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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1337687
審判番号 不服2017-8457  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-12 
確定日 2018-03-13 
事件の表示 特願2013- 91941「画像表示装置、それを含む画像表示システム、及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日出願公開、特開2014- 29474、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年4月25日(優先権主張 平成24年6月26日(以下、「優先日」という。))の出願であって、平成28年12月13日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月9日付けで手続補正がなされたが、平成29年3月24日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成29年6月12日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次の通りである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1-2、5、8
・引用文献等 1-4、6

・請求項 6-7
・引用文献等 1-6

引用文献等一覧
1.特開2005-196348号公報
2.特開2000-066647号公報
3.特開平08-055067号公報
4.特開2002-358060号公報
5.特開2007-148350号公報
6.特開2000-187567号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-8に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成29年6月12日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
メモリ上に構成された仮想ページ単位で画像を表示する画像表示装置であって、
画像を表示する表示手段と、
前記メモリ上に、前記仮想ページを構成する機能、及び画像データを仮想ページ単位で記憶する機能を有する仮想ページ制御手段と、
データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信されたデータを、前記表示手段により画像として表示する指示を受付ける入力手段とを含み、
前記仮想ページ制御手段は、前記メモリ上に、オブジェクトを含まない仮想ページを確保する確保手段を含み、
ユーザの操作により、表示されている画像を前記仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、前記受信手段によりデータが受信され、且つ、前記入力手段が前記指示を受けたことに応じて、前記仮想ページ制御手段は、前記確保手段により、前記メモリに仮想ページを新たに追加することにより、オブジェクトを含まない前記仮想ページを確保して、当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶し、
前記表示手段は、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶した仮想ページに書込まれた前記画像データを画像として表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
オブジェクトを含まない仮想ページが前記確保手段により確保される前に、構成されている仮想ページが、前記表示手段により画像として表示されるオブジェクトを含むか否かを判定する判定手段をさらに含み、
前記入力手段が指示を受けたことに応じて、前記判定手段は、前記表示手段により表示中の画像に対応する仮想ページが前記オブジェクトを含むか否かを判定し、
前記仮想ページ制御手段は、前記判定手段による判定結果に応じて、表示中の前記画像の次に表示される画像に対応する領域として、前記確保手段により新たに確保した仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶する請求項1に記載の画像表示装置。

【請求項3】
前記入力手段は、前記表示手段により表示されるアイコンを含み、
前記アイコンの表示態様は、前記受信手段により前記データが受信されたことを受けて、変化することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記入力手段は、前記受信手段により、前記データが受信されたことを受けて、前記表示手段により表示されるアイコンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
オブジェクトを含まない仮想ページが前記確保手段により確保される前に、構成されている仮想ページが、前記表示手段により画像として表示されるオブジェクトを含むか否かを判定する判定手段をさらに含み、
前記入力手段が指示を受けたことに応じて、前記判定手段は、前記表示手段により表示中の画像に対応する仮想ページが前記オブジェクトを含むか否かを判定し、
前記仮想ページ制御手段は、複数の前記仮想ページの全てに関する前記判定手段による判定結果に応じて、前記オブジェクトを含むと判定された仮想ページに記憶されたデータのうち最後に画像として表示されるデータの次に、画像として表示されるデータを記憶するための領域として、前記確保手段により新たに確保した仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶することを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記受信手段により受信されたデータに、複数の画像を1ページに集約して表示するための集約条件が含まれていることを受けて、前記表示手段は、前記受信手段により受信された、複数ページの画像として前記表示手段に表示されるデータに基づく画像データを、前記集約条件にしたがって、前記表示手段に画像として表示することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の画像表示装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載された画像表示装置と、
前記画像表示装置と通信可能な携帯端末装置とを含み、
前記携帯端末装置は、データを前記画像表示装置に送信することを特徴とする画像表示システム。
【請求項8】
画像を表示する表示手段と、データを記憶するメモリと、データを受信する受信手段とを備えた画像表示装置の制御方法であって、
前記メモリ上に仮想ページを構成するステップと、
前記受信手段により受信されたデータを、前記表示手段により画像として表示する指示を受付けるステップと、
ユーザの操作により、表示されている画像を前記仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、前記受信手段によりデータが受信され、且つ、前記指示を受付けたことに応じて、前記メモリに仮想ページを新たに追加することにより、前記メモリ上に、オブジェクトを含まない仮想ページを確保する確保ステップと、
前記確保ステップにより確保されたオブジェクトを含まない前記仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶する記憶ステップと、
前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを前記記憶ステップにより記憶した仮想ページに書込まれた前記画像データを画像として表示するステップとを含むことを特徴とする画像表示装置の制御方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「【0001】
ページ単位に画面表示を行う情報表示装置及びその制御方法に係り、特に、バッファ制御を効率的に行うことにより、より多様で高速なページ表示を可能とした情報表示装置及びその制御方法並びに情報表示プログラムに関する。」

b 「【0024】
図1における本発明の情報表示装置は、CPU(CentralProcessing Unit)1、ROM(Read Only Memory)2、記憶装置(RAM:Random Access Memory)3、I/O4、グラフィックアクセラレータ(GA)5、ディスプレイコントローラ(DC)6、ディスプレイ7により構成される。
CPU1、ROM2、記憶装置(RAM)3、I/O4、グラフィックアクセラレータ5、ディスプレイコントローラ6は、バス8により相互に接続されており、I/O4を介して、図示しないキーボード、タッチパネル、マウス、音声回路、ネットワークインターフェース(I/F)、メモリカードインターフェース、タイマ(時刻記憶・更新手段)等と接続される。」

c 「【0026】
RAM3は、CPU1が制御動作を行う際に、制御プログラムを記憶したり、生成されたデータを一時的に保持したりする。なお、RAM3のメモリ構成(メモリマップ)については後述する。
I/O4は、CPU1が、キーボード、タッチパネル、マウス、音声回路、ネットワークインターフェース(I/F)、メモリカードインターフェース、タイマ等とデータを送受信する際に、入出力する信号を制御するインターフェースである。」

d 「【0029】
ディスプレイコントローラ6は、RAM3の所定ページバッファに記憶された表示データを読み出し、線順次走査によって、読み出した表示データをディスプレイ7に表示させる。
また、ディスプレイコントローラ6は、図示しないレジスタを備えており、このレジスタに、表示ページ(ページバッファから読み出され、ディスプレイ7に表示されるページ)の先頭アドレスを示すページバッファ開始アドレスを記憶することが可能である。そして、ディスプレイコントローラ6は、このレジスタに特定のアドレスを記憶することにより、表示ページの読み出し先となるページバッファを設定することが可能である。」

e 「【0031】
ディスプレイ7は、ディスプレイコントローラ6と接続され、ディスプレイコントローラ6の出力に基づいて画像の表示を行う。
なお、上述の説明においては、情報表示装置がバスマスタアクセス機能を備える場合について説明したが、回路設計上、バスマスタアクセス機能を備えることが困難な場合は、既存の技術の一つとして知られているように、バス8上にDMA回路を追加し、DMAによるデータ転送を行うことも可能である。
<ソフトウェア構成>
次に、ソフトウェア構成について説明する。
【0032】
図2は本発明の第1の実施の形態における情報表示装置のソフトウェア構成を示した図である。
図2に示すように、情報表示装置上で機能するソフトウェアは、主に、OS(システムプログラム)10と、ブラウザ(アプリケーションプログラム)11とによって構成される。
【0033】
OS10には、メモリ管理モジュール10aが内蔵されていて、ブラウザ11には解析・整形部11aと、ヒストリ管理モジュール(表示履歴記録部)11bと、ページ管理モジュール11cとが内蔵されている。
メモリ管理モジュール10aは、メモリ3において、OS10あるいはブラウザ11のプログラムが記憶される領域、および、OS10あるいはブラウザ11によって使用されるヒープ領域の確保あるいは解放といった汎用のオペレーティンスシステムが行う処理を行う。なお、メモリ管理モジュール10aによって確保されたメモリ3上の領域を、以下、適宜「システム領域」と称する。」

f 「【0036】
ヒストリ管理モジュール11bは、各ページバッファに記憶された表示データのページ番号を、表示された順序、表示された時刻および表示された回数と対応付けて記憶している。
ページ管理モジュール11cは、メモリ3において、システム領域として使用されていない領域を、ページバッファを形成するための専用の領域(以下、「ページバッファ専用領域」と称する。)として確保する。そして、ページ管理モジュール11cは、ページバッファ専用領域に、所定数のページバッファを形成し、このページバッファに対するデータの書き込みや読み出し、ページバッファの形成や解放等を管理する。」

g 「【0043】
ページバッファの数と1枚あたりの大きさは、システムの設計時に適切な固定値に設定されている。なお、適切な値は、ディスプレイ7の解像度や色数、搭載されたメモリ容量、システムの用途などにより大幅に変化するが、例えば、一般的な読書用端末を想定した場合、1枚あたりの大きさはディスプレイ1画面分の記憶容量と等価とし、ページバッファを少なくとも2枚、できれば搭載するメモリ容量の許す限りなるべく多くの枚数を、確保することが望ましい。その場合、使用者が設定を意識することなく、容易にシステムを利用することができ、また、ページバッファの数を多く設定すればするほど、使用者が過去のページを参照するときの動作が高速となり、快適に使用することができる。」

h 「【0045】
また、ページ管理モジュール11cが、ページバッファの数や容量を動的に変化させるような構成にすることも可能である。この場合、ページバッファは必要に応じて、ページ管理モジュール11cによって確保または解放されるようになる。新たにページバッファを確保するときは、ページ管理モジュール11cによって管理されているメモリ領域の空き領域に、新たなページバッファが確保される。不要になったページバッファを解放するときは、ページ管理モジュール11cによって、不要になったページバッファの領域が開放され、空き領域に加えられる。なお、ページバッファを解放する場合は、既存の技術である断片化解消処理を行うと良い。すなわち、ページバッファの空き領域が断片的に複数残っているような状況になったとき、使用中のページバッファを移動させて、断片化された空き領域を一つにまとめる作業を行う。」

i 「【0057】
図5(1)において、ページバッファ21には既に閲覧済みの1ページ目のラスタ画像が格納されていて、ページバッファ22には現在閲覧中の2ページ目のラスタ画像が格納されている。残りの領域は空き領域としてページ管理モジュールが一括して管理している。アプリケーションプログラム11に設けられたページ管理モジュール11cは、ページバッファ22を表示ページに指定して、ディスプレイコントローラ6に表示を行わせている。ディスプレイコントローラ6は、ページバッファ22の内容をディスプレイ7に一定の周期で転送し続けている。
【0058】
次に、図5(2)において、使用者がタッチパネル等からI/O4を介してページ送りを指示すると、アプリケーションプログラム11に設けられたページ管理モジュール11cは、空き領域の残量を確認し、十分な容量があれば、空き領域の中からページバッファを1枚新たに確保する。断片化を減らすため、新たに確保するページバッファは使用中のページバッファに隣接していることが望ましい。」

j 「【0060】
そして、確保したページバッファ23を描画ページに指定して、グラフィックアクセラレータ5に3ページ目の描画を行わせる。グラフィックアクセラレータ5はアプリケーションプログラム11が用意した描画命令データを読み出し、読み出した描画命令データにもとづいて、ページバッファ上にラスタ画像を生成する。通常、グラフィックアクセラレータ5が1ページ分の描画を行うためには、一定の時間、例えば、1秒程度の時間を要する。この間、ディスプレイコントローラ6はページバッファ22を表示したままである。」

ここで、段落【0057】の記載から、段落【0060】の「ページバッファ23」に描画される「3ページ目」は、閲覧中の次のページであることは、明らかであるから、
上記a?jより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「ページ単位に画面表示を行う情報表示装置であって(【0001】)、
情報表示装置は、CPU(CentralProcessing Unit)1、ROM(Read Only Memory)2、記憶装置(RAM:Random Access Memory)3、I/O4、グラフィックアクセラレータ(GA)5、ディスプレイコントローラ(DC)6、ディスプレイ7により構成され(【0024】)、
情報表示装置上で機能するソフトウェアは、主に、OS(システムプログラム)10と、ブラウザ(アプリケーションプログラム)11とによって構成され、ブラウザ11にはページ管理モジュール11cとが内蔵されており(【0032】、【0033】)、
ディスプレイコントローラ6は、RAM3の所定ページバッファに記憶された表示データを読み出し、読み出した表示データをディスプレイ7に表示させ(【0029】)、
ディスプレイ7は、ディスプレイコントローラ6と接続され、ディスプレイコントローラ6の出力に基づいて画像の表示を行い(【0031】)、
I/O4は、ネットワークインターフェース(I/F)等とデータを送受信する際に、入出力する信号を制御するインターフェースであり(【0026】)、
ページバッファの1枚あたりの大きさは、ディスプレイ1画面分の記憶容量と等価とし(【0043】)、
ページ管理モジュール11cは、メモリ3において、システム領域として使用されていない領域を、ページバッファを形成するためのページバッファ専用領域として確保し、ページバッファ専用領域に、所定数のページバッファを形成し、このページバッファに対するデータの書き込みや読み出し、ページバッファの形成や解放等を管理し(【0036】)、
使用者がページ送りを指示すると、ページ管理モジュール11cは、ページ管理モジュール11cによって管理されているメモリ領域の空き領域の残量を確認し、十分な容量があれば、空き領域の中からページバッファを1枚新たに確保し(【0045】、【0058】)、そして、確保したページバッファ23を描画ページに指定して、グラフィックアクセラレータ5に閲覧中の次のページの描画を行わせる(【0060】)情報表示装置(【0001】)。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態にかかる映像描画装置について説明する。
(第1の実施の形態)この発明の第1の実施の形態にかかる映像描画装置は、図1に示すように、記憶部1と、入力装置(入力部)2と、画像メモリ3と、描画部4と、映像出力部5と、映像表示装置(映像表示部)6と、から構成される。」

b 「【0017】描画部4は、描画プロセッサ等から構成され、次ページ検索手段(次ページ検索部)41と、ページ画像描画手段(ページ画像描画部)42と、一覧画像描画手段(一覧画像描画部)43とから構成される。次ページ検索部41は、映像出力部5が次に表示すべきページ画像をページデータ記憶部11より索出する。ページデータ描画部42は、次ページ検索部41が索出したページ画像をページデータ記憶部11から読み取って、第1の画像メモリ31及び第2の画像メモリ32に供給する。一覧データ描画部43は、一覧画像を一覧データ記憶部12から読み取って、第1の画像メモリ31及び第2の画像メモリ32に展開する。
【0018】映像出力部5は、ドライバプログラムを実行するプロセッサ等から構成され、画像出力手段(画像出力部)51と、選択枠出力手段(選択枠出力部)52と、を備える。画像出力部51は、第1の画像メモリ31又は第2の画像メモリ32が記憶している画像データを読み取り、読み取った画像データを所定の形式の映像信号に変換して映像表示部6に出力する。選択枠出力部52は、画像表示部6が一覧画像を表示しているときに、選択されている対象のページを示すための選択枠aを表す映像信号を、映像表示部6に出力する。
【0019】映像表示部6は、液晶表示素子等から構成され、映像出力部5から供給される映像信号が表す画像を、例えば、スクリーンに拡大投影する等の手法により表示する。」

上記a、bより、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献2の記載箇所を示す。)。
「映像描画装置は、記憶部1と、入力装置(入力部)2と、画像メモリ3と、描画部4と、映像出力部5と、映像表示装置(映像表示部)6と、から構成され(【0013】)、
描画部4は、ページ画像描画手段(ページ画像描画部)42から構成され、ページデータ描画部42は、ページ画像を、第1の画像メモリ31及び第2の画像メモリ32に供給し(【0017】)、
映像出力部5は、画像出力手段(画像出力部)51を備え、画像出力部51は、第1の画像メモリ31又は第2の画像メモリ32が記憶している画像データを読み取り、映像表示部6に出力し(【0018】)、
映像表示部6は、映像出力部5から供給される映像信号が表す画像を、表示する(【0019】)映像描画装置。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0032】受信側の装置も同様に黒板ウィンドウ402が表示される。ただし、ファイルアイコン403?405は表示されるとは限らない。回線制御部108から画像を表示する範囲とファイル中の画像を受信すると、送信側の黒板ウィンドウ402と同じ範囲に同じ画像406が表示される。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0122】プロジェクタ200では、プロジェクタ表示データを受信すると、ステップS566?S574,S538を経て、受信したプロジェクタ表示データに含まれる各ページデータが、その末尾のページに対応するページデータを先頭としたスタック方式でスタック領域に格納され、エリアインの通知を受信したことの応答が仮想オブジェクト管理装置100に通知される。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0010】
上記構成によれば、表示用データを受信すると、表示領域分割手段によって、表示装置の表示領域が、現在とは異なる数の分割領域に分割される。そして、表示装置制御手段が表示装置を制御することによって、分割された各分割領域には、表示用データに対応する画像が表示される。これにより、一覧表示に用いる表示用データが送信端末装置から順次送信される場合であっても、表示用データの送信に応じて表示領域を分割し、表示用データに対応する画像を一覧表示することができる。
【0011】
さらに、この分割は、通信部が送信端末装置から表示用データを受信したことに応答して、自動的に行われる。これにより、表示用データが順次送信されてくる場合であっても、ユーザが分割のために一々画像出力装置に対して分割を指示する必要がない。つまり、送信端末装置から受信した表示用データに対応する画像を表示装置に簡便に一覧表示させることができる。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0032】印刷データバッファ205の容量がフル状態であると検知した場合、スプール領域203から印刷データの取り込みを中断する(S304)。そして、ホストコンピュータ内のRAM領域の空きを検出する(S305)。さらに、ホストコンピュータ内のRAM領域に追加印刷データバッファを確保可能か判定する(S306)。追加印刷データバッファ213を確保可能であると判定した場合、ホストコンピュータ内のRAM領域に追加印刷データバッファ213を確保する(S307)。そして、スプール領域203から印刷データの取り込みを再開し、追加印刷データバッファ213に格納する。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1を主たる引用発明とした場合
ア 対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1の「記憶装置(RAM、メモリ)3」、「ページバッファ」、「情報表示装置」、「ディスプレイ7」、「表示データ」は、それぞれ、本願発明1の「メモリ」、「仮想ページ」、「画像表示装置」、「表示手段」、「画像データ」に相当する。

(イ)引用発明1は「RAM3の所定ページバッファに記憶された表示データを読み出し、読み出した表示データをディスプレイ7に表示させ」、「ページバッファの1枚あたりの大きさは、ディスプレイ1画面分の記憶容量と等価」であるから、引用発明1の「ページ単位に画面表示を行う情報表示装置」は、本願発明1の「メモリ上に構成された仮想ページ単位で画像を表示する画像表示装置」に相当する。

(ウ)引用発明1の「ディスプレイコントローラ6と接続され、ディスプレイコントローラ6の出力に基づいて画像の表示を行」う「ディスプレイ7」は、本願発明1の「画像を表示する表示手段」に相当する。

(エ)引用発明1の「ページ管理モジュール11c」の「メモリ3において、システム領域として使用されていない領域を、ページバッファを形成するためのページバッファ専用領域として確保し、ページバッファ専用領域に、所定数のページバッファを形成」する機能は、本願発明1の「前記メモリ上に、前記仮想ページを構成する機能」に相当する。
また、引用発明1の「ページ管理モジュール11c」の「このページバッファに対するデータの書き込み」する機能は、本願発明1の「画像データを仮想ページ単位で記憶する機能」に相当する。
そして、引用発明1の「ページ管理モジュール11c」は、「情報表示装置上で機能するソフトウェア」であるから、「CPU(CentralProcessing Unit)1」によって実行されるものである。
したがって、引用発明1の「CPU(CentralProcessing Unit)1」と協働して、「メモリ3において、システム領域として使用されていない領域を、ページバッファを形成するためのページバッファ専用領域として確保し、ページバッファ専用領域に、所定数のページバッファを形成し、このページバッファに対するデータの書き込」む機能を実行する「ページ管理モジュール11c」は、本願発明1の「前記メモリ上に、前記仮想ページを構成する機能、及び画像データを仮想ページ単位で記憶する機能を有する仮想ページ制御手段」といえる。

(オ)引用発明1の「ネットワークインターフェース(I/F)等とデータを送受信する際に、入出力する信号を制御するインターフェースであ」る「I/O4」は、本願発明1の「データを受信する受信手段」に相当する。

(カ)引用発明1は、「確保したページバッファ23を描画ページに指定して、グラフィックアクセラレータ5に閲覧中の次のページの描画を行わせる」のであるから、描画前の新たに「確保したページバッファ23」は、「表示データ」を含んでおらず、
引用発明1において、「ページ管理モジュール11c」が「メモリ領域の」「空き領域の中からページバッファを1枚新たに確保」することは、本願発明1の「前記メモリ上に、オブジェクトを含まない仮想ページを確保する」ことに相当する。
そして、引用発明1の「ページ管理モジュール11c」は、「情報表示装置上で機能するソフトウェア」であるから、引用発明1の「CPU(CentralProcessing Unit)1」と協働して、「空き領域の中からページバッファを1枚新たに確保」する「ページ管理モジュール11c」は、本願発明1の「前記仮想ページ制御手段」に含まれる「前記メモリ上に、オブジェクトを含まない仮想ページを確保する確保手段」に相当する。

(キ)上記(カ)を踏まえると、引用発明1の「CPU(CentralProcessing Unit)1」と協働して、「ページ管理モジュール11cは、」「メモリ領域の」「空き領域の中からページバッファを1枚新たに確保し、そして、確保したページバッファ23を描画ページに指定して、グラフィックアクセラレータ5に閲覧中の次のページの描画を行わせる」ことと、本願発明1の「前記仮想ページ制御手段は、前記確保手段により、前記メモリに仮想ページを新たに追加することにより、オブジェクトを含まない前記仮想ページを確保して、当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶し」とは、「前記仮想ページ制御手段は、前記確保手段により、前記メモリに仮想ページを新たに追加することにより、オブジェクトを含まない前記仮想ページを確保して、当該仮想ページに、データに基づく画像データを記憶し」の点で共通する。

(ク)引用発明1の「ディスプレイコントローラ6は、RAM3の所定ページバッファに記憶された表示データを読み出し、読み出した表示データをディスプレイ7に表示させ、ディスプレイ7は、ディスプレイコントローラ6と接続され、ディスプレイコントローラ6の出力に基づいて画像の表示を行」うことと、本願発明1の「前記表示手段は、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶した仮想ページに書込まれた前記画像データを画像として表示する」こととは、「前記表示手段は、データに基づく画像データを記憶した仮想ページに書込まれた前記画像データを画像として表示する」ことの点で共通する。

すると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「メモリ上に構成された仮想ページ単位で画像を表示する画像表示装置であって、
画像を表示する表示手段と、
前記メモリ上に、前記仮想ページを構成する機能、及び画像データを仮想ページ単位で記憶する機能を有する仮想ページ制御手段と、
データを受信する受信手段と、
前記仮想ページ制御手段は、前記メモリ上に、オブジェクトを含まない仮想ページを確保する確保手段を含み、
前記仮想ページ制御手段は、前記確保手段により、前記メモリに仮想ページを新たに追加することにより、オブジェクトを含まない前記仮想ページを確保して、当該仮想ページに、データに基づく画像データを記憶し、
前記表示手段は、データに基づく画像データを記憶した仮想ページに書込まれた前記画像データを画像として表示する画像表示装置。」

(相違点1)
本願発明1は、「前記受信手段により受信されたデータを、前記表示手段により画像として表示する指示を受付ける入力手段とを含」むのに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。
(相違点2)
本願発明1は、「ユーザの操作により、表示されている画像を前記仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、前記受信手段によりデータが受信され」るのに対して、引用発明1は、「データを送受信する」が、「データ」が、どのようなときに受信されるか特定がない点。
(相違点3)
本願発明1は、「前記入力手段が前記指示を受けたことに応じて」「当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶」するのに対して、引用発明1は、「データを送受信する」が、「データ」がどのようなデータであるか特定されておらず、受信されたデータに基づく画像データを記憶することの特定がない点。
(相違点4)
本願発明1は、「前記表示手段は、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを」「画像として表示する」のに対して、引用発明1は、「データを送受信する」が、「データ」がどのようなデータであるか特定されておらず、受信されたデータに基づく画像データを画像として表示することの特定がない点。

イ 判断
事案に鑑みて、上記相違点2、3についてまとめて検討する。
引用文献2-4、6には、ユーザの操作により、表示されている画像を仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、受信手段によりデータが受信され、入力手段が指示を受けたことに応じて、当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶することは、記載されていない。
したがって、引用発明1の「ページ単位に画面表示を行う情報表示装置」において、上記相違点2及び3に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1、4について検討するまでもなく、引用発明1、引用文献2-4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)引用発明2を主たる引用発明とした場合
ア 対比
本願発明1と引用発明2を対比すると、上記相違点2及び3と同様の相違点を有する。

イ 判断
上記相違点について検討する。
引用文献1、3、4、6には、ユーザの操作により、表示されている画像を仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、受信手段によりデータが受信され、入力手段が指示を受けたことに応じて、当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶することは、記載されていない。
したがって、引用発明2の「映像描画装置」において、上記相違点に係る本願発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明2、引用文献1、3、4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明1を直接または間接的に引用する本願発明2-5は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用文献2-4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、引用発明2、引用文献1、3、4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

3 本願発明6、7について
本願発明1を直接または間接的に引用する本願発明6、7は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明1、引用文献2-6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、引用発明2、引用文献1、3-6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

4 本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、上記相違点2に係る本願発明1の「ユーザの操作により、表示されている画像を前記仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、前記受信手段によりデータが受信され」及び上記相違点3に係る本願発明1の「前記入力手段が前記指示を受けたことに応じて」「当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶し」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明1、引用文献2-4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、引用発明2、引用文献1、3、4、6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-8は、上記相違点2、3に係る「ユーザの操作により、表示されている画像を前記仮想ページ単位で操作する処理が繰返される間に、前記受信手段によりデータが受信され」「前記入力手段が前記指示を受けたことに応じて」「当該仮想ページに、前記受信手段により受信されたデータに基づく画像データを記憶し」という構成又は対応する構成を有するものとなっており、引用発明1、引用文献2-6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、引用発明2、引用文献1、3-6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたともいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-02-26 
出願番号 特願2013-91941(P2013-91941)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
▲うし▼田 真悟
発明の名称 画像表示装置、それを含む画像表示システム、及びその制御方法  
代理人 清水 敏  

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