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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1339061
審判番号 不服2017-8689  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-14 
確定日 2018-04-05 
事件の表示 特願2013- 23534「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月25日出願公開、特開2014-151004〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月8日の出願であって、平成28年7月15日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年9月26日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年3月7日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成29年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正がなされたものである。

第2 平成29年6月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年6月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
主制御手段と、前記主制御手段が出力した制御情報に基づき、図柄変動ゲームに付随する遊技演出の実行を制御する演出制御手段と、前記遊技演出を実行可能な演出実行手段と、を備えた遊技機において、
始動口へ入球した遊技球を検知する始動検知手段を備え、
前記始動検知手段の検知信号は前記主制御手段に入力され、その検知信号の入力によって前記図柄変動ゲームの始動条件が成立し、
前記主制御手段は、
実行が保留される図柄変動ゲームに関する情報を記憶する保留記憶処理と、
前記図柄変動ゲームを開始させるときに当該図柄変動ゲームの変動内容を決定する変動内容決定処理と、
前記始動条件の成立に伴って実行が保留される図柄変動ゲームの変動内容を当該図柄変動ゲームが開始される以前に特定する変動内容特定処理と、を実行可能であって、
前記変動内容特定処理によって特定された変動内容を特定可能な変動内容情報が前記演出制御手段に入力され、
前記演出制御手段は、前記変動内容情報から特定される変動内容が特定変動内容である場合に特別演出の演出内容を決定可能であるとともに、その決定した演出内容の特別演出を前記演出実行手段で実行させる制御を行うことが可能であって、
前記特別演出には、演出時間及び演出内容が異なる複数種類の特別演出が設定されており、
前記演出制御手段が前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミングにおいて図柄変動ゲームが実行されているときに前記特別演出の演出内容を決定する場合には、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間との合算値内で終了する前記合算値と一致する演出時間の演出内容を決定し、
前記特別演出が実行される場合の前記演出実行手段では、実行中の図柄変動ゲームに付随する遊技演出の途中から前記特別演出が開始され、その特別演出は前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームが実行されているときであっても行われているように前記特別演出の開始のタイミングから継続して実行され、
前記演出制御手段は、
前記変動内容情報から前記特定変動内容として大当り変動が特定される場合、前記合算値が予め定めた規定時間よりも長いか否かに関係なく、前記特別演出を実行させることが可能であり、
前記変動内容情報から前記特定変動内容としてはずれリーチ変動が特定される場合、前記合算値が前記規定時間よりも長いときには、前記特別演出を実行させず、
前記特別演出が開始してからの各図柄変動ゲームに付随する遊技演出は、前記特別演出に変更されることを特徴とする遊技機。」
から、
「【請求項1】
A 主制御手段と、前記主制御手段が出力した制御情報に基づき、図柄変動ゲームに付随する遊技演出の実行を制御する演出制御手段と、前記遊技演出を実行可能な演出実行手段と、を備えた遊技機において、
B 始動口へ入球した遊技球を検知する始動検知手段を備え、
C 前記始動検知手段の検知信号は前記主制御手段に入力され、その検知信号の入力によって前記図柄変動ゲームの始動条件が成立し、
D 前記主制御手段は、
実行が保留される図柄変動ゲームに関する情報を記憶する保留記憶処理と、
E 前記図柄変動ゲームを開始させるときに当該図柄変動ゲームの変動内容を決定する変動内容決定処理と、
F 前記始動条件の成立に伴って実行が保留される図柄変動ゲームの変動内容を当該図柄変動ゲームが開始される以前に特定する変動内容特定処理と、を実行可能であって、
G 前記変動内容特定処理によって特定された変動内容を特定可能な変動内容情報が前記演出制御手段に入力され、
H 前記演出制御手段は、前記変動内容情報から特定される変動内容が特定変動内容である場合に特別演出の演出内容を決定可能であるとともに、その決定した演出内容の特別演出を前記演出実行手段で実行させる制御を行うことが可能であって、
I 前記特別演出には、演出時間及び演出内容が異なる複数種類の特別演出が設定されており、
J 前記演出制御手段が前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミングにおいて図柄変動ゲームが実行されているときに前記特別演出の演出内容を決定する場合には、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間との合算値内で終了する前記合算値と一致する演出時間の演出内容を決定し、
K 前記特別演出の演出内容は、前記特定変動内容の種類及び前記合算値に対応しており、前記合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の演出内容が決定されるとともに、同一の特定変動内容であっても前記合算値が異なる場合には異なる種類の演出内容が決定され、
L 前記特別演出が実行される場合の前記演出実行手段では、実行中の図柄変動ゲームに付随する遊技演出の途中から前記特別演出が開始され、その特別演出は前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームが実行されているときであっても行われているように前記特別演出の開始のタイミングから継続して実行され、
M 前記演出制御手段は、
前記変動内容情報から前記特定変動内容として大当り変動が特定される場合、前記合算値が予め定めた規定時間よりも長いか否かに関係なく、前記特別演出を実行させることが可能であり、
N 前記変動内容情報から前記特定変動内容としてはずれリーチ変動が特定される場合、前記合算値が前記規定時間よりも長いときには、前記特別演出を実行させず、
O 前記特別演出が開始してからの各図柄変動ゲームに付随する遊技演出は、前記特別演出に変更されることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。また、当審においてA?Oに分説した。)。

2 補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特別演出の演出内容」に関して、「前記特別演出の演出内容は、前記特定変動内容の種類及び前記合算値に対応しており、前記合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の演出内容が決定されるとともに、同一の特定変動内容であっても前記合算値が異なる場合には異なる種類の演出内容が決定され、」と限定するものであって、かつ、補正前の請求項に記載された発明と補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2012-196480号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1-a)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されているような従来の特別な演出(当り保留が発生したことを受けて行われる演出)は、図柄の変動表示が開始してから終了するまで(停止表示するまで)の間に所定の予告演出を発生させる動作(キャラクタ図柄の表示、装飾ランプの点滅など)を、連続する複数回の変動表示の各々で行うことによって実現されるもので、連続する複数回の変動表示に亘って一つの連続した演出(一連の演出)が行われているわけではない。このため、従来の特別な演出は、1回の図柄変動表示で完結する演出動作を複数回繰り返し行っているだけに止まるもので、大当りの発生を示唆する演出としてはインパクトに欠け、現在では効果的な演出とは言い難いという問題があった。これは次のような事情によるものである。図柄表示装置で図柄が変動表示される時間は、乱数を用いた抽選によって決定されているので、図柄の変動時間は変動毎にランダムに変化する。その結果、連続する複数回の変動表示を行うにあたり、個々の変動時間にはバラツキが生じる可能性があり、連続する複数回の変動表示全体としては大きな時間のバラツキが発生し得る。このように大きなバラツキが発生し得る時間内に、一つの連続した演出を行うことは容易なことではない。そこで、従来では、当り保留が発生したことを受けて、その当り保留が消化されるまでの複数回の変動表示に亘って特別な演出を行う場合でも、毎回の変動表示毎に完結する予告演出(キャラクタ図柄の表示、装飾ランプの点滅など)を発生させる動作を複数回の変動表示で行うことによって、変動時間のバラツキの発生に対応している。もっとも、これでは、連続する複数回の変動表示で一つの連続した演出が行われているのではなく、個々の変動表示で完結する演出が複数回の変動表示で行われているに過ぎないので、大当りの発生を遊技者に示唆する演出としては画一的でインパクトに欠け、効果的な演出とは言い難い。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、当り保留が発生したことを受けて、大当りの発生を従来とは異なる態様で遊技者に強く印象付ける演出を、適切に行うことが可能な弾球遊技機を提供することを目的とする。」

(1-b)「【0030】
図5は、本実施例のパチンコ機1に搭載された始動口ユニット17の構成を示す説明図である。前述したように始動口ユニット17には、第1始動口17aと、第2始動口17bとが設けられており、上側に設けられた第1始動口17aは固定式(ポケット式)の入球口であり、下側に設けられた第2始動口17bは、一対の翼片17wを備えた開閉式(チューリップ式)の入球口となっている。この一対の翼片17wは、ほぼ直立した通常状態(図5(a)参照)と、外側に向かって回転した開放状態(図5(b)参照)との2つの状態を取ることが可能である。図5(a)に示したように、翼片17wがほぼ直立した通常状態では、遊技球は第2始動口17bに入球することができず、専ら第1始動口17aに入球するだけであるが、一対の翼片17wが外側に開いた開放状態となると、第2始動口17bにも遊技球が入球し得る状態となる。そして、図5(b)に示されるように、開放状態では、第1始動口17aよりも第2始動口17bの方が、遊技球が入球し易くなっている。また、第1始動口17aあるいは第2始動口17bに入球した遊技球は、それぞれの内部に設けられた通路を通って遊技盤10の裏面側に導かれる。第1始動口17aの内部の通路の途中には第1始動口スイッチ17sが設けられ、第2始動口17bの内部の通路の途中には第2始動口スイッチ17tが設けられており、第1始動口17aに入球した遊技球は第1始動口スイッチ17sによって検出され、第2始動口17bに入球した遊技球は第2始動口スイッチ17tによって検出されるようになっている。
【0031】
A-3.制御回路の構成 :
次に、本実施例のパチンコ機1における制御回路の構成について説明する。図6は、本実施例のパチンコ機1における制御回路の構成を示したブロック図である。図示されているようにパチンコ機1の制御回路は、多くの制御基板や、各種基板、中継端子板などから構成されているが、その機能に着目すると、遊技の基本的な進行や賞球に関わる当否についての制御を司る主制御基板200と、演出用図柄やランプや効果音を用いた遊技の演出の制御を司るサブ制御基板220と、サブ制御基板220の制御の下で演出表示装置27の具体的な制御を行う演出制御基板230と、貸球や賞球を払い出す動作の制御を司る払出制御基板240と、遊技球の発射に関する制御を司る発射制御基板260などから構成されている。これら制御基板は、各種論理演算および算出演算を実行するCPUや、CPUで実行される各種プログラムやデータが記憶されているROM、プログラムの実行に際してCPUが一時的なデータを記憶するRAMなど、種々の周辺LSIがバスで相互に接続されて構成されている。また、図6中に示した矢印の向きは、データあるいは信号を入出力する方向を表している。尚、図6では、主制御基板200に搭載されたCPU201やROM202、RAM203、およびサブ制御基板220に搭載されたCPU221、RAM223のみが図示されている。
・・・
【0033】
サブ制御基板220は、主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を行う。すなわち、前述した演出表示装置27の表示制御を行う演出制御基板230に対して表示内容を指定するコマンドを出力したり、各種のスピーカ5y、6cを駆動するアンプ基板224、装飾用の各種LEDやランプを駆動する装飾駆動基板226に駆動信号を出力したりすることにより、遊技の演出を制御する。
・・・
【0047】
図9(a)には、3つの識別図柄27a,27b,27cが一斉に変動表示している様子が概念的に示されている。変動表示が開始された後、所定時間が経過すると、初めに左識別図柄27aが「1」?「9」のいずれかの図柄で停止表示され、次いで、右識別図柄27cが停止表示され、最後に中識別図柄27bが停止表示される。これら演出表示装置27で停止表示される3つの識別図柄27a,27b,27cの組合せは、前述した第1特別図柄LED30aあるいは第2特別図柄LED33aで停止表示される特別図柄(第1特図あるいは第2特図)の停止表示態様と連動するように構成されている。たとえば、第1特図あるいは第2特図が大当り図柄で停止する場合は、演出表示装置27の3つの識別図柄27a,27b,27cが同じ図柄で停止表示される。特に、第1特図あるいは第2特図が、前述した確変大当り図柄で停止する場合は、演出表示装置27の3つの識別図柄27a,27b,27cが、奇数を表す同じ図柄で停止表示される。また、第1特図あるいは第2特図が2R確変大当り図柄で停止する場合は、3つの識別図柄27a,27b,27cは同じ図柄で揃わない所定の組合せで停止表示される。更に、第1特図あるいは第2特図が外れ図柄で停止する場合は、3つの識別図柄27a,27b,27cは同じ図柄で揃わない組合せの中から、2R確変大当り図柄の組合せを除いた任意の組合せで停止表示される。」

(1-c)「【0050】
C-1.遊技制御処理 :
図10は、主制御基板200に搭載されたCPU201が、遊技の進行を制御するために行う遊技制御処理の大まかな流れを示したフローチャートである。図示されているように、遊技制御処理では、賞球関連処理、普通図柄遊技処理、第2始動口復帰処理、特別図柄遊技処理、特別電動役物遊技処理などの各処理が繰り返し実行されている。一周の処理に要する時間は、ほぼ4msecとなっており、従ってこれら各種の処理は約4msec毎に繰り返し実行されることになる。そして、これら各処理中で、サブ制御基板220を初めとする各種制御基板に向けて、主制御基板200から各種コマンドを送信する。こうすることにより、パチンコ機1全体の遊技が進行するとともに、サブ制御基板220では、遊技の進行に合わせた演出の制御が行われることになる。以下、フローチャートに従って、主制御基板200に搭載されたCPU201が行う遊技制御処理について説明する。
【0051】
主制御基板200に搭載されたCPU201は、遊技制御処理を開始すると、遊技球を賞球として払い出すための処理(賞球関連処理)を行う(S50)。この処理では、主制御基板200に接続された各種スイッチの中で、遊技球の入賞に関わるスイッチ(第1始動口スイッチ17sや、第2始動口スイッチ17t、大入賞口スイッチ31sなど)について遊技球が入球したか否かを検出する。そして、遊技球の入球が検出された場合には、払い出すべき賞球数を算出した後、払出制御基板240に向かって賞球数指定コマンドを出力する処理を行う。払出制御基板240は、主制御基板200から出力された賞球数指定コマンドを受け取るとコマンドの内容を解釈し、その結果に従って、払出装置(図示せず)に搭載された払出モータ109mに駆動信号を出力することにより、実際に賞球を払い出す処理を行う。
・・・
【0056】
遊技制御処理では、第2始動口復帰処理から復帰すると、特別図柄に関連する処理を開始する。この処理では、後述する特別図柄遊技処理を行うための所定の条件を満足しているか否かを判断した後、所定の条件を満足していた場合には、特別図柄遊技処理を開始する。
【0057】
図11は、特別図柄遊技処理を開始するか否かを判断するために行う処理(特別図柄遊技開始判断処理)の前半部分を示すフローチャートである。また、図12は、特別図柄遊技開始判断処理の後半部分を示すフローチャートである。特別図柄遊技処理(S250)を開始するか否かの判断に当たっては、先ず初めに、第1始動口17aに遊技球が入球したか否かを判断する(S252)。前述したように、第1始動口17aの内部には、遊技球の入球を検出する第1始動口スイッチ17sが設けられており、遊技球が入球したことを検出することができる。
【0058】
遊技球が第1始動口17aに入球していた場合は(S252:yes)、第1特別図柄(第1特図)の保留数が上限値(本実施例では「4」)に達しているか否かを判断する(S254)。図3(a)を用いて前述したように第1保留数は、第1特別図柄表示部30で第1特図保留表示LED30bが点灯することによって表示されている。そして、第1特別図柄の保留数が上限値「4」に達していなければ(S254:no)、第1特別図柄用の大当り抽選乱数(第1大当り抽選乱数)、第1特別図柄用の図柄決定乱数(第1図柄決定乱数)を取得して、主制御基板200のRAM203に記憶する。ここで、第1大当り抽選乱数は、図3(a)に示した第1特別図柄LED30aに表示された第1特図による大当り抽選を行うために用いられる乱数である。また、第1図柄決定乱数は、第1特図の大当り抽選結果に応じて、第1特別図柄LED30aに停止表示させる第1特図を決定するための乱数である。こうして第1特図用の各種乱数を取得したら(S256)、取得した各種乱数を第1特図の保留(第1保留)としてRAM203に記憶した後(S258)、第1特図の保留数に「1」を加算する(S260)。」

(1-d)「【0061】
そして、開放延長フラグがONに設定されていないと判断された場合は(S264:no)、第1保留が当り保留に該当するか否かを判断する(S266)。この判断は、第1保留として記憶された第1大当り抽選乱数が、後述する大当り抽選において大当りと判定される当り値に該当するか否かを判断することによって行う。従って、本実施例のパチンコ機1では、第1保留が記憶されると、その第1保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否かが、大当り抽選に先立って事前に判定されることになる。以上のようにして、第1保留についての事前判定を行ったら、始動入賞コマンドAを、サブ制御基板220に向かって送信する(S268)。ここで、始動入賞コマンドAとは、第1始動口17aに遊技球が入球して第1保留が発生し、尚且つ、その第1保留について事前判定が行われたことを示すコマンドである。また始動入賞コマンドAには、得られた事前判定結果も組み込まれている。従って、サブ制御基板220のCPU221は、始動入賞コマンドAを受信することによって、第1保留が発生して事前判定が行われたことに加えて、その時に得られた事前判定結果についての情報も取得することが可能となっている。
・・・
【0065】
第2保留に関する処理も、上述した第1保留に関する処理とほぼ同様にして行われる。以下、簡単に説明すると、先ず初めに、第2始動口17bに遊技球が入球したか否かを判断する(図12のS274)。そして、第2始動口17bに遊技球が入球していた場合は(S274:yes)、第2特別図柄の保留数(第2保留数)が上限値「4」に達しているか否かを判断し(S276)、上限値「4」に達していなければ(S276:no)、第2特図用の大当り抽選乱数(第2大当り抽選乱数)、第2特図用の図柄決定乱数(第2図柄決定乱数)を取得する(S278)。ここで、第2大当り抽選乱数は、図3(b)に示した第2特別図柄LED33aに表示された第2特図の大当り抽選を行うために用いられる乱数である。また、第2図柄決定乱数は、第2特図の大当り抽選結果に応じて、第2特別図柄LED33aに停止表示させる第2特図を決定するための乱数である。そして、取得した各種乱数を第2特図用の保留(第2保留)として主制御基板200のRAM203に記憶した後(S280)、第2保留数に「1」を加算する(S282)。
【0066】
続いて、第2保留が当り保留に該当するか否かを判断する(S284)。そして、第2保留についての事前判定の結果が得られたら、始動入賞コマンドDを、サブ制御基板220に向かって送信する(S286)。ここで、始動入賞コマンドDとは、第2保留が発生して事前判定が行われたこと、および得られた事前判定の結果を示すコマンドである。」

(1-e)「【0070】
C-2.特別図柄遊技処理 :
図13および図14は、本実施例の特別図柄遊技処理の流れを示したフローチャートである。本実施例の特別図柄遊技処理を開始すると、先ず初めに、第1特図または第2特図の何れかが変動中か否かを判断する(S302)。図3を用いて前述したように、本実施例のパチンコ機1には第1図柄表示装置28および第2図柄表示装置32が設けられており、第1図柄表示装置28に搭載された第1特別図柄LED30aでは第1特図の変動表示が可能であり、第2図柄表示装置32に搭載された第2特別図柄LED33aでは第2特図の変動表示が可能となっている。
・・・
【0076】
図16に示した第2大当り抽選処理では、現在の遊技状態が確変中か否かに応じて対応する大当り抽選テーブルを選択すると、先に、特別図柄遊技処理中で読み出しておいた第2大当り抽選乱数(図13のS308参照)に基づいて、選択した確変用あるいは非確変用の大当り抽選テーブルを参照することにより、第2特図の大当り抽選結果が「大当り」であるか否かを判断する(S3128)。上述したように、確変状態の時に参照する確変用の大当り抽選テーブルは、確変状態ではない時に参照する非確変用の大当り抽選テーブルに比べて、多くの大当り抽選乱数に「大当り」の大当り抽選結果が設定されていることから、確変中は非確変中よりも高い確率で「大当り」の大当り抽選結果が発生する(大当り抽選に当選する)ことになる。そして、第2特別図柄の大当り抽選結果が当りと判断された場合(大当り抽選に当選した場合)には(S3128:yes)、第2特別図柄の大当り図柄を決定するためのテーブル(第2特図用大当り図柄テーブル)を参照して、大当り図柄を決定する(S3130)。」

(1-f)「【0093】
C-2-2.第1特別図柄関連処理 :
図22は、第1特別図柄関連処理の流れを示したフローチャートである。第1特別図柄関連処理は、図15を用いて前述した第2特別図柄関連処理とほぼ同様であるため、第2特別図柄関連処理についての説明を踏まえて簡単に説明する。第1特別図柄関連処理においても、前述した第2特別図柄関連処理と同様に、処理を開始すると、先ず初めに第1特図についての大当り抽選を行う(S3320)。第1特図の大当り抽選は、図16を用いて前述した第2特図の大当り抽選と同様にして行う。以下、図16を参照しながら簡単に説明すると、先ず初めに、確変フラグがONに設定されているか否かを判断し、確変フラグがONに設定されていれば、確変用の大当り抽選テーブル(高確率テーブル)を選択し、確変フラグがONでなければ非確変用の大当り抽選テーブル(通常確率テーブル)を選択する(S3122?S3126相当)。このとき参照する大当り抽選テーブルは、前述したように、図17に示す特別図柄の大当り抽選テーブルを用いることができる。」

(1-g)「【0128】
C-4.告知演出処理 :
図27は、本実施例のパチンコ機1で行われる告知演出の概要を示した説明図である。この告知演出は、大当り遊技が終了して特殊変動フラグがONに設定されている間に、演出表示装置27の画面上で行われる演出である。
【0129】
大当り遊技が終了すると、演出表示装置27の画面は、3つのピラミッドを表す背景図柄27dが表示された状態となる。また、図11および図12を用いて前述したように、本実施例のパチンコ機1では、第1始動口17aまたは第2始動口17bに遊技球が入球して第1保留または第2保留が発生すると事前判定が行われる。告知演出では、事前判定の結果、発生した保留が当り保留ではないと判断される度に、ピラミッドの上に落雷が発生する画像が表示される。また、第1始動口17aあるいは第2始動口17bに遊技球が入球したからといって、必ず保留が発生するわけではないが、このような保留が発生しない場合にも落雷の画像が表示される。結局、大当り遊技の終了後は、当り保留が発生しない限り、第1始動口17aまたは第2始動口17bに遊技球が入球する度に、ピラミッドの上に落雷が発生する演出が行われることになる。
【0130】
図27(a)?図27(c)には、ピラミッドの上に落雷が発生する演出が行われる様子が例示されている。本実施例のパチンコ機1では、大当り遊技の終了後は、第1始動口17aまたは第2始動口17bに遊技球が入球すると、その入球によって当り保留が発生しない限り、図27(a)?図27(c)に例示した何れかの演出が行われる。
【0131】
また、前述したように、大当り遊技の終了後は開放延長フラグがONに設定されて、第2始動口17bの開放時間が延長されるので、遊技球が頻繁に第2始動口17bに入球する。加えて、図27(a)?図27(c)に例示した演出は、保留が上限値に達した後も、遊技球が第1始動口17aまたは第2始動口17bに入球する度に行われる。その結果、本実施例のパチンコ機1では、大当り遊技が終了すると、図27(a)?図27(c)に例示した演出が頻繁に行われることになる。そして、このような演出が行われている間は、当り保留は発生していないことになる。従って、図27(a)?図27(c)に例示する演出は、言わば「外れ」を告知する演出ということができる。
【0132】
このような演出が行われている状態で、第2保留の当り保留が発生すると、図27(d)に例示したように、3つのピラミッドに同時に落雷が発生する画像が表示され、続いて、図27(e)?図27(g)に例示したように、ピラミッドの向こう側から巨大な魔神が登場する動画の再生が開始される。このような動画の再生が開始されると、遊技者は当り保留の発生を認識することになる。そして、この動画の再生は、当り保留に対応して3つの識別図柄27a,27b,27cが少なくとも変動表示を開始するまでは継続され、識別図柄27a,27b,27cが大当り態様で停止表示される時には、動画の再生が終了して魔神が完全に姿を現した画像が表示されている(図27(g)参照)。
【0133】
また、当り保留が発生する前に既に幾つかの外れ保留が記憶されていた場合には、当り保留が発生してからその保留が消化されるまでの間に、それら既に記憶されていた外れ保留が消化される。このことと対応して、当り保留が発生して動画の再生が開始された後は、図27(e)または図27(f)に例示したように、外れ保留が消化される度に、演出表示装置27の画面の隅の部分で、3つの識別図柄27a,27b,27cの変動表示および停止表示が行われる。すなわち、当り保留の発生を告知する演出は、当り保留が発生してから消化されるまでの間に、外れ保留に対応して演出表示装置27の画面上で識別図柄27a,27b,27cの変動表示が行われる場合でも、それら複数回の変動表示に亘って、一つの連続した動画を再生することによって行われている。このため、演出表示装置27の画面上で識別図柄27a,27b,27cが変動表示される度毎に、細切れに短い演出を行う場合とは異なって、十分な時間をかけて演出を行うことができるので、効果的な告知演出を行うことが可能となる。
【0134】
また、このような告知演出を実現するためには、当り保留が発生した時点で、その当り保留に対応して、演出表示装置27の画面上で識別図柄27a,27b,27cが停止表示されるまでに要する時間を推定して、適切な再生時間の動画を選択して再生することが重要となる。本実施例のパチンコ機1では、前述したように大当り遊技が終了すると特殊変動フラグをONに設定し、特殊変動フラグがONに設定されている間は、特殊な変動パターンを設定することによって、適切な再生時間の動画を容易に選択することが可能となっている。以下では、上述した告知演出を行うために、サブ制御基板220のCPU221が行う処理について説明する。」

(1-h)「【0140】
C-4-2.告知演出実行処理 :
サブ制御基板220のCPU221は、図28に示したように告知演出モードを開始すると、告知演出実行処理を行う。図29は、告知演出モード中にサブ制御基板220のCPU221が告知演出を実行するために行う告知演出実行処理の前半部分を示したフローチャートである。また、図30は、告知演出実行処理の後半部分を示したフローチャートである。
・・・
【0143】
このような処理を繰り返しているうちに、第1始動口17aまたは第2始動口17bの何れかに遊技球が入球すると主制御基板200から始動入賞コマンドが送信されるので、S1104で「yes」と判断される。続いて、受信した始動入賞コマンドが、コマンドDか否かを判断する(S1106)。図12を用いて前述したように、始動入賞コマンドDは、第2保留が発生して尚且つその保留について事前判定が行われた場合に送信されるコマンドである。その結果、受信した始動入賞コマンドがコマンドDではなかった場合は(S1106:no)、外れ告知演出を実行する(図30のS1122)。外れ告知演出とは、図27(a)?図27(c)に例示したように、何れか1つのピラミッドの上に落雷が発生する画像を表示する演出である。すなわち、始動入賞コマンドA?Cの何れかを受信した場合(第1始動口17aに遊技球が入球した場合に該当)や、始動入賞コマンドEを受信した場合(第2保留が4個記憶されている状態で第2始動口17bに遊技球が入球した場合に該当)には、その度に、図27(a)?図27(c)に例示したような外れ告知演出が実行されることになる。
【0144】
これに対して受信した始動入賞コマンドがコマンドDであった場合は(図29のS1106:yes)、告知演出カウンタが「0」に達しているか否かを判断する(S1108)。前述したように告知演出カウンタとは、告知演出の実行回数を計数するためのカウンタである。告知演出カウンタが「0」に達している場合は(S1108:yes)、外れ告知演出を実行する(図30のS1122)。本来であれば、告知演出カウンタが「0」に達すると、ほとんど同じタイミングで特殊変動フラグがOFFに設定されて、告知演出モード終了コマンドが送信されるのであるが、図14を用いて前述したように、告知演出モード終了コマンドは特別図柄(第1特図または第2特図)が停止表示された後に送信される(図14のS375参照)。このため、最後の図柄変動中に第2始動口17bに遊技球が入球した場合には、告知演出カウンタが「0」に達しているにも拘わらず、始動入賞コマンドDが送信される場合も起こり得る。そこで、図29の告知演出実行処理では、始動入賞コマンドDを受信すると(S1106:yes)、告知演出カウンタが「0」に達しているか否かを判断して(S1108)、告知演出カウンタが「0」に達していた場合には(S1108:yes)、外れ告知演出を実行する(図30のS1122)。この結果、主制御基板200から受信した始動入賞コマンドDが、たとえ第2保留で当り保留が発生したことによるものであっても、告知演出カウンタが「0」に達している場合は外れ告知演出が実行されることになる。
【0145】
これに対して告知演出カウンタが「0」に達していなかった場合は(S1108:no)、告知演出カウンタから「1」を減算した後(S1110)、事前判定結果が大当りか否かを判断する(S1112)。前述したように始動入賞コマンドDは、第2保留が発生して事前判定が行われた時に主制御基板200から送信されるコマンドであり、始動入賞コマンドDには、事前判定の結果も組み込まれている。従って、サブ制御基板220のCPU221は、受信した始動入賞コマンドDを解析することによって、事前判定結果が大当りか否かを判断することができる。その結果、事前判定結果が大当りではないと判断された場合は(S1112:no)、第2保留で外れ保留が発生したことになるので、外れ告知演出を実行する(図30のS1122)。
【0146】
一方、事前判定結果が大当りであった場合は(S1112:yes)、今度は、既存当り保留フラグがONに設定されているか否かを判断する(S1114)。ここで、既存当り保留フラグとは、図28を用いて前述したように、大当り遊技の終了時点で既に記憶されていた保留の中に、第2保留の当り保留が存在していた場合にONに設定されるフラグである(図28のS1008)。その結果、既存当り保留フラグがONに設定されていた場合は(S1114:yes)、たとえ大当り遊技の終了後に、新たに第2保留の当り保留が発生した場合でも、外れ告知演出を実行する(図30のS1122)。尚、大当り遊技の終了時点で既に記憶されていた保留の中に、第2保留の当り保留が存在していた場合に既存当り保留フラグをONに設定する処理は、図28を用いて前述した告知演出モード開始処理の中で行われている。従って、告知演出モード開始処理を実行する本発明のサブ制御基板220に搭載されたCPU221は、本発明における「当り保留有無検出手段」に対応する。また、既存当り保留フラグがONに設定されている場合には、たとえ第2保留で当り保留が発生した場合でも、外れ告知演出を行う処理は、図29および図30に示した告知演出実行処理の中で実行されている。従って、告知演出実行処理を行うCPU221は、本発明における「当り告知演出禁止手段」にも対応している。
【0147】
一方、既存当り保留フラグがONに設定されていない場合は(図29のS1114:no)、当り保留の発生を告知する演出(当り告知演出)を実施するために、以下のような処理を開始する。
【0148】
当り告知演出を行うに際しては、先ず初めに、当り告知演出を実行する時間(当り告知演出実行時間)を算出する(図30のS1116)。図27を用いて前述したように、当り告知演出では、第2保留の当り保留が発生すると、3つのピラミッドの上に一斉に落雷が発生する画像が表示されて、巨大な魔神が登場する動画の再生が開始される。そして、当り保留が発生した時に既に外れ保留が記憶されていて、当り保留が発生してから、その当り保留が消化されるまでの間に、特別図柄の変動表示が複数回行われる場合でも、それら複数回の変動表示に亘って、魔神が登場する動画の再生が継続される。このことに対応して、図30のS1116では、当り告知演出を開始するに先立って、当り告知演出実行時間(換言すれば、動画の再生時間)を算出する処理を行う。尚、本実施例のパチンコ機1では、大当り遊技の終了後は特殊変動フラグがONに設定されて、特殊な変動パターンテーブルを参照して変動パターンを決定している。このため、第2保留の当り保留が発生する状況については様々なケースが考えられるものの、第2保留の当り保留が発生してから、その当り保留が消化されるまでの時間を容易に算出することが可能であり、従って、適切な当り告知演出実行時間を設定することができる。」

(1-i)「【0150】
図31は、大当り遊技終了後(告知演出モード開始後)、最初に発生した第2保留が当り保留であった場合に、その当り保留の発生から消化までに要する時間を示した説明図である。最も単純な場合として、大当り遊技の終了時点(告知演出モードの開始時点)では第2保留が残っておらず、大当り遊技の終了後(告知演出モードの開始後)に初めて発生した第2保留が当り保留であった場合を考える(図31(a)を参照のこと)。この場合、主制御基板200側では、第2保留の当り保留が発生すると、その保留に基づいて、直ちに第2特図の変動表示が開始される(図13参照)。この第2特図の変動表示開始時には、図20に示した特殊変動時大当り変動パターンテーブルに基づき変動パターンが決定されるので、このときの第2特図の変動時間は「5秒」に設定される(図19および図20参照)。一方、サブ制御基板220側では、第2保留の当り保留が発生すると直ちに当り告知演出が開始される。ここでは、この当り告知演出は変動表示中の第2特図が停止表示されるまで継続されるものとしているから、当り告知演出実行時間は、図31(a)に示したように、第2特図の変動時間と同じ「5秒」となる。
【0151】
もちろん実際には、大当り遊技の終了時点で第2保留が蓄えられており、その状態で告知演出モーに移行して最初に発生した第2保留が当り保留となることも十分に起こり得る。このような場合、たとえ大当り遊技の終了後に最初に発生した保留が第2保留の当り保留であっても、その当り保留が消化されるのは、先に蓄えられていた第2保留(ここでは、全て外れ保留であるとする)を消化した後になる。このことを考慮して、図31(b)には、大当り遊技の終了時点で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられている状態から告知演出モードに移行して第2特図の変動表示が開始され、その変動表示中(残りの第2保留が3個となったとき)に新たに発生した第2保留が当り保留であった場合が示されている。
【0152】
尚、図31(b)に示したケースは、保留が満杯の状態で大当り遊技が終了し、最初に発生した保留が第2保留の当り保留であったケースである。しかし、保留個数「0」の状態で大当り遊技が終了して告知演出モードに移行した後、続けて4個の第2保留(外れ保留)が発生し、第2特図の変動表示が開始されて残りの第2保留が3個となった状態で、第2保留の当り保留が発生した場合も、第2保留の当り保留が発生した時点に着目すれば全く同じ状況となる。従って、大当り遊技の終了後(告知演出モード開始後)に連続して外れ保留が発生した後に、4個目の保留として第2保留の当り保留が発生するケースは全て、図31(b)に示したケースに含めて考えて良い。
【0153】
大当り遊技終了後の告知演出モード中における外れ保留の消化に際しては、図21に示した特殊変動時外れ変動パターンテーブルを参照して変動パターンが決定されるので、第2特図の変動時間は「2.5秒」に設定される。従って、大当り遊技の終了時点(告知演出モードの開始時点)で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられており、その状態から第2特図の変動表示が開始された直後(換言すれば、第2保留が4個から3個に減った直後)に発生した第2保留が当り保留であったとすると、当り告知演出実行時間の最長時間は、図31(b)に示したように「15秒(=2.5秒×4+5秒)」となる。なお、図31(b)では、大当り遊技の終了時点で蓄えられていた第2保留(第2保留の当り保留発生前に蓄えられていた第2保留)に対応して第2特図が変動表示する期間を破線の矩形で表している。一方、大当り遊技の終了時点(告知演出モードの開始時点)で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられている状態から第2特図の変動表示が1回行われ、これに続いて2回目の第2特図の変動表示が開始される直前(換言すれば、第2保留が3個から2個に減る直前)に発生した第2保留が当り保留であったとすると、当り告知演出実行時間は「12.5秒(=2.5秒×3+5秒)」となる。結局、図31(b)に示したケースでは、第2保留数が3個の状態で変動表示している第2特図の残り変動時間によって、当り告知演出実行時間は「12.5秒?15秒」の範囲の値を取り得ることになる。」

(1-j)「【0171】
そこで、図30に示した告知演出実行処理のS1116では、当り告知演出を開始するに先立って、以下のようにして当り告知演出実行時間を算出する。先ず、その当り保留が発生する前に既に記憶されていた第2保留の外れ保留の個数を取得する。図11および図12を用いて前述したように、第1保留あるいは第2保留が発生する度に、主制御基板200からサブ制御基板220に向かって始動入賞コマンドが送信され、また、それら保留に対応して第1特図あるいは第2特図の変動表示が開始される度に、主制御基板200からは変動パターン指定コマンドや、停止図柄指定コマンドが送信される(図15または図22参照)。従ってサブ制御基板220のCPU221は、これらコマンドの情報に基づいて現在の保留の状況を容易に把握することができる。加えて、特殊変動フラグがONに設定されている場合は、外れ保留であれば「2.5秒」または「13秒」の何れかの変動時間しか取り得ず(図21および図24参照)、当り保留であれば「5秒」の変動時間しか取り得ない(図20参照)。従って、第2保留の当り保留が発生した時に既に記憶されていた第2保留の外れ保留の個数がN個であったとすると、その当り保留が消化されて大当りの発生が確定表示されるまでに、少なくとも「N×2.5秒+5秒」以上の時間がかかることになる。ここで「2.5秒」とは、第2特図が外れ変動するときの変動時間である。また「5秒」とは、第2特図が当り変動するときの変動時間である。そこで、サブ制御基板220のCPU221は、第2保留の当り保留が発生した時に既に記憶されていた第2保留の外れ保留の個数Nを取得すると、「N×2.5秒+5秒」によって得られた時間を、当り告知演出実行時間として決定する(S1116)。
【0172】
あるいは、S1116においては、次のようにして当り告知演出実行時間を算出しても良い。先ず、第2保留の当り保留が発生した時に、既に記憶されている第2保留の個数、特別図柄(第2特図)が変動表示中であるか否かについての情報、更に、変動表示中であった場合はその残り変動時間についての情報を取得する。前述したように特別図柄(第2特図)の変動開始時には、主制御基板200からサブ制御基板220に向かって変動パターン指定コマンドおよび停止図柄指定コマンドが送信され、特別図柄が停止表示される際には図柄停止コマンドが送信されるから、サブ制御基板220のCPU221は、これらの情報に基づいて、特別図柄(第2特図)が変動表示中か否か、および残りの変動時間を知ることができる。そして、これらの情報に基づいて、図31?図35を用いて前述したようにして当り告知演出実行時間を算出することとしてもよい。
【0173】
図30に示す告知演出実行処理では、以上のようにして当り告知演出実行時間を算出し(S1116)、続いて、算出した当り告知演出実行時間に応じて当り告知演出内容(当り告知演出パターン)を決定する(S1118)。本実施例のパチンコ機1では、当り告知演出A?Fまでの6種類の動画が予め設定されており、それぞれの当り告知演出は、動画の再生時間が異なっている。図36は、本実施例のパチンコ機1に設定されている当り告知演出内容と、それぞれの当り告知演出に対応する動画の再生時間を示した説明図である。当り告知演出内容を決定するに際しては、先に算出した算出した当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択する。また、一致する当り告知演出内容がなかった場合には、算出した告知演出実行時間よりも再生時間が短いものの中から、できるだけ告知演出実行時間に近い再生時間の当り告知演出内容を選択する。例えば、算出した当り告知演出実行時間が「5秒」であれば、再生時間が「5秒」の当り告知演出Aを選択する。また、算出した当り告知演出実行時間が「15秒」であれば再生時間が「13秒」の当り告知演出Cを選択し、更に当り告知演出実行時間が「25.5秒」であれば、再生時間が「23秒」の当り告知演出Fを選択する。前述したように当り告知演出実行時間は「5秒?25.5秒」の範囲でしか変動しないから、図36に示すように、再生時間の異なる6種類の当り告知演出内容を設定しておくだけで、適切な再生時間の当り告知演出内容を選択することができる。」

(1-k)段落【0051】には、「主制御基板200に接続された各種スイッチの中で、遊技球の入賞に関わるスイッチ(第1始動口スイッチ17sや、第2始動口スイッチ17t」と記載されている。
また、段落【0056】には、「・・・所定の条件を満足していた場合には、特別図柄遊技処理を開始する。」と記載され、段落【0057】には、「特別図柄遊技処理(S250)を開始するか否かの判断に当たっては、先ず初めに、第1始動口17aに遊技球が入球したか否かを判断する」と記載され、段落【0065】には、「第2保留に関する処理も、上述した第1保留に関する処理とほぼ同様にして行われる。以下、簡単に説明すると、先ず初めに、第2始動口17bに遊技球が入球したか否かを判断する」と記載されているから、遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球していることが、特別図柄遊技処理を開始する所定の条件の一つといえる。
よって、刊行物1には、第1始動口スイッチ17sや第2始動口スイッチ17tは、主制御基板200に接続され、遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球していることが、特別図柄遊技処理を開始する所定の条件の一つとなっていることが記載されているといえる。

(1-l)段落【0057】には、「第1始動口17aに遊技球が入球したか否かを判断する」と記載され、段落【0061】には、「第1保留が記憶されると、その第1保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否かが、大当り抽選に先立って事前に判定」することが記載され、段落【0065】には、「第2保留に関する処理も、上述した第1保留に関する処理とほぼ同様にして行われる。」と記載されている。
よって、刊行物1には、遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球した後、前記第1保留又は前記第2保留が記憶されると、その第1保留又は第2保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否かを、大当り抽選に先立って事前に判定する処理が記載されているといえる。

(1-m)段落【0151】には、「図31(b)には、大当り遊技の終了時点で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられている状態から告知演出モードに移行して第2特図の変動表示が開始され、その変動表示中(残りの第2保留が3個となったとき)に新たに発生した第2保留が当り保留であった場合が示されている。」と記載され、段落【0150】には、「第2保留の当り保留が発生すると、・・・このときの第2特図の変動時間は「5秒」に設定される」と記載され、段落【0153】には、「外れ保留の消化に際しては、・・・第2特図の変動時間は「2.5秒」に設定される。」と記載され、段落【0153】には、「結局、図31(b)に示したケースでは、第2保留数が3個の状態で変動表示している第2特図の残り変動時間によって、当り告知演出実行時間は「12.5秒?15秒」の範囲の値を取り得ることになる。」と記載されている。
また、段落【0173】には、「当り告知演出内容を決定するに際しては、先に算出した算出した当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択する。また、一致する当り告知演出内容がなかった場合には、算出した告知演出実行時間よりも再生時間が短いものの中から、できるだけ告知演出実行時間に近い再生時間の当り告知演出内容を選択する。」と記載されているから、図36を併せてみると、当り告知演出実行時間は「12.5秒?15秒」の場合には、当り告知演出内容は、再生時間13秒の当り告知演出C又は再生時間9秒の当り告知演出Bとなるといえる。
よって、刊行物1には、大当り遊技の終了時点で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられている状態から告知演出モードに移行して第2特図の変動表示が開始され、その変動表示中(残りの第2保留が3個となったとき)に新たに発生した第2保留が当り保留であった場合には、外れ変動するときの変動時間が2.5秒、当り変動するときの変動時間が5秒に設定され、当り告知演出実行時間は「12.5秒?15秒」の範囲の値を取り得ることになり、当り告知演出内容は、再生時間13秒の当り告知演出C又は再生時間9秒の当り告知演出Bとなることが記載されているといえる。

(1-n)段落【0047】には、「図9(a)には、3つの識別図柄27a,27b,27cが一斉に変動表示している様子が概念的に示されている。」と記載され、図9(a)には、ピラミッドの上で識別情報の変動表示が行われる点が示されている。そして、当該変動表示は、告知演出を行っていない状態における変動時、すなわち、通常の変動時のものであるといえる。
よって、刊行物1には、通常の変動表示においては、ピラミッドの上で識別情報の変動表示が行われる点が記載されているといえる。

上記(1-a)?(1-j)の記載事項及び(1-k)?(1-n)の認定事項を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。

「a 主制御基板200と、主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を行うサブ制御基板220と、サブ制御基板220の制御の下で演出表示装置27の具体的な制御を行う演出制御基板230と、を備えたパチンコ機1において(段落【0031】、【0033】)、
b 第1始動口17aに入球した遊技球を検出する第1始動口スイッチ17sと、第2始動口17bに入球した遊技球を検出する第2始動口スイッチ17tとを備え(段落【0030】)、
c 第1始動口スイッチ17sや第2始動口スイッチ17tは、主制御基板200に接続され、遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球していることが、特別図柄遊技処理を開始する所定の条件の一つとなっており(認定事項(1-k))、
d 前記主制御基板200は、
遊技球が第1始動口17aに入球していた場合は、第1特別図柄用の大当り抽選乱数(第1大当り抽選乱数)、第1特別図柄用の図柄決定乱数(第1図柄決定乱数)を取得して、第1特図の保留(第1保留)としてRAM203に記憶する処理を行い、遊技球が第2始動口17bに入球していた場合は、第2特別図柄用の大当り抽選乱数(第2大当り抽選乱数)、第2特別図柄用の図柄決定乱数(第2図柄決定乱数)を取得して、第2特図の保留(第2保留)としてRAM203に記憶する処理と(段落【0050】、【0058】、【0065】)、
e 特別遊技処理において、現在の遊技状態が確変中か否かに応じて対応する大当り抽選テーブルを選択し、第1特図又は第2特図の大当り抽選の結果が「大当り」であるか否かを判断して、大当り図柄を決定する処理と(段落【0070】、【0076】、【0093】)、
f 遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球した後、前記第1保留又は前記第2保留が記憶されると、その第1保留又は第2保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否かを、大当り抽選に先立って事前に判定する処理と(認定事項(1-l))、
を実行可能であって、
g 第1保留についての事前判定を行ったら、事前判定の結果が組み込まれた始動入賞コマンドAが、サブ制御基板220に向かって送信され、第2保留についての事前判定を行ったら、事前判定の結果が組み込まれた始動入賞コマンドDが、サブ制御基板220に向かって送信され(段落【0061】、【0066】)、
h サブ制御基板220は、受信したコマンドが始動入賞コマンドDであった場合において、事前判定結果が大当りであった場合は当り告知演出を実行し、事前判定結果が大当りでない場合は外れ告知演出を実行し、前記当り告知演出及び前記外れ告知演出は、演出表示装置27の画面上で行われる演出であって(段落【0140】、【0143】?【0147】、【0128】)、
i 前記当り告知演出は、当り告知演出A?Fの6種類の動画が予め設定され、それぞれの当り告知演出は、動画の再生時間が異なっており(段落【0173】)、
j サブ制御基板220は、当り告知演出を開始するに先立って、第2保留の外れ保留により第2特図が外れ変動するときの変動時間と、第2保留の当り保留により第2特図が当り変動するときの変動時間と、さらに、第2保留の当り保留が発生した時に、第2特図が変動表示中であった場合には、その残り変動時間とに基づいて当り告知演出実行時間を算出し(段落【0140】、【0171】、【0172】)
当り告知演出内容を決定するに際しては、当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択し、一致する当り演出内容がなかった場合には、算出した告知演出実行時間よりも再生時間が短いものの中から、できるだけ告知演出時間に近い再生時間の当り告知演出内容を選択し(段落【0173】)、
大当り遊技の終了時点で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられている状態から告知演出モードに移行して第2特図の変動表示が開始され、その変動表示中(残りの第2保留が3個となったとき)に新たに発生した第2保留が当り保留であった場合には、外れ変動するときの変動時間が2.5秒、当り変動するときの変動時間が5秒に設定され、当り告知演出実行時間は「12.5秒?15秒」の範囲の値を取り得ることになり、当り告知演出内容は、再生時間13秒の当り告知演出C又は再生時間9秒の当り告知演出Bとなり(認定事項(1-m))、
l、o 当り告知演出は、3つのピラミッドに同時に落雷が発生する画像が表示され、続いて、ピラミッドの向こう側から巨大な魔神が登場する動画の再生が開始され、この動画の再生は、当り保留に対応して3つの識別図柄が少なくとも変動表示を開始するまでは継続され、識別図柄が大当り態様で停止表示される時には、動画の再生が終了して魔神が完全に姿を現した画像が表示され、演出表示装置27の画面の隅の部分で、3つの識別図柄の変動表示および停止表示が行われ(段落【0132】、【0133】)、
外れ告知演出は、ピラミッドの上に落雷が発生する画像が表示され(段落【0129】)、
通常の変動表示においては、ピラミッドの上で識別情報の変動表示が行われるパチンコ機1(認定事項(1-n))。」

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開2011-255101号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2-a)「【背景技術】
【0002】
従来、遊技機の一種であるパチンコ遊技機では、遊技者の興趣を向上させるために、複数回の図柄変動ゲームを跨いで所定の演出を連続的に実行(出現)させる演出(以下、この演出を「先読み演出」と示す)が行われているものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1における先読み演出は、大当り演出が行われる可能性がある図柄変動ゲームよりも前に行われる複数回の図柄変動ゲームから、所定の演出を図柄変動ゲーム毎に1回行い、当該演出を数回の図柄変動ゲームを跨いで連続させる演出である。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパチンコ遊技機における先読み演出では、変動開始時の遊技状態が始動手段への入球時の遊技状態から変化する場合があるため、入球時に保留中の始動保留球に基づく図柄変動ゲームの変動時間を特定しても、遊技状態が変化した場合、変動開始時において入球時の判定結果どおりの演出が実行されないことになる。したがって、入球時の判定結果に基づいて先読み演出の実行が決定された場合であっても、変動時間の長さに左右されず、各図柄変動ゲーム内で完結する演出を各ゲームで実行する態様の先読み演出を実行させることが主流となり、面白みに欠けていた。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、各ゲーム内で完了する所定の演出を図柄変動ゲーム毎に実行する先読み演出とは異なる新たな形態の先読み演出を実行することで、遊技者の興趣を向上させることができる遊技機を提供することにある。」

(2-b)「【0111】
次に、演出制御用CPU31aは、今回入力した事前判定コマンドが、先読み演出の実行可及び大当り演出又ははずれリーチ演出の実行が確定していることを指示する事前判定コマンドW5?W8,W13?W16のうちいずれかであるかを判定する(ステップS102)。詳しくは、演出制御用CPU31aは、事前判定コマンドで特定される保留記憶数に対応する記憶領域に設定した図柄種別値を読み出し、該値に基づいて先読み演出の実行可及び1種類の変動時間のみが対応付けられている振分テーブルから変動時間を特定することができるか否かを判定することになる。つまり、今回入力した事前判定コマンドで特定される保留記憶数に対応する記憶領域に設定されている図柄種別値として、「1」又は「3」が設定されている場合、ステップS102を肯定判定することになる。本実施形態では、事前判定コマンドW5?W8と1種類の変動時間(変動パターンP5に定められた変動時間)が対応付けられた振分テーブルT5(図7(e))が対応している。同様に、事前判定コマンドW13?W16と1種類の変動時間(変動パターンP6に定められた変動時間)が対応付けられた振分テーブルT2(図7(b))が対応している。
・・・
【0118】
図12の説明に戻り、このように、ステップS101?ステップS103の判定を全て肯定判定した場合、演出制御用CPU31aは、先読み演出の実行対象となる全ての図柄変動ゲームの変動時間を、図柄変動ゲームの開始時よりも前段階で特定したことになる。したがって、演出制御用CPU31aは、先読み演出の実行を決定する。」

(2-c)「【0119】
先読み演出の実行を決定した演出制御用CPU31aは、全始動保留球に基づいて実行される図柄変動ゲームの総変動時間(合算変動時間又は合算値)を算出し、その総変動時間に基づいて、先読み演出の演出時間を特定する演出時間パターンを決定する(ステップS104)。なお、「総変動時間」とは、先読み演出が開始する図柄変動ゲームの変動開始から、先読み演出が終了する最終回の図柄変動ゲームにおいて図柄の変動が確定停止表示されるまでの時間を指す。ただし、この「総変動時間」には、各図柄変動ゲーム間に設定されるインターバル時間は含まれていない。
【0120】
そして、演出制御用CPU31aは、ステップS104において、図14に示す演出時間パターンテーブルから1の演出時間パターンを特定することで、先読み演出の演出時間を特定する。
【0121】
図14に示す演出時間パターンテーブルには、最終的に大当りとなる際に特定可能な4種類の演出時間パターンE1?E4が設定されている。さらに、演出時間パターンテーブルには、最終的にはずれリーチとなる際に特定可能な4種類の演出時間パターンE5?E8が設定されている。そして、演出時間パターンE1,E5には、先読み演出の演出時間として、「54秒」が設定されている。この演出時間パターンE1,E5は、図15に示すように、4回の図柄変動ゲームを実行単位として先読み演出が実行される場合に選択される。この場合、先読み演出が実行される1回目?3回目の図柄変動ゲームが、変動時間として「6秒」を特定するはずれ演出で実行されるとともに、先読み演出が終了する4回目の図柄変動ゲームが、変動時間として「36秒」を特定する大当り演出又ははずれリーチ演出で実行される。したがって、「54秒」という演出時間は、6秒(1回目の変動)+6秒(2回目の変動)+6秒(3回目の変動)+36秒(4回目の変動)の合算値となる。なお、演出時間パターンE5には演出内容が対応付けられていないため、54秒の先読み演出は、最終的に大当りとなる場合しか実行されないことになる。
【0122】
演出時間パターンE2,E6には、先読み演出の演出時間として、「48秒」が設定されている。この演出時間パターンE2,E6は、図15に示すように、3回の図柄変動ゲームを実行単位として先読み演出が実行される場合に選択される。この場合、先読み演出が実行される1,2回目の図柄変動ゲームが、変動時間として「6秒」を特定するはずれ演出で実行されるとともに、先読み演出が終了する3回目の図柄変動ゲームが、変動時間として「36秒」を特定する大当り演出又ははずれリーチ演出で実行される。したがって、「48秒」という演出時間は、6秒(1回目の変動)+6秒(2回目の変動)+36秒(3回目の変動)の合算値となる。
【0123】
演出時間パターンE3,E7には、先読み演出の演出時間として、「42秒」が設定されている。この演出時間パターンE3,E7は、図15に示すように、2回の図柄変動ゲームを実行単位として先読み演出が実行される場合に選択される。この場合、先読み演出が実行される1回目の図柄変動ゲームが、変動時間として「6秒」を特定するはずれ演出で実行されるとともに、先読み演出が終了する2回目の図柄変動ゲームが、変動時間として「36秒」を特定する大当り演出又ははずれリーチ演出で実行される。したがって、「42秒」という演出時間は、6秒(1回目の変動)+36秒(2回目の変動)の合算値となる。
【0124】
演出時間パターンE4,E8には、先読み演出の演出時間として、「36秒」が設定されている。この演出時間パターンE4,E8は、図15に示すように、1回の図柄変動ゲームを実行単位として先読み演出が実行される場合に選択される。この場合、先読み演出が実行される1回の図柄変動ゲームが、変動時間として「36秒」を特定する大当り演出又ははずれリーチ演出で実行される。したがって、「36秒」という演出時間は、1回の図柄変動ゲームの変動時間(36秒)に対応することになる。
【0125】
そして、「54秒」を特定する演出時間パターンE1には、演出内容として「A-1」が定められている。その一方で、「48秒」を特定する演出時間パターンE2,E6には、演出内容として「B-1」が定められている。また、「42秒」を特定する演出時間パターンE3,E7には、演出内容として「C-1」が定められている。また、「36秒」を特定する演出時間パターンE4,E8には、演出内容として「D-1」が定められている。本実施形態では、先読み演出の実行が決定された場合、先読み演出が終了する図柄変動ゲームでは、「リーチB」を特定する変動パターンP5,P6が選択されるようになっている。したがって、先読み演出を伴って実行される図柄変動ゲームの回数が2回以上の場合、最終回のリーチ演出の内容が全て同じ内容であるため、リーチ演出の内容に大当り期待度が依存しているわけではない。大当り期待度は、図柄変動ゲームが大当りとなる可能性の大小を示すものである。そして、大当り期待度は、はずれの場合に出現する割合と大当りの場合に出現する割合を合算したトータルの出現割合に対して、大当りの場合に出現する割合を増加させることによって高めることができる。
【0126】
また、「A-1」は、「54秒」を特定する演出時間パターンE1にのみ対応付けられている。一方、その他の演出内容「B-1」,「C-1」,「D-1」の出現率は、大当り時及びはずれ時における先読み演出の実行確率及び実行回数に依存する。これにより、先読み演出では、リーチ演出の種類にかかわらず、先読み演出の演出内容、すなわち、先読み演出の演出時間が大当り期待度に依存する。本実施形態では、先読み演出の演出時間が長いほど、大当り期待度が高く、先読み演出の演出時間が短いほど、大当り期待度が低くなるようになっている。」

(2-d)「【0190】
・ 各実施形態において、先読み演出の演出時間にインターバル時間を含めても良い。この場合、例えば、インターバル時間を0.5秒に設定したとすると、演出時間パターンE1(4回、54秒)には、3回分のインターバル時間が加算され、55.5秒が特定されることになる。」

上記(2-a)?(2-d)の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の事項が記載されていると認められる(以下「刊行物2記載の事項1」という。)。

「入力した事前判定コマンドが、先読み演出の実行可及び大当り演出又ははずれリーチ演出の実行が確定していることを指示する事前判定コマンドのうちいずれかである場合に先読み演出の実行を決定する演出制御用CPU31aを有し(段落【0111】、【0118】)、
演出制御用CPU31aは、全始動保留球に基づいて実行される図柄変動ゲームの総変動時間(合算変動時間又は合算値)を算出し、その総変動時間に基づいて、先読み演出の演出時間を特定する演出時間パターンを決定し(段落【0119】)、
先読み演出の演出時間にインターバル時間を含める(段落【0190】)、パチンコ遊技機(段落【0002】)。」

また、同様に、刊行物2には、次の事項についても記載されていると認められる(以下「刊行物2記載の事項2」という。)。

「入力した事前判定コマンドが、先読み演出の実行可及び大当り演出又ははずれリーチ演出の実行が確定していることを指示する事前判定コマンドのうちいずれかである場合に先読み演出の実行を決定する演出制御用CPU31aを有し(段落【0111】、【0118】)、
演出制御用CPU31aは、全始動保留球に基づいて実行される図柄変動ゲームの総変動時間(合算変動時間又は合算値)を算出し、その総変動時間に基づいて、先読み演出の演出時間を特定する演出時間パターンを決定し(段落【0119】)、
演出時間パターンとして、最終的に大当りとなる際に特定可能な4種類の演出時間パターンE1?E4が設定され、最終的にはずれリーチとなる際に特定可能な4種類の演出時間パターンE5?E8が設定され(段落【0121】)、
演出時間パターンE1,E5には、先読み演出の演出時間として、「54秒」が設定され、演出時間パターンE2,E6には、先読み演出の演出時間として、「48秒」が設定され、演出時間パターンE3,E7には、先読み演出の演出時間として、「42秒」が設定され、演出時間パターンE4,E8には、先読み演出の演出時間として、「36秒」が設定され(段落【0121】?【0124】)、
演出時間パターンE1には、演出内容として「A-1」が定められ、演出時間パターンE2,E6には、演出内容として「B-1」が定められ、演出時間パターンE3,E7には、演出内容として「C-1」が定められ、演出時間パターンE4,E8には、演出内容として「D-1」が定められており(段落【0125】)、
54秒の先読み演出は、最終的に大当りとなる場合しか実行されない(段落【0121】)、パチンコ遊技機(段落【0002】)。」

(3)刊行物3
前置報告書で新たに引用された特開2012-71068号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(3-a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ぱちんこ遊技機等の弾球遊技機に関し、特に弾球遊技機における画面表示内容を制御する技術に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾球遊技機の中には、確変の遊技状態が継続する期間(以下、「確変継続期間」とも呼ぶ。)が、次の大当り発生まででなく予め定められた期間に制限されているものがある。このような機種では、確変継続期間内に大当りが発生しない場合、遊技状態は確変状態から通常状態へ戻される。そのため、確変継続期間の残期間が少なくなるほど、その残期間において大当りが発生する確率も低下していき、先の大当りの発生から比較的短期間のうちに次の大当りが発生することに対して遊技者が抱いた期待感もまた低下していくことになる。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、確変継続期間の残期間の減少に伴って遊技者の期待感が低下することを演出により抑制することにある。」

(3-b)「【0085】
図10は、予告種類テーブルを模式的に示す図である。予告演出種別欄は予告演出の種類を示しており、演出時間欄は各予告演出の開始から終了までの実行時間(演出表示時間)を示している。変動パターン欄は、予告演出と対応づけられた(すなわち表示時間が一致する)変動パターンを示している。演出決定手段132は、本判定としての変動パターン判定において選択された変動パターンに対応づけられた予告演出を選択する。なお、本判定としての当否判定が大当りである場合には大当りを示唆するよう構成された大当り用予告を選択し、外れである場合には外れを示唆するよう構成された外れ用予告を選択する。
【0086】
図10における大当り用予告は、演出の途中までは外れの可能性を示唆しつつも、演出の最後に大当りの発生を確定的に報知する予告演出であってもよい。また外れ用予告は、演出の途中までは大当りの可能性を示唆しつつも、演出の最後に外れを確定的に報知する予告演出であってもよい。なお、同図において大当り予告Dおよび外れ用予告Dには変動パターンが対応づけられていないが、これらの予告種類は後述する連続演出における予告演出パターンとして選択されうるものである。
【0087】
また、予告演出の演出時間は、複数の変動パターン(異種の変動パターンや、複数の同種の変動パターンを含む)それぞれの変動時間を組み合わせた合計時間と一致するように設定される。好適には、各変動パターンにおける変動時間の倍数に相当する演出時間、および、それらを組み合わせた演出時間を有する予告演出が定められてもよい。例えば、変動時間Aを有する変動パターンと、変動時間Bを有する変動パターンとが存在する場合、各予告演出の演出時間は、α×A(αは自然数)、β×B(βは自然数)、α×A+β×Bのいずれかに設定されてもよい。」

(3-c)「【0103】
演出決定手段132における予告演出決定の一例を説明する。演出決定手段132は、当該変動に関する抽選結果と保留抽選結果とを参照して、当該変動から将来時点の変動に亘る変動時間の合計を算出する。そして、その変動時間の合計に一致する演出時間を有する予告演出を、当該変動から将来時点の変動に亘って継続して表示させる演出(以下、「連続演出」とも呼ぶ。)の演出パターンとして決定する。演出表示制御手段134は、複数回の図柄変動に跨って連続演出を演出表示装置60に継続的に表示させる。
【0104】
図14は、演出決定手段132による連続演出の選択例を模式的に示す図である。欄181は、確変継続期間の残期間が35回(35変動)で、当該変動の抽選結果とともに、2つの保留抽選結果を参照範囲とする例を示している。この場合、入球順位2の保留抽選結果まで大当りがなく、3変動の合計変動時間が15秒(5秒×3)であるため、演出決定手段132は、図10の予告種類テーブルにおける外れ予告Cを選択する。この例では、本来、リーチなし演出が3回表示されるところ、ノーマル1に対応する予告演出が表示されることになる。」

(3-d)図10には、大当り用予告Aの演出時間は50秒であり、外れ用予告Aの演出時間は50秒であり、大当り用予告Bの演出時間は30秒であり、外れ用予告Bの演出時間は30秒であり、大当り用予告Cの演出時間は15秒であり、外れ用予告Cの演出時間は15秒であることが示されている。

上記(3-a)?(3-c)の記載事項及び上記(3-d)の認定事項を総合すると、刊行物3には、次の事項が記載されていると認められる(以下「刊行物3記載の事項」という。)。

「当該変動から将来時点の変動に亘る変動時間の合計を算出し、その変動時間の合計に一致する演出時間を有する予告演出を、連続演出の演出パターンとして決定する演出決定手段132を有する弾球遊技機において(段落【0001】、【0103】)、
予告演出は、当否判定が大当りである場合には大当りを示唆するよう構成された大当り用予告を選択し、外れである場合には外れを示唆するよう構成された外れ用予告を選択し(段落【0085】)、
大当り用予告Aの演出時間は50秒であり、外れ用予告Aの演出時間は50秒であり、大当り用予告Bの演出時間は30秒であり、外れ用予告Bの演出時間は30秒であり、大当り用予告Cの演出時間は15秒であり、外れ用予告Cの演出時間は15秒である(認定事項(3-d))、弾球遊技機。」

(4)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する(下記の(a)?(o)は、刊行物1発明の構成に対応している。)。

(a)刊行物1発明の「主制御基板200」、「サブ制御基板220」、「演出表示装置27の具体的な制御を行う演出制御基板230」は、それぞれ、本願補正発明の「主制御手段」、「演出制御手段」、「演出実行手段」に相当する。
よって、刊行物1発明の「主制御基板200と、主制御基板200からの各種コマンドを受け取ると、コマンドの内容を解析して、その結果に応じた遊技の演出を行うサブ制御基板220と、サブ制御基板220の制御の下で演出表示装置27の具体的な制御を行う演出制御基板230」は、本願補正発明の「主制御手段と、前記主制御手段が出力した制御情報に基づき、図柄変動ゲームに付随する遊技演出の実行を制御する演出制御手段と、前記遊技演出を実行可能な演出実行手段」に相当する。
また、刊行物1発明の「パチンコ機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

(b)刊行物1発明の「第1始動口17a」又は「第2始動口17b」、「第1始動口スイッチ17s」又は「第2始動口スイッチ17t」は、それぞれ、本願補正発明の「始動口」、「始動検知手段」に相当する。
よって、刊行物1発明の「第1始動口17aに入球した遊技球を検出する第1始動口スイッチ17sと、第2始動口17bに入球した遊技球を検出する第2始動口スイッチ17tとを備え」る点は、本願補正発明の「始動口へ入球した遊技球を検知する始動検知手段を備え」る点に相当する。

(c)刊行物1発明の「特別図柄遊技」は、本願補正発明の「図柄変動ゲーム」に相当する。
また、刊行物1発明においては、「第1始動口スイッチ17sや第2始動口スイッチ17tは、主制御基板200に接続され」ているから、第1始動口スイッチ17sや第2始動口スイッチ17tの検知信号は、主制御基板200に入力されることは明らかである。
そうすると、第1始動口スイッチ17sや第2始動口スイッチ17tの検知信号が主制御基板200に入力されることが、特別図柄遊技処理を開始する条件であるといえる。
よって、刊行物1発明の「第1始動口スイッチ17sや第2始動口スイッチ17tは、主制御基板200に接続され、遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球していることが、特別図柄遊技処理を開始する所定の条件の一つ」である点は、本願補正発明の「前記始動検知手段の検知信号は前記主制御手段に入力され、その検知信号の入力によって前記図柄変動ゲームの始動条件が成立」する点に相当する。

(d)刊行物1発明の「第1特別図柄用の大当り抽選乱数(第1大当り抽選乱数)、第1特別図柄用の図柄決定乱数(第1図柄決定乱数)」又は「第2特別図柄用の大当り抽選乱数(第2大当り抽選乱数)、第2特別図柄用の図柄決定乱数(第2図柄決定乱数)」は、本願補正発明の「図柄変動ゲームに関する情報」に相当する。
よって、刊行物1発明の「前記主制御基板200は、遊技球が第1始動口17aに入球していた場合は、第1特別図柄用の大当り抽選乱数(第1大当り抽選乱数)、第1特別図柄用の図柄決定乱数(第1図柄決定乱数)を取得して、第1特図の保留(第1保留)としてRAM203に記憶する処理を行い、遊技球が第2始動口17bに入球していた場合は、第2特別図柄用の大当り抽選乱数(第2大当り抽選乱数)、第2特別図柄用の図柄決定乱数(第2図柄決定乱数)を取得して、第2特図の保留(第2保留)としてRAM203に記憶する処理」を実行可能である点は、本願補正発明の「前記主制御手段は、実行が保留される図柄変動ゲームに関する情報を記憶する保留記憶処理」を実行可能である点に相当する。

(e)刊行物1発明の「特別遊技処理において」は、本願補正発明の「図柄変動ゲームを開始させるとき」に相当し、刊行物1発明の「第1特図又は第2特図の大当り抽選の結果が「大当り」であるか否かを判断して、大当り図柄を決定する」ことは、本願補正発明の「図柄変動ゲームの変動内容を決定する」ことに相当する。
よって、刊行物1発明の「特別遊技処理において、現在の遊技状態が確変中か否かに応じて対応する大当り抽選テーブルを選択し、第1特図又は第2特図の大当り抽選の結果が「大当り」であるか否かを判断して、大当り図柄を決定する処理」は、本願補正発明の「前記図柄変動ゲームを開始させるときに当該図柄変動ゲームの変動内容を決定する変動内容決定処理」に相当する。

(f)刊行物1発明における「遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球した後、前記第1保留又は前記第2保留が記憶される」ことは、本願補正発明の「前記始動条件の成立に伴って実行が保留される」ことに相当する。また、刊行物1発明の「その第1保留又は第2保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否か」は、本願補正発明の「図柄変動ゲームの変動内容」に相当する。
よって、刊行物1発明の「遊技球が第1始動口17aや第2始動口17bに入球した後、前記第1保留又は前記第2保留が記憶されると、その第1保留又は第2保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否かを、大当り抽選に先立って事前に判定する処理」は、本願補正発明の「前記始動条件の成立に伴って実行が保留される図柄変動ゲームの変動内容を当該図柄変動ゲームが開始される以前に特定する変動内容特定処理」に相当する。

(g)刊行物1発明の「始動入賞コマンドA」又は「始動入賞コマンドD」は、本願補正発明の「変動内容情報」に相当する。
よって、刊行物1発明の「第1保留についての事前判定を行ったら、事前判定の結果が組み込まれた始動入賞コマンドAが、サブ制御基板220に向かって送信され、第2保留についての事前判定を行ったら、事前判定の結果が組み込まれた始動入賞コマンドDが、サブ制御基板220に向かって送信され」る点は、本願補正発明の「前記変動内容特定処理によって特定された変動内容を特定可能な変動内容情報が前記演出制御手段に入力され」る点に相当する。

(h)刊行物1発明の「事前判定結果が大当りであった場合」、「当り告知演出」は、それぞれ、本願補正発明の「変動内容が特定変動内容である場合」、「特別演出」に相当する。また、刊行物1発明の「演出表示装置27の画面上で行われる演出」は、「演出制御基板230」で制御されるから、本願発明の「前記演出実行手段で実行させる制御を行う」ことに相当する。
よって、刊行物1発明の「サブ制御基板220は、受信したコマンドが始動入賞コマンドDであった場合において、事前判定結果が大当りであった場合は当り告知演出を実行し、事前判定結果が大当りでない場合は外れ告知演出を実行し、前記当り告知演出及び前記外れ告知演出は、演出表示装置27の画面上で行われる演出であ」ることは、本願補正発明の「前記演出制御手段は、前記変動内容情報から特定される変動内容が特定変動内容である場合に特別演出の演出内容を決定可能であるとともに、その決定した演出内容の特別演出を前記演出実行手段で実行させる制御を行うことが可能であ」ることに相当する。

(i)刊行物1発明の「当り告知演出A?Fの6種類の動画が予め設定され、それぞれの当り告知演出は、動画の再生時間が異な」ることは、演出時間及び演出内容が異なる複数種類の動画が設定されることを意味するものである。
よって、刊行物1発明の「前記当り告知演出は、当り告知演出A?Fの6種類の動画が予め設定され、それぞれの当り告知演出は、動画の再生時間が異なって」いることは、本願補正発明の「前記特別演出には、演出時間及び演出内容が異なる複数種類の特別演出が設定され」ることに相当する。

(j)刊行物1発明の「第2保留の当り保留が発生した時」とは、構成fから、遊技球が第2始動口17bに入球した後、第2保留に対応して行われる大当り抽選の結果が大当りとなるか否かを、大当り抽選に先立って事前に判定する処理を行った結果、大当りとなる時であるから、本願補正発明の「特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミング」に相当する。
また、刊行物1発明の「第2特図が変動表示中であった場合」は、本願補正発明の「図柄変動ゲームが実行されている」場合に相当する。
そして、刊行物1発明の「残り変動時間」、「第2保留の外れ保留により第2特図が外れ変動するときの変動時間と、第2保留の当り保留により第2特図が当り変動するときの変動時間」は、それぞれ、本願補正発明の「実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間」、「実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間」に相当する。
ここで、本願発明の「前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間との合算値内で終了する前記合算値と一致する演出時間の演出内容を決定」することは、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間との合算値内で終了するものであり、その合算値と一致する演出時間の演出内容を決定すると解することができる。
そうすると、刊行物1発明の「当り告知演出内容を決定するに際しては、当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択し、一致する当り演出内容がなかった場合には、算出した告知演出実行時間よりも再生時間が短いものの中から、できるだけ告知演出時間に近い再生時間の当り告知演出内容を選択」する点は、本願補正発明の「実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と」「の合算値内で終了する前記合算値と一致する演出時間の演出内容を決定」する点に相当するといえる。
よって、刊行物1発明の「サブ制御基板220は、当り告知演出を開始するに先立って、第2保留の外れ保留により第2特図が外れ変動するときの変動時間と、第2保留の当り保留により第2特図が当り変動するときの変動時間と、さらに、第2保留の当り保留が発生した時に、第2特図が変動表示中であった場合には、その残り変動時間とに基づいて当り告知演出実行時間を算出し、
当り告知演出内容を決定するに際しては、当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択し、一致する当り演出内容がなかった場合には、算出した告知演出実行時間よりも再生時間が短いものの中から、できるだけ告知演出時間に近い再生時間の当り告知演出内容を選択」する点と、
本願補正発明の「前記演出制御手段が前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミングにおいて図柄変動ゲームが実行されているときに前記特別演出の演出内容を決定する場合には、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間との合算値内で終了する前記合算値と一致する演出時間の演出内容を決定」する点とは、
「前記演出制御手段が前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミングにおいて図柄変動ゲームが実行されているときに前記特別演出の演出内容を決定する場合には、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間との合算値に基づく演出時間の演出内容を決定する点」で共通する。

(l)上記構成jにおいて「第2特図が変動表示中であった場合には、その残り変動時間とに基づいて当り告知演出実行時間を算出」し、「当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択する」から、当り告知演出は、第2特図の変動表示の途中で開始されといえる。
さらに、上記構成jは、「大当り遊技の終了時点で4個の第2保留(外れ保留)が蓄えられている状態から告知演出モードに移行して第2特図の変動表示が開始され、その変動表示中(残りの第2保留が3個となったとき)に新たに発生した第2保留が当り保留であった場合には、外れ変動するときの変動時間が2.5秒、当り変動するときの変動時間が5秒に設定され、当り告知演出実行時間は「12.5秒?15秒」の範囲の値を取り得ることになり、当り告知演出内容は、再生時間13秒の当り告知演出C又は再生時間9秒の当り告知演出Bとな」るものである。
この場合に、例えば、当り告知演出実行時間が「14秒」であったとすると、5秒の当り変動が1個と、2.5秒の外れ変動が3個で合計12.5秒となり、残りは1.5秒となるから、第2特図の変動表示が開始され新たな第2保留が発生したときの残りの変動時間は1.5秒となり、このことからも、第2特図の変動表示の途中で当り告知演出が開始されることが裏付けられる。
また、刊行物1発明の「当り保留に対応」する「変動表示」は、本願補正発明の「特定変動内容であると特定された図柄変動ゲーム」に相当する。
よって、刊行物1発明の「当り告知演出は、3つのピラミッドに同時に落雷が発生する画像が表示され、続いて、ピラミッドの向こう側から巨大な魔神が登場する動画の再生が開始され、この動画の再生は、当り保留に対応して3つの識別図柄が少なくとも変動表示を開始するまでは継続され、識別図柄が大当り態様で停止表示される時には、動画の再生が終了して魔神が完全に姿を現した画像が表示され、演出表示装置27の画面の隅の部分で、3つの識別図柄の変動表示および停止表示が行われ」る点は、本願補正発明の「特別演出が実行される場合の演出実行手段では、実行中の図柄変動ゲームに付随する遊技演出の途中から前記特別演出が開始され、その特別演出は前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームが実行されているときであっても行われているように前記特別演出の開始のタイミングから継続して実行され」る点に相当する。

(o)刊行物1発明の「当り告知演出」は、巨大な魔神の画像が表示される点において、外れ告知演出や、通常の変動表示から変更されているといえる。
よって、刊行物1発明の「当り告知演出は、3つのピラミッドに同時に落雷が発生する画像が表示され、続いて、ピラミッドの向こう側から巨大な魔神が登場する動画の再生が開始され、この動画の再生は、当り保留に対応して3つの識別図柄が少なくとも変動表示を開始するまでは継続され、識別図柄が大当り態様で停止表示される時には、動画の再生が終了して魔神が完全に姿を現した画像が表示され、演出表示装置27の画面の隅の部分で、3つの識別図柄の変動表示および停止表示が行われ、
外れ告知演出は、ピラミッドの上に落雷が発生する画像が表示され、
通常の変動表示においては、ピラミッドの上で識別情報の変動表示が行われる」点は、
本願補正発明の「特別演出が開始してからの各図柄変動ゲームに付随する遊技演出は、特別演出に変更される」点に相当する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「A 主制御手段と、前記主制御手段が出力した制御情報に基づき、図柄変動ゲームに付随する遊技演出の実行を制御する演出制御手段と、前記遊技演出を実行可能な演出実行手段と、を備えた遊技機において、
B 始動口へ入球した遊技球を検知する始動検知手段を備え、
C 前記始動検知手段の検知信号は前記主制御手段に入力され、その検知信号の入力によって前記図柄変動ゲームの始動条件が成立し、
D 前記主制御手段は、
実行が保留される図柄変動ゲームに関する情報を記憶する保留記憶処理と、
E 前記図柄変動ゲームを開始させるときに当該図柄変動ゲームの変動内容を決定する変動内容決定処理と、
F 前記始動条件の成立に伴って実行が保留される図柄変動ゲームの変動内容を当該図柄変動ゲームが開始される以前に特定する変動内容特定処理と、を実行可能であって、
G 前記変動内容特定処理によって特定された変動内容を特定可能な変動内容情報が前記演出制御手段に入力され、
H 前記演出制御手段は、前記変動内容情報から特定される変動内容が特定変動内容である場合に特別演出の演出内容を決定可能であるとともに、その決定した演出内容の特別演出を前記演出実行手段で実行させる制御を行うことが可能であって、
I 前記特別演出には、演出時間及び演出内容が異なる複数種類の特別演出が設定されており、
J’ 前記演出制御手段が前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミングにおいて図柄変動ゲームが実行されているときに前記特別演出の演出内容を決定する場合には、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間との合算値に基づく演出時間の演出内容を決定し、
L 前記特別演出が実行される場合の前記演出実行手段では、実行中の図柄変動ゲームに付随する遊技演出の途中から前記特別演出が開始され、その特別演出は前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームが実行されているときであっても行われているように前記特別演出の開始のタイミングから継続して実行され、
O 前記特別演出が開始してからの各図柄変動ゲームに付随する遊技演出は、前記特別演出に変更されることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
演出時間の演出内容を決定する「合算値」に関して、本願補正発明は、「実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間」を含むのに対して、刊行物1発明はそのように特定されていない点。(構成J)

[相違点2]
本願補正発明は、「演出制御手段は、変動内容情報から特定変動内容として大当り変動が特定される場合、合算値が予め定めた規定時間よりも長いか否かに関係なく、特別演出を実行させることが可能であり」、「変動内容情報から特定変動内容としてはずれリーチ変動が特定される場合、合算値が前記規定時間よりも長いときには、前記特別演出を実行させ」ないのに対し、刊行物1発明は、そのような構成を有していない点。(構成M、N)

[相違点3]
本願補正発明は、「特別演出の演出内容は、特定変動内容の種類及び合算値に対応しており、合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の演出内容が決定されるとともに、同一の特定変動内容であっても合算値が異なる場合には異なる種類の演出内容が決定され」るのに対し、刊行物1発明は、そのような構成を有していない点。(構成K)

(5)判断
上記相違点1?3について検討する。
ア 上記相違点1について
刊行物2記載の事項1における演出制御用CPU31aは、「全始動保留球に基づいて実行される図柄変動ゲームの総変動時間(合算変動時間又は合算値)を算出し、その総変動時間に基づいて、先読み演出の演出時間を特定する演出時間パターンを決定し、先読み演出の演出時間にインターバル時間を含める」ものである。
そして、上記インターバル時間は、本願補正発明の「実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間」に対応するものであり、先読み演出の演出時間にインターバル時間を含めることは、その基となる総変動時間(合算変動時間又は合算値)についても、インターバル時間を含めて算出することは明らかである。
刊行物1発明と刊行物2記載の事項1とは、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間等の合算値に基づいて、連続演出の演出パターンを決定する遊技機である点で共通するものである。
よって、刊行物1発明における合算値の算出において、刊行物2記載の事項1を適用し、「実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間」を含めるように構成し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について
刊行物2記載の事項2における演出制御用CPU31aは、「入力した事前判定コマンドが、先読み演出の実行可及び大当り演出又ははずれリーチ演出の実行が確定していることを指示する事前判定コマンドのうちいずれかである場合に先読み演出を実行を決定する」から、先読み演出は、大当りの場合とはずれリーチの場合に実行されるといえる。
そして、はずれリーチの場合には、「4種類の演出時間パターンE5?E8が設定され」、「演出時間パターンE5には、先読み演出の演出時間として、「54秒」が設定され、演出時間パターンE6には、先読み演出の演出時間として、「48秒」が設定され、演出時間パターンE7には、先読み演出の演出時間として、「42秒」が設定され、演出時間パターンE8には、先読み演出の演出時間として、「36秒」が設定され」、「演出時間パターンE6には、演出内容として「B-1」が定められ、演出時間パターンE7には、演出内容として「C-1」が定められ、演出時間パターンE8には、演出内容として「D-1」が定められ」ており、演出時間が「54秒」である演出内容「A-1」の先読み演出は実行されない。
すなわち、はずれリーチの場合には、総変動時間に基づいて、演出時間が「48秒」である演出内容「B-1」、演出時間が「42秒」である演出内容「C-1」、演出時間が「36秒」である演出内容「D-1」を実行するが、演出時間が「54秒」である演出内容「A-1」の先読み演出は実行されないものであり、このことは、本願補正発明における、合算値(総変動時間)が長いときには、特別演出(先読み演出)を実行しないことに対応するものである。
一方、大当りの場合には、「4種類の演出時間パターンE1?E4が設定され」、「演出時間パターンE1には、先読み演出の演出時間として、「54秒」が設定され、演出時間パターンE2には、先読み演出の演出時間として、「48秒」が設定され、演出時間パターンE3には、先読み演出の演出時間として、「42秒」が設定され、演出時間パターンE4には、先読み演出の演出時間として、「36秒」が設定され」、「演出時間パターンE1には、演出内容として「A-1」が定められ、演出時間パターンE2には、演出内容として「B-1」が定められ、演出時間パターンE3には、演出内容として「C-1」が定められ、演出時間パターンE4には、演出内容として「D-1」が定められ」ており、いずれの演出時間においても先読み演出は実行される。
すなわち、大当りの場合には、総変動時間に基づいて、演出時間が「54秒」である演出内容「A-1」、演出時間が「48秒」である演出内容「B-1」、演出時間が「42秒」である演出内容「C-1」、演出時間が「36秒」である演出内容「D-1」を実行するものであり、このことは、本願補正発明における、合算値(総変動時間)が長いか否かに関係なく、特別演出(先読み演出)を実行することに対応するものである。
そして、合算値が長いか否かを判断する際に、予め規定時間を定めておき、当該規定時間より長いかどうかにより合算値の長さを判断することは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。

刊行物1発明と刊行物2記載の事項2とは、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間等の合算値に基づいて演出パターンを決定して連続演出を行う遊技機である点で共通するものである。
さらに、刊行物1発明においては、「事前判定結果が大当りであった場合は当り告知演出を実行し、事前判定結果が大当りでない場合は外れ告知演出を実行」するから、刊行物1発明と刊行物2記載の事項2とは、外れの場合においても何らかの演出を行うという点において共通するものである。
よって、刊行物1発明に刊行物2記載の事項2を適用し、大当り変動が特定される場合だけでなくはずれリーチ変動が特定される場合においても、複数回の変動表示に亘って継続される告知演出を実行するように構成するとともに、「大当り変動が特定される場合、合算値が予め定めた規定時間よりも長いか否かに関係なく、特別演出を実行させ」、「はずれリーチ変動が特定される場合、合算値が前記規定時間よりも長いときには、特別演出を実行させない」ように構成し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記相違点3について
刊行物3記載の事項においては、「予告演出は、当否判定が大当りである場合には大当りを示唆するよう構成された大当り用予告を選択し、外れである場合には外れを示唆するよう構成された外れ用予告を選択」するから、予告演出は、当否判定が大当りか外れかによって異なるといえる。
また、上記刊行物3記載の事項においては、「変動時間の合計に一致する演出時間を有する予告演出を決定する」から、大当り用予告Aの変動時間の合計は50秒、大当り用予告Bの変動時間の合計は30秒、大当り用予告Cの変動時間の合計は15秒となり、予告演出は、変動時間の合計によっても異なるといえる。
そうすると、「大当り用予告」、「外れ用予告」といった予告演出は、当否判定の種類が大当りか外れかによって異なるとともに、変動時間の合計によっても異なるものといえ、このことは、本願補正発明の「特別演出の演出内容は、特定変動内容の種類及び合算値に対応して」いることに対応する。
また、大当り用予告A、外れ用予告Aの変動時間の合計はともに50秒であるから、変動時間の合計が同一値であっても、当否判定の種類が異なる場合には、異なる予告演出を実行することになり、このことは、本願補正発明の「合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の演出内容が決定される」ことに対応する。
さらに、大当り用予告Aの変動時間の合計は50秒、大当り用予告Bの変動時間の合計は30秒、大当り用予告Cの変動時間の合計は15秒であるから、当否判定の種類が同じ大当りであっても変動時間の合計が異なる場合には、異なる予告演出を実行することになり、このことは、本願補正発明の「同一の特定変動内容であっても合算値が異なる場合には異なる種類の演出内容が決定され」ることに対応する。

刊行物1発明と刊行物3記載の事項とは、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間等の合算値に基づいて演出パターンを決定して連続演出を行う遊技機であるとともに、外れの場合においても何らかの演出を行うという点において共通するものである。
よって、刊行物1発明に刊行物3記載の事項を適用し、大当りの場合だけでなく外れの場合においても、複数回の変動表示に亘って継続される告知演出を実行するように構成するとともに、「合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の演出内容が決定され」、「同一の特定変動内容であっても合算値が異なる場合には異なる種類の演出内容が決定され」るように構成し、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

エ 本願補正発明が奏する効果について
上記相違点1?3によって本願補正発明が奏する効果は、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項1、刊行物2記載の事項2、刊行物3記載の事項から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

オ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「引用文献1では、「合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の特別演出の演出内容が決定されるとともに、同一の特定変動内容であっても合算値が異なる場合には異なる種類の特別演出の演出内容が決定される」という本願発明の事象は生じず、その結果、本願発明の事象による作用効果も何ら得られないものと思料する。
したがって、本願発明1は、本願発明1の前述した特徴的構成について何ら開示及び示唆されていない引用文献1に基づき当業者が容易に想到し得るものではない。そして、本願発明1によってもたらされる作用効果は格別なものであると思料する。
また、引用文献2についても検討したが、この引用文献2にも本願発明1の前述した特徴的構成については何ら開示及び示唆されていない。このため、本願発明1は、引用文献1に引用文献2の技術事項を適用したとしても当業者が容易に想到し得るものではない。」と主張する(第7頁第8?20行)。
しかしながら、上記(5)ウで検討したとおり、請求人の主張する構成Kについては、刊行物3記載の事項に開示されており、刊行物1発明に刊行物3記載の事項を適用することにより当業者が容易になし得たことである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

カ 平成29年12月15日付けの上申書について
請求人は、平成29年12月15日付けの上申書において、以下のとおり主張する。
「出願人は、各引用文献との相違点になり得る以下の事項を補正する用意がある。審理に際しては、これを考慮して頂きたい。
(相違点1)
本願は、「特定変動内容として大当り変動が特定される場合とはずれリーチ変動が特定される場合とで特別演出を実行可能であるが、その実行される特別演出の演出時間は大当り変動が特定される場合とはずれリーチ演出が特定される場合とで異なる」構成を備えている。
・・・
(相違点2)
本願は、「図柄変動ゲームの実行中において当該図柄変動ゲームが開始してから所定時間が経過する迄の間に始動条件が成立した場合に特別演出を実行可能である」構成を備えている。
・・・
(相違点3)
本願は、「所定の遊技状態が付与される図柄変動ゲームの残り回数が実行中の図柄変動ゲームを含めて所定回数よりも多い場合に特別演出を実行可能である」構成を備えている。」

そこで、上記(相違点1)に係る構成について検討すると、刊行物2記載の事項2においては、54秒の先読み演出は、最終的に大当りとなる場合しか実行されないから、当該「実行される特別演出の演出時間は大当り変動が特定される場合とはずれリーチ演出が特定される場合とで異なる」点が開示されているといえる。
また、上記(相違点2)に係る構成について検討すると、刊行物1発明においては、上記「第2 3(4)(l)」で検討したとおり、「第2特図が変動表示中であった場合には、その残り変動時間とに基づいて当り告知演出実行時間を算出」し、「当り告知演出実行時間と再生時間が一致する当り告知演出内容を選択する」から、当り告知演出は、第2特図の変動表示の途中で開始されるといえる。
そして、第2特図の変動表示の途中を「図柄変動ゲームが開始してから所定時間が経過する迄の間」とすることは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。
さらに、上記(相違点3)に係る構成について検討すると、遊技機の技術分野において、確率変動状態の終了までの残り回数が4回となった変動表示は、先読み予告の対象としない点は周知の技術である(例えば、特開2013-353号公報の段落【0209】参照。)。
よって、仮に、上記相違点1?3に係る構成を限定したとしても、依然として、当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項1、刊行物2記載の事項2、刊行物3記載の事項及び周知の技術に基づいて容易に発明をすることができたものであり、進歩性があるものとはいえない。

(6)まとめ
以上のように、本願補正発明は、 当業者が刊行物1発明、刊行物2記載の事項1、刊行物2記載の事項2、刊行物3記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年9月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
主制御手段と、前記主制御手段が出力した制御情報に基づき、図柄変動ゲームに付随する遊技演出の実行を制御する演出制御手段と、前記遊技演出を実行可能な演出実行手段と、を備えた遊技機において、
始動口へ入球した遊技球を検知する始動検知手段を備え、
前記始動検知手段の検知信号は前記主制御手段に入力され、その検知信号の入力によって前記図柄変動ゲームの始動条件が成立し、
前記主制御手段は、
実行が保留される図柄変動ゲームに関する情報を記憶する保留記憶処理と、
前記図柄変動ゲームを開始させるときに当該図柄変動ゲームの変動内容を決定する変動内容決定処理と、
前記始動条件の成立に伴って実行が保留される図柄変動ゲームの変動内容を当該図柄変動ゲームが開始される以前に特定する変動内容特定処理と、を実行可能であって、
前記変動内容特定処理によって特定された変動内容を特定可能な変動内容情報が前記演出制御手段に入力され、
前記演出制御手段は、前記変動内容情報から特定される変動内容が特定変動内容である場合に特別演出の演出内容を決定可能であるとともに、その決定した演出内容の特別演出を前記演出実行手段で実行させる制御を行うことが可能であって、
前記特別演出には、演出時間及び演出内容が異なる複数種類の特別演出が設定されており、
前記演出制御手段が前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームの始動条件を成立させた入球のタイミングにおいて図柄変動ゲームが実行されているときに前記特別演出の演出内容を決定する場合には、前記実行中の図柄変動ゲームの残り変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの変動時間と、実行が保留されている図柄変動ゲームの間のインターバル時間との合算値内で終了する前記合算値と一致する演出時間の演出内容を決定し、
前記特別演出が実行される場合の前記演出実行手段では、実行中の図柄変動ゲームに付随する遊技演出の途中から前記特別演出が開始され、その特別演出は前記特定変動内容であると特定された図柄変動ゲームが実行されているときであっても行われているように前記特別演出の開始のタイミングから継続して実行され、
前記演出制御手段は、
前記変動内容情報から前記特定変動内容として大当り変動が特定される場合、前記合算値が予め定めた規定時間よりも長いか否かに関係なく、前記特別演出を実行させることが可能であり、
前記変動内容情報から前記特定変動内容としてはずれリーチ変動が特定される場合、前記合算値が前記規定時間よりも長いときには、前記特別演出を実行させず、
前記特別演出が開始してからの各図柄変動ゲームに付随する遊技演出は、前記特別演出に変更されることを特徴とする遊技機。」

2 刊行物
刊行物1、2及びその記載事項、並びに刊行物1発明は、上記「第2 3(1)」、「第2 3(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「特別演出の演出内容」に関して、「前記特別演出の演出内容は、前記特定変動内容の種類及び前記合算値に対応しており、前記合算値が同一値であっても異なる特定変動内容である場合には異なる種類の演出内容が決定されるとともに、同一の特定変動内容であっても前記合算値が異なる場合には異なる種類の演出内容が決定され、」との限定を省くものである。
そして、本願発明と刊行物1発明とを対比すると、上記「第2 3(4)」で検討した相違点1、2と同様のものとなるから、上記「第2 3(5)」で検討したとおり、当業者が、刊行物1発明、刊行物2記載事項1、刊行物2記載事項2に基づいて、容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-01-30 
結審通知日 2018-02-06 
審決日 2018-02-19 
出願番号 特願2013-23534(P2013-23534)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 平城 俊雅
櫻井 茂樹
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 誠  
代理人 山本 実  
代理人 恩田 博宣  

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