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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C22B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C22B
管理番号 1338150
異議申立番号 異議2017-701129  
総通号数 220 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-04-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-30 
確定日 2018-03-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6135381号発明「転炉ダストの回収設備」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6135381号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続きの経緯
特許第6135381号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年 8月 6日に特許出願され、平成29年 5月12日にその特許権の設定登録がされ、平成29年 5月31日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年11月30日に、特許異議申立人藤井正弘(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6135381号の請求項1?7の特許に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明7」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
転炉から排出された排気ガスに含まれる転炉ダストを集塵する電気集塵機と、
前記電気集塵機から排出された前記転炉ダストを回収する回収装置と、を備え、
前記電気集塵機は、前記排気ガスの流動方向に複数区に区分けされており、各区で集塵された前記転炉ダストを個別に排出するよう構成されており、
前記回収装置は、複数の回収部を備え、前記区ごとに排出された前記転炉ダストを該複数の回収部のいずれかに選択的に装入するよう構成されており、
前記電気集塵機は、
前記区ごとに設けられた複数のホッパと、
前記ホッパの底部に設けられ、集塵された前記転炉ダストを排出する排出口と、を備える
ことを特徴とする転炉ダストの回収設備。
【請求項2】
転炉から排出された排気ガスに含まれる転炉ダストを集塵する電気集塵機と、
前記電気集塵機から排出された前記転炉ダストを回収する回収装置と、を備え、
前記電気集塵機は、前記排気ガスの流動方向に複数区に区分けされており、各区で集塵された前記転炉ダストを個別に排出するよう構成されており、
前記回収装置は、複数の回収部を備え、前記区ごとに排出された前記転炉ダストを該複数の回収部のいずれかに選択的に装入するよう構成されており、
前記電気集塵機は、
集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する機内搬送手段と、
前記機内搬送手段の前記区ごとの搬送方向終端位置に設けられ、該機内搬送手段から前記転炉ダストを排出する複数の排出口と、を備え、
前記回収装置は、
前記排出口ごとに設けられた複数の切替搬送手段を備え、
前記切替搬送手段は、中間部が前記排出口に接続され、両端が前記複数の回収部のうちの2つに接続され、正逆方向に搬送可能である
ことを特徴とする転炉ダストの回収設備。
【請求項3】
転炉から排出された排気ガスに含まれる転炉ダストを集塵する電気集塵機と、
前記電気集塵機から排出された前記転炉ダストを回収する回収装置と、を備え、
前記電気集塵機は、前記排気ガスの流動方向に複数区に区分けされており、各区で集塵された前記転炉ダストを個別に排出するよう構成されており、
前記回収装置は、複数の回収部を備え、前記区ごとに排出された前記転炉ダストを該複数の回収部のいずれかに選択的に装入するよう構成されており、
前記電気集塵機は、
集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する機内搬送手段と、
前記機内搬送手段の前記区ごとの搬送方向終端位置に設けられ、該機内搬送手段から前記転炉ダストを排出する複数の排出口と、を備え、
前記回収装置は、
前記排出口ごとに設けられた複数の二股シュートを備え、
前記二股シュートは、前記排出口と前記複数の回収部のうちの2つとを接続し、前記転炉ダストの排出先を切り替える切替ダンパを備える
ことを特徴とする転炉ダストの回収設備。
【請求項4】
転炉から排出された排気ガスに含まれる転炉ダストを集塵する電気集塵機と、
前記電気集塵機から排出された前記転炉ダストを回収する回収装置と、を備え、
前記電気集塵機は、前記排気ガスの流動方向に複数区に区分けされており、各区で集塵された前記転炉ダストを個別に排出するよう構成されており、
前記回収装置は、複数の回収部を備え、前記区ごとに排出された前記転炉ダストを該複数の回収部のいずれかに選択的に装入するよう構成されており、
前記電気集塵機は、
前記区ごとに設けられた複数のホッパと、
前記ホッパの底部に設けられ、集塵された前記転炉ダストを前記排気ガスの流動方向に沿って搬送する機内搬送手段と、
前記機内搬送手段の終端に設けられた排出口と、を備える
ことを特徴とする転炉ダストの回収設備。
【請求項5】
前記回収装置は、
前記排出口ごとに設けられた複数の切替搬送手段を備え、
前記切替搬送手段は、中間部が前記排出口に接続され、両端が前記複数の回収部のうちの2つに接続され、正逆方向に搬送可能である
ことを特徴とする請求項1または4記載の転炉ダストの回収設備。
【請求項6】
前記回収装置は、
前記排出口ごとに設けられた複数の二股シュートを備え、
前記二股シュートは、前記排出口と前記複数の回収部のうちの2つとを接続し、前記転炉ダストの排出先を切り替える切替ダンパを備える
ことを特徴とする請求項1または4記載の転炉ダストの回収設備。
【請求項7】
前記機内搬送手段は、正逆方向に搬送可能であり、両端に排出口が設けられており、
前記排出口は、前記複数の回収部のいずれかと接続されている
ことを特徴とする請求項4記載の転炉ダストの回収設備。」

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証?甲第7号証を提出し、以下の理由により、請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由1
請求項1、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(2)申立理由2
請求項1?7に係る発明は、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2000-189847号公報
甲第2号証:特開2002-253988号公報
甲第3号証:特開平8-187450号公報
甲第4号証:特開平9-103706号公報
甲第5号証:特開平11-104456号公報
甲第6号証:李昇憲ら、「電気集じん機により段別採取したフライアッシュの鉱物組成の変化」、Journal of the Ceramic Society of Japan,111[1]2003年、pp.11-15、写し及び抄訳文
甲第7号証:「電気集塵装置」、松本俊次著、日刊工業新聞社、昭和50年11月20日初版、第4章 電気集塵装置の構造と構成要素、pp.43-45、表紙及び奥付、写し
以下、それぞれ、「甲1」?「甲7」という。

4 各証拠の記載事項について
(1)
ア 甲1には、以下の記載がある。(なお、下線は当審が付与した。以下同様。)
(ア)「【請求項1】 電気集塵機の集塵部を含塵ガスの流動方向に沿って複数ゾーンに区画し、このゾーン毎に捕捉・収容された集塵ダストを、ガス流方向に従った複数系統に区分して排出することを特徴とする非鉄金属製錬における集塵ダスト排出方法。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、銅、ニッケルなどの非鉄金属の製錬において、マットから粗金属を製造する転炉と呼ばれる回転炉から排出される含塵ガスに含まれているダストを電気集塵機で集塵して排出する非鉄金属製錬における集塵ダストの排出方法およびその装置に関する。」

(ウ)「【0003】一方、転炉から発生する排ガス(含塵ガス)に含まれているダストは、通常コットレルと呼ばれる電気集塵機によって集められ、系外に排出される。図2は煙道のコットレル付近を水平方向に切った断面図、図3は同じく側面図である。各コットレルは、含塵ガスの通過する高さに電気集塵機を有する集塵部1が設けられ、その下部には捕捉した集塵ダストを集めるホッパ2がある。さらにホッパ2の底部に配置されたスクリューコンベヤ3により、ホッパ内の集塵ダストをスクリューコンベヤ3の終端付近の取り出し口4から取り出し、取り出された集塵ダストははロータリーバルブ5を経てチェーンコンベヤ6によりダスト処理設備等へ搬出される。
【0004】コットレルは通常その集塵能力によって煙道を平行する複数の流路に分割してそれぞれの流路に設置され、さらにそれぞれの集塵部1およびホッパ2は含塵ガスの流動方向に沿って複数のゾーン、例えば3室に別れている。以下これを上流側から第1室、第2室、第3室と呼び、区別する場合、例えばホッパについては第1室のものを2a、第2室のものを2b、第3室のものを2cとする。ホッパ2の底部に設けられているスクリューコンベヤ3については取り出し口4はそれぞれ1か所であるから、3室の集塵ダストは混合され、同じ排出系統に集められて処理を受けることになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで本発明者らは、転炉の電気集塵機の各室毎に集塵ダストを採集してその成分を調査したところ、銅、金、銀などの有価金属と、鉛、亜鉛、砒素、アンチモン、ビスマス等の不純物とではその分布に相違があり、ガス流にして上流側である第1室の集塵ダストがもっとも有価金属を多く含み、不純物が少ないのに対し、有害な不純物である鉛、亜鉛、砒素、アンチモン、ビスマス等は下流側である第3室にもっとも多く含まれるという知見が得られた。
【0006】しかしこれまで各室の集塵ダストは混合されて全量が亜鉛製錬所等のダスト処理設備に送られていたため送鉱量が多く、輸送コストおよび処理コストが大きいという問題点を有していた。本発明は、従来混合されてしまっていた有害成分の少ない第1室の集塵ダストを別系統にして取り出し、製錬炉に回収することによりダスト処理のための送鉱量を減少させるとともに有価金属を有効に回収することのできる電気集塵機における集塵ダストの排出方法およびその設備を実現することを目的とする。」

(エ)「【0012】図1は本発明の電気集塵機における集塵ダストの排出設備の要部を示す部分正面図で、スクリューコンベヤ3の搬送方向を矢印で示している。スクリューコンベヤ3の終端部にある取り出し口4、ロータリーバルブ5およびチェーンコンベヤ6は図2、図3に示した従来のものと同様であるが、スクリューコンベヤ3の上流寄り中間部、すなわち第3室のホッパ2cの出口付近に設けた取り出し口4aと、これに接続するロータリーバルブ5a、チェーンコンベヤ6aは本発明により新規につけ加えたものである。
【0013】この結果、有価金属の品位が低く、有害不純物の多い第3室の集塵ダストはほぼ全量がこの新たな取り出し口4aから排出され、ロータリーバルブ5aを経てチェーンコンベヤ6aの系統でダスト処理系統に搬出されるが、従来集塵ダストの全量をダスト処理系統に搬出していたのに比べれば送鉱量が大幅に減少する。ビスマスを例にとると、従来一括して処理していた集塵ダストが毎月50tあったとして、ビスマスはその1.5 %であるから月当たり 750kgのビスマスを処理していたわけであるが、本発明により第3室の集塵ダストのみを処理することで送鉱量が25tに半減し、しかもその2.8 %に当たる 700kgのビスマスを処理することができた。つまり有害成分の処理量は変わらず、送鉱量は半減する。他の成分についても同様である。
【0014】一方、第2室、第1室の集塵ダストはスクリューコンベヤ3の終端部にある取り出し口4、ロータリーバルブ5およびチェーンコンベヤ6の別系統で系外に排出される。例えば、自溶炉などの製錬炉が近くに存在する場合には、有価金属の品位の高い第1室、第2室の集塵ダストはチェーンコンベヤ6から直接、あるいは間接的に、こうした製錬炉に戻してやることができ、歩留り向上に極めて有効である。
【0015】なお、ロータリーバルブ5aを停止させれば、従来と同様に集塵ダストの全量を一括して処理することもできる。さらに新たな取り出し口をホッパ第2室2bの出口付近にも設けることにより、第2室の集塵ダストを第1室のものと別個に取り出すことも可能である。」

(オ)




イ 以上の甲1の記載を総合すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「転炉から排出される含塵ガスに含まれているダストを、電気集塵機で集塵し、前記電気集塵機の集塵部を含塵ガスの流動方向に沿って複数ゾーンに区画し、このゾーン毎に捕捉・収容されたダストを、ガス流方向に従った複数系統に区分して回収する、ダストの回収方法及び装置であって、
電気集塵機は、含塵ガスの流動方向に沿ってダストを搬送するスクリューコンベアと、当該スクリューコンベアの中間部および終端部に複数の取り出し口とを備える、
ダストの回収方法及び装置。」

(2)
ア 甲2には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 流入するガスの流れ方向に延びると共に互いに対面するように配置された集塵極と、この集塵極間に配置された放電極と、を具備し、前記集塵極及び前記放電極より成る電極組が、前記ガスの流れ方向に沿って複数組並設されると共に、前記集塵極を槌打する槌打装置が前記電極組に対して各々設置されて成る電気集塵装置において、
ガス流方向最後部の電極組の放電極下端より上方に位置している放電極を有する電極組が、前記ガス流方向最後部の電極組よりもガス流方向上流側に設けられていることを特徴とする電気集塵装置。」

(イ)「【0031】このため、1組目の電極組S1に進入したダストは、帯電されて自然沈降しながら大部分が集塵極11で捕集され、一方、電極組S1の下方に進入し帯電されないダスト及び電極組S1で帯電されたが集塵極11で捕集されなかったダストは、当該ダストの自然沈降により、ホッパ25で回収される。また、2組目の電極組S2でも同様に、電極組S2の下方に進入し帯電されないダスト及び電極組S1や電極組S2で帯電されたが集塵極11,12で捕集されなかったダストは、当該ダストの自然沈降により、ホッパ26で回収される。
【0032】すなわち、ガス流方向最後部の電極組(3組目の電極組)S3以外の1組目、2組目の電極組S1,S2では、無駄な帯電領域をカットすることで、帯電しなければ自然沈降していくダストが、その自然沈降にまかせてホッパ25,26で回収されるため、集塵極11,12のダスト堆積量分布の均一性が向上されている。」

(ウ)




(3)
ア 甲3には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気集塵装置に関する。」

(イ)「【実施例】図1を参照して本発明の実施例による電気集塵装置全体の概略について説明する。
【0024】図1(A)は電気集塵装置の平面断面図、図1(B)は側面断面図を示す。集塵容器16の入口ダクト9から排ガスが導入されて集塵され、出口ダクト10から排出される。集塵容器内の入口ダクト側には整流板7が設けられている。入口ダクト9から導入された排ガスは整流板7によって整流され、集塵容器16内にほぼ一様に流れる。
【0025】8枚の集塵極1が所定の間隔で平行平板状に重ねられ、集塵極群が構成されている。このように構成された集塵極群が、集塵容器16内の上流、中流、下流部に、各集塵極1の表面がガス流の方向に平行な向きになるように配置されている。上流、中流、下流部をそれぞれ第1、第2、第3セクションと呼ぶ。また、集塵極1に挟まれた空間を集塵空間を呼ぶ。このように、各セクション毎に集塵極に挟まれた7つのガス流路が形成されている。第3セクションの各集塵極1は、それぞれガス流の上流側部分1aと下流側部分1bに分割されている。集塵極を分割することによる効果は後述する。
【0026】各集塵空間の中央部に、ガス流の向きにほぼ直交するように棒状の放電極2が配置されている。各放電極2の間隔は、集塵極1の間隔と同等かあるいは若干狭い程度が好ましい。
【0027】放電極2は、各セクション毎に導線で接続されており、この導線は、放電極2と集塵容器16との絶縁を保つため、碍子室5の中に配置された碍子6を介して集塵容器16の外に引き出されている。各セクションから引き出された導線は、それぞれセクション毎に準備された直流電源4に接続されている。
【0028】集塵極1の下方には、ダストを回収するためのホッパ8が設けられている。第3セクションのガス流の下流側には、ガス流の方向に直交する向きに移動式カーテン11が配置されている。移動式カーテンの縦方向の長さは、図1(B)に示すように集塵極1の縦方向の長さよりも長くされており、その下端は、ホッパ8から舞い上がるダストがガス流に乗って運ばれないように容器内面にほぼ接している。」

(ウ)




(4)
ア 甲4には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気集塵装置に関し、特に電気集塵装置の排ガス入口フード出口即ち電気集塵部入口に排ガス整流板が設置されている形式の電気集塵装置に関する。」

(イ)「【0007】かくして、入口フード2の入口に設置された案内羽根6によりフード2内に導入された排ガスは、フード2内に前後に設置された整流板3´、3により整流されるとともに、これら整流板の近傍に設置されている放電極11、11´と整流板の間でコロナ放電現象が起こり、整流板3、3´が集塵極となり排ガス中のダストを予備的に電気集塵し、次いで電気集塵部4、4´で排ガス中のダストを集塵極に付着させて図示しない公知の槌打装置で集塵極10、10・・を槌打してダストをホッパ15、15´内へ払落とし排ガスは出口フード2´から清浄ガスとなり取出される。」

(ウ)




(5)
ア 甲5には、以下の記載がある。
(ア)「【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図4に示す排ガス処理装置は、ボイラ出口に脱塩用の石灰噴霧塔が設けられ、排ガスはこの噴霧塔で所定の塩濃度迄下げられ、噴霧された石灰は電気集じん器又はバグフイルタによりアッシュ(灰)と共に捕集される。」

(イ)




(6)
ア 甲6には、以下の記載がある。
(ア)




(イ)




(7)
ア 甲7には、以下の記載がある。
(ア)




(8)
以上の甲2?甲7の記載を総合すると、甲2?甲7には、以下の事項が記載されていると認められる。
「電気集塵機において、排気ガスの流動方向に複数区に区分けされた区ごとに複数のホッパを備え、各区で集塵されたダストを個別に排出する電気集塵機」

5 判断
(1)本件発明1?本件発明7は、いずれも、「回収装置は、複数の回収部を備え、前記区ごとに排出された前記転炉ダストを該複数の回収部のいずれかに選択的に装入するよう構成されており」との構成を備える。

(2)当該構成における「選択的に装入」について、本件特許明細書全体、特に【0027】?【0036】、【0042】、【0045】?【0048】、【0051】?【0052】を参酌すると、「複数の回収部」に対して、「区ごとに排出された」「転炉ダスト」が、「区ごと」と「回収部」とが1対1に対応する関係ではなく、「区ごとに排出された」「転炉ダスト」が、「複数の回収部」のうちの、いずれかの「回収部」に「選択的に」「装入」されることを意味している、つまり、1つの「区」から「排出された」「転炉ダスト」は、例えば「回収部」が2つの場合には、2つの「回収部」のいずれにも、「選択的に」「装入」され得る構成であると解するのが相当である。

(3)本件発明1?本件発明7と、甲1?甲7に記載された発明とを対比すると、甲1?甲7のいずれにも、上記(1)、(2)の「回収装置は、複数の回収部を備え、前記区ごとに排出された前記転炉ダストを該複数の回収部のいずれかに選択的に装入するよう構成されており」との構成について、記載も示唆もされていない。
また、この点が技術常識であるというに足る証拠もない。
したがって、本件発明1?本件発明7は、甲1?甲7に記載された技術的事項から、当業者が容易になし得るものではない。

(4)申立人は、甲2?甲7に多数記載されるように、排気ガスの流動方向に複数区に区分けされたその区の下毎にホッパを設け、区ごとに排出された転炉ダストを、それらホッパの底部からそれぞれ排出させる構成は、本件出願前から多数文献が存在するように、当業者間の周知慣用技術である旨主張している(特許異議申立書第17頁第1行?第28行)。
しかしながら、本件発明1?本件発明7の「選択的に装入」は、上記(2)のとおり解するのが相当であり、上記(3)のとおり、甲1?甲7には、当該構成について記載も示唆もされておらず、これを技術常識というに足る証拠もないから、上記申立人の主張は採用できない。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?本件発明7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?本件発明7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-02-22 
出願番号 特願2013-163430(P2013-163430)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C22B)
P 1 651・ 113- Y (C22B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 英夫  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 金 公彦
結城 佐織
登録日 2017-05-12 
登録番号 特許第6135381号(P6135381)
権利者 住友金属鉱山株式会社
発明の名称 転炉ダストの回収設備  

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