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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1338489 |
審判番号 | 不服2017-6316 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-01 |
確定日 | 2018-04-03 |
事件の表示 | 特願2014-216106「相変化メモリセル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-133476、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年(2014年)10月23日(パリ条約による優先権主張 2014年1月15日(以下、「本願優先日」という。),中華人民共和国)を出願日とする出願であって、同年10月23日付けで審査請求がなされ、平成27年11月13日付けで拒絶理由通知が通知され、平成28年4月4日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年7月29日付けで拒絶理由通知が通知され、同年9月1日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたが、平成29年2月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたものである。 これに対して、平成29年5月1日付けで審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において同年10月31日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月27日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正(以下、「本手続補正」という。)がなされたものである。 第2 原査定の理由の概要 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等一覧> 1.特開2013-008947号公報 2.国際公開第2005/038080号 3.特開2007-087774号公報 4.特開2008-261798号公報 第3 当審拒絶理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <引用文献等一覧> 引用例1:特開2013-8947号公報 引用例A:特開2010-257976号公報 (なお、引用文献番号は原査定に合わせた。) 第4 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりの発明である。 「少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤと、少なくとも一つの相変化層と、第一電極と、第二電極と、第三電極と、を含む相変化メモリセルであって、 前記第一電極と、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤと、前記第二電極とは、書き込み回路を形成し、 前記第一電極、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤ及び前記第二電極は、相互に直列接続され、 前記書き込み回路は、前記相変化メモリセルにデータを書き込み、 前記第三電極と、少なくとも一つの前記相変化層と、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤと、前記第一電極或いは前記第二電極とは、読み出し回路を形成し、 前記第三電極と、少なくとも一つの前記相変化層と、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤと、前記第一電極或いは前記第二電極とは、相互に直列接続され、 前記読み出し回路は、前記相変化メモリセルからデータを読み出し、 少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは複数のリング構造体である湾曲部を有し、 少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは、順に接続された第一部、前記湾曲部及び第二部から形成され、 前記第一部は、前記第二部と間隔をあけて平行に設置され、 前記第一電極は少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第一部と電気的に接続され、前記第二電極を少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第二部と電気的に接続され、 前記第三電極は、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部と間隔をあけて設置され、 少なくとも一部の前記相変化層及び少なくとも一部の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部は、相互に接触していることを特徴とする相変化メモリセル。」 第5 引用例、引用発明等 1 引用例1について 原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2013-008947号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。) (1)「【0012】 (実施例1) 図1を参照すると、本発明の相変化メモリセル10は、基板100と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110と、少なくとも一つの相変化層120と、第一電極132と、第二電極134と、第三電極136と、第四電極138と、を含む。前記基板100は、前記カーボンナノチューブ構造体110と、前記相変化層120と、前記第一電極132と、前記第二電極134と、第三電極136と、第四電極138と、を支持する。また、少なくとも前記カーボンナノチューブ構造体110の一部及び前記相変化層120は、相互に積層して設置される。 【0013】 更に、前記相変化メモリセル10は、書き込み回路及び読み出し回路を含む。前記書き込み回路は、相互に直列接続された前記第一電極132と、前記カーボンナノチューブ構造体110と、前記第二電極134と、を含み、前記相変化メモリセル10にデータを書き込むことができる。前記読み出し回路は、相互に直列接続された前記第三電極136と、前記相変化層120と、前記第四電極138と、を含み、前記相変化メモリセル10からデータを読み出すことができる。」 (2)「【0026】 (四)カーボンナノチューブワイヤ 前記カーボンナノチューブ構造体110は、一本又は数本のカーボンナノチューブワイヤからなることができる。前記カーボンナノチューブ構造体110が、一本のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、該カーボンナノチューブワイヤを曲げて、柔軟性高分子構造体の一つの表面に敷くことによって、一定の面積を有する平面状のカーボンナノチューブ構造体110を形成することができる。前記カーボンナノチューブ構造体110が、数本のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、該数本のカーボンナノチューブワイヤは、相互に平行して配列される。又は、前記数本のカーボンナノチューブワイヤを、相互に交叉させて、網状のカーボンナノチューブ構造体110を形成する。前記カーボンナノチューブ構造体110におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなることができる。」 (3)「【0033】 前記第一電極132及び前記第二電極134は、金属または酸化インジウムスズ(ITO)などの電気伝導材料からなる。前記第一電極132及び前記第二電極134の厚さは100nm?100μmであるが、20nm?50nmであることが好ましい。本実施例において、前記第一電極132及び前記第二電極134の材料は、導電性ペーストからなる。該導電性ペーストは、金属粉末、低融点のガラス粉末及び接着剤からなる。前記金属粉末は銀粉で、前記接着剤はテルピネオール又はエチルセルロースであることが好ましい。前記導電性ペーストにおいて、前記金属粉末の重量比は50%?90%であり、前記低融点のガラス粉末の重量比は2%?10%であり、前記接着剤の重量比は8%?40%である。前記第一電極132及び前記第二電極134は、スクリーン印刷法によって、導電性ペーストを前記カーボンナノチューブ構造体110の一部の表面に印刷することにより形成される。前記第一電極132及び前記第二電極134に電圧を印加した際に、前記カーボンナノチューブ構造体110の熱によって前記相変化層120が相変化温度に達することができるのであれば、該導電ペーストの形状、寸法及び位置は制限されない。本実施例において、前記第一電極132及び前記第二電極134は、相互に対向して設置され、且つ前記カーボンナノチューブ構造体110の対向する両端における各々のカーボンナノチューブに、電気的にそれぞれ接続されている。つまり、前記第一電極132及び前記第二電極134は、前記カーボンナノチューブ構造体110に電気的に接続されている。 【0034】 前記第三電極136及び前記第四電極138は、それぞれ前記相変化層120に電気的に接続されている。本実施例において、前記第三電極136及び前記第四電極138は、前記相変化層120の一部の表面に設置される。具体的には、前記相変化層120は、前記第三電極136、前記第四電極138及び前記カーボンナノチューブ構造体100の間に設置される。前記第三電極136及び前記第四電極138に電圧を印加することによって、前記相変化層120に電流が流れる。また、前記第四電極138は、前記カーボンナノチューブ構造体110のみに電気的に接続されることもできる。本実施例において、前記第四電極138を省略することもできる。この場合、前記相変化層120に電流が流れるように、前記第三電極136及び前記第一電極132の間に電圧を印加し、または前記第三電極136及び前記第二電極134の間に電圧を印加する。前記第三電極136、前記相変化層120及び前記第一電極132/前記第二電極134は、相互に直列接続される。」 (4)上記(1)ないし(3)から、上記引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110と、少なくとも一つの相変化層120と、第一電極132と、第二電極134と、第三電極136と、を含み、 前記カーボンナノチューブ構造体110は、一本又は数本のカーボンナノチューブワイヤからなり、 前記第一電極132及び前記第二電極134は、前記カーボンナノチューブ構造体110に電気的に接続され、書き込み回路を形成し、 前記書き込み回路は、前記相変化メモリセル10にデータを書き込むことができ、 前記第三電極136、前記相変化層120及び前記第一電極132/前記第二電極134は、相互に直列接続され、読み出し回路を形成し、 前記読み出し回路は、前記相変化メモリセル10からデータを読み出すことができる、 相変化メモリセル10。」 2 引用例2について 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2005/038080号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「[0036] 図2A,Bは本発明の第1実施形態を示す説明図であり、図2Aは概略的な斜視図、図2Bは底面図である。このナノサイズヒータ付きノズル10は、ノズル11と、一対の電極21,22と、ナノサイズヒータ30などで構成される。 [0037] ノズル11は、石英やガラスなどの電気絶縁性材料を用いて、円筒や角筒などのパイプ状に形成される。ノズル11の内径は、微小薄膜を成膜する際の空間分解能に応じて適宜設定され、例えば100nm程度?2μm程度の直径に形成される。原料ガスが、ガス供給源からガス配送路(不図示)を通じてノズル11の後端に供給されると、ノズル11先端の開口部から基板Wに向けて局所的に供給される。 [0038] ノズル11の側面には、一対の電極21,22が設けられる。電極21,22には、外部電源から送電路(不図示)を通じて直流または交流の電力が供給される。 [0039] ナノサイズヒータ30は、高い融点および比較的高い体積抵抗率を有する材料で形成され、ヒータ材料として一般的なタングステンやグラフアイト等でも形成可能であるが、上述したように、大きな許容電流密度および高温でも高い強度を有するカーボンナノチューブを用いることが好ましい。 [0040] ナノサイズヒータ30の各端部は、融着や圧着などで電極21,22にそれぞれ固定される。ナノサイズヒータ30は、ノズル11の開口部を横切るようにU字状に湾曲して配置され、ノズル11を通過した原料ガスを効率的に加熱する。カーボンナノチューブは曲げ許容度が高いため、ナノサイズヒータ30を湾曲させる場合に特に好ましい。」 (2)上記(1)から、上記引用例2には次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。 「カーボンナノチューブをノズル11の開口部を横切るようにU字状に湾曲して配置し、ノズル11を通過した原料ガスを効率的に加熱する、ナノサイズヒータ30。」 3 引用例3について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-087774号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0022】 一方、線状電気ヒータ部5wを熱交換室Cの内部に組付けるに際しては、図1及び図3に示すように、まず、交換器本体21の内周面から外側面に至る一対の挿通孔23,24を形成する。各挿通孔23,24の内径は、被覆管13sが挿通する径を選定する。そして、線状電気ヒータ部5wの両端に位置する各被覆管13s…を、交換器本体21の内周面から各挿通孔23,24にそれぞれ挿通させ、交換器本体21の外側面から突出した各被覆管13s…の外周面と交換器本体21の外側面間を、図3に示すように、溶着部36により溶着(溶接)する。また、線状電気ヒータ部5wは、湾曲部(折曲部を含む)5wrを設けることによりリング状或いは渦巻状に巻回し、熱交換室Cの内部に所定の長さ分を収容する。特に、巻回数は、必要な加熱能力等を考慮して複数回とすることが望ましい。なお、図示は省略したが、プレート部材(棒部材)或いはネット部材等により形成した支持部材を、熱交換室Cの内部に収容し、線状電気ヒータ部5wを、熱交換室Cの空間内における所定位置に安定に保持することが望ましい。」 (2)上記(1)から、上記引用例3には次の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認められる。 「熱交換室Cの内部に組付ける線状電気ヒータ部5wであって、 湾曲部(折曲部を含む)5wrを設けることによりリング状或いは渦巻状に巻回し、熱交換室Cの内部に所定の長さ分を収容する、 線状電気ヒータ部5w。」 4 引用例4について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-261798号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0029】 前記サンプル採取部1は、ガス状のサンプルを導入(採取)するためのサンプリングカップ1aを備え、図1にはサンプリングカップ1aの一部を切り欠いて示してある。そして、図1に示すように、サンプリングカップ1aはワイヤ部材1bを内蔵し、このワイヤ部材1bは、ほぼ渦巻き状(フィラメント状)で、例えばヒータワイヤにポリジメチルシロキサンを塗布することにより作成され、サンプル中の揮発性成分を吸蔵(吸着)し、通電によって昇温すると吸蔵した揮発性成分を(一度に)放出する性状を有している。」 (2)上記(1)から、上記引用例4には次の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されていると認められる。 「ガス状のサンプルを導入(採取)するためのサンプリングカップ1aを備えた、サンプル採取部1であって、 サンプリングカップ1aは、ほぼ渦巻き状(フィラメント状)で、サンプル中の揮発性成分を吸蔵(吸着)し、通電によって昇温すると吸蔵した揮発性成分を(一度に)放出する性状を有するワイヤ部材1bを内蔵している、 サンプル採取部1。」 5 引用例Aについて 当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2010-257976号公報(以下、「引用例A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【0112】 また、図18を参照すると、前記加熱素子104が、一つの線状のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、該線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、前記中空の三次元支持体102の表面に巻き付かれる。図19を参照すると、前記加熱素子104が、複数の線状のカーボンナノチューブ複合構造体である場合、該複数の線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、交差して設置され、膜状の構造が編まれ、前記中空の三次元支持体102に被覆、巻き付くことができる。」 (2)上記(1)から、上記引用例Aには次の発明(以下、「引用例A発明」という。)が記載されていると認められる。 「一つの線状のカーボンナノチューブ複合構造体であって、該線状のカーボンナノチューブ複合構造体は、中空の三次元支持体102の表面に巻き付かれる、 加熱素子104。」 第6 対比・判断 1 対比 本願発明と引用例1発明とを対比すると、次のことがいえる。 (1)引用例1発明の「少なくとも一つの相変化層120」および「相変化メモリセル10」は、それぞれ本願発明の「少なくとも一つの相変化層」および「相変化メモリセル」に相当する。 (2)引用例1発明の「少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110」は、「一本又は数本のカーボンナノチューブワイヤからな」っているから、本願発明の「少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤ」に相当する。 (3)引用例1発明は、「前記第一電極132及び前記第二電極134は、前記第一電極132及び前記第二電極134は、前記カーボンナノチューブ構造体110に電気的に接続され、」「前記相変化メモリセル10にデータを書き込むことができ」る、「書き込み回路を形成し」ており、また、「前記第三電極136、前記相変化層120及び前記第一電極132/前記第二電極134は、相互に直列接続され、」「前記相変化メモリセル10からデータを読み出すことができる、」「読み出し回路を形成し」ている。 そうすると、引用例1発明の「書き込み回路」および「読み出し回路」は、それぞれ、本願発明の「書き込み回路」および「読み出し回路」に相当し、また、引用例1発明の「第一電極132」,「第二電極134」および「第三電極136」は、それぞれ、本願発明の「第一電極」,「第二電極」および「第三電極」に相当する。 (3)してみると、本願発明と引用例1発明は以下の点で一致し、また、相違する。 [一致点] 「少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤと、少なくとも一つの相変化層と、第一電極と、第二電極と、第三電極と、を含む相変化メモリセルであって、 前記第一電極と、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤと、前記第二電極とは、書き込み回路を形成し、 前記第一電極、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤ及び前記第二電極は、相互に直列接続され、 前記書き込み回路は、前記相変化メモリセルにデータを書き込み、 前記第三電極と、少なくとも一つの前記相変化層と、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤと、前記第一電極或いは前記第二電極とは、読み出し回路を形成し、 前記第三電極と、少なくとも一つの前記相変化層と、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤと、前記第一電極或いは前記第二電極とは、相互に直列接続され、 前記読み出し回路は、前記相変化メモリセルからデータを読み出す、 ことを特徴とする相変化メモリセル。」 [相違点1] 本願発明は、「少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは複数のリング構造体である湾曲部を有し、 少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは、順に接続された第一部、前記湾曲部及び第二部から形成され、 前記第一部は、前記第二部と間隔をあけて平行に設置され、 前記第一電極は少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第一部と電気的に接続され、前記第二電極を少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第二部と電気的に接続され、 前記第三電極は、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部と間隔をあけて設置され、 少なくとも一部の前記相変化層及び少なくとも一部の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部は、相互に接触している」 のに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。 2 相違点についての判断 [相違点1]について以下に検討する。 引用例1には、「カーボンナノチューブワイヤ」について、[相違点1]に係る構造は開示されておらず、また、「カーボンナノチューブワイヤの湾曲部は加熱素子として相変化層を加熱するので、カーボンナノチューブワイヤの湾曲部に蓄積された熱を十分に利用でき、相変化層の動作速度を向上させることができ、更には、相変化メモリセル及び相変化メモリデバイスの読み書き効率を向上させることができる。」(段落【0008】)点を考慮することも記載されていないので、引用例1発明において、[相違点1]に係る構成とすることが容易であったとは言えない。 さらに、引用例2ないし4およびAには、「少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは複数のリング構造体である湾曲部を有し、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは、順に接続された第一部、前記湾曲部及び第二部から形成され、前記第一部は、前記第二部と間隔をあけて平行に設置され、前記第一電極は少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第一部と電気的に接続され、前記第二電極を少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第二部と電気的に接続され、前記第三電極は、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部と間隔をあけて設置され、少なくとも一部の前記相変化層及び少なくとも一部の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部は、相互に接触している」ことは記載されていないから、引用例1発明に、引用例2ないし4およびAの記載を適用し、[相違点1]に係る構成を想起することはできない。 そして、本願発明は、[相違点1]に係る構成を有することにより、「カーボンナノチューブワイヤの湾曲部は加熱素子として相変化層を加熱するので、カーボンナノチューブワイヤの湾曲部に蓄積された熱を十分に利用でき、相変化層の動作速度を向上させることができ、更には、相変化メモリセル及び相変化メモリデバイスの読み書き効率を向上させることができる。」(段落【0008】)という格別の効果を有するものである。 そうすると、[相違点1]に係る構成は、引用例1ないし4およびAに記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。 第7 原査定についての判断 本願発明の「少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは複数のリング構造体である湾曲部を有し、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤは、順に接続された第一部、前記湾曲部及び第二部から形成され、前記第一部は、前記第二部と間隔をあけて平行に設置され、前記第一電極は少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第一部と電気的に接続され、前記第二電極を少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記第二部と電気的に接続され、前記第三電極は、少なくとも一本の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部と間隔をあけて設置され、少なくとも一部の前記相変化層及び少なくとも一部の前記カーボンナノチューブワイヤの前記湾曲部は、相互に接触」する構成は、原査定における引用例1ないし4には記載も示唆もなく、また、本願優先日前における周知技術でもない。 したがって、本願発明は、原査定における引用例1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 よって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-03-19 |
出願番号 | 特願2014-216106(P2014-216106) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加藤 俊哉 |
特許庁審判長 |
飯田 清司 |
特許庁審判官 |
大嶋 洋一 小田 浩 |
発明の名称 | 相変化メモリセル |
代理人 | 水村 香穂里 |
代理人 | 水村 香穂里 |