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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23K |
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管理番号 | 1338746 |
審判番号 | 不服2016-12562 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-19 |
確定日 | 2018-03-22 |
事件の表示 | 特願2014-547220「歯の状態を処置するための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月20日国際公開、WO2013/089842、平成27年 2月16日国内公表、特表2015-504657〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年(平成24年)8月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年12月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月17日に手続補正書が提出され、平成27年8月12日付けで拒絶理由が通知され、同年11月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同月17日に上申書が提出されたが、平成28年4月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成28年8月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年8月19日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明について、平成27年11月13日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「【請求項1】 歯垢、歯石、歯の汚れ、口臭、口内炎、歯肉炎、歯周炎およびそれらの組合せからなる群より選択される、非ヒト動物における歯の状態を処置または緩和する方法であって、 該処置または緩和の必要のある非ヒト動物に、0.8重量%?1.5重量%の量で乳酸を含有するフード組成物の有効量を与えることを含む、方法。」 を、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的として、 「【請求項1】 歯垢、歯石、歯の汚れ、口臭、口内炎、歯肉炎、歯周炎およびそれらの組合せからなる群より選択される、非ヒト動物における歯の状態を処置または緩和する方法であって、 該処置または緩和の必要のある非ヒト動物に、1.0?1.5重量%の量で乳酸を含有するフード組成物の有効量を与えることを含む方法。」 と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。) すなわち、この補正は、発明特定事項である「乳酸」の含有量について、補正前の「0.8重量%?1.5重量%」を「1.0?1.5重量%」に限定することを含むものである。 2 独立特許要件についての検討 (1)そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 (2)引用文献及び引用発明 ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2009-521274号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。 (引1-ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、ペットのような動物の歯科衛生を改善する噛み物物品に関する。また本発明は、こうした噛み物物品を噛むことにより、動物の歯上への歯石形成を防止する方法、及び動物の歯から歯石を除去する方法に関する。」 (引1-イ)「【0003】 歯垢及び歯石がかくまう微生物は、口腔内で感染症を引き起こし得るだけでなく、剥離した上皮細胞、食物の破片等からのイオウ含有タンパク性物質の代謝に起因する息の悪臭も引き起こし得る。息の悪臭は、コンパニオンアニマル所有者の共通の不満であり、この臭いを吸収する又は隠すために、様々な方法が開発されてきた。」 (引1-ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 歯石形成を遅らせるため、あるいは、ヒト及び動物、特にペットにおいて歯石が形成された後に歯石を除去するために、当該技術分野において、多種多様な生物・化学剤も提案されてきた。ヒトにおいては、この物質は、日常的に機械的除去されるが、動物に関して は、より問題である。」 (引1-エ)「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、消費する動物の歯科衛生を促進する噛み物物品、並びにこうした噛み物物品を噛むことによって、動物の歯上への歯石形成を抑制し、動物の歯からの歯石除去を容易にするための方法を提供する。本発明は、ペットのオーナーが、彼らのペット動物、例えば、典型的にはネコ及びイヌの口腔衛生を維持するための簡単で効果的な方法を提供する。 【0008】 本発明は、噛むことができる(chewable)物品の形態で供給される、使用する動物の歯科衛生を促進する成分の組合せを採用する。本発明は、抗菌(例えば、抗ウィルス、抗菌、及び抗カビを含む)組成物を採用する。これらの組成物は、例えば、多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールの脂肪族エーテル、あるいはこれらの(エステル又はエーテルのいずれかの)アルコキシル化誘導体のような1以上の抗菌脂質を含む。特定の実施形態では、組成物はまた、抗菌脂質の抗菌作用のためのエンハンサーとして役立つこともできる1以上の歯石制御構成成分も含む。他の実施形態では、組成物はまた、抗菌脂質の活性の範囲を広げることができ、速度を高めることができる、1以上の長鎖脂肪酸を含む。本発明の物品及び方法において使用される組成物は、微生物、特に細菌、真菌、及びウィルスを効果的に減少、防止又は除去することができる。本発明の組成物が、広域範囲の活性を有するように、微生物は、比較的多種多様であることが好ましい。 【0009】 要約すると、本発明の物品は、(a)食用噛み物ベース、(b)有効量の抗菌脂質、及び(c)(1)有効量の歯石制御剤又は(2)有効量の長鎖脂肪酸の少なくとも1つ、好ましくは両方を含む。要約すると、本発明の方法は、請求項1の物品を動物が噛むこと又は食べることを含む。 【0010】 本発明により、ペットなどの動物は、微生物の対象の口腔の少なくとも一部分のコロニー破壊(Decolonizing)を受けるであろう。その結果、動物の歯科衛生は、改善されるであろう。」 (引1-オ)「【0027】 噛み物ベース 噛み物ベースは、いかなる食用又は噛むことができる材料で作製されることもできる。具体例としては、生皮、様々な組成物のビスケット等が挙げられる。」 (引1-カ)「【0060】 典型的に、本発明の噛み物物品は、(1)有効量の歯石制御剤又は(2)エンハンサーとしての有効量の長鎖脂肪酸の少なくとも1つを含む。好ましくは、噛み物物品は、両構成成分を含むであろう。」 (引1-キ)「【0061】 歯石制御剤 本明細書において使用できる歯石制御剤の具体例には、長期のチューイング及び歯の表面の機械的洗浄を提供する食用タンパク性物質のマトリックス内のα-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、及びキレート剤が挙げられる。 【0062】 特定の実施形態においては、歯石制御構成成分は、カルボン酸を含むことが好ましい。特定の実施形態においては、歯石制御構成成分は、α-ヒドロキシ酸を含むことが好ましい。特定の実施形態においては、歯石制御構成成分は、クエン酸を含むことが好ましい。特定の実施形態においては、歯石制御構成成分は、キレート化剤を含むことが好ましい。特定の実施形態においては、歯石制御構成成分は、ヘキサメタリン酸及びその塩並びにピロリン酸及びその塩を含むことが好ましい。歯石制御構成成分は、特に大腸菌及びシュードモナス種のようなグラム陰性菌に対する抗菌活性を強化するためにも役立つ。 【0063】 望ましい結果を生むために、1以上の歯石制御構成成分を、適当な濃度で本発明の組成物において使用してよい。好ましい実施形態においては、これらは、すぐに使用できる(ready to use)組成物の総重量を基準として、0.01重量%を超える総量、より好ましくは0.1重量%を超える量、更により好ましくは0.2重量%を超える量、更により好ましくは0.25重量%を超える量、最も好ましくは0.4重量%を超える量で存在する。好ましい実施形態においては、それらは、すぐに使用できる(ready to use)組成物の総重量を基準として、20重量%以下の総量で存在する。 【0064】 α-ヒドロキシ酸。α-ヒドロキシ酸は、典型的に式: R^(5)(CR^(6)OH)_(n)COOH により表される化合物であり、式中、R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立してHあるいはC_(1)?C_(8)アルキル基(直鎖状、分枝状、又は環状)、C_(6)?C_(12)アリール、又はC_(6)?C_(12)アラルキル若しくはアルカリール基であり(ここでアルキル基は、直鎖状、分枝状、又は環状である)、R^(5)及びR^(6)は、所望により1以上のカルボン酸基で置換されてよく、nは1?3、好ましくは1?2である。 【0065】 代表的なα-ヒドロキシ酸としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2-ヒドロキシブタン酸、マンデル酸、グルコン酸、グリコール酸、酒石酸、アスコルビン酸、及びα-ヒドロキシオクタン酸、並びにこれらの誘導体(例えば、ヒドロキシル、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルキル基、ハロゲン、並びにこれらの組合せで置換された化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいα-ヒドロキシ酸としては、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、及びクエン酸が挙げられる。これらの酸は、D、L、又はDL形態であることができ、遊離酸、ラクトン、又はこれらの部分的塩として存在していてもよい。全てのこれらの形態は、用語「酸」に包含される。酸は、遊離酸形態で存在することが好ましい。特定の好ましい実施形態においては、本発明の組成物において有用なα-ヒドロキシ酸は、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、及びこれらの混合物から成る群から選択される。他の好適なα-ヒドロキシ酸は、米国特許第5,665,776号(ユー(Yu))に記載されている。 【0066】 1以上のα-ヒドロキシ酸を、望ましい結果を生むために適当な濃度で、本発明の組成物において使用してよい。好ましい実施形態においては、すぐに使用できる(ready to use)組成物の総重量を基準として、少なくとも0.25重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%、更により好ましくは少なくとも1重量%の総量で存在する。好ましい実施形態においては、すぐに使用できる(ready to use)組成物の総重量を基準として、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更により好ましくは3重量%以下の総量で存在する。より高い濃度は、刺激性になる可能性がある。」 イ 引用文献1に記載された発明の認定 (ア) (引1-エ)の「【0009】・・・本発明の物品は、(a)食用噛み物ベース、(b)有効量の抗菌脂質、及び(c)(1)有効量の歯石制御剤又は(2)有効量の長鎖脂肪酸の少なくとも1つ、好ましくは両方を含む。」及び(引1-カ)の「【0060】・・・本発明の噛み物物品は、(1)有効量の歯石制御剤又は(2)エンハンサーとしての有効量の長鎖脂肪酸の少なくとも1つを含む。」との記載から、噛み物物品として、(a)食用噛み物ベース、(b)有効量の抗菌脂質、及び(c)有効量の歯石制御剤を含む態様が読み取れる。 (イ) (引1-キ)の「【0061】・・・歯石制御剤の具体例には、・・・α-ヒドロキシ酸・・・が挙げられる。【0062】・・・歯石制御構成成分は、α-ヒドロキシ酸を含むことが好ましい(当審注:前後の文脈から、「歯石制御剤」と「歯石制御構成成分」とは、同義であると認める。)」との記載から、歯石制御剤としてα-ヒドロキシ酸を使用する態様が読み取れる。 (ウ) (引1-キ)の「・・・【0066】 ・・・1以上のα-ヒドロキシ酸を、望ましい結果を生むために適当な濃度で、本発明の組成物において使用してよい。・・・組成物の総重量を基準として・・・更により好ましくは少なくとも1重量%の総量で存在する。・・・更により好ましくは3重量%以下の総量で存在する。・・・」との記載から、噛み物物品が噛み物物品の総重量を基準として1重量%?3重量%の量でα-ヒドロキシ酸を含む態様が読み取れる。 (エ) (引1-エ)の「・・・【0007】 本発明は、消費する動物の歯科衛生を促進する噛み物物品・・・を噛むことによって、動物の歯上への歯石形成を抑制し、動物の歯からの歯石除去を容易にするための方法を提供する。・・・【0009】・・・本発明の方法は、請求項1の物品を動物が噛むこと又は食べることを含む。・・・」との記載から、噛み物物品が食べるものである態様が読み取れる。また、動物が噛み物物品を食べるためには、動物に噛み物物品を与える必要があることは明らかである。 (オ) 上記(ア)ないし(エ)を踏まえると、(引1-ア)ないし(引1-キ)の記載から、引用文献1には、 「 歯科衛生を促進する噛み物物品を噛むことによって、ペット動物の歯上への歯石形成を抑制し、ペット動物の歯からの歯石除去を容易にするための方法であって、 前記噛み物物品は、(a)食用噛み物ベース、(b)有効量の抗菌脂質、及び(c)有効量の歯石制御剤を含み、前記(c)有効量の歯石制御剤は、前記噛み物物品の総重量を基準として1重量%?3重量%の量でα-ヒドロキシ酸を含む、食べものであり、 前記ペット動物に前記噛み物物品を食べさせるために、前記ペット動物に前記噛み物物品を与えて、前記ペット動物が前記噛み物物品を食べることを含む方法。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3)本願補正発明と引用発明との対比 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明において、「歯上への歯石形成を抑制し」、「歯からの歯石除去を容易にする」ことは、本願補正発明において、「歯石」である「歯の状態を処置または緩和する」ことに相当する。 (イ)引用発明の「ペット動物」は、本願補正発明の「非ヒト動物」に相当する。 (ウ)引用発明の「食べものであ」る「噛み物物品」は、可食物である限りにおいて、本願補正発明の「フード組成物」に相当する。 (エ)本願の発明の詳細な説明の「出願人は、高濃度の乳酸を含む本開示の組成物をイヌ科の動物に与えることが、歯牙プラーク、歯石の両方の形成および歯の汚れを阻止したことを発見した。」(段落【0034】)との記載によれば、本願補正発明の「乳酸」は、「歯石阻止剤」として機能する物であることが理解できる。 また、乳酸は、α-ヒドロキシ酸に属するものである。 よって、引用発明の「(c)有効量の歯石制御剤」に含まれる「噛み物物品の総重量を基準として1重量%?3重量%の量」の「α-ヒドロキシ酸」と、本願補正発明の「1.0?1.5重量%の量で」「含有」される「乳酸」とは、「歯石阻止剤としてのα-ヒドロキシ酸」である点において共通する。 (オ)引用発明は、歯科衛生を促進する噛み物物品を噛むことによって、ペット動物の歯上への歯石形成を抑制し、ペット動物の歯からの歯石除去を容易にするための方法であるから、引用発明において、 a 噛み物物品が与えられるペット動物が、歯上への歯石形成を抑制し、歯からの歯石除去を容易にする必要があるペット動物であること、 b ペット動物に与える噛み物物品の量が、前記噛み物物品を与えられた前記ペット動物がそれを噛んで食べることにより、前記ペット動物の歯上への歯石形成を抑制し、前記ペット動物の歯からの歯石除去を容易にすることが期待できる量であること、 は、いずれも明らかな事項である。 そして、ここでの「期待できる量」は、「有効な量」であるといえるから、引用発明において「前記ペット動物に前記噛み物物品を与え」ることは、本願補正発明において「該処置または緩和の必要のある非ヒト動物に」「フード組成物の有効量を与えること」に相当する。 (カ)本願補正発明は、フード組成物の成分として「乳酸」以外の成分を特定するものではないから、引用発明の噛み物物品が「(a)食用噛み物ベース」及び「(b)有効量の抗菌脂質」を含むことは、本願補正発明と引用発明との対比において、相違点とはならない。 イ 一致点及び相違点 よって、本願補正発明と引用発明とは、 「 歯垢、歯石、歯の汚れ、口臭、口内炎、歯肉炎、歯周炎およびそれらの組合せからなる群より選択される、非ヒト動物における歯の状態を処置または緩和する方法であって、 該処置または緩和の必要のある非ヒト動物に、歯石阻止剤としてのα-ヒドロキシ酸を含有するフード組成物の有効量を与えることを含む方法。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 歯石阻止剤としてのα-ヒドロキシ酸が、本願補正発明においては、「1.0?1.5重量%の量で」「含有」される「乳酸」を含むものであるのに対し、引用発明においては、「噛み物物品の総重量を基準として1重量%?3重量%の量」の「α-ヒドロキシ酸」であるものの、α-ヒドロキシ酸の種類は特定されていない点。 (4)当審の判断 ア 上記相違点1について検討する。 (引1-キ)には、「好ましいα-ヒドロキシ酸としては、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、及びクエン酸が挙げられる。」(段落【0065】)と、好ましいα-ヒドロキシ酸として4種の酸が記載され、乳酸はその筆頭に挙げられている。 引用文献1に接した当業者が引用発明を実施しようとする場合に、噛み物物品に含有させるα-ヒドロキシ酸を、好ましいα-ヒドロキシ酸として記載されたものの中から選択すること、中でも、筆頭に記載された乳酸を選択することは、十分な動機付けがあるといえる。 また、噛み物物品に含有させるα-ヒドロキシ酸の量は、歯石制御剤としての効果、ペット動物に与える刺激、及びペット動物に与える噛み物物品の量を勘案して設定すべき事項であり、α-ヒドロキシ酸として乳酸を選択した場合に、その含有量を噛み物物品の1.0?1.5重量%とすることに困難性があるとは認められない。 よって、引用文献1の記載に基づき、引用発明における有効量の歯石制御剤を、噛み物物品の1.0?1.5重量%の量の乳酸を含むものとし、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 イ 本願補正発明の奏する作用効果 本願補正発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用発明及び引用文献1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (5)補正の却下の決定のむすび したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年8月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年11月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記第2[理由]1の記載参照。) 2 引用文献及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献1の記載内容及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。 3 対比 本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本願補正発明における乳酸の量を、「1.0?1.5重量%」から「0.8重量%?1.5重量%」に拡張したものに相当する。 よって、本願発明と引用発明とを対比すると、上記第2[理由]2(3)の「ア 対比」において記載したのと同様の対比の手法及び結果により、両者は、 「 歯垢、歯石、歯の汚れ、口臭、口内炎、歯肉炎、歯周炎およびそれらの組合せからなる群より選択される、非ヒト動物における歯の状態を処置または緩和する方法であって、 該処置または緩和の必要のある非ヒト動物に、歯石阻止剤としてのα-ヒドロキシ酸を含有するフード組成物の有効量を与えることを含む方法。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点2) 歯石阻止剤としてのα-ヒドロキシ酸が、本願発明においては、「0.8重量%?1.5重量%の量で」「含有」される「乳酸」を含むものであるのに対し、引用発明においては、「噛み物物品の総重量を基準として1重量%?3重量%の量」の「α-ヒドロキシ酸」であるものの、α-ヒドロキシ酸の種類は特定されていない点。 4 当審の判断 (1)上記相違点2について検討する。 上記第2[理由]2(4)アで上記相違点1について検討したように、引用文献1に接した当業者にとって、α-ヒドロキシ酸として乳酸を選択することには十分な動機付けがある。 また、噛み物物品に含有させるα-ヒドロキシ酸の量は、歯石制御剤としての効果、ペット動物に与える刺激、及びペット動物に与える噛み物物品の量を勘案して設定すべき事項であり、α-ヒドロキシ酸として乳酸を選択した場合に、その含有量を噛み物物品の0.8重量%?1.5重量%とすることに困難性があるとは認められない。 よって、引用文献1の記載に基づき、引用発明における有効量の歯石制御剤を、噛み物物品の0.8重量%?1.5重量%の量の乳酸を含むものとし、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)本願発明の奏する作用効果 本願発明によってもたらされる効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る程度のものである。 (3)まとめ したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-20 |
結審通知日 | 2017-10-24 |
審決日 | 2017-11-07 |
出願番号 | 特願2014-547220(P2014-547220) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A23K)
P 1 8・ 121- Z (A23K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 本村 眞也、竹中 靖典 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 福島 浩司 |
発明の名称 | 歯の状態を処置するための組成物および方法 |
代理人 | 村井 康司 |
代理人 | 堀川 かおり |