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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1338720
審判番号 不服2017-8511  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-12 
確定日 2018-04-10 
事件の表示 特願2015-135116「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-172976、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月28日(優先権主張 平成23年5月27日)に出願された特願2012-121267号の一部を、平成27年7月6日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月6日付けで手続補正がされ、平成28年8月24日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年10月28日付けで意見書が提出されたが、平成29年3月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成29年6月12日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年10月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-152736号公報


第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」という。)は、平成27年7月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
複数の入力オブジェクトを表示する表示部と、
接触を検出する接触検出部と、
前記接触検出部に対する押圧を検出する押圧検出部と、
前記接触検出部により前記表示部に表示された入力オブジェクトに対応する位置の接触が検出され、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが前記入力オブジェクトの所定の基準を満たすと、前記入力オブジェクトに関連付けられた処理を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、隣り合う前記入力オブジェクトを前記所定の基準が異なるように配置することを特徴とする電子機器。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関するものであり、特に、タッチパネルを有する入力装置に関するものである。」

イ.「【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の実施の形態では、本発明の入力装置を具える携帯端末の一例として、携帯電話を想定して説明する。しかしながら、本発明の入力装置が適用できる携帯端末は携帯電話に限定されるものではなく、例えばPDAなどタッチパネルを有する任意の携帯端末などに適用できる。また、本発明は、タッチパネルを有する携帯端末に限定されるものでもなく、上述したような銀行のATMや駅の券売機など、タッチパネルを有する任意の入力端末にも適用できる。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力装置を備える携帯電話10の概略構成を示す外観斜視図である。この携帯電話10は、端末本体の前面に、一部切り欠いて示すように、液晶ディスプレイ(LCD)または有機ELディスプレイなどに種々の情報およびキーやボタンなどの形状を描画してこれらの配列を表示する表示部32を備えている。また、この表示部32の前面には、ユーザの指やスタイラスペンなどによる入力を受け付けるマトリクススイッチ等で構成した入力部34を配設する。本実施の形態では、これら表示部32と入力部34とを含めてタッチパネル30を構成している。携帯電話10はさらに、マイクなどにより構成される音声入力部70、スピーカなどにより構成される音声出力部80、および、少なくとも1つの機械的なキーにより構成されるキー入力部90も備えている。
【0030】
他にも、携帯電話10は、必要な機能に応じて、デジタルカメラ機能部、ワンセグ放送用チューナ、赤外線通信機能部などの近距離無線通信部、および各種インタフェース等を備える場合もあるが、これらの詳細については図示および説明を省略する。
【0031】
図2は、本実施の形態に係る携帯電話10の内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。図2に示すように、携帯電話10は、制御部20と、タッチパネル30と、荷重検出部40と、振動部50と、記憶部60と、音声入力部70と、音声出力部80と、キー入力部90と、を備えている。制御部20は、携帯端末10の各機能ブロックをはじめとして携帯端末10全体を制御および管理する。タッチパネル30は、上述したように、ユーザからの入力を受け付ける入力部34を、表示部32の前面に重畳させて配設することにより構成する。このような構成により、タッチパネル30は、ユーザからの操作入力を受け付けると共に、各アプリケーションプログラム(以下、「アプリケーション」と略記する)に応じて入力結果など各種情報の表示を行う。
【0032】
タッチパネル30の入力部34は、ユーザの指先やスタイラス等の接触(押圧)による入力を検知することにより、当該接触による入力が検知された位置に対応する信号を出力する。このタッチパネル30は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式などの公知のものを用いて構成する。表示部32は、各アプリケーションに対応する表示を行う他、入力部34へのユーザの操作入力を受け付ける各種キーやボタンなどで構成するユーザインタフェースを所定の表示領域に描画して表示する。本実施の形態においては、このように、タッチパネル30の入力部34に対するユーザの操作入力を受け付けるために、表示部32に表示する各種キーやボタンなどの画像を「入力用オブジェクト」と記す。
【0033】
荷重検出部40は、タッチパネル30(または入力部34)に対する押圧荷重を検出するもので、例えば歪みゲージセンサを用いて構成する。振動部50は、タッチパネル30を振動させるもので、例えば、圧電素子または超音波振動子などを用いて構成する。なお、荷重検出部40および振動部50と、タッチパネル30との構成上の関係については後述する。」

ウ.「【0043】
本実施の形態に係る入力装置は、制御部20において、入力部34で検知される入力を監視するとともに、荷重検出部40で検出される押圧荷重を監視する。制御部20は、入力部34で検知された押圧入力が表示部32に表示された入力用オブジェクトに対する入力で、かつ、荷重検出部40により検知される押圧荷重が、当該入力を受け付ける際の所定の基準を満たした際に、当該入力を正規の入力として受け付ける。以下、このような「入力を受け付ける際の基準」を、単に「荷重基準」と記す。なお、荷重検出部40は、例えば、4つの歪みゲージセンサの出力の平均値から荷重を検出する。」

エ.「【0046】
以下、本実施の形態による、入力用オブジェクトの荷重基準設定処理を行うための初期設定について説明する。本実施の形態では、入力用オブジェクトの荷重基準設定処理を行う前提として、まず、表示部32に表示されている入力用オブジェクトに対して通常の操作入力を行うための、入力部34に入力がされたと判定する荷重基準P1を予め設定する。この際、荷重基準の値P1は、ユーザが表示部32に対して通常の操作入力を行う際の普段の押圧力に基づいて設定する。この設定に基づいて、ユーザが通常の操作入力を行う際の普段の押圧力として、P1(A1)を超える押圧荷重が荷重検出部40によって検出された場合、制御部20は、表示部32に表示されている入力用オブジェクトが押下されたと判定する。また、(A1の後)押圧された入力用オブジェクトに対してP1(A2)を割り込んだ押圧荷重が荷重検出部40によって検知された場合、制御部20は、押下中の入力用オブジェクトに対する操作入力が完了(確定)したと判定する。
【0047】
このように、荷重基準の値P1を設定することにより、ユーザが入力部34にごく軽く触れただけで入力として判定してしまうことを防ぎ、これにより、ユーザの意図しない入力を回避することができる。
【0048】
また、このように荷重基準の値P1を設定することにより、入力部34上で同一位置(同じ入力用オブジェクト)を連続して複数回押圧する連打入力を行う場合、ユーザは、1回の入力ごとに入力部34から指を離すことなく連打入力を行うことができる。すなわち、入力部34上にユーザの指が触れたままであっても、ユーザは、指の押圧力の強弱を調整して、荷重基準の値P1に対して連続して押圧力を上下させるような入力を行うことにより、当該入力を連打入力として入力部34に認識させることができる。このような入力方法は、ユーザにとっては指を動かすストロークが少なくて済むため、ユーザは、この入力方法に習熟することにより、より少ない動きで素早く楽に入力を行うことができる。
【0049】
次に、本実施の形態では、ユーザが入力部34に対して通常の操作入力を行う際の普段の押圧力よりも大きな(強い)押圧力に基づいて、荷重基準の値P2を設定する。本実施の形態では、このように設定した荷重基準の値P2を超える押圧を、上述した荷重基準の値がP1である入力用オブジェクトと隣り合っている入力用オブジェクトに対する入力として受け付ける。このため、荷重基準の値がP1の入力用オブジェクトと隣り合っている入力用オブジェクトに対して、P1より大きな押圧力P2(B1)を超える押圧荷重が荷重検出部40によって検出された場合、制御部20は、当該隣り合っている入力用オブジェクトが押下されたと判定する。また、(B1の後)押圧された当該隣り合っている入力用オブジェクトに対してP2(B2)を割り込んだ押圧荷重が荷重検出部40によって検出された場合、制御部20は、押下中の入力用オブジェクトに対する操作入力が完了(確定)したと判定する。すなわち、制御部20は、表示部32に表示されている入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準P1よりも、当該入力用オブジェクトと隣り合って表示された入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準を高く(P2)するように制御する。
【0050】
したがって、荷重基準の値がP1の入力用オブジェクトと隣り合っている入力用オブジェクトに対して、ユーザが通常の操作入力を行う際の普段の(P2に達しない)押圧力で押圧しても、この押圧入力は、当該隣り合っている入力用オブジェクトに対する入力として受け付けられない。ユーザが通常の操作入力を行う際の普段の押圧力(P1)よりも大きなP2を超える押圧力で押圧された場合に初めて、この押圧入力は、当該隣り合って表
示された入力用オブジェクトに対する入力として受け付けられる。
【0051】
なお、上述の説明では、例として、荷重基準(P1,P2)の値を「押圧荷重のしきい値」に見立て、荷重基準の値を「超えた」場合に「荷重基準が満たされた」と判定する態様について説明した。以下も、このような態様により判定する場合について説明するが、「荷重基準が満たされた」と判定できる態様はこれに限定されるものではなく、いくつもの態様を含むことが想定できる。例えば、入力用オブジェクトに対するユーザの押圧入力による押圧荷重が上記荷重基準の値に「達した」場合に荷重基準が満たされたと判定することもできる。また、上記荷重基準の値を示す押圧荷重が荷重検出部40によって「検出された」場合に荷重基準が満たされたと判定することもできる。
【0052】
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施の形態による入力用オブジェクトの荷重基準設定処理について説明する。本実施の形態による入力用オブジェクトの荷重基準設定処理は、制御部20が、入力用オブジェクトにより構成されるユーザインタフェースをタッチパネル30の表示部32上に表示するアプリケーションを起動する要求(命令)を受けることにより開始する。ユーザインタフェースを表示するアプリケーションを起動する命令を受けると、制御部20は、記憶部60に記憶されている各種ユーザインタフェースのテンプレートの中から、上述した要求に対応するテンプレートを読み込む(ステップS1)。
【0053】
ユーザインタフェースのテンプレートを読み込んだら、制御部20は、テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数であるか否かを判定する(ステップS2)。テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数である場合、制御部20は、次に、隣り合った入力用オブジェクトが所定の間隔未満で配置される仕様になっているか否かを判定する(ステップS3)。なお、所定の間隔については、後述する。テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数で、かつ、隣り合った入力用オブジェクトが所定の間隔未満で配置される場合、制御部20は、これらの入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違(P1およびP2)するように、各入力用オブジェクトの荷重基準を設定する(ステップS4)。
【0054】
ステップS4にて各入力用オブジェクトの荷重基準の設定が完了したら、制御部20は、これらの各入力用オブジェクトを表示部32に表示して、ユーザからの入力を受け付ける(ステップS5)。なお、ステップS2において入力用オブジェクトが複数でない場合、すなわち入力用オブジェクトが1つしかない場合には、当該入力用オブジェクトに通常の荷重基準(P1)を設定してから(ステップS6)、ステップS5に移行する。また、ステップS3において複数の入力用オブジェクトが互いに所定の間隔以上の間隔で配置される場合にも、それらの入力用オブジェクトに通常の荷重基準(P1)を設定してから(ステップS6)、ステップS5に移行する。
【0055】
以上の処理により、複数の入力用オブジェクトが隣り合って配置される場合に、各入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違する態様で配置される。前述した所定の間隔とは、入力用オブジェクト同士の間隔が当該所定の間隔未満の場合、ユーザが入力を誤って、意図する入力用オブジェクトとは異なる入力用オブジェクトを押圧してしまう可能性が高まるとして設定する間隔である。ここで、所定の間隔として設定される間隔は、入力用オブジェクト同士の端部から端部の距離とすることができるし、また、入力用オブジェクト同士の中心部から中心部の距離とすることもできる。以下、上述した処理の結果を、典型的な実施例につき具体的に説明する。」

上記記載(特に、下線部)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

〈引用発明〉

「制御部20と、タッチパネル30と、荷重検出部40と、振動部50と、記憶部60と、音声入力部70と、音声出力部80と、キー入力部90と、を備えている携帯電話10であって、
前記タッチパネル30は、ユーザからの入力を受け付ける入力部34を、表示部32の前面に重畳させて配設され、ユーザからの操作入力を受け付けると共に、各アプリケーションに応じて入力結果など各種情報の表示を行い、
前記入力部34は、ユーザの指先やスタイラス等の接触(押圧)による入力を検知することにより、当該接触による入力が検知された位置に対応する信号を出力し、
前記表示部32は、各アプリケーションに対応する表示を行う他、入力部34へのユーザの操作入力を受け付ける各種キーやボタンなどの入力用オブジェクトで構成するユーザインタフェースを所定の表示領域に描画して表示し、
前記荷重検出部40は、タッチパネル30または入力部34に対する押圧荷重を検出するものであり、
前記制御部20は、前記入力部34で検知される入力を監視するとともに、前記荷重検出部40で検出される押圧荷重を監視し、前記入力部34で検知された押圧入力が前記表示部32に表示された入力用オブジェクトに対する入力で、かつ、前記荷重検出部40により検知される押圧荷重が、当該入力を受け付ける際の荷重基準を満たした際に、当該入力を正規の入力として受け付けるものであって、
前記制御部20は、入力用オブジェクトの荷重基準設定処理を、入力用オブジェクトにより構成されるユーザインタフェースをタッチパネル30の表示部32上に表示するアプリケーションを起動する要求(命令)を受けることにより開始し、ユーザインタフェースを表示するアプリケーションを起動する命令を受けると、記憶部60に記憶されている各種ユーザインタフェースのテンプレートの中から、上述した要求に対応するテンプレートを読み込み、テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数であるか否かを判定し、テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数である場合、隣り合った入力用オブジェクトが所定の間隔未満で配置される仕様になっているか否かを判定し、テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数で、かつ、隣り合った入力用オブジェクトが所定の間隔未満で配置される場合、これらの入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違(P1およびP2)するように、各入力用オブジェクトの荷重基準を設定し、各入力用オブジェクトの荷重基準の設定が完了したら、これらの各入力用オブジェクトを表示部32に表示し、
複数の入力用オブジェクトが隣り合って配置される場合に、各入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違する態様で配置される携帯電話10。」


第5 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「入力用オブジェクト」は、本願発明1の「入力オブジェクト」相当する。
そして、引用発明の「表示部32」は、「各アプリケーションに対応する表示を行う他、入力部34へのユーザの操作入力を受け付ける各種キーやボタンなどの入力用オブジェクトで構成するユーザインタフェースを所定の表示領域に描画して表示」するものであるから、引用発明の「表示部32」は、本願発明1の「複数の入力オブジェクトを表示する表示部」に相当する。

イ.引用発明の「入力部34」は、「ユーザの指先やスタイラス等の接触(押圧)による入力を検知する」ものであるから、本願発明1の「接触を検出する接触検出部」に相当する。

ウ.引用発明の「荷重検出部40」は、「タッチパネル30または入力部34に対する押圧荷重を検出するもの」であるから、本願発明1の「前記接触検出部に対する押圧を検出する押圧検出部」に相当する。

エ.引用発明の「荷重基準」は、本願発明1の「所定の基準」に相当する。
そして、引用発明の「制御部20」は、「前記入力部34で検知される入力を監視するとともに、前記荷重検出部40で検出される押圧荷重を監視し、前記入力部34で検知された押圧入力が前記表示部32に表示された入力用オブジェクトに対する入力で、かつ、前記荷重検出部40により検知される押圧荷重が、当該入力を受け付ける際の荷重基準を満たした際に、当該入力を正規の入力として受け付けるもの」であり、通常、「入力用オブジェクト」に対する「入力」が「正規」のものとして「受け付け」られたら、「制御部20」は、「入力用オブジェクト」に関連付けられた処理が行うものと認められるから、引用発明の「制御部20」は、本願発明1の「前記接触検出部により前記表示部に表示された入力オブジェクトに対応する位置の接触が検出され、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが前記入力オブジェクトの所定の基準を満たすと、前記入力オブジェクトに関連付けられた処理を行う制御部」に相当する。

オ.引用発明の「携帯電話10」は、本願発明の「電子機器」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。


(一致点)
「複数の入力オブジェクトを表示する表示部と、
接触を検出する接触検出部と、
前記接触検出部に対する押圧を検出する押圧検出部と、
前記接触検出部により前記表示部に表示された入力オブジェクトに対応する位置の接触が検出され、前記押圧検出部により検出される押圧に基づくデータが前記入力オブジェクトの所定の基準を満たすと、前記入力オブジェクトに関連付けられた処理を行う制御部と、を有する、
電子機器。」

(相違点)
本願発明1では、「前記制御部は、隣り合う前記入力オブジェクトを前記所定の基準が異なるように配置する」ものであるのに対して、
引用発明では、「制御部20」が「隣り合った入力用オブジェクト」「に対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違(P1およびP2)するように、各入力用オブジェクトの荷重基準を設定」するものである点。

(2)相違点についての判断
相違点について検討する。
引用発明は、「記憶部60に記憶されている各種ユーザインタフェースのテンプレートの中から、上述した要求に対応するテンプレートを読み込み」、該「テンプレートに含まれる入力用オブジェクトが複数で、かつ、隣り合った入力用オブジェクトが所定の間隔未満で配置される場合、これらの入力用オブジェクトに対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違(P1およびP2)するように、各入力用オブジェクトの荷重基準を設定」し「表示」するものであって、そして、通常、「テンプレート」における「入力用オブジェクト」の配置は予め決まったものといえる。
してみると、引用発明の「制御部20」は、「入力用オブジェクト」を「テンプレート」の予め決められた配置になるように表示するものであって、荷重基準が異なるように配置していないことから、「制御部20」が、「入力用オブジェクト」に対して「荷重基準が相違(P1およびP2)するよう」に設定することをもって、「制御部20」が、「入力用オブジェクト」を荷重基準が異なるように配置するものとはいえない。
さらに、引用発明において、「制御部20」が「隣り合った入力用オブジェクト」「に対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違(P1およびP2)するように」「荷重基準を設定」することに代えて、「制御部20」が、隣り合う「入力用オブジェクト」の荷重基準が異なるように配置するためには、配置する前に、各「入力用オブジェクト」に対して荷重基準を設定する必要があるが、その場合、引用発明では適宜荷重基準を設定できるものと認められることから、当然、「隣り合った入力用オブジェクト」で荷重基準が相違(P1およびP2)するように、各入力用オブジェクトの荷重基準を設定するものと認められ、してみると、隣り合う「入力用オブジェクト」の荷重基準が異なるように配置する必要性がなくなってしまうことから、引用発明において、「隣り合った入力用オブジェクト」「に対する押圧入力を受け付ける荷重基準が相違(P1およびP2)するように、各入力用オブジェクトの荷重基準を設定」することに代えて、「制御部20」が、隣り合う「入力用オブジェクト」の荷重基準が異なるように配置することはできないものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえない。
そして、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1に記載された発明とはいえない。
そして、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-26 
出願番号 特願2015-135116(P2015-135116)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菊池 智紀  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山澤 宏
松田 岳士
発明の名称 電子機器  
代理人 太田 昌宏  
代理人 杉村 憲司  
代理人 甲原 秀俊  

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