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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1337463 |
審判番号 | 不服2017-6487 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-08 |
確定日 | 2018-03-06 |
事件の表示 | 特願2012-257172「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-106580、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月26日の出願であって、平成28年7月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年9月21日付けで手続補正がされ、平成29年2月13日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年2月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 1.本願の請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 引用文献1.特開2006-92005号公報 引用文献2.特開2002-366407号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1-4に「前記更新処理ごとにトリガを発行する更新手段」、「前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段」及び「前記更新情報制御手段は、予め設定された数以下の前記更新情報、または、予め設定された時間内に前記更新情報抽出手段にて抽出した前記更新情報であり、かつ、同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報に同じ前記転送識別情報を設定する」という事項を追加する補正は、当初明細書の段落【0025】及び【0026】に記載されており、また、それぞれ、「更新手段」、「更新情報抽出手段」及び「更新情報制御手段」を限定するものであり、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正である。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1-4に係る発明は、平成29年5月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 マスタデータベースに対して所定の更新処理を行い、前記マスタデータベースに記憶されたデータベースを更新するとともに、前記更新処理ごとにトリガを発行する更新手段と、 前記更新手段にて更新した前記データベースに基づいて、前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段と、 前記更新情報抽出手段にて抽出した複数の前記更新情報を1つの更新情報群に含めて、当該更新情報群を、前記マスタデータベースに記憶された前記データベースの複製データを記憶するレプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送する更新情報転送手段と、を備え、 前記更新情報転送手段は、関連する複数の更新処理を一連の処理として管理する、同一のトランザクション処理によって更新された複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めて、当該更新情報群を前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 予め設定された転送条件に基づいて、同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めるように、当該更新情報群を決定する更新情報制御手段をさらに備え、 前記更新情報転送手段は、前記更新情報制御手段にて決定した1つの前記更新情報群を、前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 前記更新情報抽出手段は、同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報のそれぞれに、同じトランザクション識別情報を設定し、 前記更新情報制御手段は、前記更新情報抽出手段にて同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報を含む1つの前記更新情報群を決定し、 前記更新情報制御手段は、前記更新情報抽出手段にて同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報を含む複数の前記更新情報のそれぞれに同じ転送識別情報を設定し、同じ転送識別情報が設定された複数の前記更新情報を前記更新情報群として決定し、 前記更新情報制御手段は、予め設定された数以下の前記更新情報、または、予め設定された時間内に前記更新情報抽出手段にて抽出した前記更新情報であり、かつ、同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報に同じ前記転送識別情報を設定する、 情報処理装置。 【請求項2】 請求項1に記載の情報処理装置であって、 前記レプリカデータベースを備える他の情報処理装置から、前記レプリカデータベースに対する前記更新情報の反映に失敗したことが通知された場合に、当該更新情報の更新元となる前記データベース自体を前記マスタデータベースから取得し、取得した前記データベース自体を前記レプリカデータベースへ転送するデータベース転送制御手段、をさらに備える情報処理装置。 【請求項3】 情報処理装置に、 マスタデータベースに対して所定の更新処理を行い、前記マスタデータベースに記憶されたデータベースを更新するとともに、前記更新処理ごとにトリガを発行する更新手段と、 前記更新手段にて更新した前記データベースに基づいて、前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段と、 前記更新情報抽出手段にて抽出した複数の前記更新情報を1つの更新情報群に含めて、当該更新情報群を、前記マスタデータベースに記憶された前記データベースの複製データを記憶するレプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送する更新情報転送手段と、を実現させるとともに、 前記更新情報転送手段は、関連する複数の更新処理を一連の処理として管理する、同一のトランザクション処理によって更新された複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めて、当該更新情報群を前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送する、ことを実現させ、 予め設定された転送条件に基づいて、同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めるように、当該更新情報群を決定する更新情報制御手段をさらに実現させ、 前記更新情報転送手段は、前記更新情報制御手段にて決定した1つの前記更新情報群を、前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 前記更新情報抽出手段は、同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報のそれぞれに、同じトランザクション識別情報を設定し、 前記更新情報制御手段は、前記更新情報抽出手段にて同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報を含む1つの前記更新情報群を決定し、 前記更新情報制御手段は、前記更新情報抽出手段にて同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報を含む複数の前記更新情報のそれぞれに同じ転送識別情報を設定し、同じ転送識別情報が設定された複数の前記更新情報を前記更新情報群として決定し、 前記更新情報制御手段は、予め設定された数以下の前記更新情報、または、予め設定された時間内に前記更新情報抽出手段にて抽出した前記更新情報であり、かつ、同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報に同じ前記転送識別情報を設定する、 プログラム。 【請求項4】 マスタデータベースに対して所定の更新処理を行い、前記マスタデータベースに記憶されたデータベースを更新するとともに、前記更新処理ごとにトリガを発行し、 更新した前記データベースに基づいて、発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出し、 関連する複数の更新処理を一連の処理として管理する、同一のトランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報を1つの更新情報群に含めて、当該更新情報群を、前記マスタデータベースに記憶された前記データベースの複製データを記憶するレプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 予め設定された転送条件に基づいて、同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めるように、当該更新情報群を決定し、 決定した1つの前記更新情報群を、前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報のそれぞれに、同じトランザクション識別情報を設定し、 同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報を含む1つの前記更新情報群を決定し、 同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報を含む複数の前記更新情報のそれぞれに同じ転送識別情報を設定し、同じ転送識別情報が設定された複数の前記更新情報を前記更新情報群として決定し、 予め設定された数以下の前記更新情報、または、予め設定された時間内に抽出した前記更新情報であり、かつ、同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報に同じ前記転送識別情報を設定する、 情報処理方法。」 以下、特許請求の範囲の請求項1-4記載の発明を、それぞれ本願発明1-本願発明4という。 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 a.特許請求の範囲 「【請求項18】 複数のデータベース管理部を有し、前記複数のデータベース管理部が、複数の前記データベース管理部ごとに割り当てられたデータ領域にとランザクションによってアクセスすると共に、トランザクションによって生成される更新ログを格納するデータベースシステムに接続されるストレージ装置において、 前記データ領域、前記更新ログを保存する領域及び複製データベースを保存する複製データベース領域と、 前記複製データベースを管理する複製データベース管理部と、を備え; 前記複製データベース管理部は、 所定のタイミングで前記更新ログから更新情報及び同期化情報を抽出する抽出部と、 前記更新情報及び同期化情報を参照し、前記複製データベースの複製に反映させる反映部と、を備え; 前記抽出部は、 前記更新ログから前記更新情報及び前記同期化情報を抽出し、前記同期化情報及び前記トランザクションによって有効となった全ての前記更新情報を、前記反映部に送信し; 前記反映部は、 前記送信された同期化情報及び更新情報を順次参照し、 更新情報を参照した場合は、前記複製データベースに前記更新情報を送信し、 前記同期化情報を参照した場合は、前記同期化情報が記録された以前に有効となったトランザクションの前記更新情報を反映させることを特徴とするストレージ装置。」 b.段落【0149】-【0154】の記載。 「【0149】 図12は、更新情報送信処理部122及び更新情報受信処理部131の処理のフローチャートである。 【0150】 更新情報送信処理部122は、更新情報を送信するタイミングとなるまで待機している(ステップ1221)。送信のタイミングは、例えば、所定の間隔で定期的でってもよいし、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合であってもよい。 【0151】 送信タイミングとなったら、更新情報抽出キューに格納されている情報は、全て読み出し済みであるか否かを判定する(ステップ1222)。全ての情報が読み出し済みである場合は、送信バッファに格納された情報や同期化情報を反映側レプリケーションシステム13の更新情報受信処理部131に送信する(ステップ1229)。 【0152】 一方、また読み出されていない更新情報がある場合は、更新情報抽出キューから情報(更新情報又は同期化情報を含む)を1つ読み出す(ステップ1223)。そして、この読み出した情報が同期化情報であるか否かを判定する(ステップ1224)。 【0153】 読み出した情報が同期化情報である場合は、当該同期化情報を送信バッファに格納して(ステップ1228)、ステップ1222に戻る。 【0154】 一方、読み出した情報が同期化情報でないと判定した場合は、トランザクションごとに設けられたバッファに更新情報を格納する(ステップ1225)。次に、バッファに格納した更新情報がCOMMITの更新情報であるか否かを判定する(ステップ1226)、COMMITの更新情報である場合は、当該トランザクションのバッファ中の更新内容を送信バッファに格納し(ステップ1227)、ステップ1222に戻る。」 これらの記載を取り纏める。 記載bによれば、引用文献1記載の「ストレージ装置」では、「更新情報送信処理部及び更新情報受信処理部の処理は、更新情報を送信するタイミングとなるまで待機し、送信タイミングとなったら、更新情報抽出キューに格納されている情報が、全て読み出し済みである場合は、送信バッファに格納された情報や同期化情報を反映側レプリケーションシステムの更新情報受信処理部に送信するもので、 更新情報抽出キューから更新情報を読み出し、トランザクションごとに設けられたバッファに更新情報を格納し、バッファに格納した更新情報がCOMMITの更新情報である場合は、当該トランザクションのバッファ中の更新内容を送信バッファに格納し、所定の間隔で定期的に、または、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合の送信タイミングとなったら送信バッファに格納された情報を反映側レプリケーションシステムに送信する。」ものである。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「複数のデータベース管理部を有し、前記複数のデータベース管理部が、複数の前記データベース管理部ごとに割り当てられたデータ領域にとランザクションによってアクセスすると共に、トランザクションによって生成される更新ログを格納するデータベースシステムに接続されるストレージ装置において、 前記データ領域、前記更新ログを保存する領域及び複製データベースを保存する複製データベース領域と、 前記複製データベースを管理する複製データベース管理部と、を備え; 前記複製データベース管理部は、 所定のタイミングで前記更新ログから更新情報及び同期化情報を抽出する抽出部と、 前記更新情報及び同期化情報を参照し、前記複製データベースの複製に反映させる反映部と、を備え; 前記抽出部は、 前記更新ログから前記更新情報及び前記同期化情報を抽出し、前記同期化情報及び前記トランザクションによって有効となった全ての前記更新情報を、前記反映部に送信し; 前記反映部は、 前記送信された同期化情報及び更新情報を順次参照し、 更新情報を参照した場合は、前記複製データベースに前記更新情報を送信し、 前記同期化情報を参照した場合は、前記同期化情報が記録された以前に有効となったトランザクションの前記更新情報を反映させることを特徴とするストレージ装置であって、 更新情報送信処理部及び更新情報受信処理部の処理は、更新情報を送信するタイミングとなるまで待機し、送信タイミングとなったら、更新情報抽出キューに格納されている情報が、全て読み出し済みである場合は、送信バッファに格納された情報や同期化情報を反映側レプリケーションシステムの更新情報受信処理部に送信するもので、 更新情報抽出キューから更新情報を読み出し、トランザクションごとに設けられたバッファに更新情報を格納し、バッファに格納した更新情報がCOMMITの更新情報である場合は、当該トランザクションのバッファ中の更新内容を送信バッファに格納し、所定の間隔で定期的に、または、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合の送信タイミングとなったら送信バッファに格納された情報を反映側レプリケーションシステムに送信するストレージ装置。」 2.引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の記載がなされている。 c.段落【0002】及び【0003】の記載。 「【0002】 【従来の技術】 従来から、1つの情報処理装置が保有するマスターデータベースの複製を別の情報処理装置にレプリカデータベースとして作成し、マスターデータベースとレプリカデータベースとの整合性を維持するようなデータベースレプリケーション制御システムが知られている。 このような、従来のデータベースレプリケーション制御システムとしては、例えば特開2000-20366号公報、特開2000-20374号公報、特開2000-47918号公報、特開2001-34527号公報及び特開平9-54718号公報に開示されたものがある。 【0003】 従来のデータベースレプリケーション制御システムにおいては、データベース更新実行中のトランザクション異常終了が発生したり、データベース更新実行中にシステムクラッシュが発生することによるシステム異常終了が起こることがある。このような異常終了時においては、レプリケーション制御システムにおいて、必ずしもマスターデータベースとレプリカデータベースとの整合性を保証することはできなかった。従って、上述したような異常終了等によりマスターデータベースとレプリカデータベースとの不整合が生じた場合はオンライン業務処理を呈ししてマスターデータベースからレプリカデータベースへ全データを一括転送し、整合状態にした上でオンライン業務を再開する必要があった。」 そうすると、引用文献2に記載された技術(以下、「公知技術」という。)は、以下のとおりのものである。 〈公知技術〉 「データベースレプリケーション制御システムの技術分野において、反映処理の異常終了によってマスタデータベースとレプリカデータベースとの不整合が生じた場合に、マスタデータベースからレプリカデータベースへ全データを一括転送すること。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「データ領域」及び「複製データベース領域」は、それぞれ、本願発明1の「マスタデータベース」及び「レプリカデータベース」に相当するものである。 引用発明の「データ領域にトランザクションによってアクセス」することは、本願発明1の「マスタデータベースに所定の更新処理を行」うことに相当する。 引用発明で「バッファに格納した更新情報がCOMMITの更新情報である場合は、当該トランザクションのバッファ中の更新内容を送信バッファに格納し、所定の間隔で定期的に、または、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合の送信タイミングとなったら送信バッファに格納された情報を反映側レプリケーションシステムに送信する」ことは、本願発明1で「前記更新情報制御手段は、予め設定された数以下の前記更新情報、または、予め設定された時間内に前記更新情報抽出手段にて抽出した前記更新情報であり、かつ、同じ前記トランザクション識別情報が設定された全ての前記更新情報に同じ前記転送識別情報を設定する」ことに相当する動作である。 引用発明が「更新情報抽出キューから更新情報を読み出し、トランザクションごとに設けられたバッファに更新情報を格納し、バッファに格納した更新情報がCOMMITの更新情報である場合は、当該トランザクションのバッファ中の更新内容を送信バッファに格納し、所定の間隔で定期的に、または、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合の送信タイミングとなったら送信バッファに格納された情報を反映側レプリケーションシステムに送信」していることは、本願発明1の「前記更新情報抽出手段にて抽出した複数の前記更新情報を1つの更新情報群に含めて、当該更新情報群を、前記マスタデータベースに記憶された前記データベースの複製データを記憶するレプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送する更新情報転送手段」を引用発明も備えているといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点と相違点とがある。 〈一致点〉 「マスタデータベースに対して所定の更新処理を行い、前記マスタデータベースに記憶されたデータベースを更新する更新手段と、 前記更新手段にて更新した前記データベースに基づいて、更新情報を抽出する更新情報抽出手段と、 前記更新情報抽出手段にて抽出した複数の前記更新情報を1つの更新情報群に含めて、当該更新情報群を、前記マスタデータベースに記憶された前記データベースの複製データを記憶するレプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送する更新情報転送手段と、を備え、 前記更新情報転送手段は、複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めて、当該更新情報群を前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 前記更新情報転送手段は、前記更新情報制御手段にて決定した1つの前記更新情報群を、前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送し、 前記更新情報制御手段は、予め設定された数以下の前記更新情報、または、予め設定された時間内に前記更新情報抽出手段にて抽出した前記更新情報であり、同じ前記転送識別情報を設定する、 情報処理装置。」 〈相違点1〉 本願発明1では、「前記更新処理ごとにトリガを発行」し、「前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段」を備えるのに対し、引用発明における「更新情報」は、「所定のタイミングで更新ログから抽出する抽出部」により抽出されている点。 〈相違点2〉 本願発明1では、「更新情報転送手段は、関連する複数の更新処理を一連の処理として管理する、同一のトランザクション処理によって更新された複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めて前記更新情報群を前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送」しているのに対し、引用発明は、一度のタイミングで転送しているが、「更新情報抽出キューから更新情報を読み出し、トランザクションごとに設けられたバッファに更新情報を格納し、バッファに格納した更新情報がCOMMITの更新情報である場合は、当該トランザクションのバッファ中の更新内容を送信バッファに格納し、所定の間隔で定期的に、または、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合の送信タイミングとなったら送信バッファに格納された情報を反映側レプリケーションシステムに送信」するものである点。 〈相違点3〉 本願発明1では、「予め設定された転送条件に基づいて、同一の前記トランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めるように、当該更新情報群を決定する更新情報制御手段をさらに備え」ているのに対し、引用発明では、「トランザクション中の更新内容を送信バッファに格納し、所定の間隔で定期的に、または、更新情報抽出キューが所定の量を超えた場合の送信タイミングとなったら送信バッファに格納された情報を反映側レプリケーションシステムに送信」するものであって、「同一のトランザクション処理によって更新された前記データベースに基づいて抽出した複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含め」るとまでは限定されていない点。 〈相違点4〉 本願発明1では、「トランザクション識別情報」及び「転送識別情報」を設定し、これにより「更新情報群」として決定しているのに対し、引用発明では、この点につき、特段の明示がない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1、相違点2について検討する。 〈相違点1〉 本願発明1における「前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段」は、原審の拒絶の理由において引用された公知技術に記載されたものではなく、また、当該構成が本願出願日前に周知技術であったとの証左もない。 〈相違点2〉 本願発明1における「更新情報転送手段は、関連する複数の更新処理を一連の処理として管理する、同一のトランザクション処理によって更新された複数の前記更新情報を1つの前記更新情報群に含めて前記更新情報群を前記レプリカデータベースへ、一度のタイミングで転送」する点については原審の拒絶の理由において引用された公知技術に記載されたものではない。また、当該構成が本願出願日前に周知技術であったとの証左もない。 したがって、本願発明1が引用発明及び公知技術に基づき当業者が容易に構成し得たものであるとはいえない。 さらに、本願発明1の備える構成により奏する「負荷を抑制し、トランザクション処理の一貫性を保証することとを両立できる。」との作用効果は、引用発明及び公知技術により奏する作用効果からみて格別のものであるといえる。 以上のとおりであるから、本願発明1が引用発明及び公知技術に基づき当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 また、その余の相違点については、検討するまでもない。 2.本願発明2について 本願発明2も、本願発明1の「前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段」及び「更新情報転送手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び公知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明3及び4について 本願発明3及び4は、本願発明1に対応する「プログラム」及び「方法」の発明であり、本願発明1の「前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段」及び「更新情報転送手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び公知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 理由2(特許法第29条第2項)について 審判請求時の補正により、本願発明1-4は「前記更新手段が発行した前記トリガを受信する度に、更新情報を抽出する更新情報抽出手段」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-02-19 |
出願番号 | 特願2012-257172(P2012-257172) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WY
(G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大塚 俊範、脇岡 剛、大桃 由紀雄 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 安久 司郎 |
発明の名称 | 情報処理装置 |
代理人 | 馬場 資博 |
代理人 | 境 廣巳 |