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審決分類 |
審判 全部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備 A23L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L |
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管理番号 | 1338115 |
異議申立番号 | 異議2016-701070 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-11-21 |
確定日 | 2018-02-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5921804号発明「アルコール飲料の飲用感が付与された非アルコール飲料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5921804号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕、6、7について訂正することを認める。 特許第5921804号の請求項1?7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5921804号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年4月22日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人中川賢治より特許異議の申立てがなされ、平成29年1月16日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年3月17日に意見書の提出がなされ、平成29年4月21日に特許異議申立人から上申書の提出がなされ、平成29年6月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、指定期間内である平成29年9月4日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成29年10月23日に特許異議申立人から意見書の提出がなされたものである。 第2 訂正について 1 訂正の内容 平成29年9月4日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1) 訂正事項1 訂正前の請求項1に、「アセトアルデヒド濃度が1?100ppmであり」とあるのを、「アセトアルデヒド濃度が1?20ppmであり」と訂正する。 (2) 訂正事項2 訂正前の請求項2に、 「アセトアルデヒド濃度が、2?90ppmである」とあるのを、「アセトアルデヒド濃度が、2?20ppmである」と訂正する。 (3) 訂正事項3 訂正前の請求項6に、「アセトアルデヒド濃度を1?100ppmに調整し」とあるのを、「アセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し」と訂正する。 (4) 訂正事項4 訂正前の請求項7に、「アセトアルデヒド濃度を1?100ppmに調整し」とあるのを、「アセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し」と訂正する。 2 訂正の適否 訂正事項1、3及び4は、訂正前の請求項1、3及び4に係る発明における「アセトアルデヒド濃度」について、「1?100ppm」から、「1?20ppm」とより狭い範囲に、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明における「アセトアルデヒド濃度」について、「2?90ppm」から、「2?20ppm」とより狭い範囲に、それぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項1及び2は、請求項1?5の一群の請求項に対して請求された訂正である。 したがって、上記訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕、6、7について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正により訂正された請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 アセトアルデヒドを含んでなる、アルコール飲料の飲用感が付与された炭酸ガス含有非アルコール飲料であって、アセトアルデヒド濃度が1?20ppmであり、炭酸ガス圧が0.1?0.35MPaであり、pHが2.0?4.0であり、かつ、アルコール含量が0v/v%である、飲料。 【請求項2】 アセトアルデヒド濃度が、2?20ppmである、請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 アセトアルデヒド濃度が、5?20ppmである、請求項1に記載の飲料。 【請求項4】 炭酸ガス圧が、0.15?0.3MPaである、請求項1に記載の飲料。 【請求項5】 容器詰飲料である、請求項1?4のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項6】 飲料中のアセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し、炭酸ガス圧を0.1?0.35MPaに調整し、およびpHを2.0?4.0に調整することを特徴とする、アルコール飲料の飲用感が付与された、アルコール含量が0v/v%である炭酸ガス含有非アルコール飲料の製造方法。 【請求項7】 飲料中のアセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し、炭酸ガス圧を0.1?0.35MPaに調整し、およびpHを2.0?4.0に調整することを特徴とする、アルコール含量が0v/v%である非アルコール飲料にアルコール飲料の飲用感を付与する方法。」 2 取消理由の概要 本件特許に対し、平成29年1月16日付けで通知した取消理由1?3は、概ね、次のとおりである。 (1) 取消理由1 本件発明1?7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2) 取消理由2 本件特許のアセトアルデヒド濃度は、飲料の香味を損なわない点から規定されているが、具体的に香味を損なわずにアルコール飲料の飲用感を付与できた飲料はレモンフレーバーを含有する炭酸ガス含有非アルコール飲料のみであり、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3) 取消理由3 ビール様の風味が期待されるノンアルコールビールテイスト飲料では、アセトアルデヒドはオフフレーバーであり、アセトアルデヒド濃度を1?100ppm、炭酸ガス圧を0.1?0.35MPa、pHを2.0?4.0に調整しただけでは、ビールらしい香味を損なうことなくアルコール飲料の飲用感を付与できるとは当業者は理解できないので、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 <引用例等一覧> 甲第1号証:社団法人日本缶詰協会、「缶びん詰・レトルト食品事典」、株 式会社朝倉書店、1984年2月10日、p.353-359 甲第2号証:George A. Burdock、「FENAROLI’ S HANDBOOK OF Flavor Ingredi ents FIFTH EDITION」、CRC PRES S、2005年、p.3-4 甲第3号証:特許第74658号明細書 甲第4号証:吉沢淑、外4名、「清酒香気成分添加の香味への影響」、日本 醸造協会誌、1997年、第92巻、第3号、p.217-2 23 甲第5号証:中田和彦、「乳酸ナトリウム、焦性ブドウ酸、酢酸ナトリウム 及びアセトアルデヒドの作業時筋血管に対する作用について」 、體質医学研究所報告、熊本大学體質医学研究所、1953年 3月、第3巻、第4号、p.453-456 甲第6号証:奥田拓道、「清酒・酒粕中の生理活性物質の解明」、日本醸造 協会誌、2003年、第98巻、第11号、p.750-75 5 甲第7号証:井尻巖、「特別講演3 アセトアルデヒドの生体に及ぼす影響 」、日本法医学雑誌、1999年、第53巻、p.285-2 95 甲第8号証:特開2007-274929号公報 甲第9号証:特開2009-268400号公報 甲第10号証:特開2005-84118号公報 甲第11号証:特開2001-152180号公報 甲第12号証:特開平8-228718号公報 甲第13号証:橋本直樹、「ビールの匂い」、日本醸造協会誌、1980年 、第75巻、第6号、p.474-479 なお、平成29年10月23日付け意見書に添付された新たな証拠は、これを採用しない。 3 取消理由1(進歩性)について (1) 引用例 取消理由通知書に引用した甲第1号証には、以下の事項が掲載されている。 (1a) 「 」(353ページ) (1b) 「 」(354)ページ) (1c) 「 」(357ページ) 以上の(1a)?(1c)を総合し、(1c)におけるトムコリンズタイプの清涼飲料に着目すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されている。 「トムコリンズタイプの清涼飲料であって、砂糖(Bx)が9.5?10.5、炭酸ガスのガス容が3.5?4.1、pHが3.0?3.2であり、かつ、アルコールが0または0.5%未満である、 トムコリンズタイプの清涼飲料。」 また、上記「トムコリンズタイプの清涼飲料」に接した当業者であれば、少なくとも以下の方法(以下「甲1-2発明」という。)で製造されたものと認識し得る。 「トムコリンズタイプの清涼飲料の製造方法であって、砂糖(Bx)を9.5?10.5に調整し、炭酸ガスのガス容を3.5?4.1に調整し、およびpHが3.0?3.2に調整し、アルコールが0または0.5%未満である、トムコリンズタイプの清涼飲料の製造方法。」 取消理由通知書に引用した甲第2号証には、以下の各記載がある。 (2a) 「 」(3ページ) (和訳: アセトアルデヒド 同義語:エタナール;酢酸アルデヒド;エチルアルデヒド (中略) 説明:アセトアルデヒドは、特有の刺激的で鼻を突くエーテル臭を有する、無色、可燃性の液体である。フレーバーの成分/エンハンサーとしては、例えば、オレンジジュースでは、アセトアルデヒドは、自然さや果実らしさ、ジューシーさの創出に役立つ。) (2b) 「 」(4ページ) (当審注:表中、「Food Category」(食品の種類)が「Nonalcoholic beverages」(非アルコール飲料)における、「Usual」(通例の)の添加量は、38.00ppmであり、「Max」(最大の)の添加量は、190.00ppmであることが記載されている。) (2) 判断 ア 本件発明1について 本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、後者の「アルコールが0」であることは、前者の「アルコール含量が0v/v%である」ことに相当する。また、後者の「トムコリンズタイプの清涼飲料」は、この点で、前者の「非アルコール飲料」に相当する。 そして、後者の「炭酸ガスのガス容が3.5?4.1」であることは、「トムコリンズタイプの清涼飲料」が炭酸ガスを含有していることを意味しているので、前者の「炭酸ガス含有」の飲料に相当する。 また、ガス圧について、後者が「炭酸ガスのガス容が3.5?4.1」であることと、前者が「炭酸ガス圧が0.1?0.35MPaであ」ることとは、「所定の炭酸ガス圧を有し」ている限りで一致する。 さらに、後者の「pHが3.0?3.2であ」ることは、前者の「pHが2.0?4.0であ」ることに相当する。 よって、本件発明1と甲1-1発明との一致点、相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「炭酸ガス含有非アルコール飲料であって、所定の炭酸ガス圧を有し、pHが2.0?4.0であり、かつ、アルコール含量が0v/v%である、飲料。」 [相違点1] 飲料について、本件発明1は、「アセトアルデヒドを含んでな」り、「アセトアルデヒド濃度が1?20ppmであ」って、「アルコール飲料の飲用感が付与された」と特定しているのに対して、甲1-1発明は、そのような特定はなされていない点。 [相違点2] 所定の炭酸ガス圧について、本件発明1は、「0.1?0.35MPaであ」ると特定しているのに対して、甲1-1発明は、「炭酸ガスのガス容が3.5?4.1」と特定している点。 そこで、上記相違点について検討する。 [相違点1について] 甲1-1発明は、「トムコリンズタイプの清涼飲料」であり、「清涼飲料」が「喉の渇きをいやし、清涼感をおぼえさせる非アルコール性飲料の総称。(広辞苑第六版)」であること及び「トムコリンズ」はレモンジュースを原料とする飲料であって、レモンは柑橘類の代表的果実であることを鑑みると、甲1-1発明について、レモンの果実らしさやフレッシュ感を高めることは、甲1-1発明に内在する課題の一つといえる。 一方、甲第2号証である「Flavor Ingredients」(和訳:フレーバーの構成要素)の「HANDBOOK」(和訳:ハンドブック)において示されるアセトアルデヒドの項には、「フレーバーの成分/エンハンサーとしては、例えば、オレンジジュースでは、アセトアルデヒドは、自然さや果実らしさ、ジューシーさの創出に役立つ。」(上記(2a))と記載されている。 また、アセトアルデヒドは、シトラス果汁に含まれ、シトラスフレーバーにフレッシュな果汁感をもたらす成分であることは周知であった(甲第11号証【0018】、甲第12号証【0004】参照。)。 そうすると、甲1-1発明において、上記内在する課題を踏まえ、甲1-1発明のレモンの果実らしさやフレッシュ感を高めるとの観点から、甲第2号証に記載された事項を採用して、アセトアルデヒドを添加することが動機付けられるとはいえる。 しかしながら、その添加量については、甲第2号証には、アセトアルデヒドをフレーバーの成分/エンハンサーとして添加する際には、「Usual(通常)」が「38.00ppm」であり、「Max(最大)」が「190.00ppm」であること(上記(2b))が記載され、アセトアルデヒドの添加量が少ない程、相対的に、フレーバーの成分/エンハンサーとしての効果が小さくなることが技術常識であることを考慮すると、上記相違点1に係る本件発明1の「アセトアルデヒド濃度が1?20ppmであ」ることを採用した場合、甲1-1発明において、フレーバーの成分/エンハンサーとしての効果を奏するか否かは不明である。 よって、甲1-1発明にアセトアルデヒドを添加して、「アセトアルデヒド濃度が1?20ppm」とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 以上のとおり、甲1-1発明において、甲第2号証に記載された事項に基いて、上記相違点1に係る本件発明1の特定事項を採用することを、当業者が容易になし得たことであるとすることはできない。 したがって、少なくとも上記相違点1について、当業者が容易になし得たことであるとすることはできないので、本件発明1は、甲1-1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 イ 本件発明2?5について 本件発明2?5は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1-1発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。よって、本件発明2?5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 ウ 本件発明6について 本件発明6と甲1-2発明とを対比するに、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 [一致点] 「所定の炭酸ガス圧に調整し、およびpHを2.0?4.0に調整する、アルコール含量が0v/v%である炭酸ガス含有非アルコール飲料の製造方法。」 [相違点1’] 本件発明6は、「飲料中のアセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し」との工程を備え、飲料について、「アルコール飲料の飲用感が付与された」と特定しているのに対して、甲1-2発明は、そのような特定はなされていない点。 [相違点2’] 所定の炭酸ガス圧について、本件発明6は、「0.1?0.35MPaに調整し」と特定しているのに対して、甲1-2発明は、「炭酸ガスのガス容を3.5?4.1に調整し」と特定している点。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点1’については、上記アの[相違点1について]の判断と実質同様である。 したがって、本件発明6は、甲1-2発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 エ 本件発明7について 「清涼飲料の製造方法」に係る甲1-2発明は、「清涼飲料に所定の飲用感を付与する方法」の発明と捉えることもできるから、本件発明7と甲1-2発明とを対比するに、両者は、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点] 「所定の炭酸ガス圧に調整し、およびpHを2.0?4.0に調整する、アルコール含量が0v/v%である非アルコール飲料に所定の飲用感を付与する方法。」 [相違点1’’] 調整方法について、本件発明7は、「飲料中のアセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し」て、「アルコール飲料の飲用感を付与する方法」と特定しているのに対して、甲1-2発明は、そのような特定はなされていない点。 [相違点2’’] 所定の炭酸ガス圧について、本件発明7は、「0.1?0.35MPaに調整し」と特定しているのに対して、甲1-2発明は、「炭酸ガスのガス容を3.5?4.1に調整し」と特定している点。 そこで、上記相違点について検討する。 相違点1’’については、上記アの[相違点1について]の判断と実質同様である。 したがって、本件発明7は、甲1-2発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとすることはできない。 4 取消理由2(サポート要件)について 本件特許明細書の段落【0007】に「・・・これまでに、アルコールが全く含まれていない飲料にアルコール飲料の飲用感を付与する課題は全く想定されていなかった。・・・」と記載され、段落【0008】に、「本発明は、アルコール飲料の飲用感が付与された非アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。」と記載されている。 よって、本件発明は、非アルコール飲料にアルコール飲料の飲用感を付与することを課題とするものと認められる。 そして、上記本件発明の課題を解決する手段として、本件発明は、「アセトアルデヒド濃度」について、1?20ppmの範囲の添加量を定めている。これは、本件特許明細書に「飲料中のアセトアルデヒド濃度は、アルコール飲料の飲用感を付与する観点から、1?100ppm、好ましくは、2?90ppm、より好ましくは、5?90ppm、さらに好ましくは、5?50ppm、特に好ましくは、5?20ppmとなるように調整することができる。」(【0026】)とされる範囲であり、実際に、アルコール飲料の飲用感について、実施例において官能評価が行われ、官能評価のコメント欄に「良好。温かさをより強く感じる。」とされる結果を得た(【表1】)範囲のものとして、定められたと認められる。 【表1】 ここで、本件特許明細書において、具体的に評価を行った実施例は、「pH3.8、Brix9.5°、炭酸ガス圧0.25MPa(測定温度20℃)であり、アルコールを含まないように(0.00v/v%)調製した飲料(レモンフレーバー使用)」(【0051】)であるレモンのフレーバーを基調とする炭酸飲料のみであり、他の飲料の香味について、同様の結果が得られると認識できるとまではいえない。 しかし、飲料としての味の調和感を崩さないこと自体は、本件発明の課題ではないから、香味について、同様の結果が得られると認識できないからといって、本件発明が、課題を解決できる範囲のものでないとはいえない。 そして、実施例の飲料で「アルコール飲料の飲用感が付与された」ことが確認できれば、他の飲料においても、「アルコール飲料の飲用感が付与され」ることは、当業者が認識できるから、本件発明は、上記課題を解決できると認識できる範囲のものである。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件発明に係る特許が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 5 取消理由3(実施可能要件)について 上記「4 取消理由2(サポート要件)について」で述べたとおり、「アセトアルデヒド濃度」を1?20ppmとすることにより、「非アルコール飲料にアルコール飲料の飲用感を付与できる」ことを認識できるから、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 よって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 第3 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1?7は、甲1-1発明又は甲1-2発明、及び甲第2号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものとすることはできない。 また、本件発明1?7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号の規定に違反してされたものとはいえず、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものとすることはできない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アセトアルデヒドを含んでなる、アルコール飲料の飲用感が付与された炭酸ガス含有非アルコール飲料であって、アセトアルデヒド濃度が1?20ppmであり、炭酸ガス圧が0.1?0.35MPaであり、pHが2.0?4.0であり、かつ、アルコール含量が0v/v%である、飲料。 【請求項2】 アセトアルデヒド濃度が、2?20ppmである、請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 アセトアルデヒド濃度が、5?20ppmである、請求項1に記載の飲料。 【請求項4】 炭酸ガス圧が、0.15?0.3MPaである、請求項1に記載の飲料。 【請求項5】 容器詰飲料である、請求項1?4のいずれか一項に記載の飲料。 【請求項6】 飲料中のアセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し、炭酸ガス圧を0.1?0.35MPaに調整し、およびpHを2.0?4.0に調整することを特徴とする、アルコール飲料の飲用感が付与された、アルコール含量が0v/v%である炭酸ガス含有非アルコール飲料の製造方法。 【請求項7】 飲料中のアセトアルデヒド濃度を1?20ppmに調整し、炭酸ガス圧を0.1?0.35MPaに調整し、およびpHを2.0?4.0に調整することを特徴とする、アルコール含量が0v/v%である非アルコール飲料にアルコール飲料の飲用感を付与する方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-01-25 |
出願番号 | 特願2010-155267(P2010-155267) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L) P 1 651・ 538- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 太田 雄三 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 山崎 勝司 |
登録日 | 2016-04-22 |
登録番号 | 特許第5921804号(P5921804) |
権利者 | 麒麟麦酒株式会社 |
発明の名称 | アルコール飲料の飲用感が付与された非アルコール飲料およびその製造方法 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 反町 洋 |
代理人 | 柏 延之 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 反町 洋 |
代理人 | 永井 浩之 |