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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1337641
審判番号 不服2017-6145  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-27 
確定日 2018-02-22 
事件の表示 特願2012-181858「情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日出願公開、特開2014- 38560〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年8月20日の出願であって、平成28年5月19日付けで拒絶理由通知がされ、同年7月20日に手続補正がされ、同年11月7日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、平成29年1月12日に手続補正がされ、同年1月20日付けで同年1月12日付けの補正を却下する補正の却下の決定がされると同時に拒絶査定がされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2.平成29年4月27日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年4月27日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に変更する補正事項を含むものである。
そして、補正前の請求項1及び補正後の請求項1の各記載は、それぞれ、以下のとおりである。
なお、〈補正後の請求項1〉における下線は補正箇所を表している。
〈補正前の請求項1〉
「【請求項1】
タッチパネルを備える情報処理装置であって、
画像データを表示させる表示手段と、
前記タッチパネルに対するユーザによるタッチ操作を検出する検出手段と、
前記検出手段により所定のタッチ操作を検出するのに応じて、前記表示手段により表示された前記画像データを拡大もしく縮小するズームモードに移行する移行手段と、
前記ズームモードで動作中に前記検出手段が前記タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合に、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの特定方向であれば、前記画像データの特定の位置を基準として前記画像データを拡大して表示させ、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの前記特定方向とは反対の方向であれば、前記特定の位置を基準として前記画像データを縮小して表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」

〈補正後の請求項1〉
「【請求項1】
タッチパネルを備える情報処理装置であって、
画像データを表示させる表示手段と、
前記タッチパネルに対するユーザによるタッチ操作を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記タッチパネルにおける所定の位置に対するタッチ操作を検出するのに応じて、前記表示手段により表示された前記画像データを拡大もしく縮小するズームモードに移行する移行手段と、
前記ズームモードで動作中に前記検出手段が前記タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合に、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの特定方向であれば、前記画像データの特定の位置を基準として前記画像データを拡大して表示させ、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの前記特定方向とは反対の方向であれば、前記特定の位置を基準として前記画像データを縮小して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける拡大ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で拡大して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける縮小ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で縮小して表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」

2.本件補正に対する判断
本件補正の内の上記補正事項は、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「移行手段」に関して、「所定のタッチ操作」を「前記タッチパネルにおける所定の位置に対するタッチ操作」と限定し、また、補正前の請求項1に記載のあった発明を特定するために必要な事項である「表示制御手段」に関して、「前記検出手段が前記タッチパネルにおける拡大ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で拡大して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける縮小ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で縮小して表示させる」と限定したものであり、かつ、補正の前後において、請求項1の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2-1.本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.」の〈補正後の請求項1〉の欄に記載したとおりのものである。

2-2.特許法第29条第2項への該当性(進歩性)について
(1)引用例の記載、引用発明等
(引用例)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2012-33061号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

a)「【0031】
<2.第1の実施の形態>
[2-1.携帯端末の外観構成]
次に、第1の実施の形態の具体例について説明する。まず図2を用いて、上述した情報処理装置1の具体例である携帯端末100の外観構成について説明する。
【0032】
携帯端末100は、片手で把持し得る程度の大きさでなる略扁平矩形状の筐体101を有している。
【0033】
筐体101の前面101Aの中央部には、長方形状のタッチスクリーン102が設けられている。タッチスクリーン102は、液晶パネルと、液晶パネルの表示面を覆う薄型透明のタッチパネルとで構成される。因みに、このタッチパネルは、例えば、静電容量式のタッチパネルである。
【0034】
携帯端末100は、このタッチスクリーン102に対する、指(タッチペン等でも可)によるタッチ操作を、ユーザによる操作入力として受け付けるようになっている。」(下線は、当審で付与。以下、同様。)

b)「【0263】
さらにこのときCPU110は、図17に示す静止画像再生画面220をタッチスクリーン102に表示させる。尚、この静止画像再生画面220は、横長の画面であり、横向きでの使用を想定して、横長のタッチスクリーン102の全面に表示されるようになっている。
【0264】
この静止画像再生画面220には、静止画像がほぼ画面一杯に表示されるようになっている。またこの静止画像再生画面220は、下端に、パレット221の上端部分が表示され、この上端部分をタッチして画面上方向へのドラッグを行うことで、パレット221を静止画像再生画面220上に引き出して表示できるようにもなっている。このパレット221は、静止画像のパラメータである輝度及び彩度を調整する為のパレット(これを輝度彩度パレットとも呼ぶ)であり、詳しくは後述する。
【0265】
この静止画像再生画面220では、表示されている静止画像に対する縦方向へのドラッグで、静止画像のパラメータであるズーム率(拡大率/縮小率)の調整速度(調整方向と調整速度の値)を制御できるようになっている。
【0266】
実際、図18(A)に示すように、静止画像の任意の箇所が所定時間以上タッチされ続けたとする。因みに、所定時間以上のタッチを長押しとも呼び、所定時間未満のタッチを短押しとも呼ぶ。
【0267】
するとCPU110は、静止画像の長押しされた位置に、この位置を中心とする円形のモチカーソルCsを表示させる。この位置が、モチカーソルCsの始点となる。またこれとともに、CPU110は、モチカーソルCsの左側近傍に、ドラッグによる操作入力が静止画像のズーム率の調整に切り替わったことを示す縦長長方形状のズームインジケータZiを表示させる。
【0268】
このズームインジケータZiは、例えば半透明であり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が透けて見えるようになっている。また、このズームインジケータZiには、上部分に「+」という文字が表示され、下部分に「-」という文字が表示されている。これにより、ズームインジケータZiは、画面上方向へのドラッグがズーム率のプラス(すなわちズームイン(拡大))に対応し、画面下方向へのドラッグがズーム率のマイナス(すなわちズームアウト(縮小))に対応していることを示している。
【0269】
またこのときCPU110は、静止画像再生画面220を縦方向に3分割する上方領域220A、中央領域220B及び下方領域220Cを設定する。ここでCPU110は、中央領域200Bを、静止画像の長押しされた位置を縦方向の中心とすると共に縦方向に所定の長さ(例えば画面の縦方向の長さの1/3程度)でなるように設定し、残りの領域を上方領域200A及び下方領域200Cとして設定する。
【0270】
中央領域220BとズームインジケータZiとでは、縦方向の位置及び長さが一致するようになっている。これによりズームインジケータZiは、中央領域200Bの縦方向の範囲を示すようにもなっている。
【0271】
尚、これらモチカーソルCs及びズームインジケータZiは、タッチスクリーン102から指が離されるまで表示される。
【0272】
そして、長押ししている指を離さずに、図18(B)に示すように、画面縦方向へのドラッグが行われたとする。するとCPU110は、このドラッグに応じて、モチカーソルCsを、ドラッグの始点(すなわち最初に長押しされた位置)から終点へと縦方向に引き伸ばす。
【0273】
ここでCPU110は、モチカーソルCsの向きが縦向きであることを認識すると、静止画像再生画面220の中心をズームの中心とし、ドラッグに応じて静止画像のズーム率(拡大率/縮小率)を調整する。
【0274】
具体的にCPU110は、モチカーソルCsの終点(すなわちドラッグの終点)が、画面の中央領域220B内であるか外であるかを判別する。
【0275】
ここでモチカーソルCsの終点が中央領域220B内であれば、CPU110は、ドラッグされた分、静止画像のズーム率を増減させる。
【0276】
具体的にCPU110は、ドラッグの方向が画面上方向であれば、静止画像のズーム率を大きくし、ドラッグの方向が画面下方向であれば、静止画像のズーム率を小さくする。
【0277】
このときCPU110は、ドラッグの終点の縦方向の位置に応じて、ズーム率を増減する値を設定する。このズーム率を増減する値は、ドラッグの終点の縦方向の位置の変化が大きいほど大きくなる。
【0278】
このように、ドラッグされた分だけズーム率が上げ下げされるようになっているので、指がタッチされ続けていても指が静止している間は、ズーム率が増減されないようになっている。
【0279】
こうすることで、例えば、画面上方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が上がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が拡大される。
【0280】
また、例えば、画面下方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が下がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が縮小される。」

したがって、上記引用例の摘記事項及び図面に記載された構成によれば、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「携帯端末100は、筐体101を有し、
筐体101の前面101Aの中央部には、長方形状のタッチスクリーン102が設けられ、
タッチスクリーン102は、液晶パネルと、液晶パネルの表示面を覆う薄型透明のタッチパネルとで構成され、
携帯端末100は、このタッチスクリーン102に対する、指(タッチペン等でも可)によるタッチ操作を、ユーザによる操作入力として受け付けるものであり、
静止画像再生画面220をタッチスクリーン102に表示させ、
静止画像の任意の箇所が所定時間以上タッチされ続けたとすると、静止画像の長押しされた位置に、この位置を中心とする円形のモチカーソルCsを表示させ、
この位置が、モチカーソルCsの始点となり、またこれとともに、モチカーソルCsの左側近傍に、ドラッグによる操作入力が静止画像のズーム率の調整に切り替わったことを示す縦長長方形状のズームインジケータZiを表示させ、
このズームインジケータZiは、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が透けて見えるようになっており、また、このズームインジケータZiには、上部分に「+」という文字が表示され、下部分に「-」という文字が表示され、これにより、ズームインジケータZiは、画面上方向へのドラッグがズーム率のプラス(すなわちズームイン(拡大))に対応し、画面下方向へのドラッグがズーム率のマイナス(すなわちズームアウト(縮小))に対応していることを示し、
そして、長押ししている指を離さずに、画面縦方向へのドラッグが行われたとすると、このドラッグに応じて、モチカーソルCsを、ドラッグの始点(すなわち最初に長押しされた位置)から終点へと縦方向に引き伸ばされ、
モチカーソルCsの向きが縦向きであることを認識すると、静止画像再生画面220の中心をズームの中心とし、ドラッグに応じて静止画像のズーム率(拡大率/縮小率)を調整し、
ドラッグの方向が画面上方向であれば、静止画像のズーム率を大きくし、ドラッグの方向が画面下方向であれば、静止画像のズーム率を小さくし、
このズーム率を増減する値は、ドラッグの終点の縦方向の位置の変化が大きいほど大きくなり、
画面上方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が上がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が拡大され、
画面下方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が下がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が縮小される、
携帯端末100。」

(周知例)
本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2012-27701号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

c)「【0049】
[1-3.撮像装置におけるユーザインターフェース装置の動作]
次に、撮像装置200を用いた水中での撮影時におけるボタンおよび入力領域のレイアウトの変更処理について、図6のフローチャートに基づいて説明する。図7は、表示部112に表示されるボタンおよびタッチパネル111における入力領域のレイアウトである。便宜上、図7A、図7Dをデフォルトのレイアウト、図7Bを第2のレイアウト、図7Cを第3のレイアウトとする。

中略

【0053】
図7Aに示すように、デフォルトのレイアウトでは再生ボタンQ1、設定ボタンQ2、モード切り替えボタンQ3が配置されている。また、それら各種ボタンにそれぞれ対応するタッチパネル111の入力領域R1、R2、R3は各ボタンと略同一サイズ、略同一の位置に配置されている。
【0054】
再生ボタンQ1は記録部211に記録されている静止画または動画の再生を開始するためのボタンである。再生ボタンQ1の位置に指を接触させて入力領域R1に対して入力を行うとタッチパネルユニット110の表示部112に静止画または動画が表示される。設定ボタンQ2は、撮像装置200の各種設定を行うための設定画面を呼び出すためのものである。設定画面はタッチパネルユニット110の表示部112に表示される。設定画面で設定される項目としては例えば、手ぶれ補正ON/OFF切り替え、ホワイトバランス設定などがある。
【0055】
モード切り替えボタンQ3は、撮像装置200による撮影時において、静止画を撮影する静止画モードと動画を撮影する動画モードとを切り替えるためのものである。撮像装置200が静止画モードである場合にモード切り替えボタンQ3の位置に合わせて指を接触させて入力領域R3に対して入力を行うと撮像装置200は動画モードに切り替わる。逆に、撮像装置200が動画モードである場合にモード切り替えボタンQ3に指を接触させて入力を行うと撮像装置200は静止画モードに切り替わる。なお、撮像装置200が静止画モードである場合には、図7Aに示すように、モード切り替えボタンQ3としては動画モードへの切り替えを示すための図形、例えば映写機が表示される。また、撮像装置200が動画撮影モードの場合には、図7Dに示すように、モード切り替えボタンQ3としては静止画モードへの切り替えを示すための図形、例えばカメラが表示される。」

本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2010-191892号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

d)「【0076】
(スクロール操作について)
まず、図5、図6を参照しながら、スクロール操作を行う場合の操作及び処理の流れについて説明する。
【0077】
図5に示すように、スクロール操作を行う場合、ユーザは、操作体10をタッチパネル102にタッチし、スクロールさせたい方向にドラッグする。すると、表示制御部112は、タッチ位置の変化に応じて表示内容をスクロールさせる。このとき、表示制御部112は、移動する操作体10のタッチ位置に応じてフォルダオブジェクト16の選択状態を切り替える。さらに、表示制御部112は、表示画面14の表示内容を選択状態のフォルダオブジェクト16に対応する写真オブジェクト18に切り替える。
【0078】
また、高速スクロールモードに切り替える場合、ユーザは、モード切り替えボタン20をタッチした後でスクロール操作を行う。但し、図5のようにモード切り替えボタン20を表示画面14に表示させると、モード切り替えボタン20を表示する分だけ表示画面14が狭くなってしまう。また、図5の方法では、高速スクロールモードに切り替えるためにユーザがタッチパネル102から操作体10を一旦離し、モード切り替えボタン20をタッチする必要があり、不便である。そこで、本実施形態では、図6のように領域を跨ぐ操作をモード切り替え動作に対応付け、連続するドラッグ操作の中でモード切り替えができるようにする。」

本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2012-121179号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

e)「【0058】
プレビュー領域83には、先に述べたようにプレビュー画像処理部76によりメモリ64内の原稿画像に対応するプレビュー画像が表示される。また、プレビュー領域83には、左回転ボタン83a、右回転ボタン83b、色変換ボタン83c、拡大ボタン83d、及び縮小ボタン83eが表示されている。例えば、左回転ボタン83a又は右回転ボタン83bが指示されると、操作判定部73は、タッチスクリーン3のタッチパネル72からの検出信号に基づき液晶表示装置71の画面71a上で指示された左回転ボタン83a又は右回転ボタン83bを識別し、この識別したボタンを機能設定部74に通知する。機能設定部74は、このボタンの指示に応答してプレビュー画像処理部76の回転処理部79を起動する。回転処理部79は、プレビュー領域83に表示されているプレビュー画像を左回転又は右回転させる。また、色変換ボタン83cが指示されると、操作判定部73により色変換ボタン83cが識別され、機能設定部74によりプレビュー画像処理部76のカラー変換処理部78が起動される。カラー変換処理部78は、プレビュー領域83のプレビュー画像の色変換処理を行う。更に、拡大ボタン83d又は縮小ボタン83eが指示されると、機能設定部74によりプレビュー画像処理部76の拡大縮小処理部77が起動される。拡大縮小処理部77は、拡大ボタン83d又は縮小ボタン83eに応答してプレビュー領域83のプレビュー画像を拡大又は縮小する。
【0059】
プレビュー領域83の画像の拡大縮小は、拡大ボタン83d及び縮小ボタン83eによる指示だけではなく、プレビュー領域83において、2つの指先で指示された2つの指示点が離反するような2つの指先の操作(ピンチアウト)や、2つの指示点が接近するような2つの指先の操作(ピンチイン)によっても指示することができる。これらのピンチアウト及びピンチインについては、後で詳しく説明する。」

本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2012-90111号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面と共に以下の記載がある。

f)「【0095】
機能選択領域410には、各機能の設定、表示の切り換え、設定の確認のためにユーザにより操作される機能選択メニュー(アイコン、ボタン等)が、アイコンモード、レギュラーモードおよびエキスプレスモードで表示態様を変更して表示される。

中略

【0098】
プレビュー領域480には、その下部にプレビュー領域480の表示スタイルを変更するプレビュー変更ボタン群450を備える。プレビュー変更ボタン群450には、プレビューを所望の角度だけ回転させるための回転ボタン458、プレビュー画像の拡大及び縮小のためのズームバー460、後述する原稿表示モードへの変更を指示する原稿表示モードボタン452、仕上がりプレビュー画面への変更を指示する仕上がりプレビューボタン454、及びフィット・トゥー・スクリーンモード(以下、「フィットモード」と称する。)への変更を指示するフィット・トゥー・スクリーンボタン456が配置されている。
【0099】
回転ボタン458をタッチ操作するとプレビューの回転角度を指定するダイアログが表示される。所望の角度を指定するとプレビュー領域に表示されたプレビュー画像がその角度だけ回転される。プレビュー画像に対し、ジェスチャー操作を行なってもプレビューを回転させることができる。例えば、プレビュー画像の上に2本の指を当て、指先を回転させると、プレビュー画像が指の回転方向に沿って、指の移動量に従って定まる角度だけ回転する。
【0100】
ズームバー460のプラスボタン462をタッチ操作したり、バ-466をプラスボタン462側へジェスチャー操作(ドラッグまたはスライド)したりすると、プレビューが拡大して表示される。また、プレビュー領域に表示された仕上がり原稿イメージをジェスチャー操作しても(指先で原稿イメージをピンチアウト/ピンチオープンさせても)、プレビューが拡大して表示される。
【0101】
ズームバー460のマイナスボタン464をタッチ操作したり、バ-466をマイナスボタン464側ヘジェスチャー操作(ドラッグまたはスライド)したりすると、プレビューが縮小して表示される。また、プレビュー領域に表示された仕上がり原稿イメージをジェスチャー操作しても(指先で原稿イメージをピンチイン/ピンチクローズさせても)、プレビューが縮小して表示される。」

(2)対比、一致点、相違点
本願補正発明と引用発明とを対比する。

あ)引用発明の「タッチパネル」は本願補正発明の「タッチパネル」に相当し、引用発明の「携帯端末100」は「長方形状のタッチスクリーン102が設けられ」、「タッチスクリーン102は、液晶パネルと、液晶パネルの表示面を覆う薄型透明のタッチパネルとで構成され」るものであり、また、「携帯端末100」が情報処理装置ともいい得るものであることは明らかであるから、引用発明の「携帯端末100」は、本願補正発明の「タッチパネルを備える情報処理装置」に相当する。

い)引用発明の「タッチスクリーン102は、液晶パネルと、液晶パネルの表示面を覆う薄型透明のタッチパネルとで構成され」、「静止画像再生画面200」を表示させるものであるから、引用発明の「液晶パネル」は、本願補正発明の「画像データを表示させる表示手段」に相当する。

う)引用発明の「携帯端末100は、このタッチスクリーン102に対する、指(タッチペン等でも可)によるタッチ操作を、ユーザによる操作入力として受け付けるもの」であるから、「タッチスクリーン120」を構成する「タッチパネル」に対するユーザによる操作入力を検出する手段を有することは明らかであり、引用発明の「携帯端末100」は、本願補正発明の「前記タッチパネルに対するユーザによるタッチ操作を検出する検出手段」に相当する構成を有するといえる。

え)引用発明の「携帯端末100」は、「静止画像の任意の箇所が所定時間以上タッチされ続けたとすると、静止画像の長押しされた位置に、この位置を中心とする円形のモチカーソルCsを表示させ、
この位置が、モチカーソルCsの始点となり、またこれとともに、モチカーソルCsの左側近傍に、ドラッグによる操作入力が静止画像のズーム率の調整に切り替わったことを示す縦長長方形状のズームインジケータZiを表示させ」る構成を有するものである。
ここで、引用発明の上記構成は、「静止画像の任意の箇所が所定時間以上タッチされ続けた」ことを、上記う)の「「タッチスクリーン120」を構成する「タッチパネル」に対するユーザによる操作入力を検出する手段」が検出したことに基づいてカーソルやインジケータの表示を行うものであることは明らかであり、また、引用発明の「ドラッグによる操作入力が静止画像のズーム率の調整に切り替わ」ることは、「画像データを拡大もしくは縮小するズームモードに移行する」ともいい得ることである。
したがって、引用発明の「携帯端末100」が有する上記構成は、本願補正発明の「前記検出手段により前記タッチパネルにおける所定の位置に対するタッチ操作を検出するのに応じて、前記表示手段により表示された前記画像データを拡大もしくは縮小するズームモードに移行する移行手段」と「前記検出手段により前記タッチパネルにおけるタッチ操作を検出するのに応じて、前記表示手段により表示された前記画像データを拡大もしくは縮小するズームモードに移行する移行手段」である点で共通するといえる。

お)引用発明の「携帯端末100」は、「長押ししている指を離さずに、画面縦方向へのドラッグが行われたとすると、このドラッグに応じて、モチカーソルCsを、ドラッグの始点(すなわち最初に長押しされた位置)から終点へと縦方向に引き伸ばされ、
モチカーソルCsの向きが縦向きであることを認識すると、静止画像再生画面220の中心をズームの中心とし、ドラッグに応じて静止画像のズーム率(拡大率/縮小率)を調整し、
ドラッグの方向が画面上方向であれば、静止画像のズーム率を大きくし、ドラッグの方向が画面下方向であれば、静止画像のズーム率を小さくし、」
「画面上方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が上がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が拡大され、
画面下方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が下がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が縮小される」構成を有するものである。
ここで、引用発明の上記構成が「長押ししている指を離さずに、画面縦方向へのドラッグが行われたとする」ことは、本願補正発明の「前記ズームモードで動作中に前記検出手段が前記タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合」に相当する。
引用発明の上記構成は「静止画像再生画面220の中心をズームの中心とし、ドラッグに応じて静止画像のズーム率(拡大率/縮小率)を調整」するものであるが、上記構成の「静止画像再生画面220の中心」は、本願補正発明の「前記画像データの特定の位置」に相当し、引用発明の上記構成が「ドラッグの方向が画面上方向であれば、静止画像のズーム率を大きくし」、「画面上方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が上がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が拡大され」ることは、本願補正発明の「前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの特定方向であれば、前記画像データの特定の位置を基準として前記画像データを拡大して表示させ」ることに相当する。
また、引用発明の上記構成が「ドラッグの方向が画面下方向であれば、静止画像のズーム率を小さくし」、「画面下方向へドラッグされれば、ドラッグされた分静止画像のズーム率が下がり、静止画像再生画面220に表示されている静止画像が縮小される」ことは、本願補正発明の「前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの前記特定方向とは反対の方向であれば、前記特定の位置を基準として前記画像データを縮小して表示させ」ることに相当する。
そして、引用発明の上記構成のような静止画像の拡大・縮小を実行するための表示制御手段を、引用発明が備えていることは明らかである。
したがって、引用発明の「携帯端末100」が有する上記構成は、本願補正発明の「前記ズームモードで動作中に前記検出手段が前記タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合に、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの特定方向であれば、前記画像データの特定の位置を基準として前記画像データを拡大して表示させ、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの前記特定方向とは反対の方向であれば、前記特定の位置を基準として前記画像データを縮小して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける拡大ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で拡大して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける縮小ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で縮小して表示させる表示制御手段」と「前記ズームモードで動作中に前記検出手段が前記タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合に、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの特定方向であれば、前記画像データの特定の位置を基準として前記画像データを拡大して表示させ、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの前記特定方向とは反対の方向であれば、前記特定の位置を基準として前記画像データを縮小して表示させる表示制御手段」である点で共通するといえる。


したがって、両者は以下の一致点と相違点を有する。

〈一致点〉
「タッチパネルを備える情報処理装置であって、
画像データを表示させる表示手段と、
前記タッチパネルに対するユーザによるタッチ操作を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記タッチパネルにおけるタッチ操作を検出するのに応じて、前記表示手段により表示された前記画像データを拡大もしく縮小するズームモードに移行する移行手段と、
前記ズームモードで動作中に前記検出手段が前記タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合に、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの特定方向であれば、前記画像データの特定の位置を基準として前記画像データを拡大して表示させ、前記ドラッグ操作の移動方向が前記画像データの前記特定方向とは反対の方向であれば、前記特定の位置を基準として前記画像データを縮小して表示させる表示制御手段と、
を有する情報処理装置。」

〈相違点1〉
本願補正発明は、「前記タッチパネルにおける所定の位置に対するタッチ操作を検出するのに応じて」「ズームモードに移行する」ものであるのに対し、引用発明は、「静止画像の任意の箇所が所定時間以上タッチされ続けた」場合にズームモードに移行するものである点。

〈相違点2〉
本願補正発明は、「前記検出手段が前記タッチパネルにおける拡大ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で拡大して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける縮小ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で縮小して表示させる」ものであるのに対し、引用発明は、「拡大ボタン」、「縮小ボタン」を有するものではない点。


(3)判断
〈相違点1〉について
タッチパネル上の操作に対して複数のモードがあるような機器において、タッチパネルの所定位置にモード切り替えのためのボタンを配置し、そのボタンが押下されたときにモードの切り替えを行うことは、周知例1の上記摘記事項c)、周知例2の上記摘記事項d)に示したように、本願出願前周知技術である。
そして、タッチパネルが所定時間以上タッチされ続けた場合にズームモードに移行するものである引用発明においても、そのようなタッチ操作に代わる構成として上記周知技術である「タッチパネルの所定位置にモード切り替えのためのボタンを配置し、そのボタンが押下されたときにモードの切り替えを行う」構成が有用かつ採用可能であることは、当業者には明らかである。また、引用発明において上記周知技術を採用することを妨げる事情はない。
よって、引用発明に上記周知技術を適用して、モード切り替えのためのボタンが配置された位置である、タッチパネルにおける所定の位置に対するタッチ操作を検出するのに応じてズームモードに移行する構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

〈相違点2〉について
タッチパネル上のジェスチャー操作に加えて、拡大ボタン、縮小ボタンへのタッチ操作により、表示画像を拡大、縮小することも、周知例3の上記摘記事項e)、周知例4の上記摘記事項f)に示したように、本願出願前周知技術である。
そして、タッチパネルへのドラッグ操作を検出した場合に、表示画像を拡大、縮小するものである引用発明においても、上記周知技術である「タッチパネル上のジェスチャー操作に加えて、拡大ボタン、縮小ボタンへのタッチ操作により、表示画像を拡大、縮小する」構成が有用かつ採用可能であることは、当業者には明らかである。また、引用発明において上記周知技術を採用することを妨げる事情はない。
よって、引用発明に上記周知技術を適用して、ドラッグ操作による表示画像の拡大、縮小に加えて、「前記検出手段が前記タッチパネルにおける拡大ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で拡大して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける縮小ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で縮小して表示させる」構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

また、効果についてみても、引用発明に対する上記各周知技術の採用に伴って予測し得ない格別顕著なものが本願補正発明にあるとも認められない。

(4)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-3.むすび
以上のとおり本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年7月20日付けの手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものであり、上記「第2.」の「1.」の〈補正前の請求項1〉の欄に記載したとおりのものである。

2.引用例の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項、引用発明は、上記「第2.」の「2-2.」の「(1)」の欄に記載したとおりである。

3.対比、一致点、相違点
本願発明は、上記「第2.」で検討した本願補正発明から、「移行手段」に関して、「所定のタッチ操作」を「前記タッチパネルにおける所定の位置に対するタッチ操作」との限定を省き、また、「表示制御手段」に関して、「前記検出手段が前記タッチパネルにおける拡大ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で拡大して表示させ、前記検出手段が前記タッチパネルにおける縮小ボタンに対応する位置へのタッチ操作を検出した場合に、前記画像データを所定の倍率で縮小して表示させる」との限定した構成を省くものである。
そうすると、本願発明と引用発明を対比すると、引用発明は、本願発明の全ての発明特定事項を有するものであり、両者の間に相違点はない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-12-14 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2012-181858(P2012-181858)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 間野 裕一  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
山田 正文
発明の名称 情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム  
代理人 國分 孝悦  

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