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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1338133
異議申立番号 異議2017-700435  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-05-01 
確定日 2018-02-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6018845号発明「超微粉末含有カプセル剤の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6018845号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第6018845号(請求項の数は4。以下「本件特許」という。)は,平成24年9月3日にされた特許出願に係るものであって,平成28年10月7日にその特許権が設定登録されたものである。
その後,平成29年5月1日に特許異議申立人吉原朋重(以下,単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1?4に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがされ,同年7月3日付けで取消理由が通知され,同年9月1日に特許権者より意見書が提出され,同月19日付けで取消理由(決定の予告。以下「本件取消理由」という。)が通知された。

第2 本件発明及び本件取消理由について
1 本件特許の請求項1?4に係る発明は,願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を「本件発明1」などといい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。)。
「【請求項1】
超微粉末含有カプセル剤の製造方法において,
基材液としての中鎖脂肪酸トリグリセライドに,目的とする抽出エキスを濃縮・粉末化した粉末成分を含有させ,高圧方式での湿式粉砕に供して超微粉末化した,粘度が50,000cps以下のものをカプセル内容液として,この液をそのままあるいはその他の成分,安定化剤などを加えた後,カプセル封入して,1カプセル当たり,カプセル内容液中粉末成分の配合率を60質量%超のソフトカプセル剤とし,
前記湿式粉砕を,二段階に分けて供し,前記粉末成分の一部の量を含有させて一段階目の湿式粉砕に供した後に残りの量を含有させて二段階目の湿式粉砕に供することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載した超微粉末含有カプセル剤の製造方法において,
ジェット粉砕式で湿式粉砕を行うことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載した超微粉末含有カプセル剤の製造方法において,
1カプセル当たり,カプセル内容液中粉末成分の80質量%以上が0.15mm以下で,50質量%以上が0.01mm以下であることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した超微粉末含有カプセル剤の製造方法において,
1カプセル当たり,カプセル内容液中粉末成分が0.10mm以下となるよう整粒し,体内吸収が高められたことを特徴とする製造方法。」

2 また,本件取消理由の内容は,本決定末尾に掲記のとおりである。

第3 むすび
特許権者は,本件取消理由に対して,指定期間内に特許法120条の5第1項所定の意見書を提出するなどの応答を何らしていない。そして,本件取消理由を覆すに足りる根拠は見いだせず,本件特許の請求項1?4に係る特許は本件取消理由によって取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

以下,本件取消理由の内容を抜粋して掲記する。

「第3 平成29年7月3日付け取消理由通知の概要
取消理由は,要するに,本件発明1?4は,本件特許の出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべき,というものである。
・ 特開平9-155183号公報(異議申立書の証拠方法である甲1。以下,単に「甲1」という。)
・ 特開2012-148973号公報(以下「甲2」という。)

第4 当合議体の判断
当合議体は,以下述べるように,本件発明1?4は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない(いわゆる進歩性を有しない)から,これら発明に係る特許は取り消すべきと判断する。

1 引用発明
(1) 甲1の記載
甲1には,次の記載がある。(下線は本決定で付記。以下同じ。)
・「【特許請求の範囲】…
【請求項5】 同心多重ノズルから,複層の液滴を硬化液中に滴下することによりシームレスカプセルを製造する方法であって,
前記液滴の最内層液として,水および油に難溶な有効成分を油中に分散し,該分散液中の前記有効成分を湿式粉砕装置により平均粒子径20μm以下に粉砕した懸濁液を供給し,
前記液滴の最外層液として,皮膜形成物質の水溶液を供給することを特徴とするシームレスカプセルの製造方法。…
【請求項7】 請求項5または6記載のシームレスカプセルの製造方法であって,前記湿式粉砕装置が高圧ホモジナイザであることを特徴とするシームレスカプセルの製造方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,シームレスカプセルに関し,特に,有効成分を大量に含有することができるシームレスカプセルに適用して有効な技術に関するものである。」
・「【0013】本発明の目的は,水および油の何れにも難溶(不溶も含む)の有効成分を大量に含有するシームレスカプセルおよびその製造方法を提供することにある。」
・「【0016】本発明者らは,前記のような懸濁物の含有量増加に伴う外皮の破損の原因について研究した結果,油中に懸濁する有効成分の平均粒子径が破損発生に関係するという事実を見出した。そして,この平均粒子径が20μm以下であれば外皮の破損が生じることなく,より有効成分の含有量の多い製品を製造することができることがわかった。そして,有効成分を20μm以下の平均粒子径の懸濁物とすることにより,外皮中にも有効成分を含有させることができ,有効成分の含有量をさらに多くすることが可能であること,並びに,かかる懸濁物を製造するにはそれぞれの分散媒体中で有効成分を湿式粉砕することが好ましいことを発見し,本発明を完成した。
【0017】そこで,本発明のシームレスカプセルは,水および油に難溶な有効成分を平均粒子径20μm以下の粒子として油中に懸濁させた液を親水性外皮により内封したことを特徴とする。この場合,前記粒子が,有効成分を油中にて湿式粉砕して形成したものであることが好ましい。」
・「【0025】図1のシームレスカプセル製造装置においては,シームレスカプセルSCを形成するための内封液(最内層液)1は,湿式粉砕装置11により製造され内封液用タンク2の中に貯留される。また,内封液1を被覆する外層皮膜を形成する外皮形成用液(最外層液)3は,湿式粉砕装置12により製造され外皮形成用液用タンク4の中に貯留されている。そして,内封液1は,ポンプ5により内封液用タンク2から管路6を経て二重オリフィスを持つ多重ノズル7に圧送され,外皮形成用液3はポンプ8により外皮形成用液用タンク4から管路9を経て前記多重ノズル7に圧送される。
【0026】ここで,本実施の形態におけるシームレスカプセル製造装置にあっては,内封液1として,水および油の双方に難溶性(不溶を含む)の物質よりなる有効成分が平均粒子径20μm以下の懸濁物として含まれる懸濁液が用いられる。この場合,有効成分が水溶性であると,その成分が外皮に移行する恐れがあり,有効成分自体は難溶性であることを要する。
【0027】なお,本願中において「難溶」とは,油中に全量が溶解せず懸濁物となる程度であることを意味し,例えば,溶解度が10g/100ml未満,すなわち,日本薬局方で「やや溶けにくい」と表示される程度以下のものを指す。また,有効成分とは,製造しようとするカプセルの使用目的や作用,効能等を発揮せしめる成分を意味し,前述のように,水および油に難溶性の固体物質であれば良く,医薬,医薬部外品,化粧品,食品,農薬等に利用できる広範囲の物質が対象となる。
【0028】一方,内封液1として用いられる油としては,植物油,動物油などの脂肪酸のグリセリンエステルを主成分とする油脂類その他の脂肪酸エステルや,炭化水素,脂肪族アルコール,脂肪酸など,水にほぼ不溶で且つ常温で液体のものが挙げられる。なお,内封液1に対する有効成分の含有量は,その目的や懸濁液の粘度等の物性によって個々に異なるが,通常は1?60重量%の範囲とされる。」
・「【0031】この湿式粉砕装置11としては,高圧ホモジナイザ,コロイドミル,遊星型ボールミル,振動ボールミル,超音波ホモジナイザ等,処理により有効成分の平均粒子径が20μm以下となるものであればどのようなものでも良い。但し,粉砕性能や,装置の摩耗による不純物の混入等がないという点から,高圧ホモジナイザが好適である。なお,高圧ホモジナイザとは,対向する細い流路から,数百ないし数千気圧の圧力を加えた液を噴出させて互いに衝突させ,衝撃,剪断,キャビテーション等の相乗作用により粒子を粉砕,分散,懸濁(乳化)させる装置であり,ナノマイザー,マイクロフルイダイザー等の商品名にて市販されているものである。」
・「【0040】(実施例1)β-カロチン結晶75gをMCT(中鎖脂肪酸トリグリセライド)425gに加え,高速撹拌型の乳化・分散機「TKホモミクサー」(特殊機化工業株式会社製)を用いて,10, 000RPMにて5分間処理して予備分散を行った(以下,この処理後の液を「分散液」と称する)。
【0041】この分散液を,高圧ホモジナイザー「ナノマイザーLA33」(ナノマイザー株式会社製)を用いて100MPa(約1, 000気圧)の圧力にて3回処理して懸濁液を得た。この場合,β-カロチンの平均粒子径は分散液で23.1μm,懸濁液で8.3μmであった。
【0042】次に,シームレスカプセル製造装置「スフェレックス」(フロイント産業株式会社製)を用い,内封液として35℃の懸濁液を,外皮形成用液として70℃のゼラチン18重量%およびソルビトール2重量%の水溶液を用い,20個/秒の速度にて9℃に冷却したMCT硬化液中に滴下を行い4.0mm径,皮膜率20%のシームレスカプセルを製造した。この場合,カプセル化は順調に行われ,120mg/gのβ-カロチンを有する良好なシームレスカプセルを得ることができた。」
・「【図1】


・「【図2】


(2) 甲1に記載された発明
上記(1)での摘記,特に請求項5及び請求項7の記載から,甲1には次のとおりの発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「同心多重ノズルから,複層の液滴を硬化液中に滴下することによりシームレスカプセルを製造する方法であって,
前記液滴の最内層液として,水および油に難溶な有効成分を油中に分散し,該分散液中の前記有効成分を湿式粉砕装置(高圧ホモジナイザ)により平均粒子径20μm以下に粉砕した懸濁液を供給し,
前記液滴の最外層液として,皮膜形成物質の水溶液を供給するシームレスカプセルの製造方法。」

2 本件発明1について(甲1発明との対比,判断)
(1) 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明を対比すると,甲1発明の「有効成分」を粉砕したものが本件発明1の超微粉末に相当する。そうすると,両発明の一致点,相違点はそれぞれ次のとおりと認めることができる。
・ 一致点
超微粉末含有カプセル剤の製造方法において,基材液に粉末成分を含有させ,高圧方式での湿式粉砕に供して超微粉末化したものをカプセル内容液として,この液をそのままあるいはその他の成分,安定化剤などを加えた後カプセル封入してカプセル剤とする製造方法。
・ 相違点1
超微粉末(甲1発明の「有効成分」を粉砕したものに相当。)を含有するカプセルについて,本件発明1は「ソフトカプセル(剤)」であると特定するのに対し,甲1発明は「シームレスカプセル」である点。
・ 相違点2
基材液(油)について,本件発明1は「中鎖脂肪酸トリグリセライド」であると特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
・ 相違点3
基材液に含有させ,高圧方式での湿式粉砕に供される粉末成分について,本件発明1は「目的とする抽出エキスを濃縮・粉末化」したものと特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
・ 相違点4
カプセル内容液(最内層液)について,本件発明1は「粘度が50,000cps以下のもの」であり,「1カプセル当たり,カプセル内容液中粉末成分の配合率を60質量%超」と特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
・ 相違点5
湿式粉砕について,本件発明1は「二段階に分けて供し,前記粉末成分の一部の量を含有させて一段階目の湿式粉砕に供した後に残りの量を含有させて二段階目の湿式粉砕に供する」と特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
(2) 各相違点についての検討
ア 相違点1について
(ア) ソフトカプセルの製法について,例えばインターネットHP(http://www.fujicapsule.com/softcapsule/)には次の記載がある。
「ソフトカプセルは,皮膜の形成と,皮膜内部に内容物を充填する工程を同時に行うことにより製造されます。その製造原理は2つ。
1つ目は,ロータリー式製法で,一対の円筒形の金型の間に,2枚のフィルムシートを重ねるように挟み込み,2枚のシートの間に薬液等を注入し,金型での圧切・圧着を同時に行う,「打抜き法」ともいわれる方法です。
2つ目は,シームレス式で,同心二重ノズルの内側から薬液等を,外側からはゲル化剤などを含む皮膜用液を,それぞれ滴下し,界面張力を用いて2重構造の球体であるシームレスカプセルを製する「滴下法」ともいわれる方法です。」
(イ) このように,「ソフトカプセル(剤)」というとき,当業者は,打抜き法と呼ばれる方法(本件明細書の【0017】に記載された製造方法と同義と解される。)によって製造されたカプセル剤,あるいは,滴下法と呼ばれる方法(甲1発明でいうところのシームレスカプセルの製造方法と同義と解される。)によって製造されたカプセル剤を指すと理解するといえるのであるから,本件発明1の「ソフトカプセル(剤)」は,このような2つの方法で製造されたカプセル剤のいずれも包含すると解するのが相当である。
そうすると,上記相違点1は,実質的な相違点とはならない。
(ウ) 仮に,相違点1が実質的な相違点であるといえるとしても,水および油に難溶な有効成分を平均粒子径20μm以下の粒子として油中に懸濁させた液を親水性の外皮により内封してなるカプセル剤を製造するにあたり,滴下法に代え,打抜き法を採用すること(いずれの方法とも,例を挙げるまでもなく本件出願前に周知の技術である。)は,当業者であれば想到容易である。
イ 相違点2について
甲1は,例えば実施例1に係る記載において,甲1発明の「油」の例として,中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)を挙げる。さすれば,甲1発明における「油」として中鎖脂肪酸トリグリセライドを採用する程度のことに格別困難な点は見いだせない。
ウ 相違点3について
甲1発明の水および油に難溶な有効成分について,甲1の【0027】には,「水および油に難溶性の固体物質であれば良く,医薬,医薬部外品…等に利用できる広範囲の物質」であるとの記載がある。
そして,超微粉末含有カプセル剤の製造方法に関する技術分野において,医薬,医薬部外品に利用できる有効成分として抽出エキスを濃縮・粉末化したものは,例えば特開2006-265219号公報(【0008】?【0009】。甲5)や,特開2010-43036号公報(【0008】?【0011】。甲6)にも開示があるとおり,本件の出願前に普通に知られているところである。
とすると,甲1発明の「水および油に難溶な有効成分」として,抽出エキスを濃縮・粉末化したものを用いることは,当業者であれば想到容易であるといえる。
エ 相違点4について
(ア) 本件の明細書を参酌しても,本件発明1のカプセル内容液について,その粘度を「50,000cps以下のもの」とすることに,格別の技術的意義は見いだせない。甲1発明の最内層液(カプセル内容液)において,その粘度を「50,000cps以下のもの」とする程度のことは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
(イ) また,1カプセル当たりの粉末成分の配合率について,甲1発明において「60質量%超」との構成を想到することも,同様に,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないといえる。本件発明1は,「抽出エキス」について,その成分や性状を具体的に特定するものではないところ,本件発明1の「60質量%超」との構成は,甲1発明において「水および油に難溶な有効成分」を設定するに際し,1カプセル当たりの粉末成分の配合率が「60質量%超」となる場合のものを単に特定しているにすぎない。「抽出エキス」の成分や性状(例えば,水あるいは油に対する溶解度)を具体的に特定していない本件発明1において,1カプセル当たりの粉末成分の配合率が「60質量%超」であることが格別顕著であるということはできない。
そして,甲1の【0028】には,上記配合率について,「その目的や懸濁液の粘度等の物性によって個々に異なる」との記載があることからすれば,同じ段落に「通常は1?60重量%の範囲とされる」との記載があるからといって,甲1発明において「60質量%超」の値を採ることが阻害されることにはならない。
オ 相違点5について
本件の出願前に頒布された刊行物である甲2には,特に請求項1,請求項6及び【0027】の記載からみて,凝集体金属酸化物粒子を2回に分けて水に添加し高せん断ミキサーで粉砕すること,このような添加・粉砕を2回に分ける目的は,分散体の固体濃度が増大すると,分散体の粘度が増大して粉砕の際に存在するせん断エネルギーも増大するため,分散液に対し凝集体金属酸化物粒子を徐々に増やして添加することで,最終的により高い固体濃度を得るためであることといった技術思想が開示されているといえる。
そして,甲1発明において用いられるような湿式粉砕装置(高圧ホモジナイザ)により粉末成分を粉砕して懸濁液を得る技術において,粘度が高くなり過ぎないように考慮しつつ粉末を粉砕するように構成することは自明の課題であるといえるところ,このような課題の解決手段として甲2に開示されているような技術を採用することは,当業者であれば想到容易である。
カ 特許権者の主張について
(ア) 上記相違点3及び4に関連し,特許権者は,本件発明1の「抽出エキス」の粉末成分は水溶性であるところ,甲1発明において,「水および油に難溶な有効成分」としては水溶性のものの使用は積極的に除外されていると解されるから,甲1発明の「水および油に難溶な有効成分」に代えて「抽出エキスを濃縮・粉末化」したものを使用することには,甲1の開示に反するといった阻害事由がある旨主張する(意見書2?4頁)。
(イ) しかし,甲1発明の「水および油に難溶な有効成分」でいうところの「難溶」について,甲1には「本願中において「難溶」とは,油中に全量が溶解せず懸濁物となる程度であることを意味し,例えば,溶解度が10g/100ml未満,すなわち,日本薬局方で「やや溶けにくい」と表示される程度以下のものを指す」(【0027】)との記載があり,甲1発明の「有効成分」は必ずしも水あるいは油に不溶のものに限定されるものではない。そうすると,甲1発明の「有効成分」が水に殆ど溶解しないものに限定されるとする特許権者の主張は,その前提において採用できない。
(3) 小括
以上のとおり,本件発明1は,本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲1)に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。

3 本件発明2について
(1) 本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2は,本件発明1について,その特定事項である「高圧方式での湿式粉砕」を「ジェット粉砕式で湿式粉砕」に限定するものである。そうすると,本件発明2と甲1発明とを対比したとき,両発明の一致点は本件発明1の場合と同じであり(上記2(1)),相違点は本件発明1の場合と同じ相違点(相違点1?5)のほか,次の相違点6を認めることができる。
・ 相違点6
湿式粉砕の方式について,本件発明2は「ジェット粉砕式」での湿式粉砕であるのに対し,甲1発明は「湿式粉砕装置(高圧ホモジナイザ)」によるものである点。
(2) 相違点についての検討
甲1発明の「湿式粉砕装置(高圧ホモジナイザ)」について,甲1には,「…高圧ホモジナイザとは,対向する細い流路から,数百ないし数千気圧の圧力を加えた液を噴出させて互いに衝突させ,衝撃,剪断,キャビテーション等の相乗作用により粒子を粉砕,分散,懸濁(乳化)させる装置であり,ナノマイザー…等の商品名にて市販されているものである…」(【0031】)との記載があり,その実施例(【0041】)でも「高圧ホモジナイザー「ナノマイザーLA33」(ナノマイザー株式会社製)」を用いた実施の態様が開示されている。他方で,本件発明2の「ジェット粉砕式」について,本件の明細書の【0014】には「ナノマイザー式」の例示がある。
とすると,本件発明2の「ジェット粉砕式」と甲1発明の「湿式粉砕装置(高圧ホモジナイザ)」とは実質的に同一であり,相違点6は実質的な相違点であるとはいえない。
(3) 小括
以上のとおり,本件発明2は,本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲1)に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。

4 本件発明3?4について
(1) 甲1発明との対比
一致点は本件発明1の場合と同じであり,相違点は本件発明1の場合と同じ相違点のほか,次の相違点を認めることができる。
・ 本件発明3との相違点(相違点7)
カプセル内容液中粉末成分について,本件発明3は「80質量%以上が0.15mm以下で,50質量%以上が0.01mm以下である」と特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
・ 本件発明4との相違点(相違点8)
カプセル内容液中粉末成分について,本件発明4は「0.10mm以下となるよう整粒し,体内吸収が高められた」と特定するのに対し,甲1発明はそのような特定事項を有しない点。
(2) 相違点についての検討
相違点7及び8を併せて検討すると,甲1発明において,最内層液(カプセル内容液)中の粉砕された有効成分(粉末成分)の粒径を,本件発明3あるいは同4で特定するような条件のものとすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないといえる。
あるいは,甲1の実施例1に係る懸濁液中のβ-カロチンは本件発明3及び4で特定する条件を充足するといえるところ,甲1発明において,その粒径を上記実施例1で開示する程度のものとすること,すなわち本件発明3及び4と特定するものとすることは,当業者が容易になし得ることであるともいえる。
(3) 小括
以上のとおり,本件発明3?4はいずれも,本件特許の出願前に頒布された刊行物(甲1)に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない発明である。

5 付言
本件の取消理由通知(決定の予告)を構成するものではないが,当合議体は,本件特許は法36条4項1号(いわゆる実施可能要件)及び同6項1号(いわゆるサポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものとも考えているところ,以下参考までに付言する。(なお,付言は,本件発明1についてのみ触れる。)
(1) サポート要件
本件発明1は「抽出エキスを濃縮・粉末化した粉末成分」について,1カプセル当たり,「カプセル内容液中粉末成分の配合率を60質量%超」とすることを特定事項とするものである。
ところで,「抽出エキスを濃縮・粉末化した粉末成分」として本件明細書にはいくつかの例が挙げられているところ,実施例7(【0032】?【0034】)の記載によれば,粉末成分の種類によっては,最大配合率が「60質量%超」とはならないものが存在することが認められる(例えば,イチョウ葉エキス粉末。)。
そして,どのような抽出エキスを濃縮・粉末化した粉末成分を用いた場合に配合率を60質量%超とすることができるかについて,本件明細書には何ら記載されておらず,本件発明1は,当業者が本件明細書において課題が解決できることを認識できるように記載された範囲を超えるものであって,サポート要件に適合するものということはできない。
(2) 実施可能要件
上記(1)で述べるところに関連し,本件明細書には,実施例7に各粉末成分の最大配合率が例示されているところ,その値は90質量%のもの(ブルーベリーエキス粉末)が最大である。
他方で,本件発明1は90質量%を超える範囲をも特定するものであるところ,本件明細書は,当業者が90質量%を超える範囲を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
よって,本件明細書は,本件発明1について,実施可能要件に適合するものということはできない。 」
 
異議決定日 2017-12-21 
出願番号 特願2012-192811(P2012-192811)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A61K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 須藤 康洋
長谷川 茜
登録日 2016-10-07 
登録番号 特許第6018845号(P6018845)
権利者 三生医薬株式会社
発明の名称 超微粉末含有カプセル剤の製造方法  
代理人 吉川 晃司  
代理人 吉川 明子  
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