• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1339057
審判番号 不服2017-5918  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-25 
確定日 2018-04-05 
事件の表示 特願2016- 20472号「ソケット及び照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開、特開2016-115683号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月8日に出願した特願2012-52129号の一部を平成28年2月5日に新たな特許出願としたものであって、平成28年9月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年2月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月25日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年4月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成29年4月25日付けの手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本願補正発明
平成29年4月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を補正するものであり、その前後の記載は次のとおりである。
なお、下線部は補正箇所を示す。

ア 本件補正前の請求項1の記載
「【請求項1】
ピンが突出する直管形ランプの口金を装着するためのソケットにおいて、
端部が開口された筒部と、前記筒部の開口された端部で前記筒部の内周面よりも内側に設置され、外周面が前記筒部の内周面に対向する受板とを有し、前記受板に、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記口金に対向する面である口金対向面が形成され、前記受板の外周面の一部が前記口金の装着方向に切り欠かれることで、前記受板に、前記ピンを挿入するための開口部であって前記口金対向面から前記口金対向面の反対側の面まで貫通し前記口金の装着方向における前記ピンの移動を案内する開口部が形成されたソケット本体と、
前記筒部に収納され、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記ピンの前記開口部を貫通する部分と接触するランプ給電用の導電金具と、
前記口金対向面に設けられ、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記口金を保持する凸部と
を備え、
前記開口部は、前記口金の装着方向において前記ピンが挿入される入口から途中までの部分が残りの部分よりも幅広になっているソケット。」

イ 本件補正後の請求項1の記載
「【請求項1】
ピンが突出する直管形ランプの口金を装着するためのソケットにおいて、
端部が開口された筒部と、前記筒部の開口された端部で前記筒部の内周面よりも内側に設置され、外周面が前記筒部の内周面に対向する受板とを有し、前記受板に、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記口金に対向する面である口金対向面が形成され、前記受板の外周面の一部が前記口金の装着方向に切り欠かれることで、前記受板に、前記ピンを挿入するための開口部であって前記口金対向面から前記口金対向面の反対側の面まで貫通し前記口金の装着方向における前記ピンの移動を案内する開口部が形成されたソケット本体と、
前記筒部に収納され、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記ピンの前記開口部を貫通する部分と接触するランプ給電用の導電金具と、
前記口金対向面に設けられ、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記口金を保持する凸部と
を備え、
前記開口部は、前記口金の装着方向において前記ピンが挿入される入口から途中までの部分が残りの部分よりも幅広になっており、前記残りの部分の幅が一定であるソケット。」

2.補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無について
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明を特定するために必要な事項である「開口部」について「残りの部分の幅が一定である」との限定を付すものであり、かつ、補正の前後において発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
また、本件補正により付加された事項は、【図5】に記載されているので、特許法第17条の2第3項の規定に適合するとともに、同条第4項に違反するところはない。

3.独立特許要件について
上記のとおり、本件補正の請求項1に関する補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正であるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定を満たすか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.イ 本件補正後の請求項1の記載」に記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2005-44717号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。
(ア)
「【0001】
この発明は、例えば直管形蛍光灯用照明器具灯などに適用されるランプソケットに関するものである。」
(イ)
「【0003】
従来例のランプソケットは、上記のように防水リングを有する防水ソケットとして用いられている。通常の使用状態では、ランプは防水リングによって支えられているが、ランプ交換作業中は防水リングが取り外され、点灯検査などのために、ランプが導電端子によってのみ保持された状態で放置されることが多い。このとき、振動、衝撃等によりランプ落下の恐れがあるため、防水リングが無い状態でも、ランプが落下しない性能が、安全面からも作業性からも必要となっている。
【0004】
したがって、この発明の目的は、ランプが導電端子によってのみ保持されるような状態でも、ランプの落下を防止することができるランプソケットを提供することである。」
(ウ)
「【0016】
図1?図4において、1はソケット本体、2はソケット本体のカバー、3は導電端子、4は防水リングパッキン、5は金属リング、6は樹脂リング(防水リング)、7はリード線用パッキンである。【0017】
図1および図2に示すように、ソケット本体1は、周囲にねじを設けたねじ筒部10を有し、その内部に導電端子3を覆うカバー2を装着している。また、ソケット本体1の周囲から中心に向かう2本のランプピン挿入開口部11を有する。各ランプピン挿入開口部11は導電端子3が臨むようにカバー2に形成されるとともに、その延長方向のねじ筒部10の位置を切欠くように形成された開口部分11aを有する。ランプピンは、ランプピン挿入開口部11に沿って矢印のように挿入され、ランプピン挿入開口部11のそれぞれの端部にて導電端子3に接触した状態で保持される。また、ソケット本体1、カバー2は熱可塑性樹脂等で形成される。ソケット本体1には取付溝14、水抜き穴(図示せず)が形成されている。カバー2は冷間かしめ13によりソケット本体1に固定される。
【0018】
上記ソケット本体1の構成において、ランプピン挿入開口部11の入口近傍にランプピンを保持可能なランプピン仮保持部16を設けている。このランプピン仮保持部16は、対向するランプピン20の内側に接触する部位がランプの中心軸側に弾性変形可能とした構成である。この場合、ランプピン仮保持部16は、ランプピン挿入開口部11の内側と外側に対向するように形成された一対の凸部16a,16bからなる。一対の凸部16a,16bの間隔Lはランプピン径より狭い。また、ランプピン仮保持部16が位置する2本のランプピン挿入開口部11の間にスリット17を設けることで、内側の凸部16aがランプの中心軸側に弾性変形する。」
(エ)
「【0022】
本実施形態によれば、ランプがソケット内部の導電端子3から外れたときでも、ランプピン仮保持部16によりランプピンが保持されることでランプ落下の恐れがなく安全性が向上する。特に、ランプ交換作業中は、樹脂リング6が取り外され、ランプは導電端子3のみによって保持されており、また、点灯検査などのため、この状態のまま放置されることが多い。このとき振動や衝撃により、ランプが導電端子3から外れても落下を防止することができる。」
(オ)
【図6】から、直管形のランプ21は、その端部にランプピン20が突出する口金を有していることを看取しうる。

上記記載事項(ア)?(オ)及び【図1】?【図4】、【図6】の記載からみて、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「ランプピン20が突出する口金を有した直管形のランプ21に適用されるランプソケットであって、
ソケット本体1は、ねじ筒部10を有し、ねじ筒部10の内部に導電端子3を覆うカバー2を装着してなり、
該カバー2には、ソケット本体1の周囲から中心に向かう2本のランプピン挿入開口部11が導電端子3が臨むように形成され、
ランプピン挿入開口部11に沿って挿入されたランプピン20は、ランプピン挿入開口部11の端部において導電端子3に接触した状態で保持され、
ランプピン挿入開口部11の入口近傍にランプピン20を保持可能なランプピン仮保持部16を設けている、ランプソケット。」

イ 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開平4-87173号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(カ)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、直管蛍光灯照明器具に関するものであり、特にランプの取外しが容易な直管蛍光灯照明器具にかかるものである。
〔従来の技術〕
従来、直管蛍光灯をランプとして使用した直管蛍光灯照明器具では、第9図及び第10図に示す従来例のように、直管蛍光灯を取り付けていた。
この従来例では、ランプソケット1は、プラスチック製箱体状のボディ2の上面及び前面に連通して前面略中央部まで平行に形成された一対のランプピン挿入溝3を有し、直管蛍光灯7の一方の口金8の一対のランプピン9にそれぞれ対応して形成されたばね性を有する銅合金製の一対の接触金具4を前記ボディ2の内にランプピン挿入溝3に臨んで納装して構成されている。接触金具4は、それぞれ側方へ円弧状に膨出して直管蛍光灯7のランプピン9を接触保持するランプビン保持部5を先端近傍に有していて、ボディ2のランプピン挿入溝3に挿入されたランプピン9はランプビン保持部5に位置して、接触金具4の弾性力により直管蛍光灯7が保持されるようになっている。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところが、前記従来例では、直管蛍光灯7は単にランプソケット1の接触金具4の弾性力のみで保持されていて、弾性力を強くしすぎると直管蛍光灯7のランプソケット1への装着が困難になるため、衝撃等の外力により直管蛍光灯7が脱落する恐れがある等の問題があった。
本発明は、前記の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、衝撃等により直管蛍光灯が脱落する恐れがなく直管蛍光灯の着脱操作性が良好な直管蛍光灯照明器具を提供することにある。」(1頁左欄15行?2頁左上欄8行)
(キ)
「第1図ないし第4図は本発明の第1の実施例を示すものであり、以下図面に基づき説明する。
この直管蛍光灯照明器具でも、ランプソケット1は、従来例同様に、プラスチック製箱体状のボディ2の上面及び前面に連通して前面略中央部まで平行に形成された一対のランプピン挿入溝3を有し、直管蛍光灯7の一方の口金8の一対のランプピン9にそれぞれ対応して形成されたばね性を有する銅合金層の一対の接触金具4を前記ボディ2の内にランプピン挿入溝3に臨んで納装して構成されている。接触金具4は、それぞれ側方へ円弧状に膨出して直管蛍光灯7のランプピン9を接触保持するランプピン保持部5を先端近傍に有していて、ボディ2のランプピン挿入溝3に挿入されたランプピン9はランプピン保持部5に位置して、接触金具4の弾性力により直管蛍光灯7が保持されるようになっている。このランプソケット1には、一対のランプピン挿入溝3の間に、第3図に示すように、ランプピン挿入溝3の上面開口側が傾斜面になって下面がボディ2前方に略直角に突出したランプ係止爪6が突設されている。一方、直管蛍光灯7のロ金8には、一対のランプピン9の間のこれらランプピン9の並び方向に直角な両側に口金8の端面に略直角に窪んだ角溝状の係合凹部10が設けられている。この係合凹部10の幅はランプソケット1のランプ係止爪6の幅よりやや狭く形成されている。ランプソケット1のランプ係止爪6と直管蛍光灯7の係合凹部10とは、直管蛍光灯7をランプソケット1に装着した状態で、係止爪6が係合凹部10に係合状態となるようになっている。」(2頁左上欄20行?左下欄10行)
(ク)
「直管蛍光灯7をランプソケット1に装着する際には、従来同様に、ランプピン9をランプピン挿入溝3の位置に合わせて直管蛍光灯7を押し込めば、ランプピン9が接触金具4のランプピン保持部5に嵌まると共に、口金8の係合凹部10にランプ係止爪6が係止し、直管蛍光灯7がランプソケット1に確実に装着され、衝撃等が加わっても直管蛍光灯7が脱落する恐れがない。」(2頁左下欄19行?右下欄6行)

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する

後者の「直管形のランプ21」は、前者の「直管形ランプ」に相当し、同様に、「ランプピン20」は「ピン」に、「口金」は「口金」に、「ランプソケット」は「ソケット」に、それぞれ相当する。

後者の「ねじ筒部10」は、本願補正発明の「端部が開口された筒部」に相当する。

後者の「カバー2」は、「ねじ筒部10の内部に、導電端子3を覆」って「装着」されるものであるので、カバーの外周面がねじ筒部の内周面に対向するものといえ(引用文献1の【図1】、【図2】からも明らかといえる。)、前者の「筒部の開口された端部で筒部の内周面よりも内側に設置され、外周面が筒部の内周面に対向する受板」に相当する。

後者の「カバー2」には、「2本のランプピン挿入開口部11」が形成されており、そのランプピン挿入開口部11にランプピン20が挿入された状態にあっては、カバー2はランプ21の口金に対向していることになるといえる。そうすると、後者の「カバー2」は、前者の「受板に、ソケットへの口金の装着時に口金に対向する面である口金対向面が形成され」との事項を備えているといえる。

後者の「ランプピン挿入開口部11」は、カバー2にソケット本体1の周囲から中心に向かうように形成されるものであり、ランプピン挿入開口部11に沿ってランプピン20が挿入されるものであるので、前者の「受板の外周面の一部が口金の装着方向に切り欠かれることで、受板に、」形成された「ピンを挿入するための開口部」であって「口金の装着方向における前記ピンの移動を案内する開口部」に相当する。
また、後者の「ランプピン挿入開口部11」は、ねじ筒部10の内部の導電端子3が臨むように形成されたものでもあるので、前者の「口金対向面から口金対向面の反対側の面まで貫通し」との事項を備えているといえる。

以上の「イ」?「オ」の相当関係を踏まえると、後者の「ソケット本体1」は、前者の「ソケット本体」に相当する。

後者の「導電端子3」は、ねじ筒部10の内部にあり、ランプピン挿入開口部11に沿って挿入されたランプピン20と接触した状態となるので、前者の「筒部に収納され、ソケットへの口金の装着時にピンの開口部を貫通する部分と接触するランプ給電用の導電金具」に相当する。

そうすると、両者は、
「ピンが突出する直管形ランプの口金を装着するためのソケットにおいて、
端部が開口された筒部と、前記筒部の開口された端部で前記筒部の内周面よりも内側に設置され、外周面が前記筒部の内周面に対向する受板とを有し、前記受板に、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記口金に対向する面である口金対向面が形成され、前記受板の外周面の一部が前記口金の装着方向に切り欠かれることで、前記受板に、前記ピンを挿入するための開口部であって前記口金対向面から前記口金対向面の反対側の面まで貫通し前記口金の装着方向における前記ピンの移動を案内する開口部が形成されたソケット本体と、
前記筒部に収納され、前記ソケットへの前記口金の装着時に前記ピンの前記開口部を貫通する部分と接触するランプ給電用の導電金具と、
を備えた、ソケット。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
本願補正発明は、「口金対向面に設けられ、ソケットへの口金の装着時に口金を保持する凸部」を備えているのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
〔相違点2〕
本願補正発明は、「開口部は、口金の装着方向においてピンが挿入される入口から途中までの部分が残りの部分よりも幅広になっており、残りの部分の幅が一定である」と特定されているのに対して、引用発明は、ランプピン挿入開口部11の形状がそのように特定されていない点。

各相違点について以下検討する。
〔相違点1について〕
引用文献1の記載を参照すると、引用発明は、ランプが導電端子によってのみ保持された状態で、振動、衝撃等によりランプ落下の恐れがあることを課題とし(上記「(2)ア(イ)」を参照。)、その課題を解決する手段として、ランプピン挿入開口部にランプピン仮保持部16を設け、直管形蛍光灯のランプピン20がソケット内部の導電端子3から外れたときでも、ランプピン仮保持部16がランプピン20を保持することにより、直管形蛍光灯の落下を防止するためのものといえる(上記「(2)ア(エ)」を参照。)。
他方、引用文献2には、従来、直管蛍光灯7の保持を、ランプソケット1のランプピン挿入溝3内に設けられた、ばね性を有する接触金具4のランプピン保持部5により、口金8に設けられたランプピン9を接触保持することにより行っていたところ、直管蛍光灯7をランプソケット1の接触金具4の弾性力のみで保持するだけでは、衝撃等の外力により直管蛍光灯7が脱落する恐れがあることを課題とし(上記「(2)イ(カ)」を参照。)、その課題解決のための手段として、ランプソケット1にランプ係止爪6を突設し、直管蛍光灯7のロ金に係合凹部10を設け、直管蛍光灯7をランプソケット1に装着した状態で、係止爪6が係合凹部10に係合する構成とし(上記「(2)イ(キ)」を参照。)、直管蛍光灯7をランプソケット1に確実に装着すること(上記「(2)イ(ク)」を参照。)が記載されている。
引用文献2に記載のものにおいて、「係止爪6」が突設されるランプソケットの面は、直管蛍光灯7の口金8に対向する面であるから、該「係止爪6」は、口金対向面に設けられており、且つ、口金の装着時に口金を保持するものである。そうすると、引用文献2に記載の「係止爪6」は、本願補正発明の「口金対向面に設けられ、ソケットへの口金の装着時に口金を保持する凸部」に相当するといえる。

上述のとおり、引用発明と引用文献2に記載のものとは、何れも、直管形蛍光灯のランプピンを弾性金具だけで保持するのでは落下の恐れがあることを課題としており、その課題を解決するための手段として、引用発明においては「仮保持部16」を設け、直管形蛍光灯のランプピン20がソケット内部の導電端子3から外れたときに対処するものといえ、引用文献2に記載のものにおいては「係止爪6」を設け、直管蛍光灯7をランプソケット1に確実に装着しランプピン9が接触金具4に接触した状態を保持し、ランプピン9が接触金具4から外れることを防止するものといえる。
そうしてみると、引用発明と引用文献2に記載のものとは、同じ課題を解決しようとするものであり、両者を組み合わせる動機付けは十分にあるといえ、引用発明の「仮保持部16」に代えて、引用文献2に記載の「係止爪6」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることといえる。
したがって、引用発明に、引用文献2に記載の事項を適用し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることといえる。

〔相違点2について〕
蛍光灯の端子ピンの装着を容易にするために、端子ピンを挿入する開口部の形状を、入口から途中までの部分を残りの部分より幅広にし、残りの部分の幅を一定とすることは、例えば、実公昭30-14761号公報(1頁左欄下から4行?右欄24行、第1図等の「逆漏斗形溝7,7」を参照。)、実願昭53-174249号(実開昭54-128090号)のマイクロフィルム(第1図の「案内4」から「孔5」に至る形状を参照。)、実公昭29-1584号公報(第1図の「端子挿込孔6」の形状を参照。)等に記載されるように周知の事項である。
そうしてみると、引用発明のランプ挿入開口部11の形状を、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。

そして、本願補正発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。

よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成28年11月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 1.ア 本件補正前の請求項1の記載」に記載されたとおりである。

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1に記載された事項及び引用発明は、上記「第2 3.(2)ア」に記載したとおりである。
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2に記載された事項は、上記「第2 3.(2)イ」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 3.」で検討した本願補正発明から「残りの部分の幅が一定である」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含む本願補正発明が、上記「第2 3.(3)」で検討したとおり、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明、引用文献2に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-01 
結審通知日 2018-02-06 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2016-20472(P2016-20472)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 平田 信勝
滝谷 亮一
発明の名称 ソケット及び照明器具  
代理人 溝井国際特許業務法人  
代理人 溝井国際特許業務法人  
代理人 溝井国際特許業務法人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ