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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09D |
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管理番号 | 1338530 |
審判番号 | 不服2016-16136 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-28 |
確定日 | 2018-03-14 |
事件の表示 | 特願2014-541650「塗装材料組成物および成形材料における変性ポリシロキサンの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月23日国際公開、WO2013/072378、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502424〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)11月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年11月14日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年 6月30日付け:拒絶理由の通知 平成28年 1月 5日 :意見書、手続補正書の提出 平成28年 6月23日付け:拒絶査定 平成28年10月28日 :審判請求書の提出: 2.本願発明について 本願の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。まとめて、「本願発明」ということもある。)は、平成28年1月5日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明14は、以下のとおりのものと認められる。 「[請求項14] ポリシロキサン-ポリオキサゾリンコポリマーを含む熱硬化性塗装材料組成物。」 3.引用文献等に記載された事項 平成28年6月23日付け拒絶査定において引用された引用文献のうち、引用例1は以下のものである。 引用例1:特開平02-294925号公報 引用例1には、以下の事項が記載されている。 (1-1)「2.特許請求の範囲 (1)非磁性支持体上に主に磁性粉末とバインダよりなる磁性層が形成されている磁気記録媒体において、上記磁性層中に潤滑性を示す分子構造部分とN-アミルエチレンイミン鎖とのグラフトまたはブロツク共重合体を含有させたことを特徴とする磁気記録媒体。 ・・・ (3)潤滑性を示す分子構造部分がポリジメチルシロキサン鎖あるいはパ-フルオロアルキル基を含むN-アシルエチレンイミン鎖にて構成されていることを特徴とする請求項(1)記載の磁気記録媒体。」(第1頁左下欄特許請求の範囲) (1-2)「〔問題を解決するための手段〕 本発明は、一般式 と一般式 あるいは で示される分子構造を有する部分のグラフトまたはブロツク共重合体を潤滑剤として用いて、前記従来製品の持つ問題点を解決したものである。 一般式(I)で示されるN-アミルエチレンイミン鎖の部分は、磁性層を構成するバインダの良溶媒であるジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドにその基本骨格が似ているためか、バインダとの相溶性が非常に優れている。 一方、一般式(II)、(III)で表わされる化合物はその構成元素から予想されるとおりに表面自由エネルギーが小さく、磁性層表面に集まりやすく、また潤滑性を持っていることがわかっている。 よって、一般式(I)と(II)あるいは(III)とのグラフトまたはブロツク共重合体は、構造(I)の部分で、磁性層のバインダに対する親和性を示し、構造(II)あるいは(III)の部分で潤滑性を示す。それと同様にその分子量を500?3,000の範囲にすることによりこの潤滑剤が磁性層表面に適宜必要量供給されるようになっているためと考えられる。」(第2頁左上欄17行?左下欄7行) (1-3)「この発明の磁気記録媒体は、磁性粉末とバインダとを含む磁性層に潤滑成分として上記のグラフトまたはブロツク共重合体を含有させたこと以外は従来構成でよく、常法に準じてポリエステルフィルムなどの非磁性支持体上に磁性粉末とバインダと上記共重合体を含む磁性塗料を塗布乾燥して磁性層を形成したのち、カレンダ処理などの適宜の表面処理を施し、所要の大きさ、形状に裁断して製造される。」(第2頁右下欄13行?第3頁左上欄1行) (1-4)「また、バインダとしては、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリエステル系樹脂、繊維素系樹脂、ポリビニルブチラ-ル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ-ル系樹脂、架橋剤としてのポリイソシアネ-トなどが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。」(第3頁左上欄8?14行) (1-5)「実施例1 片末端シランポリジメチルシロキサン(平均分子量500) 20部 片末端アリル基N-アシルエチレンイミン(平均分子量500) 20部 テトラヒドロフラン 100部 塩化白金酸 0.1部 上記組成物をフラスコに入れ、内部を窒素置換したのち、還流下12時間反応させ、得られた反応物をn-ヘキサン、メタノールに再沈殿してホモポリマーを沈殿として除去し、ポリジメチルシロキサン-N-アシルエチレンイミンブロツク重合体を得た。この共重合体の平均分子量は2,000であった。 つぎに γ-Fe_(2)O_(3)粉末(平均長軸径0.4μm、平均軸比8) 80部 ニトロセルロ-ス(旭化成社製セルノバH1) 15部 ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製、N-2301) 10部 上記合成ブロツク共重合体 2部 ベンガラ(平均粒子径0.4μm) 5部 アルミナ(平均粒子径0.4μm) 5部 カ-ボンブラツク(S_(BET.)300m^(2)/g)5部 3官能性イソシアネ-ト化合物(日本ポリウレタン社製、コロネ-トL) 5部 シクロヘキサノン-トルエン混合溶媒(混合重量比1:1) 200部 からなる組成物をボ-ルミルにて混合分散して磁性塗料を調製した。この塗料を厚さ15μmのポリエチレンテレフタレ-トフイルム上に乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布して磁場配向し、乾燥したのちカレンダー処理を施して磁気テープを作製した。」(第3頁右上欄8行?右下欄2行) 4.引用例1に記載された発明 引用例1には、非磁性支持体上に主に磁性粉末とバインダよりなる磁性層が形成されている磁気記録媒体において、上記磁性層中に潤滑性を示す分子構造部分とN-アミルエチレンイミン鎖(当審注:「アミル」はペンチル基(C_(5)H_(11)-)を意味する用語であるが、引用例1の請求項3の記載(摘記1-1)及び一般式(I)?(III)(摘記1-2)からみて、引用例1に記載された「N-アミル」は「N-アシル」の誤記と認められる。以下、同じ。)グラフトまたはブロック共重合体を含有させた磁気記録媒体が記載されており(摘記1-1)、当該磁気記録媒体は、常法に準じてポリエステルフィルムなどの非磁性支持体上に磁性粉末とバインダと上記共重合体を含む磁性塗料を塗布乾燥して磁性層を形成したのち、カレンダ処理などの適宜の表面処理を施し、所要の大きさ、形状に裁断して製造されること(摘記1-3)、上記グラフトまたはブロック共重合体は、摘記(1-2)に記載されるとおりの一般式(I)?(III)で示される分子構造を有すること、また、バインダとしては、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、ポリエステル系樹脂、繊維素系樹脂、ポリビニルブチラ-ル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ-ル系樹脂、架橋剤としてのポリイソシアネ-トなどが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよいこと(摘記1-4)が記載されている。さらに、上記磁性塗料の具体例として、実施例1において、 γ-Fe_(2)O_(3)粉末(平均長軸径0.4μm、平均軸比8) 80部 ニトロセルロース(旭化成社製セルノバH1) 15部 ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製、N-2301) 10部 ポリジメチルシロキサン-N-アシルエチレンイミンブロック共重合体 2部 ベンガラ(平均粒子径0.4μm) 5部 アルミナ(平均粒子径0.4μm) 5部 カーボンブラック(S_(BET.)300m2/g)5部 3官能性イソシアネ-ト化合物(日本ポリウレタン社製、コロネ-トL) 5部 シクロヘキサノン-トルエン混合溶媒(混合重量比1:1) 200部 からなる組成物をボ-ルミルにて混合分散して磁性塗料を調製したこと、及びこの塗料を厚さ15μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の厚さが5μmとなるように塗布して磁場配向し、乾燥したのちカレンダー処理を施して磁気テープを作製したこと(摘記1-5)が記載されている。 そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されているものと認められる。 「磁性粉末と、バインダと、ポリジメチルシロキサン-N-アシルエチレンイミンブロック共重合体とを含む磁性塗料であって、上記バインダがニトロセルロース、ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製、N-2301)及び架橋剤としての3官能性イソシアネート化合物を含有し、上記ポリジメチルシロキサン-N-アシルエチレンイミンブロック共重合体は、一般式(I)?(III)(式の定義は摘記1-2を参照。)で示される分子構造を有するものである、磁性塗料。」(以下、「引用発明」という。) 5.本願発明14と引用発明との対比 本願発明14と引用発明とを対比する。引用発明における「ポリジメチルシロキサン-N-アシルエチレンイミンブロック共重合体」について検討すると、当該共重合体を表す一般式(I)?(III)の分子構造のうちの一般式(II)で表される分子構造は、「ポリジメチルシロキサン」を表しており、本願発明14における「ポリシロキサン-ポリオキサゾリンコポリマー」のうちの「ポリシロキサン」に相当する。また、引用発明における上記一般式(I)及び(III)で表される分子構造は、「N-アシルエチレンイミン」を表しており、本願発明14のポリオキサゾリンブロックが本願明細書の段落[0022]の構造式(B)で表される構造を有するものであることを考慮すると、本願発明14における「ポリシロキサン-ポリオキサゾリンコポリマー」のうちの「ポリオキサゾリン」に相当する。よって、引用発明における「ポリジメチルシロキサン-N-アシルエチレンイミンブロック共重合体」は、本願発明14における「ポリシロキサン-ポリオキサゾリンコポリマー」に相当する。また、引用発明における「塗料」は、本願発明14における「塗装材料組成物」に相当する。 そうすると、本願発明14と引用発明とは、 「ポリシロキサン-ポリオキサゾリンコポリマーを含む塗装材料組成物。」 の点で一致し、 相違点1:本願発明14の塗装材料組成物は「熱硬化性」であるのに対し、引用発明の塗料はそのようなことが明らかでない点 で一応相違する。そこで、上記相違点について検討する。 6.相違点1について 引用発明は、バインダがニトロセルロース、ポリウレタン樹脂(日本ポリウレタン社製、N-2301)及び架橋剤としての3官能性イソシアネート化合物を含有する塗料であるところ、上記日本ポリウレタン社製「N-2301」は水酸基を有するポリウレタン樹脂であると認められる(もし必要であれば、特開2007-184213号公報の[0022]、特開昭59-8129号公報の第2頁右上欄14行?左下欄2行等を参照。なお、これらの文献の上記箇所には、日本ポリウレタン工業(株)製の「ニッポラン2301」又は「ニッポラン-2301」という商品名が記載されているが、特開昭59-8129号公報の実施例1(特に、第3頁左下欄18?19行を参照。)には、対応する成分として「N-2301(日本ポリウレタン工業(株)製ポリウレタン平均分子量約70000)」を用いたことが記載されていることから、「ニッポラン-」の略称として「N-」が用いられることがあると理解することができ、引用例1に記載された日本ポリウレタン社製「N-2301」も、同じく「ニッポラン-2301」の略称であると理解することができる。)。また、引用発明の塗料は、常法に準じてポリエステルフィルムなどの非磁性支持体上に塗布して磁場配向し、乾燥したのちカレンダー処理を施し、所定の大きさ、形状に裁断して磁気記録媒体を製造するために使用されるものであるところ(摘記1-3、1-5)、磁気記録媒体の製造における乾燥工程やカレンダー処理の工程においては、塗膜に熱がかかることが一般的であるから(もし必要であれば、特開昭62-60125号公報の第4頁右上欄5行?左下欄11行、特開平6-36260号公報の[0018]、[0020]、[0022]?[0023]、特開平6-325346号公報の[0056]?[0057]、[0059]等を参照。)、引用発明の塗料は、非磁性支持体上に塗布された後の工程において、少なくともバインダに含まれる日本ポリウレタン社製N-2301(水酸基を有するポリウレタン樹脂)及び架橋剤としての3官能性イソシアネート化合物が熱により架橋反応し、硬化するものと認められる。そうすると、引用発明の塗料は熱硬化性であるといえるから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。 よって、本願発明14は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、仮に、引用例1には引用発明の塗料を熱硬化させることが具体的には明記されていないとしても、磁気記録媒体の製造に用いられる磁性塗料の技術分野において、ポリウレタン樹脂及びイソシアネート基含有硬化剤の組合せを含むバインダを用いることにより、磁性塗料を熱硬化性塗料として構成することは周知の技術的事項であり(もし必要であれば、特開昭60-61922号公報の特許請求の範囲、第2頁右下欄19行?第2頁左上欄9行、第3頁左上欄11行?右上欄13行、特開昭63-239620号公報の特許請求の範囲、第5頁左下欄16行?右下欄13行第6頁左上欄11行?右上欄3行等を参照。)、また、上記のとおり、磁気記録媒体の製造工程において、磁性塗料を塗装した後の乾燥、カレンダー処理等の工程において、塗膜に熱がかかることも一般的なことであるから、水酸基を有するポリウレタン樹脂及び架橋剤としての3官能性イソシアネート化合物を含有する引用発明の磁性塗料を熱硬化性塗料として構成することは、当業者が容易に想到し得たことと認められ、それにより格別の効果が得られるものとも認められない。 よって、本願発明14は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明14は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-12 |
結審通知日 | 2017-10-17 |
審決日 | 2017-10-30 |
出願番号 | 特願2014-541650(P2014-541650) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(C09D)
P 1 8・ 121- Z (C09D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 安藤 達也 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
原 賢一 天野 宏樹 |
発明の名称 | 塗装材料組成物および成形材料における変性ポリシロキサンの使用 |
代理人 | 大谷 保 |