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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 A61K 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 A61K 審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1338116 |
異議申立番号 | 異議2016-700886 |
総通号数 | 220 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-04-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-16 |
確定日 | 2018-02-05 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5889190号発明「粉末状化粧品組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 1 特許第5889190号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添 付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔 1?15〕について訂正することを認める。2 特許第5889190号の請求項1、3?4、8?15に係る特許を維 持する。3 特許第5889190号の請求項2、5?7に係る特許についての特許 異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 特許第5889190号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?15に係る特許についての出願は、平成21年12月16日を国際出願日として出願され、平成28年2月26日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月22日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許の全請求項について、同年9月16日に特許異議申立人 山▲崎▲ 浩一郎(以下、「申立人Y」という。)及び同年9月21日に特許異議申立人 内藤 順子(以下、「申立人N」という。)によりそれぞれ特許異議の申立てがされ、平成29年1月17日付けで取消理由が通知され、同年4月24日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人Nから同年6月12日付けで及び申立人Yから同年6月14日付けでそれぞれ意見書が提出され、同年8月4日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年11月7日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。 なお、平成29年4月24日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。 第2 訂正の適否 1 訂正の趣旨 本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?15について訂正することを求める(以下、「本件訂正」という。)。 2 訂正の内容 本件訂正は、特許請求の範囲及び明細書を以下のとおり訂正するものである。 (1)特許請求の範囲の訂正 <本件訂正前> 「【請求項1】 組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤、及び 異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤 を含み、 より小さい平均粒径を有する非球状充填剤は、シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されており、より大きい平均粒径を有する非球状充填剤は、少なくとも1種の非シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されており、 より大きい平均粒径を有する非球状充填剤の量に対する、より小さい平均粒径を有する非球状充填剤の量の比は、1以上であり、 球状充填剤の量に対する2種の非球状充填剤の総量の比は、1以上である、 圧粉の形態の粉末状化粧品組成物。 【請求項2】 より小さい平均粒径を有する非球状充填剤の平均粒径が6μm未満であり、 より大きい平均粒径を有する非球状充填剤の平均粒径が6μm以上及び10μm以下である、請求項1に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項3】 より大きい平均粒径を有する非球状充填剤の量に対する、より小さい平均粒径を有する非球状充填剤の量の比が2以上である、請求項1又は2に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項4】 球状充填剤の量に対する2種の非球状充填剤の総量の比が2以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項5】 非シリコーン油が水素化油である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項6】 2種の非球状充填剤が、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、ラウロイルリジン、金属石鹸、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム及びヒドロキシアパタイトからなる群から独立して選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項7】 2種の非球状充填剤がタルクである、請求項1から5のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項8】 球状充填剤が少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項9】 球状充填剤の50重量%以上がオルガノポリシロキサンエラストマー粉末である、請求項8に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項10】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、 ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの架橋付加体、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンとの脱水素架橋縮合体、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシランとの架橋縮合体、及び オルガノポリシロキサンの架橋体 の粉末から選択される、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項11】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、それぞれケイ素に連結されている少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの架橋付加体の粉末である、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項12】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサンと、トリメチルシロキシ末端基を含むメチルハイドロジェンポリシロキサンとの反応生成物の粉末である、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項13】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、少なくとも1種のシリコーン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項14】 シリコーン樹脂がシルセスキオキサン樹脂である、請求項13に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項15】 無水である、請求項1から14のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。」 <本件訂正後>(なお、下線は訂正箇所を示す。) 「【請求項1】 組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤、及び 6μm未満の平均粒径並びに6μm以上及び10μm以下の平均粒径の、異なる平均粒径を有する2種のタルク を含み、 6μm未満の平均粒径を有するタルクは、シリコーン油で表面処理されており、 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、シリコーン/水素化油で表面処理されており、 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、組成物の総重量に対して5から20重量%の範囲で含まれており、 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比は、1以上であり、 球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比は、1以上である、 圧粉の形態の粉末状化粧品組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比が2以上である、請求項1に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項4】 球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比が2以上である、請求項1又は3に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】 球状充填剤が少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を含む、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項9】 球状充填剤の50重量%以上がオルガノポリシロキサンエラストマー粉末である、請求項8に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項10】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、 ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの架橋付加体、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンとの脱水素架橋縮合体、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシランとの架橋縮合体、及び オルガノポリシロキサンの架橋体 の粉末から選択される、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項11】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、それぞれケイ素に連結されている少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの架橋付加体の粉末である、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項12】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサンと、トリメチルシロキシ末端基を含むメチルハイドロジェンポリシロキサンとの反応生成物の粉末である、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項13】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、少なくとも1種のシリコーン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項14】 シリコーン樹脂がシルセスキオキサン樹脂である、請求項13に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項15】 無水である、請求項1、3、4及び8から14のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。」 (2)明細書の訂正 <本件訂正前> 「【0088】 「非球状」充填剤は、それらの結晶学的形態(例えば薄板状、立方、六角形及び斜方晶)にかかわりなく、球状以外の任意の形態、例えば、血小板形、球状及び長円形であってよい。好ましい実施形態において、非球状充填剤は薄板状形態である。好ましくは、非球状充填剤は10以上の高アスペクト比を有する。アスペクト比は20以上又は50以上であってよい。アスペクト比は、式:アスペクト比=長さ/厚さに従って、平均厚さ及び平均長さによって決定することができる。」 <本件訂正後>(なお、下線は訂正箇所を示す。) 「【0088】 「非球状」充填剤は、それらの結晶学的形態(例えば薄板状、立方、六角形及び斜方晶)にかかわりなく、球状以外の任意の形態、例えば、血小板形及び長円形であってよい。好ましい実施形態において、非球状充填剤は薄板状形態である。好ましくは、非球状充填剤は10以上の高アスペクト比を有する。アスペクト比は20以上又は50以上であってよい。アスペクト比は、式:アスペクト比=長さ/厚さに従って、平均厚さ及び平均長さによって決定することができる。」 3 本件訂正の適否についての判断 (1)特許請求の範囲の訂正 ア 請求項1についての訂正 この訂正は、本件訂正前に「異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤」を含み、それらが「より小さい平均粒径を有する非球状充填剤」と「より大きい平均粒径を有する非球状充填剤」であるとされていたことについて、 (ア)「非球状充填剤」を「タルク」に限定する、 (イ)「より小さい平均粒径」及び「より大きい平均粒径」を「6μm未満の平均粒径」及び「6μm以上及び10μm以下の平均粒径」に限定するとともに、 (ウ)表面処理剤についても、前者が「シリコーン油を含む」もの、後者が「少なくとも1種の非シリコーン油を含む」ものとされていたのを、それぞれ「シリコーン油」及び「シリコーン/水素化油」に限定する、 (エ)「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」については、「組成物の総重量に対して5から20重量%の範囲で含まれ」ると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、これらの事項は、訂正前の請求項2、7及び本件特許明細書【0092】、【0121】、【0145】の実施例1に記載されている。 したがって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 請求項2についての訂正 この訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 ウ 請求項3についての訂正 この訂正は、本件訂正前の「より大きい平均粒径を有する非球状充填剤」と「より小さい平均粒径を有する非球状充填剤」を、請求項1についてする訂正にあわせて、それぞれ「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」と「6μm未満の平均粒径を有するタルク」に限定するとともに、請求項2の削除にともない、請求項2を引用しないものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、これらの事項は、訂正前の請求項2、7及び本件特許明細書【0092】に記載されている。 したがって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 請求項4についての訂正 この訂正は、本件訂正前の「非球状充填剤」を、請求項1についてする訂正にあわせて「タルク」に限定するとともに、請求項2の削除にともない、請求項2を引用しないものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、この事項は、訂正前の請求項7に記載されている。 したがって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 オ 請求項5?7についての訂正 この訂正は、訂正前の請求項5?7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。 カ 請求項8?15についての訂正 この訂正は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項8?15について、実質的に請求項1についての訂正と同様に訂正するとともに、請求項2、5?7の削除にともない、請求項2、5?7を引用しないものに訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)明細書の訂正 この訂正は、本件特許明細書に、「非球状」充填剤は「球状以外の任意の形態」であってよいと説明されているところ、その例に「球状」が記載されていた明らかな誤記を削除するものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)一群の請求項ごとか否か 本件訂正に係る訂正前の請求項1?15は、請求項2?15がそれぞれ訂正の請求の対象である請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は一群の請求項ごとにされたものである。 4 申立人Yの主張 申立人Yは、本件訂正前は、「異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤を含み」と記載され、いわゆる開放クレームではあるものの、実質的には2種のみに規定されていたと解されるのに対し、本件訂正により、「異なる平均粒径」が、「6μm未満」、「6μm以上及び10μm以下」と特定されたが、さらに10μm以上のものを含む態様が含まれることとなり、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当する旨主張する(平成29年6月14日付け意見書の「3(1)訂正について」)。 しかしながら、本件訂正前は実質的には2種のみに特定され、本件訂正後は3種の場合も含まれるとするのは、申立人Yの独自の見解に過ぎず採用できない。 5 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項〔1?15〕についての訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1、3?4、8?15に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3?4、8?15に記載された事項により特定されるとおりのものである(その記載事項は、上記第2 2(1)<本件訂正後>を参照)。以下、これらをそれぞれ「本件訂正発明1」などといい、これらをまとめて「本件訂正発明」という場合もある。 また、以下、本件訂正後の発明の詳細な説明の記載を、「本件訂正明細書」という。 2 取消理由の概要 請求項1、3?4、8?15に係る特許に対して、平成29年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由及び平成29年8月4日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。 (1)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は取り消すべきものである。 (2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は取り消すべきものである。 (3)本件特許の請求項1、3?4、8?15に係る発明は、本件特許の出願前日本国内において頒布された刊行物1?11に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 3 甲号証及びその記載事項 (1)取消理由で通知した刊行物は、下記の通りの刊行物1?11であり、順に申立人Nが申立書に添付して提出した甲第1?10号証、申立人Yが申立書に添付して提出した甲第5号証である。 なお、以下、甲第1号証などを単に「甲1」などという。 刊行物1:特開2000-80015号公報 刊行物2:特開2005-272427号公報 刊行物3:日本化粧品技術者会編、「化粧品事典」、平成15年12月15日、丸善株式会社、579頁 刊行物4:特開2002-241230号公報 刊行物5:特開2005-112779号公報 刊行物6:特開2007-176875号公報 刊行物7:(社)色材協会編、「色材工学ハンドブック」、1989年11月25日、株式会社朝倉書店、1352?1355頁 刊行物8:田村健夫、廣田博著、「香粧品科学-理論と実際- 第4版」、平成14年10月15日、有限会社フレグランスジャーナル社、94?100頁 刊行物9:特公平4-66446号公報 刊行物10:特許第2832143号公報 刊行物11:特開2006-199644号公報 (2)刊行物1の記載 本出願前である平成12年3月21日に頒布された刊行物である「特開2000-80015号公報」(申立人N甲1。以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】硬度がアスカーゴム硬度計C1L型で75以下であり、空隙率が0.4以上で、かつ耐衝撃性値(成型品を50cmの高さから厚み25mmのラワン材ベニヤ板上にくり返し落下させたとき異常が生じるまでの回数)が5以上である固形粉末化粧料。 【請求項2】粉体及び弾性率が200kg/cm^(2)以下の皮膜形成性高分子を含有するものである請求項1記載の固形粉末化粧料。」 (1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、なめらかでしっとりした感触を有し、使用感に優れ、外力による割れが少ない固形粉末化粧料に関する。 ・・・ 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者は、硬度、空隙率及び耐衝撃性値を特定の数値とすれば、上記目的とする固形粉末化粧料が得られることを見出した。 【0006】すなわち本発明は、硬度がアスカーゴム硬度計C1L型で75以下であり、空隙率が0.4以上で、かつ耐衝撃性値が5以上である固形粉末化粧料を提供するものである。 【0007】また、本発明は、粉体、弾性率が200kg/cm^(2)以下の皮膜形成性高分子からなる結合剤及び揮発性溶剤を混合した後、揮発性溶剤を揮発させて固形化することを特徴とする該固形粉末化粧料の製造方法を提供するものである。」 (1c)「【0025】また、粉体としては、通常化粧料に用いられる体質顔料又は着色顔料であれば特に制限されず、例えばケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン及びカーボンブラック、これらの複合体等の無機粉体;ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N-モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸等からなる有機物粉体、これらの複合体等の有機粉体、或は、上記無機粉体と有機粉体との複合粉体などが挙げられる。 【0026】これらの粉体は、粉体として本来表面が疎水性であるものや、表面を疎水化処理したものを使用でき、使用感により優れるので好ましい。疎水化処理は、例えばシリコーン油、脂肪酸金属塩、アルキルリン酸、アルキルリン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、N-モノ長鎖(炭素数8?22)脂肪族アシル塩基性アミノ酸、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物等の疎水化処理剤を用いて行われる。 ・・・ 【0028】粉体は、1種以上を用いることができ、全組成中に55?99.9重量%、特に65?99.9重量%、更に75?99.9重量%配合するのが好ましい。」 (1d)「【0037】実施例1 表1に示す組成の固形粉末ファンデーションを製造し、やわらかさ、なめらかさ、粉取れを以下の基準で評価した。すなわち、まず粉体成分を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、油分(ジメチルポリシロキサン)を加え、更に皮膜形成性高分子を加えて混合した。これを中皿に充填し、プレス成型した後、乾燥させて固形粉末ファンデーションを得た。また、耐衝撃性については、直径54mm、深さ4mmのアルミ製中皿に充填、3kg/cm^(2)の圧力でプレス成型し、50℃、常圧で3時間乾燥させたものを、50cmの高さから、厚み25mmのラワン材ベニヤ板上にくり返し落下させ、かけや割れなどの異常が生じるまでの回数で評価した。結果を表1に併せて示す。本発明品は、比較品に比べて、やわらかな感触を有し、なめらかさ、粉取れ等の使用感に優れ、かつ耐衝撃性も良好であった。 【0038】(評価基準) ◎:優秀。 ○:良好。 △:やや劣る。 ×:劣る。 【0039】 【表1】 」 (3)刊行物2の記載 本出願前である平成17年10月6日に頒布された刊行物である「特開2005-272427号公報」(申立人N甲2。以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 (2a)「【請求項1】 次の成分(a)及び(b); (a)ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末 (b)球状粉末 を配合することを特徴とする固形粉末化粧料。」 (2b)「【0001】 本発明は、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末と球状粉末とを配合することを特徴とする固形粉末化粧料に関するものであり、より詳細には、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、滑らかな伸び広がりに優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料に関するものである。 ・・・ 【0009】 このため、球状粉末を配合する固形粉末化粧料において、滑らか伸び広がりを損なうことなく、耐衝撃性を向上させる技術の開発が求められていた。 【課題を解決するための手段】 【0010】 かかる実情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、球状粉末を配合する固形粉末化粧料において、結合剤として、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を用いることにより上記課題が解決された固形粉末化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。」 (2c)「【0024】 本発明の固形粉末化粧料における成分(a)の配合量は、特に限定されないが、0.1?10質量%(以下、単に「%」と略す。)が好ましく、0.5?5%が特に好ましい。・・・ ・・・ 【0027】 本発明の固形粉末化粧料における成分(b)の配合量は、特に限定されないが、0.1?30%が好ましく、1?20%が特に好ましい。成分(b)をこの範囲内で配合すると、滑らかな伸び広がりが特に優れる固形粉末化粧料を得ることができる。 【0028】 本発明の固形粉末化粧料には、上記成分以外に、その他の粉体を配合できる。本発明に配合可能な粉体は、着色剤、隠蔽剤(メーキャップ効果)、感触調整剤、賦形剤、紫外線遮蔽剤等の目的で用いられるものであり、通常の化粧料に用いられる粉体であればよく、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、無水ケイ酸、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロースパウダー、N-アシルリジンパウダー等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有無水ケイ酸、酸化亜鉛含有無水ケイ酸等の複合粉体等が挙げられ、これらより一種又は二種以上を用いることができる。尚、これら粉体は、フッ素化合物、シリコーン化合物、界面活性剤等の通常公知の処理剤により表面処理を施して用いても良い。 【0029】 本発明の固形粉末化粧料におけるこれら粉体の配合量は、60?99%が好ましい。」 (2d)「【0039】 固形油粉末の製造例2: 前記製造例1と同様にして、融点120℃のフィッシャートロプシュワックス(サゾールワックスH1:サゾール社製)を加熱条件170?530℃として、平均粒径180nm(レーザー散乱式粒度分布測定法)の固形油粉末を得た。・・・」 (2e)「【0049】 実施例9:白粉(ケーキ状) (成分) (%) 1.ジメチルポリシロキサン処理合成マイカ (平均粒径15μm、アスペクト比60) 50 2.ジメチルポリシロキサン処理タルク 残量 3.パーフルオロアルキルリン酸エステル ジエタノールアミン塩処理マイカチタン (平均粒径30μm、アスペクト比50) 5 4.製造例2の固形油粉末 3 5.グンジョウ 0.2 6.ベンガラ 0.1 7.防腐剤 0.1 8.球状ナイロン粉末(平均粒径6μm) 5 9.流動パラフィン 0.5 10.香料 0.1 【0050】 (製造方法) A.成分1?8をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で均一分散する。 B.Aをヘンシェルミキサーで攪拌しながら、成分9?10を添加し、均一分散する。 C.Bをパルベライザーで粉砕する。 D.Cを金皿に充填し、圧縮成形し、白粉を得た。 本発明の実施品である実施例9の白粉は、「マットへのとれ具合」、「滑らかな伸び広がり」、「耐衝撃性」の全ての項目に優れた固形粉末化粧料であった。」 (4)申立人Y甲1の記載 本出願前である平成19年1月25日に頒布された刊行物である「特開2007-15988号公報」(申立人Y甲1。以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 (3a)「【請求項1】 (A)薄片状アルミニウム粉末を0.1?20.0重量%および(B)屈折率1.6?2.7の板状粒子を(A)/(B)=0.02?4(重量比)の割合で含み、(C)粒径0.2?15μmの球状粒子を0.2?40重量%を含むことを特徴とするベースメイク化粧料。」 (3b)「【0001】 本発明はベースメイク化粧料に関し、特に薄片状アルミニウム粉末と屈折率1.6?2.7の板状粒子を特定の比率で配合し、さらに、球状粒子を配合した仕上がり感の優れたベースメイク化粧料に関する。 ・・・ 【0004】 本発明者は上記諸問題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、薄片状アルミニウム粉末と屈折率1.6?2.7の板状粒子とを特定比率で配合し、さらに球状粒子を配合することにより、立体感があり、自然で健康的な肌色の仕上がりが得られるベースメイク化粧料を完成するに至った。・・・」 (3c)「【0006】 以下本発明を詳細に説明する。 本発明に使用される(A)成分である薄片状アルミニウム粉末は、・・・。薄片状アルミニウム粉末の長径の平均粒径は1?300μmが好ましく、より好ましくは5?100μmである。・・・ 【0007】 薄片状アルミニウム粉末は樹脂で表面が被覆されていることが、安定性、分散性の点から好ましい。被覆する樹脂としては、例えばエポキシ化ポリブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、及びオレイン酸等の重合性モノマー、又はオリゴマーの重合体が挙げられる。・・・ ・・・ 【0010】 本発明に使用される(B)成分である屈折率1.6?2.7の板状粒子の例としては、板状硫酸バリウム、六方晶窒化ホウ素(h-BN)、板状アルミナ、板状酸化亜鉛、板状酸化チタン、酸化チタン被覆雲母、酸化亜鉛被覆雲母、硫酸バリウム被覆雲母、アルミナ被覆雲母、酸化チタン被覆タルク、硫酸バリウム被覆タルク、酸化亜鉛被覆タルク、アルミナ被覆タルク、酸化チタン被覆セリサイト、硫酸バリウム被覆セリサイト、酸化亜鉛被覆セリサイト、アルミナ被覆セリサイト、酸化チタン被覆ガラスフレーク、硫酸バリウム被覆ガラスフレーク、酸化亜鉛被覆ガラスフレーク、アルミナ被覆ガラスフレーク等が挙げられ、屈折率1.6?2.7の物質が板状粉体に被覆された複合粉体も含まれる。これらの複合粉体を含む板状粒子をフッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施して用いることもできる。 【0011】 ・・・ 本発明に使用される屈折率1.6?2.7の板状粒子の長径の平均粒径は1?100μmであることが好ましく、アスペクト比(長径/厚み)は2?100であることが好ましい。 ・・・ 【0013】 本発明に使用される(C)成分である粒径0.2?15μmの球状粒子の例としては、球状多孔質シリカ、球状無孔質シリカ、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウレタンパウダー、セルロースパウダー等が挙げられる。 ・・・ これら球状粒子の配合量は、0.2?40重量%であり、好ましくは0.5?30重量%である。・・・ ・・・ 【0017】 本発明に用いられる薄片状アルミニウム粉末、屈折率1.6?2.7の板状粒子、および粒径0.2?15μmの球状粒子以外の粉体原料としては、着色(剤)、増量(剤)、感触調整(剤)、紫外線遮断(剤)等の目的で用いられるものが挙げられる。これらは通常化粧品一般に使用される粉体であれば、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造、等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類、等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト等の無機粉体類、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられ、これらを一種又は二種用いることができる。また、これら粉体は一種または二種以上の複合化したものを用いても良く、フッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、界面活性剤、油脂、炭化水素等を用いて公知の方法により表面処理を施したものであっても良い。」 (3d)「【0027】 〔実施例〕 次に実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。 実施例1?4及び比較例1?5:パウダーファンデーション 表1に記載した処方のパウダーファンデーションを以下に示す製法にて調製し、「立体感がある」、「顔色が良い」、「毛穴が目立たない」、「自然な仕上がり」の各項目について評価し、結果を併せて表1に示した。 評価方法 「立体感がある」、「顔色が良い」、「毛穴が目立たない」、「自然な仕上がり」に関する評価方法:2名の20代女性に各ファンデーション塗布してもらい、その仕上がりを一定照明条件下で20?30代女性10人に評価パネルとして評価してもらった(各ファンデーションの延べ評価人数は20名)。「立体感がある」、「顔色が良い」、「毛穴が目立たない」、「自然な仕上がり」の各項目別に、「そう思う」「そう思わない」「どちらとも言えない」の3段階で評価し、「そう思う」と評価したパネルの人数から以下の基準で判定した。 [判定]:[そう思うと感じたパネルの人数] 5 : 17?20人 4 : 13?16人 3 : 9?12人 2 : 5?8人 1 : 0?4人 【0028】 【表1】 【0029】 製造方法 A:成分1?14を混合する。 B:Aに成分15?16を添加し、混合する。 C:Bを金皿に充填し、プレス成形して、パウダーファンデーションを得た。」 4 判断 (1)取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について (1-1)特許法第36条第6項第1号 ア 特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載が、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」という規定に適合するものでなければならないとするものである。 その趣旨は、特許制度は発明を公開させることを前提に特許を付与するものであるところ、発明の詳細な説明に記載していない発明を特許請求の範囲に記載すると、公開されていない発明について権利を請求することになるから、これを防止するというものである。 そして、特許請求の範囲に記載した発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるか否かは、単に表現上の整合性のみで足りるのではなく、発明の詳細な説明の記載により当業者がその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、あるいはその記載や示唆がなくても当業者が出願時の技術常識に照らしてその発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断する必要がある(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号大合議判決参照)。 そこで、これらの点を考慮して以下に検討する。 イ 本件訂正明細書の記載 (a)「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0006】 例えば、比較的多量の球状充填剤が、圧粉の形態の粉末状化粧品組成物中にあると、組成物のコンパクト性が劣化し、皮膚への付着性等組成物の化粧品特性の一部も劣化する。 【課題を解決するための手段】 【0007】 したがって、本発明の目的は、比較的多量な球状充填剤を含む場合であっても、圧粉の形態の粉末状化粧品組成物に良好なコンパクト性、並びに良好な化粧品特性を提供することである。」 (b)「【発明を実施するための形態】 【0022】 鋭意検討の結果、本発明者らは、2種の非球状充填剤の一方(より小さい平均粒径を有する)が少なくともシリコーン油で被覆されており、他方(より大きい平均粒径を有する)が少なくとも非シリコーン油で被覆されている、異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤との組合せを特定の量で使用することによって、良好なコンパクト性並びに皮膚への付着性及び皮膚上での展延性等の良好な化粧品特性を有する圧粉の形態の粉末状化粧品組成物を提供することが可能であることを見出した。」 (c)「【0084】 (非球状充填剤) 本発明による組成物は、上記した通り、比較的多量の球状充填剤を含む。したがって、該組成物は柔らかい感触を呈することができ、指等によって容易につまみ上げることができる。 【0085】 しかし、比較的多量の球状充填剤は、本発明による組成物のコンパクト性、並びに皮膚等のケラチン物質への付着性等の化粧品特性に影響する傾向がある。 【0086】 本発明によると、良好なコンパクト性並びに良好な付着性及び展延性等の良好な化粧品特性の両方を確立するため、本発明による粉末状化粧品組成物は、異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤を含み、ここで、該充填剤は異なる表面処理をされている。 ・・・ 【0090】 非球状充填剤の材料は限定されないが、好ましくは、タルク・・・からなる群から選択される。・・・好ましい実施形態において、それは使用タルクである。 ・・・ 【0092】 好ましくは、より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤は、0.1μmから6μm等の6μm未満、例えば、1μmから6μmの平均粒径を有することができる。他方、より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤は、6μmから9μm等6μm以上及び10μm、例えば7μmから9μmの平均粒径を有することができる。 【0093】 本発明によると、より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤は、シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されている。他方、より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤は、少なくとも1種の非シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されている。 ・・・ 【0108】 好ましい実施形態において、ジメチコン処理タルクが使用される。 ・・・ 【0110】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理剤は、非シリコーン油に加えて、シリコーン油、特にジメチルポリシロキサンを含むことが好ましい。より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理剤は、シリコーン油、特にジメチルポリシロキサン、及び水素化油、特に水素化パーム油からなることが最も好ましい。 ・・・ 【0112】 好ましい実施形態において、SNVI-TA-46Rの名称でMiyoshi Kaseiによって販売されている、メチコン/水素化パーム油で処理されているタルクが使用される。 ・・・ 【0120】 より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤は、該組成物中に、組成物の総重量に対して20重量%から60重量%、例えば25重量%から50重量%、又は30重量%から40重量%の範囲である総量で存在することができる。 【0121】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤は、該組成物中に、組成物の総重量に対して5重量%から20重量%、例えば10重量%から15重量%、又は8重量%から12重量%の範囲である総量で存在することができる。 【0122】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤の量に対するより小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤の量の比は、1以上、好ましくは2以上、及びより好ましくは3以上である。 【0123】 球状充填剤の量に対する2種の非球状充填剤の総量の比は、1以上、好ましくは2以上、及びより好ましくは3以上である。」 (d)「【0144】 実施例1及び比較例1から4 表1に示されている以下の式を有する実施例1及び比較例1から4による粉末状化粧品組成物を調製する。表1における数字は、組成物の総重量に対する重量による百分率に基づく。 【0145】 【表1】 【0146】 実施例1並びに比較例1から4のそれぞれに関して、表1に示されている粉末構成成分を、Henschel混合装置内で約10分間混合した。表1に示されている非粉末構成成分(油、界面活性剤、UVフィルター及び保存料)を混合物に添加し、約15分間一緒に混合した。混合物をHammerミルによって粉砕した。粉砕粉末をメッシュで濾過することで、実施例1及び比較例1から4による粉末状化粧品組成物を形成した。 【0147】 [硬さ評価] 実施例1並びに比較例1から4のそれぞれの粉末状化粧品組成物13gを圧縮することで、80mmの直径、10kgf/cm^(2)(第1加圧)及び30kgf/cm^(2)(第2加圧)の圧力を有するシリンダ形態の圧粉である試料を形成する。 【0148】 上記の通りに得られた各試料の硬さを、アスカー硬度計Al型で測定する。結果を表2に示す。 【0149】 [コンパクト性評価] 実施例1並びに比較例1及び2による試料を、各試料を20cmの高さからセラミックタイル上に落下させる落下試験にかける。各試料のチッピングを決定し、粉末の損失を算出する。結果を表2に示す。 【0150】 【表2】 【0151】 [付着性の評価] 実施例1並びに比較例1及び2による試料を、25mmの長さ、5mm/秒の速度、スポンジによるという条件下で粉末100gを取り出す適用試験にかけ、皮膚モデルプレート(BioSkinT5)に、120mmの長さ、5mm/秒の速度で、Tribo Master TL-21を使用するという条件下で塗布する。 【0152】 皮膚モデルプレートのそれぞれの表面を観察する。 【0153】 実施例1は、比較例1及び2よりも良好な、皮膚モデルプレートへの粉末の付着性を示す。更に、皮膚モデルプレートの表面は、比較例1及び2と比較した場合、実施例1における粉末によって、より均等及び均一に覆われている。 【0154】 [官能評価] 実施例1並びに比較例3及び4による試料を、展延性に関して10人の試験者によって以下の基準下にて官能評価にかける。 【0155】 【表3】 【0156】 各試料のスコアの平均を、以下の基準に従って選別する。結果を表4に示す。 【0157】 非常に良好:5.0から4.5 良好:4.5未満から3.5 並み:3.5未満から2.5 乏しい:2.5未満から1.5 非常に乏しい:1.5未満 【0158】 【表4】 【0159】 表2に示されている通り、実施例1による試料の硬さは、比較例1から4による試料の硬さに近い。 【0160】 他方、実施例1は、比較例1から3と比較した場合、優れたコンパクト性を呈する。 【0161】 コンパクト性に関して、比較例4は実施例1より良好である。しかし、表3に示されている通り、比較例4は、より劣った展延性を呈する。 【0162】 付着性に関して、実施例1は、比較例1及び2と比較した場合、より良好な結果を呈する。 【0163】 すなわち、実施例1だけが、良好なコンパクト性、並びに付着性及び展延性等良好な化粧品特性を同時に呈することができることを、上記から理解することができる。」 ウ 本件訂正発明の課題 上記イ(a)によれば、本件訂正発明の解決しようとする課題は、比較的多量な球状充填剤を含む場合であっても、圧粉の形態の粉末状化粧品組成物に良好なコンパクト性、並びに良好な化粧品特性を提供することと認められる。 エ 検討 そこで、本件訂正発明が発明の詳細な説明に記載したものであるといえるか否か、すなわち、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、あるいはその記載や示唆がなくても当業者が出願時の技術常識に照らして本件訂正発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて検討する。 本件訂正明細書の上記イ(b)及び(c)には、本件訂正発明で特定されている、異なる平均粒径を有し異なる表面処理をされている非球状充填剤である2種類のタルクを特定の配合量及び比率で用いることで、本件訂正発明の課題を解決し得ることが記載されている。 そして、本件訂正明細書の上記イ(d)には、実施例1及び比較例1から4の粉末状化粧品組成物を調製し、これらについて[硬さ評価]、[コンパクト性評価]、[付着性の評価]及び[官能評価]を行った結果、非球状充填剤である6μm未満の平均粒径を有するタルクをシリコーン油で表面処理したものと、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクをシリコーン/水素化油で表面処理したものとを、本件訂正発明で特定された配合量及び比率で用いた場合に、これらの条件を満たさない比較例に比べて、良好なコンパクト性、並びに付着性及び展延性等良好な化粧品特性を同時に呈することができることも示されている。 したがって、本件訂正発明に係る特許請求範囲の記載は、当業者が本件訂正発明の課題を解決し得ると認識できるといえる範囲内のものであるといえる。 オ 申立人の主張 (ア)申立人Yは、本件訂正発明は非球状充填剤の平均粒径が「6μm未満」などに特定されているのに対し、本件訂正明細書には有効数字の扱いについて説明がないことを理由に、本件訂正発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨主張する(平成29年6月14日付け意見書の「3(2)(2-3)訂正請求の内容に付随して生じる取消理由について」)。 しかしながら、例えば本件訂正明細書の実施例及び比較例から、平均粒径5.80μmのものは、平均粒径6μm未満に分類されると、当業者であれば理解するものといえるから、申立人Yの主張は理由がない。 (イ)申立人Nは、本件訂正発明8?14で特定する球状充填剤の種類及び本件訂正発明15で特定する粉末状化粧品組成物が無水であることについて、本件訂正明細書の実施例には特定の球状充填剤を用いたことしか記載されておらず、しかも水の含有量は示されていないことを理由に、本件訂正発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨主張する(申立書41頁(iii)及び42頁の(iv))。 しかしながら、本件訂正明細書【0057】?【0083】には、本件訂正発明8?14で特定されるオルガノポリシロキサンエラストマー粉末である球状充填剤が例示され、実施例1ではそのような球状充填剤を用いており、また実施例1の組成は合計で100重量%であって、水を積極的に配合していないものである。 そうすると、当業者であれば、これらの本件訂正明細書の開示から、本件訂正発明8?15の課題を解決し得ると認識するものといえ、申立人Nの主張は理由がない。そもそも、本件訂正発明1が、本件訂正明細書の記載により当業者が本件訂正発明1の課題を解決できると認識できる範囲のものであるところ、それをより具体的に特定した本件訂正発明8?15が、本件訂正明細書に記載された発明でないなどということはできない。 申立人Nの甲11(Fragr.J.36(7):49-53,2008)、甲12(Gypsum & Lime No.228:339-346(1990))、甲13(COSMETIC STAGE Vol.2,No.4:55-62,2008)、甲14(J.Jpn.Soc.Colour Mater.,79[2],67-74(2006)及び甲15(特許権者の平成27年6月19日付け意見書)によっても、前記判断は変わらない。 カ 小括 よって、本件訂正発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (1-2)特許法第36条第6項第2号 ア 本件訂正前の特許請求の範囲には、「球状充填剤」と「非球状充填剤」が記載されていたところ、本件訂正前の本件特許明細書には、「非球状充填剤」について「球状」であってよいと定義されていたため(【0088】)、「非球状」の意味するところが不明であった。 それに対し、本件訂正により、「非球状充填剤」は「タルク」に特定されるとともに、本件訂正明細書から上記記載が削除されたから、本件訂正発明は明確である。 イ 本件訂正前の請求項1は、異なる平均粒径を有する2種類の非球状充填剤であって、より小さい平均粒径を有するものはシリコーン油を含む表面処理剤で表面処理され、より大きい平均粒径を有するものは少なくとも1種の非シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されていると定義されており、いずれもシリコーン油と非シリコーン油の混合物からなる表面処理剤で表面処理される場合を含むため、異なる平均粒径をどのように区別するのか不明であった。 それに対し、本件訂正により、より小さい平均粒径、より大きい平均粒径、及び表面処理剤が定義され、これらの区別が明らかとなったから、本件訂正発明1は明確である。 ウ 小括 よって、本件訂正発明は明確である。 そして、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する本件訂正発明3?4、8?15も同様に明確である。 請求項2、5?7は削除されたので、取消理由は存在しない。 (1-3)特許法第29条第2項 ア 刊行物1を主たる引用例とした場合 (ア)上記(1d)の実施例1における本発明品4からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認める。 「次の組成からなる固形粉末ファンデーション。 シリコーン処理タルク(平均粒径10μm) 30.0重量% フッ素処理マイカ(平均粒径19μm) 30.0重量% 球状シリコーン樹脂(平均粒径4.5μm) 12.0重量% シリコーン処理酸化チタン 5.0重量% シリコーン処理着色顔料 3.0重量% ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン 12重量%水分散液(弾性率5.3kg/cm^(2))20.0重量%」 (イ)本件訂正発明1と引用例1発明とを対比すると、本件訂正明細書【0027】に「球状充填剤は有機又は無機であってよい」と記載されていることから、引用例1発明の「球状シリコーン樹脂(平均粒径4.5μm) 12.0重量%」は、本件訂正発明1の「組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤」に相当し、引用例1発明の「固形粉末ファンデーション」は、本件訂正発明1の「圧粉の形態の粉末状化粧品組成物」に相当する。 また、本件訂正明細書【0124】?【0138】には、本件訂正発明1には、他の成分を含むことができる旨記載されていることから、引用例1発明が、「フッ素処理マイカ(平均粒径19μm) 30.0重量%」、「シリコーン処理酸化チタン 5.0重量%」、「シリコーン処理着色顔料 3.0重量%」及び「ポリ(N-アシルアルキレンイミン)変性シリコーン12重量%水分散液(弾性率5.3kg/cm^(2)) 20.0重量%」を含むことは相違点とはならない。 (ウ)したがって、両発明は次の点で相違する。 本件訂正発明1は、「6μm未満の平均粒径並びに6μm以上及び10μm以下の平均粒径の、異なる平均粒径を有する2種のタルクを含み、6μm未満の平均粒径を有するタルクは、シリコーン油で表面処理されており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、シリコーン/水素化油で表面処理されており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、組成物の総重量に対して5から20重量%の範囲で含まれており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比は、1以上であり、球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比は、1以上である」と特定されているのに対し、 引用例1発明は「シリコーン処理タルク(平均粒径10μm) 30.0重量%」を含むと特定されている点 (エ)上記相違点について検討する。 a 引用例1発明は、上記(1a)、(1b)のとおり、なめらかでしっとりした感触を有し、使用感に優れ、外力による割れが少ない固形粉末化粧料に関し、硬度、空隙率及び耐衝撃性値を特定の数値とすることで、上記固形粉末化粧料が得られることに基づいて、粉体及び弾性率が200kg/cm^(2)以下の皮膜形成性高分子を含有するものである。 そして、引用例1には、固形粉末化粧料に配合する粉体について、上記(1c)のとおり、通常化粧料に用いられる体質顔料又は着色顔料であれば特に制限されず、例えばタルクを使用でき、例えばシリコーン油などで表面処理したものでよく、1種以上を用いることができ、全組成物中に55?99.9重量%配合できることが記載されている。 そうすると、引用例1発明の「シリコーン処理タルク(平均粒径10μm)」は、引用例1においては任意に配合できるとされる程度のものであり、このような引用例1の開示から、引用例1発明の「シリコーン処理タルク(平均粒径10μm) 30.0重量%」について、本件訂正発明1の「シリコーン/水素化油で表面処理」されている「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」にかえるとともに、その配合量を5?20重量%の範囲にかえる動機付けはなく、さらに「6μm未満の平均粒径を有するタルク」を本件訂正発明1で特定される条件で含有させる動機付けもない。 b それに対し、本件訂正発明1は、「組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤」と、「シリコーン/水素化油で表面処理」されている「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」と「シリコーン油で表面処理」されている「6μm未満の平均粒径を有するタルク」とを特定の配合量及び比率で用いることにより、本件訂正明細書記載の効果を奏するものである。 c またこの判断は、化粧料に配合されるような粉体表面を疎水化処理するための疎水化処理剤として、引用例1の上記(1c)に記載されているフッ素化合物、シリコーン油とともに、油脂、炭化水素、エステル油などの非シリコーン油が用いられることが記載されている刊行物3?7、化粧品原料として硬化油(水素化油)が多く用いられることが記載されている刊行物8のほか、固形粉末ファンデーションのような化粧料においてオルガノポリシロキサンエラストマーが好ましく用いられることが開示される刊行物9?11を参酌しても変わらない。 (オ)まとめ したがって、本件訂正発明1は、引用例1発明から当業者が容易になし得たものではない。 そして、本件訂正発明3?4、8?15は、いずれも本件訂正発明1を引用するものであるから、同様に、引用例1発明から当業者が容易になし得たものではない。 イ 刊行物2を主たる引用例とした場合 (ア)上記(2e)の実施例9からみて、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認める。 なお、引用例2発明における「製造例2の固形油粉末」は、上記(2d)のとおり、融点120℃のフィッシャートロプシュワックスから製造された平均粒径180nmの固形油粉末である。また、上記(2c)に「0.1?10質量%(以下、単に「%」と略す。)」とあるから、実施例9の「%」は「質量%」である。 「次の組成からなる白粉(ケーキ状)。 ジメチルポリシロキサン処理合成マイカ (平均粒径15μm、アスペクト比60) 50質量% ジメチルポリシロキサン処理タルク 残量 パーフルオロアルキルリン酸エステル ジエタノールアミン塩処理マイカチタン (平均粒径30μm、アスペクト比50) 5質量% 製造例2の固形油粉末 3質量% グンジョウ 0.2質量% ベンガラ 0.1質量% 防腐剤 0.1質量% 球状ナイロン粉末(平均粒径6μm) 5質量% 流動パラフィン 0.5質量% 香料 0.1質量%」 (イ)本件訂正発明1と引用例2発明とを対比すると、本件訂正明細書【0027】に「球状充填剤は有機又は無機であってよい」と記載されていることから、引用例2発明の「球状ナイロン粉末(平均粒径6μm)」は、本件訂正発明1の「少なくとも1種の球状充填剤」に相当し、引用例2発明の「白粉(ケーキ状)」は、圧縮成形されたものであるから(上記(2e))、本件訂正発明1の「圧粉の形態の粉末状化粧品組成物」に相当する。 また、本件訂正明細書【0124】?【0138】には、本件訂正発明1には、他の成分を含むことができる旨記載されていることから、引用例2発明が、「ジメチルポリシロキサン処理合成マイカ(平均粒径15μm、アスペクト比60)」、「パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩処理マイカチタン(平均粒径30μm、アスペクト比50)」、「製造例2の固形油粉末」、「グンジョウ」、「ベンガラ」、「防腐剤」、「流動パラフィン」及び「香料」を含むことは相違点とはならない。 また、質量%と重量%とは同等であるといえる。 (ウ)したがって、両発明は次の点で相違する。 本件訂正発明1は、「少なくとも1種の球状充填剤」を「組成物の総重量に対して10重量%以上の量」で含み、かつ、「6μm未満の平均粒径並びに6μm以上及び10μm以下の平均粒径の、異なる平均粒径を有する2種のタルクを含み、6μm未満の平均粒径を有するタルクは、シリコーン油で表面処理されており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、シリコーン/水素化油で表面処理されており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、組成物の総重量に対して5から20重量%の範囲で含まれており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比は、1以上であり、球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比は、1以上である」と特定されているのに対し、 引用例2発明は、「球状ナイロン粉末(平均粒径6μm)」を「白粉(ケーキ状)」全体の5質量%の量で含み、「ジメチルポリシロキサン処理タルク」を「残量」(すなわち36重量%)の量で含むと特定されている点 (エ)上記相違点について検討する。 a 引用例2発明は、上記(2a)、(2b)のとおり、使用時にスポンジやマット等の小道具へのとれが良好で、滑らかな伸び広がりに優れ、しかも成形性の向上により耐衝撃性に優れた固形粉末化粧料に関し、球状粉末を配合する固形粉末化粧料において、結合剤として、ガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末を用いることで前記特性の固形粉末化粧料としたものである。 そして、引用例2には、上記(2c)に、前記球状粉末は、固形粉末化粧料に0.1?30%配合できることが記載されている。また、前記球状粉末及びガス中蒸発法により微粒化された固形油粉末の他に、その他の粉体を配合できることが記載され、その中にタルクが例示され、フッ素化合物、シリコーン化合物などの公知の処理剤で表面処理を施して用いても良いこと、これらの粉体の配合量は、固形粉末化粧料の60?99%が好ましいことが記載されている。 そうすると、引用例2には、球状粉末については10質量%以上配合し得ることが記載されているものの、引用例2発明の「ジメチルポリシロキサン処理タルク」は、その他の粉体として任意に配合できるとされる程度のものであり、このような引用例2の開示から、引用例2発明の「球状ナイロン粉末(平均粒径6μm)」の配合量を5質量%から、10重質量%以上の量とかえるとともに、「ジメチルポリシロキサン処理タルク」について、本件訂正発明1の「シリコーン/水素化油で表面処理」されている「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」と「シリコーン油で表面処理」されている「6μm未満の平均粒径を有するタルク」の2種にかえるとともに、その配合量及び比率を本件訂正発明1で特定されるようにする動機付けはない。 b それに対し、本件訂正発明1は、「組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤」と、「シリコーン/水素化油で表面処理」されている「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」と「シリコーン油で表面処理」されている「6μm未満の平均粒径を有するタルク」とを特定の配合量及び比率で用いることにより、本件訂正明細書記載の効果を奏するものである。 c またこの判断は、化粧料に配合されるような粉体表面を疎水化処理するための疎水化処理剤として、引用例2の上記(2c)に記載されているフッ素化合物、シリコーン化合物とともに、油脂、炭化水素、エステル油などの非シリコーン油が用いられることが記載されている刊行物3?7、化粧品原料として硬化油(水素化油)が多く用いられることが記載されている刊行物8のほか、固形粉末ファンデーションのような化粧料においてオルガノポリシロキサンエラストマーが好ましく用いられることが開示される刊行物9?11を参酌しても変わらない。 (オ)まとめ したがって、本件訂正発明1は、引用例2発明から当業者が容易になし得たものではない。 そして、本件訂正発明3?4、8?15は、いずれも本件訂正発明1を引用するものであるから、同様に、引用例2発明から当業者が容易になし得たものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件訂正発明は、引用例1又は引用例2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 申立人Yは、特開2007-015988号公報(申立人Y甲1、引用例3)、特開2001-64117号公報(申立人Y甲2)、特開2007-302647号公報(申立人Y甲3)、及び周知技術から想到容易である旨主張するので、以下に検討する。 イ 上記(3d)の実施例3からみて、引用例3には、次の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認める。 なお、上記(3a)、(3c)の記載からみて、実施例3の「%」は「重量%」と解することができる。 「次の組成からなるパウダーファンデーション。 シリコーン被覆タルク 13.10重量% シリコーン被覆マイカ 40.00重量% ステアリン酸亜鉛 2.00重量% 薄片状アルミニウム粉末1 (アクリル酸アルキル共重合体被覆アルミニウム粉末 平均粒径40μm、厚み約0.4μm) 1.00重量% ナイロンパウダー (東レ社製 ナイロンSP500、粒径6μm) 5.00重量% ポリメタクリル酸メチル (綜研化学社製 MP-2200、粒径0.3μm) 2.00重量% 酸化チタン 5.00重量% ベンガラ 0.30重量% 黄酸化鉄 0.50重量% 黒酸化鉄 0.10重量% 板状硫酸バリウム(堺化学社製 板状硫酸バリウムHL、屈折率1.64) 20.00重量% スクワラン 10.00重量% セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.00重量%」 ウ 本件訂正発明1と引用例3発明とを対比すると、本件訂正明細書【0027】に「球状充填剤は有機又は無機であってよい」と記載され、引用例3の上記(3c)には、ナイロンパウダー及びポリメチルメタクリレートが球状粒子の例として示されていることから、引用例3発明の「ナイロンパウダー(東レ社製 ナイロンSP500、粒径6μm)」及び「ポリメタクリル酸メチル(綜研化学社製 MP-2200、粒径0.3μm)」は、本件訂正発明1の「少なくとも1種の球状充填剤」に相当し、引用例2発明の「パウダーファンデーション」は、プレス成形されたものであるから(上記(3d))、本件訂正発明1の「圧粉の形態の粉末状化粧品組成物」に相当する。 また、本件訂正明細書【0124】?【0138】には、本件訂正発明1には、他の成分を含むことができる旨記載されていることから、引用例3発明が、「シリコーン被覆マイカ」、「ステアリン酸亜鉛」、「薄片状アルミニウム粉末1(アクリル酸アルキル共重合体被覆アルミニウム粉末 平均粒径40μm、厚み約0.4μm)」、「酸化チタン」、「ベンガラ」、「黄酸化鉄」、「黒酸化鉄」、「板状硫酸バリウム(堺化学社製 板状硫酸バリウムHL、屈折率1.64)」、「スクワラン」、及び「セスキイソステアリン酸ソルビタンを含むことは相違点とはならない。 エ したがって、両発明は次の点で相違する。 本件訂正発明1は、「少なくとも1種の球状充填剤」を「組成物の総重量に対して10重量%以上の量」で含み、かつ、「6μm未満の平均粒径並びに6μm以上及び10μm以下の平均粒径の、異なる平均粒径を有する2種のタルクを含み、6μm未満の平均粒径を有するタルクは、シリコーン油で表面処理されており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、シリコーン/水素化油で表面処理されており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、組成物の総重量に対して5から20重量%の範囲で含まれており、6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比は、1以上であり、球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比は、1以上である」と特定されているのに対し、 引用例3発明は、「ナイロンパウダー(東レ社製 ナイロンSP500、粒径6μm)」及び「ポリメタクリル酸メチル(綜研化学社製 MP-2200、粒径0.3μm)」を合計で「パウダーファンデーション」全体の7重量%の量で含み、「シリコーン被覆タルク」を「13.10重量%」の量で含むと特定されている点 オ 上記相違点について検討する。 (ア)引用例3発明は、上記(3a)、(3b)のとおり、仕上がり感の優れたベースメイク化粧料に関し、薄片状アルミニウム粉末と屈折率1.6?2.7の板状粒子とを特定比率で配合し、さらに球状粒子を配合することにより、立体感があり、自然で健康的な肌色の仕上がりが得られるベースメイク化粧料としたものである。 そして、引用例3には、上記(3c)に、前記球状粒子は、ベースメイク化粧料に0.2?40重量%配合できることが記載され、屈折率1.6?2.7の板状粒子として、酸化チタン被覆タルク、硫酸バリウム被覆タルク、酸化亜鉛被覆タルク、アルミナ被覆タルク」が例示され、さらに、薄片状アルミニウム粉末、屈折率1.6?2.7の板状粒子、及び球状粒子以外の粉体原料として、タルクを配合でき、フッ素化合物、シリコーン系油剤などを用いて表面処理を施したものであっても良いことが記載されている。 そうすると、引用例3には、球状粒子については10重量%以上配合し得ることが記載されているものの、屈折率1.6?2.7の板状粒子の例として引用例3発明の「板状硫酸バリウム(堺化学社製 板状硫酸バリウムHL、屈折率1.64)と同等に記載されているものには、本件訂正発明1の異なる平均粒径の2種のタルクのいずれにも相当するといえるものは挙げられておらず、また、それ以外であっても任意に配合できるとされる程度のシリコーン系油剤などで表面処理を施したタルクが記載されているに留まる。このような引用例3の開示から、引用例3発明の「ナイロンパウダー(東レ社製 ナイロンSP500、粒径6μm)」及び「ポリメタクリル酸メチル(綜研化学社製 MP-2200、粒径0.3μm)」の合計配合量を7重量%から10重量%以上の量とかえるとともに、「シリコーン被覆タルク」について、本件訂正発明1の「シリコーン/水素化油で表面処理」されている「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」と「シリコーン油で表面処理」されている「6μm未満の平均粒径を有するタルク」の2種にかえるか、あるいはこれらをさらに配合するとともに、その配合量及び比率を本件訂正発明1で特定されるようにする動機付けはない。 (イ)そして、本件訂正発明1は、「組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤」と、「シリコーン/水素化油で表面処理」されている「6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルク」と「シリコーン油で表面処理」されている「6μm未満の平均粒径を有するタルク」とを特定の配合量及び比率で用いることにより、本件訂正明細書記載の効果を奏するものである。 (ウ)またこの判断は、異なる平均粒径を有する油剤処理酸化チタンとシリコーン処理酸化チタンを配合した圧縮成型による固形粉末状パウダーファンデーションを開示する申立人Y甲2、実施例において平均一次粒子径0.23μmのシリコーン処理酸化チタン及び体積平均粒子径2.4μmの複合顔料を配合した圧縮成型によるパウダーファンデーションを開示する申立人Y甲3を参酌しても変わらない。 なお、申立人Y甲4(堺化学工業株式会社の製品カタログ)は、引用例3発明の「板状硫酸バリウムHL」の平均粒径を示すものであり、申立人Y甲5(特開2006-199644)は、球状化粧品組成物に含有させる球状充填剤としてオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を用いることが周知であることを示すものであり、これらを参酌しても同様に上記判断は変わらない。 カ まとめ したがって、本件訂正発明1は、引用例3発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件訂正発明3?4、8?15は、いずれも本件訂正発明1を引用するものであるから、同様に、引用例2発明から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立人Yの上記主張は理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3?4、8?15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、3?4、8?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件請求項2、5?7に係る特許は、本件訂正により削除されたため、異議申立人の本件請求項2、5?7に係る特許についての特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 粉末状化粧品組成物 【技術分野】 【0001】 本発明は、圧粉の形態の粉末状化粧品組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 スキンメーキャップ組成物は、一般に、魅力的な色を顔等の皮膚に与えるためだけではなく、赤み、あざ及びしわ等の皮膚の欠陥を覆うためにも使用することができる。 【0003】 特定のメーキャップ組成物は圧粉の形態であり得る。これらの組成物は、一般に、高含有量の粉末、例えば、組成物の総重量に対して少なくとも約70重量%の粉末を含む。例えば、US-A-2005-276776を参照されたい。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】US-A-2005-276776 【特許文献2】EP56219 【特許文献3】EP348372 【特許文献4】EP486080 【特許文献5】EP320473 【特許文献6】EP112807 【特許文献7】米国特許第3,615,972号 【特許文献8】FR-A-2619385 【特許文献9】EP-A-303530 【特許文献10】EP-A-295886 【特許文献11】JP-A-61-194009 【特許文献12】EP-A-242219 【特許文献13】EP-A-765656 【特許文献14】米国特許第5,538,793号 【特許文献15】米国特許第4,578,266号 【特許文献16】JP-A-H05-70325 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 使用される粉末の型に依存して、メーキャップ組成物の化粧品特性は、非常に可変であり得る。 【0006】 例えば、比較的多量の球状充填剤が、圧粉の形態の粉末状化粧品組成物中にあると、組成物のコンパクト性が劣化し、皮膚への付着性等組成物の化粧品特性の一部も劣化する。 【課題を解決するための手段】 【0007】 したがって、本発明の目的は、比較的多量な球状充填剤を含む場合であっても、圧粉の形態の粉末状化粧品組成物に良好なコンパクト性、並びに良好な化粧品特性を提供することである。 【0008】 本発明の上記目的は、 組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤、及び異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤 を含み、 より小さい平均粒径を有する非球状充填剤は、シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されており、より大きい平均粒径を有する非球状充填剤は、少なくとも1種の非シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されており、 より大きい平均粒径を有する非球状充填剤の量に対する、より小さい平均粒径を有する非球状充填剤の量の比は、1以上であり、 球状充填剤の量に対する2種の非球状充填剤の総量の比は、1以上である、 圧粉の形態の粉末状化粧品組成物によって達成することができる。 【0009】 より小さい平均粒径を有する非球状充填剤の平均粒径は6μm未満であり得る一方、より大きい平均粒径を有する非球状充填剤の平均粒径は6μm以上及び10μm以下であり得る。 【0010】 より大きい平均粒径を有する非球状充填剤の量に対する、より小さい平均粒径を有する非球状充填剤の量の比は、2以上、好ましくは3以上であってよい。 【0011】 球状充填剤の量に対する2種の非球状充填剤の総量の比は、2以上、好ましくは3以上であってよい。 【0012】 非シリコーン油は水素化油であってよい。 【0013】 2種の非球状充填剤は、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、ラウロイルリジン、金属石鹸、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム及びヒドロキシアパタイトからなる群から独立して選択することができる。 【0014】 球状充填剤は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を含むことができる。 【0015】 好ましい実施形態において、球状充填剤の50重量%以上は、オルガノポリシロキサンエラストマー粉末であってよい。 【0016】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、 ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンの架橋付加反応、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンとの間の脱水素架橋縮合反応、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシランの架橋縮合反応、 オルガノポリシロキサンの熱架橋、及び 高エネルギー線によるオルガノポリシロキサンの架橋 から得られるものから選択することができる。 【0017】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、それぞれがケイ素に連結されている少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンの架橋付加反応を介して得ることができる。 【0018】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、白金触媒の存在下での、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサンと、トリメチルシロキシ末端基を含むメチルハイドロジェンポリシロキサンの反応によって得ることができる。 【0019】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末は、少なくとも1種のシリコーン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末を含むことができる。 【0020】 該シリコーン樹脂はシルセスキオキサン樹脂であってよい。 【0021】 該粉末状化粧品組成物は無水であってよい。 【発明を実施するための形態】 【0022】 鋭意検討の結果、本発明者らは、2種の非球状充填剤の一方(より小さい平均粒径を有する)が少なくともシリコーン油で被覆されており、他方(より大きい平均粒径を有する)が少なくとも非シリコーン油で被覆されている、異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤との組合せを特定の量で使用することによって、良好なコンパクト性並びに皮膚への付着性及び皮膚上での展延性等の良好な化粧品特性を有する圧粉の形態の粉末状化粧品組成物を提供することが可能であることを見出した。 【0023】 本発明による粉末状化粧品組成物を、詳細に説明する。 【0024】 本発明による粉末状化粧品組成物は、主成分として粉体相を含む。粉体相の総量は、粉末状化粧品組成物の総重量に対して70重量%から100重量%、好ましくは80重量%から95重量%、より好ましくは85重量%から95重量%であってよい。 【0025】 (球状充填剤) 該粉体相は、組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤を含む。 【0026】 本明細書に開示されている組成物は、組成物の総重量に対して、10重量%から60重量%の範囲、例えば、15重量%から45重量%の範囲、更に例えば、15重量%から30重量%の範囲、及びまた更に、例えば、15重量%から25重量%の範囲である量で球状充填剤を含むことができる。 【0027】 球状充填剤は有機又は無機であってよい。 【0028】 無機球状充填剤として、Maprecos社からの「Silica Beads SP 700/HA(R)」及び「Silica Beads SB 700(R)」、並びにAsahi Glass社からの「Sunspheres H-33(R)」及び「Sunspheres H-51(R)」の製品を含めて、例えば、中空シリカ微小球等開放多孔性のシリカ微小球を挙げることができる。 【0029】 球状充填剤は有機球状充填剤から選択されることが好ましい。 【0030】 一部の実施形態において、有機球状充填剤は膜形成性ではない、すなわち、皮膚等のケラチン層上に沈着させた場合、それらは連続膜を形成しない。 【0031】 有機球状充填剤は、例えば、(メタ)アクリル粉末又は(メタ)アクリレート粉末、例えば、ポリメチルメタクリレート粉末、ポリアクリロニトリル粉末、ポリウレタン粉末、ポリアミド粉末及びオルガノポリシロキサン粉末等、並びにそれらの混合物から選択することができる。 【0032】 一実施形態によると、該組成物は、ポリメチルメタクリレートの少なくとも1種の球状充填剤を含むことができる。 【0033】 ポリメチルメタクリレート粉末は、一般に、例えば、3ミクロンから15ミクロンの範囲、及び更に、例えば、3ミクロンから10ミクロンの範囲であるマイクロメーターオーダーの数平均サイズを有する、中空又は固体白色球状粒子の形態であってよい。本明細書で使用される場合、「数平均サイズ」という表現は、D50と称される、集団の半分に対する統計的粒径分布によって与えられるサイズを意味する。 【0034】 ポリメチルメタクリレート粒子を、例えば粒子の球状空洞のサイズの関数として変動することがあるそれらの密度によって特徴づけることも可能である。 【0035】 本明細書に開示されている実施形態によると、この密度は、パック密度(packed density)と称される以下のプロトコルに従って評価される。粉末m=40gを測定シリンダに注ぎ、次いで、測定シリンダをStampf VolumeterからのStav2003機上に置き、次いで、測定シリンダを1500回のパック動作にかけ、次いで、パック粉末の最終容量Vfを測定シリンダ上で直接測定する。パック密度は、この場合40/Vfであるm/Vf比(Vfはcm^(3)で、及びmはgで表される)によって決定される。 【0036】 例えば、本明細書に開示されている実施形態において使用することができるポリメチルメタクリレート粉末の密度は、例えば0.3から1.5、更に、例えば0.5から1.5、及びまた更に、例えば1から1.5の範囲であってよい。 【0037】 本明細書に開示されている組成物における使用に適当であるポリメチルメタクリレート粉末の非限定的例示として、例えば、Matsumoto Yushi Co.社によって「Micropearl M100」の名称で、LCW社によって「Covabead LH 85」の名称で販売されているポリメチルメタクリレート粒子、及びNihon Junyaku社によって「Jurymer MB1」の名称で販売されているものを挙げることができる。 【0038】 ポリメチルメタクリレート粉末は、組成物の総重量に対して、1重量%から20重量%の範囲、例えば2重量%から15重量%の範囲、及び更に、例えば3重量%から10重量%の範囲である量で存在することができる。 【0039】 一実施形態によると、該組成物は、ポリアクリロニトリルの少なくとも1種の球状充填剤を含む。 【0040】 ポリアクリロニトリル粉末は、アクリロニトリルホモポリマー粉末及びアクリロニトリルコポリマー粉末、並びに例えば、アクリロニトリルホモポリマー又はコポリマーの発泡中空粒子から選択することができる。例えば、該粉末は、皮膚に非毒性及び非刺激性である任意の発泡アクリロニトリルホモポリマー又はコポリマーから作製することができる。 【0041】 例えば、粒子の単位体積当たりの質量は、15kg/m^(3)から200kg/m^(3)、例えば40kg/m^(3)から120kg/m^(3)、及びまた更に、例えば60kg/m^(3)から80kg/m^(3)の範囲で選択される。この低い単位体積当たりの質量を得るため、例えば、アクリロニトリル及びアクリル又はスチレンモノマー、並びに/又は塩化ビニリデンに基づいている発泡ポリマー又はコポリマー粒子を使用することができる。 【0042】 例えば、塩化ビニリデンから誘導される単位0%から60%、アクリロニトリルから誘導される単位20%から90%、及びアクリル又はスチレンモノマーから誘導される単位0%から50%を含み、ここで、百分率(重量による)の和が100に等しいコポリマーを使用することが可能である。アクリルモノマーは、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のメチル又はエチルであってよい。スチレンモノマーは、例えば、α-メチルスチレン又はスチレンであってよい。 【0043】 一実施形態において、本明細書に開示されている組成物中に使用される粉末は、塩化ビニリデン及びアクリロニトリル、又は塩化ビニリデン及びアクリロニトリル及びメタクリレートの発泡コポリマーの中空粒子から選択される。これらの粉末は乾燥であるか、又は水和されていてよい。 【0044】 該粉末は、例えば、特許及び特許出願EP56219、EP348372、EP486080、EP320473、EP112807号及び米国特許第3,615,972号に開示されている方法に従って得ることができる。 【0045】 粉末粒子の内部空洞は、原則として、空気、窒素、並びにイソブタン及びイソペンタン等の炭化水素から選択することができる少なくとも1種のガスを含む。 【0046】 一部の実施形態において、本明細書に開示されている粉末粒子は、1μmから80μmの範囲、例えば10μmから50μm、及び10μmから30μmの範囲である粒径を有する。 【0047】 粉末粒子は、551 DE 50(40μmの粒径)、551 DE 20(30μmの粒径、及び65kg/m^(3)の単位体積当たりの質量)、551 DE 12(12μmの粒径)、551 DE 80(80μmの粒径)及び461 DE 50(50μmの粒径)を参照の下にExpancelの商標名でExpancel社によって販売されている、例えば、塩化ビニリデン、アクリロニトリル及びメタクリレートの発泡ターポリマーマイクロ球体から選択することができる。EL 23として以下に参照されている、8μmの粒径及び70kg/m^(3)の単位体積当たりの質量を有する、あるいはEL 43として、以下に参照されている34μmの粒径及び20kg/m^(3)の単位体積当たりの質量を有する同じ発泡ターポリマーから形成される微小球を使用することも可能である。 【0048】 アクリロニトリル粉末は、本明細書に開示されている組成物中に、組成物の総重量に対して0.02重量%から2重量%の範囲、例えば0.1重量%から1.5重量%の範囲、及び更に、例えば0.1重量%から1.2重量%の範囲である量で存在することができる。 【0049】 一実施形態によると、該組成物は、ポリウレタンの少なくとも1種の球状充填剤を含むことができる。 【0050】 ポリウレタン粉末は、ヘキサメチレンジイソシアネート及びトリメチロールヘキシルラクトンのコポリマーの粉末であってよい。こうしたポリウレタン粉末は、例えば、「プラスチック粉末D-400」及び「プラスチック粉末D-800」の名称でToshiki社によって販売されている。使用することができる他のポリウレタン粉末として、「プラスチック粉末CS-400」の名称でToshiki社によって販売されている製品が挙げられる。 【0051】 ポリウレタン粉末は、本明細書に開示されている組成物中に、組成物の総重量に対して1重量%から20重量%の範囲、例えば2重量%から15重量%の範囲、及び更に、例えば3重量%から10重量%の範囲である量で存在することができる。 【0052】 一実施形態によると、該組成物は、ポリアミドの少なくとも1種の球状充填剤を含むことができる。 【0053】 本発明において有用なポリアミド粉末は、CTFA名称の「ナイロン12」又は「ナイロン6」で列挙されているものであってよい。粒子の混合物、及び例えば、ナイロン6とナイロン12との混合物を使用することができる。 【0054】 本発明において使用されるポリアミド粉末粒子として、「Orgasol」の名称でAtochem社によって販売されているものが挙げられる。これらの粒子を得るための方法は、例えば、文献FR-A-2619385又は文献EP-A-303530に記載されている方法である。これらのポリアミド粉末粒子は、更に、「ポリアミド12」又は「ポリアミド6」の名称で、それらの様々な物理化学的性質によって知られている。 【0055】 本発明において有用な粒子として、SP500の名称でTORAY社によって販売されているものが挙げられる。 【0056】 ポリアミド粉末は、本明細書に開示されている組成物中に、組成物の総重量に対して1重量%から20重量%の範囲、例えば2重量%から15重量%の範囲、及び更に、例えば3重量%から10重量%の範囲の量で存在することができる。 【0057】 好ましい実施形態によると、該組成物は、オルガノポリシロキサンの少なくとも1種の球状充填剤を含むことができる。 【0058】 オルガノポリシロキサンは、エラストマー性又は非エラストマー性であってよい。エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末又はオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を使用することが好ましい。 【0059】 エラストマー性オルガノポリシロキサンは架橋することができ、例えば、 好ましくは、例えば白金触媒の存在下での、ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンの架橋付加反応を介して、あるいは 好ましくは、例えば有機スズ化合物の存在下での、少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンとの間の脱水素架橋縮合反応を介して、あるいは 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシランの架橋縮合反応を介して、あるいは 好ましくは、例えばオルガノペルオキシド触媒の存在下での、オルガノポリシロキサンの熱架橋を介して、あるいは ガンマ線、紫外線又は電子ビーム等の高エネルギー線による、オルガノポリシロキサンの架橋を介して 得ることができる。 【0060】 一実施形態において、エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末は架橋され、例えば特許出願EP-A-295886号に記載されている通り、好ましくは、例えば白金触媒(C2)の存在下での、それぞれがケイ素に連結されている少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサン(B2)と、ケイ素に連結されている少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサン(A2)の架橋付加反応を介して得られる。 【0061】 例えば、オルガノポリシロキサンは、白金触媒の存在下での、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサンと、トリメチルシロキシ末端基を含むメチルハイドロジェンポリシロキサンの反応を介して得ることができる。 【0062】 化合物(A2)は、エラストマー性オルガノポリシロキサンの形成のための塩基試薬であり、架橋は、触媒(C2)の存在下での化合物(A2)と化合物(B2)との付加反応を介して行われる。 【0063】 化合物(A2)は、例えば、少なくとも2個の低級アルケニル基(例えばC2?C4)を含むジオルガノポリシロキサンであってよく、低級アルケニル基は、ビニル基、アリル基及びプロペニル基から選択することができる。これらの低級アルケニル基は、オルガノポリシロキサン分子の任意の位置に位置することができるが、一実施形態において、オルガノポリシロキサン分子の末端に位置されている。オルガノポリシロキサン(A2)は、分枝鎖、直鎖、環式又はネットワークの構造を有することができ、一実施形態において、直鎖構造を使用することができる。化合物(A2)は、液体状態からガム状態の範囲の粘度を有することができる。例えば、化合物(A2)は、25°Cで少なくとも100センチストークスの粘度を有することができる。 【0064】 オルガノポリシロキサン(A2)は、メチルビニルシロキサン、メチルビニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含むジメチル-シロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン-メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、及びジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)シロキサンコポリマーから選択することができる。 【0065】 化合物(B2)は、例えば、各分子においてケイ素に連結されている少なくとも2個の水素を含むオルガノポリシロキサンであってよく、したがって、化合物(A2)のための架橋剤である。 【0066】 一実施形態において、化合物(A2)の1分子当たりのエチレン性基の数、及び化合物(B2)の1分子当たりのケイ素に連結されている水素原子の数の和は、少なくとも4である。 【0067】 化合物(B2)は任意の分子構造であってよい。一実施形態において、化合物(B2)は、直鎖若しくは分枝鎖の構造又は環構造である。 【0068】 化合物(B2)は、例えば、化合物(A2)との良好な混和性を有するため、25°Cで1センチストークスから50000センチストークスの範囲である粘度を有することができる。 【0069】 一実施形態において、化合物(B2)は、化合物(B2)におけるケイ素に連結されている水素原子の総量と、化合物(A2)における全てのエチレン性不飽和基の総量との間の分子比が1:1から20:1の範囲内であるような量で添加することができる。 【0070】 化合物(B2)は、トリメチルシロキシ末端基を含むメチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシ末端基を含むジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、及び環式ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマーから選択することができる。 【0071】 化合物(C2)は架橋反応触媒であり、例えば、クロロ白金酸、クロロ白金酸-オレフィン錯体、クロロ白金酸-アルケニルシロキサン錯体、クロロ白金酸-ジケトン錯体、白金黒、及び担持体上の白金から選択することができる。 【0072】 触媒(C2)は、例えば、純粋白金金属として、化合物(A2)及び(B2)の総量の1000重量部当たり0.1重量部から1000重量部、及び更に、例えば1重量部から100重量部の範囲である量で添加することができる。 【0073】 他の有機基は、前に記載されているオルガノポリシロキサン(A2)及び(B2)におけるケイ素に連結されていてよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル又はオクチル等のアルキル基、2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル又は3,3,3-トリ-フルオロプロピル等の置換アルキル基、フェニル、トリル又はキシリル等のアリール基、フェニルエチル等の置換アリール基、及びエポキシ基、カルボン酸エステル基又はメルカプト基等の置換されている一価の炭素水素系基である。 【0074】 一部の実施形態において、少なくとも1種のエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末は、例えば、非乳化性エラストマーから選択することができる。本明細書で使用される場合、「非乳化性」という用語は、ポリオキシアルキレン単位又はポリグリセロレート化単位等、親水性鎖を含まないオルガノポリシロキサンエラストマーを意味する。 【0075】 球状エラストマー性オルガノポリシロキサンは、例えば、特許出願JP-A-61-194009号、第EP-A-242219号、EP-A-295886号及びEP-A-765656号に記載されており、これらの内容を参照により組み込む。 【0076】 使用することができるエラストマーオルガノポリシロキサン粉末として、「Dow Corning 9505 Powder」及び「Dow Corning 9506 Powder」の名称でDow Corning社によって販売されているものが挙げられ、これらの粉末は、INCI名:ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを有する。 【0077】 エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末は、例えば米国特許第5,538,793号に記載されている通り、例えば、シリコーン樹脂、例えばシルセスキオキサン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末から選択することができ、この内容を参照により組み込む。こうしたエラストマー性粉末は、「KSP-100」、「KSP-101」、「KSP-102」、「KSP-103」、「KSP-104」及び「KSP-105」の名称でShin-Etsu社によって販売されており、INCI名:ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーを有する。 【0078】 球状粉末の形態の他のエラストマー性オルガノポリシロキサンは、例えば「KSP-200」の名称でShin-Etsu社によって販売されている、フルオロアルキル基で官能化されたハイブリッドシリコーンの粉末、及び例えば「KSP-300」の名称でShin-Etsu社によって販売されている、フェニル基で官能化されたハイブリッドシリコーンの粉末であってよい。 【0079】 一実施形態において、該組成物は、例えば、前に記載されている通り、シリコーン樹脂、例えばシルセスキオキサン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末から選択されるエラストマー性オルガノポリシロキサンの少なくとも2種の粉末を含むことができる。 【0080】 一部の実施形態において、本明細書に開示されている組成物は、少なくとも1種のシリコーン樹脂、例えばシルセスキオキサン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末から選択される少なくとも1種のエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末を、組成物の総重量に対して1重量%から25重量%、例えば1重量%から15重量%の範囲、更に、例えば2重量%から8重量%の範囲、及びまた更に、例えば3重量%から7重量%の範囲である量で含むことができる。 【0081】 本明細書に開示されている組成物は、シリコーン樹脂、例えばシルセスキオキサン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末から選択される少なくとも1種のエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末と、非コーティングエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末との混合物を含むことができる。こうした混合物において、シリコーン樹脂、例えばシルセスキオキサン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末は、組成物の総重量に対して1重量%から10重量%の範囲、例えば2重量%から8重量%の範囲、及び更に、例えば3重量%から7重量%の範囲である量で存在することができ、非コーティングエラストマー性オルガノポリシロキサン球状粉末は、組成物の総重量に対して1重量%から10重量%の範囲、例えば2重量%から8重量%の範囲、及び更に、例えば3重量%から7重量%の範囲である量で存在することができる。 【0082】 エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末は、本明細書に開示されている組成物中に、球状充填剤の総重量に対して50重量%から100重量%の範囲、例えば50重量%から90重量%の範囲、及び更に、例えば50重量%から80重量%の範囲である量で存在することができる。 【0083】 本明細書に開示されている組成物は、エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末を、組成物の総重量に対して1重量%から30重量%の範囲、例えば2重量%から20重量%の範囲、更に、例えば3重量%から15重量%の範囲、及びまた更に、例えば5重量%から10重量%の範囲である量で含むことができる。 【0084】 (非球状充填剤) 本発明による組成物は、上記した通り、比較的多量の球状充填剤を含む。したがって、該組成物は柔らかい感触を呈することができ、指等によって容易につまみ上げることができる。 【0085】 しかし、比較的多量の球状充填剤は、本発明による組成物のコンパクト性、並びに皮膚等のケラチン物質への付着性等の化粧品特性に影響する傾向がある。 【0086】 本発明によると、良好なコンパクト性並びに良好な付着性及び展延性等の良好な化粧品特性の両方を確立するため、本発明による粉末状化粧品組成物は、異なる平均粒径を有する2種の非球状充填剤を含み、ここで、該充填剤は異なる表面処理をされている。 【0087】 本明細書で使用される場合、「充填剤」という用語は、室温及び大気圧で固体であり、該組成物の様々な成分が室温を超える温度に付される場合でも、これらの成分に不溶性である実質的に着色されていない化合物を意味する。充填剤は多孔質であってもよく、又は多孔質でなくてもよい。 【0088】 「非球状」充填剤は、それらの結晶学的形態(例えば薄板状、立方、六角形及び斜方晶)にかかわりなく、球状以外の任意の形態、例えば、血小板形及び長円形であってよい。好ましい実施形態において、非球状充填剤は薄板状形態である。好ましくは、非球状充填剤は10以上の高アスペクト比を有する。アスペクト比は20以上又は50以上であってよい。アスペクト比は、式:アスペクト比=長さ/厚さに従って、平均厚さ及び平均長さによって決定することができる。 【0089】 本明細書における「平均粒径」という用語は、D50と称される、集団の半分に対する統計的粒径分布によって与えられるサイズを意味する。 【0090】 非球状充填剤の材料は限定されないが、好ましくは、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、ラウロイルリジン、金属石鹸、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム及びヒドロキシアパタイトからなる群から選択される。材料として、タルク、マイカ、カオリン、セリサイトはより好ましく、タルク及びマイカはまた更に好ましい。これらの混合物は、非球状充填剤のための材料として使用することができる。2種の非球状充填剤の材料は、同じ又は異なっていてよい。好ましい実施形態において、それは使用タルクである。 【0091】 2種の非球状充填剤は、より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤、及びより大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤から構成される。 【0092】 好ましくは、より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤は、0.1μmから6μm等の6μm未満、例えば、1μmから6μmの平均粒径を有することができる。他方、より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤は、6μmから9μm等6μm以上及び10μm、例えば7μmから9μmの平均粒径を有することができる。 【0093】 本発明によると、より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤は、シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されている。他方、より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤は、少なくとも1種の非シリコーン油を含む表面処理剤で表面処理されている。 【0094】 シリコーン油は、ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のポリアルキルアリールシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリジアリールシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のポリアルキルハイドロジェンシロキサン、及び修飾ポリシロキサンから選択することができる。 【0095】 修飾ポリシロキサンは、以下の式から選択することができる。 -(a^(1))式(III)の化合物から選択される、ポリエーテルを保有する修飾ポリシロキサン、 【0096】 【化1】 【0097】 (式中、 -R^(3)は、-(CH_(2))_(h)-を含み、 -R^(4)は、-(CH_(2))_(i)-CH_(3)を含み、 -R^(5)は、-OH、-COOH、-CH=CH_(2)、-C(CH_(3))=CH_(2)及び(CH_(2))_(j)-CH_(3)から選択され、 -R^(6)は、-(CH_(2))_(k)-CH_(3)を含み、 -g及びhは、独立して、1から15の範囲であり、 -j及びkは、独立して、0から15の範囲であり、 -eは、1から50の範囲であり、 -fは、1から300の範囲である) -(a^(2))式(IV)の化合物から選択される、ポリエステルを保有する修飾ポリシロキサン、 【0098】 【化2】 【0099】 (式中、 -R^(7)、R^(8)及びR^(9)は、独立して、-(CH_(2))_(q)-から選択され、 -R^(10)は、-OH,-COOH、-CH=CH_(2)、-C(CH_(3))=CH_(2)及び(CH_(2))_(r)-CH_(3)から選択され、 -R^(11)は、-(CH_(2))_(s)-CH_(3)を含み、 -n及びqは、独立して、1から15の範囲であり、 -r及びsは、独立して、0から15の範囲であり、 -eは、1から50の範囲であり、 -fは、1から300の範囲である) -(a^(3))式(V)の化合物から選択される、エポキシ基を有する修飾ポリシロキサン 【0100】 【化3】 【0101】 (式中、 -R^(12)は、-(CH_(2))_(v)-を含み、 -vは、1から15の範囲であり、 -tは、1から50の範囲であり、 -uは、1から300の範囲である) 及び -それらの混合物。 【0102】 別法として、修飾ポリシロキサンは、式(VI)の化合物から選択することができる。 【0103】 【化4】 【0104】 (式中、 -R^(13)及びR^(14)は、独立して、-OH、R^(16)OH及びR^(17)COOHから選択され、 -R^(15)は、-CH_(3)及びC_(6)H_(5)から選択され、 -R^(16)及びR^(17)は、-(CH_(2))_(y)-を含み、 -yは、1から15の範囲であり、 -wは、1から200の範囲であり、 -xは、0から100の範囲である) 【0105】 シリコーン油は、ポリジメチルシロキサン等のポリジアルキルシロキサン、又はポリジアルキルシロキサンの混合物であるのが好ましい。 【0106】 より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤のための表面処理剤は、少なくとも1種のシリコーン油、特にジメチルポリシロキサンを含むことができる。 【0107】 本発明の一実施形態によると、より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤の表面処理は、以下の処理から選択することができる。 PEG-シリコーン処理、例えば、LCWによって販売されているAQ表面処理、メチコン処理、例えば、LCWによって販売されているSI表面処理、並びにジメチコン処理、例えば、LCWによって販売されているCovasil l3.05表面処理、又はMiyoshi Kaseiによって販売されているSA表面処理、及び特にMIYOSHI KASEI(INCI名、タルク及びジメチコン)によって販売されている製品SA-TA-13R。 【0108】 好ましい実施形態において、ジメチコン処理タルクが使用される。 【0109】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理剤は、少なくとも1種の非シリコーン油を含む。特に、非シリコーン油は、植物油、好ましくは周囲温度で固体の植物油である。好ましい実施形態において、非シリコーン油は硬化植物油である。好ましい実施形態において、硬化植物油は水素化パーム油である。より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理剤は、非シリコーン油に加えて、少なくとも1種のシリコーン油を含むこともできる。 【0110】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理剤は、非シリコーン油に加えて、シリコーン油、特にジメチルポリシロキサンを含むことが好ましい。より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理剤は、シリコーン油、特にジメチルポリシロキサン、及び水素化油、特に水素化パーム油からなることが最も好ましい。 【0111】 本発明の一実施形態によると、より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤のための表面処理は、以下の処理から選択することができる。 -水素化パーム油処理、 -メチコン/水素化パーム油処理、例えば、Miyoshi Kaseiによって販売されているSNVI表面処理、特に、Miyoshi Kaseiによって販売されている、メチコン/水素化パーム油で処理されているタルク(SNVI-TA-46R)、又はMiyoshi Kaseiによって販売されている、メチコン/水素化パーム油で処理されている合成マイカ(SNVI-合成マイカPDM-8W)。 【0112】 好ましい実施形態において、SNVI-TA-46Rの名称でMiyoshi Kaseiによって販売されている、メチコン/水素化パーム油で処理されているタルクが使用される。 【0113】 本発明の文脈において有用である、事前に表面処理されている非球状充填剤は、本発明による組成物に分散される前に、上に記載されているもの等の少なくとも1種の表面処理剤を用いる化学的、電子的、電気化学的、機械化学的及び機械的表面処理から選択される表面処理を全体的又は部分的に受けた非球状充填剤から選択することができる。 【0114】 本発明の目的のため、表面処理は、表面処理充填剤がその固有の予備処理充填特性を保存するためである。 【0115】 少なくとも1つの実施形態において、本発明の文脈において有用である表面処理充填剤は、これらの化合物の混合物で処理されていてもよく、及び/又はいくつかの表面処理を受けていてよい。 【0116】 本発明の文脈において有用である表面処理充填剤は、当業者に知られている表面処理技術に従って調製することができ、又は必要な形態において市販されていることがある。 【0117】 充填剤が処理される表面処理剤は、任意の公知の方法、例えば、溶媒の蒸発、分子と表面処理剤との間の化学反応、又は表面処理剤と充填剤との間の共有結合の生成によって充填剤上に沈着させることができる。 【0118】 したがって、表面処理は、例えば、表面処理剤と充填剤の表面との化学反応及び表面処理剤と充填剤との間の共有結合の生成によって行うことができる。この方法は、例えば、米国特許第4,578,266号に記載されている。 【0119】 表面処理剤は、該組成物中に、表面処理充填剤の総重量に対して0.1重量%から50重量%、例えば0.5重量%から30重量%、又は1重量%から10重量%の範囲である量で存在することができる。 【0120】 より小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤は、該組成物中に、組成物の総重量に対して20重量%から60重量%、例えば25重量%から50重量%、又は30重量%から40重量%の範囲である総量で存在することができる。 【0121】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤は、該組成物中に、組成物の総重量に対して5重量%から20重量%、例えば10重量%から15重量%、又は8重量%から12重量%の範囲である総量で存在することができる。 【0122】 より大きい平均粒径を有する第2非球状充填剤の量に対するより小さい平均粒径を有する第1非球状充填剤の量の比は、1以上、好ましくは2以上、及びより好ましくは3以上である。 【0123】 球状充填剤の量に対する2種の非球状充填剤の総量の比は、1以上、好ましくは2以上、及びより好ましくは3以上である。 【0124】 (追加の構成成分) 本明細書に開示されている組成物は、顔料及び真珠層から選択することができる少なくとも1種の粉体染料を含むことができる。 【0125】 本明細書で使用される場合、「顔料」という用語は、生理的媒体中で不溶性であり、組成物を着色することを意図されている、白色又は着色されている任意の形状の鉱物又は有機粒子を意味すると理解されるべきである。 【0126】 本明細書で使用される場合、「真珠層」という用語は、例えば、特定の軟体動物の貝殻の中で産生され、又は別法として合成される任意の形状の虹色粒子を意味すると理解されるべきである。 【0127】 顔料は、白色又は着色並びに鉱物及び/又は有機であってよい。挙げることができる鉱物顔料の中に、任意選択により表面処理されている二酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム、及び更に酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色又は赤色)又は酸化クロミウム、マンガンバイオレット、群青、クロム水和物及びフェリックブルー、並びにアルミニウム粉末又は銅粉末等の金属粉末がある。 【0128】 挙げることができる有機顔料の中に、カーボンブラック、D&C型の顔料、及びコチニールカルミン又はバリウム、ストロンチウム、カルシウム若しくはアルミニウムに基づくレーキがある。 【0129】 真珠層顔料は、チタン又はオキシ塩化ビスマスで被覆されているマイカ等の白色真珠層顔料、酸化鉄で被覆されているチタンマイカ、例えば、フェリックブルー又は酸化クロミウムで被覆されているチタンマイカ、上記に挙げた型の有機顔料で被覆されているチタンマイカ等の着色真珠層顔料、及び更にオキシ塩化ビスマスに基づく真珠層顔料から選択することができる。 【0130】 本明細書に開示されている組成物は、例えば、少なくとも1種の油を含むことができる少なくとも1種の脂肪相を含むことができる。脂肪相のこの型は、通常バインダーとも称され、例えば、粉体相のための分散媒体として働く。 【0131】 該油は、圧粉中のバインダーとして従来より使用されている油から選択することができる。例えば、該油は以下から選択することができる。 ミンク油、カメ油、大豆油、ブドウ種子油、ゴマ種子油、コーン油、ナタネ油、ひまわり油、綿実油、アボカド油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油及び落花生油; 流動パラフィン、スクアラン及び石油ゼリー等の炭化水素油; ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソデシル、ステアリン酸イソセチル、ラウリン酸ヘキシル、イソノナン酸イソノニル、2-エチルヘキシルパルミテート、2-ヘキシルデシルラウレート、2-オクチルデシルパルミテート、2-オクチルドデシルミリステート及びラクテート、2-ジエチルヘキシルスクシネート、マレイン酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセリル、及びトリイソステアリン酸ジグリセリル等の脂肪エステル; ポリメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、脂肪酸、脂肪アルコール又はポリオキシアルキレンで修飾されているポリシロキサン、フルオロシリコーン、及びペルフルオロ油等のシリコーン油; ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びイソステアリン酸等の高級脂肪酸; セタノール、ステアリルアルコール、及びオレイルアルコール等の高級脂肪アルコール;並びに 式(I)のポリメチルフルオロアルキルジメチルシロキサン 【0132】 【化5】 【0133】 (式中、nは、5から90、例えば30から80、及び更に、例えば50から80の範囲である整数であり、 mは、1から150、例えば1から80、及び更に、例えば1から40の範囲である整数であり、 aは、0から5の範囲である整数であり、 Rfは、1から8個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基から選択される)。 【0134】 式(I)の化合物の例として、X22-819、X22-820、X22-821及びX22-822の名称でShin-Etsu社によって販売されているものが挙げられる。 【0135】 本明細書に開示されている組成物は、組成物の総重量に対して1重量%から20重量%、及び更に、例えば2重量%から15重量%の範囲である量で該油を含むことができる。 【0136】 該組成物は、例えば、抗酸化剤、芳香剤、保存剤、中和剤、界面活性剤、ワックス、日焼け止め、ビタミン、モイスチャーライザー、セルフタンニング化合物及び抗しわ活性薬剤から選択することができる少なくとも1種の他の通常の化粧品成分を含むことができる。 【0137】 言うまでもなく、当業者は、本明細書に開示されている組成物の有利な特性が想定される添加物によって悪く影響されない、又は実質的に影響されないように、これ若しくはこれらの任意選択の追加の化合物、及び/又はそれらの量を入念に選択する。 【0138】 これらの追加又は任意選択の構成成分は、粉末状化粧品組成物中に、粉末状化粧品組成物の総重量に対して0.1重量%から15重量%、好ましくは1重量%から10重量%、より好ましくは3重量%から5重量%の範囲である量で存在することができる。 【0139】 一実施形態において、本明細書に開示されている組成物は無水組成物である。本明細書で使用される場合、「無水組成物」という用語は、水2重量%未満、例えば水0.5%未満を含む組成物、及び例えば水がない組成物を意味し、ここで、水は組成物の調製中に添加されないが、混合成分によってもたらされる残留水に相当する。 【0140】 本明細書に開示されている組成物は圧粉の形態である。本明細書で使用される場合、「圧粉」という用語は、手動又は機械プレスを使用して加圧された粉末を意味する。当業者は、いわゆる乾燥方法及び湿潤方法等周知の方法を使用することによって圧粉を調製するのが困難ではない。 【0141】 乾燥方法において、粉末状化粧品組成物の構成成分は、受皿等の容器に充填される。充填した後、それらは、構成成分を圧縮することで圧粉を調製するために電気モーター、水圧ラム又は空気圧シリンダ等によってもたらされる機械力によって加圧される。超音波は、必要であれば、JP-A-H05-70325に記載されている通り構成成分に添加することができる。 【0142】 湿潤方法において、他方、粉末状化粧品組成物の構成成分は、多量の溶媒中に一度分散されることでスラリーを作製する。次いで、スラリーは容器に充填される。充填した後、スラリーは機械力によって加圧される一方、溶媒は、スラリーを固化するために同時及び/又は順次に除去される。 【0143】 (実施例) 本発明を実施例によって、より詳細に記載するが、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。 【0144】 実施例1及び比較例1から4 表1に示されている以下の式を有する実施例1及び比較例1から4による粉末状化粧品組成物を調製する。表1における数字は、組成物の総重量に対する重量による百分率に基づく。 【0145】 【表1】 【0146】 実施例1並びに比較例1から4のそれぞれに関して、表1に示されている粉末構成成分を、Henschel混合装置内で約10分間混合した。表1に示されている非粉末構成成分(油、界面活性剤、UVフィルター及び保存料)を混合物に添加し、約15分間一緒に混合した。混合物をHammerミルによって粉砕した。粉砕粉末をメッシュで濾過することで、実施例1及び比較例1から4による粉末状化粧品組成物を形成した。 【0147】 [硬さ評価] 実施例1並びに比較例1から4のそれぞれの粉末状化粧品組成物13gを圧縮することで、80mmの直径、10kgf/cm^(2)(第1加圧)及び30kgf/cm^(2)(第2加圧)の圧力を有するシリンダ形態の圧粉である試料を形成する。 【0148】 上記の通りに得られた各試料の硬さを、アスカー硬度計Al型で測定する。結果を表2に示す。 【0149】 [コンパクト性評価] 実施例1並びに比較例1及び2による試料を、各試料を20cmの高さからセラミックタイル上に落下させる落下試験にかける。各試料のチッピングを決定し、粉末の損失を算出する。結果を表2に示す。 【0150】 【表2】 【0151】 [付着性の評価] 実施例1並びに比較例1及び2による試料を、25mmの長さ、5mm/秒の速度、スポンジによるという条件下で粉末100gを取り出す適用試験にかけ、皮膚モデルプレート(BioSkinT5)に、120mmの長さ、5mm/秒の速度で、Tribo Master TL-21を使用するという条件下で塗布する。 【0152】 皮膚モデルプレートのそれぞれの表面を観察する。 【0153】 実施例1は、比較例1及び2よりも良好な、皮膚モデルプレートへの粉末の付着性を示す。更に、皮膚モデルプレートの表面は、比較例1及び2と比較した場合、実施例1における粉末によって、より均等及び均一に覆われている。 【0154】 [官能評価] 実施例1並びに比較例3及び4による試料を、展延性に関して10人の試験者によって以下の基準下にて官能評価にかける。 【0155】 【表3】 【0156】 各試料のスコアの平均を、以下の基準に従って選別する。結果を表4に示す。 【0157】 非常に良好:5.0から4.5 良好:4.5未満から3.5 並み:3.5未満から2.5 乏しい:2.5未満から1.5 非常に乏しい:1.5未満 【0158】 【表4】 【0159】 表2に示されている通り、実施例1による試料の硬さは、比較例1から4による試料の硬さに近い。 【0160】 他方、実施例1は、比較例1から3と比較した場合、優れたコンパクト性を呈する。 【0161】 コンパクト性に関して、比較例4は実施例1より良好である。しかし、表3に示されている通り、比較例4は、より劣った展延性を呈する。 【0162】 付着性に関して、実施例1は、比較例1及び2と比較した場合、より良好な結果を呈する。 【0163】 すなわち、実施例1だけが、良好なコンパクト性、並びに付着性及び展延性等良好な化粧品特性を同時に呈することができることを、上記から理解することができる。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 組成物の総重量に対して10重量%以上の量の少なくとも1種の球状充填剤、及び 6μm未満の平均粒径並びに6μm以上及び10μm以下の平均粒径の、異なる平均粒径を有する2種のタルク を含み、 6μm未満の平均粒径を有するタルクは、シリコーン油で表面処理されており、 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、シリコーン/水素化油で表面処理されており、 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクは、組成物の総重量に対して5から20重量%の範囲で含まれており、 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比は、1以上であり、 球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比は、1以上である、 圧粉の形態の粉末状化粧品組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 6μm以上及び10μm以下の平均粒径を有するタルクの量に対する、6μm未満の平均粒径を有するタルクの量の比が2以上である、請求項1に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項4】 球状充填剤の量に対する2種のタルクの総量の比が2以上である、請求項1又は3に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】 球状充填剤が少なくとも1種のオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を含む、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項9】 球状充填剤の50重量%以上がオルガノポリシロキサンエラストマー粉末である、請求項8に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項10】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、 ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの架橋付加体、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンとの脱水素架橋縮合体、 少なくとも1個のヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシランとの架橋縮合体、及び オルガノポリシロキサンの架橋体 の粉末から選択される、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項11】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、それぞれケイ素に連結されている少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、ケイ素に連結されている少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの架橋付加体の粉末である、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項12】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、ジメチルビニルシロキシ末端基を含むジメチルポリシロキサンと、トリメチルシロキシ末端基を含むメチルハイドロジェンポリシロキサンとの反応生成物の粉末である、請求項8又は9に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項13】 オルガノポリシロキサンエラストマー粉末が、少なくとも1種のシリコーン樹脂で被覆されているエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末を含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項14】 シリコーン樹脂がシルセスキオキサン樹脂である、請求項13に記載の粉末状化粧品組成物。 【請求項15】 無水である、請求項1、3、4及び8から14のいずれか一項に記載の粉末状化粧品組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-01-25 |
出願番号 | 特願2012-528143(P2012-528143) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K) P 1 651・ 853- YAA (A61K) P 1 651・ 852- YAA (A61K) P 1 651・ 537- YAA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 池田 周士郎、菅野 智子 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
関 美祝 小川 慶子 |
登録日 | 2016-02-26 |
登録番号 | 特許第5889190号(P5889190) |
権利者 | ロレアル |
発明の名称 | 粉末状化粧品組成物 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 実広 信哉 |