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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1337573
審判番号 不服2017-7684  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-30 
確定日 2018-02-15 
事件の表示 特願2012-270264号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月26日出願公開、特開2014-113357号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月11日の出願であって、平成28年8月26日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し同年10月28日付けで手続補正がなされたが、平成29年2月23日付け(発送日:同年2月28日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年5月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、平成28年10月28日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?F5については発明を分説するため当審で付与した。)。

(平成28年10月28日付けの手続補正)
「【請求項1】
遊技の進行を管理する遊技制御手段と、
遊技の進行に合わせて装飾態様を変化させることが可能であり、装飾態様を所定の異常報知態様に変化させることで遊技機における異常を報知可能な装飾装置と、
前記装飾装置の装飾態様を制御し、前記装飾装置の装飾態様を所定の節電装飾態様とする節電状態を発生させることが可能な演出制御手段と、
遊技者が操作可能な演出用操作手段と、を備え、
前記遊技制御手段は、
所定の節電開始条件が成立した場合に、前記節電状態を発生させる起因となる所定の制御指令信号を前記演出制御手段に送信し、
前記演出制御手段は、
前記制御指令信号を受信したことに対応して前記節電状態を発生させるための制御を開始し、
前記節電状態を発生させるための制御の開始から所定期間経過した場合に、前記節電状態を発生させ、
前記節電状態において前記演出用操作手段が操作されたことを検出した場合は、直ちに前記節電状態を解除可能であり、
前記節電状態において当該遊技機に異常が発生したことを検出した場合は、該異常が解消されたことを検出するまでの間、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させるようにしたことを特徴とする遊技機。」

(本件補正)
「【請求項1】
A 遊技の進行を管理する遊技制御手段と、
B 遊技の進行に合わせて装飾態様を変化させることが可能であり、装飾態様を所定の異常報知態様に変化させることで遊技機における異常を報知可能な装飾装置と、
C 前記装飾装置の装飾態様を制御し、前記装飾装置の装飾態様を所定の節電装飾態様とする節電状態を発生させることが可能な演出制御手段と、
D 遊技者が操作可能な演出用操作手段と、を備え、
E 前記遊技制御手段は、
E1 所定の異常を検出可能に構成され、
E2 所定の節電開始条件が成立した場合に、前記節電状態を発生させる起因となる所定の制御指令信号を前記演出制御手段に送信し、
F 前記演出制御手段は、
F1 前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常を検出可能に構成され、
F2 前記制御指令信号を受信したことに対応して前記節電状態を発生させるための制御を開始し、
F3 前記節電状態を発生させるための制御の開始から所定期間経過した場合に、前記節電状態を発生させ、
F4 前記節電状態において前記演出用操作手段が操作されたことを検出した場合は、直ちに前記節電状態を解除可能であり、
F5 前記節電状態において当該遊技機に前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常が発生したことを検出した場合は、前記節電状態を一時的に解除するとともに、該異常が解消されたことを検出するまでの間、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させるようにしたことを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否
本件補正によって、補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「遊技制御手段」について、「所定の異常を検出可能に構成され」ていることを限定し、また、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「演出制御手段」について、「前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常を検出可能に構成され」ていることを限定するとともに、節電状態において当該遊技機に「前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる」異常が発生したことを検出した場合は「前記節電状態を一時的に解除する」という限定を付加したものである。
さらに、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
そして、本件補正は、明細書の段落【0132】、【0151】、【0174】及び【0175】等の記載に基づいており、新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下において検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示したとおりのものである。

(2)刊行物に記載された事項
ア.原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-235876号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0014】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態である遊技機の概略正面図、図2はその遊技機の遊技盤の概略正面図、図3はその遊技機の概略制御ブロック図、図4はその遊技機における遊技状況表示部を説明するための図、図5はその遊技機の主制御基板、演出制御基板及び各演出手段の概略ブロック図、図6はその遊技機の演出ユニットに設けられた可動演出部の概略斜視図である。ここでは、遊技機がパチンコ機である場合について説明する。また、このパチンコ機は、CRユニットに接続する機種、すなわち、いわゆるCR機であるものとする。」

「【0026】
ところで、図1に示すように、受け皿ユニット20の中央部であって上皿21の手前位置には、演出内容の切り替えを指示するための演出切替ボタン26が設けられている。この演出切替ボタン26は押圧操作だけでなく回転操作が可能に構成されており、遊技者は、かかる押圧操作及び回転操作により所定の指示を入力することができる。具体的に、遊技者は、この演出切替ボタン26を操作することにより、液晶表示装置110における演出内容を切り替えたり、その演出に登場する主人公を選択したりすることができる。また、例えば特別図柄の変動表示中あるいは大当たり当選後における大当たり遊技の実行中に、液晶表示装置110において所定の演出を発生させたりすることができる。演出切替ボタン操作検出センサ(演出切替ボタン操作検出手段)451は、演出切替ボタン26の操作内容を検出するものである。遊技者が演出切替ボタン26を操作すると、演出切替ボタン操作検出センサ451はその操作内容に対応する信号を生成して、演出制御基板600に出力する。そして、演出制御基板600は、演出切替ボタン操作検出センサ451からの信号を受け取ると、その信号に基づいて、液晶表示装置110における演出を所定の内容に切り替えるように液晶表示装置110を制御する。」

「【0050】
この角部電飾表示部90は、一対の3連LED91a,91bを点灯表示することにより、パチンコ機に異常状態が発生していることを報知する演出を行う。パチンコ機に発生する異常状態としては、例えば、不正行為が行われた状態、ガラス枠ユニット10が開放している状態、賞球の払出しが正常に行われない状態等を挙げることができる。これらの異常状態をどのように検出するかについては後述する。
【0051】
また、角部電飾表示部90は、発生した異常状態の内容をLEDの点灯色によって報知する。具体的に、不正行為が行われた状態が発生したときには、角部電飾表示部90は赤色で点灯し、ガラス枠ユニット10が開放している状態が発生したときには、角部電飾表示部90は白色で点灯し、そして、賞球の払出しが正常に行われない状態が発生したときには、角部電飾表示部90は紫色で点灯する。角部電飾表示部90は、各種の異常状態が重複して発生した場合、最も優先度の高い異常状態の内容だけを報知し、他の異常状態の内容を報知しない。本実施形態では、異常状態の優先度を次のように設定している。すなわち、不正行為が行われたという異常状態が最も優先度が高く、ガラス枠ユニット10が開放しているという異常状態が次に優先度が高く、そして、賞球の払出しが正常に行われないという異常状態が最も優先度が低い。かかる優先度は、異常状態の深刻さの程度に応じて定められている。尚、角部電飾表示部90は、上述したように、異常状態が発生した場合にその異常状態の内容を報知する演出を行うが、異常状態が発生していない場合には、枠電飾表示部70や盤面電飾表示部130と同様に、遊技に関わる通常の演出を行う。
【0052】
尚、液晶表示装置110、可動演出部120、盤面電飾表示部130、枠電飾表示部70、スピーカ部80、角部電飾表示部90はいずれも、遊技に関わる演出を行うものであり、以下では「演出手段」とも称することにする。」

「【0061】
払出制御基板320は、主制御基板500が行う制御を補助するためのものである。この払出制御基板320は、主制御基板500とは異なる基板に形成されているが、機能上は主制御基板500に属する基板である。払出制御基板320には、図7に示すように、ROM321と、RAM322と、CPU(第二制御手段)323と、入力インターフェース324と、出力インターフェース325と、コネクタ326a,326b,326cとが設けられている。ROM321には、各種のプログラムが格納されている。また、RAM322は、データを一時的に記憶する作業用のメモリである。払出制御基板320のコネクタ326aは、ハーネスを介して主制御基板500のコネクタ560aと接続するためのものであり、払出制御基板320のコネクタ326bは、ハーネスを介してガラス枠ユニット開放検出センサ421、賞球検出センサ431及び球切れ検出センサ432と接続するためのものであり、払出制御基板320のコネクタ326cは、ハーネスを介して外部端子板380のコネクタ381aと接続するためのものである。尚、外部端子板380にも、図7に示すように、コネクタ381a,381bが設けられている。外部端子板380のコネクタ381aは、ハーネスを介して払出制御基板320のコネクタ326cと接続するためのものであり、外部端子板380のコネクタ381bは、ハーネスを介してホールコンピュータのコネクタ(不図示)と接続するためのものである。
【0062】
CPU323は、払出装置310の動作を制御する払出制御処理の他に、払出エラー監視処理、ガラス枠ユニット開放監視処理、コマンド出力処理及び外部信号作成・出力処理を行う。払出制御処理は、上述したように、所定数の賞球を払い出す旨を示す賞球指示コマンドを主制御基板500から受けたときに当該賞球指示コマンドに基づいて要求された数の賞球を払い出すように払出装置310の動作を制御すると共に、所定数の貸球を払い出す旨を示す貸球指示コマンドをCRユニットから受けたときに当該貸球指示コマンドに基づいて要求された数の貸球を払い出すように払出装置310の動作を制御する処理である。
【0063】
また、払出エラー監視処理は、賞球の払出しに関する払出エラーが発生したかどうかを監視する処理である。かかる払出エラーとしては、例えば、主制御基板500からの賞球指示コマンドの内容に応じた所定数の賞球が払い出されていない賞球エラー、賞球路の所定位置において遊技球が存在しない球切れエラーがある。賞球エラーが発生したかどうかの監視は、賞球検出センサ431からの信号に基づいて行われる。賞球検出センサ431は、払出装置310により払い出された個々の賞球を検出するものである。この賞球検出センサ431からの検出信号は入力インターフェース324を介してCPU323に送られる。CPU323は、賞球検出センサ431からの検出信号に基づいて、主制御基板500からの賞球指示コマンドの内容に応じた所定数の賞球が払い出されたかどうかを監視し、払出装置310により当該所定数の賞球が払い出されなかったときに、賞球エラーが発生したと判断する。そして、その発生した払出エラーの内容をRAM322に記憶する。また、球切れエラーが発生したかどうかの監視は、球切れ検出センサ432からの信号に基づいて行われる。球切れ検出センサ432は、賞球路の所定位置に設けられ、当該位置に賞球がないことを検出するものである。この球切れ検出センサ432からの検出信号は入力インターフェース324を介してCPU323に送られる。CPU323は、球切れ検出センサ432からの検出信号を受けると、球切れエラーが発生したと判断する。そして、その発生した払出エラーの内容をRAM322に記憶する。
【0064】
ガラス枠ユニット開放監視処理は、ガラス枠ユニット10が開放状態にあるかどうかを監視する処理である。ガラス枠ユニット10が開放状態にあるかどうかの監視は、ガラス枠ユニット開放検出センサ(開放検出手段)421からの信号に基づいて行われる。ガラス枠ユニット開放検出センサ421は、ガラス枠ユニット10が開放状態であることを検出するものである。ガラス枠ユニット10が無断で開けられたときには、不正行為が行われている可能性がある。このガラス枠ユニット開放検出センサ421からの検出信号は、入力インターフェース324を介してCPU323及び出力インターフェース325に送られる。CPU323は、ガラス枠ユニット開放検出センサ421からの検出信号を受けると、ガラス枠ユニット10が開放状態にあると判断し、その旨の情報をRAM322に記憶する。」

「【0066】
ここで、本実施形態では、主制御基板500のCPU540と払出制御基板320のCPU323との間でのコマンド送信を双方向シリアル通信方式により行うことにしている。かかる双方向シリアル通信方式でコマンド送信を行うため、データ信号(コマンド)を送信するためのデータ信号線と、通信制御信号を送信するための通信制御信号線とからなるシリアル通信線を二組用い、図7に示すように、これら合計4本の通信線(データ信号線L11,L21及び通信制御信号線L12,L22)を含むハーネスにより主制御基板500のコネクタ560aと払出制御基板320のコネクタ326aとの間を接続している。図9はデータ信号線と通信制御信号線とからなるシリアル通信線を用いたシリアル通信方式を説明するための図である。送信元のCPUが作成するコマンドは、先行コマンドと後続コマンドとにより構成されている。図8に示すように、先行コマンドは当該コマンドの種別を表す識別コードを示すものであり、後続コマンドは当該コマンドの内容を示すものである。図9に示すように、送信元のCPUが通信制御信号をオン状態にして、データ信号線を用いてコマンドを送信すると、送信先のCPUはその通信制御信号がオン状態にある間、そのコマンドを受信することができる。本実施形態では、かかるシリアル通信方式により、一方の組のシリアル通信線(データ信号線L11、通信制御信号線L12)を用いて、主制御基板500のCPU540が払出制御基板320のCPU323に賞球指示コマンド、特定状態コマンドを送信し、他方の組のシリアル通信線(データ信号線L21、通信制御信号線L22)を用いて、払出制御基板320のCPU323が主制御基板500のCPU540に払出エラーコマンド、開放コマンドを送信する。」

「【0071】
次に、主制御基板500について説明する。主制御基板500は、主に、グリップユニット40の操作に基づいて行われる遊技の内容や、その遊技にて遊技球が入賞したときの賞球の払出しを制御したり、遊技の状況を管理したりするものである。かかる主制御基板500は、図5及び図7に示すように、乱数発生器510、ROM520、RAM530、遊技制御手段としてのCPU(第一制御手段)540、入力インターフェース550、コネクタ560a,560b等を備えている。ここで、主制御基板500のコネクタ560aは、ハーネスを介して払出制御基板320のコネクタ326aと接続するためのものであり、主制御基板500のコネクタ560bは、ハーネスを介してセキュリティセンサ410(電波検出センサ411、磁気検出センサ412、振動検出センサ413)と接続するためのものである。」

「【0082】
更に、CPU540は、図7に示すように、電波検出センサ411からの検出信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、高周波電波を使った不正行為が行われたと認識し、磁気検出センサ412からの検出信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、磁石等を使った不正行為が行われたと認識し、そして、振動検出センサ413からの信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、振動による不正行為が行われたと認識する。こうして、CPU540は、不正行為による異常状態の発生を認識すると、その発生した異常状態の内容をRAM530に記憶する。また、CPU540は、払出制御基板320から払出エラーコマンドを受けたときには、賞球の払出しが正常に行われない異常状態が発生したことを認識し、その発生した異常状態の内容をRAM530に記憶する。更に、CPU540は、払出制御基板320から開放コマンドを受けたときには、ガラス枠ユニット10が開放している異常状態が発生したことを認識し、その発生した異常状態の内容をRAM530に記憶する。また、CPU540は、グリップユニット40のタッチセンサ42からの信号を発射制御基板340及び払出制御基板320を介して受けたときに、遊技者がグリップユニット40への接触を開始したことを認識し、その認識した内容を接触開始情報としてRAM530に記憶する。」

「【0099】
また、CPU540は、上述した異常状態コマンド、特別図柄抽選の結果を報知するための変動表示演出の制御に必要な情報に関するコマンド以外にも、非稼働状態発生コマンド、グリップユニット接触開始コマンドを演出制御基板600に出力する。非稼働状態発生コマンドは、パチンコ機が、遊技が行われておらず遊技に関わる演出も実行されていない非稼働状態になったことを示すものである。CPU540は、自らが管理する遊技の状況に基づいて、パチンコ機が非稼働状態になったかどうかを判断する。具体的には、CPU540は、普通図柄抽選の結果、特別図柄抽選の結果、変動パターン情報、変動時間に関する情報等、遊技及び遊技に関わる演出の制御に必要な情報がRAM530に記憶されているかどうかを判断する。これらの情報がRAM530に記憶されていないと判断すると、当該パチンコ機において遊技が行われておらず、遊技に関わる演出も実行されていないと認識し、その旨を示す非稼働状態発生コマンドを作成して演出制御基板600に出力する。演出制御基板600は、この非稼働状態発生コマンドを受け取ると、客待ち演出を行うことになる。一方、グリップユニット接触開始コマンドは、遊技者がグリップユニット40への接触を開始したことを示すものである。CPU540は、RAM530に接触開始情報が記憶されていると判断すると、グリップユニット接触開始コマンドを作成して演出制御基板600に出力する。演出制御基板600は、このグリップユニット接触開始コマンドの受信を、節電演出の終了条件の一つとして利用することになる。」

「【0106】
演出制御基板600は、主に遊技の進行に伴う演出の制御を行う。この演出制御基板600は、図5及び図11に示すように、ROM610、RAM620、演出制御手段としてのCPU630、液晶制御回路640、可動体駆動回路650、ランプ駆動回路660、スピーカ駆動回路670、入力インターフェース680、複数のコネクタ690a?690f等を有する。」

「【0111】
CPU630は、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる演出の内容を決定し、その決定した内容にしたがって各演出手段110,120,130,70,80,90を制御するものである。各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる演出の種類としては、大きく分けて、遊技に関わる演出(変動表示演出及び停止表示演出)、客待ち演出、節電演出がある。ここで、遊技に関わる演出は遊技中に実行され、客待ち演出又は節電演出はパチンコ機が非稼働状態にある間に実行される。」

「【0113】
また、CPU630は、主制御基板500のCPU540から非稼働状態発生コマンドを受信したときに、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる客待ち演出についての内容を決定し、その決定した内容の客待ち演出を行うように各演出手段110,120,130,70,80,90を制御する。ここで、本実施形態では、客待ち演出の内容を遊技状態毎に設定している。客待ち演出が実行されると、例えば、液晶表示装置110は変動表示演出のデモ画像を繰り返し表示し、盤面電飾表示部130、枠電飾表示部70及び角部電飾表示部90はそれぞれ所定のパターンでの点灯表示を繰り返し行い、可動演出部120及びスピーカ部80はそれぞれ所定のデモ演出を繰り返し行う。
【0114】
更に、CPU630は、客待ち演出の実行中に遊技者による操作が行われていない状況が予め定められた時間(例えば1分)以上継続したときに、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる演出を客待ち演出から節電演出に切り替えることを決定する。本実施形態では、節電演出の内容として一つの内容を定めている。具体的に、節電演出が実行されると、CPU630は、液晶パネル111には当該節電演出の前に実行させていた客待ち演出の内容を継続して出力し続けるように制御するが、バックライト112を消灯するように制御する。このように節電演出の実行時にはバックライト112を消灯しているので、液晶パネル111は真っ暗な状態になり、人は液晶パネル111の画像の表示内容を見ることはできない。また、節電演出の実行時には、枠電飾表示部70における演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77は、所定の態様で点灯表示し、枠電飾表示部70の他のランプユニット、盤面電飾表示部130及び角部電飾表示部90はすべて消灯する。そして、可動演出部120及びスピーカ部80は演出を行わない。したがって、節電演出の実行時には、演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77だけが実質的な演出を行う。
【0115】
また、CPU630は、節電演出の実行中に、演出切替ボタン操作検出センサ451からの信号、人接近検出センサ461からの信号、主制御基板500を介してタッチセンサ42からの信号のうちいずれか一の信号を受けたときに、各演出手段に実行させる演出を節電演出から客待ち演出に切り替えることを決定する。そして、CPU630は、液晶パネル111には当該節電演出の間に出力し続けている客待ち演出の内容をそのまま継続して表示させるように液晶パネル111を制御すると共にバックライト112を点灯させるように制御し、液晶表示装置110以外の他の演出手段120,130,70,80,90については、当該客待ち演出の内容にしたがった内容の演出を行わせるように制御する。」

「【0127】
尚、CPU630は、パチンコ機が非稼働状態にある場合であっても、RAM620に記憶されている異常状態情報に基づいて現在、パチンコ機に異常状態が発生しているかどうかを判断する。異常状態が発生していると判断すると、CPU630は、角部電飾表示部90については、現在発生している異常状態のうち最も高い優先度が付与された異常状態の発生を報知するための角部電飾演出パターンデータに付された演出番号を用いることを決定する。すなわち、客待ち演出又は節電演出と、異常状態の発生についての報知演出とは独立して実行される。」

上記記載事項を総合すれば、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?f5については本願補正発明のA?F5に対応させて付与した。)。

「a グリップユニット40の操作に基づいて行われる遊技の内容や、その遊技にて遊技球が入賞したときの賞球の払出しを制御したり、遊技の状況を管理したりする主制御基板500(【0071】)と、
b 不正行為が行われた状態が発生したときには赤色で点灯し、ガラス枠ユニット10が開放している状態が発生したときには白色で点灯し、そして、賞球の払出しが正常に行われない状態が発生したときには紫色で点灯して発生した異常状態の内容をLEDの点灯色によって報知する演出を行うが、異常状態が発生していない場合には、遊技に関わる通常の演出を行う角部電飾表示部90(【0051】)と、
c 節電演出が実行されると、液晶パネル111には当該節電演出の前に実行させていた客待ち演出の内容を継続して出力し続けるように制御するが、バックライト112を消灯するように制御し、また、節電演出の実行時には、枠電飾表示部70における演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77は、所定の態様で点灯表示し、枠電飾表示部70の他のランプユニット、盤面電飾表示部130及び角部電飾表示部90はすべて消灯し、可動演出部120及びスピーカ部80は演出を行わない節電演出を実行する演出制御基板600のCPU630(【0106】、【0114】)と、
d 遊技者が押圧操作及び回転操作により所定の指示を入力することができる演出切替ボタン26(【0026】)と、
e 主制御基板500のCPU540(【0066】、【0082】、【0099)】は、
e1 電波検出センサ411からの検出信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、高周波電波を使った不正行為が行われたと認識し、磁気検出センサ412からの検出信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、磁石等を使った不正行為が行われたと認識し、そして、振動検出センサ413からの信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、振動による不正行為が行われたと認識して、不正行為による異常状態の発生を認識する(【0082】)ものであり、
e2 普通図柄抽選の結果、特別図柄抽選の結果、変動パターン情報、変動時間に関する情報等、遊技及び遊技に関わる演出の制御に必要な情報がRAM530に記憶されていないと判断すると、当該パチンコ機において遊技が行われておらず、遊技に関わる演出も実行されていないと認識し、その旨を示す非稼働状態発生コマンドを作成して演出制御基板600に出力する(【0099】)ものであり、
f 演出制御基板600のCPU630(【0106】、【0113】、【0114】、【0115】)は、
f2 非稼働状態発生コマンドを受信したときに、各演出手段110(液晶表示装置),120(可動演出部),130(盤面電飾表示部),70(枠電飾表示部),80(スピーカ部),90(角部電飾表示部)に実行させる客待ち演出についての内容を決定し、その決定した内容の客待ち演出を行うように各演出手段110,120,130,70,80,90を制御し(【0052】、【0113】)、
f3 客待ち演出の実行中に遊技者による操作が行われていない状況が予め定められた時間(例えば1分)以上継続したときに、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる演出を客待ち演出から節電演出に切り替えることを決定し、節電演出を実行する(【0114】)ものであり、
f4 節電演出の実行中に、演出切替ボタン26の操作内容を検出する演出切替ボタン操作検出センサ451からの信号を受けたときに、各演出手段に実行させる演出を節電演出から客待ち演出に切り替えることを決定し、当該客待ち演出の内容にしたがった内容の演出を行わせるように制御する(【0026】、【0115】)ものであり、
f5 角部電飾表示部90については、客待ち演出が実行されると所定のパターンでの点灯表示を繰り返し行い(【0113】)、節電演出の実行時には消灯し(【0114】)、パチンコ機が非稼働状態にある場合にパチンコ機に異常状態が発生していると判断すると、現在発生している異常状態のうち最も高い優先度が付与された異常状態の発生を報知する報知演出を実行するものであり(【0127】)
g ガラス枠ユニット10が開放している状態、賞球の払出しが正常に行われない状態の異常検出については、主制御基板500とは異なる基板に形成されているが機能上は主制御基板500に属する基板である払出制御基板320のCPU323で行われるものであり(【0050】、【0061】?【0062】)、
h 非稼働状態にある間に実行される客待ち演出又は節電演出と、異常状態の発生についての報知演出とは独立して実行される(【0111】、【0127】)
パチンコ機(【0014】)。」

イ.本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-54914号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0009】
そこで、本発明は、遊技制御を行う主制御部と、報知制御を行う副制御部とを別に備えた遊技機において、処理効率の観点から、遊技制御に必要なセンサと不正防止を目的としたセンサとを、適切に主制御部及び副制御部に接続したうえで、遊技者や係員にも分かりやすく異常を報知する遊技機を提供することを目的とする。」

「【0109】
図8は、エラー一覧の説明図である。
【0110】
本実施の形態のパチンコ機2では、11種類のエラーが、種類別に区分されて定められている。
【0111】
記号(エラーコード)A1?A4のエラーは、時間を限定してエラーを報知する時間限定報知エラーで、大入賞口不正入賞、振動検知、磁気検知及び電波検知が含まれる。また、エラーA1?A4を検出しても、変動表示ゲームは中断されず、遊技球の排出処理も中断されない。エラーA1?A4は、パチンコ機に対する不正をセンサが検出したことに起因するが、一時的に時間を限定して異常を報知すれば、不正をしようとする遊技者に対する警告の役割を果たすからである。また、エラーA1?A4は、センサによる誤検出の場合もあり、誤検出である場合にもパチンコ機の動作を停止してしまうと、遊技者と遊技店とのトラブルを引き起こすからである。これらA1?A4のエラー報知は、時間限定異常報知となる。
【0112】
エラーコードB1?B3のエラーは、遊技球の排出に関するエラーで、シュート球切れ、オーバフロー及び排出異常が含まれる。また、エラーB1?B3を検出しても、変動表示ゲームは中断されない。しかし、エラーB1?B3が発生した状態では、遊技球が正常に排出できないので、遊技球の排出処理は中断される。そして、所定の解除操作がなされた後に、エラーB1?B3は解除される。これらB1?B3のエラー報知は、賞球排出異常報知となる。また、エラー解除には所定の解除操作が必要なので、B1?B3のエラー報知は、要解除操作異常報知となる。
【0113】
エラーコードC1?C2のエラーは、遊技の進行中における球検出に関するエラーで、スイッチ異常及び大入賞口内残存球が含まれる。また、エラーC1?C2を検出すると、遊技が正常に進行しないおそれがあるので、変動表示ゲームは中断されるが、遊技の結果として遊技者に付与される遊技球の排出処理は中断しない。これらC1?C2のエラー報知は、遊技継続異常報知となる。
【0114】
エラーコードD1?D2のエラーは、枠開放に関するエラーで、内枠開放及びガラス枠開放が含まれる。また、エラーD1?D2を検出しても、すでに記憶された変動表示ゲームの実行には支障がないので、変動表示ゲームは中断されない。また、遊技球の排出も影響がないので、遊技球の排出処理も中断されない。これらD1?D2のエラー報知は、扉部材開放状態報知となる。
【0115】
なお、各エラーが発生する要因、エラーからの復帰方法、及び遊技制御装置からの通知の有無は、エラー一覧(図8)に示すとおりである。
【0116】
図9は、演出制御メイン処理のフローチャートである。
【0117】
パチンコ機2への電源が投入されると、演出制御装置110のCPU111は、各種制御パラメータに初期値を設定する初期化処理を実行する(S101)。
【0118】
その後、振動検出センサ83、磁気検出センサ46、及び電波検出センサ47から出力される信号を検出して、振動、磁気又は電波を使用した不正な遊技が行われていないかを監視する(S102)。
【0119】
このとき、不正な遊技が行われていると判定されたならばステップS108へ分岐する(S103)。
【0120】
不正な遊技が行われていないと判定されたならば、遊技制御装置100からの信号(指令信号、通知)を受信する(S104)。そして、受信した遊技制御装置からの信号が、不正入賞通知か否かを判定する(S105)。その結果、不正入賞通知を受信すると、ステップS108に進み、時間限定異常報知の実行を開始する。不正入賞は、大入賞口が開放中ではないのにカウントセンサ53又は流入監視センサ55が遊技球を検出したことに起因するが、誤検出の場合もあるからである。
【0121】
この時間限定異常報知実行開始処理は図10を参照して後述する。そして、時間限定異常報知実行開始処理の実行後、ステップS110に進む。
【0122】
一方、受信した信号が不正入賞通知でなければ、受信した信号が異常発生通知又は異常解除信号であるか否かを判定する(S106)。異常発生通知、異常解除信号は、遊技制御装置100がエラーA1、B1?B3、C1?C2、D1?D2の発生/終了を検出した場合に、遊技制御装置100から演出制御装置110に送信される。」

「【0137】
優先順位は、どのエラーが優先して報知されるかを定める。エラーの識別子は、エラーを一意に識別する情報で、エラーに付された記号及び/又はエラーの名称が用いられる。報知方法は、パチンコ機に備わる様々な報知手段のうちどの報知手段によってどのような態様の報知をするかを定める。第1の実施の形態では、報知手段として画像表示装置34、スピーカ29、汎用報知ランプ44が用いられる。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(f5)は、本願補正発明のA?F5及び引用発明のa?f5に対応させている。

(a)引用発明の「a グリップユニット40の操作に基づいて行われる遊技の内容や、その遊技にて遊技球が入賞したときの賞球の払出しを制御したり、遊技の状況を管理したりする主制御基板500」は、本願補正発明の「A 遊技の進行を管理する遊技制御手段」に相当する。

(b)本願補正発明の「B 遊技の進行に合わせて装飾態様を変化させることが可能であり、装飾態様を所定の異常報知態様に変化させることで遊技機における異常を報知可能な装飾装置」は、本願明細書の段落【0163】の「装飾装置(枠装飾装置18、上スピーカ19a、下スピーカ19b、盤装飾装置42、盤演出装置44、枠演出装置45)」及び段落【0167】の「装飾装置18,19a,19b,41,42,44,45の装飾態様を当該遊技機10に異常が発生していることを報知する異常報知態様に変化させる」との記載を参酌すれば、枠装飾装置18や盤装飾装置42のようなランプ等による電飾表示を行うものも含まれるものと解される。
したがって、引用発明の「b 不正行為が行われた状態が発生したときには赤色で点灯し、ガラス枠ユニット10が開放している状態が発生したときには白色で点灯し、そして、賞球の払出しが正常に行われない状態が発生したときには紫色で点灯して発生した異常状態の内容をLEDの点灯色によって報知する演出を行うが、異常状態が発生していない場合には、遊技に関わる通常の演出を行う角部電飾表示部90」は、本願補正発明の「B 遊技の進行に合わせて装飾態様を変化させることが可能であり、装飾態様を所定の異常報知態様に変化させることで遊技機における異常を報知可能な装飾装置」に相当する。

(c)引用発明のcの「節電演出の実行時には」「角部電飾表示部90は」「消灯」する「節電演出を実行する演出制御基板600のCPU630」は、本願補正発明の「C 前記装飾装置の装飾態様を制御し、前記装飾装置の装飾態様を所定の節電装飾態様とする節電状態を発生させることが可能な演出制御手段」に相当する。

(d)引用発明の「d 遊技者が押圧操作及び回転操作により所定の指示を入力することができる演出切替ボタン26」は、本願補正発明の「D 遊技者が操作可能な演出用操作手段」に相当する。

(e、e1)引用発明の「e 主制御基板500のCPU540」が「e1 電波検出センサ411からの検出信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、高周波電波を使った不正行為が行われたと認識し、磁気検出センサ412からの検出信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、磁石等を使った不正行為が行われたと認識し、そして、振動検出センサ413からの信号を入力インターフェース550を介して受けたときに、振動による不正行為が行われたと認識して、不正行為による異常状態の発生を認識する」ことは、本願補正発明の「E 前記遊技制御手段」が「E1 所定の異常を検出可能に構成され」ることに相当する。

(e、e2)引用発明において「f 演出制御基板600のCPU630」が「f2 非稼働状態発生コマンドを受信したときに、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる客待ち演出についての内容を決定し、その決定した内容の客待ち演出を行うように各演出手段110,120,130,70,80,90を制御し、客待ち演出の実行中に遊技者による操作が行われていない状況が予め定められた時間(例えば1分)以上継続したときに、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる演出を客待ち演出から節電演出に切り替えることを決定し、節電演出を実行する」のであるから、引用発明の「非稼働状態発生コマンド」は、本願補正発明の「前記節電状態を発生させる起因となる所定の制御指令信号」に相当するといえ、また、引用発明の「e2 普通図柄抽選の結果、特別図柄抽選の結果、変動パターン情報、変動時間に関する情報等、遊技及び遊技に関わる演出の制御に必要な情報がRAM530に記憶されていない」ことは、本願補正発明の「E2 所定の節電開始条件が成立した場合」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「e 主制御基板500のCPU540」が「e2 普通図柄抽選の結果、特別図柄抽選の結果、変動パターン情報、変動時間に関する情報等、遊技及び遊技に関わる演出の制御に必要な情報がRAM530に記憶されていないと判断すると、当該パチンコ機において遊技が行われておらず、遊技に関わる演出も実行されていないと認識し、その旨を示す非稼働状態発生コマンドを作成して演出制御基板600に出力する【0099】」ことは、本願補正発明の「E 前記遊技制御手段」が「E2 所定の節電開始条件が成立した場合に、前記節電状態を発生させる起因となる所定の制御指令信号を前記演出制御手段に送信」することに相当する。

(f、f2、f3)引用発明において「f 演出制御基板600のCPU630」が「f2 非稼働状態発生コマンドを受信したときに、各演出手段110(液晶表示装置),120(可動演出部),130(盤面電飾表示部),70(枠電飾表示部),80(スピーカ部),90(角部電飾表示部)に実行させる客待ち演出についての内容を決定し、その決定した内容の客待ち演出を行うように各演出手段110,120,130,70,80,90を制御し、f3 客待ち演出の実行中に遊技者による操作が行われていない状況が予め定められた時間(例えば1分)以上継続したときに、各演出手段110,120,130,70,80,90に実行させる演出を客待ち演出から節電演出に切り替えることを決定し、節電演出を実行する」ことは、本願補正発明の「F 前記演出制御手段」が「F2 前記制御指令信号を受信したことに対応して前記節電状態を発生させるための制御を開始し、F3 前記節電状態を発生させるための制御の開始から所定期間経過した場合に、前記節電状態を発生させ」ることに相当する。

(f、f4)引用発明において「f 演出制御基板600のCPU630」が「f4 節電演出の実行中に、演出切替ボタン操作検出センサ451からの信号を受けたときに、各演出手段に実行させる演出を節電演出から客待ち演出に切り替えることを決定し、当該客待ち演出の内容にしたがった内容の演出を行わせるように制御する」ことは、本願補正発明の「F 前記演出制御手段」が「F4 前記節電状態において前記演出用操作手段が操作されたことを検出した場合は、直ちに前記節電状態を解除可能であ」ることに相当する。

(f、f5)引用発明において「f 演出制御基板600のCPU630」が「f5 角部電飾表示部90については、客待ち演出が実行されると所定のパターンでの点灯表示を繰り返し行い、節電演出の実行時には消灯し、パチンコ機が非稼働状態にある場合にパチンコ機に異常状態が発生していると判断すると、現在発生している異常状態のうち最も高い優先度が付与された異常状態の発生を報知する報知演出を実行する」「パチンコ機」と、本願補正発明の「F 前記演出制御手段」が「F5 前記節電状態において当該遊技機に前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常が発生したことを検出した場合は、前記節電状態を一時的に解除するとともに、該異常が解消されたことを検出するまでの間、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させるようにした」「遊技機」とは、「F 前記演出制御手段」が「F5’前記節電状態において当該遊技機に異常が発生したことを検出した場合は、前記節電状態を解除するとともに、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させるようにした遊技機」の点で共通する。

そうすると、両者は、
「A 遊技の進行を管理する遊技制御手段と、
B 遊技の進行に合わせて装飾態様を変化させることが可能であり、装飾態様を所定の異常報知態様に変化させることで遊技機における異常を報知可能な装飾装置と、
C 前記装飾装置の装飾態様を制御し、前記装飾装置の装飾態様を所定の節電装飾態様とする節電状態を発生させることが可能な演出制御手段と、
D 遊技者が操作可能な演出用操作手段と、を備え、
E 前記遊技制御手段は、
E1 所定の異常を検出可能に構成され、
E2 所定の節電開始条件が成立した場合に、前記節電状態を発生させる起因となる所定の制御指令信号を前記演出制御手段に送信し、
F 前記演出制御手段は、
F2 前記制御指令信号を受信したことに対応して前記節電状態を発生させるための制御を開始し、
F3 前記節電状態を発生させるための制御の開始から所定期間経過した場合に、前記節電状態を発生させ、
F4 前記節電状態において前記演出用操作手段が操作されたことを検出した場合は、直ちに前記節電状態を解除可能であり、
F5’前記節電状態において当該遊技機に異常が発生したことを検出した場合は、前記節電状態を解除するとともに、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させるようにした遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「F 前記演出制御手段」について、本願補正発明は「F1 前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常を検出可能に構成され」ているのに対し、引用発明はそのようなものではない点。

(相違点2)
「F 前記演出制御手段」が「F5’前記節電状態において当該遊技機に前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常が発生したことを検出した場合は、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させる」点について、本願補正発明は「当該遊技機に前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常が発生したことを検出した場合」に変化させるのに対し、引用発明ではそのようなものではない点。

(相違点3)
「F 前記演出制御手段」が「F5’前記節電状態において当該遊技機に異常が発生したことを検出した場合は、前記節電状態を解除するとともに、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させる」期間について、本願補正発明は「一時的」で「該異常が解消されたことを検出するまでの間」であるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
(相違点1及び2について)
刊行物2には、「遊技制御を行う主制御部と、報知制御を行う副制御部とを別に備えた遊技機において、処理効率の観点から、遊技制御に必要なセンサと不正防止を目的としたセンサとを、適切に主制御部及び副制御部に接続したうえで、遊技者や係員にも分かりやすく異常を報知する遊技機を提供することを目的として(【0009】)、
遊技制御装置100が検出するエラーA1(大入賞口不正入賞)、B1?B3(シュート球切れ、オーバフロー及び排出異常)、C1?C2(スイッチ異常及び大入賞口内残存球)、D1?D2(内枠開放及びガラス枠開放)とは異なるエラーA2?A4(振動検知、磁気検知及び電波検知)を演出制御装置110が検出して(【0111】?【0114】、【0117】?【0118】、【0122】)、
エラーの報知手段として画像表示装置34、スピーカ29、汎用報知ランプ44が用いられる(【0137】)」点(以下、「刊行物2記載事項」という。)が記載されており、演出制御装置が、遊技制御装置が検出する異常とは異なる異常を検出することが開示されているといえ、これは、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成に相当するといえる。

そして、引用発明は「e 主制御基板500のCPU540」が「e1 …不正行為による異常状態の発生を認識」し、「g ガラス枠ユニット10が開放している状態、賞球の払出しが正常に行われない状態の異常検出については、主制御基板500とは異なる基板に形成されているが機能上は主制御基板500に属する基板である払出制御基板320のCPU323で行われる」ものであるが、異常状態の検出処理を主制御基板、払出制御基板及び演出制御基板等の制御基板のいずれに振り分けるかは、制御基板の負荷や処理効率等の観点から当業者が適宜選択し得るものであるから、その振り分けの具体化手段として、刊行物2記載事項を適用して、引用発明の演出制御基板600のCPU630において不正行為による異常の発生を認識し、ガラス枠ユニット10が開放している状態、賞球の払出しが正常に行われない状態の異常検出を主制御基板500で認識するようにして、相違点1及び2に係る本願発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

(相違点3について)
引用発明は「c 節電演出が実行されると、液晶パネル111には当該節電演出の前に実行させていた客待ち演出の内容を継続して出力し続けるように制御するが、バックライト112を消灯するように制御し、また、節電演出の実行時には、枠電飾表示部70における演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77は、所定の態様で点灯表示し、枠電飾表示部70の他のランプユニット、盤面電飾表示部130及び角部電飾表示部90はすべて消灯し、可動演出部120及びスピーカ部80は演出を行わない節電演出を実行する」のであって、「f5 角部電飾表示部90については」「節電演出の実行時には消灯し、パチンコ機が非稼働状態にある場合にパチンコ機に異常状態が発生していると判断すると、現在発生している異常状態のうち最も高い優先度が付与された異常状態の発生を報知する報知演出を実行するものであり」、「h 非稼働状態にある間に実行される」「節電演出と、異常状態の発生についての報知演出とは独立して実行される」のであるから、したがって、節電演出中に異常状態が発生した場合には、角部電飾表示部90は異常状態の発生を報知する報知演出を実行するが、その他の節電演出(バックライト112の消灯、枠電飾表示部70における演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77の所定の態様で点灯表示、枠電飾表示部70の他のランプユニット、盤面電飾表示部130の消灯、可動演出部120及びスピーカ部80の演出の非実行)は継続していると理解でき、異常が解消した後に角部電飾表示部90を他の演出装置の節電演出と整合させるために、異常状態が解消したことを検出して角部電飾表示部90を節電演出に戻すようにして、相違点3に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

また、本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の第3?5頁において次のような主張をしている。
「補正後の本願請求項1に係る発明(以下、本願発明と称する)は、前記節電状態において当該遊技機に前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常が発生したことを検出した場合は、前記節電状態を一時的に解除するとともに、該異常が解消されたことを検出するまでの間、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させるようにしたことを主な特徴とするものです。
係る特徴により、本願発明は、演出制御手段において、遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常を検出した場合であっても、節電状態を一時的に解除するとともに、異常を報知するので、遊技制御手段だけで異常の監視を行う遊技機に比べ、より確実に異常の発生を報知することができます。
また、演出制御手段が、異常発生の検出や節電状態の解除等の制御を遊技制御手段から独立して実行するので、これらの動作を演出制御手段に実行させるための処理を遊技制御手段で実行する必要がなくなり、遊技制御手段に過度の負担がかかってしまうのを防ぐことができます。
・・・引用文献1には、演出制御基板(主制御基板と異なる基板)が、主制御基板が検出する異常とは異なる異常を検出することや、演出制御基板が自ら行った異常検出に基づいて節電状態を解除したり装飾装置を異常報知態様に変化させたりすることについての記載はありません。また、引用文献1には、そのようにすることの示唆も見当たりません。
・・・
また、引用文献1に記載の発明は、上述しましたように、払出制御基板が実質的に主制御基板の一部となっています。このため、引用文献1に記載の発明に、引用文献3に記載された内容を組み合わせたとしても、本願発明の、遊技の進行を制御する手段と、演出を制御する手段とで、それぞれ分担して異なる異常を監視するという思想には至りません。
よって、引用文献1?3に基づいて補正後の本願請求項1に係る発明に想到することは、当業者であっても容易ではないと考えます。」

しかしながら、上記(4)の(相違点1及び2について)で検討したように、刊行物2には、演出制御装置が、遊技制御装置が検出する異常とは異なる異常を検出することが開示されているのであり、この刊行物2記載事項を引用発明に適用して、引用発明の演出制御基板600のCPU630において不正行為による異常の発生を認識し、ガラス枠ユニット10が開放している状態、賞球の払出しが正常に行われない状態の異常検出を主制御基板500で認識するように構成することは当業者が容易になし得るものであり、また、上記(4)の(相違点3について)で検討したように、節電状態で発生した異常が解消したことを検出した後に節電演出に戻ることも当業者が容易になし得るものであるから、請求人の主張は採用できない。

(6)小括
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成28年10月28日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

1.刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記第2の3.(2)に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、本願補正発明の発明特定事項から、「遊技制御手段」について、「所定の異常を検出可能に構成され」ているとの限定を省き、「演出制御手段」について、「前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる異常を検出可能に構成され」ているとの限定を省き、節電状態において当該遊技機に「前記遊技制御手段が検出する異常とは異なる」異常が発生したことを検出した場合は「前記節電状態を一時的に解除する」との限定を省いたものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は、上記第2の3.(3)で検討した相違点1及び2に係る構成を有さないから、本願発明と引用発明とは以下の点においてのみ相違する。

(相違点3’)
「F 前記演出制御手段」が「F5’前記節電状態において当該遊技機に異常状態が発生したことを検出した場合は、前記装飾装置の装飾態様を前記節電装飾態様と異なる前記異常報知態様に変化させる」点について、本願発明は「該異常が解消されたことを検出するまでの間」変化させるのに対し、引用発明はそのように特定されていない点。

(相違点3’について)
引用発明は「c 節電演出が実行されると、液晶パネル111には当該節電演出の前に実行させていた客待ち演出の内容を継続して出力し続けるように制御するが、バックライト112を消灯するように制御し、また、節電演出の実行時には、枠電飾表示部70における演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77は、所定の態様で点灯表示し、枠電飾表示部70の他のランプユニット、盤面電飾表示部130及び角部電飾表示部90はすべて消灯し、可動演出部120及びスピーカ部80は演出を行わない節電演出を実行する」のであって、「f5 角部電飾表示部90については」「節電演出の実行時には消灯し、パチンコ機が非稼働状態にある場合にパチンコ機に異常状態が発生していると判断すると、現在発生している異常状態のうち最も高い優先度が付与された異常状態の発生を報知する報知演出を実行するものであり」、「h 非稼働状態にある間に実行される」「節電演出と、異常状態の発生についての報知演出とは独立して実行される」のであるから、したがって、節電演出中に異常状態が発生した場合には、角部電飾表示部90は異常状態の発生を報知する報知演出を実行するが、その他の節電演出(バックライト112の消灯、枠電飾表示部70における演出切替ボタン用ランプユニット75、左上皿用ランプユニット76及び右上皿用ランプユニット77の所定の態様で点灯表示、枠電飾表示部70の他のランプユニット、盤面電飾表示部130の消灯、可動演出部120及びスピーカ部80の演出の非実行)は継続していると理解でき、異常が解消した後に角部電飾表示部90を他の演出装置の節電演出と整合させるために、異常状態が解消したことを検出して角部電飾表示部90を節電演出に戻すようにして、相違点3’に係る本願発明の構成に想到することは当業者が容易になし得るものである。

また、本願発明の奏する効果は、引用発明に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものではない。

したがって、本願発明は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-05 
結審通知日 2017-12-12 
審決日 2017-12-25 
出願番号 特願2012-270264(P2012-270264)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 祐一  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 櫻井 茂樹
藤田 年彦
発明の名称 遊技機  
代理人 荒船 良男  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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