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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1337909
審判番号 不服2016-13473  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-08 
確定日 2018-02-28 
事件の表示 特願2012-104237号「ゲーミングマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-230271号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年4月27日に特許出願されたものであって,平成28年7月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年9月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,当審において,平成29年3月13日付けで拒絶の理由が通知され,これに対し同年6月7日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本件発明について
1 本件発明
本願の請求項1?4に係る発明は,平成28年9月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載されたとおりのものであるところ,請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は,次に特定されるとおりのものである(A?Eについては,発明特定事項を分説するため当審で付与した。)。
「【請求項1】
A 表示窓を有した筐体と,
B 前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され,複数のシンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと,
C 遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光と,前記可視光よりも視認性が低い可視光とを前記リール帯に切り替え可能に照射する照射光装置とを有しており,
D 前記リールは,前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し,
E 前記照射光装置は,前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され,前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されており,前記可視光よりも視認性が低い可視光を出射するフロントライト装置として用いられるとともに,全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように,前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニットを有していることを特徴とするゲーミングマシン。」

2 刊行物に記載された事項
(1)刊行物1
当審における拒絶の理由(平成29年3月13日付け拒絶理由通知書)に刊行物1として引用された本願の遡及出願日前に頒布された刊行物である特開2005-124739号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
(ア)「【0026】
図1は,スロットマシン1の外観構造を表した正面図,図2はスロットマシン1の内部構造を表した図である。図1及び図2において,スロットマシン1は,箱状の筐体2と,筐体2と蝶番機構により開閉可能に取り付けられたフロントドア3とを備えて構成されている。
【0027】
フロントドア3の遊技者に面する側には,意匠的にデザインされ硬質プラスチックでそれぞれほぼ一体的に形成された,いわゆる化粧板に相当する上部パネル部4,中部パネル部5,及び下部パネル部6が設けられている。そして,中部パネル部5と下部パネル部6との間に,遊技者側に若干突出し,ゲーム操作をおこなうための後述するスイッチ類が配置されている操作卓7が一体的に設けられている。なお,上部パネル部4,中部パネル部5,下部パネル部6,及び操作卓7は遊技者側に面し,これらにより「前面パネル部」が構成されている。
・・・
【0030】
中部パネル部5には,硬質プラスチック板等で形成されたパネル面50が設けられている。パネル面50のほぼ中央には略長方形の透明な表示窓51が形成され,表示窓51を通して筐体2内に取り付けられている3個のリール21a,21b,21cと,後述する背景映像表示部29を目視できるようになっている。
【0031】
ここで,詳細は後述するが,回胴装置20は,3個の円筒形状のリール21a,21b,21cが回転軸方向に並べられて構成され,筐体2内に設置されている。各リール21a,21b,21cの周面にはその周方向に沿って複数種類の図柄が描かれ,表示窓51は,一つのリールにつき上下方向に3個の図柄を表示できる大きさに形成されている。つまり,表示窓51を通して,遊技者は,縦方向に3個,横方向に3列の図柄を目視することができる。したがって,ここでは,表示窓51から目視される各リール21a,21b,21cの周面側を「リールの表示面」としている。また,遊技者の指示操作に応じて,各リール21a,21b,21cは回転及び停止の動作が行われ,これにより,表示されるリールの図柄の種類が変更されるようになっている。」

(イ)「【0044】
サブ制御基板330の下方には,リール21a,21b,21cを目視させるための表示窓51を有するパネル面50が取り付けられている。表示窓51の上下端側に,リール21a,21b,21cに向けて映像を投影する2個の投影部34a,34bが取り付けられている。なお,投影部34a,34bは,フラットタイプの例えばカラー液晶ディスプレイであり,詳細については後述する。」

(ウ)「【0056】
第1,第2リング部213,214及び梁部215から形成されるリール21aの周面には,長尺状のリールテープ28aが貼り付けられる。リールテープ28aは,プラスチックシートからなり,その表面にはハーフミラー加工が施されて鏡面282aが形成され,裏面には複数種類の図柄281aが印刷さている。そして,リールテープ28aの裏面側がリール21aの周面に当接して捲装されている。これにより,リール21aの周面は,通常の状態では鏡面282aしか見えず,裏面側から光を当てると鏡面282aを透過して図柄281aが見えるようになっている。
【0057】
なお,透明なプラスチックシートの一方の面にハーフミラー加工が施され,他方の面に入射した光をほぼ透過させる性質を有するリールテープをここでは「ハーフミラーテープ」と呼んでいる。また,他のリール21b,21cの周面にも図柄の配列のみが異なる同様のリールテープがそれぞれ捲装されて貼り付けられる。」

(エ)「【0063】
なお,投影部34a,34bを形成する液晶ディスプレイは,バックライトを有してユニット化された自発光型の映像表示装置である。また,投影部34a,34bは,上述の液晶ディスプレイに限定されるものではなく,例えば有機ELから形成された表示装置等,自発光型の表示装置であれば何れでもよい。また,演出画像が印刷された透過フィルムを映写して表示する映写装置のように静止画像を投影する表示装置でもよい。また,投影部34a,34bは,1ライン(光画像列)づづスキャニングして2次元の映像を形成し投影するものでもよい。
【0064】
図6(a)は,回胴装置20と背景映像表示部29によって演出映像を表示する表示態様を表している。この場合,任意に選択されたリール21のバックランプユニット26が消灯し,そのリール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると,リール21の周面に形成されている鏡面で映像が反射する。これにより,遊技者PEYEは表示窓51を通して反射映像MIMGを観察できる。
・・・
【0067】
なお,バックランプユニット26a,26b,26cのいずれかを選択して点灯させることで,そのバックランプを有するリール21のみに図柄像RIMGを表示させることができる。そして,バックランプユニット26a,26b,26cを点灯させないリール21に向けて部分的に投影部34a,34bが映像を投影すると,そのリール21のみに反射映像MIMGが表示される。」

(オ)「【0106】
図11は,BBゲーム告知演出の表示例を示している。この表示例の場合,中央のリール21bのバックランプユニット26は点灯して図柄を透過表示させている。また,左右のリール21a,21cのバックランプユニット26は消灯され,これにより両リール21a,21cの図柄は透過表示されない。また,左右のリール21,21cの鏡面に例えば「GO」の文字を表す演出映像が投影されると,これらの映像がリール21a,21cの鏡面で反射して表示される。また,リール21a,21b,21cの背後に背景映像表示部29による例えば「花火」の背景映像BIMGが演出表示される。」

(カ)上記【0064】には「図6(a)は,回胴装置20・・・によって演出映像を表示する表示態様を表している・・・リール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると,リール21の周面に形成されている鏡面で映像が反射する。これにより,遊技者PEYEは表示窓51を通して反射映像MIMGを観察できる」と記載され,上記【0030】には,「表示窓51を通して筐体2内に取り付けられている3個のリール21a,21b,21c・・・を目視できる」と記載され,上記【0031】には「3個の円筒形状のリール21a,21b,21cが回転軸方向に並べられて構成され,筐体2内に設置され」と記載され,上記【0064】の「リール21」は,3個のリール21a,21b,21cであることは明らかである。これらのことを参酌すると,【図6】(a)には,投影部34a,34bは,筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置に配置されるとともに,回転軸方向に並べられた3個のリール21a,21b,21cに対向して配置されていることが図示されているといえる。

上記(ア)?(オ)の記載事項及び上記(カ)の図示内容から,刊行物1には,以下の事項が記載されているといえる。

(a)上記【0026】には「スロットマシン1は,箱状の筐体2と,筐体2と蝶番機構により開閉可能に取り付けられたフロントドア3とを備え」と記載され,上記【0027】には「フロントドア3・・・には・・・中部パネル部5・・・が設けられ」と記載され,上記【0030】には「中部パネル部5には・・・パネル面50が設けられ・・・パネル面50・・・には・・・表示窓51が形成され」と記載され,「フロントドア3」は,通常時は閉の状態であることは明らかであるから,筐体2の一部であるといえる。
これらのことから,刊行物1には,表示窓51が形成された筐体2が記載されているといえる。

(b)上記【0030】には,「表示窓51を通して筐体2内に取り付けられている3個のリール21a,21b,21c・・・を目視できるようになっている」と記載され,上記【0056】には「リール21aの周面には,長尺状のリールテープ28aが貼り付けられ・・・その表面にはハーフミラー加工が施されて鏡面282aが形成され,裏面には複数種類の図柄281aが印刷」と記載され,上記【0031】には「3個の円筒形状のリール21a,21b,21cが回転軸方向に並べられて構成され,筐体2内に設置され」と記載されている。
これらのことから,刊行物1には,表示窓51を通して目視できるように筐体2内に取り付けられ,裏面には複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられて回転軸方向に並べられて構成された3個の円筒形状のリール21a,21b,21cが記載されているといえる。

(c)上記【0063】には,「投影部34a,34bを形成する液晶ディスプレイは,バックライトを有してユニット化された自発光型の映像表示装置である。・・・演出画像が印刷された透過フィルムを映写して・・・投影する表示装置でもよい」と記載され,演出画像が印刷された透過フィルムを映写して投影する表示装置は、液晶バックライトが有するバックライトのような光源がないと演出画像を投影することができないから、演出画像が印刷された透過フィルムを映写して投影する表示装置が、光源を有していることは明らかである。
また、上記【0106】には,「BBゲーム告知演出の・・・「GO」の文字を表す演出映像が投影されると,これらの映像がリール21a,21cの鏡面で反射して表示される」と記載され,上記【0064】には「遊技者PEYEは・・・反射映像MIMGを観察できる。」と記載され,上記【0044】には,「リール21a,21b,21cに向けて映像を投影する2個の投影部34a,34b」と記載されている。
これらのことから,刊行物1には,演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,BBゲーム告知演出であり遊技者PEYEが反射映像MIMGを観察できる「GO」の文字を表す演出映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有する投影部34a,34bが記載されているといえる。

(d)上記【0056】には,「リール21aの周面には,長尺状のリールテープ28aが貼り付けられ・・・その表面にはハーフミラー加工が施されて鏡面282aが形成され」と記載され,上記【0057】には「他のリール21b,21cの周面にも図柄の配列のみが異なる同様のリールテープがそれぞれ捲装されて貼り付けられ」と記載され,上記【0064】には,「リール21の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると,リール21の周面に形成されている鏡面で映像が反射する」と記載されている。
これらのことから,刊行物1には,リール21a,21b,21cには,投影部34a,34bが映像を投影すると映像を反射する鏡面282aが形成された点が記載されているといえる。

(e)上記図示内容(カ)には,「投影部34a,34bは,筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置に配置されるとともに,回転軸方向に並べられた3個のリール21a,21b,21cに対向して配置され」ていることが記載され、上記【0063】には,「投影部34a,34bを形成する液晶ディスプレイは,バックライトを有してユニット化された自発光型の映像表示装置である。・・・演出画像が印刷された透過フィルムを映写して・・・投影する表示装置でもよい」と記載されると共に、上記(c)において検討したように、演出画像が印刷された透過フィルムを映写して投影する投影部34a,34bは光源を有しており、上記【0106】には,「「GO」の文字を表す演出映像が投影されると,これらの映像がリール21a,21cの鏡面で反射して表示される」と記載され,上記【0064】には,「任意に選択されたリール21・・・の表示面に向けて投影部34a,34bが映像を投影すると」と記載され,上記【0026】には,「スロットマシン1」と記載されている。
これらのことから,刊行物1には,投影部34a,34bは,筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置に配置されるとともに,回転軸方向に並べられた3個のリール21a,21b,21cに対向して配置され,演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,「GO」の文字を表す演出映像を任意に選択されたリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有するスロットマシン1が記載されているといえる。
上記(ア)?(オ)の記載事項,上記(カ)の図示内容及び上記(a)?(e)の認定事項を総合すれば,刊行物1には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている(a?eは発明の構成を分説するため当審で付与した。)。
「a 表示窓51が形成された筐体2と,
b 表示窓51を通して目視できるように筐体2内に取り付けられ,裏面には複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられて回転軸方向に並べられて構成された3個の円筒形状のリール21a,21b,21cと,
c 演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,BBゲーム告知演出であり遊技者PEYEが反射映像MIMGを観察できる「GO」の文字を表す演出映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有する投影部34a,34bとを有しており,
d リール21a,21b,21cには,投影部34a,34bが映像を投影すると映像を反射する鏡面282aが形成され,
e 投影部34a,34bは,筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置に配置されるとともに,回転軸方向に並べられた3個のリール21a,21b,21cに対向して配置され,演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,「GO」の文字を表す演出映像を任意に選択されたリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有するスロットマシン1。」

(2)刊行物2
当審における拒絶の理由(平成29年3月13日付け拒絶理由通知書)に刊行物2として引用された本願の遡及出願日前に頒布された刊行物である特開2008-194293号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「【0017】
図1は,本実施形態における弾球遊技機を示す分解図,図2は,弾球断面側面図である。である。以下,本明細書においては,遊技機に対して,遊技機の遊技者が配置される側を前面又は前側として表現し,遊技者の配置位置に対して遊技機の反対側を後面又は後側とする。」

(イ)「【0039】
さらに,発光装置61及び液晶表示装置62の双方の場合において,透光部54の色と同じ系統の色と,異なる系統の色を選択的に発光させて,透光部54の表示内容を変更させるように演出してもよい。例えば,透明ない透光部に,赤色で文字を表示し,発光装置61及び液晶表示装置62で赤(又は赤系統の色又は暖色系)を発光することで,文字を消し,赤に対する補色や,赤以外の色(例えば,寒色系の色)を発光することで,文字を際立たせるといった演出をすることもできる。」

上記(ア)?(イ)の記載事項から,引用例2には,次の事項(以下,「引用例2に記載された技術」という。)が開示されていると認められる。
「透明な透光部に赤色で文字を表示し,発光装置61で赤を発光することで文字を消し,赤に対する補色を発光することで文字を際立たせる演出をする遊技機。」

3 対比
本件発明と引用発明とを対比する。なお,見出しは(a)?(e)とし,本件発明,引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「表示窓51」,「筐体2」は,それぞれ本件発明の「表示窓」,「筐体」に相当する。
このことから,引用発明の「表示窓51が形成された筐体2」は,本件発明の「表示窓を有した筐体」に相当する。

(b)引用発明の「表示窓51を通して目視できる」ことは,本件発明の「表示窓を介して前記筐体外から視認可能」であることに相当する。
そして,引用発明の「複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられ」た「3個の円筒形状のリール21a,21b,21c」は,本件発明の「複数のシンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられ」た「複数のリール」に相当し,引用発明において,リールの回転軸は水平方向に設けられていることは明らかであるから,引用発明の「回転軸方向に並べられて構成された」は,本件発明の「水平方向に並設された」に相当する。
これらのことから,引用発明の「表示窓51を通して目視できるように筐体2内に取り付けられ,裏面には複数種類の図柄281aが印刷された長尺状のリールテープ28aが周面に貼り付けられて回転軸方向に並べられて構成された3個の円筒形状のリール21a,21b,21c」は,本件発明の「前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され,複数のシンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリール」に相当する。

(c)引用発明の「BBゲーム告知演出であり遊技者PEYEが反射映像MIMGを観察できる「GO」の文字を表す演出映像」は,本件発明の「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光」に相当する。
また,引用発明の「リール21a,21b,21cに向けて投影する」「投影部34a,34b」は,本件発明の「リール帯に」「照射する照射光装置」に相当する。
しかしながら,引用発明の「投影部34a,34b」は,演出映像を表示しないで投影(可視光よりも視認性が低い可視光を出射)するか不明である。
これらのことから,引用発明の「演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,BBゲーム告知演出であり遊技者PEYEが反射映像MIMGを観察できる「GO」の文字を表す演出映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有する投影部34a,34b」は,本件発明と「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光」「を前記リール帯に」「照射する照射光装置」である点で共通している。

(d)引用発明の「映像を反射する鏡面282a」は,本件発明の「可視光を反射するミラー層」に相当する。
このことから,引用発明の「リール21a,21b,21cには,投影部34a,34bが映像を投影すると映像を反射する鏡面282aが形成され」は,本件発明の「リールは,前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し」に相当する。

(e)引用発明の「筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置」は,表示窓の窓枠よりも外側の領域であるといえるから,引用発明の「投影部34a,34bは,筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置に配置され」は,本件発明の「照射光装置は,前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され」に相当する。
また,引用発明の「投影部34a,34bは」「「GO」の文字を表す演出映像を」「リール21a,21b,21cに向けて投影する」ことは,本件発明の「照射光装置は」「前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射する」ことに相当する。
そして,引用発明の「投影部34a,34b」は「リール21a,21b,21cに対向して配置」されているから、引用発明の「投影部34a,34b」が有する「光源」も「リール21a,21b,21cに対向して配置」されているといえる。
しかしながら,引用発明は,視認性の低い可視光を出射する構成はなく,出射する幅は明らかでなく,LEDユニットを有しているか不明であり,「光源を有する」「投影部34a,34b」がリール毎に対向しているか不明である。
これらのこと,及び,引用発明の「光源」と本件発明の「LEDユニット」はいずれも「光源」であることを考慮すると,
引用発明の「投影部34a,34bは,筐体2外から表示窓51を通して3個のリール21a,21b,21cを目視できる領域から外れた位置に配置されるとともに,回転軸方向に並べられた3個のリール21a,21b,21cに対向して配置され,演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,「GO」の文字を表す演出映像を任意に選択されたリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有する」ことは,
本件発明と「前記照射光装置は,前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され,前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されており」,「前記リール」「に対向して配置され」た光源「を有している」点で共通している。
また,引用発明の「スロットマシン1」は,本件発明の「ゲーミングマシン」に相当する。

以上,(a)?(e)の対比より,両者は
「A 表示窓を有した筐体と,
B 前記表示窓を介して前記筐体外から視認可能に前記筐体内に配置され,複数のシンボルを備えたリール帯がそれぞれ設けられて水平方向に並設された複数のリールと,
C’遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光を前記リール帯に照射する照射光装置とを有しており,
D 前記リールは,前記照射光装置からの前記可視光を反射するミラー層を有し,
E’前記照射光装置は,前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され,前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されており,前記リールに対向して配置された光源を有していることを特徴とするゲーミングマシン。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1](構成C)
「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光」「を前記リール帯に」「照射する照射光装置」に関して,
本件発明は,「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光と,前記可視光よりも視認性が低い可視光と」「に切り替え可能に照射する」のに対して,
引用発明は,そのような構成でない点。

[相違点2](構成E)
「前記表示窓の窓枠よりも外側領域に配置され,前記可視光を前記リールの前記リール帯側に照射するように設定されており」,「前記リール」「に対向して配置され」た光源「を有している」「前記照射光装置」に関して,
本件発明は,「前記可視光よりも視認性が低い可視光を出射するフロントライト装置として用いられるとともに,全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するように,前記リール毎に対向して配置されて前記水平方向に並設された複数のLEDユニットを有している」のに対して,
引用発明は,そのような構成でない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記2(2)には,引用例2に記載された技術として「透明な透光部に赤色で文字を表示し,発光装置61で赤を発光することで文字を消し,赤に対する補色を発光することで文字を際立たせる演出をする遊技機」に関する技術が記載されており,「発光装置61で」「赤に対する補色を発光」したときが,本件発明の「遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光」を照射したときに相当し,「発光装置61で赤を発光」したときが,本件発明の「前記可視光よりも視認性が低い可視光」を照射(出射)したときに相当する。
引用発明と引用例2に記載された技術は共に,遊技機において,光源(発光装置)を用いて文字等を表示する技術であり,技術分野が共通している。
引用発明の「演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,BBゲーム告知演出であり遊技者PEYEが反射映像MIMGを観察できる「GO」の文字を表す演出映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有する投影部34a,34b」における「演出画像が印刷された透過フィルム」及び「光源」に,上記引用例2に記載された技術である「透明な透光部に赤色で文字を表示し,発光装置61で赤を発光することで文字を消し,赤に対する補色を発光することで文字を際立たせる演出をする」技術を適用して,引用発明の「演出画像が印刷された透過フィルム」の「「GO」の文字」である「演出画像」を赤色にし,「投影部34a,34b」の「光源」で赤を発光することにより「「GO」の文字」を消し,赤に対する補色を発光することにより,「「GO」の文字」を際立たせるようにして,上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
「前記可視光よりも視認性が低い可視光を出射する」点については,上記「ア 相違点1について」において既に検討しており,「投影部34a,34b」の「光源」で赤を発光したときは,リール21a,21b,21cに「GO」の文字は表示されず,リール21a,21b,21cの前面を赤で照らすことになるから,このときの「投影部34a,34b」の「光源」は,「フロントライト装置として用いられる」ことになるといえる。

次に,可視光を出射する幅については,引用発明の「投影部34a,34b」の「光源」は,「GO」の文字を表す演出映像を任意に選択されたリール21a,21b,21cに向けて投影するものであるから,リール21a,21b,21cの各表面に同時に投影することも可能であり,リール21a,21b,21cの各表面の幅全体を利用して,演出表示用の映像を遊技者の視覚的に訴えるように見やすくするためには,「投影部34a,34b」の「光源」は少なくともリール21a,21b,21cの各表面の幅全体に対して出射する必要があることは自明事項である。
演出映像が見えやすくなるようにリール21a,21b,21cの各表面の幅全体に対して出射するためには、全リールの幅よりも長尺の可視光を照射する必要があるから、引用発明の「投影部34a,34b」の「光源」から,全リールの幅よりも長尺の可視光を出射するようにすることは当業者が適宜設定できる設計事項である。

また,リール毎に対向して配置されているかについては,引用発明の「投影部34a,34b」の「光源」は,リール21a,21b,21c毎に配置しているか否か定かではないものの,引用発明の「投影部34a,34b」の「光源」は,任意に選択されたリール21a,21b,21cに向けて投影するものであるから,「投影部34a,34b」の「光源」を,リールa,21b,21cに対応して個別に設けること,すなわちリール21a,21b,21c毎に設けることは当業者なら容易になし得ることである。

そして,複数のLEDユニットを有しているかについては,遊技機において,光源として並設された複数のLEDユニットを用いることは,例えば,特開2008-6168号公報(光源は,好ましくは高輝度LEDである旨の記載があり,光源として並設された複数のLEDユニットが図示されている。【0025】,【0026】,【図3】,【図5】,【図6】参照),特開2006-164号公報(補助光源部18に発光ダイオード[LED]を用いる旨の記載があり,光源として並設された複数のLEDユニットが図示されている。【0021】,【図3】,【図4】参照)に示されるように,本願出願前に周知技術である。
そして,引用発明の「投影部34a,34b」の「光源」として,遊技機における上記周知技術を採用することは当業者が容易になし得ることである。

そうすると,引用発明に,上記引用例2に記載された技術,及び上記周知技術を適用し,設計変更を行い,上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

また,本件発明の作用効果も,引用発明,引用例2に記載された技術,及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本件発明は,引用発明,引用例2に記載された技術,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 請求人の主張について
請求人は平成29年6月7日付け意見書第2頁第1?12行において,
「しかしながら,刊行物2は,段落番号0039に「透明ない透光部に,赤色で文字を表示し,発光装置61及び液晶表示装置62で赤(又は赤系統の色又は暖色系)を発光することで,文字を消し,赤に対する補色や,赤以外の色(例えば,寒色系の色)を発光することで,文字を際立たせる」と記載されているように,透光部に表示された文字に対して裏側から発光装置61及び液晶表示装置62の光を照射し,透光部を透過する光の色を変えることで,表側から見たときに透光部の文字を消したり,際立たせたりするものです。
このように,刊行物2の文字は,透光部を透過する透過光によって,消されたり,際立たせられたりしており,反射光によって表示されたり,非表示にされたりするものではありません。
したがいまして,刊行物1に,刊行物2の技術を適用しても,リールの内側からリール帯に照射する照射光の色を変化させることになるだけであって,刊行物1の投影部34a,34bが,遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光と,可視光よりも視認性が低い可視光とをリール帯に切り替え可能に照射するようにはなりません。」と主張している。

しかしながら,上記4「ア 相違点1について」において既に検討したように,引用発明と引用例2に記載された技術は共に,遊技機において,光源(発光装置)を用いて文字等を表示する技術であり,引用発明の「演出画像が印刷された透過フィルムを映写して,BBゲーム告知演出であり遊技者PEYEが反射映像MIMGを観察できる「GO」の文字を表す演出映像をリール21a,21b,21cに向けて投影する光源を有する投影部34a,34b」における「演出画像が印刷された透過フィルム」及び「光源」に,上記引用例2に記載された技術である「透明な透光部に赤色で文字を表示し,発光装置61で赤を発光することで文字を消し,赤に対する補色を発光することで文字を際立たせる演出をする」技術を適用して,引用発明の「演出画像が印刷された透過フィルム」の「「GO」の文字」である「演出画像」を赤色にし,「投影部34a,34b」の「光源」で赤を発光することにより「「GO」の文字」を消し,赤に対する補色を発光することにより,「「GO」の文字」を際立たせるようにして,上記相違点1に係る本件発明の構成(遊技に関する情報を識別可能とする可視情報を含む可視光と,前記可視光よりも視認性が低い可視光とに切り替え可能に照射する構成)とすることは,当業者が容易になし得たことである。
したがって,請求人の主張を採用することはできない。

6 まとめ
よって,本件発明は,引用発明,引用例2に記載された技術,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおりであるから,本件発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-02 
結審通知日 2017-10-03 
審決日 2017-10-16 
出願番号 特願2012-104237(P2012-104237)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 史彬  
特許庁審判長 服部 和男
特許庁審判官 藤田 年彦
瀬津 太朗
発明の名称 ゲーミングマシン  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  
代理人 特許業務法人梶・須原特許事務所  

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