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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1338764
審判番号 不服2017-142  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-05 
確定日 2018-04-10 
事件の表示 特願2014-508891「カラー外観が低減された蛍光体増強照明装置、レトロフィット電球及び管電球」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月15日国際公開、WO2012/153212、平成26年 6月19日国内公表、特表2014-514773、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年5月6日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成27年4月14日付けで手続補正がされ、同年12月22日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年3月28日付けで意見書が提出され、平成28年8月23日付け(同年9月7日送達)で拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
「(進歩性)この出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2008-147190号公報
引用文献2.特表2010-525512号公報
引用文献3.国際公開第2010/116294号(周知技術文献)
引用文献4.特開2006-278980号公報(周知技術文献)
引用文献5.特開2007-88472号公報(周知技術文献)

第3 本願発明
本願請求項1?14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明14」という。)は、平成29年1月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1及び本願発明4は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源と、
蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓と、
前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子と、
前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の有機発光体を含む第二光変換素子とを備え、
前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し、
前記ギャップは真空によって形成され又は前記ギャップは流体で充填され、
前記第二光変換素子は、前記第一の有機発光体を含み第二の有機発光体を含まない第一の層、及び、前記第二の有機発光体を含み前記第一の有機発光体を含まない第二の層を含む複数の層のスタックである、蛍光体増強照明装置。」

「【請求項4】
予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源と、
蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓と、
前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子と、
前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の有機発光体を含む第二光変換素子とを備え、
前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し、
前記ギャップは真空によって形成され又は前記ギャップは流体で充填され、
前記第一光変換素子は、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面に接するように前記光源の前記発光面直上に配置されて、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面と実質的に同じ大きさで存在する、
蛍光体増強照明装置。」

なお、本願発明2、3、7?14は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明5、6、13、14は、本願発明4を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。以下、同様。
ア「【0010】
好ましい実施形態によると、前記青色LEDチップは10?30nmの半値幅(FWHM)を有し、前記緑色蛍光体は30?100nmの半値幅を有し、前記赤色蛍光体は50?200nmの半値幅を有する。本発明の実施形態によると、前記赤色蛍光体はCaAlSiN_(3):Eu及び(Ca、Sr)S:Euのうち、少なくとも一つを含むことができる。前記緑色蛍光体はA_(2)SiO_(4):Eu(AはBa、Sr及びCaのうちから選ばれた少なくとも一つ)、SrGa_(2)S_(4):Eu及びβ?SiAlONのうち少なくとも一つを含むことができる。」

イ「【0034】
図3は本発明の他の実施形態による白色発光装置200及びこれを含む白色光源モジュール520を概略的に示した断面図である。図3の実施形態でも、青色LEDチップ103はチップオンボード(Chip-On?Board)方式で回路基板101上に直接実装されており、青色LEDチップ103及びこれにより励起される赤色蛍光体及び緑色蛍光体が単位区域の白色発光装置200を形成する。また、最大限の色再現性を有するように青色LEDチップ103、赤色蛍光体及び緑色蛍光体は、前述の主波長及び色座標範囲(即ち、443?455nmの主波長範囲、CIE1931色座標系上で(0.5448、0.4544)、(0.7079、0.2920)、(0.6427、0.2905)及び(0.4794、0.4633)からなる四角区域、(0.1270、0.8037)、(0.4117、0.5861)、(0.4197、0.5316)及び(0.2555、0.5030)からなる四角区域)内の主波長と色座標を有する。
【0035】
しかし、本実施形態では、赤色及び緑色蛍光体が樹脂包装部内に分散混入されているものではなく、蛍光体膜の形態で提供される。具体的に、図3に図示されたとおり、緑色蛍光体を含んだ緑色蛍光体膜205が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており、その上に半球形状の透明樹脂包装部230が形成されている。透明樹脂包装部230上には赤色蛍光体を含んだ赤色蛍光体膜207が樹脂包装部230の表面上に塗布されている。緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207は相互にその位置を変えることもできる。(即ち、赤色蛍光体膜207がLEDチップ103上に塗布され、緑色蛍光体膜205が樹脂包装部230上に塗布されることもできる)。緑色蛍光体膜205と赤色蛍光体膜207は、例えば、それぞれの蛍光体粒子を含んだ樹脂膜からなることができる。蛍光体膜207、205内に含まれた各蛍光体としては前述の窒化物系、硫化物系またはシリケート系蛍光体を使用することができる。」

ウ「【0042】
図5は本発明のさらに他の実施形態による白色発光装置400及びこれを含む白色光源モジュール540を概略的に示した断面図である。図5を参照すると、図4の実施形態と同様に、各白色発光装置400は、反射コップを有するパッケージ本体410と反射コップ内に実装された青色LEDチップ103を含む。
【0043】
しかし、本実施形態では、赤色及び緑色蛍光体が樹脂包装部内に分散混入されておらず、蛍光体膜の形態で提供される。即ち、緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており、その上に透明樹脂包装部430が形成されており、透明樹脂包装部430の表面上に赤色(または、緑色)蛍光体膜407または405が塗布されている。
【0044】
図3の実施形態と同様に、図5の実施形態でも樹脂包装部430によって分離された緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407を使用することで、より優れた色均一性を表すことができる。また、前述の実施形態の同様に、前記の範囲内の青色LEDチップの主波長と、赤色及び緑色蛍光体の色座標を使用することで、s?RGB領域のほぼ全ての部分を含む高い色再現性を表すことができる。」

エ 図5は、以下のものである。
「【図5】


してみると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用発明1
「白色発光装置400は、反射コップを有するパッケージ本体410と反射コップ内に実装された青色LEDチップ103を含み、
緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており、その上に透明樹脂包装部430が形成されており、透明樹脂包装部430の表面上に赤色(または、緑色)蛍光体膜407または405が塗布されており、
蛍光体膜内に含まれた各蛍光体として、
赤色蛍光体はCaAlSiN_(3):Eu及び(Ca、Sr)S:Euのうち、少なくとも一つを含み、緑色蛍光体はA_(2)SiO_(4):Eu(AはBa、Sr及びCaのうちから選ばれた少なくとも一つ)、SrGa_(2)S_(4):Eu及びβ?SiAlONのうち少なくとも一つを含み、
樹脂包装部430によって分離された緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407を使用する、白色発光装置400。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0009】
本発明の第1の面によれば、上記目的は、第1の原色の光を放出するように構成されている半導体発光デバイスを含む照明システムであって、この半導体デバイスが、第1の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第2の原色の光を放出するように構成されている第1の発光素子と、上記半導体発光デバイスから物理的に離間し、第1または第2の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第3の原色の光を放出するように構成されている第2の発光素子とを含み、上記照明システムが、上記第1、第2及び第3の原色の少なくとも1つまたはそれ以上を組合せて上記照明システムの出力光を形成するように構成されている上記照明システムを用いて達成される。

イ「【0020】
本発明の一つの面によれば照明システムが提供され、該照明システムにおいては、第1の発光素子は、半導体光放出ダイ上の接触(contiguous)層または共形(conformal)な層として配列された少なくとも1つの蛍光体材料の層からなる。
・・・(途中省略)・・・
【0022】
本発明の一つの面によれば照明システムが提供され、該照明システムにおいては、第1の発光素子は、YAG:Ce、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、及びLuAG:Ce、YAGSN:Ce、(Y,Lu,Gd)AGSN:Ce、LuAGSN:Ce及びこれらの何等かの組合せからなるグループから選択された蛍光体材料を備える。
【0023】
本発明の一つの面によれば照明システムが提供され、該照明システムにおいては、第1の発光素子は、SSON:Euのようなオキシニトリド・ケイ酸塩蛍光体である蛍光体材料からなる。
・・・(途中省略)・・・
【0026】
本発明の一つの面によれば照明システムが提供され、該照明システムにおいては、第2の発光素子は、SCSN:Eu、SSN:Eu、BSSN:Eu、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、YAG:Ce、LuAG:Ce、LuAGSN:Ce、TG:Eu、SSON:Eu、YAGSN:Ce、SCASN:Eu、CASN:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrS:Eu、CaS:Eu、BOSE、及びこれらの何等かの組合せからなるグループから選択された少なくとも1つの蛍光体材料からなる。」

ウ「【0073】
図5は、本発明による照明システムの概要断面図である。照明システム12は、図1の照明システム10と以下の点が異なっている。
a)第2の蛍光体層45は、1つより多くの蛍光体材料からなる。図5においては、第2の蛍光体層45は2つの隣接する副層、即ち、第1の蛍光体副層45aと第2の蛍光体副層45bとからなるが、当業者ならば、如何なる数の蛍光体副層も使用できることを理解されよう。また、当業者には明らかなように、第2の蛍光体副層45bは、2つまたはそれ以上の蛍光体材料の混合体からなる単一層であることも、または異なる蛍光体材料の隣接するパターンであることもできる。」

エ「【0093】
図14、図15、及び図16は、機能的及び/または装飾的要求に適する照明システム8を示す図であって、これら照明システム8は、上述した本発明の実施の形態と類似の手法で構築し、動作させることができる。この照明システムの長所は、第2の発光素子内に含まれる蛍光体材料を、主として色特徴手段(出力光52の色点を広範囲の色に調整することができる)上で選択できることである。これは、装飾応用において特に有利である。」

オ 図15は、以下のものである。
「【図15】


カ 図15から、カップ状部材の内側底部に、チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された半導体発光デバイス20が配置され、第1の蛍光体層41から離間して上部に第2の蛍光体層42,45が配置され、出力光52はカップ状部材を覆う部材を透過することが見て取れる。
また、発光素子は蛍光体材料の層からなるものであること(段落【0020】の記載参照。)から、「第1の発光素子」、「第2の発光素子」は、それぞれ図15の「第1の蛍光体層41」、「第2の蛍光体層42,45」に対応し、「第1の発光素子は、第1の蛍光体層41からなり、第2の発光素子は、第2の蛍光体層42,45からなる」ことが読み取れる。
してみると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用発明2
「半導体発光デバイスを含む照明システムであって、この半導体デバイスが、第1の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第2の原色の光を放出するように構成されている第1の発光素子と、上記半導体発光デバイスから物理的に離間し、第1または第2の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第3の原色の光を放出するように構成されている第2の発光素子とを含み、上記照明システムが、上記第1、第2及び第3の原色の少なくとも1つまたはそれ以上を組合せて上記照明システムの出力光を形成するように構成され、
第1の発光素子は、YAG:Ce、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、及びLuAG:Ce、YAGSN:Ce、(Y,Lu,Gd)AGSN:Ce、LuAGSN:Ce及びこれらの何等かの組合せからなるグループから選択された蛍光体材料を備え、または、第1の発光素子は、オキシニトリド・ケイ酸塩蛍光体である蛍光体材料からなり、
第2の発光素子は、SCSN:Eu、SSN:Eu、BSSN:Eu、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、YAG:Ce、LuAG:Ce、LuAGSN:Ce、TG:Eu、SSON:Eu、YAGSN:Ce、SCASN:Eu、CASN:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrS:Eu、CaS:Eu、BOSE、及びこれらの何等かの組合せからなるグループから選択された少なくとも1つの蛍光体材料からなり、
第1の発光素子は、第1の蛍光体層41からなり、第2の発光素子は、第2の蛍光体層42,45からなり、
カップ状部材の内側底部に、チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された半導体発光デバイス20が配置され、第1の蛍光体層41から離間して上部に第2の蛍光体層42,45が配置され、出力光52はカップ状部材を覆う部材を透過するものであり、
第2の蛍光体層45は2つの隣接する副層、即ち、第1の蛍光体副層45aと第2の蛍光体副層45bとからなる、
照明システム。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、日本語の翻訳は、引用文献3のファミリー文献である特表2012-523115号公報によるものである。
ア「In an embodiment of the luminescent converter, the second luminescent material is selected from a group comprising: perylene derivatives such as lumogen F materials (e.g. 083 (yellow), 170 (yellow), 240 (orange), 305 (red), 850 (green), difluoro-boraindacene derivatives (BODIPY), Fluorescein dyes , fluerene derivatives, coumarin dyes, xanthene dyes, pyrromethene-BF2 (P-BF2) complexes, Stilbene derivatives, Rodamine dyes, perylene carboximide dyes, and luminescent polymers such as polyphenylenevinilene (PPV), polyphenyl derivatives.

The first luminescent material, for example, may comprise the following inorganic luminescent materials and/or mixtures thereof which absorb ultraviolet light or blue light:」(8頁15行?24行)
「【0022】
前記発光変換装置のひとつの実施態様において、前記第二の発光材料は:ルモゲンF材料(即ち083(黄色)、170(黄色)、240(オレンジ)、305(赤)、850(緑)などのペリレン誘導体、ジフロロ-ボオロインダセン誘導体(BODIPY)、フルオレセイン色素、フルオレイン誘導体、クマリン色素、キサンテン色素、ピロメテン-BF2(P-BF2)化合物、スチルベン誘導体、ローダミン色素、ペリレンカルボキシミド色素、及びポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリフェニレン誘導体を含む群から選択される。
【0023】
前記第一の発光材料は、例えば、次の無機発光材料及び/又はそれらの混合物であって、紫外線又は青色光を吸収するものである:」

イ「Figs. 2A and 2B show an embodiment of a phosphor-enhanced light source 100 comprising a solid-state light emitter 40 and a luminescent converter 10 according to the invention. Fig. 2A show an assembled phosphor-enhanced light source 100 and Fig. 2B shows the individual elements 20, 30, 40, 60 of the phosphor-enhanced light source 100. On the solid-state light emitter 40 a first luminescent material 20 is configured for converting at least a part of the excitation light hvO emitted by the solid-state light emitter 40 into first emission light hvl. Subsequently, on top of the first luminescent material 20 a second luminescent material 30 is arranged which is configured for converting at least a part of the first emission light hvl into second emission light hv2. Because not all of the excitation light hvO and not all of the first emission light hvl is converted, the emission of the phosphor- enhanced light source 100 typically comprises a mixture of the excitation light hvO, the first emission light hvl and the second emission light hv2. In addition, a light shaping element 60 may be applied on top of the second luminescent material 30 to shape the light emitted by the phosphor-enhanced light source 100.」(15頁3行?16行)
「【0039】
図2A及び2Bはフォスファ強化光源100であって、半導体発光素子40及び本発明による発光変換装置10を含むものが示される。図2Aは、組み立てられたフォスファ強化光源100を示し、図2Bはその個々のエレメント20、30、40、60を示す。半導体発光素子40上に、第一の発光材料20は、前記半導体発光素子40から発光される励起光hv0の少なくとも一部分を第一の発光hv1へ変換するように構成される。続いて、前記第一の発光材料20の上に、第二の発光材料30が、前記第一の発光hv1の少なくとも一部を第二の発光hv2へ変換するように構成されている。全ての励起光hv0も全ての第一の発光hv1も変換されるものではないことから、フォスファ強化光源100の発光は通常、励起光hv0、前記第一に発光hv1及び前記第二の発光hv2が含まれる。さらに、光形状化エレメント60が前記第二の発光材料30の上に設けられて、前記フォスファ強化光源100による発光を形状化してもよい。」

ウ FIG.2A、2Bは、以下のものである。

エ してみると、引用文献3には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「フォスファ強化光源100であって、半導体発光素子40及び発光変換装置10を含み、 半導体発光素子40上に、第一の発光材料20は、前記半導体発光素子40から発光される励起光hv0の少なくとも一部分を第一の発光hv1へ変換するように構成され、
前記第一の発光材料20の上に、第二の発光材料30が、前記第一の発光hv1の少なくとも一部を第二の発光hv2へ変換するように構成され、
フォスファ強化光源100の発光は通常、励起光hv0、前記第一に発光hv1及び前記第二の発光hv2が含まれ、
前記第一の発光材料は、無機発光材料及び/又はそれらの混合物であって、紫外線又は青色光を吸収するものであり、
前記第二の発光材料は:ルモゲンF材料(即ち083(黄色)、170(黄色)、240(オレンジ)、305(赤)、850(緑)などのペリレン誘導体、ジフロロ-ボオロインダセン誘導体(BODIPY)、フルオレセイン色素、フルオレイン誘導体、クマリン色素、キサンテン色素、ピロメテン-BF2(P-BF2)化合物、スチルベン誘導体、ローダミン色素、ペリレンカルボキシミド色素、及びポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリフェニレン誘導体を含む群から選択される、
フォスファ強化光源100。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0031】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る半導体発光装置(白色LED装置)は、図3に示すように、実装部材(カップ)2と、実装部材(カップ)2内にマウントされた発光素子(LEDチップ)3とを備える。無機蛍光体10aを含有する無機蛍光体含有樹脂層4aは、発光素子3の周囲を覆う位置に配置され、硬化される。又、有機蛍光体10bを含有する有機蛍光体含有樹脂層4bは、無機蛍光体含有樹脂層4a上に配置され、硬化される。尚、図3では、発光素子3をマウントする配線等は、省略されている。」

イ 図3は、以下のものである。


ウ してみると、引用文献4には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「実装部材(カップ)2内にマウントされた発光素子(LEDチップ)3を備え、
無機蛍光体10aを含有する無機蛍光体含有樹脂層4aは、発光素子3の周囲を覆う位置に配置され、
有機蛍光体10bを含有する有機蛍光体含有樹脂層4bは、無機蛍光体含有樹脂層4a上に配置された、
半導体発光装置(白色LED装置)。」

5 引用文献3及び4に記載された周知技術について
上記引用文献3及び4に記載された技術事項から、「半導体発光素子上に、無機蛍光体を含有する層を配置し、その上に有機蛍光体を含有する層を配置した発光装置」は、本願の優先日前において周知技術であった認められる。

6 引用文献5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係るLEDパッケージ100の構造を示す縦断面図である。図2を参照すると、LEDパッケージ100は、凹部109を有するパッケージ本体101と、このパッケージ本体101に搭載されたLEDチップ107とを備えている。上記パッケージ本体101は、ポリマーまたはセラミックで製造することが出来る。凹部109の底にはリード電極103,104が配置され、凹部109の側面は反射面105を形成している。LEDチップ107は、リード電極103,104に接続されるように凹部109の底に実装されている。
【0020】
図2に図示したように、レンズ構造体108,110はLEDチップ107から離隔してパッケージ本体101の上面に付着されている。レンズ構造体108,110は、レンズ108と、レンズ108の下面に形成された蛍光体含有樹脂膜110とを含んでいる。この蛍光体含有樹脂膜110には蛍光体が分散され、LEDチップ107から放出された光の波長を変化させる。例えば、蛍光体含有樹脂膜110はYAG:Ce等の黄色蛍光体が分散されたシリコン樹脂またはエポキシ樹脂等によって作製することが出来る。黄色蛍光体と共にLEDチップ107として青色LEDチップを使用することにより、白色LEDパッケージを具現することが出来る。後述する通り、蛍光体含有樹脂膜110はスピンコーティング(spin coating)または接着等の方法を使用して形成することが出来る。

イ 図2は、以下のものである。


ウ してみると、引用文献5には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「LEDパッケージ100は、凹部109を有するパッケージ本体101と、このパッケージ本体101に搭載されたLEDチップ107とを備え、レンズ構造体108,110はLEDチップ107から離隔してパッケージ本体101の上面に付着され、レンズ構造体108,110は、レンズ108と、レンズ108の下面に形成された蛍光体含有樹脂膜110とを含む。」

7 その他の文献について
また、特開2009-270091号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0106】
また、本実施形態において、図6に示すように、ドーム状の封止部19を複数枚重ねて積層構造を有するドーム状の封止部を形成しても良い。
積層構造における各々のドーム状封止部19a、19b、19cはそれぞれ赤色、緑色、青色蛍光体を含有する蛍光ガラスから形成されている。しかして、各々のドーム状封止部の各色蛍光体が励起されてそれぞれが固有の発光を呈し、その合成光として、例えば白色光が得られることになる。
【0107】
ここで、積層の順序は、特に限定されず、蛍光体の特性、その他の要因を検討して、適宜配置される。例えば、図6のように半導体発光素子2に近い程、短波長の蛍光色を有するように配置すれば、励起光、蛍光体の発光の利用効率の観点からは好ましい。積層の順序を、半導体発光素子2に近い程、含有する蛍光体の平均粒子径が小さくなるように配置すれば、励起光を効率的に散乱させる効果を期待する観点からは好ましい。蛍光体の劣化防止の観点からは、以下の配置とすることが好ましい。
(i)光劣化しやすい蛍光体を半導体発光素子2に最も遠くなるように上面の層に配置する、
(ii)水分により劣化しやすい蛍光体を半導体発光素子2に最も近くなるように下面の層に配置する。これにより蛍光体を外気から遠ざけ、水分劣化を抑制する。
(iii)硫黄成分を含有する蛍光体を積層の中間に配置する。これにより外気の水分劣化を抑制し、半導体発光素子2の硫黄成分による黒変などを抑制する。」

イ 図6は、以下のものである。


ウ してみると、引用文献6には、以下の技術事項が記載されていると認められる。
「積層の順序は、特に限定されず、蛍光体の特性、その他の要因を検討して、適宜配置される。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比
ア 引用発明1の「青色LEDチップ103」は、本願発明1の「光源」に相当し、引用発明1の「青色LEDチップ103の表面」は、本願発明1の「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面」を含んでいる。
引用発明1の「緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407を使用する白色発光装置400」は、本願発明1の「蛍光体増強照明装置」に相当する。
引用発明1において「反射コップ内に実装された青色LEDチップ103」からの光は、「蛍光体膜407または405」を介して反射コップから外へ出射するものであるから、引用発明1の「反射コップ」は、本願発明1「蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓」を有しているといえる。
引用発明1で使用される赤色蛍光体及び緑色蛍光体は、無機蛍光体であるから、引用発明1の「青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されて」いる「緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407」は、本願発明1の「前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子」に相当する。
引用発明1の「透明樹脂包装部430の表面上に」「塗布されて」いる「赤色(または、緑色)蛍光体膜407または405」と、本願発明1の「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の有機発光体を含む第二光変換素子」とは、共に、「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子」である点で共通する。
引用発明1において、緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407が樹脂包装部430によって分離されているから、緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407の間にギャップがあるといえる。また、上記のとおり、引用発明1の「反射コップ」は、本願発明1「蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓」を有していることを踏まえると、引用発明1の「緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており、その上に透明樹脂包装部430が形成されており、透明樹脂包装部430の表面上に赤色(または、緑色)蛍光体膜407または405が塗布されて」いることは、本願発明4の「前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し」ていることに相当する。

イ してみると、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致している。
「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源と、
蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓と、
前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子と、
前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子とを備え、
前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在する、
蛍光体増強照明装置。」

ウ そして、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(ア)相違点1:1の1
本願発明1は、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在するのに対し、引用発明1は、緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407は共に無機蛍光体を含み、分離されている(ギャップが存在する)点。

(イ)相違点1:1の2
第一光変換素子と第二光変換素子との間のギャップについて、本願発明1は、「前記ギャップは真空によって形成され又は前記ギャップは流体で充填され」ているのに対し、引用発明1は、「透明樹脂包装部430が形成され」ている点。

(ウ)相違点1:1の3
本願発明1は、「前記第二光変換素子は、前記第一の有機発光体を含み第二の有機発光体を含まない第一の層、及び、前記第二の有機発光体を含み前記第一の有機発光体を含まない第二の層を含む複数の層のスタックである」のに対し、引用発明1の「透明樹脂包装部430の表面上」の「蛍光体膜」は、そのような複数の層のスタックでない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1:1の1について先に検討する。

引用文献3、4に記載されているように「半導体発光素子上に、無機蛍光体を含有する層を配置し、その上に有機蛍光体を含有する層を配置した発光装置」が周知であったとしても、引用発明1の透明樹脂包装部430の表面上の蛍光体膜に用いられる赤色蛍光体(CaAlSiN_(3):Eu及び(Ca、Sr)S:Eu)又は緑色蛍光体(A_(2)SiO4:Eu、SrGa_(2)S_(4):Eu及びβ?SiAlON)を有機蛍光体に変え、青色LEDチップ103の表面の蛍光体膜に用いられる緑色蛍光体(A_(2)SiO4:Eu、SrGa_(2)S_(4):Eu及びβ?SiAlON)又は赤色蛍光体(CaAlSiN_(3):Eu及び(Ca、Sr)S:Eu)は変えないとする動機や示唆は、引用文献1には記載されていない。また、引用文献2ないし6にも記載されていない。
よって、本願発明1の相違点1:1の1に係る構成は、引用発明1及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基づいて容易に想到することができたとはいえない。
また、相違点1:1の1に係る、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成を含む本願発明1の構成を採用することにより、引用文献1ないし6からは予測し得ない、「カラー外観」を低減するという効果を奏するものである。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は当業者であっても引用発明1及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)引用発明2との対比
ア 引用発明2において、「第1の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第2の原色の光を放出するように構成されている第1の発光素子」は、「第1の蛍光体層41からな」ることから、「チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された半導体発光デバイス20」の「チップ21」は、「第1の原色の光」を放出するものであり、本願発明1の「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源」に相当する。
引用発明2の「照明システム」は、蛍光体材料からなる発光素子を含むから、本願発明1の「蛍光体増強照明装置」に相当する。
引用発明2において「出力光52はカップ状部材を覆う部材を透過する」から、引用発明2の「カップ状部材を覆う部材」は、本願発明1の「蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓」に相当するといえる。
引用発明2の「第1の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第2の原色の光を放出するように構成されている第1の発光素子」は、「YAG:Ce、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、及びLuAG:Ce、YAGSN:Ce、(Y,Lu,Gd)AGSN:Ce、LuAGSN:Ce及びこれらの何等かの組合せからなるグループから選択された蛍光体材料を備え、または、第1の発光素子は、オキシニトリド・ケイ酸塩蛍光体である蛍光体材料からな」るから、本願発明1の「前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子」に相当する。
引用発明2の「第1または第2の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第3の原色の光を放出するように構成されている第2の発光素子」と、本願発明1の「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の有機発光体を含む第二光変換素子」とは、共に、「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子」である点で共通する。
引用発明2の「カップ状部材の内側底部に、チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された半導体発光デバイス20が配置され、第1の蛍光体層41から離間して上部に第2の蛍光体層42,45が配置され、出力光52はカップ状部材を覆う部材を透過するものであ」る配置関係は、本願発明1の「前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在」する配置関係に相当する。

引用発明2の「第2の蛍光体層45は2つの隣接する副層、即ち、第1の蛍光体副層45aと第2の蛍光体副層45bとからなる」ことと、本願発明1の「前記第二光変換素子は、前記第一の有機発光体を含み第二の有機発光体を含まない第一の層、及び、前記第二の有機発光体を含み前記第一の有機発光体を含まない第二の層を含む複数の層のスタックである」こととは、共に、「前記第二光変換素子は、前記第一の発光体を含む第一の層、及び、前記第二の発光体を含む第二の層を含む複数の層のスタックである」点で共通する。

イ してみると、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で一致している。
「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源と、
蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓と、
前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子と、
前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子とを備え、
前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し、
前記第二光変換素子は、前記第一の発光体を含む第一の層、及び、前記第二の発光体を含む第二の層を含む複数の層のスタックである、蛍光体増強照明装置。」

ウ そして、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で相違する。
(ア)相違点1:2の1
本願発明1は、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在するのに対し、引用発明2は、第1の蛍光体層41と第2の蛍光体層42,45は共に無機蛍光体を含み、離間して配置される(ギャップが存在する)点。

(イ)相違点1:2の2
第一光変換素子と第二光変換素子との間のギャップについて、本願発明1は、「前記ギャップは真空によって形成され又は前記ギャップは流体で充填され」ているのに対し、引用発明2は、何が充填されているか不明である点。

(ウ)相違点1:2の3
本願発明1は、「前記第二光変換素子は、前記第一の有機発光体を含み第二の有機発光体を含まない第一の層、及び、前記第二の有機発光体を含み前記第一の有機発光体を含まない第二の層を含む複数の層のスタックである」のに対し、引用発明2の「第2の蛍光体層45」の「隣接する」「第1の蛍光体副層45aと第2の蛍光体副層45b」は共に無機の蛍光体材料からなり、「第1の蛍光体副層45aと第2の蛍光体副層45b」とに共通に含まれる蛍光体材料がないか不明である点。

(4)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1:2の1について先に検討する。
引用文献3、4に記載されているように「半導体発光素子上に、無機蛍光体を含有する層を配置し、その上に有機蛍光体を含有する層を配置した発光装置」が周知であったとしても、引用発明2の第2の蛍光体層42,45に用いられる蛍光体材料(SCSN:Eu、SSN:Eu、BSSN:Eu、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、YAG:Ce、LuAG:Ce、LuAGSN:Ce、TG:Eu、SSON:Eu、YAGSN:Ce、SCASN:Eu、CASN:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、SrS:Eu、CaS:Eu、BOSE)を有機蛍光体に変え、第1の蛍光体層41に用いられる蛍光体材料は変えないとする動機や示唆は、引用文献2には記載されていない。また、引用文献1、引用文献3ないし6にも記載されていない。
よって、本願発明1の相違点1:2の1に係る構成は、引用発明2及び引用発明1、引用文献3?6に記載された技術事項に基づいて容易に想到することができたとはいえない。
また、相違点1:2の1に係る、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成を含む本願発明1の構成を採用することにより、引用文献1ないし6からは予測し得ない、「カラー外観」を低減するという効果を奏するものである。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は当業者であっても引用発明2、引用発明1、引用文献3?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2、3、7?14について
本願発明2、3、7?14も、本願発明1の相違点1:1の1に係る構成又は相違点1:2の1に係る構成と同一の構成、つまり、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2、引用文献3?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明4について
(1)引用発明1との対比
ア 引用発明1の「青色LEDチップ103」は、本願発明4の「光源」に相当し、引用発明1の「青色LEDチップ103の表面」は、本願発明4の「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面」を含んでいる。
引用発明1の「緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407を使用する白色発光装置400」は、本願発明4の「蛍光体増強照明装置」に相当する。
引用発明1において「反射コップ内に実装された青色LEDチップ103」からの光は、「蛍光体膜407または405」を介して反射コップから外へ出射するものであるから、引用発明1の「反射コップ」は、本願発明4の「蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓」を有しているといえる。
引用発明1で使用される赤色蛍光体及び緑色蛍光体は、無機蛍光体であるから、引用発明1の「青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されて」いる「緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407」は、本願発明4の「前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子」に相当する。
引用発明1の「透明樹脂包装部430の表面上に」「塗布されて」いる「赤色(または、緑色)蛍光体膜407または405」と、本願発明4の「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の有機発光体を含む第二光変換素子」とは、共に、「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の発光体を含む第二光変換素子」である点で共通する。
引用発明1において、緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407が樹脂包装部430によって分離されているから、緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407の間にギャップがあるといえる。また、上記のとおり、引用発明1の「反射コップ」は、本願発明4の「蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓」を有していることを踏まえると、引用発明1の「緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されており、その上に透明樹脂包装部430が形成されており、透明樹脂包装部430の表面上に赤色(または、緑色)蛍光体膜407または405が塗布されて」いることは、本願発明4の「前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し」ていることに相当する。

引用発明1の「緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されて」いることと、本願発明4の「前記第一光変換素子は、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面に接するように前記光源の前記発光面直上に配置されて、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面と実質的に同じ大きさで存在する」こととは、共に、「前記第一光変換素子は、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面に接するように前記光源の前記発光面直上に配置され」ている点で共通する。

イ してみると、本願発明4と引用発明1とは、以下の点で一致している。
「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源と、
蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓と、
前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子と、
前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子とを備え、
前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し、
前記第一光変換素子は、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面に接するように前記光源の前記発光面直上に配置されている、
蛍光体増強照明装置。」

ウ そして、本願発明4と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(ア)相違点4:1の1
本願発明4は、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在するのに対し、引用発明1は、緑色蛍光体膜405と赤色蛍光体膜407は共に無機蛍光体を含み、分離されている(ギャップが存在する)点。

(イ)相違点4:1の2
第一光変換素子と第二光変換素子との間のギャップについて、本願発明4は、「前記ギャップは真空によって形成され又は前記ギャップは流体で充填され」ているのに対し、引用発明1は、「透明樹脂包装部430が形成され」ている点。

(ウ)相違点4:1の3
本願発明4は、第一光変換素子の底面が光源の発光面と実質的に同じ大きさで存在するのに対し、引用発明1は、「緑色(または、赤色)蛍光体膜405または407が青色LEDチップ103の表面に沿って薄く塗布されて」おり、青色LEDチップ103の側面の表面にも塗布されている分、蛍光体膜が広く存在する点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4:1の1について先に検討する。
相違点4:1の1は、上記相違点1:1の1と同じであるから、相違点1:1の1についての判断と同様に、本願発明1の相違点4:1の1に係る構成は、引用発明1及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基づいて容易に想到することができたとはいえない。
また、相違点4:1の1に係る、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成を含む本願発明4の構成を採用することにより、引用文献1ないし6からは予測し得ない、「カラー外観」を低減するという効果を奏するものである。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明4は当業者であっても引用発明1及び引用文献2ないし6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)引用発明2との対比
ア 引用発明2において、「第1の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第2の原色の光を放出するように構成されている第1の発光素子」は、「第1の蛍光体層41からな」ることから、「チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された半導体発光デバイス20」の「チップ21」は、「第1の原色の光」を放出するものであり、本願発明4の「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源」に相当する。
引用発明2の「照明システム」は、蛍光体材料からなる発光素子を含むから、本願発明4の「蛍光体増強照明装置」に相当する。
引用発明2において「出力光52はカップ状部材を覆う部材を透過する」から、引用発明2の「カップ状部材を覆う部材」は、本願発明4の「蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓」に相当するといえる。
引用発明2の「第1の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第2の原色の光を放出するように構成されている第1の発光素子」は、「YAG:Ce、(Y,Gd)AG:Ce、(Y,Lu)AG:Ce、(Y,Lu,Gd)AG:Ce、及びLuAG:Ce、YAGSN:Ce、(Y,Lu,Gd)AGSN:Ce、LuAGSN:Ce及びこれらの何等かの組合せからなるグループから選択された蛍光体材料を備え、または、第1の発光素子は、オキシニトリド・ケイ酸塩蛍光体である蛍光体材料からな」るから、本願発明4の「前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子」に相当する。
引用発明2の「第1または第2の原色の光の少なくとも一部分を吸収して第3の原色の光を放出するように構成されている第2の発光素子」と、本願発明4の「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する第一の有機発光体を含む第二光変換素子」とは、共に、「前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子」である点で共通する。
引用発明2の「カップ状部材の内側底部に、チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された半導体発光デバイス20が配置され、第1の蛍光体層41から離間して上部に第2の蛍光体層42,45が配置され、出力光52はカップ状部材を覆う部材を透過するものであ」る配置関係は、本願発明4の「前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在」する配置関係に相当する。

引用発明2の「チップ21上に第1の蛍光体層41が形成された」ことと、本願発明4の「前記第一光変換素子は、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面に接するように前記光源の前記発光面直上に配置されて、前記第一光変換素子の底面が前記光源の前記発光面と実質的に同じ大きさで存在する」とは、共に、「前記第一光変換素子は、前記光源の前記発光面直上に配置されて」いる点で共通する。

イ してみると、本願発明4と引用発明2とは、以下の点で一致している。
「予め定められた色スペクトルの光源光を出射するための発光面を有する光源と、
蛍光体増強照明装置の周囲に光を出射するための光出口窓と、
前記光源光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第一の色の光に変換する無機発光体を含む第一光変換素子と、
前記光源光の一部及び/又は前記第一の色の前記光の一部を吸収し、当該吸収された光の一部を第二の色の光に変換する発光体を含む第二光変換素子とを備え、
前記第二光変換素子は、光学的に、前記光出口窓と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子は、光学的に、前記第二変換素子と前記光源の前記発光面との間に配置され、前記第一光変換素子と前記第二光変換素子との間には、ギャップが存在し、
前記第一光変換素子は、前記光源の前記発光面直上に配置されている、
蛍光体増強照明装置。」

ウ そして、本願発明4と引用発明2とは、以下の点で相違する。
(ア)相違点4:2の1
本願発明1は、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在するのに対し、引用発明2は、第1の蛍光体層41と第2の蛍光体層42,45は共に無機蛍光体を含み、離間して配置される(ギャップが存在する)点。

(イ)相違点4:2の2
第一光変換素子と第二光変換素子との間のギャップについて、本願発明4は、「前記ギャップは真空によって形成され又は前記ギャップは流体で充填され」ているのに対し、引用発明2は、何が充填されているか不明である点。

(ウ)相違点4:2の3
本願発明4は、第一光変換素子の底面が光源の発光面に接するように配置され、第一光変換素子の底面が光源の発光面と実質的に同じ大きさで存在するのに対し、引用発明2は、チップ21上の第1の蛍光体層41が接するように配置されているか不明であり、チップ21の上面と第1の蛍光体層41の底面が実質的に同じであるか不明である点。

(4)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点4:2の1について先に検討する。
相違点4:2の1は、上記相違点1:2の1と同じであるから、相違点1:2の1についての判断と同様に、本願発明4の相違点4:2の1に係る構成は、引用発明2及び引用文献1、引用文献3ないし6に記載された技術事項に基づいて容易に想到することができたとはいえない。
また、相違点4:2の1に係る、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成を含む本願発明4の構成を採用することにより、引用文献1ないし6からは予測し得ない、「カラー外観」を低減するという効果を奏するものである。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明4は当業者であっても引用発明2及び引用発明1、引用文献3?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明5、6、13、14について
本願発明5、6、13、14も、本願発明4の相違点4:1の1に係る構成又は相違点4:2の1に係る構成と同一の構成、つまり、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成を備えるものであるから、本願発明4と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2、引用発明1、引用文献3?6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1?14の、無機発光体を含む第一光変換素子と有機発光体を含む第二光変換素子の間にはギャップが存在する構成は、原査定において引用された引用文献1?5には記載されておらず、本願の優先日における周知技術でもないので、本願発明1?14は、当業者であっても、引用文献1?5に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-26 
出願番号 特願2014-508891(P2014-508891)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉野 三寛  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 星野 浩一
森 竜介
発明の名称 カラー外観が低減された蛍光体増強照明装置、レトロフィット電球及び管電球  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

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