製造した。」 オ 「 」 以下に翻訳文を示す。 「[0172] 実施例13?16 [0173] -アクリルフィルム(a)の製造 [0174] 製造例1の(1)により製造されたアクリルフィルムをコロナ処理した後、CK-PUD-F(Chokwang、ウレタン分散液)を純水で希釈して製造された固形分含量10重量%のプライマー組成物にカルボジイミド系架橋剤(日清紡社製、カルボジライトSV-02)5重量部を添加したプライマー組成物を、その上に#7バーでコートした後、TD方向に130℃でテンターを用いて190%延伸し、プライマー層の厚さが400nmであるアクリルフィルム(a)を製造した。 [0175] -アクリルフィルム(b)の製造 [0176] 製造例1の(1)により製造されたアクリルフィルムをコロナ処理した後、CK-PUD-F(Chokwang、ウレタン分散液)を純水で希釈して製造された固形分含量10重量%のプライマー組成物にカルボジイミド系架橋剤(日清紡社製、カルボジライトSV-02)10重量部を添加したプライマー組成物を、その上に#7バーでコートした後、TD方向に130℃でテンターを用いて190%延伸し、プライマー層の厚さが400nmであるアクリルフィルム(b)を製造した。」 カ 「 」 以下に翻訳文を示す。 「[0180] 実施例17?19 [0181] 製造例1により製造されたアクリルフィルムをコロナ処理した後、CK-PUD-F(Chokwang、ウレタン分散液)を純水で希釈して製造された10重量%のプライマー組成物にオキサゾリン架橋剤(日本触媒社製、WS700)20重量部を添加したプライマー組成物を、その上に#6バーでコートした後、TD方向に130℃でテンターを用いて190%延伸し、プライマー層の厚さが400nmであるアクリルフィルムを製造した。」 (2)上記記載事項アの請求項1、2、17を引用する請求項18に基づけば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「偏光子、前記偏光子の少なくとも一面に形成される接着剤層及び前記接着剤層上に形成される透明基材フィルムを含む偏光板であって、 前記接着剤層と透明基材フィルムとの間にプライマー層をさらに含み、 前記接着剤層は、 ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である第1エポキシ化合物100重量部と、 ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下である第2エポキシ化合物30?100重量部と、 カチオン性光重合開始剤0.5?20重量部と、を含む偏光板用接着剤組成物により形成され、 前記第1エポキシ化合物は脂環式エポキシ化合物及び芳香族エポキシからなる群より選択される1種以上である、 偏光板。」(以下、「引用発明」という。) 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2013-33085号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0041】 [プライマー層] プライマー層としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑樹脂が用いられる。具体的にはアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられるがこれに限定されるものではない。 【0042】 プライマー層を構成する樹脂は、溶媒に溶解した状態で用いてもよい。樹脂の溶解性により、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルムの如き塩素化炭化水素類、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類など、一般的な有機溶媒を用いることもできる。ただ、有機溶媒を含む溶液を用いてプライマー層を形成すると基材を溶解させてしまうこともあるので、基材の溶解性も考慮して溶媒を選択するのが好ましい。環境への影響を考慮すると水を溶媒とする塗工液からプライマー層を形成するのが好ましい。中でも、密着性がよいポリビニルアルコール系樹脂は好ましく用いられる。 【0043】 プライマー層として使用されるポリビニルアルコール系樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール樹脂およびその誘導体が挙げられる。ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールなどの他、ポリビニルアルコール樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミドなどで変性したものが挙げられる。上述のポリビニルアルコール系樹脂材料の中でも、ポリビニルアルコール樹脂を用いるのが好ましい。 【0044】 プライマー層の強度を上げるために上記の熱可塑性樹脂に架橋剤を添加してもよい。樹脂に添加する架橋剤は、有機系、無機系など公知のものを使用することができる。使用する熱可塑性樹脂に対して、より適切なものを適宜選択すればよい。たとえば、エポキシ系、イソシアネート系、ジアルデヒド系、金属系の架橋剤を選択することができる。エポキシ系の架橋剤としては、一液硬化型のものや二液硬化型のもののいずれも用いることができる。エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類が挙げられる。 【0045】 イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン-トリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4-フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類が挙げられる。 【0046】 ジアルデヒド系の架橋剤としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等が挙げられる。 【0047】 金属系の架橋剤としては、例えば、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、有機金属化合物が挙げられ、金属の種類は特に限定されず適宜選択すればよい。金属塩、金属酸化物、金属水酸化物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル、ジルコニウム、チタン、珪素、ホウ素、亜鉛、銅、バナジウム、クロム、スズ等の二価以上の原子価を有する金属の塩及びその酸化物、水酸化物が挙げられる。 【0048】 有機金属化合物とは金属原子に、直接有機基が結合しているか、または、酸素原子や窒素原子などを介して有機基が結合している構造を、分子内に少なくとも1個有する化合物である。有機基とは、少なくとも炭素元素を含む官能基を意味し、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アシル基などであることができる。また、結合とは共有結合だけを意味するものではなく、キレート状化合物などの配位による配位結合であってもよい。 【0049】 上記金属有機化合物の好適な例としては、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、および珪素有機化合物が挙げられる。これら金属有機化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。 【0050】 上記チタン有機化合物の具体例としては、例えば、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート等のチタンオルソエステル類;チタンアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート、ポリチタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、チタンエチルアセトアセテート等のチタンキレート類;ポリヒドロキシチタンステアレート等のチタンアシレート類等が挙げられる。 【0051】 上記ジルコニウム有機化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート等が挙げられる。 【0052】 上記アルミニウム有機化合物の具体例としては、例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム有機酸キレート等が挙げられる。上記珪素有機化合物の具体例としては、例えば、上述したチタン有機化合物およびジルコニウム有機化合物で例示した配位子を有する化合物が挙げられる。 【0053】 上記の低分子架橋剤の他にも、メチロール化メラミン樹脂やポリアミドエポキシ樹脂などの高分子系の架橋剤なども用いることができる。かかるポリアミドエポキシ樹脂の市販品としては、住化ケムテックス(株)から販売されている「スミレーズ(登録商標)レジン650(30)」や「スミレーズ(登録商標)レジン675」(いずれも商品名)などがある。 【0054】 熱可塑性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を使用する場合は、ポリアミドエポキシ樹脂、メチロール化メラミン、ジアルデヒド、金属キレート架橋剤などが特に好ましい。 【0055】 プライマー層を形成するために用いる熱可塑性樹脂と架橋剤の割合は、樹脂100重量部に対して、架橋剤0.1?100重量部程度の範囲から、樹脂の種類や架橋剤の種類などに応じて適宜決定すればよく、とりわけ0.1?50重量部程度の範囲から選択するのが好ましい。また、プライマー層用塗工液は、その固形分濃度が1?25重量%程度となるようにするのが好ましい。 【0056】 プライマー層の厚みは、0.05?1μmが好ましい。さらに好ましくは0.1?0.4μmである。0.05μmより薄くなると基材フィルムとポリビニルアルコール層との密着力向上の効果が小さく、1μmより厚くなると、偏光板が厚くなるため好ましくない。 【0057】 プライマー層の形成にあたり、使用する塗工方式は特に制限されるものでなく、ワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、などを公知の方法から適宜選択して採用できる。」 3 引用文献3について 平成29年2月7日付けの前置報告書において引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2012-88694号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0026】 本発明のフィルムは、着色層の一部が可視光を遮断し赤外光を透過することが必要である。可視光の吸収は目視にて赤外線受発光部が見えない程度であれば良く、好ましくは波長380nm?780nmの範囲の光の平均透過率が50%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは20%以下である。赤外光の透過は赤外線通信が行なえる程度であれば良く、好ましくは780nm?1050nmの波長範囲の透過率が30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。このように可視光を遮断することで赤外線受発光部の外部からの視認を防止することができ、赤外光を透過することで赤外線による通信を行なうことができる。本発明のフィルムの着色層は顔料や染料のような色素を用いることができる。電磁波透過の観点から誘電性を持つものが必要であり、顔料は有機系の色素が好ましい。有機系顔料としては、アゾ系顔料、多環式系顔料、レーキ系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アニリンブラック、アルカリブルー、フタロシアニン系顔料、シアニン系顔料が挙げられる。染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、メチン系染料、縮合多環系染料、反応染料、カチオン染料が上げられる。上記の有機系顔料、染料の中でも第一の着色層としては黒色または暗色のものが好ましい。また、第一の着色層の一部は、可視光を遮断し赤外光を透過する色素であることが必要である。電磁波透過の観点から上記色素には、金属、黒鉛やカーボンブラック等の炭素系物質等、導電性の物質が含まれていないこと、または含まれている場合でも電磁波透過に影響しない程度の極微量であることが重要である。第一の着色層及び、第一の着色層の一部の可視光を遮断し赤外光を透過する層は、印刷層、ハードコート層、ポリマー層もしくは、接着層であることが好ましい。印刷層の形成方法としては、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、パッド印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷等が挙げられる。ハードコート層の形成方法としては、グラビアコート、ロールコート、リバースロールコート、ロールドクタコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、スピンコート、エアドクタコート等を用いて顔料や染料を分散させた塗剤を塗布する方法が挙げられる。ポリマー層の形成方法としては、顔料や染料を分散させたポリマーフィルムを積層する方法が挙げられ、その方法として、インサート成形や、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、テープラミネート法等の接着剤を用いた方法が挙げられる。接着層としては、ウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、テープラミネート法等に用いられる接着層として、顔料や染料を分散させたものを用いることや、顔料や染料を分散させたプライマー層(接着促進層)を設けること等などが挙げられる。プライマー層の形成方法として、グラビアコート、ロールコート、リバースロールコート、ロールドクタコート、バーコート、カーテンフローコート、ダイコート、スピンコート、エアドクタコート等を用いて顔料や染料を分散させた塗剤を塗布する方法が挙げられる。また、プライマー層には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤、シリカ粒子等の無機粒子等が含まれることが好ましい。」 第4 対比・判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「透明基材フィルム」と本件発明1の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」とは、「フィルム」である点で共通する。また、引用発明の「偏光子」、「接着剤層」、及び「プライマー層」は、その機能からみて、本件発明1の「偏光子」、「接着剤層」、及び「プライマー層」にそれぞれ相当する。 そして、引用発明の「偏光子」、「前記偏光子の少なくとも一面に形成される接着剤層」、「前記接着剤層と透明基材フィルムとの間」の「プライマー層」および「透明基材フィルム」は、当該順に備えられ「偏光板」を構成するものであるから、引用発明は、本件発明1の「偏光子の少なくとも一面に、接着剤層、プライマー層、および」「フィルムが当該順に備えられた偏光板」との要件を具備している。 イ 引用発明の「ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である第1エポキシ化合物」、「ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下である第2エポキシ化合物」、及び「カチオン性光重合開始剤」は、その材料の種類及びガラス転移温度からみて、本件発明1の「ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の第1エポキシ化合物」、「ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下の第2エポキシ化合物」、及び「カチオン性光重合開始剤」に相当する。そして、引用発明の「接着剤層」が「ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である第1エポキシ化合物100重量部と、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下である第2エポキシ化合物30?100重量部と、カチオン性光重合開始剤0.5?20重量部と、を含む偏光板用接着剤組成物により形成され」ることは、本件発明1の「接着剤層は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の第1エポキシ化合物、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下の第2エポキシ化合物、およびカチオン性光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型接着剤により形成され」ることに相当する。 また、引用発明の「偏光板用接着剤組成物」における「カチオン性光重合開始剤」は、「ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上である第1エポキシ化合物100重量部」に対して「0.5?20重量部」含まれることから、本件発明1の「前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の前記第1エポキシ化合物100重量部に対して、前記カチオン性光重合開始剤0.5?20重量部を含」むとする要件を満たしている。 ウ 引用発明の「前記第1エポキシ化合物は脂環式エポキシ化合物及び芳香族エポキシからなる群より選択される1種以上」であることは、本件発明1の「前記第1エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される1つ以上を含」むことに相当する。 エ 以上ア?ウより、本件発明1と引用発明とは、 「偏光子の少なくとも一面に、接着剤層、プライマー層、およびフィルムが当該順に備えられた偏光板であって、 前記接着剤層は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の第1エポキシ化合物、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下の第2エポキシ化合物、およびカチオン性光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型接着剤により形成され、 前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の前記第1エポキシ化合物100重量部に対して、前記カチオン性光重合開始剤0.5?20重量部を含み、 前記第1エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物および芳香族エポキシ化合物からなる群より選択される1つ以上を含む偏光板。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本件発明1は、フィルムが「ポリエチレンテレフタレート」であり、「ポリエチレンテレフタレートフィルムは、少なくとも片面に、屈折率が1.4?1.5の低屈折率層を有し」、「低屈折率層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムは、全体屈折率が1.48?1.55であり」、「ポリエチレンテレフタレートフィルムは、水蒸気透過速度が100g/m^(2)・day以下であり、含水率が1重量%以下であり」という構成を具備するのに対し、引用発明は、フィルムが「ポリエチレンテレフタレート」であるか明らかではなく、これらの構成を具備するのか明らかではない点。 [相違点2]プライマー層について、本件発明1は、「ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成され」、「表面の水接触角が40?100度である」のに対し、引用発明は、「ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成され」るものとされておらず、「表面の水接触角が40?100度である」ともされていない点。 [相違点3]活性エネルギー線硬化型接着剤について、本件発明1は、第2エポキシ化合物が、「脂環式エポキシ化合物および脂肪族エポキシ化合物からなる群より選択された1種以上であり」、「グリシジルエーテル基を1つ以上含み、」とされており、「第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物を1:1?3:1の重量比で含」むとされるのに対し、引用発明1は、第2エポキシ化合物の構造及び、第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物の重量比を特定していない点。 (2)判断 事案に鑑みて[相違点2]について検討する。引用発明のプライマー層について、記載事項アの請求項19には、「前記プライマー層は1?50重量部のウレタン高分子と、水分散性微粒子0.1?10重量部及び残部の水を含むプライマー組成物により形成される」と記載されている。また、記載事項ウにも、「上記プライマー層は、透明基材フィルムと接着剤層との接着力を向上させるためのもので、ウレタン高分子を含むプライマー組成物で形成されることが好ましい。」と記載されている。さらに、記載事項エ?カに記載された全ての実施例は、プライマー組成物としてウレタン分散液を用いている。したがって、引用文献1には、ポリエステルバインダー樹脂を用いることについて記載も示唆もなされていない。 一方、引用文献2には、前記第3の2に記載したように、「プライマー層としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑樹脂が用いられる。具体的にはアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられるがこれに限定されるものではない。」と記載されているものの、プライマー層が、ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成されることについて記載されていない。また、引用文献3にも、前記第3の3に記載したように、「プライマー層には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の高分子、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤、シリカ粒子等の無機粒子等が含まれることが好ましい。」との記載があるものの、プライマー層が、ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成されることについて記載されていない。 したがって、ウレタン高分子を含むプライマー組成物で形成されることが好ましいとされる引用発明のプライマー層について、ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成されるものに変更することを、当業者が容易に想到し得たとする根拠を見いだせない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。 2 本件発明2?16について 本件発明2?16は、本件発明1の「プライマー層が、ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成される」ことと同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項1-24 ・引用文献等1,2 ・備考 偏光子の少なくとも一面に、接着剤層、プライマー層、およびポリエチレンテレフタレートフィルムが当該順に備えられた偏光板であって、接着剤層は、ホモポリマーのガラス転移温度が120℃以上の第1エポキシ化合物、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以下の第2エポキシ化合物、および陽イオン性光重合開始剤カチオン性光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型接着剤により形成された偏光板が、引用文献1に記載されている([0019],[0063]等参照)。 偏光板のプライマー層が、ポリビニルアルコール系樹脂からなるバインダー樹脂、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物により形成されたものが、引用文献2に記載されており([0041],[0044]等)、引用文献1記載の偏光板において、そのプライマー層の組成について、引用文献2記載のものを採用し、本願各請求項に係る発明のように構成することに格別の困難性はない。 <引用文献等一覧> 1.韓国公開特許第10-2013-0040725号公報 2.特開2013-33085号公報 2 原査定についての判断 本件発明1は、プライマー層が、「ポリエステルバインダー樹脂と、エポキシ系架橋剤とを含むプライマー組成物」により形成されるものに限定されている。上記第4の1(2)に示した理由により、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1、2に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 当審で通知した平成29年9月20日付けの拒絶理由の概要は以下のとおりである。 理由1.(サポート要件)本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項8?16について 本件出願の請求項8において、シランカップリング剤について、「エポキシ基、ビニル基、ラジカル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上のカチオン重合性官能基を含む」としているが、本件出願の明細書の発明の詳細な説明には、エポキシ基、ビニル基、ラジカル基を「組み合わせ」たカチオン重合性官能基については記載されていない。 (2)請求項11?16について 本件出願の請求項11において、「活性エネルギー線硬化型接着剤は、ガラス転移温度が80℃?120℃である」としている。一方、本件出願の発明の詳細な説明には、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化後のガラス転移温度が80℃?120℃であることが記載されているといえるものの、活性エネルギー線硬化型接着剤のガラス転移温度について記載されていない。 理由2.(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 本件出願の請求項1において、同じ第1エポキシ化合物と第2エポキシ化合物の重量比を、異なる数値範囲で限定しているため、特許を受けようとする発明の範囲が不明確となっている。 2 当審拒絶理由についての判断 平成29年11月10日付けの手続補正によって、請求項1の第2エポキシ化合物が30?100重量部であるとする限定が省かれ、請求項8の選択肢から「これらの組み合わせ」が除かれ、請求項11における活性エネルギー線硬化型接着剤のガラス転移温度が硬化後のものであることが特定された。この結果、当審で通知した拒絶の理由はいずれも解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本件発明1?16は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-02-14 |
出願番号 | 特願2015-534411(P2015-534411) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 福村 拓、南 宏輔 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
河原 正 宮澤 浩 |
発明の名称 | 偏光板およびこれを含む画像表示装置 |
代理人 | 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ |