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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62J |
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管理番号 | 1337520 |
審判番号 | 不服2016-12672 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-23 |
確定日 | 2018-02-14 |
事件の表示 | 特願2013-188401号「自転車シート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月27日出願公開、特開2014-54979号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年9月11日(パリ条約による優先権主張 2012年9月13日 (TW)台湾)の出願であって、平成26年10月8日付けで拒絶理由が通知され、平成27年1月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月19日付けで拒絶理由<最後>が通知され、同年11月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月21日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ、これに対し、同年8月23日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において、平成29年3月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 当審拒絶理由の概要 平成29年3月28日付けの当審拒絶理由の理由2の概要は以下のとおりである。 [理由2] この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 請求項7には、「変形空間」に関して、「前記変形空間は、前記シートカバーの一部により前記頂部が封止されており、前記支持部分の一部により前記底部が封止されており、前記支持部分を通り抜けることなく前記支持部分内に位置し、前記支持部分および前記発泡層の間で区画形成され、」と記載されているが、当該記載によれば、「変形空間」は、「シートカバーの一部」と「支持部分の一部」により封止されると同時に、「前記支持部分および前記発泡層の間で区画形成され」ることとなるから、当該記載は矛盾しており明確でない。 また、当該記載の「前記発泡層」の「前記」に対応する構成は、請求項7に記載されておらず、当該「前記発泡層」は、明確でない。 さらに、明細書の記載を参照すると、請求項7に係る発明は、図13の実施形態(第4の実施形態)の発明を意図していると考えられるのだが、図13の実施形態においては、「発泡層」は記載されていないから、矛盾している。 請求項7の「前記発泡層」(2箇所)は、「前記シートカバー」の誤記ではないのか。 よって、請求項7に係る発明は明確でない。 第3 平成29年7月26日に提出された手続補正書の概要 上記当審拒絶理由に対し、請求人が提出した上記手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、その請求項7の記載は以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。)。 「【請求項7】 硬質材料からなる剛体である支持部分と、シートカバーと、前記支持部分の内側に位置しており、前記支持部分と前記シートカバーとの間に位置し頂部と底部とを有する変形空間とを含む主体と、 前記変形空間に密集して充填されており、前記変形空間の中に制限される複数のフィラー粒子と、を備え、 前記変形空間は、前記シートカバーの一部により前記頂部が封止されており、前記支持部分の一部により前記底部が封止されており、前記支持部分を通り抜けることなく前記支持部分内に位置し、前記支持部分および発泡層の間で区画形成され、 前記発泡層は、複数の前記フィラー粒子を覆うように配置されており、 前記フィラー粒子は、前記変形空間内に自由に配置され、前記変形空間の位置に対応する前記シートカバーの領域に十分な圧力が加えられた場合、滑動かつ回転可能により前記変形空間内で独立して変位可能である自転車シート。」 第4 当審の判断 理由2について、以下、検討する。 1 特許請求の範囲の請求項7について (1) 請求項7には、「硬質材料からなる剛体である支持部分と、シートカバーと、前記支持部分の内側に位置しており、前記支持部分と前記シートカバーとの間に位置し頂部と底部とを有する変形空間とを含む主体」と記載されているから、「変形空間」は、「前記支持部分の内側に位置しており、前記支持部分と前記シートカバーとの間に位置し頂部と底部とを有する変形空間」(以下、「記載事項1」という。)である。 (2) 請求項7には、「前記変形空間は、前記シートカバーの一部により前記頂部が封止されており、前記支持部分の一部により前記底部が封止されており、前記支持部分を通り抜けることなく前記支持部分内に位置し、前記支持部分および発泡層の間で区画形成され、前記発泡層は、複数の前記フィラー粒子を覆うように配置されており、」と記載されているから、「前記変形空間」は、「前記シートカバーの一部により前記頂部が封止されており、前記支持部分の一部により前記底部が封止されており、前記支持部分を通り抜けることなく前記支持部分内に位置し」(以下、「記載事項2」という。)、「前記支持部分および発泡層の間で区画形成され」(以下、「記載事項3」という。)ているものであり、また、「前記発泡層は、複数の前記フィラー粒子を覆うように配置されて」(以下、「記載事項4」という。)いるものである。 (3) 本願明細書の段落【0011】(以下、段落についての表記は簡略化し、「【0011】」のように、番号だけを記載する。)には、「【図1】本発明の一実施形態による自転車シートの分解図である。【図2】図1に示す自転車シートの断面図である。」、「【図4】本発明の別の実施形態による自転車シートの断面図である。」、「【図6】本発明の第3実施形態による自転車シートの断面図である。」及び「【図13】本発明の第4実施形態による自転車シートの断面図である。」と記載されている。 (4) ア 本発明の一実施形態態の断面図である図2を説明する事項として、【0013】には、「主体200の発泡層220は、2つの変形空間221を有する。」及び「この2つの変形空間221は、支持部分210と発泡層220との間に挟まれ、それぞれは支持部分210により閉ざされる。」と記載されている。 イ 本発明の別の実施形態の断面図である図4を説明する事項として、【0015】には、「主体200の発泡層220は、2つの変形空間221を有する。」及び「2つの変形空間221は、発泡層220の中に位置し、それぞれ発泡層220により閉ざされている。」と記載されている。 ウ 本発明の第3施形態の断面図である図6を説明する事項として、【0016】には、「主体200の発泡層220は、2つの変形空間221を有する。」及び「その2つの変形空間221は、発泡層220の上に位置し、それぞれシートカバー230により閉ざされている。」と記載されている。 エ 本発明の第4施形態の断面図である図13を説明する事項として、 【0021】には、「主体200の支持部分210は、2つの変形空間221を有する。」及び「その2つの変形空間221は、支持部分210とシートカバー230との間に挟まれ、それぞれシートカバー230により閉ざされている。」と記載されている。 (5) 請求項7において、「変形空間」を特定する事項である、「支持部分の内側に位置して」いるという事項(本件補正により補正された事項)は、明細書に記載されていないが、図13、当該図を説明する「主体200の支持部分210は、2つの変形空間221を有する。」及び「その2つの変形空間221は、支持部分210とシートカバー230との間に挟まれ、それぞれシートカバー230により閉ざされている。」という記載(上記(4)エ)、並びに、請求項7の「前記変形空間は、・・・前記支持部分内に位置し」ているという記載を総合すると、支持部分に形成された凹部のように、「支持部分の中に変形空間が形成されて」(平成29年7月26日に提出の意見書の4.4-1.の2節目の記載を参照)いるものと理解できる。 (6) 本願明細書に記載された一実施形態、別の実施形態及び第3実施形態(第4実施形態以外の実施形態)は、いずれも、「主体200の発泡層220は、2つの変形空間221を有する。」ものであり(上記(4)ア?ウ)、それらに対応する図2、4及び6を参照しても、記載事項1及び2によって特定される「変形空間」の構成を開示するものではない。 (7) 上記(5)及び(6)を踏まえると、記載事項1及び2によって特定される「変形空間」、すなわち、「前記支持部分の内側に位置しており、前記支持部分と前記シートカバーとの間に位置し頂部と底部とを有する」、「前記シートカバーの一部により前記頂部が封止されており、前記支持部分の一部により前記底部が封止されており、前記支持部分を通り抜けることなく前記支持部分内に位置」する、「変形空間」は、【0021】に記載された第4実施形態(上記(4)エ)、すなわち、図13の「変形空間221」に対応しているといえる。 (8) 記載事項3は、「前記変形空間」を限定する事項であるから、記載事項1を前提とした限定がされ、さらに、記載事項2の限定もされている「変形空間」、すなわち、上記(7)で述べた、図13の「変形空間221」をさらに限定する事項であるといえる。 しかしながら、記載事項1及び2によって特定される図13の「変形空間221」の構成は、前記支持部分および前記シートカバーの間で区画形成されているものといえるから、さらに、記載事項3(前記支持部分および発泡層の間で区画形成され)で限定されることは、想定し得ないものである。 そして、そもそも、図13には、発泡層自体が記載されておらず、記載事項1及び2によって特定される図13の「変形空間221」の構成において、記載事項3及び4を備える態様をとり得るものではない。 (9) 以上から、「変形空間」が、記載事項1及び2により特定される(すなわち、「シートカバーの一部」と「支持部分の一部」により封止される)と同時に、記載事項3によっても特定される(すなわち、「前記支持部分および前記発泡層の間で区画形成され」る)ことは、矛盾するものであり(この旨については、上記第2のとおり、当審拒絶理由の理由2でも指摘している。)、記載事項1?4により特定される「変形空間」の構成は想定し得ないから、その構成を特定することができず、特許請求の範囲の請求項7の記載は明確でない。 したがって、当審拒絶理由の理由2は解消したとはいえない。 2 平成29年7月26日に提出された意見書について 請求人は、請求項7の補正に関して、意見書の2.(1)において、「補正前の請求項7に記載されている変形空間を特定する補正を行いました。この補正により、本願は、特許法36条第6項第2号の規定する要件をみたします。」と主張しているが、上記1のとおりであるから、当該主張は採用できない。 3 小括 したがって、特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、明確でなく、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第5 むすび 以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、他の理由について検討するまでもなく、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-09-12 |
結審通知日 | 2017-09-19 |
審決日 | 2017-10-03 |
出願番号 | 特願2013-188401(P2013-188401) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B62J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸 智章 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 氏原 康宏 |
発明の名称 | 自転車シート |
代理人 | 服部 雅紀 |