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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1338765
審判番号 不服2017-4321  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-27 
確定日 2018-04-10 
事件の表示 特願2014-220728「情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月29日出願公開、特開2015- 16390、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年8月31日に出願した特願2007-226340号の一部を、平成24年10月31日に新たな特許出願(特願2012-240100号)とし、その一部を、平成26年10月29日に新たな特許出願としたものであって、平成27年10月22日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月21日付けで手続補正がなされたが、平成28年5月12日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成28年7月15日付けで手続補正がなされたが、平成28年12月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年3月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、当審において、平成29年10月26日付けで拒絶理由が通知され、平成29年12月28日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-8に係る発明(以下、[本願発明1」-「本願発明8」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項より特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりである。
「【請求項1】
被検体の超音波撮影を行うための超音波プローブとともに用いられる情報処理装置であって、
前記超音波プローブにより撮影される超音波画像とは異なる画像を用いて、前記被検体において前記超音波撮影の対象となる対象部位を設定する設定手段と、
前記超音波プローブの位置・姿勢を示す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記超音波プローブにより撮影される撮影範囲に、前記設定手段により設定された対象部位が含まれるか否かを判定する判定手段と、
前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に、前記対象部位が前記撮影範囲に含まれていると前記判定手段により判定された場合に、前記位置取得手段により取得される前記位置情報の、前記対象部位に関する前記超音波プローブの位置・姿勢の目標値に対する差分に基づいて、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記情報を提示する記号であって、前記超音波プローブを移動する方向を示唆する記号を、前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に包含されるように表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」

また、本願発明2は、以下のとおりである。
「【請求項2】
被検体の超音波撮影を行うための超音波プローブとともに用いられる情報処理装置であって、
前記被検体において前記超音波撮影の対象となる対象部位を設定する設定手段と、
前記超音波プローブの前記被検体に対する位置・姿勢を示す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記超音波プローブにより撮影される撮影範囲に、前記設定手段により設定された対象部位が含まれるか否かを、前記超音波プローブにより取得された連続する複数のフレームの超音波画像に基づいて判定する判定手段と、
前記位置取得手段により取得された位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に、前記対象部位が前記撮影範囲に含まれていると前記判定手段により判定された場合に、前記対象部位に関する前記超音波プローブの位置・姿勢の目標値と、前記位置取得手段により取得される前記位置情報との差分に基づいて、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記情報を提示する記号であって、前記超音波プローブを移動する方向を示唆する記号を、前記位置取得手段により取得された位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に包含されるように表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」

なお、本願発明3-8の概要は、次のとおりである。
本願発明3は、本願発明1又は本願発明2を減縮した発明であり、
本願発明4、5は、それぞれ本願発明1、2(情報処理装置)に対応する情報処理方法の発明であり、本願発明1、2とは、カテゴリー表現が異なるだけの発明である。
本願発明6、7は、それぞれ、情本願発明1、2(情報処理装置)に対応する情報システムの発明であり、本願発明1、2とは、表現が異なるだけの発明である。
また、本願発明8は、本願発明4又は本願発明5の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムの発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2006/059668号)には、図面とともに、次の技術が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「 [0001] 本発明は、被検体の関心領域を超音波像に描出させる超音波撮像技術に関する 」

「 [0012] 本発明を適用した超音波装置の一実施形態について図面を参照して説明する。図 1は、本実施形態の超音波装置の構成を示すブロック図である。

[0013] 図 1に示すように、超音波装置は、被検体 Hとの間で超音波を送受する超音波探触子 10 (以下、探触子 10という)と、探触子 10に送波用の駆動信号を供給すると共に探触子 10から出力される受信信号を処理する送受信部 12と、送受信部 12から出力される受信信号に基づき超音波像 (例えば、超音波断層像)を構成する画像構成部としての超音波像構成部 14と、超音波像構成部 14により構成された超音波断層像を画面に表示する表示手段としての画像表示部 16などから構成されている。

[0014] ここで本実施形態の超音波装置は、探触子 10の目標移動方向や目標移動量や目標傾斜角などを示すガイド情報を生成する手段としてのガイド情報演算部 20を備えている。ガイド情報演算部 20は、探触子 10の位置データと、予め取得した被検体 H に関するボリュームデータに設定の関心領域の位置データとに基づき、探触子 10の スキャン面を被検体 Hの関心領域の位置に誘導するガイド情報を生成して画像表示部 16に表示させる。 」

「[0017] 超音波像構成部 14は、送受信部 12から出力された受信信号に対し、検波などの処理を施して超音波断層像を構成する。ここでの超音波断層像は、探触子 10のスキャン面に対応した二次元画像である。そして、超音波像構成部 14は、超音波断層像を画像メモリ制御部 24に出力する。

[0018] 画像メモリ制御部 24は、超音波像構成部 14から出力された超音波断層像ごとにフレーム番号を関連付けて記憶領域に格納する。フレーム番号とは、超音波断層像に 対応する画像管理番号である。

[0019] また、探触子 10の位置や傾きなどを取得する磁気位置センサ 22が設けられている 。磁気位置センサ 22は、探触子 10に貼付された磁気信号検出手段としての磁気センサと、ベッドなどに取り付けられた磁場発生器としてのソースと、磁気センサから出力された検出信号に基づき探触子 10の位置や傾き等(以下、探触子 10の位置データと適宜称する)を算出する演算手段とを有する。そして、磁気位置センサ 22は、探触子 10の位置データを位置情報演算保持部 26に出力する。なお、磁気信号を利用した形態に代えて、光信号を利用した形態を適用してもよい。要は、探触子 10の位置データを取得できればよい。」

「 [0020] 位置情報演算保持部 26は、探触子 10の位置データを超音波断層像のフレーム番号に関連付ける。例えば、磁気位置センサ 22から出力された探触子 10の位置データと、画像メモリ制御部 24から通知されたフレーム番号とを関連付ける。そして、位置情報演算保持部 26は、制御指令に応じ、探触子 10の位置データを位置情報取得部 28に出力する。

[0021] 位置情報取得部 28は、位置情報演算保持部 26から出力された探触子 10の位置データを取り込む。例えば、位置情報取得部 28は、リアルタイム撮像の際は、撮像中の探触子 10の位置データを位置情報演算保持部 26から取得する。また位置情報取 得部 28は、いわゆるフリーズ撮像の際は、画像メモリ制御部 24から読み出される超音波断層像に関連付けられた探触子 10の位置データを位置情報演算保持部 26から取得する。そして、位置情報取得部 28は、ガイド情報演算部 20とリファレンス画像構成部 30に位置データを出力する。

[0022] また、被検体 Hに関する三次元画像データ(以下、ボリュームデータという)を取り込むボリュームデータ取得処理部 18が設けられている。ここでのボリュームデータは、 超音波撮像装置、X線 CT撮像装置、磁気共鳴撮像装置などの画像撮像装置によって例えば治療前に取得されたものである。ボリュームデータ取得処理部 18は、画像 撮像装置から取り込んだボリュームデータを記憶領域に格納する。そして、ボリュームデータ処理部 18は、操作パネル 32を介して入力された指令に応じ、記憶領域からボリュームデータを読み出してリファレンス画像構成部 30や関心領域指定部 34に出力する。

[0023] リファレンス画像構成部 30は、位置情報取得部 28から通知された探触子 10の位置データに基づき、ボリュームデータ取得処理部 18から出力されたボリュームデータを用いてリファレンス画像を再構成する。例えば、リファレンス画像構成部 30は、リアルタイム撮像の際は、撮像中の探触子 10のスキャン面と同一断面の断層画像をリファレンス画像として再構成する。またリファレンス画像構成部 30は、いわゆるフリーズ撮像の際は、画像メモリ制御部 24から読み出される超音波断層像と同一断面の断層像をリファレンス画像として再構成する。

[0024] 関心領域指定部 34は、ボリュームデータ取得処理部 18から出力されたボリュームデータに対して関心領域を設定する。ここでの関心領域とは、診断又は治療すべき部位 (例えば、肝腫瘍)に対応した点や範囲である。例えば、関心領域指定部 34は、ボリュームデータから構成された断面方向が異なる複数の断層画像を次々に表示させる。そして、関心領域指定部 34は、断層像上に関心領域を指定させ、指定領域の ボタセル座標(以下、関心領域の位置データと適宜称する)をガイド情報演算部 20に出力する。なお、このような関心領域の指定は、操作パネル 32を介して行われる。

[0025] ガイド情報演算部 20は、関心領域指定部 34から関心領域の位置データを取得するとともに、また位置情報取得部 28から探触子 10の位置データを設定時間間隔 (例えば、リアルタイム)で取得する。そして、ガイド情報演算部 20は、関心領域に対する 探触子 10の相対位置を演算し、その相対位置の大きさの変化に追従して表示形態が変わる画像をガイド情報として生成する。ここでのガイド情報は、撮像中の探触子 10の位置や傾きを目標状態に案内するための客観的指標である。例えば、ガイド情報は、探触子 10の目標移動方向、目標移動量、目標傾斜角、回転方向などを示すガイド画像やキャラクタ画像であり、探触子 10の位置や傾きに応じて随時更新される。なお、目標状態とは、探触子 10のスキャン面に関心部位の位置が含まれる際の探触子 10の位置や傾きのことである。 」

「 [0027] 表示制御部 36は、画像メモリ制御部 24から読み出された超音波断層像と、リファレンス画像構成部 30から出力されたリファレンス画像と、ガイド情報演算部 20から出力されたガイド情報とを画像表示部 16に表示させる。ここでの超音波断層像は、探触子 10のスキャン面に対応する超音波像である。リファレンス画像は、表示中の超音波断層像と同一断面の断層画像である。ガイド情報は、探触子 10のスキャン面をリファレンス画像の断層画像と同一断面に設定するため、リファレンス画像に設定した関心領域の位置に探触子 10を誘導する例えば矢印画像である。」

「 [0047] 図 5は、被検体 Hの関心領域を超音波像に再描画させた際の表示例である。図 5に示す超音波像は、図 2の S103の工程で表示される。図 5に示すように、表示画面は、撮像中の探触子 10のスキャン面に対応した超音波断層像の表示エリア 68と、表示エリア 68の超音波像と同一断面のリファレンス画像の表示エリア 66を有する。また表示画面は、探触子 10のスキャン面を関心領域の位置に誘導するガイド情報の表示エリア 70と、探触子 10の位置マークが被検体 Hに関するボディマークに重ねて表示される表示エリア 71を有する。」


したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「超音波装置は、被検体 Hとの間で超音波を送受する超音波探触子 10 (以下、探触子 10という)と、超音波像 (例えば、超音波断層像)を構成する画像構成部としての超音波像構成部 14と、超音波像構成部 14により構成された超音波断層像を画面に表示する表示手段としての画像表示部 16などから構成され(段落[0013]より。以下同様。)、探触子 10の目標移動方向や目標移動量や目標傾斜角などを示すガイド情報を生成する手段としてのガイド情報演算部 20を備えており、ガイド情報演算部 20は、探触子 10の位置データと、予め取得した被検体 Hに関するボリュームデータに設定の関心領域の位置データとに基づき、探触子 10のスキャン面を被検体 Hの関心領域の位置に誘導するガイド情報を生成して画像表示部 16に表示させ([0014])、
超音波断層像は、探触子 10のスキャン面に対応した二次元画像であり、そして、超音波像構成部 14は、超音波断層像を画像メモリ制御部 24に出力し([0017])、
探触子 10の位置や傾きなどを取得する磁気位置センサ 22が設けられ、磁気位置センサ 22は、探触子 10の位置や傾き等(以下、探触子 10の位置データと適宜称する)を算出し、位置情報演算保持部 26に出力し([0019])、
位置情報取得部 28は、位置情報演算保持部 26から出力された探触子 10の位置データを取り込み、位置情報取得部 28は、ガイド情報演算部 20とリファレンス画像構成部 30に位置データを出力し( [0021])、
被検体 Hに関する三次元画像データ(以下、ボリュームデータという)を取り込むボリュームデータ取得処理部 18が設けられ、ここでのボリュームデータは、超音波撮像装置、X線 CT撮像装置、磁気共鳴撮像装置などの画像撮像装置によって例えば治療前に取得されたものであり( [0022] )、
リファレンス画像構成部 30は、位置情報取得部 28から通知された探触子 10の位置データに基づき、ボリュームデータ取得処理部 18から出力されたボリュームデータを用いてリファレンス画像を再構成し([0023])、
関心領域指定部 34は、ボリュームデータ取得処理部 18から出力されたボリュームデータに対して関心領域を設定し、ここでの関心領域とは、診断又は治療すべき部位 (例えば、肝腫瘍)に対応した点や範囲であり、関心領域指定部 34は、断層像上に関心領域を指定させ、指定領域のボタセル座標(以下、関心領域の位置データと適宜称する)をガイド情報演算部 20に出力し([0024])、
ガイド情報演算部 20は、関心領域指定部 34から関心領域の位置データを取得するとともに、また位置情報取得部 28から探触子 10の位置データを取得し、そして、ガイド情報演算部 20は、関心領域に対する探触子 10の相対位置を演算し、その相対位置の大きさの変化に追従して表示形態が変わる画像をガイド情報として生成し、ここでのガイド情報は、撮像中の探触子 10の位置や傾きを目標状態に案内するための客観的指標であり、例えば、ガイド情報は、探触子 10の目標移動方向、目標移動量、目標傾斜角、回転方向などを示すガイド画像やキャラクタ画像であり、目標状態とは、探触子 10のスキャン面に関心部位の位置が含まれる際の探触子 10の位置や傾きのことであり([0025])、
表示制御部 36は、画像メモリ制御部 24から読み出された超音波断層像と、リファレンス画像構成部 30から出力されたリファレンス画像と、ガイド情報演算部 20から出力されたガイド情報とを画像表示部 16に表示させ、ここでの超音波断層像は、探触子 10のスキャン面に対応する超音波像であり、リファレンス画像は、表示中の超音波断層像と同一断面の断層画像であり、ガイド情報は、探触子 10のスキャン面をリファレンス画像の断層画像と同一断面に設定するため、リファレンス画像に設定した関心領域の位置に探触子 10を誘導する例えば矢印画像であり([0027])、
表示画面は、撮像中の探触子 10のスキャン面に対応した超音波断層像の表示エリア 68と、表示エリア 68の超音波像と同一断面のリファレンス画像の表示エリア 66を有し、また表示画面は、探触子 10のスキャン面を関心領域の位置に誘導するガイド情報の表示エリア 70と、探触子 10の位置マークが被検体 Hに関するボディマークに重ねて表示される表示エリア 71を有する([0047])、
超音波装置([0013])。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平6-133968号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0024】たとえば、図6に示すように、超音波画像データ30の注目部位31の近傍にメモキー22によりコメントを記入する前にマスクキー28を操作すると、コメントの表示位置32において超音波画像データ30がマスクされ、文字キーによりそこに入力された文字が表示される。なお、図4のステップS7で患者名を示すIDの欄をビット反転設定した場合には、患者名を示すIDの表示欄33に表示されるキャラクタデータには反転処理が施される。またマスク処理を施した場合には背景に何らかの画像データが存在している場合には、画像データにマスク処理が施される。このようにして表示された画像をたとえばVTR等の記録装置に記録することにより、再生の際にコメント欄32や表示欄33の内容を確実に確認することができ、診断を迅速に行える。」


3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平11-342132号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0039】このようにして求めた内膜中膜厚の計測値を、ステップ512で表示部10に表示する。これによって、例えば図10に示すように、断層像に重畳して計測部位とその計測値が表示される。」


4.引用文献4
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献4(特開2005-124712号公報)には、段落【0050】-【0055】及び図5より、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「表示画面64上に、生体イメージ(超音波画像)66、参照イメージ(グラフィック画像)68、及びプローブ位置についてのインジケータ76がリアルタイム表示され、参照イメージ68は、ボディマーク70、登録プローブマーク73及び現プローブマーク72を含み、ユーザーは、プローブの当接位置及び当接姿勢を可変させて、現プローブマーク72が登録プローブマーク73に合致するように、プローブを操作すれば、過去の診断時における診断部位と現在の診断時における診断部位を容易に近接又は一致させることができ、プローブ姿勢についてのインジケータを設けてもよく、このようなガイダンス表示74によってユーザーはリアルタイムでプローブ操作の方向を知ることができること。」

5.引用文献5
原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開昭58-180137号公報)には、第3頁左上欄第20行-左下欄第4行及び図2-4より、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「表示811のスクリーン100上に、超音波診断像である断層エコー像がリアルタイムで表示され、さらに、方眼状のグリッドパターン114がエコー画像を表わす信号と重畳されて表示されること。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1における「超音波装置」は、「被検体 Hとの間で超音波を送受する超音波探触子 10 (以下、探触子 10という)」を含んで構成され、該「探触子 10」の「スキャン面に対応した二次元画像」を「超音波断層像」として「構成」するものである。
よって、引用発明1における「超音波探触子 10 (以下、探触子 10という)」が、本願発明1における「超音波プローブ」に相当し、引用発明1における「超音波装置」から「超音波探触子 10 (以下、探触子 10という)」を除く部分が、本願発明1における、「被検体の超音波撮影を行うための超音波プローブとともに用いられる情報処理装置」に相当する。

イ 引用発明1における「超音波装置」に設けられた「ボリュームデータ取得処理部 18」が「取り込む」、「被検体 Hに関する三次元画像データ(以下、ボリュームデータという)」は、「超音波撮像装置、X線 CT撮像装置、磁気共鳴撮像装置などの画像撮像装置によつて例えば治療前に取得されたものであ」るから、本願発明1における「前記超音波プローブにより撮影される超音波画像とは異なる画像」に相当する。

ウ 上記「イ」を踏まえると、引用発明1における「関心領域指定部 34」は、「ボリュームデータ取得処理部 18から出力されたボリュームデータに対して関心領域を設定し、ここでの関心領域とは、診断又は治療すべき部位 (例えば、肝腫瘍)に対応した点や範囲であ」るから、本願発明1における「前記超音波プローブにより撮影される超音波画像とは異なる画像を用いて、前記被検体において前記超音波撮影の対象となる対象部位を設定する設定手段」に相当する。

エ 引用発明1における「位置情報取得部 28」は、「位置情報演算保持部 26から出力された探触子 10の位置データを取り込」んでいる。ここで、「探触子 10の位置データ」とは、「探触子 10の位置や傾き等(以下、探触子 10の位置データと適宜称する)」と定義されたものであるから、引用発明1における「位置情報取得部 28」が、本願発明1における「前記超音波プローブの位置・姿勢を示す位置情報を取得する位置取得手段」に相当する。

オ 引用発明1における「目標状態」は、「探触子 10のスキャン面に関心部位の位置が含まれる際の探触子 10の位置や傾きのことである」から、引用発明1における「目標状態」の「位置データ」(上記「エ」で述べたとおり、「探触子 10の位置や傾き等」を意味する)が、本願発明1における「前記対象部位に関する前記超音波プローブの位置・姿勢の目標値」に相当する。

カ 引用発明1における「ガイド情報演算部 20」は、「探触子 10の目標移動方向や目標移動量や目標傾斜角などを示すガイド情報を生成する手段」であって、「探触子 10の位置データと、予め取得した被検体 Hに関するボリュームデータに設定の関心領域の位置データとに基づき、探触子 10のスキャン面を被検体 Hの関心領域の位置に誘導するガイド情報を生成して」いる。そして、「ガイド情報は、撮像中の探触子 10の位置や傾きを目標状態に案内するための客観的指標であり、例えば、ガイド情報は、探触子 10の目標移動方向、目標移動量、目標傾斜角、回転方向などを示すガイド画像やキャラクタ画像であ」るから、上記「エ」、「オ」を踏まえれば、引用発明1における「ガイド情報演算部 20」が、「ガイド情報を生成」するにあたり、「探触子 10の位置データ」と、「目標状態」の「位置データ」とに基づいて、「探触子 10の目標移動方向、目標移動量、目標傾斜角、回転方向など」の情報を取得していることは明らかである。
よって、引用発明1における「ガイド情報演算部 20」は、「探触子 10の位置データ」と、「目標状態」の「位置データ」とに基づいて、「探触子 10の目標移動方向、目標移動量、目標傾斜角、回転方向など」の情報を取得していることが明らかであるので、本願発明1における「前記超音波プローブにより撮影される撮影範囲に、前記設定手段により設定された対象部位が含まれるか否かを判定する判定手段と、前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に、前記対象部位が前記撮影範囲に含まれていると前記判定手段により判定された場合に、前記位置取得手段により取得される前記位置情報の、前記対象部位に関する前記超音波プローブの位置・姿勢の目標値に対する差分に基づいて、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得する情報取得手段」とは、「前記位置取得手段により取得される前記位置情報と、前記対象部位に関する前記超音波プローブの位置・姿勢の目標値とに基づいて、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得する情報取得手段」の点で共通するといえる。

キ 引用発明1における「表示制御部 36」は、「画像メモリ制御部 24から読み出された超音波断層像と、リファレンス画像構成部 30から出力されたリファレンス画像と、ガイド情報演算部 20から出力されたガイド情報とを画像表示部 16に表示させ、ここでの超音波断層像は、探触子 10のスキャン面に対応する超音波像であり」、「ガイド情報は、探触子 10のスキャン面をリファレンス画像の断層画像と同一断面に設定するため、リファレンス画像に設定した関心領域の位置に探触子 10を誘導する例えば矢印画像であ」り、その「表示画面」は、「撮像中の探触子 10のスキャン面に対応した超音波断層像の表示エリア 68と、表示エリア 68の超音波像と同一断面のリファレンス画像の表示エリア 66を有し」、また「探触子 10のスキャン面を関心領域の位置に誘導するガイド情報の表示エリア 70と、探触子 10の位置マークが被検体 Hに関するボディマークに重ねて表示される表示エリア 71を有する」ものである。
よって、引用発明1における「表示エリア 68」に上記「撮像中の探触子 10のスキャン面に対応した超音波断層像」を表示し、「表示エリア 70」に「探触子 10のスキャン面を関心領域の位置に誘導するガイド情報」として「例えば矢印画像」を表示する「表示制御部 36」と、本願発明1における「前記情報取得手段により取得された前記情報を提示する記号であって、前記超音波プローブを移動する方向を示唆する記号を、前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に包含されるように表示させる表示制御手段」とは、「前記情報取得手段により取得された前記情報を提示する記号であって、前記超音波プローブを移動する方向を示唆する記号を、前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像とともに表示させる表示制御手段」の点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
被検体の超音波撮影を行うための超音波プローブとともに用いられる情報処理装置であって、
前記超音波プローブにより撮影される超音波画像とは異なる画像を用いて、前記被検体において前記超音波撮影の対象となる対象部位を設定する設定手段と、
前記超音波プローブの位置・姿勢を示す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段により取得される前記位置情報と、前記対象部位に関する前記超音波プローブの位置・姿勢の目標値とに基づいて、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された前記情報を提示する記号であって、前記超音波プローブを移動する方向を示唆する記号を、前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像とともに表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1では、「前記超音波プローブにより撮影される撮影範囲に、前記設定手段により設定された対象部位が含まれるか否かを判定する判定手段」を有し、「前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に、前記対象部位が前記撮影範囲に含まれていると前記判定手段により判定された場合」に、情報取得手段がユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得している(以下、「相違点1に係る本願発明1の構成」という。)のに対し、
引用発明1では、そのような判定手段を有しておらず、また、「ガイド情報演算部 20」は、「ガイド情報を生成」するにあたり、「探触子 10の位置データ」と、「目標状態」の「位置データ」とに基づいて、「探触子 10の目標移動方向、目標移動量、目標傾斜角、回転方向など」の情報を取得していることは明らかであるものの、該情報の取得について、探触子 10のスキャン面に関心部位の位置が含まれると判定されることを条件とはしていない点。

(相違点2)
本願発明1では、表示制御手段が、前記情報取得手段により取得された前記情報を提示する記号であって、前記超音波プローブを移動する方向を示唆する記号を、前記超音波プローブの位置において撮影された「超音波画像中に包含されるように表示させる」のに対し、
引用発明1における「表示制御部 36」は、「表示エリア 68」に「撮像中の探触子 10のスキャン面に対応した超音波断層像」を表示し、「表示エリア 70」に「探触子 10のスキャン面を関心領域の位置に誘導するガイド情報」として「例えば矢印画像」を表示しており、「矢印画像」が「超音波断層像」の「表示エリア 68」中に包含されるように表示するものではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の構成である、「前記超音波プローブにより撮影される撮影範囲に、前記設定手段により設定された対象部位が含まれるか否かを判定する判定手段」を有し、「前記位置取得手段により取得された前記位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に、前記対象部位が前記撮影範囲に含まれていると前記判定手段により判定された場合」に、情報取得手段が、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得することは、引用文献2-5には記載されていない。

したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1と同じく、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」と同様の構成、つまり、「前記超音波プローブにより撮影される撮影範囲に、前記設定手段により設定された対象部位が含まれるか否かを、前記超音波プローブにより取得された連続する複数のフレームの超音波画像に基づいて判定する判定手段」を有し、「前記位置取得手段により取得された位置情報が示す前記超音波プローブの位置において撮影された超音波画像中に、前記対象部位が前記撮影範囲に含まれていると前記判定手段により判定された場合」に、「情報取得手段」が、ユーザが行うべき前記超音波プローブの移動・回転に関する情報を取得することを発明特定事項としている。
よって、本願発明1と同様の理由により、本願発明2は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明3について
本願発明3は、本願発明1又は本願発明2を減縮した発明であるから、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」、もしくはそれと同様の構成を有するものである。よって、本願発明3は、本願発明1又は本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明4、5について
本願発明4、5は、それぞれ本願発明1、2(情報処理装置)に対応する情報処理方法の発明であり、本願発明1、2とは、カテゴリー表現が異なるだけの発明であるから、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」、もしくはそれと同様の構成に対応する構成を有するものである。
よって、本願発明4、5は、本願発明1又は本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.本願発明6、7について
本願発明6、7は、それぞれ、本願発明1、2(情報処理装置)に対応する情報システムの発明であり、本願発明1、2とは、表現が異なるだけの発明であるから、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」、もしくはそれと同様の構成に対応する構成を有するものである。
よって、本願発明6,7は、本願発明1又は本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6.本願発明8について
本願発明8は、本願発明4又は本願発明5の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムの発明であるから、上記「相違点1に係る本願発明1の構成」、もしくはそれと同様の構成に対応する構成を有するものである。
よって、本願発明8は、本願発明1又は本願発明2と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-13について、上記引用文献1-5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本件補正により、補正後の請求項1-8は、それぞれ上記「相違点1に係る本願発明1の構成」、またはそれと同様の構成、もしくはそれらに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-8は、引用発明1及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.いわゆる、新規事項の追加について
当審では、平成29年3月27日付けの手続補正について、当該補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできないから、平成29年3月27日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、との拒絶理由を通知している。
しかし、本件補正により、上記拒絶理由は解消した。

2.特許法第36条第6項第1号について
当審では、上記「1」と同様の理由により、平成29年3月27日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1-13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶理由を通知している。
しかし、本件補正により、上記拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-8は、当業者が引用発明1、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-03-27 
出願番号 特願2014-220728(P2014-220728)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 門田 宏山口 裕之姫島 あや乃永田 浩司  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 須原 宏光
清水 稔
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム、及びプログラム  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 阿部 琢磨  

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