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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1337851
審判番号 不服2015-14249  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-29 
確定日 2018-02-27 
事件の表示 特願2012-528142「ケラチン繊維を処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年6月23日国際公開、WO2011/074136、平成25年4月25日国内公表、特表2013-514268〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2009年12月18日を国際出願日とする特許出願であって、平成27年3月26日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年7月29日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成29年1月30日付けで当審から最後の拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 平成29年8月4日提出の手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)の適否
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、次のとおり補正するものである。なお、旧請求項とは、平成27年7月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項である。

ア 旧請求項1の
「システイン、塩基性アルギニン及び塩基性リシンを除く少なくとも1種のアミノ酸」を、
「プロリン、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸」とする。

イ 旧請求項14の
「システイン、塩基性アルギニン及び塩基性リシンを除く少なくとも1種のアミノ酸」を、
「プロリン、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸」とする。

ウ 旧請求項15の
「システイン、塩基性アルギニン及び塩基性リシンを除く少なくとも1種のアミノ酸」を、
「プロリン、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸」とする。

エ 旧請求項10-12を削除し、旧請求項13、14、15を請求項10、11、12とする。併せて、旧請求項13における引用請求項「1から12」を、新請求項10では「1から9」とする。

(2)本件補正の適否についての検討
上記補正事項ア-ウは、当審からの平成29年1月30日付けの拒絶理由通知において、「ケラチン繊維のパーマネント変形が、還元剤あるいは【化1】の化合物を使用せず、『システイン、塩基性アルギニン及び塩基性リシンを除く少なくとも1種のアミノ酸』を使用することによってなしうると解される根拠を見いだすことはできず、本願発明の規定の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。」との指摘に対して、使用されるアミノ酸を、実施例で示されたものとするものであり、特許法第17条の2第5項第4号の明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
上記補正事項エは、同条第5項第1号の請求項の削除を目的とするもの、これに伴う引用請求項のずれを解消するための明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、いずれの補正事項も、当初明細書に記載した事項の範囲内でなされた補正であり、同条第3項に適合する。
また、同条第4項に違反するものでもない。

3 本願発明
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項ないし第5項の規定に適合するから、本願の請求項1-12に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明12」という。)は、平成29年8月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、本願発明1は以下のとおりのものである。
「ケラチン繊維のパーマネント変形方法であって、
前記ケラチン繊維に機械的張力を与える工程と、
前記ケラチン繊維上に、プロリン、メチオニン、ヒスチジン、グリシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含む組成物を適用する工程と、
次いで、前記ケラチン繊維を前記組成物中の蒸発性成分の蒸発を制限する閉塞空間中に配置する工程と、
次いで、前記ケラチン繊維を加熱する工程と
を含み、
前記組成物が、還元剤も、式:
【化1】

(式中、
Xは、O^(-)、OH、NH_(2)、O-OH及びO-COO^(-)からなる群から選択される基である)
の炭酸イオン源も含有しない、方法。」

4 当審における拒絶理由の概要
当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願は発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願は特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないというものであり、具体的には以下のとおりである。

「本願明細書には、…ケラチン繊維のパーマネント変形方法に関する記載はあるが、本願発明の目的は、…良好な美容効果、とりわけ、優れた修復効果又は回復効果をケラチン繊維にもたらすことであり、また、実施例においては、…処理後の毛髪の柔軟さ、滑らかさ、つや、もつれのなさが観察されるに留まる。このため、請求項1で特定するところの各ステップを経ることによってパーマネント変形が達成できるのか否か、確認できない。仮に、実施例において、毛髪に対するウェーブ形成等のヘアスタイリングが行われているとしても、それが『パーマネント』すなわち(半)永久的なヘアスタイリングとなることを、本願明細書の如何なる記載からも理解することができない。
このため、本願発明1、及びこれに従属する本願発明2-13に係る『ケラチン繊維のパーマネント変形方法』は、どのようにすれば実施しうるのか、本願明細書の如何なる記載を参酌しても判然としない。
そして、ケラチン繊維のパーマネント変形が、還元剤あるいは【化1】の化合物を使用せず、『システイン、塩基性アルギニン及び塩基性リシンを除く少なくとも1種のアミノ酸』を使用することによってなしうると解される根拠を見いだすことはできず、本願発明の規定の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1-13を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、また、本願発明1-13は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
そして、『ケラチン繊維のパーマネント変形用組成物』に係る本願発明14、『ケラチン繊維のパーマネント変形用キット』に係る本願発明15についても同様である。」

5 当審の判断
(1)本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
ア 「本発明の目的は、良好な美容効果、とりわけ、優れた修復効果又は回復効果をケラチン繊維にもたらし、長時間にわたり多様なストレスに対して有効であり得る、システイン、塩基性アルギニン及び塩基性リシンを除くアミノ酸を、しかも比較的少量で使用した、ケラチン繊維(毛髪等)の新しい処理方法を提供することである。」(【0009】)

イ 「本発明者らは、ケラチン繊維のためのある特定の加熱方法と組み合わせて少なくとも1種のアミノ酸を含む組成物を用いることにより、毛髪等のケラチン繊維に良好な美容効果を、特に、長時間にわたり多様なストレスに対して有効であり得る優れた修復効果又は回復効果を、アミノ酸を用いてもたらすことが可能であるということを発見した。」(【0029】)

ウ 「[ケラチン繊維のパーマネント変形(Permanent Deformation)方法]
ケラチン繊維の処理方法に関する本発明によれば、ケラチン繊維に、パーマネント変形に典型的に使用される機械的張力をかけてもよい。

ケラチン繊維のパーマネント変形のためのこの方法は、ケラチン繊維を酸化させる工程を一切用いずに実施できる。したがって、本発明による方法に要する時間は、酸化工程を必要とする従来の方法に要する時間より短くすることができる。更に、酸化工程によりケラチン繊維に与えられる損傷を回避できる。」(【0073】-【0078】)

エ 「この組成物は、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形において使用される酸化剤と組み合わせて使用する必要はないと考えられる。したがって、ケラチン繊維をパーマネント変形する場合には、該組成物は1工程で使用してもよいが、ケラチン繊維の従来のパーマネント変形においては、2工程(還元工程及び酸化工程)が必要である。」(【0103】)

オ 「(実施例)
本発明を、実施例により、更に詳細に記載することとするが、この実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
組成物1
表1に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物1」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
表1
┌───────────────────┬─────────┐
│プロリン │ 5 │
├───────────────────┼─────────┤
│メチオニン │ 2 │
├───────────────────┼─────────┤
│pH調整剤(NaOH) │ pH8.5に応じて適量│
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
└───────────────────┴─────────┘
(実施例1)
組成物1を、1.7cmの加熱パーマローラーに予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次いで、パーマローラーを、プラスチックフィルムで覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法後、毛髪をすすぎ、パーマローラーから外して乾燥させた。
毛髪は、柔軟であり、滑らかで、もつれがなかった。
比較例1
組成物1を、実施例1において用いたものと同じ天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。毛髪を15分間加熱せずに放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
処理後に特定の変化は観察されなかった。
組成物2
表2に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物2」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
表2
┌───────────────────┬─────────┐
│ヒスチジン │ 3 │
├───────────────────┼─────────┤
│グリシン │ 10 │
├───────────────────┼─────────┤
│pH調整剤 │ pH7.5に応じて適量│
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
└───────────────────┴─────────┘
(実施例2)
組成物2を、1.7cmの加熱パーマローラーに予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次に、このパーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)上に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をすすぎ、パーマローラーから外して乾燥させた。
毛髪は、滑らかでつやがあった。
(比較例2)
組成物2を、実施例2において用いたものと同じ天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。毛髪を、加熱せずに15分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
処理後に特定の変化は観察されなかった。
組成物3
表3に示す以下の組成を有する毛髪処理用組成物(「組成物3」と呼ぶ)を調製した(活性成分の単位は重量%)。
表3
┌───────────────────┬─────────┐
│ロイシン │ 1.5 │
├───────────────────┼─────────┤
│フェニルアラニン │ 1 │
├───────────────────┼─────────┤
│トレオニン │ 10 │
├───────────────────┼─────────┤
│pH調整剤(NaOH) │ pH8に応じて適量 │
├───────────────────┼─────────┤
│水 │ 100に応じて適量 │
└───────────────────┴─────────┘
(実施例3)
組成物3を、1.7cmの加熱パーマローラーに予め巻いておいた天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。次に、このパーマローラーを、プラスチックフィルムにより覆い、Digital Perm Machine(Oohiro、型番ODIS-2)上に差し込んだ。90℃で15分間の加熱方法の後、毛髪をすすぎ、パーマローラーから外して乾燥させた。
毛髪は、滑らかで、もつれがなく、つやがあった。
(比較例3)
組成物3を、実施例3において用いたものと同じ天然の日本人の毛髪束1gに15分間適用した。毛髪を、加熱せずに15分間放置した後、毛髪をすすぎ、乾燥させた。
処理後に特定の変化は観察されなかった。」(【0109】-【0127】)

(2)本願発明1に係る特許法第36条第4項第1号についての検討
本願の発明の詳細な説明には、上記(1)ウ及び(1)エのように、ケラチン繊維のパーマネント変形方法に関する記載はあるが、本願発明の目的は、一義的には、上記(1)ア及び(1)イのように、良好な美容効果、とりわけ、優れた修復効果又は回復効果をケラチン繊維にもたらすことであると認められ、また、実施例においては、上記(1)オのように、処理後の毛髪の柔軟さ、滑らかさ、つや、もつれのなさが観察されるに留まる。このため、請求項1で特定するところの各ステップを経ることによってパーマネント変形が達成できるのか否か、確認できない。仮に、実施例において、毛髪に対するウェーブ形成等のヘアスタイリングが行われているとしても、それが「パーマネント」すなわち(半)永久的なヘアスタイリングとなることを、本願の発明の詳細な説明の如何なる記載からも理解することができない。
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1の実施(特に、「ケラチン繊維のパーマネント変形」)をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

請求人は、平成29年8月4日提出の意見書において、本願の発明の詳細な説明の実施例において本願発明に係る組成物として使用されている「組成物1」、「組成物2」、及び「組成物3」を用いて、本願の発明の詳細な説明の「実施例1」、「実施例2」、及び「実施例3」の処理前後の毛髪の形状の観察結果を示しつつ、「本願明細書の実施例1?3の処理を受けた毛髪はカールしており、その形状は2ヶ月経過後も維持されております。このように、本願発明がケラチン繊維のパーマネント変形を実際にもたらすことは明らかです。してみますと、本願の発明の詳細な説明は所謂実施可能要件を満たすものであります。」と主張する。

しかし、この「その形状は2ヶ月経過後も維持されております。」との結果は、「実施例1、実施例2及び実施例3の処理を受けて室温で2ヶ月経過後」のもの、つまり、室温で2ヶ月放置したものであるにすぎず、カール(変形)後の形状が2ヶ月経過後も維持されているとはいえ、これは、毛髪に対する洗髪等の日常のケアや気象条件の変化のような、生活上の一般的なストレスを与えても、その形状が(半)永久的に維持されることを確認したものではない。このため、本願発明1のステップをケラチン繊維に対して行うことによって、変形後の形状の(半)永久的な維持、すなわち、「パーマネント変形」を実現できることは、上記意見書の記載を参酌しても、依然として確認されているものとはいえない。
そうすると、本願発明1に係る「ケラチン繊維のパーマネント変形」は、どのようにすれば実施しうるのか、本願の発明の詳細な説明の如何なる記載を参酌しても依然として判然としない。

(3)本願発明1に係る特許法第36条第6項第1号についての検討
上記のとおり、本願発明1は、当業者が本願の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づき、これを実施することができないのであるから、本願発明1は、本願の発明の詳細な説明の記載及び技術常識によっては、当業者が課題(「ケラチン繊維のパーマネント変形」)を解決できると認識できる範囲のものということはできず、本願の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(4)本願発明2-12について
上記(2)、(3)での検討事項は、本願発明11のような「組成物」の発明、及び、本願発明12のような「キット」の発明においても同様に妥当するものといえる。そうすると、本願発明1を引用する本願発明2-10、並びに、本願発明11及び本願発明12は、本願発明1と同様、どのようにすれば実施しうるのか、本願の発明の詳細な説明の如何なる記載を参酌しても依然として判然としないし、また、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

(5)まとめ
よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1-12を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。
また、本願発明1-12は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1-12について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているとはいえず、また、本願の特許請求の範囲の記載は、本願発明1-12について、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-28 
結審通知日 2017-10-02 
審決日 2017-10-13 
出願番号 特願2012-528142(P2012-528142)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A61K)
P 1 8・ 536- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 直子  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大熊 幸治
長谷川 茜
発明の名称 ケラチン繊維を処理する方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
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