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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B43K
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 B43K
管理番号 1338789
審判番号 不服2017-4989  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-07 
確定日 2018-03-19 
事件の表示 特願2015- 87157「加速度センサを内蔵した先端収納式筆記具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-203473〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月21日の出願であって、平成28年4月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月6日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成29年4月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて発明の詳細な説明を補正する手続補正がなされたものである。


第2 平成29年4月7日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、発明の詳細な説明について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、出願時の)段落【0002】を、下記(2)に示す段落【0002】へと補正することを含むものである。

(1)本件補正前の段落【0002】
「シャープペンシル、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具の先端部分の構造は、微細かつ繊細であるため保護の必要があり、これまで様々な対策が試されてきた。現在では、先端部分をワンタッチで軸内に収納し保護する構造が主流であると言えよう。しかし、この構造はこれらの筆記具の先端部分を保護する決定的な効果を持たず、仮に先端部分を露出したまま落下させてしまうと、先端部分が床面に接触し衝撃により破損する恐れが十分にある。
他方で、加速度センサは、MEMS技術の応用により小型化が進むとともに、多軸の加速度を検出可能となったことで用途が広がり、ゲームや携帯機器の入力装置から機械・運輸、環境、医療など幅広く利用されつつある。その機能は、大きく分けて加速度検出、傾き検出、振動検出、動き検出、衝撃検出、落下検出などである。落下検出では、無重力状態を検出する。加速度センサが静止または等速運動状態である場合には、重力加速度が検出される。自由落下状態であればいわゆる無重力状態となり、検出される加速度が異なるので、落下を検出することができる。」

(2)本件補正後の段落【0002】
「シャープペンシル、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具の先端部分の構造は、微細かつ
繊細であるため保護の必要があり、これまで様々な対策が試されてきた。現在では、先端部分をワ
ンタッチで軸内に収納し保護する構造が主流であると言えよう。しかし、この構造はこれらの筆記
具の先端部分を保護する決定的な効果を持たず、仮に先端部分を露出したまま落下させてしまうと、
先端部分が床面に接触し衝撃により破損する恐れが十分にある。
他方で、加速度センサは、MEMS技術の応用により小型化が進むとともに、多軸の加速度を検
出可能となったことで用途が広がり、ゲームや携帯機器の入力装置から機械・運輸、環境、医療な
ど幅広く利用されつつある。その機能は、大きく分けて加速度検出、傾き検出、振動検出、動き検
出、衝撃検出、落下検出などである。落下検出では、無重力状態を検出する。加速度センサが静止
または等速運動状態である場合には、重力加速度が検出される。自由落下状態であればいわゆる無
重力状態となり、検出される加速度が異なるので、落下を検出することができる。
アクチュエータとしてプッシュソレノイドを連動し、先端部分を収納する運動を出力することで
先端部分を即座に自動的に収納する。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

2 本件補正について
本件補正により、本件補正後の段落【0002】に、「アクチュエータとしてプッシュソレノイドを連動し、先端部分を収納する運動を出力することで先端部分を即座に自動的に収納する。」との補正事項(以下「補正事項」という。)が追加された。
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、及び図面(以下「当初明細書等」という)には、シャープペンシル、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具のうち、先端部分をワンタッチで軸内に収納する構造に関して、何ら具体的に記載されていない。
また、シャープペンシル、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具において、「アクチュエータとしてプッシュソレノイドを連動し、先端部分を収納する運動を出力することで先端部分を即座に自動的に収納する」構造が、自明の事項であるといえる理由もない。
したがって、上記補正事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。

3 むすび
以上のとおりであって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下された。
本願の請求項1に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「シャープペンシル、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具のうち、先端部分をワンタッチで軸内に収納する構造の筆記具の軸内に加速度センサを内蔵し、軸外の一部分に付帯した太陽電池によってこれに給電することで稼働させ、自由落下を感知し、かつ先端部分が軸外に露出していた場合に、先端部分を即座に自動的に収納することで、先端部分の保護をより堅牢に行うことを可能とすることを特徴とする加速度センサを内蔵した先端収納式筆記具。」(以下「本願発明」という。)

2 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
本願発明の「先端部分を即座に自動的に収納する」点について、本願の発明の詳細な説明には、「先端部分を即座に自動的に収納する」ための構成が何ら記載されていない。
また、シャープペンシル、ボールペン、万年筆、サインペン等の筆記具において、「先端部分を即座に自動的に収納する」ための構成が、当業者にとて、自明なものともいえない。
よって、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、本願は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-27 
結審通知日 2017-12-19 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2015-87157(P2015-87157)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (B43K)
P 1 8・ 537- Z (B43K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青山 玲理  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 加速度センサを内蔵した先端収納式筆記具  

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