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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1337921
審判番号 不服2017-5148  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-11 
確定日 2018-04-02 
事件の表示 特願2015- 93「ダミーパターンを有する撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開、特開2016- 46508、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年(2015年)1月5日(パリ条約による優先権主張 2014年8月22日,米国)の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 1月 5日 審査請求
平成28年 5月18日 拒絶理由通知
平成28年 8月19日 意見書・手続補正
平成29年 1月27日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 4月11日 審判請求・手続補正
平成29年10月31日 補正却下決定・拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成29年12月 7日 意見書・手続補正(以下,「当審補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」といい,まとめて「本願発明」という。)は,当審補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項で特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
撮像装置であって,
前記撮像装置のアクティブ領域内の基板上に形成される複数の光電変換素子と,
前記アクティブ領域と該アクティブ領域を囲む前記撮像装置の周辺領域の一部に延伸した領域の前記基板上に設置される複数のマイクロレンズ素子を有するマイクロレンズ構造と,
前記マイクロレンズ構造の領域を囲む前記周辺領域内の前記基板上に設置される複数の突起素子を有するダミーパターンと,
前記マイクロレンズ構造の前記複数のマイクロレンズ素子と前記ダミーパターンの前記複数の突起素子の表面上に形成される,製造プロセスにおけるテープの取り付け及び除去の対象となるパッシベーション膜と,を有し,
前記ダミーパターンの上部の前記パッシベーション膜の表面積は,前記マイクロレンズ構造の外側の前記周辺領域の表面積より小さいことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記突起素子の形状は,凸状,円柱状,角柱状,円錐または角錐状を含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ダミーパターンは複数の凸状の突起素子を有し,且つ,前記凸状の突起素子の各々は,前記マイクロレンズ構造の各マイクロレンズの形状と同じ形状を有し,前記凸状の突起素子の上部は,前記マイクロレンズ構造の上部と同じ高さであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記ダミーパターンの前記上部の前記パッシベーション膜の前記表面積は,前記マイクロレンズ構造の外側の前記周辺領域の前記表面積の50-80%であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記マイクロレンズ構造と前記光電変換素子間に設置され,前記周辺領域内に設置される延長部分を有し,前記ダミーパターンが,前記延長部分に設置されるカラーフィルター層と,
前記カラーフィルター層と前記光電変換素子間に設置される平坦化層と,を更に有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記パッシベーション膜の材料は,化学気相堆積酸化ケイ素を含み,前記パッシベーション膜は,前記マイクロレンズ構造と前記ダミーパターンの表面全体を被覆することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ダミーパターンは,前記周辺領域で,規則的に設置され,前記周辺領域は,前記ダミーパターンにより完全に占有されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記ダミーパターンは前記周辺領域内にランダムに設置され,前記周辺領域の一部は前記ダミーパターンにより占有されないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。」

第3 原査定の理由の概要
(進歩性)本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-227474号公報
2.特開2009-177079号公報
3.特開2005-129952号公報
4.特開平06-224397号公報
5.特開2008-091399号公報
6.特開2014-103299号公報
7.特開2007-173535号公報
8.特開2012-252259号公報
9.特開2012-204402号公報

第4 当審拒絶理由の概要
1 本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
引 用 文 献 等 一 覧
引用文献A 米国特許出願公開第2006/0228826号明細書
引用文献6 特開2014-103299号公報
引用文献8 特開2012-252259号公報
引用文献2 特開2009-177079号公報
(なお,引用文献番号は原査定に合わせた。)
2 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

・請求項4について
請求項4に記載された「前記マイクロレンズ構造と前記ダミーパターンを被覆するテープと接触すること」は,同「撮像装置」との関係が不明確であり,発明が不明確である。 すなわち,「前記マイクロレンズ構造と前記ダミーパターンを被覆するテープ」は,「撮像装置」の作用機能とは無関係であり,また,その構成の一部とも認められず,「前記マイクロレンズ構造と前記ダミーパターンを被覆するテープと接触すること」が,物としての「撮像装置」の構成をどのように特定しているのか不明である。

第5 引用文献
1 引用文献Aの記載
(1)引用文献A
当審拒絶理由で引用された米国特許出願公開第2006/0228826号(以下,「引用文献A」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)(当審注。訳は当審で作成した。)
ア 「FIELD OF THE INVENTION
[0002] The present invention relates to a method for fabricating an image sensor; and more particularly, to a method for fabricating an image sensor using a wafer back grinding process. 」
(訳:発明の分野
[0002] この発明は,イメージセンサの製造方法に関し,さらに特定すると,裏面研削処理したウェハを用いるイメージセンサの製造方法に関する。)
イ 「[0008] FIGS. 2A to 2C are cross-sectional views illustrating a method for fabricating a conventional CMOS image sensor including a unit pixel configured as above and color filters with microlenses.
[0009] Referring to FIG. 2A , field oxide layers 11 defining a filed region and an active region are formed over a substrate 10 . A P-type well 12 and an N-type well 13 are formed using an ion implantation mask. Gate electrodes 14 and gate spacers 15 are formed over predetermined regions of the substrate 10 . Unit pixels 16 including photodiodes are formed in a light sensing region, and N-type ion implantation regions 17 and P-type ion implantation regions 18 , each with lightly doped drain (LDD) regions are formed. The N-type and P-type ion implantation regions 17 and 18 correspond to source/drain regions of transistors.
[0010] An inter-layer insulation layer 19 is formed over the above resultant structure, and a plurality of first metal lines 20 are formed thereon through a patterning process. Afterwards, a plurality of second metal lines 22 , a first inter-metal insulation layer 21 , a plurality of third metal lines 24 , and a second inter-metal insulation layer 23 are formed sequentially over the above resultant structure where the first metal lines 20 are formed.
[0011] A passivation layer 25 is formed over the third metal lines 24 and the second inter-metal insulation layer 23 to protect devices from moisture or scratches. A material for forming color filters is formed over the passivation layer 25 and patterned using a mask to form color filters 26 . Particularly, the color filters 26 are formed over certain regions of the passivation layer 25 corresponding to the unit pixels 16 in the light sensing region.
[0012] A planarization layer 27 is formed over a predetermined region of the passivation layer 25 to reduce a height difference created when the color filters 26 are formed, and microlenses 28 are formed over the planarization layer 27 . A microlens protection layer 29 is formed over the entire surface of the above resultant structure to protect the microlenses 28 .
[0013] Then, a pad opening process is performed to open a pad open unit PO. More specifically, a photoresist pattern 30 is formed over a certain portion of the microlens protection layer 29 to expose the pad open unit PO. Using the photoresist pattern 30 , the microlens protection layer 29 and the passivation layer 25 are sequentially etched to expose the third metal lines 24 .
[0014] Referring to FIG. 2B , the photoresist pattern 30 is removed, and a taping process which glues a tape 31 on the entire resultant structure is performed thereafter. The taping process is to reduce contamination caused by particles X generated during a wafer back grinding process 100 . Hereinafter, the wafer back grinding process 100 will be briefly described.
[0015] The wafer back grinding process 100 grinds a rear surface of an image sensor chip to a certain thickness, so that a distance between optical lenses and external modules can be adjusted appropriately. After the image sensor chip is completed with a wire bonding process, glass is overlaid to protect the image sensor chip against factors causing defects in chip operation, thereby completing a packaging process.
[0016] After the packaging process, a plastic device including an external lens is adhered on top of the packaged device and mounted on a print circuit board to be fabricated as one module. This module is implemented into a product like a camera.
[0017] As mentioned above, the wafer back grinding process 100 is performed to adjust a focusing length between an image sensor chip and an external lens. However, during the wafer back grinding process 100 , lots of particles X are generated, and thus, it is necessary to develop a method for reducing the particle generation. One approach is to perform a taping process. As illustrated in FIG. 2B , the taping process is performed using the tape 31 after the removal of the photoresist pattern 30 . If the wafer back grinding process 100 is performed after the taping process, particles X tend to adhere on the tape 31 without affecting the image sensor chip. In addition to the given function of the tape 31 as a protector of the patterns formed over the entire wafer, the tape 31 adsorbs physical force to thereby prevent the wafer from being broken. The tape 31 is removed therafter.」
(訳:[0008] 図2Aから2Cは,上述した単位画素及びマイクロレンズ付きのカラーフィルタを含む従来のCMOSイメージセンサを説明する断面図である。
[0009] 図2Aを参照すると,フィールド領域とアクティブ領域を区分するフィールド酸化層11が基板10上に形成されている。P型ウェル12とN型ウェル13がイオン注入マスクを用いて形成されている。ゲート電極14とゲートスペーサ15が基板10の所定の領域上に形成される。フォトダイオードを含む複数の単位画素16が受光領域に形成されており,N型イオン注入領域17,P型イオン注入領域18,LDD領域が形成されている。N型およびP型イオン注入領域17および18は,トランジスタのソース・ドレイン領域に相当する。
[0010] 上記の得られた構造の上に形成される層間絶縁層19と,複数の第1金属線20は,パターニング工程により形成されている。その後,複数の第2金属配線22,第1配線間絶縁層21,複数の第3金属線24及び第2の金属間絶縁層23が,第1金属配線20が形成されている上記の得られた構造の上に,順次形成される。
[0011] パッシベーション層25は,第3金属配線24と第2金属間絶縁層23上に形成され,水分や傷からデバイスを保護する。カラーフィルタを形成するための材料がパッシベーション層25上に形成されており,カラーフィルタ26を形成するマスクを用いてパターン化されている。特に,カラーフィルタ26は,受光領域における単位画素16に対応するパッシベーション層25の所定領域上に形成されている。
[0012] 平坦化層27は,パッシベーション層25の所定領域上に形成され,カラーフィルタ26を形成する際に出現した高低差を低減し,マイクロレンズ28が平坦化層27上に形成されている。マイクロレンズ保護層29が上記の得られた構造の上に形成され,マイクロレンズ28を保護している。
[0013] そして,パッド開口工程が行われ,パッド開口部POを開ける。より具体的には,マイクロレンズの保護層29の特定の部分の上に形成されたパッド開口部POを露出するフォトレジストパターン30を形成する。フォトレジストパターン30を用いて,マイクロレンズの保護層29とパッシベーション層25を順次エッチングして,第3金属配線24を露出させる。
[0014] 図2Bを参照すると,フォトレジストパターン30を除去した後,得られた構造全体の上にテープ31を接着するテーピング工程が行われる。このテーピング工程は,ウェハ裏面研削(バックグラインディング)処理100の間に生成される粒子Xによる汚染を減少させるためである。以下,ウエハ裏面研削工程100について簡単に説明する。
[0015] ウェハ裏面研削(バックグラインディング)処理100は,イメージセンサチップの裏面を所定の厚さまで研削し,光学レンズや外部モジュールとの間の距離を適切に調整することができる。ワイヤボンディング工程を経てイメージセンサチップが完成した後,ガラスが被覆されてチップの動作中に欠陥を生じさせる要因からイメージセンサチップを保護するように,パッケージング工程を完了させる。
[0016] このパッケージング工程後,外部レンズを含むプラスチックデバイスが,パッケージ化された装置の上に接着され,プリント回路基板上に実装された1つのモジュールとして製作されることとなる。このモジュールは,カメラ等の製品に実装されている。
[0017] 上述したように,ウエハ裏面研削処理100は,イメージセンサチップと外部レンズとの間の焦点距離を調節するために行われる。ウエハ裏面研削処理100では,多量の粒子Xが生成されるので,粒子の発生を減少させる方法を開発する必要がある。1つのアプローチは,テーピング処理を行うことである。図2Bに示すように,テーピング処理は,フォトレジストパターン30を除去した後にテープ31を用いて行われる。ウェハ裏面研削(バックグラインディング)処理100が,テーピング処理の後に実行される場合,粒子Xはイメージセンサチップに影響を与えることなくテープ31に付着しがちである。ウェハ全体の上に形成されたパターンの保護措置としての保護テープ31の所定の機能に加え,テープ31が物理的な力を吸収することでウエハの破損を防止する。テープ31はその後除去される。)
ウ 「[0018] However, the aforementioned taping process may have several disadvantages. As illustrated in FIG. 2C , since the tape 31 has a certain level of adhesion pressure, the microlens protection layer 29 is likely to crack when the tape 31 is removed. Reference denotation C denotes this crack event. Also, adhesive residues Y of the tape 31 may remain on the entire wafer, thereby decreasing device yield. 」
(訳:[0018] しかし,前記テーピング工程は,いくつかの欠点を有している。図2Cに示すように,テープ31がある程度の接着圧力を有するので,テープ31を除去する際に,マイクロレンズ保護層29にクラックが発生しやすい。表記Cは,このクラック現象を示している。また,テープ31の接着剤の残渣Yは,ウェハ全体に残存し,そのためデバイスの歩留まりが低下する。)
エ 図2Bには,受光領域における複数の単位画素16の上に形成されたマイクロレンズ28と,マイクロレンズ28及び受光領域以外の周辺領域の平坦化層上に形成されたマイクロレンズ保護層29とを有するイメージセンサが,記載されていると認められる。
(2)引用発明A
前記(1)より,引用文献Aには次の発明(以下,「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「イメージセンサであって,基板上の受光領域に形成されているフォトダイオードを含む複数の単位画素と,受光領域における単位画素の上に形成されたマイクロレンズと,マイクロレンズ及び周辺領域の平坦化層上に形成されたマイクロレンズ保護層とを有するイメージセンサ。」
2 引用文献1の記載
(1)引用文献1
原査定で引用された特開2012-227474号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,固体撮像装置およびその製造方法に関し,特にカラーフィルタ間に隔壁を用いた固体撮像装置およびその製造方法に関する。」
イ 「【0019】
固体撮像装置1は,図1に示すように,平面視形状が例えば四角形状(ここでは,長方形状である。)をしている。固体撮像装置1は,その中央に画素領域3を,画素領域3の周辺に周辺回路領域5をそれぞれ有する。
【0020】
なお,ここでは,周辺回路領域5は,四角形状の画素領域3の全周に添ってその外側に存在しているが,画素領域3の周辺の一部の範囲に設けられても良い。
画素領域3には複数の画素部7が2次元状に形成されている。画素領域3には,その外周部分の無効画素領域9と,無効画素領域9の内側部分の有効画素領域11とがある。
【0021】
周辺回路領域5は,画素領域3,特に有効画素領域11内の画素部7からの画素信号を外部装置に出力したり,画素領域3内の画素部7に給電したりするための回路を備える。
ここでは,複数の画素部7は画素領域3内を行列状に形成されている。
【0022】
図2は,図1のA部の拡大図であり,(a)はマイクロレンズ31を取り外した状態での平面図であり,(b)は断面図である。なお,断面は,フィルタ27等が形成されている面に直交する断面である。
【0023】
半導体基板21は,画素領域3の各画素部7に対応して受光部23を2次元状に有している。半導体基板21上には配線層25が形成されている。配線層25は,後述するが,多層構造をしている。配線層25は,画素領域3では2層構造をし,周辺回路領域5では3層構造をしている。
【0024】
配線層25上の画素領域3においては,各画素部7に対応して複数のカラーフィルタ27が形成され,各カラーフィルタ27間に対応して隔壁29が形成されている。カラーフィルタ27と隔壁29上には,同図の(b)に示すように,各画素部7に対応してマイクロレンズ31が形成されている。
(中略)
(5)マイクロレンズ
マイクロレンズ31は,上方から入射する光を対応する画素部7のフォトダイオードPDに集光させるものである。
【0032】
マイクロレンズ31は,ここでは,半導体基板21から離れる方向に突出する凸レンズである。ここでは,マイクロレンズ31は,フォトダイオードPD上に配されたレンズ部と,各レンズ部を隔壁29上で連結する連結部とを有する一体品となっている。なお,マイクロレンズは,少なくとも,集光機能を有する部分(レンズ部)がフォトダイオードPD上に形成されていれば良く,レンズ部が孤立した構成であっても良い。」
ウ 「【0085】
カラーフィルタ357は,半導体基板353上であってフォトダイオードPD上に形成され,また無効画素領域9のフォトダイオードPDのない領域では,有効画素領域11でのカラーフィルタ357が形成されているピッチと同じピッチで同じ材料でダミーフィルタ367が形成されている。
【0086】
各カラーフィルタ357間には隔壁359が形成され,各ダミーフィルタ367間にはダミー隔壁369が形成されている。
各カラーフィルタ357と隔壁359上にはマイクロレンズ361が,ダミーフィルタ367とダミー隔壁369上にはダミーのマイクロレンズ371が形成されている。なお,ダミーのマイクロレンズ371は,マイクロレンズ361と同じ大きさ・材料・工程で形成される。」
(2)引用発明1
前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「固体撮像装置であって,画素領域には,その外周部分の無効画素領域と,無効画素領域の内側部分の有効画素領域とがあり,各画素部に対応してマイクロレンズが形成されており,マイクロレンズは,半導体基板から離れる方向に突出する凸レンズであり,無効画素領域のフォトダイオードのない領域にはダミーのマイクロレンズが形成されている固体撮像装置。」
3 引用文献2及び3の記載
(1)引用文献2
原査定及び当審拒絶理由で引用された特開2009-177079号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,固体撮像装置,固体撮像装置の実装方法,固体撮像装置の製造方法,および電子情報機器に関し,特に,固体撮像素子のチップ(以下撮像素子チップともいう。)を素子封止パッケージ内に収容してなる固体撮像装置の耐湿性を向上させる素子構造,該固体撮像素子を該素子構造を持つよう実装する方法,該素子構造を有する固体撮像装置を製造する方法,該素子構造を持つ固体撮像装置を含む電子情報機器に関する。」
イ 「【0070】
(実施形態1)
図1および図2は,本発明の実施形態1による固体撮像装置の構造を説明する図であり,図1(a)は,該固体撮像装置の断面構造を示し,図1(b)は,マイクロレンズおよびその上の保護膜を拡大して示している。
【0071】
この実施形態1の固体撮像装置100は,封止パッケージ1内に撮像素子チップ(固体撮像素子)2を収容し,該封止パッケージ1にリッドガラス6を,該撮像素子チップ2上に中空領域が形成されるよう被せて撮像素子チップ2を封止した実装構造を有している。
【0072】
ここで,上記封止パッケージ1は,パッケージ基板1aと,その外周部分に形成された外壁部1bとを有しており,該パッケージ基板1aの,該外壁部1bに囲まれた領域に上記撮像素子チップ2が接着材5aにより固着されている。また,この封止パッケージ1は,そのパッケージ基板1aの両側辺部に配置された複数の外部リード端子7を有し,該外部リード端子の撮像素子チップ2側の部分(内側端部)は,上記外周壁1bを貫通し,該撮像素子チップ2の近傍に位置している。そして,該外部リード端子の内側端部は,上記撮像素子チップ2の電極パッドとボンディングワイヤ3により接続されている。また,上記封止パッケージの外壁部1b上には,封止パッケージ内部の空間が密封されるよう,リッドガラス6がガラスシール5bにより固着されている。ここで,封止パッケージ1は,モールド樹脂やセラミックにより形成したものである。
【0073】
このような本実施形態1の固体撮像装置100の実装構造は,図12(a)に示す従来の固体撮像装置の実装構造と同一である。
【0074】
そして,本実施形態1の固体撮像装置100では,上記封止パッケージ1とリッドガラス6とにより形成される密閉空間内に露出する,該封止パッケージ1の内面,撮像素子チップ2の表面,およびボンディングワイヤ3の表面がすべて,保護膜4により覆われている。
【0075】
また,ここで保護膜4は,SiO_(2)膜であり,撮像素子チップ2の表面に入射した光Lは,図1(b)で示すように,該保護膜4の表面で各画素の中心部に近づくように屈折し,さらに,該マイクロレンズ8と該保護膜4との界面で,各画素の中心部に近づくように屈折する。」
(2)引用文献3
原査定で引用された特開2005-129952号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明はCMOSイメージセンサの製造方法に関し,特に,パッドエッチング工程を2回行い,パッドレイアウトを変更することによってパッド周辺部で低温酸化膜が剥離(delamination)する現象を抑制したCMOSイメージセンサの製造方法に関する。」
イ 「【0006】
図1Bは,このような単位画素とカラーフィルタ及びマイクロレンズを備えて構成されたCMOSイメージセンサの断面構造を示す断面図である。
【0007】
図1Bに示されているように,従来の通常のCMOSイメージセンサは,基板10上に形成された素子分離膜11と,基板10内の所定領域に形成されたP型ウェル及びN型ウェルと,基板10上に形成されスペーサ13を備えたゲート電極12と,フォトダイオードを含む単位画素14と,N型イオン注入領域15と,P型イオン注入領域16と,ゲート電極12を含む基板上に形成された層間絶縁膜17と,層間絶縁膜17上に形成された第1金属配線18と,第1金属配線18を覆う第1金属層間絶縁膜19と,第1金属層間絶縁膜19上に形成された第2金属配線20と,第2金属配線20を覆う第2金属層間絶縁膜21と,第2金属層間絶縁膜21上に形成された第3金属配線22と,第3金属配線22を覆い素子保護のためのパッシべーション膜23と,パッシべーション膜23上の単位画素14領域に形成されたカラーフィルタ24と,カラーフィルタ24による段差を補償するオーバーコーティング層25と,オーバーコーティング層25上に形成されたマイクロレンズ26と,マイクロレンズ26を保護するための低温酸化(Low Temperature Oxide:LTO)膜27とを備えて構成されている。
【0008】
ここで,低温酸化膜27は,単位画素14が形成された受光領域では主にマイクロレンズ26とオーバーコーティング層25上に形成されているが,パッドオープン部の周辺領域(第3金属配線22が露出している部分の周辺領域)ではパッシべーション膜23上に直接形成されている。」
(3)周知技術
前記(1)及び(2)より,次の技術は周知技術と認められる。
「撮像装置において,マイクロレンズを保護するための保護膜を備えること。」
4 引用文献4及び5の記載
(1)引用文献4
原査定で引用された特開平06-224397号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,画像欠陥を低減する固体撮像装置の製造方法に関するものである。その利用分野としては,CCD撮像素子やリニアセンサ等がある。」
イ 「【0020】
【実施例】以下,この発明に係る固体撮像装置の製造方法の詳細を図面に示す実施例に基づいて説明する。なお,従来装置と同一の部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0021】この実施例は,CCD撮像装置にこの発明を適用したものであって,チップ領域内に多数の受光領域と,これに付帯する電荷転送領域が形成されたウェハを用いる。
【0022】先ず,本実施例は,図2に示すように,周知の製造技術により,カラーフィルタ32及びオンチップレンズ33までが形成されたウェハ21を用意する。
【0023】このウェハ21に対して,図1に示すフローチャートのプロセスを行なう。以下,図3?図6に従って工程を説明する。
【0024】オンチップレンズまで形成されたウェハ21上に,図3に示すように,耐酸性のUV照射硬化型テープ(以下,UVテープという)34を全面に貼り付ける(ステップ1)。このUVテープ34は,UV照射後の剥離後の糊残りを少なくするためにできるだけUV樹脂量及び架橋剤の含有量の多いもの,即ち架橋密度が高くなる接着剤を備えたものを用いる。」
(2)引用文献5
原査定で引用された特開2008-091399号公報(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,受光装置の製造方法に関する。」
イ 「【0018】
次に,図1を参照して,このような受光装置1の製造方法について詳細に述べる。
まず,図1(A)に示すように,複数の受光部11が設けられたベース基板12を用意する。すなわち,ベース基板12上にマイクロレンズアレイを形成する。
次に,図1(B)に示すように,このベース基板12の表面(受光部11が設けられた面)を覆うように,光硬化性の接着フィルム14を貼り付ける。」
(3)周知技術
前記(1)及び(2)より,次の技術は周知技術と認められる。
「固体撮像装置の製造方法において,マイクロレンズが形成された基板上にテープを全面に貼り付けること。」
5 引用文献6の記載
(1)引用文献6
原査定及び当審拒絶理由で引用された特開2014-103299号公報(以下,「引用文献6」という。)には,図面とともに次の記載がある。なお,引用文献6に記載された「フォトダイーオード」は「フォトダイオード」の誤記と認める。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,フォトダイオードの具備されていないアレイ外周部を遮光した固体撮像素子に関し,特に可視領域から赤外波長域における光の透過を防ぎ,遮光層の剥がれが原因となる特性劣化の無い固体撮像素子に関する。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の様な事情の下になされ,反射による特性劣化を防止するために,遮光層として,blackレジストを用い,その透過率を1%以下に制御してもblackレジストパターンの剥がれ問題の発生の無い,固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための手段として,請求項1に記載の発明は,フォトダイオードを配列して配置し,マイクロレンズを持つアレイ部とアレイ外周部からなる固体撮像素子であって,
前記固体撮像素子のマイクロレンズ形成層のマイクロレンズを,フォトダイオードの配列の外側に1ピッチ以上,ダミーとしてマイクロレンズを形成すると共に,アレイ外周部の最外周であるスクライブラインの内側に1ピッチ以上,ダミーとしてマイクロレンズを形成したことを特徴とする固体撮像素子である。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための形態を,図面を用いて詳細に説明する。図1は本願発明の固体撮像素子の構成を明確にするために,構成と工程を示している。
【0017】
配線層16やフォトダイオード8を設けた下地ウエハ基板上に,平坦化層1を設け,その上に,ブラックマトリックス及びカラー画素であるRGBをパターニングを行い,レンズ形成層3を塗布する。
【0018】
図3は本願発明の固体撮像素子の平面図を示しており,フォトダイオード8の配列の外側に3ピッチ,ダミーとしてマイクロレンズ5を形成すると共に,アレイ外周部11の最外周であるスクライブライン14の内側に1ピッチのダミーのマイクロレンズ5が設けられている。」
エ 「【0024】
露光現像によりパターニングを行った後,熱リフローにてレンズ形状とする。高さが0.3μm?1.5μmのマイクロレンズ5を形成する。この時ダミーマイクロレンズ7は,フォトダイオード8の配列の外側に1ピッチ以上,形成すると共に,アレイ外周部11の最外周であるスクライブライン14の内側に1ピッチ以上,ダミーマイクロレンズ7を形成した。
【0025】
遮光層は,400?1100nmにおける光の透過率を1%以下でとするため,blackレジストとして,JSR社製BK4611をスピンコート(主回転900rpm)を行い,1.00μm程度の厚みの遮光層を得る。この時,透過率が1%以下と成る様に膜厚を微調節する。
【0026】
この時,ダミーマイクロレンズ7を設けていない,図4に示す構成では,blackレジストを用い,上記の様に,透過率を1%以下に制御しようとすると,露光時の光がblackレジスト膜の底部まで十分に届かないため,blackレジストパターンの,剥がれが発生する危険性がある。
【0027】
一方フォトダイオード5の配列の外側に1ピッチ以上,ダミーマイクロレンズ7を形成すると共に,アレイ外周部11の最外周であるスクライブライン14の内側に1ピッチ以上,ダミーマイクロレンズ7を形成すると,blackレジストの硬化が進むだけでなく,ダミーマイクロレンズ7により,フォトダイオード8の配列の外側やアレイ外周部11の最外周といった,剥がれが始まる部分において,blackレジストとレンズ形成層との接触面積が増えるため,剥がれが生じなくなる。」
オ 「【符号の説明】
【0034】
1・・・平坦化層
2・・・カラー画素
2R・・・R画素
2B・・・B画素
2G・・・G画素
3・・・レンズ形成層
4・・・レンズ層
5・・・マイクロレンズ
6・・・遮光層
7・・・ダミーマイクロレンズ
8・・・フォトダイーオード
9・・・平滑化層
10・・・アレイ部
11・・・アレイ外周部
(略)」
カ 図1には,アレイ外周部11の一部に延伸した3ピッチのダミーマイクロレンズ7と,アレイ外周部11の最外周に1ピッチのダミーマイクロレンズ7を形成すること,ダミーマイクロレンズ7の断面は半円形状であること,遮光層6がダミーマイクロレンズ7の表面に形成されること,が記載されている。
(2)引用発明6
前記(1)より,引用文献6には次の発明(以下,「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
「フォトダイオードの配列の外側であるアレイ外周部の一部に延伸した3ピッチのダミーマイクロレンズと,アレイ外周部の最外周に1ピッチのダミーマイクロレンズを形成した固体撮像素子であって,フォトダイオードの配列の外側やアレイ外周部の最外周といった,剥がれが始まる部分において,遮光層としてのblackレジストとレンズ形成層との接触面積が増えるため,剥がれが生じなくなること。」
6 引用文献7の記載
(1)引用文献7
原査定で引用された特開2007-173535号公報(以下,「引用文献7」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,固体撮像装置に関する。」
イ 「【0008】
《第1実施形態》
図1は,固体撮像装置11を示す図である。図1[A]には,固体撮像装置11の上面図を示す。図1[B]には,固体撮像装置11の受光面の部分拡大図を示す。図1[C]には,図1[B]中のX-X′箇所の断面構造を示す。
【0009】
以下,図1を用いて,固体撮像装置11の構成を説明する。
まず,固体撮像装置11の受光面には,光電変換素子13aおよびマイクロレンズ14aが画素単位に配列される。これら光電変換素子13aは,受光光束を画素単位に光電変換して,画像信号を生成する。一方,マイクロレンズ14aは,受光面の素子表面であるマイクロレンズ層14に形成される。このマイクロレンズ14aは,画素単位の受光光束を光電変換素子13aに集光することにより,光電変換素子13aの受光効率を高める。
この固体撮像装置11の受光面には,図1[A]に示すように,有効な画像信号を生成する領域として,有効画素領域13が予め設定される。
この有効画素領域13の外側には,外周域15が設けられる。この外周域15は,有効な画像信号を生成しない代わりに,下記の構成が設けられる。
【0010】
(1)ダミーのマイクロレンズ14b・・通常,マイクロレンズ14aの加工工程では,周辺の歩留まりが悪くなる。そこで,外周域15にもダミーのマイクロレンズ14bを形成することにより,有効画素領域13内のマイクロレンズ14aの品質を高めることができる。」
(2)引用発明7
前記(1)より,引用文献7には次の発明(以下,「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。
「固体撮像装置において,有効画素領域の外側に,外周域を設け,そこにダミーのマイクロレンズを形成すること。」
7 引用文献8の記載
(1)引用文献8
原査定及び当審拒絶理由で引用された特開2012-252259号公報(以下,引用文献8」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,レンズアレイ,撮像装置,生体認証装置,電子機器に関する。」
イ 「【0024】
レンズアレイ20は,透明な基板本体21と,基板本体21に凸状のレンズ面が撮像素子42の方向(光の入射側と反対側の方向)に向くように形成された複数のマイクロレンズ22を有している。
また,撮像素子42と対向する有効なマイクロレンズ22が設けられたレンズ領域27の外側に,マイクロレンズ22と同じ感光性レンズ材料を用いて形成された複数のダミーパターン23を有している。複数のダミーパターン23が設けられた領域をダミー領域28と呼ぶ。ダミーパターン23は,レンズアレイ20の製造にあたって安定した形状のマイクロレンズ22が得られるように,その配置や形状が工夫されており,詳しくは後述する。」
ウ 「【0032】
(実施例1)
図3は実施例1のレンズアレイにおけるマイクロレンズおよびダミーパターンの配置を示す概略平面図,図4(a)?(d)はマイクロレンズの製造方法を示す概略断面図である。
図3に示すように,実施例1のレンズアレイ20は,X方向とY方向とに配列した複数のマイクロレンズ22を有するレンズ領域27と,レンズ領域27を囲んで同じくX方向とY方向とに配列した複数のダミーパターン23を有するダミー領域28とを備えている。
【0033】
平面視で円形のマイクロレンズ22のレンズ径は,例えばおよそ100μmである。X方向とY方向とにおける配置ピッチはそれぞれおよそ105μmで,マイクロレンズ22は等間隔に配置されている。
【0034】
これに対して,平面視で正方形(四角形)のダミーパターン23は,X方向およびY方向における配置ピッチがマイクロレンズ22の配置ピッチに比べて小さくなるように設定されており,実施例1では配置ピッチがおよそ95μm,サイズ(正方形の一辺の大きさ)がおよそ80μmとなっている。また,ダミー領域28における単位面積あたりのパターン配置密度がレンズ領域27におけるマイクロレンズ22の配置密度とほぼ同じになるように外形サイズが設定されている。実施例1では,ダミーパターン23がレンズ領域27を囲むようにしてX方向とY方向とにそれぞれ5個ずつ(5行,5列)配置されている。」
(2)引用発明8
前記(1)より,引用文献8には次の発明(以下,「引用発明8」という。)が記載されていると認められる。
「撮像装置において,有効なマイクロレンズが設けられたレンズ領域の外側に,ダミーパターンを有するダミー領域を備えており,ダミーパターンは平面視で正方形であること。」
8 引用文献9の記載
(1)引用文献9
原査定で引用された特開2012-204402号公報(以下,「引用文献9」という。)には,図面とともに次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,固体撮像装置及びその製造方法に関する。」
イ 「【0011】
(1) 第1の実施形態
図1乃至図7を参照して,第1の実施形態に係る固体撮像装置及びその製造方法について説明する。
【0012】
(a) 構造
図1乃至図3を用いて,第1の実施形態に係る固体撮像装置の構造について,説明する。
【0013】
図1は,固体撮像装置(以下,イメージセンサとよぶ)のチップのレイアウト例を示す模式図である。
図1に示されるように,本実施形態のイメージセンサにおいて,画素アレイ2及びそれを制御するための回路(アナログ回路又はロジック回路)が,1つの半導体基板(チップ)10内に設けられている。
【0014】
半導体基板10内の画素アレイ2は,画像(被写体)に対応する光を取得するための撮像領域(有効領域ともよばれる)21を含んでいる。
撮像領域21は,有効画素を含む単位セル3を複数個有する。以下では,有効画素を含む単位セル3のことを,単に,単位セルとよぶ。各単位セル3は,少なくとも1つの画素(有効画素,光電変換部)を含んでいる。光電変換部は,マイクロレンズ及びカラーフィルタを介して入射された光を電気信号へ変換する。光電変換部によって,CMOSセンサ或いはCCDセンサが形成される。互いに隣接する単位セル3及び互いに隣接する光電変換部は,素子分離領域によって,分離されている。
【0015】
画素アレイ2は,黒基準領域29を含んでいる。黒基準領域29は,光電変換された信号に対する基準電位(暗電圧又はリセット電圧)を形成するために,画素アレイ2内に設けられている。黒基準領域29は,OB(Optical Black)領域,遮光領域,あるいは,無効領域ともよばれる。
【0016】
黒基準領域29は,画素アレイ2内において,撮像領域21に隣接している。例えば,黒基準領域29は,撮像領域21の周囲を取り囲むように,画素アレイ2内にレイアウトされている。
黒基準領域29は,複数の黒基準画素を含む単位セル4を有している。以下では,黒基準領域29内の黒基準画素を含む単位セル4のことを,単に,黒基準セル4とよぶ。黒基準セル4は,単位セル20と実質的に同じ構造を有し,画素を含んでいる。光の入射を遮る遮光膜が,黒基準セル4上方に,設けられていることによって,黒基準領域29が,形成される。尚,黒基準セル4は,ダミーセルとよばれる場合もある。」
ウ 「【0065】
本実施形態のイメージセンサにおいて,黒基準領域29内の黒基準セル4(フォトダイオード40)の上方に,凹凸部を有する遮光膜61が設けられている。遮光膜61の凹凸部(突起部)62は,光の照射側に形成される。遮光膜61の凹凸部(突起部)62は,遮光膜61に照射される光を反射及び散乱させる。」
(2)引用発明9
前記(1)より,引用文献9には次の発明(以下,「引用発明9」という。)が記載されていると認められる。
「固体撮像装置において,黒基準領域が撮像領域の周囲を取り囲むようにレイアウトされ,黒基準領域には凹凸部を有する遮光膜が設けられていること。」

第6 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明Aとの対比
ア 引用発明1の「イメージセンサ」は,下記相違点1-4を除いて,本願発明の「撮像装置」に相当する。
イ 引用発明1の「基板上の受光領域に形成されているフォトダイオードを含む複数の単位画素」は,本願発明の「前記撮像装置のアクティブ領域内の基板上に形成される複数の光電変換素子」に相当する。
ウ 引用発明1の「受光領域における単位画素の上に形成されたマイクロレンズ」は,下記相違点1を除いて,本願発明の「前記アクティブ領域の前記基板上に設置される複数のマイクロレンズ素子を有するマイクロレンズ構造」に相当する。
エ 引用発明1の「マイクロレンズ及び周辺領域の平坦化層上に形成されたマイクロレンズ保護層」は,テーピング工程においてテープを接着し,テープはその後除去される(前記第3の1(1)イ[0012],[0014]及び[0017]参照。)から,下記相違点3を除いて,本願発明の「複数のマイクロレンズ素子の表面上に形成される,製造プロセスにおけるテープの取り付け及び除去の対象となるパッシベーション膜」に相当する。
オ すると,本願発明と引用発明1とは,下記カの点で一致し,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「撮像装置であって,
前記撮像装置のアクティブ領域内の基板上に形成される複数の光電変換素子と,
前記アクティブ領域の前記基板上に設置される複数のマイクロレンズ素子を有するマイクロレンズ構造と,
複数のマイクロレンズ素子の表面上に形成される,製造プロセスにおけるテープの取り付け及び除去の対象となるパッシベーション膜と,を有すること,
を特徴とする撮像装置。」
キ 相違点
(ア)相違点1
本願発明の「マイクロレンズ構造」は「該アクティブ領域を囲む前記撮像装置の周辺領域の一部に延伸した領域」にも「複数のマイクロレンズ素子を有する」のに対し,引用発明1の「マイクロレンズ」は「周辺領域」には形成されない点。
(イ)相違点2
本願発明は「前記マイクロレンズ構造の領域を囲む前記周辺領域内の前記基板上に設置される複数の突起素子を有するダミーパターン」を有するのに対し,引用発明1はそうではない点。
(ウ)相違点3
本願発明の「パッシベーション膜」は「前記マイクロレンズ構造の前記複数のマイクロレンズ素子と前記ダミーパターンの前記複数の突起素子の表面上に形成される」のに対し,引用発明1の「マイクロレンズ保護層」はそうではない点。
(エ)相違点4
本願発明において「前記ダミーパターンの上部の前記パッシベーション膜の表面積は,前記マイクロレンズ構造の外側の前記周辺領域の表面積より小さい」のに対し,引用発明1においてはこの旨が明示されない点。
(2)相違点についての判断
相違点1ないし4に係る構成を同時に備えることは,いずれの引用文献にも記載されていない。
そして,相違点1ないし4に係る構成を同時に備えることにより,本願発明1は,テープとダミーパターン上に設置されたパッシベーション膜間の接触面積を減少させることができ,その結果,テープが撮像装置から除去されるとき,パッシベーション膜の剥離を効果的に防止することができるという,当業者の予測を越えた効果を奏するものと認められる。
(3)まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,引用文献A,1ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたとはいえない。
2 本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は,本願発明1の発明特定事項をすべて備え,さらに別の発明特定事項を付加したものであるから,前記1と同様の理由により,引用文献A,1ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたとはいえない。
3 特許請求の範囲の記載不備について
当審拒絶理由で記載不備を指摘した当審補正前の請求項4は,当審補正によって削除された。
よって,もはや記載不備の拒絶理由は解消した。

第7 原査定の理由についての判断
本願発明1ないし8の発明特定事項である「前記アクティブ領域と該アクティブ領域を囲む前記撮像装置の周辺領域の一部に延伸した領域の前記基板上に設置される複数のマイクロレンズ素子を有するマイクロレンズ構造と,前記マイクロレンズ構造の領域を囲む前記周辺領域内の前記基板上に設置される複数の突起素子を有するダミーパターンと,
前記マイクロレンズ構造の前記複数のマイクロレンズ素子と前記ダミーパターンの前記複数の突起素子の表面上に形成される,製造プロセスにおけるテープの取り付け及び除去の対象となるパッシベーション膜と,を有し,前記ダミーパターンの上部の前記パッシベーション膜の表面積は,前記マイクロレンズ構造の外側の前記周辺領域の表面積より小さいことを特徴とする」点は,原査定で引用した引用文献1ないし9には記載も示唆もない。
よって,本願発明1ないし8は,引用文献1ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第8 結言
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-16 
出願番号 特願2015-93(P2015-93)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 聖和田邊 顕人  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 ダミーパターンを有する撮像装置  
代理人 磯野 富彦  

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