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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1339053
審判番号 不服2017-3089  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-01 
確定日 2018-04-05 
事件の表示 特願2012-261691号「フライリテーナ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-103956号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判に係る出願は、平成24年11月29日の特許出願であって、平成28年8月23日付けの拒絶理由通知書に対し、平成28年10月27日に意見書及び手続補正書が提出された後、平成28年11月29日付けで拒絶査定がされ(発送日:平成28年12月6日)、これに対し、平成29年3月1日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。

2 本件補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年3月1日に提出された手続補正書による補正を却下する。
[理由]
(1) 補正目的・本願補正発明
平成29年3月1日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数のカップ状容器が連続して配置され、一体となったリテーナ本体と、
該リテーナ本体のそれぞれのカップ状容器の開口部に対応し、複数の蓋部が連続して配置されており、当該リテーナ蓋の隣接する蓋部間の隙間部分を含めて一体となったリテーナ蓋(蓋部のみを繋げたタイプを除く)からなる、フライ麺塊の生産に用いられる多孔性のフライリテーナにおいて、
前記リテーナ本体の隣接するカップ状容器間の隙間部分、及び前記リテーナ蓋の隣接する蓋部間の隙間部分に空隙が形成されているフライリテーナ。」
と補正された。
上記補正は、審判請求書において請求人が主張するように、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「一体となったリテーナ蓋」について、それが「当該リテーナ蓋の隣接する蓋部間の隙間部分を含めて」なるものであるとの限定事項を付加したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用発明
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された実公昭43-26312号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア) 「そば等の油処理用容器の蓋の開閉装置」(1ページ左欄1行)
(イ) 「本案の要旨は、枠1に固着した適宜数の容器2の蓋3を蝶番4で開閉自在に取り付け、且、各々の蓋3の他側を連結杆5で連結して、連結杆5に係合できる係合部6とその下位に受部7を突設し更に掛止部8を突設形成した動揺板9を枠1に適宜に回動自在に取り付けると共に、先端を弧状に弯曲10させた板状のスプリング11を掛止部8の先端を押圧するように板1に固着し、次に枠1をコンベヤー12に止着して移送中容器2が逆になってその内容物を排出するのに適した位置で、動揺板9の係合部6の先端が当るように棒13を適宜の位置に固着してなるものである。しかして図中、14は透孔、15は油槽、16は製品受台17は蓋3を適宜の角度で立起するようにした止板とする。」(1ページ左欄16?30行)
(ウ) 「容器2は適宜数を枠1に固着し、これに適合する蓋3を蝶番4で開閉自在に取り付け、且、蓋3はその他側を連結杆5で連結して数個の蓋3を同時に開閉できるようにする。」(1ページ右欄12?15行)
(エ) 「しかして、枠1を適宜に架設したコンベヤー12を適宜の間隔を置いて止着し、第4図において例示するように先ず容器2の口部が上側に位置している場所において蓋3が開いている個々の容器2に順次そば等を適量づつ投入した後、第3図に示すように立起している蓋3を適宜手指で倒してやれば、・・・(略)・・・係合部6は連結杆5に係合した状態を維持し、蓋3が開くことを阻止して、容器2の口部を完全に閉鎖するものである。」(1ページ右欄15?末行)
(オ) 「容器2中にそば等を投入してから適宜に蓋3を倒してゆけば、自動的に蓋3は固定される」(1ページ右欄末行?2ページ左欄2行)
(カ) 「次に、油槽15中で油処理され油槽15から逆になった状態のまゝで出てきた容器2が製品受台16の上方の適宜の位置までくると、係合部6の先端に適宜の位置に固着して突出させた棒13が当るので、コンベヤー12の進行によって動揺板9は第5図において矢印で示す方向にスプリング11の弾性に抗して回動し第3図における点線から実線の位置に回動して、係合部6が連結杆5を放すので、蓋3は、蝶番4を支点としてその自重で下方に開き容部2中のそば等を製品受台16上に排出し、・・・(略)・・・次のそば等を順次投入して再度蓋3を倒すことを反復すればよいものである。」(2ページ左欄13?27行)
(キ) 「図面は本考案の実施例を示し、第1図は平面図第2図は第1図A-A線における要部の拡大断面図、第3図は第1図A-A線において蓋を開いた場合の拡大断面図、第4図はコンベヤーで容部を移送する場合の状態を示し、第5図は蓋を開く場合の状態を示す要部の拡大側面図とする。」(1ページ左欄9?14行)
イ 上記記載事項(ア)?(キ)及び図面の記載内容を総合すると、以下の事項が把握、認識できる。
(ク) そば等の油処理用容器2の適宜数を枠1に固着すること((ア)(イ)(ウ)参照。)。
(ケ) 枠1に固着された適宜数の容器2は、互いに隣接し、また、間に空間部分が存在すること(特に平面図である第1図の記載内容を参照)。
(コ) 各容器2に適合する蓋3を蝶番4で枠1に取り付け、当該蓋3の他方を連結杆5で互いに連結して、数個の蓋3を同時に開閉できるようにしたこと((イ)(ウ)参照。)。
(サ) 蓋3を枠1に取り付ける蝶番4はまた数個の蓋3に共通する部品(第1図で3つの蝶番4を左右に貫通して見えるもの)を備えているものであること(平面図である第1図、第3図の記載内容を参照)。
(シ) 枠1に固着された数個の蓋3は、互いに隣接し、また、間に空間部分が存在すること(特に平面図である第1図の記載内容を参照)。
(ス) 透孔14を設けること((イ)、平面図である第1図(「蓋3」に「透孔14」を設けることが看てとれる。)並びに第2図?第5図(「容器2」に「透孔14」を設けることが看てとれる。)の記載内容を参照。)。
(セ) 容器2と蓋3が組み合わされて、油処理されるそば等の生産に用いられる器具が構成されていること((ア)?(カ)、第1図?第5図の記載内容を参照。)。
ウ 以上を踏まえ、本願補正発明の表現にならって整理すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「連続して配置され、枠1に固着された複数の容器2と、
該容器のそれぞれの開口部に対応し、複数個が連続して配置されており、連結杆5と蝶番4で互いに連結された蓋3からなる、油処理されるそば等の生産に用いられる透孔14を備えた器具であって、
隣接する容器2間、及び隣接する蓋3間に空間部分が形成されている器具。」

(3) 発明の対比・判断
本願補正発明(以下、「前者」ということがある。)と引用発明(以下、「後者」ということがある。)を対比する。
ア 後者の「容器2」は、前者の「カップ状容器」に相当し、また、後者の「容器2」は、枠1に固着されて一体となっていると評価できるから、後者の「枠1に固着された複数の容器2」は、前者の「一体となったリテーナ本体」に相当する。
イ 後者の「蓋3」と前者の「蓋部」、「リテーナ蓋」との関係について
(ア) 後者の「蓋3」は、前者の「蓋部」に相当し、後者の「隣接する蓋3間」の「空間部分」は、前者の「隣接する蓋部間の隙間部分」に相当する。
(イ) 後者の「蓋3」は、容器2に対応する数のものが連続して配置され、連結杆5及び蝶番4によって連結されている。これらの蓋3は同時に開閉動作をするように構成されたものとなっている(2(2)ア(ウ)参照)から、後者の「複数個が連続して配置され連結杆5と蝶番4で互いに連結された蓋3」を一体的に構成された物として観念するのは自然なことである。
更に、後者の「蓋3」の間には「空間部分」が存在するが、これは「蓋3」の動作によっても変化せずに存在し続けるものであるから、複数の「蓋3」とそれに隣接する蓋3間の「空間部分」を合わせて一体のものととらえることができる。
(ウ) 前者における「蓋部のみを繋げたタイプ」という事項は、平成28年10月27日に提出された意見書によれば、本願の図10に示された態様を指すものとされており、後者がこれとは異なるものであることは明らかである。
付言すれば、後者は、蓋3に連結杆5,蝶番4等を組み合わせて一体としたものである。
(エ) 以上を踏まえれば、後者の「複数個が」「連結杆5と蝶番4で互いに連結された蓋3」は、前者でいう「当該リテーナ蓋の隣接する蓋部間の隙間部分を含めて一体となったリテーナ蓋(蓋部のみを繋げたタイプを除く)」に相当するものである。
(オ) 請求人は、審判請求書において、本願補正発明が蓋部同士の隙間部分に、蓋部を形成する材質と同質のステンレス等の材質が占める支持部を有することを前提としたものである等と主張する。
しかし、まずもって、本願補正発明の発明特定事項としてそのような支持部が含まれているものではない。
さらに、本願の明細書の記載全体を徴してそのように解釈すべきであるとする理由も見いだせない。
なお、本願で実施例として図7に示されたものがあるが、引用発明の蓋3は、複数個がそれぞれその両側から連結杆5及び蝶番4(棒状の部品)により一体に構成されていて、この実施例と比べて蓋を支持するための機械的構成として著しく異なるというものではない。また、本願の明細書ではリテーナ本体、リテーナ蓋ともに“枠体”と組み合わせることも想定されており、特にリテーナ本体についてではあるがカップ状容器部分と枠体を“溶接”することも記載されていて、このことからしても、後者の「連結杆5と蝶番4で互いに連結された蓋3」が前者の「リテーナ蓋」に相当しないということにはなり得ない(段落【0026】【0032】【0039】参照)。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
ウ 後者の「油処理されるそば等」は、前者の「フライ麺塊」に相当する。
エ 後者の「透孔14を備えた」は、前者の「多孔性の」に相当する。
オ 後者の「器具」は、前者の「フライリテーナ」に相当する。
カ 前者は「フライリテーナー」という物に係るものである以上、後者における隣接する容器2間、隣接する蓋3間の「空間部分」は、いずれも、前者における隣接するカップ状容器間、隣接する蓋部間の「隙間部分」及びそこに形成されたとされる「空隙」に相当する。
キ 以上のア?カを踏まえると、本願補正発明と引用発明は、発明特定事項において異なるところがないから、本願補正発明は、引用発明と同一である。
ク したがって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するので、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4) まとめ
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年10月27日に提出した手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数のカップ状容器が連続して配置され、一体となったリテーナ本体と、
該リテーナ本体のそれぞれのカップ状容器の開口部に対応し、複数の蓋部が連続して配置され一体となったリテーナ蓋(蓋部のみを繋げたタイプを除く)からなる、フライ麺塊の生産に用いられる多孔性のフライリテーナにおいて、
前記リテーナ本体の隣接するカップ状容器間の隙間部分、及び前記リテーナ蓋の隣接する蓋部間の隙間部分に空隙が形成されているフライリテーナ。」
(1) 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項等及び引用発明は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(2) 発明の対比・判断
本願発明の構成よりも更に限定した構成を備える本願補正発明が、前記「2(3)」に記載したとおり、引用発明によって新規性を欠くものであるから、本願発明も、引用発明によって新規性を欠いているといえるものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するから特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-01 
結審通知日 2018-02-06 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2012-261691(P2012-261691)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊達 利奈  
特許庁審判長 中村 則夫
特許庁審判官 莊司 英史
田村 嘉章
発明の名称 フライリテーナ  

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