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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1338042
審判番号 不服2016-16549  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-04 
確定日 2018-03-06 
事件の表示 特願2014-175225「厚みを薄くしたキーキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月13日出願公開、特開2015- 69644〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月29日(パリ条約による優先権主張2013年9月30日、米国)の出願であって、平成27年10月29日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年2月2日付けで手続補正され、同年6月28日付けで拒絶査定がされ、それに対して同年11月4日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、同時に手続補正がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年11月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項13を、補正後の請求項1及び請求項13とする補正事項(以下、「補正事項」という。)を含んでいる。(下線は補正箇所を示す。)

ア 本件補正前の【請求項1】
「コンピューティング装置に使用するための照明型入力装置において、
少なくとも1つのキーを備え、この少なくとも1つのキーは、
ユーザ入力を受けるように構成された頂面と、混合拡散部及びインク層と干渉するように構成された底面とを有する透明なガラスキーキャップを含み、
前記混合拡散部及びインク層は、
顔料を含み、前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層、及び
前記グリフウインドウの中のグリフ拡散層を含み、
前記少なくとも1つのキーは、さらに、
前記底面に結合され、電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、及び
オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源、
を含むものである、照明型入力装置。」

本件補正前の【請求項13】
「キーボードを照明するための光透過性キーキャップの製造方法において、
透明なガラスキーキャップの底面にバックグランドインク層を堆積し、
前記バックグランドインク層を貫通して記号アパーチャーをエッチングし、
前記バックグランドインク層において少なくとも前記記号アパーチャーの上に半透明のグリフ拡散層を堆積し、及び
垂直軸に沿って前記透明なガラスキーキャップを、電気スイッチ回路の上に配置された圧縮可能なハサミ機構と整列させる、
という段階を含む方法。」

イ 本件補正後の【請求項1】
「ラップトップコンピューター用のバックライト付きキーボードにおいて、
キー配列を備え、この少なくとも1つのキーは、
ユーザ入力を受けるように構成された頂面と、底面と、前記底面に置かれ、グリフウインドウを画定するバックグランドインク層と、前記グリフウインドウ内を延長するグリフ拡散層とを有する、ガラスで形成された透明なキーキャップを含み、
前記少なくとも1つのキーは、さらに、
前記透明なキーキャップに結合された受け入れパッド、
前記受け入れパッドに結合され、前記ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、
前記電気スイッチ回路を備えた前記圧縮可能なメカニズム内のドームスイッチ、及び
オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源、
を含むものである、バックライト付きキーボード。」

本件補正後の【請求項13】
「キーボードを照明するための光透過性キーキャップの製造方法において、
ガラスで形成された透明なキーキャップの底面にバックグランドインク層を堆積し、
前記バックグランドインク層を貫通して記号アパーチャーをエッチングし、それにより前記底面の少なくとも一部が露出し、
前記バックグランドインク層において少なくとも前記記号アパーチャーの上に半透明のグリフ拡散材料を堆積し、前記半透明のグリフ拡散材料の少なくとも一部が前記底面に接触し、
前記透明なキーキャップを受け入れパッドに結合し、及び
前記受け入れパッドを、電気スイッチ回路の上に配置された圧縮可能な機構の垂直軸と整列させる、
という段階を含む方法。」

(2)本件補正の可否の判断
A 補正の目的について
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の「顔料を含み、前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層」が、「前記底面に置かれ、グリフウインドウを画定するバックグランドインク層」となっており、「顔料を含み」という限定がなくなっている。また、本件補正後の請求項13は、本件補正前の請求項13の「電気スイッチ回路の上に配置された圧縮可能なハサミ機構と整列させる」が、「電気スイッチ回路の上に配置された圧縮可能な機構の垂直軸と整列させる」となっており、「ハサミ機構」という限定がなくなっている。
このような補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮には該当しない。
上記補正事項は、同条同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明にも該当しない。
さらに、上記補正事項は、同条同項1号、3号のいずれに規定する補正目的にも該当しない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

B 独立特許要件について
本件補正は、上記「第2 (2)A」のとおり却下すべきであるが、補正事項のうち「キーキャップに結合された受け入れパッド」に関する事項を追加する補正は、前記補正前の請求項1の発明特定事項を限定するものであるから、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第5項の規定に適合するとしたとしても、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)は、以下のとおり、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ア 引用文献等
(ア)引用文献・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2006/022313号(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与した。以下、同様。)
a
「[0001] 本発明は、押釦入力方式のキートップを備えた機器、例えば、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、パソコン等に用いるものであって、非照光時には金属調の外観で文字や記号等が視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が透過して文字や記号等が視認できるようにした、新たなデザインのキーシート及びキートップに関するものである。」
b
「[0016] 本発明は、個々のキートップ単体に対しても適用可能であることは勿論であるが、複数個のキートップを一体的に支持したシート状のキーパッドとして実施されることが多い。何故ならば、それら複数個のキートップは、キーパッド上に透明接着剤によって貼り付けられ、機器製造時には、端一の組立体として一体的に取扱い可能になっているので、キートップ付きの機器を組立てる際の、工程及び組み立て時間の短縮に絶大な効果を招来するからである。」
c
「[0017] 図1(a)は、本発明のキーシート1を組み込んだ携帯電話機2の例を示す図であり、非照光時のキーシート1の状態(見え方)を示している。・・・中略・・・個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できない。
[0018] 図1(b)は、図1と同じキーシートの照光時の状態を示し、各キートップ4に数字0?9やアルファベット・・・等が抜き文字で表示された状態(各キートップ4の表面から文字等の形状に光が出射して文字等が視認できるようになった状態)が示されている。・・・中略・・・
[0019] 照光時のキーシートの状態を示す図1(b)において、各キートップ4の、抜き文字以外の部分が黒く見えるのは、黒く着色されているためではない。これは、光が出射する抜き文字部分と、光が出射しないその他の部分との対比において生じる、錯覚効果を図式的に表現したものである。
[0020] 図2(a)は、キーシート1の平面図であり、補強板21の上にマトリックス状に並べて配置したキートップ4を示している。補強板21は、ポリカーボネイト樹脂(PC)又はステンレス(SUS)製の板状体であり、多数の貫通孔を有する。・・・中略・・・小さい破線枠で囲まれた部分は、貫通孔22に挿入されたキーパッド23の部分を示す。その中央破線丸は、押し子24(キートップの作動を接点に伝えるための押圧突起)24である。
・・・中略・・・
[0022] 図3(a)は、本発明のキーシート1の部分拡大図であって、図3(b)は、A-A線断面の拡大図である。図3(b)において、押し子24の下方に位置するドーム状のものは、押し子24が下方に移動したときに動作するスイッチ(接点)25である。この図において、隣りあったキートップ4の下側に、少し太い横線で示されているものは、マスクシート26である。マスクシート26の役割は、照光時に隣接するキートップ4の隙間から光が上方へ漏れるのを、防止することである。
[0023] 図4は、キートップ4の部分拡大断面図、及びその丸で囲まれた部分を更に拡大して、キートップ4に施されたコーティングの状態を示す図である。キートップ4は、例えば、樹脂、ガラスなどの透明材料で形成される。
[0024] キートップ4に対する成膜工程は、キートップ4の天地を逆にして、その裏面に対するネガ文字(抜き文字)印刷層の形成から始める。そしてその上に無色又は有色の透光性印刷層40aが形成され、抜かれた部分40aがこの材料で充填される。次に天地逆転を解除して、キートップ4の表面に対してアンダーコート41が施され、その上に金属薄膜(ハーフミラー)42が成膜される。」
d
「[0031] キーパッド23は、シート状に形成され、接点を押圧する押し子(押圧突起)24とキートップ固定部を有する。キーパッド23は全体がシリコーンゴム又は熱可塑性エラストマーで一体に成形される。補強板21を使用しないでシリコーンゴム又は熱可塑性エラストマーによって全体が1つのキーパッドとなるシート状に形成してもよい。」
e
「 実施例4
[0043] 図7に示した実施例は、文字印刷(ポジ)の例において、全ての層をキートップの上面に設けた第4実施例である。・・・中略・・・
[0044]・・・中略・・・この実施例の場合照光時には、有色の透光性印刷層の色でキートップ全体が照明され、その中に文字等が暗く表示される。
実施例5
[0045] 図8に示した実施例は、文字印刷(ポジ)の例において、全ての層をキートップの下面に設けた第5実施例である。先ず、キートップ4の天地を逆転し、その下面側にアンダーコート41を施し、その上に金属膜42を成膜し、文字印刷(ポジ)40を形成する。次に、文字部分の周辺を充填する形で無色又は有色の透光性印刷層40aを付着する。そして透明接着剤層27を介してキーパッド23に接着する。
[0046] そして、この場合には、キートップ4の上面には何も形成しない。つまり、キートップ4の表面の保護を司るトップコート44の形成は不要である。この実施例の場合も照光時の文字等の見え方は前記実施例4の場合とほぼ同じである。」

上記下線部の記載および関連する記載、図3、4の記載を技術常識に照らせば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、パソコン等に用いるものであって、非照光時には個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が各キートップの表面から文字、記号等の形状に光が出射して文字等が視認できるようにしたキーシートおよびキートップであって、
キーシート1は、補強板21の上にキートップ4をマトリックス状に並べて配置し、複数個のキートップ4は、補強板21が有する多数の貫通孔22に挿入されたキーパッド23上に透明接着剤によって貼り付けられ、
キーパッド23は、シート状に形成され、接点を押圧する押し子(押圧突起)24とキートップ固定部を有し、全体がシリコーンゴム又は熱可塑性エラストマーで一体に成形されており、
キートップ4は、樹脂、ガラスなどの透明材料で形成され、キートップに対する成膜工程は、キートップの天地を逆にして、その裏面に対するネガ文字(抜き文字)印刷層の形成から始め、その上に無色又は有色の透光性印刷層40aが形生され、抜かれた部分40aがこの材料で充填され、天地逆転を解除して、キートップの表面に対してアンダーコート41が施され、その上に金属薄膜(ハーフミラー)42が成膜され、
キーパッド23の裏側の中央の押し子24の下方には、押し子24が下方に移動したときに動作するスイッチ(接点)25を備えた、キーシートおよびキートップ。」

(イ)周知技術を示す文献
新たに引用する特開2003-114751号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図6と共に次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】周知のように、PC(Personal Computer)や電子式卓上計算機等をはじめとする各種デバイスにおいて、ユーザが操作を行なうためのキーボードは複数のキーがそれぞれストローク(以下、本明細書では、これを「上下動」と称する)可能な構成となっている。このようなキーに求められる機能としては、キーを上下動させるだけでなく、キーを押し下げたときに、キーの下方に位置する回路基板のスイッチを操作する機能、キーを押し上げて復帰させる機能等があり、また、操作感を向上させるための機能として、上下動するときにそれ以外の方向にキーがぶれるのを抑える機能等がある。
【0003】図6は、このような機能を兼ね備えたキーの構造の一例を示すもので、1はキーの表面を形成するキートップ、2はキートップ1を上下動可能に支持する上下動機構、3はキートップ1を元の位置に戻すラバードームである。上下動機構2は、一対のアーム4、5、トッププレート6、固定部材7によって構成されている。この上下動機構2は、アーム4、5が軸4aを介して回動可能に連結され、これらがパンタグラフあるいはハサミのように動作することによって、上下方向に伸縮可能となっている。トッププレート6は、一端がアーム4に回動自在に連結され、他端がアーム5に対しスライド可能に係合し、アーム4、5の伸縮動作時の補強要素としての機能、およびラバードーム3の先端部を受ける機能を有する。また固定部材7は、アーム4、5の下端側を図示しないベースプレートにスライド可能に固定するものである。ラバードーム3は、弾性を有したラバー系材料等からなり、上下動機構2の内方に収められ、その先端部が上下動機構2のトッププレート6の下面に当接するようになっている。先端部の裏面側には、下方に突出する突起が設けられ、この突起が図示しないベースプレートに設けられたメンブレンシート(回路基板)のスイッチを操作するようになっている。
【0004】このような構造のキーは、ユーザがキートップ1を押し下げると上下動機構2が縮動し、これに伴なってラバードーム3が圧縮変形して先端部が押し下げられるようになっている。先端部が押し下げられるに伴ない、先端部の裏面側に設けられた図示しない突起がスイッチを押圧し、これによってキートップ1が操作されたことが検出されるようになっているのである。また、上記のように圧縮変形したラバードーム3は元の形状に戻ろうとする復元力を有しており、ユーザがキートップ1を押し下げるのを中止すると、このラバードーム3の復元力によってトッププレート6が押し上げられ、上下動機構2が伸びてキートップ1が元の位置に復帰する構造となっている。」

新たに引用する特開2008-293922号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、情報処理機器、測定装置、医療機器などにおける入力装置として用いられるキーボード装置および該キーボード装置に用いられるキースイッチ構造に関する。」

「【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明の実施の形態におけるキースイッチ構造を示す分解斜視図、図2は実施の形態のキースイッチ構造を示す断面図である。図1、図2において、実施の形態のキースイッチ101は、キートップ111、可動板118、シート状弾性部材119、第1リンク部材112、第2リンク部材113、ラバードーム114、ホルダー115、ラバードーム114の直下に接点部を有するメンブレンシート116、メンブレンシート116の下部に配設されたバックプレート117により構成されている。
【0013】
キートップ111の裏面には、中央部に円柱状の嵌合部111aが下方に延びるように形成され、嵌合部111aの外周には図2に示すように、嵌合溝111aaが形成されている。嵌合部111aの外側には、先端が湾曲状のリング状突起111bが形成されている。リング状突起111bの高さは嵌合部111aより低くなっている。
【0014】
可動板118は略矩形に形成され、中央部に嵌合孔118aが形成されている。嵌合孔118aの内周部には、図2に示すように、エッジ部118aaが形成されており、このエッジ部118aaが上述のキートップ111の嵌合溝111aaに嵌り込むことにより、キートップ111と可動板118が結合される。可動板118の裏面には、第1リンク部材112の一端を回転可能に支持する回転支持部118bと、第2リンク部材113の一端を回転可能にかつ水平方向に移動可能に支持するスライド支持部118cが設けられている。」

新たに引用する特開2011-18484号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、情報処理機器、測定機器、医療機器などにおける入力装置として用いられるキーボードの構造に関し、特に照光機能を有するキーボード構造に関する。」

「【0011】
図1、図2において、実施例1のキースイッチ100は、キートップ120と、キートップ120の下部に配設されるシート状弾性部材121、キートップ120とともにシート状弾性部材121を固定する可動板111、可動板111に対して摺動可能に設けられた第1リンク部材112、可動板111に対して回転可能に設けられた第2リンク部材113、可動板111が押下されることにより屈曲し、押下力が排除されると可動板111を元の位置に復帰させるラバードーム(復帰部材)114、第1、第2リンク部材112、113を保持するホルダー115、ラバードーム114の直下に接点部を有するメンブレンシート116、メンブレンシート116を支持するとともに導光機能を有するバックプレート117、発光ダイオード(LED)が配設されるLEDシート118およびフレーム122とにより構成されている。」

イ 対比
補正発明と引用発明とを対比すると次のことがいえる。
(ア)引用発明の「非照光時には個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が各キートップの表面から文字、記号等の形状に光が出射して文字等が視認できるようにしたキーシート」は、「パソコン等に用いるもの」であり、「キーシート1は、補強板21の上にキートップ4をマトリックス状に並べて配置」しているから、補正発明の「ラップトップコンピューター用のバックライト付きキーボード」と、「コンピューター用のバックライト付きキーボード」である点では共通し、両者とも「キー配列を備え」ている点では一致する。
(イ)引用発明の「キートップ」は、「樹脂、ガラスなどの透明材料で形成」されているから、補正発明の「ガラスで形成された透明なキーキャップ」に相当し、「キーキャップ」の「表面」、「裏面」は、補正発明の「ユーザ入力を受けるように構成された頂面」、「底面」に相当する。
(ウ)引用発明の「キートップに対する成膜工程は、キートップの天地を逆にして、その裏面に対するネガ文字(抜き文字)印刷層の形成から始め、その上に無色又は有色の透光性印刷層40aが形生され、抜かれた部分40aがこの材料で充填」される構成を有する「キートップ」は、「裏面に対するネガ文字(抜き文字)印刷層」、「無色又は有色の透光性印刷層40a」が、それぞれ、補正発明の「底面に置かれ、グリフウインドウを画定するバックグランドインク層」、「グリフウインドウ内を延長するグリフ拡散層」に相当するといえるから、補正発明の「前記底面に置かれ、グリフウインドウを画定するバックグランドインク層と、前記グリフウインドウ内を延長するグリフ拡散層とを有する、ガラスで形成された透明なキーキャップ」に相当するといえる。
(エ)引用発明の「キーパッド23」の「キートップ固定部」は、補正発明の「前記透明なキーキャップに結合された受け入れパッド」に相当するといえ、引用発明の「キーパッド23は、シート状に形成され、接点を押圧する押し子(押圧突起)24」を有し、「キーパッド23の裏側の中央の押し子24の下方には、押し子24が下方に移動したときに動作するドーム状のスイッチ(接点)25を備えた」構成は、補正発明の「前記受け入れパッドに結合され、前記ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、前記電気スイッチ回路を備えた前記圧縮可能なメカニズム内のドームスイッチ」を含む構成と「前記ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートする構成、前記電気スイッチ回路を備えた前記下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートする構成内のスイッチ」を含む構成である点では共通するといえる。
(オ)引用発明の「照明用光源」は、「非照光時には個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が各キートップの表面から文字、記号等の形状に光が出射して文字等が視認できるように」するから、補正発明の「オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源」に相当するといえる。
(カ)引用発明の「キートップ4」、「キーパッド23」、「ドーム状のスイッチ(接点)25」、「照明用光源」から成る構成は、後述する相違点を除き、補正発明の「少なくとも1つのキー」に相当するといえる。

したがって、補正発明と引用発明との間には、以下の一致点および相違点があるといえる。

(一致点)
「コンピューター用のバックライト付きキーボードにおいて、
キー配列を備え、この少なくとも1つのキーは、
ユーザ入力を受けるように構成された頂面と、底面と、前記底面に置かれ、グリフウインドウを画定するバックグランドインク層と、前記グリフウインドウ内を延長するグリフ拡散層とを有する、ガラスで形成された透明なキーキャップを含み、
前記少なくとも1つのキーは、さらに、
前記透明なキーキャップに結合された受け入れパッド、
前記ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートする構成、
前記電気スイッチ回路を備えた前記下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートする構成内のスイッチ、及び
オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源、
を含むものである、バックライト付きキーボード。」

(相違点1)
補正発明は、「ラップトップコンピューター用のバックライト付きキーボード」であるのに対し、引用発明は、ラップトップコンピューターに用いるとは特定されていない点。

(相違点2)
少なくとも1つのキーは、補正発明では、「前記透明なキーキャップに結合された受け入れパッド、前記受け入れパッドに結合され、前記ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、前記電気スイッチ回路を備えた前記圧縮可能なメカニズム内のドームスイッチ」を含むのに対し、引用発明は、そのような構成ではない点。

ウ 判断
まず、相違点1について検討する。
引用発明の「非照光時には個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が各キートップの表面から文字、記号等の形状に光が出射して文字等が視認できるようにしたキーシート」は、「パソコン等に用いるもの」であって、その構造は、ラップトップコンピューターに用いることができないものではないから、当業者であれば、「ラップトップコンピューター用」とすることは容易に想到し得ることである。

次に、相違点2について検討する。
以下の事情を総合すると、引用発明において、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)上記引用文献2?4に、情報処理機器用のキーボードにおいて、キートップに結合されたトッププレートまたは可動板(補正発明の「受け入れパッド」に相当する。)、前記トッププレートまたは可動板に結合され、ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して回路基板のスイッチまたは接点部(補正発明の「電気スイッチ回路」に相当する。)を押圧するよう構成された上下動機構またはリンク部材(補正発明の「圧縮可能なメカニズム」に相当する。)、前記回路基板のスイッチまたは接点部を備えた前記上下動機構またはリンク部材内のラバードーム(補正発明の「ドームスイッチ」に相当する。)を含むキーの構造が記載されているように、情報処理機器用のキーボードにおいて、「少なくとも1つのキーは、キーキャップに結合された受け入れパッド、前記受け入れパッドに結合され、前記ユーザ入力に応答して、下方に圧縮して電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、前記電気スイッチ回路を備えた前記圧縮可能なメカニズム内のドームスイッチを含む」という構成は、本願優先日前において周知技術であったといえる。

(イ)引用発明の「キーパッド23」は、「キートップ固定部」にキートップが結合され、ユーザ入力に応答して、キーパッド23が圧縮され、キートップと結合された「キートップ固定部」と「押し子24」が下方に移動され、「ドーム状のスイッチ(接点)25」を押圧することは明らかであり、上記周知技術と機能・作用が共通するものであるから、引用発明において、「キーパッド23」と「スイッチ(接点)25」に代え、上記周知技術を採用することは当業者であれば、容易に想到し得ることである。

そして、補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

そうすると、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

エ 結論
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記「第2」のとおり、却下された。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年2月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のものである。
「コンピューティング装置に使用するための照明型入力装置において、
少なくとも1つのキーを備え、この少なくとも1つのキーは、
ユーザ入力を受けるように構成された頂面と、混合拡散部及びインク層と干渉するように構成された底面とを有する透明なガラスキーキャップを含み、
前記混合拡散部及びインク層は、
顔料を含み、前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層、及び
前記グリフウインドウの中のグリフ拡散層を含み、
前記少なくとも1つのキーは、さらに、
前記底面に結合され、電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、及び
オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源、
を含むものである、照明型入力装置。」

第4 引用文献、引用発明
引用文献・引用発明は、前記「第2 補正の却下の決定」、[補正却下の決定の結論]、「(2)本件補正の可否の判断」、「B 独立特許要件について」の「ア 引用文献等」、「(ア)引用文献・引用発明」の欄で説明したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると次のことがいえる。
(ア)引用発明の「非照光時には個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が各キートップの表面から文字、記号等の形状に光が出射して文字等が視認できるようにしたキーシート」は、「パソコン等に用いるもの」であるから、本願発明の「コンピューティング装置に使用するための照明型入力装置」に相当するといえる。
(イ)引用発明の「キートップ」は、「樹脂、ガラスなどの透明材料で形成」されているから、本願発明の「ガラスで形成された透明なキーキャップ」に相当し、「キーキャップ」の「表面」、「裏面」は、補正発明の「ユーザ入力を受けるように構成された頂面」、「底面」に相当する。
(ウ)引用発明の「キートップに対する成膜工程は、キートップの天地を逆にして、その裏面に対するネガ文字(抜き文字)印刷層の形成から始め、その上に無色又は有色の透光性印刷層40aが形生され、抜かれた部分40aがこの材料で充填」される構成の「裏面に対するネガ文字(抜き文字)印刷層」、「無色又は有色の透光性印刷層40a」は、それぞれ、本願発明の「顔料を含み、前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層」を含む「インク層」及び「前記グリフウインドウの中のグリフ拡散層」を含む「混合拡散部」と、「前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層」を含む「インク層」及び「前記グリフウインドウの中のグリフ拡散層」を含む「混合拡散部」である点では共通するといえる。
(エ)上記(イ)、(ウ)によれば、引用発明の「キートップ」は、本願発明の「ユーザ入力を受けるように構成された頂面と、混合拡散部及びインク層と干渉するように構成された底面とを有する透明なガラスキーキャップ」に相当するといえる。
(オ)引用発明の「キーパッド23」は、「シート状に形成され、接点を押圧する押し子(押圧突起)24とキートップ固定部を有し、全体がシリコーンゴム又は熱可塑性エラストマーで一体に成形されており」、「押し子24が下方に移動したときに」「スイッチ(接点)25」を動作するから、本願発明の「前記底面に結合され、電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム」に相当するといえる。
(カ)引用発明の「照明用光源」は、「非照光時には個々のキー表面に表示された文字、記号等は視認できず、照光時にのみ照明用光源の光が各キートップの表面から文字、記号等の形状に光が出射して文字等が視認できるように」するから、本願発明の「オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源」に相当するといえる。
(キ)上記(エ)?(カ)によれば、引用発明の「キーシート」上に配置された「キートップ4」、「キーパッド23」、「照明用光源」から成る構成は、後述する相違点を除き、本願発明の「照明型入力装置において、少なくとも1つのキーを備え」、「この少なくとも1つのキー」が「ガラスキーキャップ」、「圧縮可能なメカニズム」、「光源」を含む構成に相当するといえる。

したがって、本願発明と引用発明との間には、以下の一致点および相違点があるといえる。

(一致点)
「コンピューティング装置に使用するための照明型入力装置において、
少なくとも1つのキーを備え、この少なくとも1つのキーは、
ユーザ入力を受けるように構成された頂面と、混合拡散部及びインク層と干渉するように構成された底面とを有する透明なガラスキーキャップを含み、
前記混合拡散部及びインク層は、
前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層、及び
前記グリフウインドウの中のグリフ拡散層を含み、
前記少なくとも1つのキーは、さらに、
前記底面に結合され、電気スイッチ回路をアクチベートするよう構成された圧縮可能なメカニズム、及び
オン状態及びオフ状態で動作可能な光源であって、前記底面の下方に配置され、前記グリフウインドウを通して光を伝送するように配向にされた光源、
を含むものである、照明型入力装置。」

(相違点)
「混合拡散層及びインク層」に含まれる「前記底面に結合され、グリフウインドウを画定するバックグランド層」は、本願発明では、「顔料を含む」のに対し、引用発明では、そのような特定はない点。

上記相違点について検討する。
引用文献1には、「キートップ」の裏面に、文字部分の周辺を充填する形で有色の透光性印刷層40aを付着し、照光時には、有色の透光性印刷層の色でキートップ全体が照明されることが記載されており(記載事項e)、また、キートップにおいて、文字部分と文字以外の部分との対比を異なる色で行うことは、本願優先日前において周知技術(例えば、引用文献4の段落【0012】?【0014】の「キートップ120はキートップ本体部120aと上部シート120bで構成され、上部シート120bはキートップ本体部120aと一体形成され、・・・中略・・・上部シート120bの裏側(キートップ本体部120a側)には、指定された色(例えば黒)が文字部を除いて全面に印刷され(フランジ部120dにも印刷される)、次に文字部が指定された文字色(例えば白)で印刷されて文字印刷部120fが形成される。」との記載参照。)であったといえ、引用発明はキートップがガラス等の透明材料で形成されているのであるから、引用発明において、「ネガ文字(抜き文字)印刷層」に顔料等を含ませて有色にして、キー表面に表示される抜き文字を目立たせるようにするようなことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から、当業者であれば予想できる範囲内のものである。

そうすると、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-20 
結審通知日 2017-09-25 
審決日 2017-10-19 
出願番号 特願2014-175225(P2014-175225)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志▲高▼瀬 健太郎  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山田 正文
和田 志郎
発明の名称 厚みを薄くしたキーキャップ  
代理人 西島 孝喜  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
代理人 岩崎 吉信  
代理人 田中 伸一郎  

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