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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G |
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管理番号 | 1337456 |
審判番号 | 不服2017-7213 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-19 |
確定日 | 2018-02-27 |
事件の表示 | 特願2015-244728「EL表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日出願公開、特開2016- 75942、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年9月7日(優先権主張 平成22年9月10日)に出願した特願2011-194487号の一部を平成27年12月16日に新たな特許出願としたものであって,平成28年9月29日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年2月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月19日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1 本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 本願請求項2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された発明及び引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2002-287683号公報 2.特開2003-208144号公報 3.特開2010-160407号公報 (周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び2は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 一画素に、第1トランジスタ乃至第4トランジスタ、第1の容量素子、第2の容量素子並びに発光素子を有し、 前記第1トランジスタは、ゲートが走査線に電気的に接続され、第1端子が信号線に電気的に接続され、第2端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、 前記第2トランジスタは、ゲートが第1の制御線に電気的に接続され、第1端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、第2端子が前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、 前記第3トランジスタは、ゲートが前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、第1端子が第1の電源線に電気的に接続され、第2端子が前記第4トランジスタの第1端子に電気的に接続され、 前記第4トランジスタは、ゲートが第2の制御線に電気的に接続され、第2端子が前記発光素子に電気的に接続され、 前記第3のトランジスタに、前記第2の容量素子に蓄積された電荷に応じて電流が流れることで前記発光素子による発光の輝度が制御され、 前記第1の容量素子の静電容量は、前記第2の容量素子の静電容量よりも大きいことを特徴とするEL表示装置。 【請求項2】 請求項1において、 前記第1トランジスタ乃至前記第4トランジスタの半導体層は、酸化物半導体であることを特徴とするEL表示装置。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 引用文献1には、次の記載がある。(下線は当審による。以下同様。) (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、有機及び無機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と記す)素子や発光ダイオード(以下、「LED」と記す)素子といった、自発光型発光素子を用いたアクティブマトリクス型の表示パネルとその駆動方法に関する。」 (2)「【0014】 また、時間階調方式は、上述のアナログ階調方式や面積階調方式における問題点を解決するために、発光素子の発光時間を変調して階調を出す方式であり、例えば、SID2000 DIGEST 36.1(p.912?915)で報告されている。」 (3)「【0017】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、上記時間階調方式で階調表示を行う場合の問題点を解決し、トランジスタの特性バラツキの影響を受けず、高輝度で発光素子を発光させることができる表示パネルとその駆動方法を提供することにある。」 (4)「【0037】 図1に、本発明の表示パネルの1画素の回路構成を模式的に示す。図中1は第1スイッチ手段(アドレッシング部)、2は信号保持部(ディジタルメモリ)、3は第2スイッチ手段、4は電流制御部、5は第3スイッチ手段、6は発光素子である。 【0038】 本発明においては、第1スイッチ手段1をオンすることにより当該画素を選択(アドレス)し、第1スイッチ手段1を介して、当該画素の発光素子6を発光させるか、非発光かの情報を有する駆動信号が信号保持部2に書き込まれる。信号保持部2に書き込まれた駆動信号は、アドレスが終了して第1スイッチ手段1がオフした後でも保持される。次いで、第2スイッチ手段3をオンすることで信号保持部2に保持された駆動信号は電流制御部4に転送され、駆動信号の情報に基づいて電流制御部4から発光素子6に電流が供給される。この時、直列に配置した第3スイッチ手段5のオン期間を制御することにより、該電流の供給を制御し、発光素子6の発光期間を変調して、結果として階調表示を行うことができる。」 (5)「【0042】 さらに、各画素のアドレス及び発光・非発光情報を保持する機能と、発光素子の発光時間を制御する機能をスイッチ手段3、5で分離可能であることから、第2スイッチ手段3をオフした状態で第3スイッチ手段5のオン期間を制御することが可能である。このことから、図3に示した表示期間中に次の表示フィールドの発光・非発光情報を持つ駆動信号を信号保持部3に書き込むことが可能になり、図3に示したよりもさらに表示期間を延ばすことが可能となる。 【0043】 図4は、図2の回路構成の画素を2×2として構成した本発明の表示パネルのアクティブマトリクス回路を模式的に示す。図中、11は走査ドライバ、12は信号ドライバ、13、14は制御信号ドライバ、15は電源線、16は走査線、17は信号線、18、19は制御信号線であり、図1、図2と同じ部材には同じ符号を付した。 【0044】 図4の構成において、走査ドライバ11により走査線16が順次選択され、これと同期して、信号ドライバ12より信号線17に、選択された走査線16に接続された画素の発光・非発光情報を有する駆動信号が印加され、信号線17を介して各画素の信号保持部2に該駆動信号が書き込まれる。信号保持部2に書き込まれた駆動信号は第2スイッチ手段3を介して電流制御部4に転送され、該駆動信号の情報が発光である画素の発光素子6には電流が第3スイッチ手段5を介して供給される。第3スイッチ手段5のオン・オフは、マトリクス配置された制御信号線18、19を介して制御信号ドライバ13、14よりマルチプレクサ7に印加される制御信号の組み合わせにより制御される。マルチプレクサ7を駆動する制御信号ドライバ13、14は、例えば従来の液晶表示パネル用のドライバ技術をそのまま用いることが可能である。 【0045】 次に、本発明の具体的な回路構成について説明する。本発明において好ましい基本構成は、各画素において、上記第1スイッチ手段1が第1トランジスタで構成され、信号保持部2が保持容量であり、第2スイッチ手段3が第2トランジスタで構成され、電流制御部4が第3トランジスタで構成され、第1トランジスタのゲート電極が画素行毎に共通に走査線に接続され、第1主電極が画素列毎に共通に信号線に接続され、第2主電極が上記保持容量の第1電極及び第2トランジスタの第1主電極に接続され、保持容量の第2電極が第1の電源線に接続され、第2トランジスタのゲート電極がパルス信号線に接続され、第2主電極が第3トランジスタのゲート電極に接続され、第3トランジスタの第1主電極が第2の電源線に接続され、第2主電極が第3スイッチ手段5を介して発光素子の第1電極に接続され、発光素子6の第2電極が第3の電源線に接続されている構成である。 【0046】 図5に、上記基本構成の一実施形態の回路図を示す。本実施形態は、上記好ましい基本構成における第1?第3トランジスタをTFTで構成し、発光素子として有機EL素子を用いた形態である。図中、50は-電源線、51、54、56、58はTFT、52は-電源線、53は保持容量、55、59はパルス信号線、57は+電源線、60は有機EL素子であり、図4と同じ部材には同じ符号を付した。 【0047】 図5の回路において、走査線16が選択されてTFT51がオンすると、当該画素の発光・非発光情報を有する駆動信号が信号線17から保持容量53に書き込まれる。その後、TFT51がオフしても、当該信号は保持容量53に保持され、次にパルス信号線55からTFT54のオン信号が入力されると、保持容量53に保持された駆動信号は保持容量53からTFT56のゲート電極に転送される。+電源線57からの定電流は、上記駆動信号に応じてTFT56を介して有機EL素子60に供給される。即ち、駆動信号が発光情報を有する場合にはTFT56がオンし、+電源線57から定電流が該TFT56を介して有機EL素子60に供給され、駆動信号が非発光情報を有する場合にはTFT56はオフしたままで有機EL素子60には定電流が供給されない。TFT56を介して供給された定電流は、最終的にパルス信号線59より入力されるオン信号によってTFT58がオンした期間のみ該TFT58を介して有機EL素子60に供給される。即ち、TFT58のオン期間の制御によって時間階調を得ることができる。 」 (6)図5 (7)段落【0038】の記載「第1スイッチ手段1をオンすることにより当該画素を選択(アドレス)し、第1スイッチ手段1を介して、当該画素の発光素子6を発光させるか、非発光かの情報を有する駆動信号が信号保持部2に書き込まれる。」、段落【0045】の記載「上記第1スイッチ手段1が第1トランジスタで構成され、信号保持部2が保持容量であり」、及び段落【0047】の記載「走査線16が選択されてTFT51がオンすると、当該画素の発光・非発光情報を有する駆動信号が信号線17から保持容量53に書き込まれる。」から、段落【0047】に記載の「TFT51」は、段落【0038】に記載の「第1スイッチ手段1」の機能を有しており、段落【0045】に記載の「第1スイッチ手段1」を構成する「第1トランジスタ」であると認められる。(以下、「TFT51」を「第1トランジスタTFT51」という。) (8)段落【0044】の記載「信号保持部2に書き込まれた駆動信号は第2スイッチ手段3を介して電流制御部4に転送され」、段落【0045】の記載「第2スイッチ手段3が第2トランジスタで構成され、・・・第2トランジスタのゲート電極がパルス信号線に接続され、第2主電極が第3トランジスタのゲート電極に接続され」、段落【0047】の記載「次にパルス信号線55からTFT54のオン信号が入力されると、保持容量53に保持された駆動信号は保持容量53からTFT56のゲート電極に転送される。」から、段落【0046】に記載の「TFT54」は、段落【0044】に記載の「第2スイッチ手段3」の機能を有しており、段落【0045】に記載の「第2スイッチ手段3」を構成する「第2トランジスタ」であると認められ(以下、「TFT54」を「第2トランジスタTFT54」という。)、段落【0047】に記載の「パルス信号線55」が段落【0045】に記載の「パルス信号線」であると認められる。 (9)段落【0045】の記載「電流制御部4が第3トランジスタで構成され・・・第2トランジスタのゲート電極がパルス信号線に接続され、第2主電極が第3トランジスタのゲート電極に接続され、第3トランジスタの第1主電極が第2の電源線に接続され、第2主電極が第3スイッチ手段5を介して発光素子の第1電極に接続され」、段落【0047】の記載「保持容量53に保持された駆動信号は保持容量53からTFT56のゲート電極に転送される。+電源線57からの定電流は、上記駆動信号に応じてTFT56を介して有機EL素子60に供給される。」、上記(8)、及び図5の回路図において第2トランジスタTFT54の第2主電極がTFT56のゲート電極に接続されていることから、段落【0047】に記載の「TFT56」は、段落【0045】に記載の「第3トランジスタ」であると認められる。(以下、「TFT56」を「第3トランジスタTFT56」という。) (10)図5の回路図から、第2トランジスタTFT54の第1主電極が保持容量53に接続されていると認められる。 (11)図5の回路図から、第3トランジスタTFT56の第2主電極がTFT58の第1主電極に接続されており、TFT58のゲート電極がパルス信号線59に接続され、第2主電極が有機EL素子60に接続されていると認められる。 したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「1画素に、第1トランジスタTFT51、第2トランジスタTFT54、第3トランジスタTFT56、TFT58、保持容量53並びに有機EL素子60を有し(段落【0037】、段落【0046】、上記(7)ないし(9))、 第1トランジスタTFT51のゲート電極が走査線に接続され、第1主電極が信号線に接続され、第2主電極が上記保持容量53の第1電極に接続され(段落【0045】、上記(7))、 第2トランジスタTFT54のゲート電極がパルス信号線55に接続され、第1主電極が保持容量53に接続され、第2主電極が第3トランジスタTFT56のゲート電極に接続され(段落【0045】、上記(8))、 第3トランジスタTFT56の第1主電極が第2の電源線に接続され、第2主電極がTFT58の第1主電極に接続され(段落【0045】、上記(9)、(11))、 TFT58のゲート電極がパルス信号線59に接続され、第2主電極が有機EL素子60に接続され(上記(11))、 第3トランジスタTFT56を介して供給された定電流は、パルス信号線59より入力されるオン信号によってTFT58がオンした期間のみ該TFT58を介して有機EL素子60に供給され、TFT58のオン期間の制御によって時間階調を得る(段落【0045】、上記(7))、EL素子を用いた表示パネル(段落【0001】)。」 2 引用文献2について 引用文献2には、次の記載がある。 (1)「【0009】 【発明が解決しようとする課題】 本発明がなそうとする技術的課題は、前述の問題点を解決するためにデジタル画像データをピクセルごとにアナログ信号に変換し、アナログ信号に変換された画素信号を2重バッファ構造の駆動回路により充電されたアナログ画素信号により液晶セルを駆動させるための画像表示素子駆動装置及び設計方法を提供するところにある。」 (2)「【0023】 上述のように構成されたピクセル駆動部220は次の通り動作する。 【0024】 スイッチS5のゲート端子には図4(F)に示されたようなタイミングのゲート信号Ssが印加され、各行別にスキャンして行きつつ入力されるアナログ画素信号を1次的にキャパシタC1に充電する。 【0025】 キャパシタC1に充電された画素信号は図4(D)に示されたようなタイミングのゲート信号Stにより1フレームの画面を同時にディスプレイさせるようにスイッチS6をスイッチングしてキャパシタC2に充電する。 【0026】 キャパシタC2に並列に連結されたスイッチS7は図4(H)に示されたようなタイミングを有するゲート信号Sc2により1フレームのディスプレイを終えた後で次のフレームを伝送される前にキャパシタC2及び液晶セル230にかかった電圧を放電させる。 【0027】 ここで、キャパシタC1,C2及び液晶セルのキャパシタCLCは DC Charge Sharingを補償するためにキャパシタの容量をC1≫C2≫CLCになるべく設計する。 【0028】 液晶セル230は図5に示されたようにフレーム別に+/-電圧を交代で印加して液晶スティッキング現象を防止する。すなわち、液晶セル230の一方の端子にはフレーム別に+/-電圧を交代で印加するために図4(C)のような画素電極電圧VC0mを印加し、液晶セル230の画素電極の向かい側端子にはキャパシタC2に充電された電圧を印加する。 【0029】 これにより、液晶セル230は画素電極電圧VcomとキャパシタC2の充電電圧との差により画像を表示する。本発明に適用されるスイッチは一実施例としてTFTを利用できる。」 2 引用文献3について 引用文献3には、次の記載がある。 「【0002】 アクティブマトリクス型有機EL表示装置の画素は、通常有機EL素子の他にこれを駆動する素子として2つのトランジスタと1つの容量(2T1C)を有する画素回路で構成される。すなわち、有機EL発光素子を駆動する駆動TFT、駆動TFTへのデータ電圧を印加する制御する書込みTFT、およびデータ電圧を保持する保持容量である。 【0003】 TFTのチャネルは、通常、アモルファスシリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、酸化物半導体、有機物半導体などの薄膜半導体で形成される。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると次のことがいえる。 ア 引用発明の「有機EL素子60」及び「EL素子を用いた表示パネル」は、それぞれ、本願発明1の「発光素子」及び「EL表示装置」に相当する。 イ 引用発明の「保持容量53」は、本願発明1の「第1の容量素子」に相当し、引用発明の「ゲート電極が走査線に接続され、第1主電極が信号線に接続され、第2主電極が上記保持容量53の第1電極に接続され」る「第1トランジスタTFT51」は、本願発明1の「ゲートが走査線に電気的に接続され、第1端子が信号線に電気的に接続され、第2端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され」る「第1トランジスタ」に相当する。 ウ 上記イを踏まえると、引用発明の「ゲート電極がパルス信号線55に接続され、第1主電極が保持容量53に接続され、第2主電極が第3トランジスタTFT56のゲート電極に接続され」る「第2トランジスタTFT54」は、本願発明1の「ゲートが第1の制御線に電気的に接続され、第1端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、第2端子が前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続され」る「第2トランジスタ」と、「ゲートが第1の制御線に電気的に接続され、第1端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され」ている点で共通する。 エ 上記アを踏まえると、引用発明の「ゲート電極がパルス信号線59に接続され、第2主電極が有機EL素子60に接続され」る「TFT58」は、本願発明1の「ゲートが第2の制御線に電気的に接続され、第2端子が前記発光素子に電気的に接続され」る「第4トランジスタ」に相当する。 オ 上記エを踏まえると、引用発明の「第1主電極が第2の電源線に接続され、第2主電極がTFT58の第1主電極に接続され」る「第3トランジスタTFT56」は、本願発明1の「ゲートが前記第2の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、第1端子が第1の電源線に電気的に接続され、第2端子が前記第4トランジスタの第1端子に電気的に接続され」る「第3トランジスタ」と、「第1端子が第1の電源線に電気的に接続され、第2端子が前記第4トランジスタの第1端子に電気的に接続され」る点で共通する。 カ 上記アないしオを踏まえると、引用発明の「1画素に、第1トランジスタTFT51、第2トランジスタTFT54、第3トランジスタTFT56、TFT58、保持容量53並びに有機EL素子60を有」する「EL素子を用いた表示パネル」は、本願発明1の「一画素に、第1トランジスタ乃至第4トランジスタ、第1の容量素子、第2の容量素子並びに発光素子を有」する「EL表示装置」と、「第1トランジスタ乃至第4トランジスタ、第1の容量素子並びに発光素子を有」する点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。 (一致点) 「一画素に、第1トランジスタ乃至第4トランジスタ、第1の容量素子並びに発光素子を有し、 前記第1トランジスタは、ゲートが走査線に電気的に接続され、第1端子が信号線に電気的に接続され、第2端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、 前記第2トランジスタは、ゲートが第1の制御線に電気的に接続され、第1端子が前記第1の容量素子の一方の電極に電気的に接続され、 前記第3トランジスタは、第1端子が第1の電源線に電気的に接続され、第2端子が前記第4トランジスタの第1端子に電気的に接続され、 前記第4トランジスタは、ゲートが第2の制御線に電気的に接続され、第2端子が前記発光素子に電気的に接続されるEL表示装置。」 (相違点) 本願発明1は、「一方の電極に」、「第2トランジスタ」の「第2端子」及び「第3トランジスタ」の「ゲート」が「電気的に接続され」、「第1の容量素子の静電容量」よりも小さい「静電容量」の「第2の容量素子」を有しており、「第2の容量素子に蓄積された電荷に応じて電流が流れることで前記発光素子による発光の輝度が制御され」るのに対し、引用発明はこのような容量素子を有しておらず、「TFT58のオン期間の制御によって」「有機EL素子60」が「時間階調を得る」点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 引用文献1には、引用発明において、時間階調方式に換えて、アナログ階調方式である、保持容量に蓄積された電荷に応じて発光素子による発光の輝度を制御する方式を採用することは、示唆されていない。 引用文献2には、容量がC1≫C2であるキャパシタC1,C2を有し、キャパシタC2に蓄積された電荷に応じて液晶セル230を駆動する電圧が制御される技術は記載されているが(段落【0027】、【0029】)、キャパシタに蓄積された電荷に応じて電流が流れることで発光素子による発光の輝度を制御する技術については記載されていない。 そもそも、引用発明は、「時間階調方式は、上述のアナログ階調方式や面積階調方式における問題点を解決するために、発光素子の発光時間を変調して階調を出す方式であり」(段落【0014】)という前提の下で、「上記時間階調方式で階調表示を行う場合の問題点を解決」(段落【0017】)する発明であるから、引用発明において時間階調方式に換えてアナログ階調方式を採用することは、引用発明の前提に反することになる。 したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 なお、上記相違点に係る本願発明1の構成は、原査定において示された引用文献3においても記載も示唆もされていない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2、引用発明3に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 上記「第5」「1」「(2)」に記載したように、引用文献1には、引用発明において、時間階調方式に換えて、アナログ階調方式である、保持容量に蓄積された電荷に応じて発光素子による発光の輝度を制御する方式を採用することは、示唆されておらず、引用文献2、3には、相違点に係る本願発明1の構成が記載も示唆もされていないから、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1及び2は、当業者が引用文献1及び2に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-02-13 |
出願番号 | 特願2015-244728(P2015-244728) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G09G)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 直行 |
特許庁審判長 |
小林 紀史 |
特許庁審判官 |
▲うし▼田 真悟 清水 稔 |
発明の名称 | EL表示装置 |