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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J |
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管理番号 | 1339060 |
審判番号 | 不服2017-6877 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-12 |
確定日 | 2018-04-05 |
事件の表示 | 特願2016-534498「太陽電池バックシート用接着剤、太陽電池バックシート接着剤用ポリオール組成物、太陽電池バックシート、及び太陽電池モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月21日国際公開、WO2016/010132〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)7月17日(優先権主張 平成26年7月18日)を国際出願日とする出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年10月19日:手続補正書の提出 平成28年11月30日:拒絶理由の通知 平成29年 1月18日:意見書、手続補正書の提出 平成29年 3月27日:拒絶査定(同年3月30日送達) 平成29年 5月12日:審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成28年10月19日付け手続補正で補正された請求項1ないし14に記載された事項により特定された発明(なお、「水酸基含有水酸基含有フッ素樹脂(A4)」は「水酸基含有フッ素樹脂(A4)」の誤記の可能性もあるが、明細書においても「水酸基含有水酸基含有フッ素樹脂(A4)」と記載されているのでそのように特定した。)であり、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 ポリエステルポリウレタンポリオール(A1)、ポリエステルポリオール(A2)、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A3)及び水酸基含有水酸基含有フッ素樹脂(A4)から選ばれる1種以上の水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート(B)、及び環状アミド化合物(C)を必須成分とし、前記環状アミド化合物(C)の含有量が、水酸基含有樹脂(A)100質量部に対して0.05?8質量部となる割合であることを特徴とする太陽電池バックシート用接着剤。 【請求項2】 更にエポキシ樹脂(D)及び/又はポリカーボネートジオール(E)を含有する請求項1に記載の太陽電池バックシート用接着剤。」 第3 引用文献の記載及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献(国際公開第2013/157604号)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様である。)。 1 「[0055]前記水酸基含有ポリカーボネート樹脂(D)は、より硬化性に優れる樹脂組成物となる点で、水酸基価が20?300mgKOH/gの範囲であることが好ましく、40?250mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。また、湿熱条件下での基材接着性に優れる点で、ポリカーボネートジオールであることが好ましい。」 2 「[0063]本願発明の樹脂組成物は、前記ポリエステルポリウレタンポリオール(A)と、前記ポリエステルポリオール(B)と、前記水酸基含有エポキシ樹脂(C)と、前記水酸基含有ポリカーボネート樹脂(D)と、ポリイソシアネート(E)とを必須の成分として含有する。本発明では、前記ポリエステルポリウレタンポリオール(A)、前記ポリエステルポリオール(B)、前記水酸基含有エポキシ樹脂(C)及び前記水酸基含有ポリカーボネート樹脂(D)に含まれる水酸基の合計モル数[OH]と、前記ポリイソシアネート化合物(E)に含まれるイソシアネート基のモル数[NCO]との比[OH]/[NCO]を1/1?1/2の範囲、より好ましくは1/1.05?1/1.5の範囲とすることにより、硬化性に優れる樹脂組成物となる。」 3 「[0066]本願発明の樹脂組成物は、種々のプラスチックフィルムを接着する為の2液型ラミネート用接着剤として好適に用いることができる。」 4 「[0069]本願発明の2液型ラミネート用接着剤を用い、複数のフィルムを接着して得られる積層フィルムは、湿熱条件下でも高い接着性を有し、フィルム同士が剥がれ難い特徴がある。 従って、本願発明の2液型ラミネート用接着剤は、屋外等の厳しい環境下で用いる積層フィルム用途に好適に用いることができ、このような用途としては、例えば、太陽電池のバックシートを製造する際の接着剤などが挙げられる。」 5 上記1?4から、以下の発明が記載されている。 「ポリエステルポリウレタンポリオール(A)と、ポリエステルポリオール(B)と、水酸基含有エポキシ樹脂(C)と、ポリカーボネートジオールと、ポリイソシアネート(E)とを必須の成分として含有する太陽電池のバックシートを製造する際の2液型ラミネート用接着剤。」(以下「引用発明」という。) 第4 対比・判断 1 対比 (1)引用発明の「ポリエステルポリウレタンポリオール(A)」は、本願発明の「ポリエステルポリウレタンポリオール(A1)」に、引用発明の「ポリエステルポリオール(B)」は、本願発明の「ポリエステルポリオール(A2)」に、引用発明の「ポリイソシアネート(E)」は、本願発明の「ポリイソシアネート(B)」に、引用発明の「水酸基含有エポキシ樹脂(C)」は、本願発明の「エポキシ樹脂(D)」に、引用発明の「ポリカーボネートジオール」は、本願発明の「ポリカーボネートジオール(E)」に、引用発明の「太陽電池のバックシートを製造する際の2液型ラミネート用接着剤」は、本願発明の「太陽電池バックシート用接着剤」に、それぞれ相当する。 (2)引用発明の「ポリエステルポリウレタンポリオール(A)と、ポリエステルポリオール(B)」は、本願発明の選択的に特定される「ポリエステルポリウレタンポリオール(A1)、ポリエステルポリオール(A2)、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A3)及び水酸基含有水酸基含有フッ素樹脂(A4)から選ばれる1種以上の水酸基含有樹脂(A)」の「ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール」に相当する。 さらに、引用発明では「ポリエステルポリウレタンポリオール(A)と、ポリエステルポリオール(B)と、水酸基含有エポキシ樹脂(C)と、ポリカーボネートジオールと、ポリイソシアネート(E)とを必須の成分」としていることから、少なくとも「『ポリエステルポリウレタンポリオール(A)と、ポリエステルポリオール(B)と、』『ポリイソシアネート(E)とを必須の成分』」としている。 そうすると、引用発明の「『ポリエステルポリウレタンポリオール(A)と、ポリエステルポリオール(B)と、』『ポリイソシアネート(E)とを必須の成分』」とすることと、本願発明の選択的に特定される「ポリエステルポリウレタンポリオール(A1)、ポリエステルポリオール(A2)、水酸基含有(メタ)アクリル樹脂(A3)及び水酸基含有水酸基含有フッ素樹脂(A4)から選ばれる1種以上の水酸基含有樹脂(A)、ポリイソシアネート(B)、及び環状アミド化合物(C)を必須成分」とすることとは、「『ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール』『、ポリイソシアネート』『を必須成分』」とする点で一致する。 (3)本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソシアネートを必須成分とし、更にエポキシ樹脂及びポリカーボネートジオールを含有する太陽電池バックシート用接着剤。」 (相違点) 本願発明では、「環状アミド化合物(C)を必須成分とし、前記環状アミド化合物(C)の含有量が、水酸基含有樹脂(A)100質量部に対して0.05?8質量部となる割合である」であるのに対し、引用発明では、その特定がない点。 2 判断 ポリエステルポリオールとポリイソシアネートを含有する接着剤において、より速い硬化時間とする又は高いレベルの初期硬さとする目的で、環状アミド化合物のε-カプロラクタムを含有させることは、本願優先日前に周知技術(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先日前に頒布された引用文献2(特開平6-172551号公報)の請求項1、4、【0005】、【0009】、引用文献3(特開2005-350514号公報)の請求項1?3、【0007】、【0024】?【0026】、【0054】、【0055】、引用文献4(特表2005-511873号公報)の請求項1、6、10、【0027】、【0045】、【0071】を参照されたい。)にすぎず、また、上記周知技術として提示した引用文献3【0055】には「湿気硬化材料(A)100重量部に対して、双極性非プロトン溶剤(B)0.5?10重量部を添加してなる」、上記周知技術として提示した引用文献4【0071】には「触媒としてε-カプロラクタムが使用される。第1合成段階において使用される非対称ジイソシアネートとポリオールの全量に基づき、ε-カプロラクタムの使用量は0.05?6重量%(好ましくは0.1?3重量%、特に好ましくは0.2?0.8重量%)である。」と記載されている。 そして、接着剤において、より速い硬化時間又はより高いレベルの初期硬さという周知の課題を解決するために、引用発明に上記周知技術を適用して、ε-カプロラクタムを含有させるようになすことは、当業者が容易になし得る事項にすぎず、その場合に、上記周知技術の割合から考えて、ε-カプロラクタムの含有量を、水酸基含有樹脂(A)100質量部に対して0.05?8質量部となる割合の範囲内とすることは当業者が考慮する事項にすぎない。 3 効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する効果から予想される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 4 審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書において、「本願は、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂を必須とせずに、耐湿熱性試験という作用効果が得られる接着剤を提供するものであります」、「エポキシ樹脂を併用しなくとも十分な耐湿熱性が得られることを見いだしたもの」、「本願接着剤は、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂を使用せずにこれらを併用したときと全く同等の特性を提供できることを申し添えます。」と主張しているが、本願発明は、エポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂を含有しているので当該主張は採用されない。 また、審判請求書において、「さらにエポキシ樹脂やポリカーボネート樹脂を併用することで、耐湿熱性○(60%以上)を超え◎(80%以上)を達成する接着剤が得られることを見いだしたものであります。」と主張しているが、環状アミド化合物としてのε-カプロラクタムに、さらにエポキシ樹脂及びポリカーボネート樹脂を併用した本願の実施例7では、耐湿熱性○(60%以上80%未満)であることから、○(60%以上)を超え◎(80%以上)を達成する接着剤が得られることを見いだしたものとの主張も採用されない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-02-01 |
結審通知日 | 2018-02-06 |
審決日 | 2018-02-21 |
出願番号 | 特願2016-534498(P2016-534498) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C09J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 元彦 |
特許庁審判長 |
小松 徹三 |
特許庁審判官 |
野村 伸雄 森林 克郎 |
発明の名称 | 太陽電池バックシート用接着剤、太陽電池バックシート接着剤用ポリオール組成物、太陽電池バックシート、及び太陽電池モジュール |
代理人 | 河野 通洋 |