• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J
管理番号 1337980
審判番号 不服2016-16645  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2018-03-07 
事件の表示 特願2014-531296「しずくの形の液体を分配するためのディスペンサ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年3月28日国際公開、WO2013/041819、平成26年10月23日国内公表、特表2014-527876〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I 手続の経緯
本願は、2012年9月24日(パリ条約による優先権主張2011年9月22日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、拒絶理由が通知され、その指定された期間内に平成28年4月19日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされ、平成28年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II 平成28年11月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年11月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「しずくの形の液体を分配するためのディスペンサ装置であって、
円筒形状を含むディスペンサ先端部(14)と、
ディスク状の形状を含み不透明色を有する上部分配端(20)と、
前記上部分配端(20)の中心部にあるしずく分配口と、
前記しずく分配口を提供し、エラストマ材料からなるしずく分配バルブ(22)で形成されるしずく形成手段(16)と、
前記しずく分配口のロケータ手段(40)であって、前記上部分配端(20)の他の部分と対照をなす色を有する境界ゾーンを形成することによって、前記しずく分配口の位置を視覚的につきとめるためのロケータ手段(40)と、
を含み、
前記境界ゾーンは前記しずく形成手段(16)の着色によって確立されている、
装置。」(なお、下線は補正箇所を示すものである。)

2 補正の目的等
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ディスペンサ装置」について「円筒形状を含むディスペンサ先端部(14)」「を含む」との限定を付加するとともに、「しずく分配口が形成された上部分配端(20)」に関し、「上部分配端(20)」について「ディスク状の形状を含み不透明色を有する」と限定するとともに「しずく分配口」について「上部分配端(20)の中心部にある」と限定し、さらに「ディスク状の形状を含み不透明色を有する上部分配端(20)と、前記上部分配端(20)の中心部にあるしずく分配口と、」と明りょうな記載へと書き改めるものであり、また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮および第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものでなく、また、特許法第17条の2第4項の要件を満たすものである。

3 独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1 引用文献
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2011/051602号(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(訳文として、特表2013-509220号公報を援用する。)。
(1-1)


」(1頁2?4行)( 本発明は、例えば目薬など、薬剤の分野において液体を特に液滴の形態で送出する分野に関する。(特表2013-509220号公報の【0001】欄))
(1-2)


」(1頁最下行?2頁9行)( 本発明の目的は、液体の送出のための装置であって、
押されることによって液体を送出すべく変形することができる液体リザーバと、
リザーバに装着された液体送出用端部ピースと、
液体を通すための通路と、
リザーバの外部から内部へと空気を通すための通路と
を備えており、
空気を通すための通路が、通気ポリマー材料で作られた部材によって閉じられており、この材料が無孔性(non-porous)であって、部材が通気部材と呼ばれることを特徴とする装置である。(特表2013-509220号公報の【0009】欄))

(1-3)


」(4頁16?22行)( 端部ピースおよび部材の各々が、中心軸を有しており、2つの軸が同一直線上にある。これは、端部ピースへの部材の取り付けをより容易にする。実際、一方の部品を他方の部品に対して心出しすることが容易である。加えて、通気部材を装置の中心に配置することによって、例えば装置のリザーバの首全体を覆う比較的大きい面積を有するように設計し、内部および外部の圧力が可能な限り速やかに平衡に達するよう、空気の流れにより大きな面積を提供することが可能である。(特表2013-509220号公報の【0019】欄))

(1-4)


」(6頁31行?7頁7行)( 図1が、液体を液滴の形態で送出するための端部ピース10を示しており、この端部ピース10は、リザーバ12の首へと螺合によって取り付けられる。このリザーバ12は、液体(例えば、目薬などの薬剤の液体)のための貯蔵容器である。リザーバ12を、リザーバを押すことによって液体を送出すべく変形させることができる。より詳しくは、液体が、ユーザによってリザーバ12の本体へと加えられる圧力によって送出されるが、リザーバの本体が然るべき弾性を有していることで、ユーザによって加えられる圧力が緩められた後に初期の形状へと戻ることができ、リザーバ12の内部に圧力低下が生じる。
この例では、送出用端部ピース10が、支持部14と、送出開口18が設けられた送出バルブ16と、ばね20と、外被22と、リザーバ12から送出開口18へと液体を通すための通路24と、リザーバ12へと空気を通すための通路26とを備えており、通路26が通気部材28によって閉じられている。(特表2013-509220号公報の【00032】?【0033】欄))

(1-5)


」(8頁23行?9頁12行)( さらに支持部14は、バルブ16を支持部14に固定するための部位56を備えている。この部位56は、外被22を支持部14に固定するために用いられる部位としても機能する。部位56は、環状の壁60によって外周が画定された環状の溝58を備えている。さらに、環状の溝58の内周は、円板を実質的に形成している壁(通路24が横切っており、空洞48によって画定されている)に生成された環状のリブによって画定されている。
バルブ16は、支持部14との協働によって、液体を遮断する状態と、液体を送出する状態とをとることができる。この例では、バルブ16がエラストマ材料から作られている。別の例によれば、バルブ16の一部だけがエラストマ材料から作られ、残りの部分が、ばね20のための座として機能することができるより剛性のある材料から作られる。バルブ16は、実質的に管状のスカートを形成している支持部14への固定のための部位62を備えている。この固定のための部位62が、実質的に円板状のウェブ64へとつながり、そこから実質的に円筒形の中央部66が突き出している。ウェブ64は、ばね20のための座68をさらに備えている。部位66が、部位38に相補的である実質的に円柱形の内側空洞を形成している。部位38および円筒形の部位66が同軸であり、液体を通すための通路50を協働して画定している。この液体を通すための通路50は、バルブ16の遠位端に形成された送出開口18へと開いており、送出開口18自体は、液滴を形成するための形状68へと開いている。
外被22が、支持部14への固定のための環状の部位70と、環状の壁60を収容する溝74を形成するように部位70と同軸であるもう1つの環状の部位72とを備えている。さらに外被22は、ばね20のための座76を備えており、内周が環状の壁78によって延長され、バルブ16の部位66が横切り、心出しされるように設計されている。(特表2013-509220号公報の【0041】?【0043】欄))

(1-6)Fig.1の記載から、送出開口18を備えた送出バルブ16は、外被22の中央位置に配置されており、また、その送出開口18を上方に向けた状態で、外被22の上面は左右の端部から中央に向かってなだらかに高くなる形状であることが窺える。

上記した(1-3)の「端部ピース・・・が、中心軸を有しており」、(1-4)の「この端部ピース10は、リザーバ12の首へと螺合によって取り付けられる。」及び(1-5)の「 外被22が、支持部14への固定のための環状の部位70と、環状の壁60を収容する溝74を形成するように部位70と同軸であるもう1つの環状の部位72とを備えている。」の記載及び(1-6)の図示内容を総合してみて、外被22は、送出開口18を上に向けた状態において、その上面が周囲から中央に向かってなだらかに高くなる円形状であり、また、送出開口18は、外被22の中心部にあるといえる。
また、送出用端部ピース10は、外被22が環状の部位70を備えるから、円筒形状を有するといえる。

上記(1-5)の「 バルブ16は、支持部14との協働によって、液体を遮断する状態と、液体を送出する状態とをとることができる。この例では、バルブ16がエラストマ材料から作られている。・・・この液体を通すための通路50は、バルブ16の遠位端に形成された送出開口18へと開いており、送出開口18自体は、液滴を形成するための形状68へと開いている。」の記載から、装置は、送出開口18を提供し、エラストマ材料からなる送出バルブ(16)で形成される液滴を形成する手段を有するといえる。

以上から、引用文献1には次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されている。
「液滴の形態の液体を送出するための装置であって、
円筒形状を含む送出用端部ピース10と、
送出開口18を上に向けた状態において、その上面が周囲から中央に向かってなだらかに高くなる円形状を含む外被22と、
外被22の中心部にある送出開口18と、
送出開口18を提供し、エラストマ材料からなる送出バルブ16で形成される液滴を形成する手段と、
を含む、
装置。」

(2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された文献である米国特許第4550866号明細書(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(和文は当審による訳。)。
(2-1)「1. Field of the Invention
The present invention relates generally to devices for dispensing and applying medications to the eye. More particularly, the invention concerns a uniquely configured, multicolor device which is attachable to a fluid medicine container for dispensing fluid therefrom into the eye.」(1欄3?9行)(発明の分野
この発明は、一般的に眼に薬剤を分配して適用する装置に関する。より詳細には、この発明は、眼に液体を分配するための薬液容器に取り付け可能な、独特な構成の多色装置に関する。)

(2-2)「Turning now to FIGS. 4, 5 and 6, there is shown another form of the ocular dispenser of the present invention. In this form of the invention, the dispensing device 26 is once again adapted to be closely received within the open top 28 of a second form of medicine container 30. As best seen in FIG. 6, this second type of squeeze bottle is generally circular in cross-section at any point and has at its upper end an open externally threaded neck portion 32. Once again, container 30 is typically constructed of a plastic material, usually opaque, or white in color.」(3欄26?36行)(図4、5及び6をみると、本発明の眼用ディスペンサのもう1つの形態が示されている。この発明の形態においても、分配装置26は、薬液容器30の第2の形式の上部開口28内にぴったりと収容されて、適合されている。図6において最も明らかなとおり、このスクイーズボトルの第2形式は、一般的に任意の点において断面円形であり、その上端において開いた雄ネジのある頸部分32を有している。容器30は、典型的にはプラスチック材料で形成され、通常不透明又は白色である。)

(2-3)「Referring to FIG. 5, the device of this form of the invention includes a lower portion 32a adapted to be partially received within the opening 28 of container 30 and an upper nozzle portion 34. The nozzle portion 34 is generally circular in cross-section at any point and comprises a first upper portion 36 and a second lower portion 38. Formed intermediate of portions 32a and 38 is a flange portion 40 having a plurality of radially outwardly extending ridges 42 protruding upwardly from an upper generally planar surface 40a (FIG. 6) of flange 40. As best seen by referring to FIG. 6, the flanges 42(審決注:ridges42の誤記と考えられる。) of the form of the invention shown in the drawings are circumferentially spaced apart by approximately 90°. With this arrangement, a "cross-hair" like effectis created. As best seen in FIG. 5, the device is provided with an axially extending fluid passageway 43 which is adapted to communicate with the interior of the container 30 when the device is connected to the container.」(3欄37?末行)
(図5を参照して、この発明の形態における装置は、容器30の開口部28に特に受け入れられて適合する下側部分32aと上部ノズル部分34を有している。ノズル部分34は一般的に任意の点において断面円形であり、第1の上側部分36と第2の下側部分38とから成っている。複数の半径方向外方向に延びる隆起部分42をもつフランジ部分40が部分32aと38との間に形成されており、その隆起部分42はフランジ40の平らな表面40a(図6)の上面から上方に突き出している。図6を参照することにより最もよくわかるように、図示されたこの発明の形態におけるフランジ42(審決注:隆起42の誤記と考えられる。)は、周方向に約90度離間して位置している。この配置により、十字線状のものがつくられる。図5により最もよくわかるように、この装置には、容器に接続されるとき、容器30の内部に通じるように適合された軸方向に延びる流体通路43が備わっている。)

(2-4)「To once again make maximum use of the advantages of color differentiation as an aid in focusing upon the nozzle, the upper portion 36 of the nozzle is formed of a first color, while the lower portion 38 is formed of a second color. Similarly, the planar portion 40a of flange 40 is preferably formed of a third color while the upstanding ridge portions 42 are formed of a fourth color. This arrangement gives a vivid color pattern to the viewer, which, as best seen in FIG. 6, appears to be a cross, or "cross-hair" like configuration having a multicolored target-like area superimposed thereover. By way of example, upper portion 36 of the nozzle may be colored red, lower portion 38 of the nozzle may be colored blue, the planar surface 40a of the flange may be colored yellow and the upstanding flange(審決注:ridgesの誤記と考えられる。) portions 42 may be colored green. It is apparent that such a vivid color pattern in the unique configuration illustrated in FIG. 6 provides a unique mechanism for easy focusing and centering of the nozzle portion of the device relative to the eyeball. 」(4欄1?20行)(ノズルに焦点を合わせるための、色の区別の利点を最大限にするために、ノズルの上側部分36は第1の色で形成され、一方下側部分38は第2の色で形成される。同様に、フランジ40の平らな表面40aは、望ましくは第3の色で形成され、一方、直立した隆起部分は第4の色で形成される。この配置は、鮮やかな色パターンを観察者に提供し、それは、図6により最もよくわかるように、重ね合わされた多色の標的領域を有する交差または「十字線」状の輪郭であるように見える。例を挙げれば、ノズルの上側部分36は赤色、ノズルの下側部分38は青色、フランジの平らな表面40aは黄色、直立したフランジ(審決注:隆起の誤記と考えられる。)部分42は緑色である。図6に示された固有の輪郭のそのような鮮やかな色パターンは、容易な焦点合せと眼球に対する装置のノズル部分の中心合せのための固有の機構を提供するものであることは明らかである。)

(2-5)Fig.5とFig.6とを合わせてみて、流体流路43の端部が上部ノズル部分34の上端部の中央に位置していることが窺える。

上記(2-1)?(2-4)の記載及びFig.4?6の記載からみて、分配装置26における下側部分38、平らな表面40a及び隆起部分42は、分配装置26が容器30に取り付けられたものにおいて、上端部に位置するといえる。
また、下側部分38、平らな表面40a及び隆起部分42を、それぞれ青色、黄色及び緑色に形成することは、各部分を不透明色に形成するといえる。

したがって、引用文献2には、「容器30に取り付けられた分配装置26について、その上端部を、不透明色を有するものとする発明」(以下、「引用文献2発明A」という。)が記載されている。

また、上記した(2-4)の記載と(2-5)の図示内容とを併せてみて、上側部分36を赤色に形成するとともに、下側部分38、平らな表面40a及び隆起部分42を、それぞれ青色、黄色及び緑色に形成することは、眼球に対して、分配装置26の上端部の中央に形成された流体流路43の出口位置を視覚的につきとめるための手段といえる。
また、上側部分36を赤色に形成する一方、下側部分38、平らな表面40a及び隆起部分42を、それぞれ青色、黄色及び緑色に形成することにより鮮やかな色パターンを形成するから、上側部分36と、下側部分38、平らな表面40a及び隆起部分42とは、他の部分と対照をなす色を有する境界ゾーンを形成するといえる。
さらに、上側部分36が、薬液のしずくを形成する手段であることは明らかである。

したがって、引用文献2には、「分配装置26について、その上側部分36と、下側部分38、平らな表面40a及び隆起部分42とについて、他の部分と対照をなす色を有する境界ゾーンを形成することによって、その上端部に形成された流体流路43の出口位置を視覚的に認識できるようにするための手段を備えるとともに、境界ゾーンは、薬液のしずくを形成する手段の着色によって確立されるものとする発明」(以下、「引用文献2発明B」という。)が記載されている。

(3)当審の原査定において引用された、本願の優先日前に頒布された文献である実願昭59-46809号(実開昭60-160836号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(3-1)「この考案の点眼薬容器10は、目薬を収容する容器本体12から成っている。この容器本体10には上方に突出し、容器本体12内に薬液を注入するための開口14が一体に構成してある。この開口14にはノズル部材16を嵌装する。・・・この考案においては、ノズル部材16の先端部22を容器本体12あるいはノズル部材16の他の部分と異なり鮮明に着色してある。・・・
この考案によれば、点眼薬容器10のノズル部材16の先端部22を、以上に述べたように他の部分と全く異なる鮮明な色彩に着色してあるので、点眼時に、顔を仰けて、点眼薬容器10のノズル16の先端部22を下にして眼の上方にもってゆくと、ノズル部材16の着色した先端部22を、点眼しようとして、開いた眼球で確認することができる。」(3頁1行?4頁8行)
したがって、引用文献3には、「点眼薬容器10のノズル部材16の先端部22を他の部分と全く異なる鮮明な色彩に着色することにより、ノズル部材16の着色した先端部22を開いた眼球で確認できるようにすること」(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

3-2 対比
本願補正発明と引用文献1発明とを対比すると、その構造または機能からみて、引用文献1発明の「液滴の形態の液体」は、本願補正発明の「しずくの形の液体」に相当し、以下同様に、「送出する」は「分配する」に、「装置」は「ディスペンサ装置」に、「送出用端部ピース10」は「ディスペンサ先端部(14)」に、「外被22」は「上部分配端(20)」に、「送出開口18」は「しずく分配口」に、「送出バルブ(16)」は「しずく分配バルブ(22)」に、「液滴を形成する手段」は「しずく形成手段(16)」に、それぞれ相当する。
ところで、本願補正発明の上部分配端(20)における「ディスク状の形状」について、明細書には、「【0016】・・・本実施形態において、先端部14は、通常、実質的に円筒形状であり、分配口16を有するディスクの一般的形状を有する分配端20がその中心に位置する。・・・」と記載され、また、図3には、引用文献1のFig.1の外被22のように、分配口を上に向けた状態において、上部分配端20の上面は左右の端部から中央に向かってなだらかに高くなる形状が図示されている。
したがって、引用文献1発明の「送出開口18を上に向けた状態において、その上面が周囲から中央に向かってなだらかに高くなる円形状」は、本願補正発明の「ディスク状の形状」に相当する。

以上から、本願補正発明と引用文献1発明とは、
「しずくの形の液体を分配するためのディスペンサ装置であって、
円筒形状を含むディスペンサ先端部と、
ディスク状の形状を含む上部分配端と、
前記上部分配端の中心部にあるしずく分配口と、
前記しずく分配口を提供し、エラストマ材料からなるしずく分配バルブで形成されるしずく形成手段と、
を含む、
装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明の上部分配端は不透明色を有するものであるのに対し、引用文献1発明の上部分配端は何色を有するものであるか不明な点。

(相違点2)
本願補正発明は、しずく分配口のロケータ手段であって、上部分配端の他の部分と対照をなす色を有する境界ゾーンを形成することによって、前記しずく分配口の位置を視覚的につきとめるためのロケータ手段を含み、前記境界ゾーンはしずく形成手段の着色によって確立されているものであるのに対し、引用文献1発明は、しずく分配口のロケータ手段を有するかどうか不明であり、それゆえに、境界ゾーンはしずく形成手段の着色によって確立されているかどうかも不明である点。

3-3 相違点の判断
(相違点1について)
上記3-1の(2)欄に記載したとおり、引用文献2には、引用文献2発明Aが記載されている。
一方、引用文献2発明Aの上端部は装置の上部分配端といえるものである。
したがって、引用文献1発明の上部分配端に引用文献2発明Aを適用し、引用文献1発明の上部分配端を不透明色を有するものとすることは当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

(相違点2について)
上記3-1の(2)欄に記載したとおり、引用文献2には、引用文献2発明Bが記載され、また、引用文献3には、同(3)欄に記載したとおり、引用文献3記載事項が記載されているから、しずくの形の液体を眼に分配するためのディスペンサ装置において、より的確に液体を眼に分配できるようにすることは当然求められる課題であり、また、当該課題を解決するために、しずく分配口の位置を視覚的につきとめるための手段を設けることも周知であると認められる。
そして、引用文献1発明も同様に上記課題を有すると認められる。
そうすると、上記課題の解決手段として、引用文献1発明の上部分配端に引用文献2発明Bを適用し、引用文献1発明を、しずく分配口のロケータ手段として、上部分配端の他の部分と対照をなす色を有する境界ゾーンを形成することによって、前記しずく分配口の位置を視覚的につきとめるための手段を含むものとするとともに、前記境界ゾーンはしずく形成手段の着色によって確立されているものとすることは、当業者が容易になし得る程度の事項にすぎない。

そして、本願補正発明による効果も、引用文献1発明、引用文献2発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1発明、引用文献2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成28年4月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「しずくの形の液体を分配するためのディスペンサ装置であって、
しずく分配口が形成された上部分配端(20)と、
前記しずく分配口を提供し、エラストマ材料からなるしずく分配バルブ(22)で形成されるしずく形成手段(16)と、
前記しずく分配口のロケータ手段(40)であって、前記上部分配端(20)の他の部分と対照をなす色を有する境界ゾーンを形成することによって、前記しずく分配口の位置を視覚的につきとめるためのロケータ手段(40)と、
を含み、
前記境界ゾーンは前記しずく形成手段(16)の着色によって確立されている、
装置。」

IV 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1、2及びその記載事項は、上記IIの「3-1」欄に記載したとおりである。

V 対比・判断
本願発明は、前記IIの1欄の本願補正発明から、「ディスペンサ装置」の限定事項である「円筒形状を含むディスペンサ先端部(14)」「を含む」との構成を省き、また、「上部分配端(20)」の限定事項である「ディスク状の形状を含み不透明色を有する」との構成及び「しずく分配口」の限定事項である「上部分配端(20)の中心部にある」との構成をそれぞれ省くとともに「上部分配端(20)」及び「しずく分配口」について「しずく分配口が形成された上部分配端(20)」と書き改めたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記IIの「3-3」欄に記載したとおり、引用文献1発明、引用文献2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用文献1発明、引用文献2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI むすび
以上のとおり、本願発明は、同様に、引用文献1発明、引用文献2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-06 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-24 
出願番号 特願2014-531296(P2014-531296)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61J)
P 1 8・ 575- Z (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増山 慎也  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 関谷 一夫
高木 彰
発明の名称 しずくの形の液体を分配するためのディスペンサ装置  
代理人 藤田 和子  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ