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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L
管理番号 1337523
審判番号 不服2016-14561  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-29 
確定日 2018-02-14 
事件の表示 特願2014-537497号「真空掃除機のノズルの清掃」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 2日国際公開、WO2013/060365、平成26年12月18日国内公表、特表2014-534016号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年10月26日を国際出願日とする出願であって、平成27年6月16日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月24日に手続補正書及び意見書が提出され、その後、平成28年5月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成28年9月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明について
1 本願発明
特許請求の範囲の請求項1?18に係る発明は、平成27年12月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明は以下のとおりのものであると認める(以下「本願発明」という。)。

「真空掃除機(2)用のノズル(1)であって、
前記ノズル(1)が
- 掃除対象の表面から微小物を拾い集めるための回転部材(3)であって、長手軸(10)の周りに構成される回転部材と、
- 前記回転部材(3)に絡み付いた物を取り除くための清掃機構と、
を備え、
前記清掃機構が、
- 前記回転部材(3)の少なくとも1つの放射状突出部材(13)に設置された少なくとも1つの支持面(4)と、
- 少なくとも1つの清掃部材(5)であって、前記清掃部材(5)が前記支持面(4)から距離を置いて構成される休止位置と、前記回転部材に近接する少なくとも1つの清掃位置であって、前記清掃部材(5)が前記回転部材(3)の回転時に前記支持面(4)の少なくとも1つの区画(4a)と協働して前記回転部材(3)から絡み付いた物を取り除く少なくとも1つの清掃位置と、の間で移動可能な少なくとも1つの清掃部材と、
を備え、
前記清掃部材(5)が、前記回転部材(3)の回転時に、前記少なくとも1つの清掃位置において、前記少なくとも1つの支持面(4)の少なくとも1つの区画(4a)との間に弾性接触部を提供することができる弾性シート部材(5a)を備えることを特徴とする、
ノズル(1)。」

2 引用例
(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の国際出願日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2009/0229075号明細書(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(日本語訳は当審による。)
(ア)「[0001]The present invention relates generally to a cleaning device and, more specifically, to an agitator having features for removing dirt and debris from the agitator.」([0001]本発明はクリーニング装置に関するものであり、より具体的には、アジテータからごみ・屑を除去するための特徴を有するアジテータに関するものである。)

(イ)「[0024]The present invention generally provides an agitator having features for removing dirt and debris from the agitator. The cleaning feature may include one or more surfaces on the agitator body and one or more cleaning members or other devices adapted to move towards the surfaces to engage to cut, abrade, strip or otherwise remove debris that has become wrapped around the agitator. Embodiments of the invention may be used with any type of cleaning device, such as upright vacuums, canister vacuums, central vacuum systems, powder or fluid extractors, or sweepers. For example, in one embodiment, shown in FIG. 1, the invention may provide an agitator 100 mounted in a cleaning head 102 for a floor sweeper or a vacuum cleaner. Such cleaning heads 102 are known in the art, and may include features such as a motor 114 to drive the agitator 100 by a belt 116 or gears or other known mechanisms, a dirt receptacle, wheels to support the cleaning head 102 at a fixed or variable height above the floor, one or more air passages that lead to a vacuum source, and so on. Non-limiting examples of various devices with which an agitator may be used are shown in U.S. Publication No. 2006/0021184, and U.S. Pat. Nos. 6,502,277 and 7,163,568. The foregoing references are incorporated herein. The motor 114 may drive a vacuum fan or impeller, or it may be dedicated to driving only the agitator 100.」([0024]本発明はアジテータからごみ・屑を除去するための特徴を備えたアジテータを提供する。クリーニングの特徴は、アジテータの周りに巻き付いてしまったデブリを除去する、切断、研磨、剥離又は他の方法を行うために、表面に係合する方向に移動させるように設けられたアジテータ体の1つ以上の表面と1以上のクリーニング部材、又は他の装置を含むことができる。本発明の実施形態は、アップライト型掃除機、キャニスタ型掃除機、セントラル真空システム、粉末または流体抽出装置、またはスイーパーなどの任意のタイプの洗浄機に使用することができる。例えば、一実施形態では、図1に示されるように、本発明は、フロアスイーパー又は真空掃除機のクリーニングヘッド102に装着されたアジテータ100を提供することができる。クリーニングヘッド102は、当技術分野で知られており、ベルト116や歯車または他の既知の機構によってアジテータ100を駆動するモータ114、ごみ容器、床上で高さを固定または可変に洗浄ヘッド102を支持する車輪、真空源につながる1以上の空気通路等の特徴を含むことができる。アジテータに用いられる各種デバイスの非限定的な例は、米国特許出願公開第2006/0021184号、米国特許第6、502、277号および第7、163、568号に示される。前述の参照は、ここに合体させる。モータ114は、真空ファンまたはインペラを駆動することができる、または、アジテータ100のみ駆動する専用であってもよい。)

(ウ)「[0034]It will be appreciated that excessive abrasion and impedance to the agitator's rotation may be reduced by modifying the flexibility of the bristles 106 and/or blade 202, or by changing the various dimensions of the bristles 106, blade 202 and friction surfaces 112. For example, the flexibility of the bristles 106 may be modified by changing their physical composition, by increasing the height of the bristles from the surface of the spindle 104.
[0035]FIGS. 3A and 3B also include inserts that show the exemplary blade 202 in magnified detail. The blade 202 in the exemplary embodiment comprises a 2-millimeter thick steel plate, and the bottom edge 204 of the blade 202 is milled to create a contact surface 306 that is about 0.5 millimeters thick. The narrower contact surface 306 may increase the surface pressure exerted by the blade 202 against the friction surface 112 or against particles or objects lying against the friction surface 112. Also, the contact surface 306 may be rounded on its leading edge to decrease wear on the bristles 106.」([0034]ブリストル106及び/又はブレード202の曲がりやすさを変更することにより、又は毛106、ブレード202、摩擦面112の様々な寸法を変更することによって、アジテータの回転に過大な摩耗や負荷を低減することができることは理解されよう。例えば、毛106の曲がりやすさは、それらの物理的な組成を変えることやスピンドル104の表面からの毛の高さを高くすることで、変更すればよい。
[0035]図3aおよび図3bは、拡大された細部に例示的なブレード202を示したインサートを含んでいる。例示的な実施形態におけるブレード202は、2ミリメートル厚の鋼板で構成されており、ブレード202の底縁部204は、約0.5ミリメートル厚の接触面306を形成するために圧延される。より狭い接触面306は、摩擦面112、又は摩擦面112にある粒子または物体に対して、ブレード202によって加えられる面圧を高めることができる。また接触面306は、ブリストル106の前縁上を丸くすることで、摩耗を減少させることができる。)

(エ)「[0039]It will be understood that the blade 202 may comprise any resilient material, and the blade 202 need not resemble a sharpened edge or a simple planar structure. The blade 202 may comprise a variety of materials, preferably materials that are heat resistant and durable enough to generate and withstand sufficient friction to efficiently remove entangled articles. The blade 202 also may be selected or modified (such as by polishing) to reduce or minimize the amount of wear on the bristles 106. The invention may also use an abrasive surface as a cleaning member instead of a blade 202, or the blade 202 may be treated or shaped to enhance its abrasiveness. It will also be understood that the blade 202 is just one example of a cleaning member that may be used with embodiments of the invention. For example, the blade 202 comprise or be replaced by a round bar having a small or large diameter that is moved into contact with the friction surfaces.」([0039]ブレード202は、任意の弾性材料を含んでもよく、ブレード202は、鋭利なエッジや単純な平面構造に類似している必要がないことが理解されるであろう。ブレード202は、好ましくは、耐熱性およびからまった物品を効率よく除去するのに十分な摩擦の発生と、それに耐えるのに十分な耐久性のある様々な材料を含むことができる。ブレード202はまた、毛106の摩耗量を(研磨などによって)低減または最小化するよう選択することができる。本発明は、ブレード202の代わりにクリーニング部材としての研磨面を使用してもよいし、ブレード202は、その研磨性を強化するために処理、または成形することができる。ブレード202は、本発明の実施形態で用いられる清掃部材の一例に過ぎないことを理解されたい。例えば、ブレード202は、摩擦面と接触するように移動される、小さい又は大きい径の丸棒とする又は交換される。)

(オ)「What is claimed is:
1. A cleaning device agitator system comprising: an agitator comprising: a spindle having a first end, a second end, and a longitudinal axis extending between the first end and the second end, one or more agitating devices projecting from the spindle to a first radial height, and one or more friction surfaces projecting from the spindle to a second radial height; one or more cleaning members positioned adjacent at least a portion of the agitator, the one or more cleaning members being adapted to move between a first position in which the one or more cleaning members do not engage the one or more friction surfaces, and a second position in which the one or more cleaning members engage the one or more friction surfaces to clean debris from the agitator. 」(特許請求の範囲
1.アジテータは、第1端部と第2端部とを有するスピンドルと、該第1端部と第2端部との間に延びた長手方向軸線を備え、スピンドルから第1の半径方向高さに突出する1つ以上のアジテータ装置と、スピンドルから第2の半径方向高さに突出する1つ以上の摩擦面とを備え、
少なくともアジテータの少なくとも一部に隣接して配置された1つ以上のクリーニング部材を有し、
1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合しない第1の位置と、アジテータからの屑をクリーニングするために、1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合する第2の位置との間で移動するようになっている、クリーニング機構を有するアジテータシステム。)

(2) 引用例に記載された発明
上記(イ)には、上記(オ)のアジテータシステムをクリーニングする装置を真空掃除機の清掃ヘッド102に設けることが記載されているから、引用例(特に上記(オ))には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「アジテータは、第1端部と第2端部とを有するスピンドルと、該第1端部と第2端部との間に延びた長手方向軸線を備え、スピンドルから第1の半径方向高さに突出する1つ以上のアジテータ装置と、スピンドルから第2の半径方向高さに突出する1つ以上の摩擦面とを備え、
少なくともアジテータの少なくとも一部に隣接して配置された1つ以上のクリーニング部材を有し、
1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合しない第1の位置と、アジテータからの屑をクリーニングするために、1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合する第2の位置との間で移動するようになっている、クリーニング機構を有するアジテータシステムを備える真空掃除機の清掃ヘッド。」

3 本願発明と引用発明の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「真空掃除機の清掃ヘッド」は、その機能から、本願発明の「真空掃除機(2)用のノズル(1)」に相当し、同様に、「スピンドル」は「回転部材(3)」に、「クリーニング部材」は「清掃部材(5)」にそれぞれ相当する。

(イ)引用発明の「第1端部と第2端部とを有するスピンドルと、該第1端部と第2端部との間に延びた長手方向軸線を備え」る態様は、「スピンドル」を備える「アジテータ」が、床面等のごみ・屑を拾い集めるものであるから、本願発明の「掃除対象の表面から微小物を拾い集めるための回転部材(3)であって、長手軸(10)の周りに構成される回転部材」に相当する。

(ウ)引用発明の「クリーニング機構」は、上記2(1)(イ)を参照すると、アジテータの周り、すなわちスピンドルの周りに巻き付いてしまった屑を除去するためのものであるから、本願発明の「前記回転部材(3)に絡み付いた物を取り除くための清掃機構」に相当する。

(エ)引用発明の「スピンドルから第2の半径方向高さに突出する1つ以上の摩擦面」は、本願発明の「前記回転部材(3)の少なくとも1つの放射状突出部材(13)に設置された少なくとも1つの支持面(4)」に相当する。

(オ)引用発明の「1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合しない第1の位置と、アジテータからの屑をクリーニングするために、1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合する第2の位置との間で移動するようになって」いる「1つ以上のクリーニング部材」は、「アジテータからの屑をクリーニングするために、1つ以上のクリーニング部材が1つ以上の摩擦面に係合する第2の位置」において、アジテータが回転し、アジテータの周りに巻き付いてしまった屑を取り除くものであり、クリーニング部材が摩擦面と協働しているといえるから、本願発明の「少なくとも1つの清掃部材(5)であって、前記清掃部材(5)が前記支持面(4)から距離を置いて構成される休止位置と、前記回転部材に近接する少なくとも1つの清掃位置であって、前記清掃部材(5)が前記回転部材(3)の回転時に前記支持面(4)の少なくとも1つの区画(4a)と協働して前記回転部材(3)から絡み付いた物を取り除く少なくとも1つの清掃位置と、の間で移動可能な少なくとも1つの清掃部材」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「真空掃除機用のノズルであって、
前記ノズルが
- 掃除対象の表面から微小物を拾い集めるための回転部材であって、長手軸の周りに構成される回転部材と、
- 前記回転部材に絡み付いた物を取り除くための清掃機構と、
を備え、
前記清掃機構が、
- 前記回転部材の少なくとも1つの放射状突出部材に設置された少なくとも1つの支持面と、
- 少なくとも1つの清掃部材であって、前記清掃部材が前記支持面から距離を置いて構成される休止位置と、前記回転部材に近接する少なくとも1つの清掃位置であって、前記清掃部材が前記回転部材の回転時に前記支持面の少なくとも1つの区画と協働して前記回転部材から絡み付いた物を取り除く少なくとも1つの清掃位置と、の間で移動可能な少なくとも1つの清掃部材とを備えるノズル。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明では、「前記清掃部材(5)が、前記回転部材(3)の回転時に、前記少なくとも1つの清掃位置において、前記少なくとも1つの支持面(4)の少なくとも1つの区画(4a)との間に弾性接触部を提供することができる弾性シート部材(5a)を備える」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(2) 当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例には、引用発明の「クリーニング部材」の一例として「ブレード(202)」を備えることが記載されている。
そして、引用例には、「ブレード202」に関して、[0034]に「ブリストル106及び/又はブレード202の曲がりやすさを変更することにより、又は毛106、ブレード202、摩擦面112の様々な寸法を変更することによってアジテータの回転に過大な摩耗や負荷を低減することができることは理解されよう。」と記載されており、また、[0039]に「ブレード202は、任意の弾性材料を含んでもよく、ブレード202は、鋭利なエッジや単純な平面構造に類似している必要がないことが理解されるであろう。ブレード202は、好ましくは、耐熱性およびからまった物品を効率よく除去するのに十分な摩擦の発生と、それに耐えるのに十分な耐久性のある様々な材料を含むことができる。」と記載されており、引用例には、引用発明の「クリーニング部材」が弾性材料を備えるようにすることが示唆されているといえる。
したがって、引用発明において、当該示唆に基づいて、上記相違点にかかる本願発明の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

ここで、請求人は、引用例には、ブレード202を弾性材料とすることが実質的に記載されていない旨主張するが、すでに述べたように[0034]に「ブリストル106及び/又はブレード202の曲がりやすさを変更することにより、又は毛106、ブレード202、摩擦面112の様々な寸法を変更すること」、[0039]に「ブレード202は、任意の弾性材料を含んでもよく」と記載されていること及びブレード202が用いられている図2、3の構造を合わせると、引用例にはブレード202が弾性材料、すなわち弾性シート材料とすることが示唆されているから、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願発明の奏する効果は、引用発明及び引用例記載の上記事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例記載の上記事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。


第3 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-15 
結審通知日 2017-09-19 
審決日 2017-10-05 
出願番号 特願2014-537497(P2014-537497)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大瀬 円  
特許庁審判長 中村 則夫
特許庁審判官 井上 哲男
佐々木 正章
発明の名称 真空掃除機のノズルの清掃  
代理人 青木 篤  
代理人 島田 哲郎  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 三橋 真二  
代理人 大橋 康史  
代理人 前島 一夫  

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