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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1337564 |
審判番号 | 不服2016-15133 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-07 |
確定日 | 2018-02-15 |
事件の表示 | 特願2013-507309「光電変換装置及び光電変換装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/132766〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成24年(2012年)3月2日(優先権主張 特願2011-69576号 2011年3月28日、及び、特願2011-69669号 2011年3月28日)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月20日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年7月29日付けで拒絶理由が通知され、同年9月14日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成28年1月28日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月9日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年7月29日付けで前記平成28年3月9日付け手続補正に対して補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年10月7日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされた後、当審において、平成29年8月21日付けで拒絶理由が通知され(以下「当審拒絶理由」という。)、同年10月23日付けで意見書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成28年10月7日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「光電変換装置の製造方法であって、 半導体材料からなる基板の第1表面の少なくとも一部の領域上に第1パッシベーション層を形成する第1の工程と、 前記第1の工程後、前記基板の前記第1表面と反対の第2表面の少なくとも一部の領域上に第2パッシベーション層および第3パッシベーション層を形成する第2の工程と、 前記第2の工程後、前記第2表面側のみに電極を形成する第3の工程と、 を備え、前記第2の工程は、 前記第2表面上に前記第2パッシベーション層を形成する工程と 前記第2表面上の前記第2パッシベーション層の上に第1の導電型のドーパントを含む第1半導体層及び絶縁層を形成する工程と、 前記第1半導体層と前記絶縁層のうちの一部をエッチングして、前記基板の裏面を露出させる工程と、 前記基板の裏面の露出した領域に、前記第3パッシベーション層を形成する工程と、 前記第3パッシベーション層の上に前記第1の導電型と異なる第2導電型のドーパントを含む第2半導体層を形成する工程と、 を含む光電変換装置の製造方法。」(以下「本願発明」という。) 3 刊行物の記載及び引用発明 (1)引用文献 当審拒絶理由に引用した、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた、国際公開第2010/113750号(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ)。 ア 「技術分野 [0001] 本発明は、裏面接合型の太陽電池に関する」 イ 「[0033](太陽電池の製造方法) 次に、第1実施形態による太陽電池100の製造方法について、図3?図5を参照しながら説明する。 [0034] まず、基板10として予め受光面Aにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコン基板を用意する。 [0035] そして、図3に示すように、基板10の受光面Aの略全面上に、CVD法により3nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層からなるパッシベーション膜15aを形成し、さらにCVD法により50nm?150nmの厚みを有するシリコン窒化物の層からなる光反射防止膜15bを順次積層する。パッシベーション膜15aおよび光反射防止膜15bによって、光入射側構造体15を構成する。パッシベーション膜15aは、水素を含むので、基板10をパッシベートする機能を有する。また、光反射防止膜15bは、反射防止機能を有する。なお、i型非晶質シリコン層およびシリコン窒化物層の積層構造は、光入射側構造体15の一例である。 [0036] そして、基板10の裏面Bの略全面上に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層11を形成する。i型非晶質半導体層11は、水素を含むので、基板10をパッシベートする機能を有する。 [0037] そして、図4に示すように、i型非晶質半導体層11の表面上に、マスクを用いたCVD法によって、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質シリコンからなるp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるキャップ層30を所定のパターンで順次形成する。所定のパターンとは、基板10の裏面Bの第1領域B1に対応するパターンである。 [0038] さらに、図5に示すように、i型非晶質半導体層11の表面上からキャップ層30の表面上に跨るように、CVD法により2nm?50nmの厚みを有するn型非晶質シリコンからなるn型非晶質半導体層13aを形成する。 [0039] 最後に、スパッタ法や印刷法などの方法により、n型非晶質半導体層13aの表面上に、所定パターンでp側電極20aおよびn側電極20bを形成する。これにより、第1実施形態による太陽電池100が製造される。」 ウ 「[0048][第3実施形態] 次に、本発明の第3実施形態による太陽電池200について、図7?図11を参照しながら説明する。以下においては、第1実施形態との相違点についておもに説明する。 [0049](太陽電池の構成) 図7は、本発明の第3実施形態による太陽電池200の断面図である。図7に示すように、基板10の裏面Bの第1領域B1の表面上には、i型非晶質半導体層12bおよびp型非晶質半導体層12aが順次積層されている。すなわち、i型非晶質半導体層12bは、半導体基板10とp型非晶質半導体層12aとの間に形成されている。また、p型非晶質半導体層12aの上面上には、キャップ層30が形成されている。また、i型非晶質半導体層13bおよびn型非晶質半導体層13aは、基板10の裏面B上(p型非晶質半導体層12aが形成される第1領域B1と隣接する第2領域B2上)からキャップ層30の表面上に跨るように積層されている。なお、i型非晶質半導体層12bは、本発明の「第4半導体層」の一例であり、i型非晶質半導体層13bは、本発明の「第5半導体層」の一例である。第3実施形態では、i型非晶質半導体層12bとi型非晶質半導体層13bとにより、本発明の「第3半導体層」が構成されている。 [0050](太陽電池の製造方法) 次に、図8?図11を参照して第3実施形態による太陽電池200の製造方法を説明する。 [0051] まず、第1実施形態と同様に、予め受光面Aにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンからなる基板10を準備する。そして、図8に示すように、基板10の受光面Aの略全面上に光入射側構造体15を形成する。 [0052] そして、基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するキャップ層30を順次形成する。なお、キャップ層30は、p型およびn型のドーピング用不純物を積極的に導入せずに形成する。 [0053] そして、図9に示すように、キャップ層30の表面上に、所定のパターンでレジスト膜40を形成する。所定のパターンとは、基板10の裏面Bの第1領域B1のパターンに対応するパターンである。 [0054] そして、図10に示すように、レジスト膜40から露出するi型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30をエッチング除去し、その後、レジスト膜40を除去する。この工程により、基板10の裏面Bの第1領域B1の表面上に、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30の積層膜を形成する。 [0055] なお、図10は、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30の積層膜を、基板10の裏面Bが露出するまでエッチング除去した例を示しているが、i型非晶質半導体層12bを露出させるようにエッチング除去してもよい。この工程においては、少なくともp型非晶質半導体層12を除去すればよく、i型非晶質半導体層12bの一部が基板10の裏面B上に残存していてもよい。 [0056] そして、図11に示すように、基板10の裏面Bの表面上からキャップ層30の表面上に跨るように、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層13bおよび2nm?50nmの厚みを有するn型非晶質半導体層13aを順次形成する。具体的には、i型非晶質半導体層13bおよびn型非晶質半導体層13aを、基板10の裏面Bの略全面上に形成する。 [0057] 最後に、スパッタ法や印刷法などの方法により、n型非晶質半導体層13aの表面上に、所定のパターンでp側電極20aおよびn側電極20bを形成する。これにより、第3実施形態による太陽電池200が製造される。 [0058](作用および効果) 第3実施形態による太陽電池200は、第1実施形態と同様に、キャップ層30により、基板10とn型非晶質半導体層13aとの間に、不所望なドーピング不純物が含まれることを抑制できるので、太陽電池特性を向上させることができる。」 エ 「[0068](実施例サンプル) 以下に、本発明の実施例について説明する。本実施例では、図7に示す太陽電池200を以下のようにして製造した。 [0069]まず、200μm程度の厚みを有するn型単結晶シリコンからなる基板10に異方性エッチング処理を施し、基板10の受光面Aおよび裏面Bにテクスチャ構造を形成した。 [0070]そして、原料ガスとしてSiH_(4)およびH_(2)の混合ガスを用い、プラズマCVDによって基板10の受光面A上に、10nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層15aを形成した。 [0071]そして、原料ガスとしてSiH_(4)、H_(2)およびB_(2)H_(6)を用い、プラズマCVD法によって基板10の裏面Bの第1領域B1上に、20nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層12b、10nmの厚みを有するp型非晶質シリコンからなるp型非晶質半導体層12aおよびi型非晶質シリコンからなるキャップ層30を順次形成した。なお、本実施例ではマスクを用いてi型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30を所定のパターンに形成した。また、キャップ層30を形成する際において、キャップ層30の厚みを0.5nm、1nm、1.5nm、2nm、2.5nm、3nm、3.5nm、4nm、4.5nm、5nm、6nm、7nmおよび8nmに変化させ、キャップ層30の厚みが異なる13個のサンプルを製造した。 [0072]そして、原料ガスとしてSiH_(4)、H_(2)およびPH_(3)を用いて、プラズマCVD法によって基板10の裏面Bの第2領域B2の表面上からキャップ層30の表面上に跨るように、3nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層13bおよび20nmの厚みを有するn型非晶質シリコンからなるn型非晶質半導体層13aを順次形成した。なお、i型非晶質半導体層13bの形成は、PH_(3)の導入量を0にして行った。」 オ 図3、7ないし11は次のものである。 (2)引用発明 ア 第3実施形態における「基板10の受光面Aの略全面上に光入射側構造体15を形成する」ことは、「第1実施形態と同様による」ものとされるから(上記「(1)」「ウ」)、「基板10の受光面Aの略全面上に、CVD法により3nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層からなるパッシベーション膜15aを形成し、さらにCVD法により50nm?150nmの厚みを有するシリコン窒化物の層からなる光反射防止膜15bを順次積層することにより、パッシベーション膜15aおよび光反射防止膜15bによって、光入射側構造体15を構成する」こと(上記「(1)」「イ」)であると認められる。 イ また、第3実施形態の「基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するキャップ層30を順次形成する」こと(上記「(1)」「ウ」)における「基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層12b」を「形成する」ことは、第1実施形態における「基板10の裏面Bの略全面上に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層11を形成する」こと(上記「(1)」「イ」)と同じであって「第1実施形態と同様による」ものといえる。 そうすると、第1実施形態における「i型非晶質半導体層11は、水素を含むので、基板10をパッシベートする機能を有する」から、第3実施形態の「i型非晶質半導体層12b」も「基板10をパッシベートする機能を有する」ものと認められる。 ウ 「第3実施形態による太陽電池200の製造方法」として、上記「(1)」「ウ」の[0050]?[0057]に、それぞれ下記のとおりに記載されている。 (ア)「まず、第1実施形態と同様に、予め受光面Aにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンからなる基板10を準備する。そして、・・・基板10の受光面Aの略全面上に光入射側構造体15を形成する。」([0051]) ここで、上記アでの検討を踏まえると、上記記載は、「まず、予め受光面Aにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンからなる基板10を準備する。そして、基板10の受光面Aの略全面上に」、CVD法により3nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層からなるパッシベーション膜15aを形成し、さらにCVD法により50nm?150nmの厚みを有するシリコン窒化物の層からなる光反射防止膜15bを順次積層することにより、パッシベーション膜15aおよび光反射防止膜15bによって、「光入射側構造体15を形成する」ことであると認められる。 (イ)「そして、基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するキャップ層30を順次形成する。」([0052]) (ウ)「そして、・・・キャップ層30の表面上に、所定のパターンでレジスト膜40を形成する。」([0053]) (エ)「そして、・・・レジスト膜40から露出するi型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30をエッチング除去し、その後、レジスト膜40を除去する。」([0054]) (オ)「そして、・・・基板10の裏面Bの表面上からキャップ層30の表面上に跨るように、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層13bおよび2nm?50nmの厚みを有するn型非晶質半導体層13aを順次形成する。」([0056]) (カ)「最後に、スパッタ法や印刷法などの方法により、n型非晶質半導体層13aの表面上に、所定のパターンでp側電極20aおよびn側電極20bを形成する。」「これにより、・・・太陽電池200が製造される。」([0057]) エ 上記ウによれば、「第3実施形態による太陽電池200の製造方法」は、「まず」、「そして」?「そして」(5回)、「最後に」という時系列の順序を示す接続詞をもって特定されるものであるから、上記「ウ」「(ア)」ないし「(カ)」それぞれの処理を時系列とする製造過程が記載されているものと認められ、各処理は工程といえるから、概略次のとおりである。 (ア)「まず、・・・基板10を準備する(工程1)」、「そして、・・・光入射側構造体15を形成する(工程2)」(上記「ウ」「(ア)」) (イ)「そして、・・・i型非晶質半導体層12b、・・・p型非晶質半導体層12aおよび・・・キャップ層30を順次形成する(工程3)」(上記「ウ」「(イ)」) (ウ)「そして、・・・レジスト膜40を形成する(工程4)」(上記「ウ」「(ウ)」) (エ)「そして、・・・i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30をエッチング除去し、その後、レジスト膜40を除去する(工程5)」(上記「ウ」「(エ)」) (オ)「そして、・・・i型非晶質半導体層13bおよび・・・n型非晶質半導体層13aを順次形成する(工程6)」(上記「ウ」「(オ)」) (カ)「最後に、・・・p側電極20aおよびn側電極20bを形成する(工程7)」「これにより、・・・太陽電池200が製造される。」(上記「ウ」「(カ)」) オ 上記アないしエを踏まえると、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「まず、予め受光面Aにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンからなる基板10を準備する工程1、 そして、基板10の受光面Aの略全面上に、CVD法により3nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層からなるパッシベーション膜15aを形成し、さらにCVD法により50nm?150nmの厚みを有するシリコン窒化物の層からなる光反射防止膜15bを順次積層することにより、パッシベーション膜15aおよび光反射防止膜15bによって、光入射側構造体15を構成する工程2、 そして、基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなる基板10をパッシベートする機能を有するi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するキャップ層30を順次形成する工程3、 そして、キャップ層30の表面上に、所定のパターンでレジスト膜40を形成する工程4、 そして、レジスト膜40から露出するi型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30をエッチング除去し、その後、レジスト膜40を除去することにより、基板10の裏面Bの第1領域B1の表面上に、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30の積層膜を形成する工程5、 上記エッチングでは、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30の積層膜を、基板10の裏面Bが露出するまでエッチング除去するものであり、 そして、基板10の裏面Bの表面上からキャップ層30の表面上に跨るように、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層13bおよび2nm?50nmの厚みを有するn型非晶質半導体層13aを順次形成して、i型非晶質半導体層13bおよびn型非晶質半導体層13aを、基板10の裏面Bの略全面上に形成する工程6、 最後に、スパッタ法や印刷法などの方法により、n型非晶質半導体層13aの表面上に、所定のパターンでp側電極20aおよびn側電極20bを形成する工程7、 前記工程1ないし工程7の順の工程により、太陽電池200が製造される、 太陽電池200の製造方法。」 4 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「まず、予め受光面Aにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンからなる基板10を準備する工程1」及び「そして、基板10の受光面Aの略全面上に、CVD法により3nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層からなるパッシベーション膜15aを形成し、さらにCVD法により50nm?150nmの厚みを有するシリコン窒化物の層からなる光反射防止膜15bを順次積層することにより、パッシベーション膜15aおよび光反射防止膜15bによって、光入射側構造体15を構成する工程2」は、本願発明の「半導体材料からなる基板の第1表面の少なくとも一部の領域上に第1パッシベーション層を形成する第1の工程」に相当する。 (イ)引用発明の「そして、基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなる基板10をパッシベートする機能を有するi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するキャップ層30を順次形成する工程3」及び「最後に、スパッタ法や印刷法などの方法により、n型非晶質半導体層13aの表面上に、所定のパターンでp側電極20aおよびn側電極20bを形成する工程7」は、本願発明の「前記第1の工程後、前記基板の前記第1表面と反対の第2表面の少なくとも一部の領域上に第2パッシベーション層および第3パッシベーション層を形成する第2の工程と、前記第2の工程後、前記第2表面側のみに電極を形成する第3の工程と、を備え」ることと、「前記第1の工程後、前記基板の前記第1表面と反対の第2表面の少なくとも一部の領域上に第2パッシベーション層および第3の層を形成する第2の工程と、前記第2の工程後、前記第2表面側のみに電極を形成する第3の工程と、を備え」る点で一致する。 (ウ)引用発明の「そして、基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなる基板10をパッシベートする機能を有するi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12aおよび0.5nm?5nmの厚みを有するキャップ層30を順次形成する工程3」は、本願発明の「前記第2の工程は、前記第2表面上に前記第2パッシベーション層を形成する工程と前記第2表面上の前記第2パッシベーション層の上に第1の導電型のドーパントを含む第1半導体層及び絶縁層を形成する工程」に相当する。 (エ)引用発明の「そして、キャップ層30の表面上に、所定のパターンでレジスト膜40を形成する工程4、そして、レジスト膜40から露出するi型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30をエッチング除去し、その後、レジスト膜40を除去することにより、基板10の裏面Bの第1領域B1の表面上に、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30の積層膜を形成する工程5」であって、「上記エッチングでは、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30の積層膜を、基板10の裏面Bが露出するまでエッチング除去するものであ」る工程は、本願発明の「前記第1半導体層と前記絶縁層のうちの一部をエッチングして、前記基板の裏面を露出させる工程」に相当する。 (オ)引用発明の「そして、基板10の裏面Bの表面上からキャップ層30の表面上に跨るように、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層13bおよび2nm?50nmの厚みを有するn型非晶質半導体層13aを順次形成して、i型非晶質半導体層13bおよびn型非晶質半導体層13aを、基板10の裏面Bの略全面上に形成する工程6」は、本願発明の「前記基板の裏面の露出した領域に、前記第3パッシベーション層を形成する工程と、前記第3パッシベーション層の上に前記第1の導電型と異なる第2導電型のドーパントを含む第2半導体層を形成する工程」と、「前記基板の裏面の露出した領域に、前記第3の層を形成する工程と、前記第3の層の上に前記第1の導電型と異なる第2導電型のドーパントを含む第2半導体層を形成する工程」の点で一致する。 (カ)引用発明の「太陽電池200の製造方法」は本願発明の「光電変換装置の製造方法」に相当する。 (キ)上記(ア)ないし(カ)によれば、両者は 「光電変換装置の製造方法であって、 半導体材料からなる基板の第1表面の少なくとも一部の領域上に第1パッシベーション層を形成する第1の工程と、 前記第1の工程後、前記基板の前記第1表面と反対の第2表面の少なくとも一部の領域上に第2パッシベーション層および第3の層を形成する第2の工程と、 前記第2の工程後、前記第2表面側のみに電極を形成する第3の工程と、 を備え、前記第2の工程は、 前記第2表面上に前記第2パッシベーション層を形成する工程と 前記第2表面上の前記第2パッシベーション層の上に第1の導電型のドーパントを含む第1半導体層及び絶縁層を形成する工程と、 前記第1半導体層と前記絶縁層のうちの一部をエッチングして、前記基板の裏面を露出させる工程と、 前記基板の裏面の露出した領域に、前記第3の層を形成する工程と、 前記第3の層の上に前記第1の導電型と異なる第2導電型のドーパントを含む第2半導体層を形成する工程と、 を含む光電変換装置の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・「第3の層」が、本願発明は「パッシベーション層」であるのに対して、引用発明は「CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層13b」である点(以下「相違点」という。)。 (2)判断 上記相違点について検討する。 引用発明における「基板10の受光面Aの略全面上に、CVD法により3nm?5nmの厚みを有するi型非晶質シリコン層からなるパッシベーション膜15a」は、「パッシベーション膜」であり、また、「基板10の裏面Bの略全面に、CVD法により3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンからなるi型非晶質半導体層12b、2nm?50nmの厚みを有するp型非晶質半導体層12a」も「基板10をパッシベートする機能を有」するから「パッシベーション膜」である。 また、上記「3」「(1)」「エ」には、「i型非晶質半導体層15a」は、「原料ガスとしてSiH_(4)およびH_(2)の混合ガスを用い、プラズマCVDによって」「形成した」ものであり、「i型非晶質シリコン層12b」は、「原料ガスとしてSiH_(4)、H_(2)およびB_(2)H_(6)を用い、プラズマCVD法によって」形成したものであり、そして、「i型非晶質半導体層13b」は、「原料ガスとしてSiH_(4)、H_(2)およびPH_(3)を用いて、プラズマCVD法によって」形成したものであると記載され、「i型非晶質半導体層15a」、「i型非晶質シリコン層12b」及び「i型非晶質半導体層13b」はいずれも、原料ガスとしてSiH_(4)およびH_(2)等のH_(2)を含む混合ガスを用い、プラズマCVDによって形成したものである点で水素(H_(2))を含むものである。 したがって、同様の「CVD法」を用いて「3nm?50nmの厚みを有するi型非晶質シリコンから」形成される、「基板10の裏面Bの表面上からキャップ層30の表面上に跨るように」「基板10の裏面Bの略全面上に形成」される「i型非晶質半導体層13b」が「基板10をパッシベートする機能を有」することは明らかであるから、「i型非晶質半導体層13b」も「パッシベーション膜」であるといえる。 そうすると、上記相違点は実質的な相違点ではない。 (3)小括 以上の検討によれば、引用発明は本願発明の構成をすべて備えている。 よって、本願発明は、引用発明である。 (4)請求人の主張について ア 請求人の主張 請求人は、平成29年10月23日に提出した意見書の「2.意見の内容」の2頁3?14行において、 「しかしながら、引用文献の図3及び図4には、基板10、光入射側構造体15、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12a及びキャップ層30の構成を示すものであり、審判官殿が指摘されたように(工程1)?(工程3)の順に製造されることは何ら明示されていない。同様に、引用文献の記載から、その後の(工程4)?(工程6)もこの順で行われることが明示されているとはいえない。 (工程4)及び(工程5)は図4の記載に基づくものであり、(工程6)は図5の記載に基づくものであり、説明の順序と図面の並びとが一致しているので、(工程4)?(工程6)がこの順で行われることについての審判官殿の御指摘はある程度の妥当性があると考えられる。しかしながら、(工程1)?(工程3)については、(工程4)?(工程6)の妥当性とは大きな相違があり、(工程4)?(工程6)と同じ理由によって(工程1)?(工程3)もこの順で行われることが引用文献に開示されているとは到底認めることができない。」と主張する。 ここで、「(工程1)?(工程3)」とは、「まず、基板10を準備し、(工程1)」「そして、光入射側構造体15を構成し、(工程2)」「そして、i型非晶質半導体層12b、p型非晶質半導体層12aおよびキャップ層30を順次形成し、(工程3)」(上記「3」「(2)」「ウ」参照)である。 イ 引用文献の記載 そして、上記「(工程1)?(工程3)」に関して、引用文献には[0051]?[0052](上記「3」「(1)」「ウ」参照)のとおりの記載がある。 ウ 当審の判断 すなわち、上記イの引用文献の記載によれば、上記「3」「(2)」「ウ」で検討したとおり、(工程1)?(工程3)の順に製造されることが明示されている。 よって、請求人の上記意見書の主張は、引用文献の記載に基づくものとはいえず、採用できない。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-12-08 |
結審通知日 | 2017-12-12 |
審決日 | 2017-12-25 |
出願番号 | 特願2013-507309(P2013-507309) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森江 健蔵 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 松川 直樹 |
発明の名称 | 光電変換装置及び光電変換装置の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人YKI国際特許事務所 |