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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1338733
審判番号 不服2015-5237  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-03-18 
確定日 2018-03-22 
事件の表示 特願2011-132273「グラフィックユーザインタフェースを介してプロセス制御情報を表示する方法、システム、及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月1日出願公開、特開2011-243208〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2005年(平成17年)5月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年5月4日 米国)を国際出願日とする特願2007-511530号の一部を2011年6月14日に新たな特許出願としたものであって、平成24年11月12日付けで拒絶の理由が通知され、平成25年5月17日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、さらに同年12月4日付けで最後の拒絶の理由が通知され、平成26年3月6日に意見書の提出とともに手続補正がなされた後、再度同年6月11日付けで最初の拒絶の理由が通知され、同年9月17日に意見書の提出とともに手続補正がなされたが、同年11月12日付けで拒絶査定された。
これに対して、平成27年3月18日に拒絶査定に対する審判請求と同時に手続補正がなされ、平成28年5月11日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年9月21日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年12月26日付けでさらに拒絶の理由が通知され、それに対して平成29年4月7日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成29年4月7日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1及び2の記載は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
グラフィックユーザインタフェースを介して、配置された表示パネルにプロセス制御情報を表示する方法であって、
複数の前記表示パネルを有する作業空間フレームワークを構築し、
前記複数の表示パネルの各々に少なくとも1つのコンテンツカテゴリを割り当て、前記コンテンツカテゴリの各々は、ライブプロセス制御データ、履歴プロセス制御データ、アラームデータ、及びイベントデータを含むグループから選択され、前記コンテンツカテゴリは、グラフィック、テキスト、傾向、及びアラームを含むグループから選択される、対応する異なる情報の種類の1つに関連付けられており、
アプリケーションから前記プロセス制御情報を受信し、前記アプリケーションには、前記情報の種類の1つが関連付けられており、
描画される表示に関連付けられた前記コンテンツカテゴリと、前記複数の表示パネルの各々に関連付けられた前記コンテンツカテゴリとを比較し、
前記アプリケーションに関連付けられた前記情報の種類に関連付けられた前記コンテンツカテゴリに割り当てられた前記複数の表示パネルの1つに、受信した前記プロセス制御情報を前記比較に基づいて表示する、
方法。
【請求項2】
前記複数の表示パネルを有する前記作業空間フレームワークを構築することが、前記複数の表示パネルによって定義される矩形ディスプレイを介して表示されるように配列される固定パネルの集合体を構築することを含む請求項1に記載の方法。」

そして、上記請求項1及び2の記載からみて、請求項1を引用する請求項2に係る発明は、以下のようになると認められる。
「グラフィックユーザインタフェースを介して、配置された表示パネルにプロセス制御情報を表示する方法であって、
複数の表示パネルによって定義される矩形ディスプレイを介して表示されるように配列される固定パネルの集合体を構築し、
前記複数の表示パネルの各々に少なくとも1つのコンテンツカテゴリを割り当て、前記コンテンツカテゴリの各々は、ライブプロセス制御データ、履歴プロセス制御データ、アラームデータ、及びイベントデータを含むグループから選択され、前記コンテンツカテゴリは、グラフィック、テキスト、傾向、及びアラームを含むグループから選択される、対応する異なる情報の種類の1つに関連付けられており、
アプリケーションから前記プロセス制御情報を受信し、前記アプリケーションには、前記情報の種類の1つが関連付けられており、
描画される表示に関連付けられた前記コンテンツカテゴリと、前記複数の表示パネルの各々に関連付けられた前記コンテンツカテゴリとを比較し、
前記アプリケーションに関連付けられた前記情報の種類に関連付けられた前記コンテンツカテゴリに割り当てられた前記複数の表示パネルの1つに、受信した前記プロセス制御情報を前記比較に基づいて表示する、
方法。」(以下「本願発明」という)

3 当審が通知した拒絶の理由の概要
当審が平成28年5月11日付けで通知した拒絶の理由の「理由3」の概要は、以下のとおりである。
本件の請求項1ないし18に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特表2001-501006号公報
刊行物2:特開2000-194474号公報

4 刊行物の記載
(1)当審が通知した上記拒絶の理由において、刊行物1として引用した特表2001-501006号公報には、「マルチウィンドウ・ディスプレイにおけるディスプレイ・カテゴリ区分け方法」について、図1?10とともに次の事項が記載されている。

ア 「発明の概要
したがって、本発明により、ソフトウェア・アプリケーション・ディスプレイをカテゴリ別に編成し、これらのディスプレイのその後の管理を行う方法が得られる。1つまたは複数の物理スクリーンの表示面を有するディスプレイ・システムのコンピュータ・ウィンドウ・ディスプレイを制御する方法は、複数のアプリケーションが表示面の調整された所定の領域にカテゴリ別に表示される、統合作業域を実現する。表示面に入力される要求に応答して、要求されたアプリケーション・ディスプレイが作成される。要求されたディスプレイのカテゴリが確認される。要求されたディスプレイのカテゴリと構成ファイル内のエントリとの間の一致を求めて、構成ファイルで探索が行われる。カテゴリの一致が見つかると、ディスプレイの位置および大きさを得るためのディスプレイ特性データが、他のディスプレイ特性データと共に得られる。ポインタは当該カテゴリの表示領域の次に利用可能な領域を指し、要求されたディスプレイが作成され、選択された利用可能なウィンドウ内に配置される。
したがって、本発明の目的は、ソフトウェア・アプリケーション・ディスプレイを編成する方法を提供することである。」(6ページ1-16行)

イ 「第1図を参照すると、本発明を使用することができる好適な環境のプロセス制御システム10のブロック図が示されている。プロセス制御システム10はプラント制御ネットワーク11を含み、プロセスコントローラ20’に接続されるデータ・ハイウェイ12が接続されている。」(7ページ下から9-下から6行)

ウ 「プロセスコントローラ20、20’は、弁、圧力スイッチ、圧力計、熱電対・・・を含む制御対象プロセスの様々なフィールド装置(図示せず)からプロセス制御システム10へのアナログ入出力信号およびディジタル入出力信号(それぞれA/I、A/O、D/I、およびD/O)をインタフェースする。」(8ページ6-10行)

エ 「プラント制御ネットワーク(またはより簡単にネットワーク)11は、工場オペレータと共に制御対象プロセスの包括的な監督を行い、監督機能を実行するために必要な全ての情報を獲得し、オペレータとのインタフェースを含む。プラント制御ネットワーク11は複数の物理モジュール(またはノード)を含む。これは、制御対象プロセスの必要な制御/監督機能を実行するために必要に応じて汎用オペレータ・ステーション(US)122、アプリケーション・モジュール(AM)124、履歴モジュール(HM)126、コンピュータ・モジュール(CM)128、およびこれらのモジュールの(バックアップまたは2次的な)複製(および図示はしていないが、追加のタイプのモジュール)を含む。」(8ページ11-19行)

オ 「アプリケーション・モジュール(AM)124は、データ獲得、警報通知、バッチ履歴収集など、プロセス制御サブシステム20、20’に関連して、制御装置によって実行されるプロセス制御機能をサポートする上で、追加のデータ処理能力を有し、必要な場合には連続制御計算機能を実行する。アプリケーション・モジュール124のデータ処理能力は、モジュールに対応付けられたプロセッサ(図示せず)およびメモリ(図示せず)によってもたらされる。」(9ページ10-15行)

カ 「今から本発明の方法を組み込んだディスプレイ・システムについて説明する。第4図を参照すると、好適な実施形態の作業域マネージャ(WSM)ディスプレイ・システムのブロック図が示されている。作業域マネージャ・ディスプレイ・システムは、より簡単には作業域マネージャ124と呼ばれ、好適な実施形態のプロセス制御システム10のLCN120に結合される。作業域マネージャ(WSM)124は市販されているパーソナルコンピュータ(PC)であり、LCN120およびPCの(つまりWSM124の)内部BUS(PC BUS)131に結合されたLCNコプロセッサ127を含む。LCNコプロセッサ127は、上述のBIU32、モジュールBUS36、モジュールCPU38、およびモジュール・メモリ40を含む。この構成により、WSM124はLCN120およびそれに接続されたノードと連絡することができる。WSM124は、ディスプレイ125およびPC BUS131に結合された図形処理カード132を含む。イーサネットカード133により、WSM124は外部システム(つまり、LCN120に結合されていないシステム)に連絡することが可能になる。PCのマイクロプロセッサ(mr)134はPC BUS131に結合され、ウィンドウズNTオペレーティング・システムおよび作業域マネージャ・ソフトウェアを実行する。WSMメモリ135もPC BUS131に結合され、mr134で使用するための様々な情報(後述する構成ファイルを含む)を格納する。WSM124にコマンドを入力するために、キーボード130が含まれる。WSM124の好適な実施形態にはマウス・インタフェース136を装備する。」(13ページ13行-14ページ4行)

キ 「多数のウィンドウを秩序正しく制御された方法で表示するために、ディスプレイ125は所定の方法で構成(またはマップ)される。第5図を参照すると、WSM124のディスプレイ125の表示画面(ときには表示面と呼ばれる)(図示せず)の構成の一例が示されている。表示画面(または作業域)は、3つのカテゴリ、すなわち概略図、傾向、および警報に分割される。この作業域は、次のように構成される。
・概略図は、4つの初期ウィンドウが表示される領域に限定される。
・傾向は、作業域の右側に沿って固定位置に配置される。
・警報は、ディスプレイの下側に提示される。」(14ページ5-13行)

ク 「本発明の好適な実施形態では、概略図、傾向、および警報の3つのカテゴリが識別されている。したがって、WSMソフトウェアはディスプレイの種類の差異を区別することができ、作業域ディスプレイ領域の管理が可能である。選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求は、その後、選択されたアプリケーション・ディスプレイに対応付けられたカテゴリに構成されたウィンドウの1つに表示される。したがって、第5図の表示面構成の例を参照すると、以下で説明するように、概略図カテゴリのディスプレイは、ウィンドウ1、2、3、または4の領域に表示され、傾向カテゴリのディスプレイは、傾向1、2、3、または4の領域に表示され、警報カテゴリのディスプレイは、警報1または2の領域に表示される。」(18ページ最終行-19ページ9行)

ケ 図5からは、上記摘記事項キ及びクも勘案すると、複数のウィンドウで構成されるディスプレイ125の矩形の表示画面を介して表示されるように、ウィンドウ1?4、傾向1?4、警報1?2が秩序立てて構成(マップ)されていることが見て取れる。

(2)上記摘記事項カから見て、作業域マネージャ(WSM)ディスプレイ・システム124は、市販されているPCであり、図形処理カード132を介してディスプレイ125に表示をしており、OSがウィンドウズNTであり、マウス・インタフェース136を装備していることを総合すれば、「グラフィックユーザインターフェースを介して情報を表示する」ものと認められる。

(3)上記摘記事項オ及びカから見て、アプリケーション・モジュール(AM)124である作業域マネージャ(WSM)ディスプレイ・システム124は、データ獲得、警報通知、バッチ履歴収集等を可能とし、ディスプレイ125を有するものであるから、「プロセス制御情報を表示する」ものと認められる。

(4)上記摘記事項キから見て、作業域マネージャ(WSM)ディスプレイ・システム124のディスプレイ125の表示画面には、多数のウィンドウが配置されて情報を表示しているから、「配置されたウィンドウに情報を表示する」ものと認められる。

(5)上記(2)?(4)から、刊行物1には、「グラフィックユーザインターフェースを介して、配置されたウィンドウにプロセス制御情報を表示する方法」が記載されているといえる。

(6)上記認定事項ケから、刊行物1には、「複数のウィンドウで構成されるディスプレイ125の矩形の表示画面を介して表示されるように、ウィンドウ1?4、傾向1?4、警報1?2が秩序立てて構成(マップ)される」点が記載されているといえる。

(7)上記摘記事項キ及びクから見て、刊行物1には、「前記多数のウィンドウは3つのカテゴリに分割され、前記カテゴリは、概略図カテゴリ、傾向カテゴリ、警報カテゴリであり」という点が記載されているといえる。

(8)上記摘記事項ア及びクから見て、刊行物1には、「選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求を受け、前記アプリケーション・ディスプレイには、前記カテゴリが対応付けられており」という点が記載されているといえる。

(9)上記摘記事項ア及びクから見て、刊行物1には、「表示要求されたアプリケーション・ディスプレイに関連付けられたカテゴリと、前記多数のウィンドウの各々に関連付けられたカテゴリとの一致を確認し」た点が記載されているといえる。

(10)上記摘記事項ア及びクから見て、刊行物1には、「前記選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求は、前記選択されたにアプリケーション・ディスプレイに対応付けられたカテゴリに構成されたウィンドウの1つに、カテゴリの一致の確認に基づいて表示される」点が記載されているといえる。

(11)上記(5)?(10)から、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「グラフィックユーザインターフェースを介して、配置されたウィンドウにプロセス制御情報を表示する方法であって、
複数のウィンドウで構成されるディスプレイ125の矩形の表示画面を介して表示されるように、ウィンドウ1?4、傾向1?4、警報1?2が秩序立てて構成(マップ)され、
前記多数のウィンドウは3つのカテゴリに分割され、前記カテゴリは、概略図カテゴリ、傾向カテゴリ、警報カテゴリであり、
選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求を受け、前記アプリケーション・ディスプレイには、前記カテゴリが関連付けられており、
表示要求されたアプリケーション・ディスプレイに関連付けられたカテゴリと、前記多数のウィンドウの各々に関連付けられたカテゴリとの一致を確認し、
前記選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求は、前記選択されたアプリケーション・ディスプレイに対応付けられたカテゴリに構成されたウィンドウの1つに、カテゴリの一致の確認に基づいて表示される、
方法。」(以下「引用発明」という)

5 当審の判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「ウィンドウ」は、本願発明の「表示パネル」に相当する。
引用発明の「複数のウィンドウで構成されるディスプレイ125の矩形の表示画面を介して表示されるように、ウィンドウ1?4、傾向1?4、警報1?2が秩序立てて構成(マップ)され」た点は、ディスプレイ125の矩形の表示画面を、複数のウィンドウを配列して定義したことになり、ウィンドウ1?4、傾向1?4、警報1?2が秩序立ってマップされるのは、固定パネルの集合体を配列したことになるから、本願発明の「複数の表示パネルによって定義される矩形ディスプレイを介して表示されるように配列される固定パネルの集合体を構築し」たことに相当する。
引用発明の「前記多数のウィンドウは3つのカテゴリに分割され」た点は、本願発明の「前記複数の表示パネルの各々に少なくとも1つのコンテンツカテゴリを割り当て」た点に相当する。
引用発明の「選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求を受け」ることは、本願発明の「アプリケーションから前記プロセス制御情報を受信」することに相当する。また、引用発明の「前記アプリケーション・ディスプレイには、前記カテゴリが関連付けられており」という点は、本願発明の「前記アプリケーションには、前記情報の種類の1つが関連付けられており」という点とを対比すると、「前記アプリケーションには、前記コンテンツカテゴリの1つが関連付けられており」という点では一致する。
引用発明の「表示要求されたアプリケーション・ディスプレイに関連付けられたカテゴリと、前記多数のウィンドウの各々に関連付けられたカテゴリとの一致を確認し」は、本願発明の「描画される表示に関連付けられた前記コンテンツカテゴリと、前記複数の表示パネルの各々に関連付けられた前記コンテンツカテゴリとを比較し」に相当する。
引用発明の「前記選択されたアプリケーション・ディスプレイの表示要求」は、本願発明の「受信した前記プロセス制御情報」に相当する。また、引用発明の「カテゴリの一致の確認に基づいて表示される」ことは、本願発明の「前記比較に基づいて表示する」ことに相当する。さらに、引用発明の「前記選択されたアプリケーション・ディスプレイに対応付けられたカテゴリに構成されたウィンドウの1つ」と、本願発明の「前記アプリケーションに関連付けられた前記情報の種類に関連付けられた前記コンテンツカテゴリに割り当てられた前記複数の表示パネルの1つ」を対比すると、「前記アプリケーションに関連付けられた前記コンテンツカテゴリに割り当てられた前記複数の表示パネルの1つ」という事項では一致する。

そうすると、引用発明は、以下の点で本願発明と一致し、また相違する。
<一致点>
「グラフィックユーザインタフェースを介して、配置された表示パネルにプロセス制御情報を表示する方法であって、
複数の表示パネルによって定義される矩形ディスプレイを介して表示されるように配列される固定パネルの集合体を構築し、
前記複数の表示パネルの各々に少なくとも1つのコンテンツカテゴリを割り当て、
アプリケーションから前記プロセス制御情報を受信し、前記アプリケーションには、前記コンテンツカテゴリの1つが関連付けられており、
描画される表示に関連付けられた前記コンテンツカテゴリと、前記複数の表示パネルの各々に関連付けられた前記コンテンツカテゴリとを比較し、
前記アプリケーションに関連付けられた前記コンテンツカテゴリに割り当てられた前記複数の表示パネルの1つに、受信した前記プロセス制御情報を前記比較に基づいて表示する、
方法。」

<相違点>
本願発明のコンテンツカテゴリの各々は、「前記ライブプロセス制御データ、履歴プロセス制御データ、アラームデータ、及びイベントデータを含むグループから選択され、前記コンテンツカテゴリは、グラフィック、テキスト、傾向、及びアラームを含むグループから選択される、対応する異なる情報の種類の1つに関連付けられて」いるのに対し、引用発明のカテゴリは、概略図カテゴリ、傾向カテゴリ、警報カテゴリの3つであり、対応する異なる情報の種類の1つに関連付けられることについては不明である点。

(2)判断
相違点について検討する。
本願発明の表示パネルは、対応する異なる情報の種類の1つが関連付けられているコンテンツカテゴリが割り当てられるものであるから、例えば、「アラームデータ」というコンテンツカテゴリで「アラーム」という情報の種類が関連付けられ、アラーム表示を行う表示パネルが、作業空間フレームワークに設けられるものである。そして、描画される表示のコンテンツカテゴリが「アラームデータ」のものは、コンテンツカテゴリの比較に基づいて、上記アラーム表示を行う表示パネルに表示されることになる。
一方、引用発明において、ディスプレイ125の表示画面には、例えば、「警報」というカテゴリの表示画面がディスプレイの下側に提示されるものであり(上記刊行物1の摘記事項キを参照)、選択された「警報」カテゴリのアプリケーション・ディスプレイは、「警報」カテゴリが対応付けられた表示画面に表示されるものである(上記刊行物1の摘記事項クを参照)。そして、引用発明の「警報」カテゴリのアプリケーション・ディスプレイとは、アラーム表示されるものであるから、本願発明の情報の種類の「アラーム」に関連付けられることは、当然理解されるものである。また、引用発明の「警報」カテゴリは、アラーム表示する表示画面に割り当てられるから、そのコンテンツデータとしては「アラームデータ」が選択されるものである。そうすると、「アラーム」という情報の種類に関連付けられた「アラームデータ」のコンテンツカテゴリを割り当てられた表示パネルに、受信したプロセス制御情報を比較に基づいて表示するという点で、本願発明と引用発明とは一致しているものと認められる。
そして、引用発明において、表示されるアプリケーション・ディスプレイとしては、「警報カテゴリ」だけでなく、「概略図」カテゴリ及び「傾向カテゴリ」があり、これらは情報の種類としては本願発明の「グラフィック」及び「傾向」に相当するものと認められる。また、引用発明においては、情報の種類として「テキスト」に相当するものは不明であるが、コンピュータ・グラフィックの技術一般において、テキスト情報を表示する形態も周知のものであるから、引用発明において、コンテンツカテゴリに関連付けられる情報の種類の1つとして「テキスト」を含めることは、当業者であれば容易に想到するものといえる。
また、引用発明の上記表示されるアプリケーション・ディスプレイとは、刊行物1の摘記事項オ、キ及びクから、アプリケーションモジュール124が有する「データ獲得、警報通知、バッチ履歴収集など」、プロセス制御機能をサポートする追加のデータ処理能力によって作成・表示されるプロセス制御情報のことと理解される。そうすると、当該プロセス制御情報として、本願発明の「アラームデータ」に相当するものは、上記追加のデータ処理である「警報通知」を実行する際に得られ、上記例示したとおり「警報」カテゴリの表示画面に表示されるものであるが、それ以外にも、上記追加のデータ処理である「データ獲得」により本願発明の「ライブプロセス制御データ」及び「イベントデータ」に相当するものを獲得するとともに、上記追加のデータ処理である「バッチ履歴収集」により本願発明の「履歴プロセス制御データ」に相当するものが得られることも当業者には自明である。そして、これらのデータを本願発明の「コンテンツカテゴリ」と同様に適宜区分して表示画面をカテゴリ化することも、当業者にとって格別困難な事項ではない。
以上のことからみて、引用発明において、コンテンツカテゴリの各々を、「ライブプロセス制御データ、履歴プロセス制御データ、アラームデータ、及びイベントデータを含むグループから選択」するとともに、「グラフィック、テキスト、傾向、及びアラームを含むグループから選択される、対応する異なる情報の種類の1つに関連付け」るようにして、相違点に係る特定事項とすることは、当業者が容易に想到する事項というべきである。
また、本願発明によってもたらされる効果も、引用発明及び技術常識から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものではない。

(3)請求人の主張について
請求人は平成28年9月21日提出の意見書において、本願発明と刊行物1に記載された発明との差違について主張している([理由3(進歩性)に対して]を参照)。
しかし、上記意見書で主張する、本願発明と刊行物1に記載された発明との差違は、同日付けで提出した手続補正書に記載された請求項1に係る発明に基づいている。そして、請求人は上記意見書で「即ち、補正後の請求項1に係る発明は、情報の種類(即ち、グラフィック、テキスト、傾向、及びアラーム)が関連付けられたプロセス制御情報を受信し、受信したプロセス制御情報を情報の種類に関連付けれたコンテンツカテゴリ(即ち、ライブプロセス制御データ、履歴プロセス制御データ、アラームデータ、及びイベントデータ)が割り当てられた表示パネルに表示する、ことを特徴としております。・・・本願発明と比較するに、引用文献1、2には、補正後の請求項1に記載の上記特徴について、何ら開示も示唆もされておりません。」と述べているように、フィールドデバイスから受信したプロセス制御情報に、前記情報の種類の1つが関連付けられていることを特定事項としたものが、請求項1に係る発明であった。
当審では、一応請求人の上記主張を認めたが、一方、上記「フィールドデバイスから受信したプロセス制御情報に、前記情報の種類の1つが関連付けられている」ことを特定事項とした点が、発明の詳細な説明に記載されていないという、いわゆるサポート要件違反として、再度平成28年12月26日付けで拒絶の理由を通知した。
それに対して、平成29年4月7日に手続補正書が提出され、上記発明特定事項は、前記情報の種類の1つが関連付けられているものが、「プロセス制御情報」ではなく「アプリケーション」に補正された。そのため、上記意見書の主張の前提となる本願発明と刊行物1に記載された発明との差違が消滅し、本審決での当審の判断となったものである。
よって、上記請求人の主張を採用することはできない。

6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、拒絶をすべきものである。
よって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-18 
結審通知日 2017-10-24 
審決日 2017-11-07 
出願番号 特願2011-132273(P2011-132273)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 西村 泰英
栗田 雅弘
発明の名称 グラフィックユーザインタフェースを介してプロセス制御情報を表示する方法、システム、及び記憶媒体  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  

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