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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1337636
審判番号 不服2017-2334  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-17 
確定日 2018-02-22 
事件の表示 特願2014-262301号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年7月7日出願公開、特開2016-120095号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯の概要
本願は、平成26年12月25日の出願であって、平成27年11月17日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年1月21日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月26日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年7月25日に意見書が提出されたところ、同年11月18日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月22日)、それに対し、平成29年2月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

そして、当審にて同年8月25日付けで拒絶理由を通知したところ、同年10月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成29年10月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「A 複数種類の図柄を変動表示するとともに、遊技の結果としての図柄組合せを停止表示する可変表示手段と、
B 遊技者の操作を受付けて遊技を開始させる遊技開始手段と、
C 遊技が開始された場合に、第1当選エリアと第2当選エリアとを含む複数種類の当選エリアの何れかを抽選により決定する内部抽選手段と、
D 前記図柄を停止させる場合に遊技者により操作される停止操作手段と、
E 前記可変表示手段に停止表示された前記図柄組合せを判定する入賞判定手段と、
F 前記可変表示手段の各図柄を遊技が開始された場合に変動表示し、前記第1当選エリアが当選した遊技において、前記停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合、特定図柄組合せを停止可能であるとともに、前記第2当選エリアが当選した遊技において、停止操作の態様によらず前記特定図柄組合せを停止可能である図柄変動制御手段と、
G 特定遊技状態を含む各遊技状態に移行可能な遊技状態移行手段と、
H 前記特定遊技状態において、前記第1当選エリアが当選した場合および前記第2当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定する特典付与決定手段と、
I 前記特定遊技状態では、前記第1当選エリアが当選した遊技において、前記正解操作態様を特殊報知態様で報知する場合と、前記正解操作態様を通常報知態様で報知する場合とがある報知手段とを具備し、
J 前記特定遊技状態では、前記通常報知態様で前記正解操作態様が報知される場合より、前記特殊報知態様で前記正解操作態様が報知される場合に前記特典が付与され易く、
K 前記特定遊技状態において、前記第2当選エリアが当選した遊技では、前記停止操作手段の操作態様が報知されない遊技機。」(A?Kは、当審にて分説して付与した。)

3 刊行物に記載された発明
当審による拒絶理由において刊行物として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-6000号公報には、図面と共に次の事項が記載されていると認められる。
・記載事項
ア 「【請求項1】
複数種類の図柄を可変表示する複数のリールと、
前記複数のリールを回転開始させるためのリール回転開始操作及び前記複数のリールを回転停止させるためのリール回転停止操作を受け付ける操作手段と、
所定の役決定開始条件が満足されたことを契機として役決定を行う役決定手段と、
前記操作手段が受け付けた前記リール回転開始操作及び前記リール回転停止操作と前記役決定手段による前記役決定の結果とに基づき前記複数のリールの駆動を制御するリール制御手段と、
所定の遊技状態変更条件が満足されたことを契機として、複数の遊技状態の間で遊技状態を移行させる遊技状態制御手段と、
前記複数の遊技状態のうちの所定の遊技状態の期間内において、前記役決定手段により所定の役決定結果が得られた場合に、該所定の役決定結果に対応した特定役の成否に関わるリール回転停止操作手順を報知するアシスト演出を行うアシスト演出手段と、
前記アシスト演出手段が所定のリール回転停止操作手順を報知するアシスト演出を行う場合に、該アシスト演出の少なくとも一部を構成する演出態様として、複数の演出態様の中から1つの演出態様を選択するための演出態様選択を行う演出態様選択手段と、
前記演出態様選択手段により前記複数の演出態様の中から所定の演出態様が選択された場合に、遊技者への特典付与の決定を行う特典付与決定手段と、を備えたことを特徴とするスロットマシン。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の図柄を変動表示する複数のリールを備え、リール停止時に表示された図柄の組合せにより入賞の有無が決定される遊技を行うスロットマシンに関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、リール停止操作手順を報知するアシスト演出の態様に対する遊技者の関心を喚起し、アシスト演出が行われる期間の遊技性を高めることが可能なスロットマシンを提供することを目的とする。」

ウ 「【0043】
<リール>
各リール3a,3b,3cはそれぞれステッピングモータ35a,35b,35c(図2参照)の駆動により回転するように構成されている。また、各リール3a,3b,3cは透光性を有する部材により構成されており、その外周面には、複数種類の図柄(図3参照)が表示された、透光性を有するリールテープが貼り付けられている。また、各リール3a,3b,3cの内面側には、バックランプ38a,38b,38c(図2参照)が配設されており、このバックランプ38a,38b,38cを点灯させることにより、各リール3a,3b,3cの図柄を内面側から照明するように構成されている。
・・・
【0046】
次に、遊技者がスタートレバー25を操作すると、各リール3a,3b,3cが回転を開始し、リール3a,3b,3cの外周表面に表示された複数種類の図柄が表示窓W内を上下に(通常、上から下に)移動表示される。そして、リール3a,3b,3cの回転が所定の速度に達すると各ストップスイッチ26a,26b,26cが有効化され、遊技者が各ストップスイッチ26a,26b,26cを操作すると、対応するリール3a,3b,3cの回転がそれぞれ停止する。
【0047】
ここで、有効とされた入賞ライン29a,29b,29c,29d,29e上に停止表示された図柄の組合せが予め定めた入賞態様(遊技メダルを獲得することができる役の態様)となっている場合には、各入賞態様に対応した枚数の遊技メダルがホッパー50により払い出されるか、またはクレジットとして加算される。」

エ 「【0057】
上記主制御手段100は、役決定手段101、役決定情報記憶手段102、リール制御手段105、遊技状態制御手段106、及び情報送信手段107を備えている。なお、主制御手段100における上述の各手段は、図2に示す主制御基板60上に配されたメインCPU61、ROM62、RAM63、電子回路等のハードウエア及びROM62等に格納された制御プログラム等のソフトウエアにより構成されるものを機能的に表したものである。
【0058】
上記役決定手段101は、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、予め設定された役(ハズレを含む)の中から1つまたは複数の役を選択する役決定を行うように構成されている。なお、この役決定は、図2に示す乱数発生器66及びサンプリング回路67を用いた乱数抽選により行われる。具体的には、乱数発生器66により生成された乱数列の中から、サンプリング回路67によって1つの乱数(数字)を取得した後、その取得乱数が、役抽選テーブル(図8?図11参照)に設定された複数の数値範囲の中のどの数値範囲に属するのかを判定し、取得乱数が属する数値範囲に対応した役を当選役として決定するように構成されている。」

オ 「【0070】
<遊技状態の設定>
上述したように遊技状態制御手段105は、非RT遊技状態、BB遊技状態及びRT遊技状態の3つの遊技状態(図6参照。なお、図6では「遊技状態」を省略して表記している)のうちの何れかの遊技状態に設定するように構成されている。
【0071】
非RT遊技状態は、スロットマシン1において標準となる通常の遊技状態であり、後述する再遊技役の当選確率が基準値(例えば、1/7)に設定されている。
【0072】
RT遊技状態は、非RT遊技状態中において、条件Pが満足されたことを契機として設定される遊技状態であり、後述する再遊技役の当選確率が非RT遊技状態中よりも高い値(例えば、1/1.5)に設定されている。また、このRT遊技状態中の期間内では、演出実行制御手段111によるアシスト演出(押し順ナビ演出)を実行することが許容されている。ここで、条件Pとは、各リール3a,3b,3cの停止表示図柄の有効ライン上での組合せが、「ベル・赤チェリー・リプレイ」、「ベル・菊・リプレイ」または「ベル・バー・リプレイ」である場合とされる。
・・・
【0080】
小役1は、リール3a(左リール)において、「赤チェリー」の図柄が有効ライン上に停止表示されさえすれば、リール3a,3bにおいて停止表示される図柄が何であっても成立する役である(図7中の「赤チェリー・-・-」の「-」は任意の図柄であることを示している)。また、小役2は、その対応図柄が「スイカ・スイカ・スイカ」とされた役であり、小役3は、その対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた役である。
・・・
【0082】
また、小役4は、3組の図柄パターン「ベル・赤チェリー・ベル」、「ベル・バー・ベル」、「ベル・菊・ベル」が何れも対応図柄とされた役である。さらに、小役3?小役12は、各々が単独で当選するようには設定されておらず、非RT遊技状態中またはRT遊技状態中において、小役3?小役8が重複当選するという役決定結果Fが得られる場合と、小役3?小役7及び小役9が重複当選するという役決定結果Gが得られる場合と、小役3?小役7及び小役10が重複当選するという役決定結果Hが得られる場合と、小役3?小役7及び小役11が重複当選するという役決定結果Iが得られた場合と、小役3?小役7及び小役12が重複当選するという役決定結果Jが得られる場合との5つの場合が設定されている(図8?図11参照)。
・・・
【0101】
なお、上記非RT中持越し遊技期間において、図9に示す抽選テーブルを用いる役決定により、D?M,Z1の何れかの役決定結果が得られた場合の当選フラグ情報の記憶処理は、図8に示す抽選テーブルを用いる役決定により同じD?M,Z1の何れかの役決定結果が得られた場合と同様である。一方、役決定結果Z2,Z3またはZ4が得られた場合には、役決定結果Z1が得られた場合と同様、ハズレであるとして、役決定情報記憶手段102には何ら情報が記憶されない。また、上記RT中非持越し遊技期間において、図10に示す抽選テーブルを用いる役決定により、A?Mの何れかの役決定結果が得られた場合の当選フラグ情報の記憶処理は、図8に示す抽選テーブルを用いる役決定により同じA?Mの何れかの役決定結果が得られた場合と同様である。一方、役決定結果Z5が得られた場合には、役決定結果Z1が得られた場合と同様、ハズレであるとして、役決定情報記憶手段102には何ら情報が記憶されない。また、上記RT中非持越し遊技期間において、図11に示す抽選テーブルを用いる役決定により、D?M,Z5の何れかの役決定結果が得られた場合の当選フラグ情報の記憶処理は、図10に示す抽選テーブルを用いる役決定により同じD?M,Z5の何れかの役決定結果が得られた場合と同様であり、役決定結果Z2,Z3またはZ4が得られた場合の処理は、図9に示す抽選テーブルを用いる役決定により同じ役決定結果Z2,Z3またはZ4が得られた場合と同様である。」

カ 「【0117】
<演出態様選択>
上述したアシスト演出において、RT遊技状態中の役決定により役決定結果F(図13の「押し順1」に対応)が得られた場合に、正解第1押し順である「中」(ストップスイッチ26bを操作すること)を、通常態様により報知するのか、上記第1の特別態様により報知するのかは、次述する第1演出態様抽選により決定される。
【0118】
この第1演出態様抽選は、RT遊技状態中の役決定により役決定結果Fが得られた場合に、演出態様選択手段113(図4参照)により行われるものであり、図19に示すように、「当り」及び「ハズレ」の2つの項目の中から一方が抽選により決定され、「当り」が決定された場合には第1の特別態様が正解第1押し順の報知態様として選択され、「ハズレ」が決定された場合には通常態様が正解第1押し順の報知態様として選択されるようになっている。また、「当り」が当選する確率は、RT遊技状態に移行された後、「当り」が一旦当選するまでは1/100と「ハズレ」の確率99/100よりも低く設定されるが、「当り」が一旦当選した後は、所定の継続条件(本実施形態では、「当り」が一旦当選した後に、RT遊技状態中で行われる遊技の回数が所定回数(例えば、10回)以下であることとする)が満足されている遊技期間(以下「第1の高確率期間」と称する)においては、9/10と「ハズレ」の確率1/10よりも高く設定されており、これにより、第1の高確率期間においては、第1の特別態様によるアシスト演出が連続的に行われる確率が高くなるようになっている。なお、第1の高確率期間が終了した後は、「当り」が一旦当選するまでの確率設定に戻るが、第1の高確率期間が終了した時点において、第1の高確率期間が継続するか否かを決定する抽選を行うようにしてもよい。」

キ 「【0124】
<基本制御処理>
主制御手段100により行われる基本制御処理では、図22に示すように、RAM等における未使用記憶領域等の初期化(ステップS1)を行った後、役決定結果情報更新処理を行う(ステップS2)。この役決定結果情報更新処理では、図23に示すように、まず、役決定情報記憶手段102の小役等決定情報記憶領域1022の情報をクリア(消去)
する(ステップS21)。ここで、小役等決定情報記憶領域1022の情報をクリアするとは、小役等決定情報記憶領域1022に当選フラグ情報が記憶されていない状態にする(当選フラグをOFFにする)ことを意味する。この情報のクリア処理により、小役等決定情報記憶領域1022に何らかの当選フラグ情報が記憶されている場合(何らかの当選フラグがONの場合)にはその当選フラグ情報がクリアされ(その当選フラグがOFFとされ)、当選フラグ情報が何ら記憶されていない場合(何れの当選フラグもOFFの場合)には、その状態が継続されることとなる。このことは、以下の特別役決定情報記憶領域1021の情報をクリアする場合についても同じである。
・・・
【0131】
また、押し順選択小役が当選役として決定されるF?Jの何れかの役決定結果が得られた場合には、その役決定結果に対応した正解押し順(図13参照)の順番でストップスイッチ26a,26b,26cが操作されたか否かによってリール制御を変更する押し順対応のリール制御が設定される。この押し順対応のリール制御は、ストップスイッチ26a,26b,26cが、役決定結果に対応した正解押し順の順番で操作された場合には、小役3の対応図柄を有効ライン上に停止表示させる押し順正解時のリール制御を行い、正解押し順の順番で操作されなかったときには、小役4の対応図柄及び小役5の対応図柄をそれぞれ有効ライン上に停止表示させる押し順不正解時のリール制御を行うように設定されている。
【0132】
リール停止制御を設定した後、図22に示すように、各リール3a,3b,3cを回転開始させ(ステップS7)、全リール3a,3b,3cが予め設定された一定の速度で回転するまでその状態で待機し(ステップS8)、定速回転となった場合には、上記ステップS6において設定されたリール停止制御を実行する(ステップS9)。
・・・
【0136】
リール停止制御を実行した後、図22に示すように、停止表示図柄の認識を行い(ステップS10)、遊技メダルの払出しが有る(小役が成立している)か否かを判定し(ステップS11)、払出しが有る場合には、成立している小役に応じて遊技メダルを払い出した(ステップS12)後、遊技状態の設定処理(ステップS13)に進む。一方、払出しが無い場合には、上記ステップS12は実行せずに、遊技状態の設定処理(ステップS13)に進む。」

ク 「【0141】
<アシスト演出制御処理>
副制御手段110により実行されるアシスト演出制御処理は、非RT遊技状態からRT遊技状態に移行されたことにより開始され、図28に示すように、まず、アシスト可能回数を所定の回数(例えば30回)に設定する(ステップT1)。次に、役決定結果の更新情報を受信するまでその状態で待機し(ステップT2)、役決定結果の更新情報を受信した場合には、アシスト可能回数の残数がゼロであるかないかを判定する(ステップT3)。ここで、アシスト可能回数の残数がゼロでない場合には、役決定結果F?Jの何れかの当選フラグ情報が有る(当選フラグON)か、無い(当選フラグOFF)かを判定し(ステップT4)、役決定結果F?Jの何れかの当選フラグがONの場合には、アシスト演出実行処理(ステップT5)を行い、終了後にステップT6に進む。一方、役決定結果F?Jの何れの当選フラグもOFFの場合には、アシスト演出実行処理(ステップT5)を行わず、ステップT6に進む。
・・・
【0143】
上記ステップT5のアシスト演出実行処理では、図29に示すように、まず、役決定結果F(図13の「押し順1」に対応)の当選フラグがONであるか否(OFF)かを判定し(ステップT51)、ONである場合には、上述の第1演出態様抽選(図19参照)を行う(ステップT52)。次に、第1演出態様抽選の結果が「当り」であるか否(「ハズレ」)かを判定し(ステップT53)、「当り」である場合には、上述のアシスト可能回数上乗せ抽選(図21参照)を行う(ステップT54)。次いで、このアシスト可能回数上乗せ抽選で決定されたアシスト上乗せ回数をアシスト可能回数の残数に加算し(ステップT55)、上述の第1の特別態様による正解第1押し順の報知を行う(図17参照)。
【0144】
一方、上記ステップT51において、役決定結果F(図13の「押し順1」に対応)の当選フラグがOFFであると判定された場合と、上記ステップT53の第1演出態様抽選の結果が「ハズレ」であった場合には、上述の通常態様による正解第1押し順の報知(図15参照)を行う。なお、ここでの通常態様による正解第1押し順の報知は、役決定結果Fの当選フラグがONの場合には「中」、役決定結果G(図13の「押し順2」に対応)の当選フラグまたは役決定結果I(図13の「押し順4」に対応)の当選フラグがONの場合には「左」、役決定結果H(図13の「押し順3」に対応)の当選フラグまたは役決定結果J(図13の「押し順5」に対応)の当選フラグがONの場合には「右」に対応するリール操作手順を報知するものである。」

ケ 「【0153】
また、上述の実施形態では、アシスト演出の態様を選択する抽選(第1演出態様抽選または第2演出態様抽選)において、特別態様(第1の特別態様、第2の特別態様または第2の特別態様+第3の特別態様)により正解押し順の報知を行うことが決定された場合には、特典(アシスト可能回数の上乗せ)が付与され、通常態様により正解押し順の報知を行うことが決定された場合には、特典が付与されないようになっているが、通常態様により正解押し順の報知を行うことが決定された場合にも特典が付与される機会が設定されるようにしてもよい。また、この場合には、特別態様による正解押し順の報知が決定された場合よりも、通常態様による正解押し順の報知が決定された場合の方が、付与される特典が少なくなるように設定してもよい。
・・・
【0155】
また、上述の実施形態では、主制御手段100における役決定により所定の役決定結果(役決定結果F)が得られたことを契機として第1演出態様抽選によるアシスト演出の態様選択が行われ、役決定により所定の役決定結果(役決定結果I)が得られ、かつ第1リール停止操作及び第2リール停止操作の操作順が正解押し順であることを契機として第2演出態様抽選によるアシスト演出の態様選択が行われるようになっているが、アシスト演出の態様選択が行われるタイミングとしては、種々の時点に適宜変更することが可能である。例えば、RT遊技状態に移行したことを契機としてアシスト演出の態様選択を行うようにしたり、RT遊技状態中にリール回転開始操作が行われたことを契機としてアシスト演出の態様選択を行うようにしたりしてもよい。」

・認定事項
コ 【0101】の「・・・A?Mの何れかの役決定結果が得られた場合の当選フラグ情報の記憶処理・・・」との記載から、刊行物には、A?Mが当選役決定結果であることが示されている。
そして、【図10】、【図11】には、それぞれ、RT中非持越し遊技期間、RT中持越し遊技期間について、小役3を含む重複当選役決定結果F?J、小役1、2、13、14の当選役決定結果D、E、K、Lを含む複数の役が設定された抽選テーブルについて示されている。
また、【0058】には、「役決定手段101は、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、予め設定された役(ハズレを含む)の中から1つまたは複数の役を選択する役決定を行うように構成されている。」ことが記載され、【0082】には、「小役3?小役12は、・・・非RT遊技状態中またはRT遊技状態中において、小役3?小役8が重複当選するという役決定結果Fが得られる場合・・・が設定されている(図8?図11参照)。」ことが記載されている。
さらに、【0080】には、「小役3は、その対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた役であることが記載されている。
したがって、刊行物には、RT中遊技期間において、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、予め設定された役(対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む重複当選役決定結果F?J、小役1、2、13、14の当選役決定結果D、E、K、Lを含む複数の役決定結果)の中から1つまたは複数の役決定結果を選択する役決定を行う役決定手段101について示されているものと認められる。

サ 上記ア?ケの記載事項、及び、上記コの認定事項を踏まえると、刊行物には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる(a?jは、本願発明のA?Jに対応させて付与した。)。
「a 複数種類の図柄を可変表示し、図柄の組合せを停止表示する複数のリール(【請求項1】、【0047】)と、
b 遊技者の操作により各リール3a,3b,3cの回転を開始させるスタートレバー25(【0046】)と、
c RT中遊技期間において、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、予め設定された役(対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む小役重複当選役決定結果F?J、小役1、2、13、14の小役当選役決定結果D、E、K、Lを含む複数の役決定結果)の中から1つまたは複数の役決定結果を選択する役決定を行う役決定手段101(認定事項コ)と、
d 遊技者により操作される各ストップスイッチ26a、26b、26c(【0046】)を備え、
e リール3a,3b,3cの回転がそれぞれ停止し、有効とされた入賞ライン上に停止表示された図柄の組合せが予め定めた入賞態様となっているか否かを判定し(【0046】、【0047】、【0136】)、
f 押し順選択小役である、対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む小役重複当選役決定結果F?Jに当選し、ストップスイッチ26a,26b,26cが正解押し順の順番で操作された場合には、小役3の対応図柄である「ベル・ベル・ベル」を有効ライン上に停止表示させる押し順正解時のリール停止制御を行い(【0080】、【0131】、【0132】、認定事項コ)、
g 非RT遊技状態、BB遊技状態及びRT遊技状態の3つの遊技状態のうちの何れかの遊技状態に設定する遊技状態制御手段105(【0070】)を備え、
h 非RT遊技状態からRT遊技状態に移行されたことにより開始されるアシスト演出制御処理において、小役重複当選役決定結果F?Jに対応する当選フラグがONである場合には、第1演出態様抽選の結果が「当り」である場合にアシスト可能回数上乗せ抽選を行い、アシスト可能回数上乗せ抽選で決定されたアシスト上乗せ回数をアシスト可能回数の残数に加算し(【0141】、【0143】)、
i 非RT遊技状態からRT遊技状態に移行されたことにより開始されるアシスト演出制御処理において、役決定結果Fの当選フラグがONである場合には、
第1演出態様抽選の結果が「当り」である場合に第1の特別態様による正解第1押し順の報知を行い、
第1演出態様抽選の結果が「ハズレ」である場合に通常態様による正解第1押し順の報知を行い(【0141】、【0143】、【0144】)、
j 第1の特別態様により正解押し順の報知を行うことが決定された場合には、特典(アシスト可能回数の上乗せ)が付与され、通常態様により正解押し順の報知を行うことが決定された場合には、特典が付与されないようになっており(【0153】)、
k RT遊技状態において、小役重複当選役決定結果F?J以外の小役当選役決定結果D、E、K?Mの場合には、アシスト演出実行処理を行わない(【0141】、認定事項コ)
スロットマシン(【0001】)。」

4 対比
本願発明と刊行物発明とを対比する。
(a)刊行物発明における「可変表示」すること、「図柄の組合せ」は、それぞれ、本願発明における「変動表示する」こと、「遊技の結果としての図柄組合せ」に相当する。
したがって、刊行物発明における「複数のリール」は、本願発明における「可変表示手段」に相当する。

(b)刊行物発明における「遊技者の操作によ」ることは、本願発明における「遊技者の操作を受付け」ることに相当する。
そして、刊行物発明における「各リール3a,3b,3cの回転を開始させる」ことは、「各リール3a,3b,3cの回転」の「開始」により変動表示遊技が始まることは明らかであるから、本願発明におけ「遊技を開始させる」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における「スタートレバー25」は、本願発明における「遊技開始手段」に相当する。

(c)刊行物発明における「スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際」は、上記(b)より本願発明における「遊技が開始された場合」に相当する。
そして、刊行物発明における「対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む小役重複当選役決定結果F?J」は、本願発明における「第1当選エリア」に相当する。
また、刊行物発明における「小役1、2、13、14の小役当選役決定結果D、E、K、L」は、本願発明における「第2当選エリア」に相当する。
したがって、刊行物発明における「RT中遊技期間において、スタートレバー25が傾動操作され、その信号が入力された際に、予め設定された役(対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む小役重複当選役決定結果F?J、小役1、2、13、14の小役当選役決定結果D、E、K、Lを含む複数の役決定結果)の中から1つまたは複数の役決定結果を選択する役決定を行う役決定手段101」ことは、本願発明における「遊技が開始された場合に、第1当選エリアと第2当選エリアとを含む複数種類の当選エリアの何れかを抽選により決定する内部抽選手段」に相当する。

(d)刊行物発明における「遊技者により操作される各ストップスイッチ26a、26b、26c」は、本願発明における「図柄を停止させる場合に遊技者により操作される停止操作手段」に相当する。

(e)刊行物発明における「リール3a,3b,3cの回転がそれぞれ停止し、有効とされた入賞ライン上に停止表示された図柄の組合せが予め定めた入賞態様となっているか否かを判定」する手段は、本願発明における「可変表示手段に停止表示された図柄組合せを判定する入賞判定手段」に相当する。

(f)刊行物発明の構成b、cによると、「役決定」は、遊技者のスタートレバー25の操作による変動表示遊技が始まった後に行われるものである。
そうすると、刊行物発明における「対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む小役重複当選役決定結果F?Jに当選」するのは、変動表示遊技においてであるから、刊行物発明は、本願発明における「可変表示手段の各図柄を遊技が開始された場合に変動表示し、第1当選エリアが当選した遊技」に相当する構成を有するものと認める。
そして、刊行物発明における「ストップスイッチ26a,26b,26cが、役決定結果に対応した正解押し順の順番で操作された場合」は、本願発明における「停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合」に相当する。
また、刊行物発明における「小役3の対応図柄である「ベル・ベル・ベル」を有効ライン上に停止表示させる」ことは、本願発明における「特定図柄組合せを停止可能である」ことに相当する。

したがって、刊行物発明における「押し順選択小役である、対応図柄が「ベル・ベル・ベル」とされた小役3を含む小役重複当選役決定結果F?Jに当選し、ストップスイッチ26a,26b,26cが正解押し順の順番で操作された場合には、小役3の対応図柄である「ベル・ベル・ベル」を有効ライン上に停止表示させる押し順正解時のリール停止制御を行」う手段と、
本願発明における「可変表示手段の各図柄を遊技が開始された場合に変動表示し、第1当選エリアが当選した遊技において、停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合、特定図柄組合せを停止可能であるとともに、第2当選エリアが当選した遊技において、停止操作の態様によらず特定図柄組合せを停止可能である図柄変動制御手段」とは、
「可変表示手段の各図柄を遊技が開始された場合に変動表示し、第1当選エリアが当選した遊技において、停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合、特定図柄組合せを停止可能である図柄変動制御手段」である点で共通する。

(g)刊行物発明における「RT遊技状態」は、本願発明における「特定遊技状態」に相当する。
したがって、刊行物発明における「非RT遊技状態、BB遊技状態及びRT遊技状態の3つの遊技状態のうちの何れかの遊技状態に設定する遊技状態制御手段105」は、本願発明における「特定遊技状態を含む各遊技状態に移行可能な遊技状態移行手段」に相当する。

(h)刊行物発明における「アシスト上乗せ回数をアシスト可能回数の残数に加算」することは、本願発明における「遊技者に特典を付与すること」に相当する。
したがって、刊行物発明における「第1演出態様抽選の結果が「当り」である場合にアシスト可能回数上乗せ抽選を行い、アシスト可能回数上乗せ抽選で決定されたアシスト上乗せ回数をアシスト可能回数の残数に加算」することは、本願発明における「遊技者に特典を付与することを決定する」ことに相当する。

よって、刊行物発明における「非RT遊技状態からRT遊技状態に移行されたことにより開始されるアシスト演出制御処理において、小役重複当選役決定結果F?Jに対応する当選フラグがONである場合には、第1演出態様抽選の結果が「当り」である場合にアシスト可能回数上乗せ抽選を行い、アシスト可能回数上乗せ抽選で決定されたアシスト上乗せ回数をアシスト可能回数の残数に加算」する手段と、
本願発明における「特定遊技状態において、第1当選エリアが当選した場合および第2当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定する特典付与決定手段」とは、
「特定遊技状態において、第1当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定する特典付与決定手段」であることで共通する。

(i)刊行物発明における「第1の特別態様による正解第1押し順の報知を行」うこと、「通常態様による正解第1押し順の報知を行」うことは、それぞれ、本願発明における「正解操作態様を特殊報知態様で報知する」こと、「正解操作態様を通常報知態様で報知する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における「非RT遊技状態からRT遊技状態に移行されたことにより開始されるアシスト演出制御処理において、役決定結果Fの当選フラグがONである場合には、第1演出態様抽選の結果が「当り」である場合に第1の特別態様による正解第1押し順の報知を行い、第1演出態様抽選の結果が「ハズレ」である場合に通常態様による正解第1押し順の報知を行」う手段は、本願発明における「特定遊技状態では、第1当選エリアが当選した遊技において、正解操作態様を特殊報知態様で報知する場合と、正解操作態様を通常報知態様で報知する場合とがある報知手段」に相当する。

(j)刊行物発明における「第1の特別態様により正解押し順の報知を行うことが決定された場合には、特典(アシスト可能回数の上乗せ)が付与され、通常態様により正解押し順の報知を行うことが決定された場合には、特典が付与されないようになっている」ことは、特典が付与される場合の特別態様により報知される割合(100%)が、特典が付与されない場合の特別態様により報知される割合(0%)よりも高いこと、及び、構成hによると、「RT遊技状態」において特典が付与されることから、本願発明における「特定遊技状態では、通常報知態様で正解操作態様が報知される場合より、特殊報知態様で正解操作態様が報知される場合に特典が付与され易」いことに相当する。

(k)刊行物発明における「RT遊技状態」は、上記gによると、本願発明における「特定遊技状態」に相当する。
そして、刊行物発明における「アシスト演出実行処理を行わない」ことは、本願発明における「停止操作手段の操作態様が報知されない」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における構成kは、本願発明における構成Kに相当する。

上記(a)?(k)における対比から、本願発明と刊行物発明とは、
「A 複数種類の図柄を変動表示するとともに、遊技の結果としての図柄組合せを停止表示する可変表示手段と、
B 遊技者の操作を受付けて遊技を開始させる遊技開始手段と、
C 遊技が開始された場合に、第1当選エリアと第2当選エリアとを含む複数種類の当選エリアの何れかを抽選により決定する内部抽選手段と、
D 前記図柄を停止させる場合に遊技者により操作される停止操作手段と、
E 前記可変表示手段に停止表示された前記図柄組合せを判定する入賞判定手段と、
F’前記可変表示手段の各図柄を遊技が開始された場合に変動表示し、前記第1当選エリアが当選した遊技において、前記停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合、特定図柄組合せを停止可能である図柄変動制御手段と、
G 特定遊技状態を含む各遊技状態に移行可能な遊技状態移行手段と、
H’前記特定遊技状態において、前記第1当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定する特典付与決定手段と、
I 前記特定遊技状態では、前記第1当選エリアが当選した遊技において、前記正解操作態様を特殊報知態様で報知する場合と、前記正解操作態様を通常報知態様で報知する場合とがある報知手段とを具備し、
J 前記特定遊技状態では、前記通常報知態様で前記正解操作態様が報知される場合より、前記特殊報知態様で前記正解操作態様が報知される場合に前記特典が付与され易く、
K 前記特定遊技状態において、前記第2当選エリアが当選した遊技では、前記停止操作手段の操作態様が報知されない遊技機。」
の点で一致し、構成F、Hに関し、次の点で相違する。

[相違点1](構成Fについて)
第1当選エリアが当選した遊技において、停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合、特定図柄組合せを停止可能である図柄変動制御手段に関して、
本願発明は、第2当選エリアが当選した遊技において、停止操作の態様によらず特定図柄組合せを停止可能であるのに対して、
刊行物発明は、小役1、2、13、14が当選した遊技において、停止操作の態様によって、第1当選エリアが当選した遊技において停止可能である特定図柄組合せと異なる特定図柄組合せを停止可能であるが、本願発明のような構成を備えない点。

[相違点2](構成Hについて)
特定遊技状態における、遊技者に特典を付与することを決定する特典付与決定手段に関して、
本願発明は、第1当選エリアが当選した場合および第2当選エリアが当選した場合に特典を付与することを決定するのに対して、
刊行物発明は、第1当選エリアが当選した場合に特典を付与することを決定するが、第2当選エリアに対しては、そのような構成を備えない点。

5 当審の判断
上記相違点について検討する。
相違点1、2は、第2当選エリアが当選した場合の処理に関する構成であり互いに関連しているので、まとめて検討する。
遊技機の技術分野において、
イ)当選エリアに第1当選エリアと第2当選エリアとを含み(構成Cに対応する)、
ロ)第1当選エリアが当選した遊技において、停止操作手段が正解操作態様で停止操作された場合、特定図柄組合せを停止可能であるとともに、第2当選エリアが当選した遊技において、停止操作の態様によらず前記特定図柄組合せを停止可能である図柄変動制御手段を備え(相違点1に対応する)、
ハ)特定遊技状態において、前記第1当選エリアが当選した場合および第2当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定する特典付与決定手段を備え(相違点2に対応する)、
ニ)特定遊技状態において、第2当選エリアが当選した遊技では、停止操作手段の操作態様が報知されないこと(構成Kに対応する)は、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開2014-155562号公報には、
イ)ボーナス成立遊技状態における当選領域に単独役である「共通ベル」と、「共通ベル」を重複当選役として含む「打順ベル中1、中2、右1、右2」が含まれることが示され(【図8】、【0064】?【0066】)、
ロ)「打順ベル」に当選し、遊技者が正解操作態様により操作を行った場合、当選役「通常ベル」に対応する図柄組合せが有効ラインA上に表示され(【0067】)、「共通ベル」に単独当選した場合、【図3】における各リールの図柄配列からみて遊技者の操作態様にかかわらず、当選役「通常ベル」に対応する図柄組合せが有効ラインA上に表示され、
ハ)ボーナス成立状態中に通常AT遊技状態に遷移し、「打順ベル」、「共通ベル」等に当選した場合、継続回数を加算するか否かの抽選である上乗抽選を実行し(【図8】、【0059】、【0079】、【0087】、【0168】)、
ニ)通常AT遊技状態では、補助演出によって正解操作態様が報知される(【0093】)ため、正解操作態様の報知は、「打順ベル」の当選時に行われるが、「共通ベル」の当選時には行われないことが明らかであることが示されている。
また、特開2014-230583号公報には、
イ)AT開始後のゲームにおいて、遊技状態が内部中であり、上乗せ状態の場合、「押し順ベル」、「共通ベル」を当選役として含み(【0381】、【図23】(c))、
ロ)「押し順ベル」のうちのいずれかが当選した場合、当選役の種類に応じた操作態様で停止操作を行うことで「中段ベル」が必ず入賞し(【0286】)、「共通ベル」のうち「共通ベルB」は、単独当選役であり、当選時には、必ず「中段ベル」が揃い(【0266】)、
ハ)上乗せ状態では、「押し順ベル」、「共通ベル」等の当選時に【図23】(c)に基づくゲーム数の上乗せ抽選が行われ(【0382】)、
二)「押し順ベル」当選時には、ナビ演出が行われるが、「共通ベル」当選時には、ナビ演出が行われないことが示されている(【図21】、【0376】)。)。

ところで、刊行物発明と上記周知の技術事項とは、特定の遊技状態において、特典としてアシスト可能回数の上乗せ抽選を行う点で共通する。
そして、刊行物発明は、「リール停止操作手順を報知するアシスト演出の態様に対する遊技者の関心を喚起し、アシスト演出が行われる期間の遊技性を高めることが可能なスロットマシンを提供する」(前記3 イを参照。)なる課題を解決するものである。一方、刊行物発明が解決する上記課題は、アシスト演出を行う上記周知の技術事項においても当然に解決されるべき自明の課題であるといえる。
したがって、刊行物発明に、上記周知の技術事項を適用して、「小役3を含む小役重複当選役決定結果F?J」を有し、「小役1、2、13、14の小役当選役決定結果D、E、K、L」に小役3の単独役を当選役として加え、単独役である小役3の当選時に停止操作の態様によらず「ベル・ベル・ベル」を停止可能とし、「小役3を含む小役重複当選役決定結果F?J」、及び、単独役である小役3の当選時に、特典を付与することを決定し、単独役である小役3の当選時に操作態様を報知せず、上記相違点1、2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

次に、平成29年10月25日付け意見書における請求人の「引用文献1の構成では、例えば図8から把握される通り、「小役3が有効ラインに停止表示された図柄組合せ」は、「役決定結果F?J」が当選した遊技において、正解押順で停止操作された場合にのみ停止表示される。すなわち、引用文献1の構成は、「停止操作の態様によらず特定図柄組合せを停止可能」となる「第2当選エリア」が設けられない点において、本願発明と相違する。また、引用文献1の構成は、「第2当選エリア」がもうけられないから、本願発明の上述の「第1当選エリアが当選した場合に加え、第2当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定するとともに、特定遊
技状態において、第2当選エリアが当選した遊技では、停止操作手段の操作態様が報知されない構成」を具備するとは言えない。したがって、本願発明は、引用文献1に記載されたものではない。」(第3頁第22?31行)との主張について検討する。

請求人の、刊行物発明が「停止操作の態様によらず特定図柄組合せを停止可能」となる「第2当選エリア」を備える構成、及び、「第1当選エリアが当選した場合に加え、第2当選エリアが当選した場合に遊技者に特典を付与することを決定するとともに、特定遊技状態において、第2当選エリアが当選した遊技では、停止操作手段の操作態様が報知されない構成」を具備しないとの主張は、上記において検討したように、本願出願前における周知の技術事項である。そして、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用する動機付けは、上記において検討したように十分にある。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明及び周知の技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別のものではない。
よって、本願発明は、刊行物発明及び周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-21 
結審通知日 2017-12-26 
審決日 2018-01-10 
出願番号 特願2014-262301(P2014-262301)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 祐一  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 長崎 洋一
樋口 宗彦
発明の名称 遊技機  
代理人 鈴木 均  

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