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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G01V
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない 原査定を取り消し、特許すべきものとする G01V
管理番号 1338504
審判番号 不服2017-7692  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-30 
確定日 2018-04-03 
事件の表示 特願2014- 93787「異物検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月24日出願公開、特開2015-210235、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月30日の出願であって、平成28年8月5日付けの最後の拒絶理由通知に対して、平成28年9月27日付けで手続補正がなされたが、平成29年2月22日付けで平成28年9月27日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、平成29年5月30日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年12月21日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年1月29日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成30年1月29日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
磁界を発生させる磁界発生手段と、
磁気シールドケースと、
前記磁気シールドケースの中に検査対象物を出入りさせるための長い穴または管と、
前記検査対象物に圧縮空気または弾性力を用いて力付与し、更に前記穴または前記管の出口側からの吸引により、前記検査対象物を、前記穴または前記管内を移動させる移動手段と、
前記磁界中の前記穴または前記管の側部に設けられ、磁力変化を検出する磁力変化検出手段と、
前記磁力変化検出手段により検出された信号に基づき磁界変動を求め、磁界変動から異物を検出する手段と
を具備し、
前記シールドケースは内部に、前記磁界発生手段、前記穴または管、前記磁力変化検出手段を、備え、
前記移動手段は、500mmの自由落下により得られる速度により前記検査対象物を移動させ、
磁界強度が30kA/mのときに、前記異物を検出する手段により、直径が0.2mmのSUS304球及び直径が0.1mmの鉄球が異物として検出される
ことを特徴とする異物検出装置。」

本願発明2-5は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-300392号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【0001】
本発明は、例えば食品加工装置などにおいて加工食品に混入した磁性異物を検出する磁性異物検出装置に関するものである。」

「【0020】
図1を参照して、磁性異物検出装置の概略構成について説明する。
磁界発生装置1は、被検出物(加工食品)2が通過する検査領域に均一な磁界を発生させる。被検出物2は、後述するように導電性包装材(アルミホイルなど)に包装されていてもよい。」

「【0021】
図1において、磁界発生装置1は、本実施形態では交番磁界を発生させる装置である。即ち、交流電源3と、該交流電源3に接続された空芯状コイル内に交番磁界を発生させる磁界発生コイル4を具備している。また、検出コイル5は、磁界発生コイル4内に形成される交番磁界内に同芯状に設けられている。磁界発生コイル4に通電して交番磁界を発生させた状態で被検出物2が検出コイル5内に置かれるか或いは当該検出コイル5内を通過させる際に誘導電流が流れることにより磁界分布変化が検出されるようになっている。」

「【0024】
図2において、インダクション磁気センサ7は、磁界発生装置1により発生させた低周波発生磁界に鎖交するよう配置され、被検出物2が発生磁界中を通過する際にもたらす磁界分布変化を検出する空芯状の検出コイル5と、検出コイル5に誘導される誘導電流を増幅し、電圧に変換する電流-電圧変換回路8を具備している。検出コイル5は磁界発生装置1によって形成される均一磁界空間10内に配置されている。この検出コイル5内に被検出物2が置かれるか或いは通過させることで、当該検出コイル5に誘導される誘導電流の値を電流-電圧変換回路8によって電圧値に変換して出力するようになっている。」

「【0028】
信号解析装置9は、インダクション磁気センサ7に具備した電流-電圧変換回路8の出力信号(電流-電圧変換値)を解析して磁性異物6を特定する。磁性異物6のうち例えば、鉄粉やステンレスなどに応じて電圧波形をサンプルとして記憶しておくことで、異物が何であるか特定することができる。」

「【0031】
次に、図3の多層ソレノイドコイル11を用いて被検出物2に混入する異物検出を行なった検出実験結果の一例について説明する。以下に検出実験装置の構成例について説明する。多層ソレノイドコイル11のうち外層コイル11aに発振装置12から増幅回路13を経て定電流モードで交流電流を流して交番磁界(低周波磁界)を発生させる。このときの、交番磁界の発振周波数は10Hzであり、入力電流imの大きさを、外層コイル11aに接続された電圧計14によって電圧に換算して測定をおこなった。また、内層コイル(インダクショングラジオメータ)11bには、誘導電流を電圧に変換する電流-電圧変換回路15が接続されており、当該電流-電圧変換回路15で出力された出力電圧を電圧計16により測定を行った。
また、被検出物2は樹脂系試料台(非磁性)17のA点及びB点に試料として各々固定され、該樹脂系試料台17を多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形をオシロスコープにて観測を行なった。」

「【0037】
図10は、樹脂系試料台17のA点に試料としてチーズブロックの中にステープラ針を埋め込んだものを固定して多層ソレノイドコイル11に挿入したときの出力電圧波形例を示す。これにより、食品中に混入した磁性異物を検出可能であることが確認できた。」

ここで、段落【0031】の記載から図3の多層ソレノイドコイル11は、段落【0021】に記載の磁界発生コイル4を具備している磁界発生装置1を具体化した装置であることが読み取れるので、段落【0037】に記載された「試料」が挿入される「多層ソレノイドコイル11」の内部は、段落【0020】に記載の「被検出物(加工食品)2が通過する検査領域」に相当する領域であり、段落【0037】には、被検出物(加工食品)2を固定して検査領域に挿入する樹脂系試料台17が記載されいるといえる。

よって、上記記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「被検出物(加工食品)2が通過する検査領域に磁界を発生させる(【0020】)、空芯状コイル内に交番磁界を発生させる磁界発生コイル4を具備している磁界発生装置1と(【0021】)、
被検出物(加工食品)2を固定して検査領域に挿入する樹脂系試料台17と(【0037】)、
磁界発生コイル4内に形成される交番磁界内に同芯状に設けられており、交番磁界を発生させた状態で被検出物2が検出コイル5内に置かれるか或いは当該検出コイル5内を通過させる際に誘導電流が流れることにより磁界分布変化が検出される検出コイル5と(【0021】)、
検出コイル5に誘導される誘導電流を増幅し、電圧に変換する電流-電圧変換回路8と(【0024】)、
電流-電圧変換回路8の出力信号(電流-電圧変換値)を解析して磁性異物6を特定する信号解析装置9と(【0028】)
を具備する磁性異物検出装置(【0020】)。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2002-156462号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0019】こうして商品が詰められた袋は、傾斜板29により搬送コンベア30に載せられ、後段の重量チェッカー40へと搬送されていく。
<金属検出装置50の構成>金属検出装置50は、上方に配置されている組合せ計量装置10の集合排出シュート15から落下してくる商品を受け入れて、商品を下方へと通過させながら金属片の混入を検出する。この金属検出装置50は、図3に示すように、主として、検出ヘッド51と、円筒部材55と、チューブ56と、ジョーゴ58とから構成されている。これらの金属検出装置50の各構成部材は、図示しない支持部材によって、組合せ計量装置10や製袋包装装置20を支持している架台80に固定される。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2008-39394号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0002】
従来食品、工業材料等に混入する金属片の検知装置には、電磁センサが使用されている。
図7により従来の電磁センサを説明する(例えば特許文献1参照)。
図7は、被検査物の上に配置した電磁センサを示し、図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)のX1部分の矢印方向の断面図、図7(c)は、電磁センサの裏面の平面図である。
図7において、11は、電磁センサ、13は、被検査物12を搬送するベルトコンベアのベルトである。電磁センサ11は、断面がE文字状の鉄心111にセンサーコイル112を巻き、中央に永久磁石113を取り付けてある。電磁センサ11のセンサーコイル112は、交流電源(図示せず)と検出回路(図示せず)に接続されている。被検査物12は、ベルト13によってX2方向へ搬送され、電磁センサ11の下を通って移動する。
センサーコイル112に交流電源を接続すると、センサーコイル112に交流電流が流れて交番磁界を発生し、センサーコイル112の磁束は、ベルト13を含む磁路を通過する。被検査物12に金属片が混入しているときは、被検査物12が、図7のように電磁センサ11の下に移動すると、センサーコイル112の磁路の磁気特性が変わるため、センサーコイル112の交流電流の振幅が変化する。その振幅の変化分を検出回路で抽出して、被検査物12に混入している金属片を検知する。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(登録実用新案第3177557号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【解決手段】連続的に連結された連続包装体に充填された被包装体からなる被検査物2をセンサーコイル10a、10b、11a、11bで、その中の金属異物を検知する。被検査物2は、細長い中空の管状のガイド3内を流れながら案内され、センサーコイル10a、10b、11a、11bの近傍を通過する。センサーコイル10a、10b、11a、11bは、外部の磁界又は磁界の乱れからシールドするための金属の筐体8に格納され、筐体8をガイド3が貫通するように設置される。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平11-72479号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0020】高磁場2を通過した後、縫製品1中の磁化された磁性体10の残留磁化は、ベルトコンベア7の途中に配設された検知部3によって検出される。検知部3は、ホール効果を利用したホール素子や磁気抵抗効果を利用したMR素子(磁気抵抗効果素子)、磁界中での表皮効果を利用したMI効果素子(磁気インピーダンス効果素子)、あるいはコイル(静磁界検出用コイルも含む)等の磁気センサを有しており、磁気センサ20はベルトコンベア7上を移送される縫製品1と対向するように、また図8に示すようにベルトコンベア7の幅方向に所定の間隔Dで複数個配置されている。センサの検知範囲を考慮すると、磁気センサ20としてホール素子を用いる場合には、そのコンベア上の高さH(図6参照)及び素子間の間隔Dは使用するセンサの感度及びS/N比により定められる。MR素子、MI効果素子あるいはコイルを用いる場合についても同様である。なお、例えば嵩ばった縫製品の検知を行う場合などのように高さ位置を大きくしたい場合には、図4乃至図7に示すように、ベルトコンベア7の移送ベルトの上下に磁気センサ20を対向して配設することができ、これによってセンサとコンベアの距離を大きくすることができる。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2005-233722号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0062】
図12において、全体を符号70で示す検出手段は、磁極が引き合う方向に対向して配置された一対の永久磁石72、72と、一対の永久磁石72、72の磁界中に配置されたホール素子74と、該ホール素子74の出力信号を受信する制御装置5及びディスプレイ等の表示装置4とを有している。
一対の永久磁石72、72の磁界中には管1が配置されており、管1内では、異物(例えば鉄粉)Mが混合している潤滑油(その流れが矢印A-12で示されている)が流過している。
【0063】
管1内を流れる潤滑油中に異物が存在すると、当該異物が磁界中を通過することにより磁界が乱れ、ホール素子74が受感する磁界に変化が生じ、その結果、磁界の大きさを電気抵抗として出力する出力信号(ホール素子74の出力信号)が変動する。
制御装置5は、ホール素子74の出力信号中の係る変動を公知の処理により検出し、潤滑油中の異物の存在を検知する。」

7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(実願平2-5414号(実開平3-95981号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「本考案は、気体輸送される合成樹脂または食品などの粉体中に存在することがある金属物質を検出し、製品に金属物質混入することを防止する装置の改良に関する。」(第1頁第17-20行)

「再び第1図において、金属検知器1の上流側に導管21を介して粉砕ミル20が設置されている。・・・この吸引ファン26は一定の風量で気流を発生させ、前記管路3,導管21、第1導管23および第2導管24を負圧に保つ。
合成樹脂または食品が粉砕ミル20によって粉砕され、吸引ファン26により生起される気流に乗って粉体貯留槽25に送付される」(第6頁第10行-第7頁第2行)

上記記載より、引用文献7には、次の周知技術が記載されている。
「金属検出器を含む金属物質の混入防止装置における、吸引により、食品粉体を移動させる吸引ファン。」

8 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特開平2-126180号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「本発明は、食品や粒状のプラスチック原料等の被検出材に混入されている金属を検出する装置に関し、特に装置の動作状態を容易にチェックし得るものである。」(第2頁左上欄第8-11行)

「次に第3の実施例につき第5図に基き説明する。
この実施例では、円筒体11は水平方向に延在しているので、被検出材や標準金属サンプル20は自由落下しない。
このような状態においては、被検出材は自由落下しないので、空気等によって圧送される。従って標準金属サンプル20を被検出材と等速度で移動させるため、透孔15の両端部に、空気の流量を変化させるためのスピードコントローラ27が装着されている。」(第4頁左下欄第10-19行)

上記記載より、引用文献8には、次の周知技術が記載されている。
「金属検出装置において、食品を空気等によって圧送する技術。」

9 引用文献9について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献9(特開2006-133129号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、被検査体を金属検出機に通すための搬送路を形成する金属検出機用搬送機に関する。」

「【0017】
ケーシング剥離機13は、図1に示すように、連鎖状充填ソーセージ15が供給口に供給されると、各ソーセージを被覆するケーシング16を剥離して、皮なしソーセージ(被検査体)12を製造するためのものである。この製造された皮なしソーセージ12は、剥離機13の吐出口17aから1つずつ吐出されて、搬送機10の入口11aに供給される。連鎖状充填ソーセージ15は、分散加工されたソーセージの原料(食肉)を、先端が封止された短円筒形状のケーシング(セルロース等で人工的に形成されたもの)16内に充填して製造されたものである。なお、図1に示す18、・・・は、搬送ローラ、19はカッターである。搬送ローラ18、・・・は、連鎖状充填ソーセージ15を搬送することができ、皮なしソーセージ12を吐出口17aから吐出するためのものである。カッター19は、ケーシング16を切り開くためのものである。」

上記記載より、引用文献9には、次の周知技術が記載されている。
「金属検出装置における、皮なしソーセージを吐出口から吐出する搬送ローラ。」

10 引用文献10について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献10(特開2002-234030号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0027】図4は、プラスチック部品再生ラインの構成を示す概略図である。プラスチック部品再生ラインは、粗破砕機24,風力選別機25,細破砕機26,洗浄機27,脱水機28,乾燥機29,金属検出機30,集積部31からなる。分解された前カバー17,後カバー18,本体基部14,巻上げノブ11は、まず粗破砕機24に送り込まれる。この粗破砕機24は、破砕品の通過スクリーンをφ20?φ60程度とするのがよい。」

「【0048】水切りカゴ42に貯留された洗浄済みの破砕プラスチックは、例えば、コンベアまたはパイプフィーダー56によって脱水機28に送り込まれる。この脱水機は、例えば遠心分離式の脱水装置であり、破砕プラスチックに付着した洗浄水39を例えば2%以下の含水率となるように取り除く。なお、概略図の符号33,35,58,60,61の搬送装置は、搬送可能ならばローダーホッパー以外のもの、例えばエア圧送あるいは吸引による搬送配管でもよい。」

「【0050】乾燥された破砕プラスチックは、ローダーホッパー60によって金属検出機30に搬送される。この金属検出機30では、渦電流を用いて破砕プラスチック内から金属片を検出し、分離する。金属分離を終了した破砕プラスチックは、ローダーホッパー61によって集積部31内に集積される。なお、ここで、金属検出器30の前に磁石を入れて鉄系金属の予備選別を行なうと、金属検出機30による分離効率が向上する。この磁石は、金属検出器30以外の工程内にも設置すると更に金属除去効率が向上する。」

上記記載より、引用文献10には、次の周知技術が記載されている。
「金属検出機を備えるプラスチック部品再生ラインの搬送装置において、破砕プラスチックをエア圧送あるいは吸引により搬送する技術。」

11 引用文献11について
平成29年2月22日付けの補正の却下の決定の理由に引用された引用文献11(特開2010-83675号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、高・中レベル放射性廃棄物、その他の廃棄物の地層処分に用いられる廃棄物の空気カプセル輸送方法に関するものである。」

「【0031】
空気駆動方式には、空気搬送管路1の上部に排気装置(ブロワーと排気弁)を設置して空気搬送管路1内の空気を外部に排気する負圧による吸引方式、空気搬送管路1の下部に排気装置(ブロワーと排気弁)を設置して地下の空気を空気搬送管路1内に押し込む正圧による圧入方式、両者の併用方式などを採用することができる。」

上記記載より、引用文献11には、次の周知技術が記載されている。
「地層処分に用いられる廃棄物の空気カプセルの輸送方法において、空気搬送管路内の空気を外部に排気する吸引と、空気を空気搬送管路内に押し込むことを併用する技術。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「検査領域に磁界を発生させる、空芯状コイル内に交番磁界を発生させる磁界発生コイル4を具備している磁界発生装置1」は、本願発明1の「磁界を発生させる磁界発生手段」に相当する。

イ 引用発明の「被検出物(加工食品)2が通過する検査領域」と、本願発明1の「前記磁気シールドケースの中に検査対象物を出入りさせるための長い穴または管」とは、「検査対象物が出入りする領域」である点で共通する。

ウ 引用発明の「被検出物(加工食品)2を固定して検査領域に挿入する樹脂系試料台17」と、本願発明1の「前記検査対象物を、前記穴または前記管内を移動させる移動手段」とは、「前記検査対象物を、前記領域内を移動させる移動手段」である点で共通する。

エ 引用発明の「検出コイル5」は、「磁界発生コイル4内に形成される交番磁界内に同芯状に設けられており、交番磁界を発生させた状態で被検出物2が検出コイル5内に置かれるか或いは当該検出コイル5内を通過させる」のであるから、「被検出物(加工食品)2が通過する検査領域」の側部に設けられているといえる。
したがって、引用発明の「磁界発生コイル4内に形成される交番磁界内に同芯状に設けられており、交番磁界を発生させた状態で被検出物2が検出コイル5内に置かれるか或いは当該検出コイル5内を通過させる際に誘導電流が流れることにより磁界分布変化が検出される検出コイル5」と、本願発明1の「前記磁界中の前記穴または前記管の側部に設けられ、磁力変化を検出する磁力変化検出手段」とは、「前記磁界中の前記領域の側部に設けられ、磁力変化を検出する磁力変化検出手段」である点で共通する。

オ 引用発明の「検出コイル5」が「検出」した「誘導電流を増幅し、電圧に変換」した「電流-電圧変換回路8の出力信号(電流-電圧変換値)を解析」することは、磁界発生装置1が発生させる交番磁界中に被検出物2が置かれるか、或いは通過する際の磁界分布変化を求めていることであるといえるので、
引用発明の「電流-電圧変換回路8の出力信号(電流-電圧変換値)を解析して磁性異物6を特定する信号解析装置9」は、本願発明1の「前記磁力変化検出手段により検出された信号に基づき磁界変動を求め、磁界変動から異物を検出する手段」に相当する。

カ 引用発明の「磁性異物検出装置」は、本願発明1の「異物検出装置」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「磁界を発生させる磁界発生手段と、
検査対象物が出入りする領域と、
前記検査対象物を、前記領域内を移動させる移動手段と、
前記磁界中の前記領域の側部に設けられ、磁力変化を検出する磁力変化検出手段と、
前記磁力変化検出手段により検出された信号に基づき磁界変動を求め、磁界変動から異物を検出する手段と
を具備する異物検出装置。」

(相違点1)
本願発明1が「磁気シールドケース」を備え、「前記シールドケースは内部に、前記磁界発生手段、前記穴または管、前記磁力変化検出手段を、備え」るのに対して、引用発明は、「磁気シールドケース」を備えることの特定がない点。
(相違点2)
検査対象物が出入りする「領域」が、本願発明1は、「長い穴または管」であるのに対して、引用発明は、「被検出物(加工食品)2が通過する検査領域」とあるが、「長い穴または管」とは特定されていない点。
(相違点3)
検査対象物を移動させる「移動手段」が、本願発明1は、「前記検査対象物に圧縮空気または弾性力を用いて力付与し、更に前記穴または前記管の出口側からの吸引により、前記検査対象物を、前記穴または前記管内を移動させる移動手段」であるの対して、引用発明は、「被検出物(加工食品)2を固定して検査領域に挿入する樹脂系試料台17」である点。
(相違点4)
本願発明1は、「前記移動手段は、500mmの自由落下により得られる速度により前記検査対象物を移動させ、磁界強度が30kA/mのときに、前記異物を検出する手段により、直径が0.2mmのSUS304球及び直径が0.1mmの鉄球が異物として検出される」のに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点3、4について検討する。
引用文献11に記載されているように、地層処分に用いられる廃棄物の空気カプセルの輸送方法において、空気搬送管路内の空気を外部に排気する吸引と、空気を空気搬送管路内に押し込むことを併用する技術は周知である(上記「第3 11」)。
上記の地層処分に用いられる廃棄物の空気カプセルの輸送方法と、引用発明のチーズブロック等の「被検出物(加工食品)2」の「磁性異物検出装置」では、装置の規模及び構造が大きく異なるものであるから、引用発明に上記周知技術を適用することには阻害要因がある。

また、引用文献7-10には、金属検出装置を用いる装置において周知技術である、吸引により、食品粉体を移動させる吸引ファン(引用文献7)、食品を空気等によって圧送する技術(引用文献8)、皮なしソーセージを吐出口から吐出する搬送ローラ(引用文献9)、破砕プラスチックをエア圧送あるいは吸引により搬送する技術(引用文献10)が記載されているが、引用発明は「樹脂系試料台17」に「被検出物(加工食品)2を固定して」移動するものであり、被検出物を固定しない搬送手段である上記周知技術を、引用発明に採用する理由は見当たらない。さらに、引用文献7-10には、検査対象物に圧縮空気または弾性力を用いて力付与し、更に出口側からの吸引により、検査対象物を移動させる移動手段も記載されていない。同様に、引用文献2-6にも、当該移動手段は記載されていない。

したがって、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-11に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。

さらに、上記相違点3に係る「移動手段」によって、「500mmの自由落下により得られる速度により前記検査対象物を移動させ、磁界強度が30kA/mのときに、前記異物を検出する手段により、直径が0.2mmのSUS304球及び直径が0.1mmの鉄球が異物として検出される」ことは、引用文献2-11に記載されておらず、
上記相違点4に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-11に記載された技術に基づいて、当業者が容易に想到し得えたことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1、2について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-11に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明1を直接又は間接に引用する本願発明2-5は、本願発明1をさらに限定した発明であるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献2-11に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の拒絶の理由について
1 原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。
(1)理由1
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-10に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-300392号公報
2.特開2002-156462号公報
3.特開2008-39394号公報
4.登録実用新案第3177557号公報
5.特開平11-72479号公報
6.特開2005-233722号公報
7.実願平2-5414号(実開平3-95981号)のマイクロフィルム
8.特開平2-126180号公報
9.特開2006-133129号公報
10.特開2002-234030号公報

(2)理由2
請求項1に係る発明は発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 原査定の拒絶の理由についての判断
(1)理由1(特許法第29条第2項)について
平成30年1月29日付け手続補正により補正された請求項1は、「前記検査対象物に圧縮空気または弾性力を用いて力付与し、更に前記穴または前記管の出口側からの吸引により、前記検査対象物を、前記穴または前記管内を移動させる移動手段」「前記移動手段は、500mmの自由落下により得られる速度により前記検査対象物を移動させ、磁界強度が30kA/mのときに、前記異物を検出する手段により、直径が0.2mmのSUS304球及び直径が0.1mmの鉄球が異物として検出される」という事項を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-5は、引用発明、引用文献2-10に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

(2)理由2(特許法第36条第6項第1号)について
平成30年1月29日付けの補正により、「前記シールドケースは内部に、前記磁界発生手段、前記穴または管、前記磁力変化検出手段、前記移動させる手段を、備えた」という記載は、「前記シールドケースは内部に、前記磁界発生手段、前記穴または管、前記磁力変化検出手段を、備え」に補正されており、原査定の理由2を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1の「前記移動手段は、直径が0.2mmのSUS304球及び直径が0.1mmの鉄球が、前記異物を検出する手段によって検出可能となる速度により前記検査対象物を移動させるものである」という記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年1月29日付けの補正において、「前記移動手段は、500mmの自由落下により得られる速度により前記検査対象物を移動させ、磁界強度が30kA/mのときに、前記異物を検出する手段により、直径が0.2mmのSUS304球及び直径が0.1mmの鉄球が異物として検出される」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-5は、引用発明、引用文献2-11に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-19 
出願番号 特願2014-93787(P2014-93787)
審決分類 P 1 8・ 121- WYB (G01V)
P 1 8・ 537- WYB (G01V)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 秀直  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 異物検出装置  
代理人 本田 崇  

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