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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
管理番号 1339131
異議申立番号 異議2017-700186  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-24 
確定日 2018-02-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5982503号発明「接着剤、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5982503号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の明細書、請求項〔1?17〕について訂正することを認める。 特許第5982503号の請求項1、6、9?17に係る特許を維持する。 特許第5982503号の請求項2?5、7?8に係る特許についての申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5982503号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成26年2月6日(優先権主張 平成25年2月7日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年2月24日に特許異議申立人水野智之(以下、「申立人A」という。)、平成29年2月28日に特許異議申立人椎名一男(以下、「申立人B」という。)及び特許異議申立人岡本啓三(以下、「申立人C」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年5月12日付け 取消理由通知
同年7月14日 訂正請求書・意見書
同年9月8日付け 手続補正指令書(方式)
同年10月6日 手続補正書
同年10月16日付け 通知書
同年11月17日 意見書(申立人B)
なお、上記通知書に対して、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人A及び申立人Cから何ら応答がなかった。


第2 訂正の適否についての判断
平成29年7月14日の訂正請求(同年10月6日付け手続補正書・以下、「本件訂正請求」という。)が認められるかについて検討する。
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?6のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と
を含み、
前記変性オレフィン重合体(A)の融点は、40℃以上100℃未満であることを特徴とする、接着剤。」を、
「プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と、
炭化水素系合成油(D)と
溶媒(水を除く)とを含み、
前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解しており、
前記変性オレフィン重合体(A)の酸価が、0.1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以下であり、
前記変性オレフィン重合体(A)の融点が、40℃以上100℃未満であり、
前記変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間が、100秒以上であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算される前記変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が、1×10^(4)以上、1000×10^(4)以下であり、
前記プロピレン/1-ブテン共重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上であり、
前記炭化水素系合成油(D)が、エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体であることを特徴とする、接着剤組成物。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2?5、7?8を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の「単量体」および「接着剤」を、それぞれ「無水マレイン酸」および「接着剤組成物」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9の「前記接着剤層は、
炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と
を含む組成物を含むコーティング剤からなり、
前記変性オレフィン重合体(A)の融点は、40℃以上100℃未満であること」を、「前記接着剤は、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されていること」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12、14および16における「請求項1に記載の接着剤」を、「請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の【0213】における「実施例1」を「参考例1」に、【0214】における「実施例2?7および比較例1?2」、「実施例8」をそれぞれ、「参考例2、実施例3?5、参考例6、7および比較例1?2」、「参考例8」に、【0216】における「実施例8」を、「参考例8」に、また、【0217】における「[実施例1?7および比較例1および2]」、「実施例1?7および比較例1および2の複合フィルム」、「[実施例8および比較例3]」および「実施例8および比較例3の積層体」を、それぞれ「[参考例2、実施例3?5、参考例6、7および比較例1および2]」、「参考例2、実施例3?5、参考例6、7の複合フィルム」、「[参考例8および比較例3]および「参考例8および比較例3の積層体」に、【0218】の【表1】中、左欄の「実施例1」、「実施例2」、「実施例6」および「実施例7」を、それぞれ「参考例1」、「参考例2」、「参考例6」および「参考例7」に、【0220】の【表2】中の「実施例8」を「参考例8」に、それぞれ訂正する。

2.訂正の目的、新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更、一群の請求項について
(1)上記訂正事項1は、変性オレフィン重合体(A)を「無水マレイン酸」で変性された「プロピレン/1-ブテン共重合体」に限定し、さらに、「炭化水素系合成油(D)」、「溶媒(水を除く)」を含む接着剤組成物であることを特定し、変性オレフィン重合体(A)とポリイソシアネート(B)が、「前記溶媒に溶解」していること、変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間、変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、変性オレフィン重合体(A)の酸価、プロピレン/1-ブテン共重合体における各構成単位の含有割合、および炭化水素系合成油(D)の構成単位を、それぞれ限定したものであることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該接着剤組成物において限定された点のうち、「プロピレン/1-ブテン共重合体」である点は、本件特許明細書【0038】、【0039】及び【実施例3】?【実施例5】(【0218】の【表1】)に、「無水マレイン酸」である点は、【0065】、及び【実施例3】?【実施例5】(【0218】の【表1】)に、「溶媒(水を除く)」を含む接着剤組成物である点は、【0077】、【0128】?【0130】に、変性オレフィン重合体(A)とポリイソシアネート(B)が、「前記溶媒に溶解」している点は、【0130】に、「変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間」、「変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)」、「変性オレフィン重合体(A)の酸価」の点は、それぞれ【0087】、【0079】、【0095】?【0096】に、「プロピレン/1-ブテン共重合体における各構成単位の含有割合」の点は、【0041】、【0045】、【0204】の【製造例1】に、「炭化水素系合成油(D)」をさらに含む点と「炭化水素系合成油(D)の構成単位」の点は、【0118】、【0120】に、それぞれ記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(2)上記訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2?5、7?8を削除するものであることから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(3)上記訂正事項3は、訂正事項1に伴い「接着剤」を「接着剤組成物」とし、「単量体」を「無水マレイン酸」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「無水マレイン酸」である点は、【0065】、及び【実施例3】?【実施例5】(【0218】の【表1】)に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(4)上記訂正事項4は、接着剤層を形成する接着剤を、訂正事項1に係る請求項1の接着剤組成物を引用する形式に書き改め、当該請求項1の接着剤組成物と接着剤との関係を明瞭としたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、これらの事項は、上記2.(1)で指摘した箇所に加え、【実施例】全体(本件特許明細書【0196】?【0221】)に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(5)上記訂正事項5は、訂正事項1に伴い「請求項1に記載の接着剤」を「請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤」に書き改め、当該請求項1に記載の接着剤組成物と接着剤との関係を明瞭としたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、当該事項は、上記2.(4)で指摘したとおりであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(6)上記訂正事項6は、訂正事項1に伴い、本件発明の外延を明瞭とするため、本件特許明細書の実施例(【0196】?【0221】)に記載された「実施例1」、「実施例2」、「実施例6」、「実施例7」及び「実施例8」を、それぞれ「参考例1」、「参考例2」、「参考例6」、「参考例7」及び「参考例8」と書き改めたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、これらの事項は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(7)これらの訂正事項1?6に係る訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号または同第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するから、訂正後の請求項〔1?17〕について訂正を認める。


第3 本件特許に係る発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?17に係る発明(以下、請求項に係る各発明を項番に従って「本件発明1」などといい、併せて単に「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?17に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と、
炭化水素系合成油(D)と
溶媒(水を除く)とを含み、
前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解しており、
前記変性オレフィン重合体(A)の酸価が、0.1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以下であり、
前記変性オレフィン重合体(A)の融点が、40℃以上100℃未満であり、
前記変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間が、100秒以上であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算される前記変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が、1×10^(4)以上、1000×10^(4)以下であり、
前記プロピレン/1-ブテン共重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上であり、
前記炭化水素系合成油(D)が、エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体であることを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記無水マレイン酸の含有割合が、前記変性オレフィン重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
基材と、
前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層と
を備え、
前記接着剤は、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されていることを特徴とする、積層体。
【請求項10】
前記接着剤層は、前記基材の一方面に直接積層されている
ことを特徴とする、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材の一方側に前記接着剤層を介して接着される被着体
をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材の外側に接着される外側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤の硬化物を含む内側接着剤層と、
前記基材および前記外側層の間に介在される外側接着剤層とを備えることを特徴とする、電池ケース用包材。
【請求項13】
請求項12に記載の電池ケース用包材と、
前記電池ケース用包材に包装される電解液とを備え、
前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特徴とする、電池。
【請求項14】
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴とする、高アルカリ溶液用包材。
【請求項15】
請求項14に記載の高アルカリ溶液用包材と、
前記高アルカリ溶液用包材に包装されるpH9以上の溶液とを備えることを特徴とする、包装体。
【請求項16】
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴とする、アルコール含有溶液用包材。
【請求項17】
請求項16に記載のアルコール含有溶液用包材と、
前記アルコール含有溶液用包材に包装されるアルコール含有溶液とを備えることを特徴とする、包装体。」


第4 平成29年5月12日付けで通知した取消理由、及び該取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
1.取消理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号・同法同条第2項
訂正前の請求項1?11に係る発明は、下記引用例1、引用例2、または引用例3に記載された発明であるか、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項1?11に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号または同法同条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由1」という。)。
なお、上記(1)の特許法第29条第1項第3号に関する理由は、申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第1号証または同甲第6号証に記載された発明とする新規性欠如に関する理由と同趣旨である。

(2)特許法第29条第2項
訂正前の請求項12?17に係る発明は、下記引用例1、引用例2、または引用例3に記載された発明と、引用例4?5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項12?17に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)。
なお、上記(2)の特許法第29条第2項に関する理由は、申立人Aの甲第1号証を主引例とする進歩性欠如に関する理由と同趣旨である。

(3)特許法第36条第6項第1号
訂正前の請求項1?17に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由3」という。)。


引用例1:国際公開第2009/087776号(申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第2号証、申立人Cの甲第2号証)
引用例2:特開2009-114319号公報(申立人Bの甲第1号証)
引用例3:国際公開第2012/090646号(申立人Bの甲第6号証、申立人Cの甲第3号証)
引用例4:特開2010-92703号公報(申立人Aの甲第3号証、申立人Bの甲第3号証、申立人Cの甲第4号証)
引用例5:国際公開第2008/093778号(申立人Cの甲第5号証)

2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)申立人Aの特許異議申立理由である訂正前の請求項3?5に係る発明は、上記引用例1に記載された発明と下記引用例6に記載された事項に基づいて、また、訂正前の請求項12?13に係る発明は、上記引用例1に記載された発明と上記引用例4に記載された事項に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項3?5及び12?13に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「申立理由1」という。)。

(2)申立人Bの特許異議申立理由である訂正前の請求項1?17に係る発明の特許は、上記引用例2に記載された発明と、上記引用例1及び引用例4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項1?17に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「申立理由2」という。)。

(3)申立人Cの特許異議申立理由である訂正前の請求項1?17に係る発明の特許は、下記引用例10に記載された発明を主引例として、上記引用例3?5及び下記引用例11に記載された事項に基づいて、あるいは、上記引用例1に記載された発明を主引例として、上記引用例3?5及び下記引用例10,11に記載された事項に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項1?17に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「申立理由3」という。)。


引用例6:特公昭61-42626号公報(申立人Aの甲第2号証)
引用例7:特表2008-524431号公報(申立人Bの甲第4号証)
引用例8:特開平8-319324号公報(申立人Bの甲第5号証)
引用例9:三井化学株式会社ホームページ「コーティング用途 コーティング用ポリウレタン」(URL「http://jp.mitsuichem.com/service/packaging/coatings/coating/2-component.htm」)(申立人Bの甲第7号証)
引用例10:特開2000-345098号公報(申立人Cの甲第1号証)
引用例11:国際公開第2009/041077号(申立人Cの甲第6号証)


第5 当審の判断
1.削除された本件発明2?5、7?8について
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正が認められたことにより、本件発明2?5、7?8の特許は、削除された。
そして、申立人A、申立人B及び申立人Cがした特許異議の申立てのうち、本件発明2?5、7?8の特許に対するものは、対象となる請求項が存在しないものとなった。
したがって、申立人A、申立人B及び申立人Cがした本件発明2?5、7?8の特許に対する特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。

以下に検討する「3.取消理由1について」?「8.申立理由3について」では、本件発明1、6、9?17の特許について検討する。

2.引用例に記載の事項
(1)引用例1
引用例1(国際公開第2009/087776号)(申立人Aの甲第1号証、申立人Bの甲第2号証、申立人Cの甲第2号証。)には、次の記載がある。
(1-1)「[1] 有機溶媒と、該有機溶媒に溶解又は分散されているカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、該有機溶媒に含有されている多官能イソシアネート化合物と、を有し、ポリオレフィン素材の接着に用いられることを特徴とする接着剤組成物。
[2] 上記カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂のJIS K7121に準拠して測定された融解エネルギーが40mJ/mg以下である請求項1に記載の接着剤組成物。
・・・・・・
[5] 請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の接着剤組成物が硬化してなる接着剤層と、該接着剤層の一面に接合された金属箔と、該接着剤層の他面に接合された熱融着性樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする熱融着性部材。」(請求の範囲)

(1-2)「[0001]
本発明は、接着剤組成物及びこの接着剤組成物を用いた熱融着性部材に関する。更に詳しくは、優れた接着性、耐温水性及び耐薬品性等を有し、ポリオレフィン樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂成形体と他部材との接着に有用な接着剤組成物、及びこの接着剤組成物によりアルミニウム箔等の金属箔と熱融着性樹脂フィルムとが接合されてなる熱融着性部材に関する。」

(1-3)「[0009]
本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィン樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂成形体と他部材との接着、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂からなるフィルムとポリオレフィン樹脂フィルムとの接着に好適であり、硬化後の接着剤層は、優れた耐温水性、耐薬品性等を有する。この接着剤組成物は、例えば、建築物の建材及び外装品、特に海浜地区等における建築物の建材等に用いられたときなどの耐塩水性、輸液等の医療用液の容器に用いられたときの耐電解質性、融雪剤が撒かれた道路を走行する車両の部品等に用いられたときの耐食性等に優れ、建築、医療、自動車などの各種の産業分野において有用である。
また、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂のJIS K7121に準拠して測定された融解エネルギーが40mJ/mg以下である場合は、有機溶媒に溶解させ易く、容易に極薄の接着剤層とすることができ、例えば、金属箔と熱融着性樹脂フィルムとを十分な接着強度で接合させることができる。
更に、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂におけるカルボキシル基の含有量が、このポリオレフィン樹脂1g当たり0.10?0.70mmolである場合は、親水性が抑えられ、接着剤組成物をポリオレフィン樹脂フィルム等を用いた密封容器などの接着に用いたときに、湿分の侵入を抑えることができる。
また、多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基(NCO)と、カルボキシル基を構成するヒドロキシル基(OH)との当量比(NCO/OH)が1.0?10.0である場合は、接着性をより向上させることができる。
本発明の熱融着性部材によれば、この熱融着性部材を用いて食品、薬品等を収容する密封容器としたときに、湿分の侵入が抑えられ、内容物の変質等を防止することができる。」

(1-4)「[0010]
[図1]熱融着性部材を斜め方向からみた図であり、併せて断面を説明するための模式的な斜視図である。
符号の説明
[0011]
1;熱融着性部材、11;熱融着性樹脂フィルム層、12;接着剤層、13;金属箔(アルミニウム箔)、14;樹脂層。」と




(1-5)「[0013]
(1)カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂
上記「カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂」(以下、「ポリオレフィン樹脂」という。)としては、ポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂、及びオレフィンモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸との共重合樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィンモノマーの単独重合体又は共重合体、及びこれらのオレフィンモノマーと、ジシクロペンタジエン、4-メチルペンテン-1、酢酸ビニル等との共重合体などを用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられ、接着剤組成物の硬化後の特性及びコストの点からマレイン酸が好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリオレフィン樹脂としては、プロピレンの単独重合体又はエチレンとの共重合体を変性した樹脂、特にプロピレン単独重合体を変性した樹脂が好ましい。
[0014]
ポリオレフィン樹脂は特に限定されないが、JIS K7121に準拠して測定した融解エネルギーが40mJ/mg以下の樹脂が好ましい。また、融解エネルギーは2?40mJ/mgであることが好ましく、3?20mJ/mg、特に5?15mJ/mgであることがより好ましい。融解エネルギーが40mJ/mg以下であれば、有機溶媒への溶解性に優れ、且つ十分な耐温水性、耐薬品性等の接着耐久性を有する接着剤組成物とすることができるため好ましい。また、このポリオレフィン樹脂は、上記の融解エネルギーを有し、且つ融解温度が80℃以下、特に60?80℃であることがより好ましい。このようなポリオレフィン樹脂であれば、低温接着性に優れ、硬化後の接着剤層が十分な耐温水性、耐薬品性等の接着耐久性を有する接着剤組成物とすることができる。
[0015]
更に、ポリオレフィン樹脂におけるカルボキシル基の含有量は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂1g当たり0.10?0.70mmolであることが好ましい。この含有量は特に0.15?0.24mmolであることがより好ましい。カルボキシル基の含有量が0.10?0.70mmolであれば、湿分との親和性が高くなり過ぎず、接着剤組成物を食品、薬品等を収容する密封容器等の形成に用いられる熱融着性部材の接着剤層として使用したときに、湿分の透過を十分に抑えることができる。
尚、カルボキシル基の含有量は、赤外線スペクトルの検量線より算出したポリオレフィン樹脂中の酸含量をカルボキシル基の式量(45)で除し、樹脂1g当たりの値として求めることができる。」

(1-6)「[0018]
(3)多官能イソシアネート化合物
上記「多官能イソシアネート化合物」は、ポリオレフィン樹脂と反応し、接着剤組成物を硬化させる作用を有する。この多官能イソシアネート化合物は特に限定されず、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の化合物、及びこれらの化合物をイソシアヌレート変性、ビュレット変性、トリメチロールプロパン等の多価アルコールでアダクト変性した変性物などを用いることができる。これらの多官能イソシアネート化合物は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。この多官能イソシアネート化合物としても、通常、上記(2)に記載された有機溶媒に溶解する多官能イソシアネート化合物が用いられる。」

(1-7)「[0021]
(4)その他の成分
接着剤組成物には、ポリオレフィン樹脂、多官能イソシアネート化合物の他に、反応促進剤が配合され、粘着付与樹脂、酸変性されていない熱可塑性エラストマー、酸変性されていない熱可塑性樹脂、可塑剤等を含有させることもできる。
(a)反応促進剤
ポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物との反応を促進するため反応促進剤が配合される。この反応促進剤としては、各種の有機スズ化合物及び第3級アミンが挙げられる。反応促進剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、有機スズ化合物と第3級アミンとを併用することもできる。
・・・・・・
[0023]
(c)その他
酸変性されていない熱可塑性エラストマーとしては、好ましくはSEBS、SEPS等が挙げられる。また、酸変性されていない熱可塑性樹脂としては、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂、ワックス等が挙げられる。更に、可塑剤としては、好ましくはポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴム、プロセスオイル等が挙げられる。
上記(a)?(c)のその他の成分の含有量は、ポリオレフィン樹脂、多官能イソシアネート化合物及びその他の成分の合計を100質量%とした場合に、70質量%以下、特に60?10質量%、更に50?20質量%であることが好ましい。その他の成分の含有量が70質量%以下であれば、十分な接着性、耐温水性、耐薬品性等を有する接着剤組成物とすることができる。」

(1-8)「[0025]
[2]熱融着性部材
本発明の熱融着性部材は、図1のように、本発明の接着剤組成物が硬化してなる接着剤層と、接着剤層の一面に接合された金属箔と、接着剤層の他面に接合された熱融着性樹脂フィルム層とを備える。
[0026]
上記「接着剤層12」は、上記[1]に記載された接着剤組成物を金属箔13及び熱融着性樹脂フィルム層11となる樹脂フィルムのうちの少なくとも一方の表面に塗布し、その後、有機溶媒を除去し、次いで、金属箔13と樹脂フィルムとを接着剤組成物が塗布された面を対向させて積層し、加熱、圧着することにより形成することができ、これと同時に熱融着性部材1が形成される。接着剤層12の厚さは材質等にもより、特に限定されないが、1?20μm、特に2?10μmであることが好ましい。接着剤層12の厚さが1?20μmであれば、熱融着性部材の折り曲げ等の加工が容易である。尚、接着剤組成物は、金属箔13の表面に塗布されることが多いが特に限定はされない。接着剤組成物は通常の方法により塗布することができ、例えば、バーコーター、グラビアコーター等を用いて塗布することができる。加熱、圧着の条件は特に限定されず、金属箔13及び熱融着性樹脂フィルム層11となる樹脂フィルムの各々の材質等、並びに接着剤組成物の組成などにより設定することが好ましい。
[0027]
上記「金属箔13」の材質は特に限定されないが、加工性に優れるため、通常、アルミニウム箔が用いられる。金属箔13の厚さは材質等にもより、特に限定されないが、例えば、アルミニウム箔の場合、20?100μm、特に20?80μm、更に30?60μmであることが好ましい。アルミニウム箔の厚さが20?100μmであれば、容易に破損することがなく、熱融着性部材1を容易に形成することができる。また、金属箔13の接着剤層12が形成される面とは反対面には、金属箔13を保護し、且つ密封容器等の外観を向上させるため、樹脂層14を設けることもできる。この樹脂層14の材質は特に限定されず、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等からなる樹脂層14とすることができる。樹脂層14の厚さも特に限定されず、30?60μm、特に30?50μmとすることができる。
[0028]
上記「熱融着性樹脂フィルム層11」は、ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム等の各種の樹脂フィルムを用いて形成することができる。これらの樹脂フィルムのうちではポリオレフィン樹脂フィルムが好ましい。更に、ポリオレフィン樹脂フィルムのうちでもポリプロピレンフィルム、特に熱融着時の寸法変化(収縮)が少ない無延伸ポリプロピレンフィルムがより好ましい。ポリオレフィン樹脂フィルムからなる熱融着性樹脂フィルム層11であれば、熱融着させ易く、熱融着性部材1の所定箇所を容易に、且つ十分な強度で熱融着させることができる。熱融着性樹脂フィルム層11の厚さは材質等にもより、特に限定されないが、例えば、無延伸ポリプロピレンフィルムの場合、10?200μm、特に20?100μm、更に60?100μmであることが好ましい。無延伸ポリプロピレンフィルムの厚さが10?200μmであれば、容易に破損することがなく、耐久性の高い密封容器等とすることができる。」

(2)引用例2
引用例2(特開2009-114319号公報)(申立人Bの甲第1号証)には、次の記載がある。
(2-1)「【請求項1】
プロピレン・1-ブテン共重合体(A)とα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)とを(A)/(B)=5/95?90/10の重量比で重合して得られる酸価が25以上の樹脂(D)と、
塩基性物質と、
水と
を含有する水性樹脂組成物であって、
該プロピレン・1-ブテン共重合体(A)が、
(a)プロピレンから導かれる構成単位を50?95モル%の量で、1-ブテンから導かれる構成単位を5?50モル%の量で含有し、
(b)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.1?12dl/gであり、
(c)分子量分布(Mw/Mn)が3以下である水性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)

(2-2)「【0012】
上記の樹脂あるいは樹脂溶液は、プロピレン・1-ブテン共重合体(A)に、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤とをフィードしながら重合させた後、あるいはプロピレン・1-ブテン共重合体(A)とα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)とに、重合開始剤をフィードしながら重合させた後、さらにラジカル反応させて行う方法で製造することができる。また、プロピレン・1-ブテン共重合体(A)に、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を重合して得られた重合体(C)を添加した後、ラジカル反応させて製造することができ、これらは有機溶媒の存在下でも製造できる。本発明の水性樹脂組成物を得る方法として、後者の方が好ましい。
【0013】
さらに、プロピレン・1-ブテン共重合体(A)の一部が官能基で変性されたものに、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合させる、あるいはプロピレン・1-ブテン共重合体(A)の一部が官能基で変性されたものとα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合させる方法で製造することができる。このようにして得られたものにさらにラジカル反応させて製造することもでき、プロピレン・1-ブテン共重合体(A)の一部が官能基で変性されたものにα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)を添加した後、ラジカル反応させて製造することもでき、これらは有機溶媒存在下でも製造できる。本発明の水性樹脂組成物を得る方法としては、後者の方が好ましい。」

(2-3)「【0050】
上記のような本発明で用いられるプロピレン・1-ブテンランダム共重合体(PBR)は、WO2004/087775号パンフレットに記載の方法で製造することができる。
本発明で用いられる共重合性モノマー(B)は、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体を通常10?95重量%、好ましくは15?85重量%を含み、そのうちでその他の共重合可能な単量体を通常0?40重量%、好ましくは0?30重量%で含んでいる。上記範囲内では、各種材料への密着性のため好ましい。
【0051】
α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートなどの水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有ビニル類およびこれらのモノエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナートなどのイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレンなどの芳香族ビニル類、その他アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、およびメチロールメタクリルアミド、エチレン、プロピレン、C4?C20のα-オレフィンなどが挙げられる。また、上記単量体、あるいはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類なども使用できる。また、ここで「メチル(メタ)アクリレート」とは、メチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを示す。
【0052】
また、本発明で用いられるその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの無水カルボン酸類などが挙げられる。これらは、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分として用いることが好ましい。また、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分に、その他共重合可能な単量体を併用することもできる。
・・・・・・
【0055】
本発明で用いられる樹脂(D)の酸価は25mgKOH/g以上、好ましくは30mgKOH/g以上である。酸価が25mgKOH/g以下になると、親水性が低くなり水性化が困難となる。ここで、「酸価」とは、溶剤を除いた樹脂(ソリッド)での値である。」

(2-4)「【0073】
たとえば、分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有する塗料、プライマーおよび接着剤として用いることができる。前記の硬化剤としては、イソシアナート基が、オキシム類、ラクタム類、フェノール類などのブロック剤で処理したものが水中に存在するようなタケネートWBシリーズ(三井武田ケミカル(株)製)、エラストロンBNシリーズ(第一工業製薬(株)製)などが挙げられる。」

(2-5)「【0079】
本発明の水性樹脂組成物、あるいは本発明で用いられる共重合性モノマー(B)の活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を混合した塗料は、プラスチック、金属、紙、木材、繊維、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリート、アスファルトなどの各種材料への塗料およびプライマーまたは接着剤として使用することができる。形状は、フィルム、シート、板状、繊維状、各種成形体などが挙げられるが、特に制限されるものではない。」

(2-6)「【0089】
このような本発明の水性樹脂組成物、あるいは本発明で用いられる共重合性モノマー(B)の活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を混合した塗料を応用できる用途は、特に限定されるものではないが、たとえば、・・・・・・半導体、電池、ケーブル材料、磁性ディスクやテープ、小型モーター、圧電素子、導電材料、センサ、感光材料、端末(電話機、ファクシミリなど)用材料、・・・・・・などが挙げられる。」

(2-7)「【0099】
[結晶化速度]
上記DSC装置を用い、45℃における1/2結晶化時間を求めた。
[製造例1(PBR-1の合成)]
充分に窒素置換した2000mlの重合装置に、900mlの乾燥ヘキサン、1-ブテン60gとトリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を70℃に昇温し、プロピレンで0.7MPaに加圧した。次いで、ジメチルメチレン(3-t-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリド0.002mmolとアルミニウム換算で0.6mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を接触させたトルエン溶液を重合器内に添加し、内温70℃、プロピレン圧0.7MPaを保ちながら30分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、9.2gであった。また、ポリマーの融点が80.6℃であり、極限粘度[η]が1.18dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0100】
[製造例2(PBR-2の合成)]
ヘキサンの仕込みを817ml、1-ブテンを50g、ジメチルメチレン(3-t-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロリドをジフェニルメチレン(3-t-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)2,7-ジ-t-ブチルフルオレニルジルコニウムジクロリドにした以外は実施例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、11.5gであった。また、ポリマーの融点が86.3℃であり、極限粘度[η]が2.11dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0101】
[製造例3(PBR-3の合成)]
ヘキサンの仕込みを800ml、1-ブテンを120g、重合器内温を60℃にした以外は実施例1と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは、10.8gであった。また、ポリマーの融点が69.0℃であり、極限粘度[η]が2.06dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0102】
[製造例4(PBR-4の合成)]
ヘキサンを900ml、1-ブテンを60g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1mmol加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧を0.7MPaにし、メチルアルミノキサン0.30mmol、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニル-1-インデニル)}ジルコニウムジクロリドをZr原子に換算して0.001mmol加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を0.7MPaに保ちながら30分間重合を行った以外は製造例1と同様の重合後処理を行った。
【0103】
得られたポリマーは39.7gであった。また、ポリマーの融点は88.4℃であり、極限粘度[η]が1.60dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
【0104】
[製造例5(PBR-5の合成)]
ヘキサンを842ml、1-ブテンを95g仕込みにした以外は製造例4と同様の方法で重合を行った。得られたポリマーは15.1gであった。また、ポリマーの融点は69.5℃であり、極限粘度[η]が1.95dl/gであった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。
・・・・・・
【0106】
【表2】

【0107】
[実施例1]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例1で得られたPBR-1を60部とシェルゾールTG200部を仕込み、窒素置換しながら130℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタクリレート49部とエチルアクリレート21部とイソブチルメタクリレート14部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート14部とプラクセルFM-3を21部とメタクリル酸21部と重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド(以下、「PBD」と略記する。)1.4部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より30分後に135℃に昇温し、さらに30分後にシェルゾールTGを100部添加するとともに、PBDを0.7部添加し、さらに1時間後にPBDを0.7部添加した。このPBD添加より30分後に160℃に昇温し、その30分後にPBDを6部添加し、さらに1時間経過後に4部、それよりさらに1時間経過後に4部を添加し反応させた。最後のPBDの添加後より2時間、160℃で放置して反応させ、ソリッドでの酸価が68mgKOH/gの樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を130℃に加熱し、減圧下、250部の溶剤を除去した。これに、ブチルセロソルブを100部添加し、溶解させた後、トリエチルアミンで理論上100%となるよう中和を行い、不揮発分が40%となるように脱イオン水で調整し、水性樹脂組成物を得た。
なお、上記で使用した原料として、溶剤はシェルゾールTG(シェルジャパン(株)製商品名)のイソパラフィン系の有機溶剤を、重合可能な単量体として用いたプラクセルFM-3はダイセル化学工業(株)製の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾イプシロン-カプロラクトンを用いた。
【0108】
[実施例2]
初期に仕込む製造例1で得られたPBR-1とシェルゾールTGをそれぞれ100部と250部に、フィードする混合液をメチルメタクリレート35部とエチルアクリレート15部とイソブチルメタクリレート10部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部とプラクセルFM-3を15部とメタクリル酸15部とPBD1部に、フィード終了後に添加するシェルゾールTGを50部に、0.7部添加しているPBDを0.5部に変更(ソリッドでの酸価は、50mgKOH/g)した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、水性樹脂組成物を得た。
【0109】
[実施例3]
初期に仕込む製造例1で得られたPBR-1とシェルゾールTGをそれぞれ140部と300部に、フィードする混合液をメチルメタクリレート10部とエチルアクリレート10部とイソブチルメタクリレート5部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート5部とプラクセルFM-3を10部とメタクリル酸20部とPBD0.6部に、フィード終了後に添加するシェルゾールTGを未添加に、0.7部添加しているPBDを0.3部に変更(ソリッドでの酸価は、65mgKOH/g)した以外は、実施例1と同様の方法で合成を行い、水性樹脂組成物を得た。」

(2-8)「【0129】
[実施例22?40]
実施例1?4、7、8、9、10?12、13?15、16?18、19?21で得られた水性樹脂組成物100部に、タケネートWD-720(以下、「タケネート」と略記する。)を15部混合し、水性樹脂組成物を得た。
・・・・・・
【0136】
・・・・・・
(3)アルミ箔とPPフィルムでの試験
<アルミ箔とPPフィルムの試験片-1>
接着剤組成物をアルミ箔に乾燥膜厚が3μmになるように塗工した後、200℃で2分間乾燥し、得られた塗工済みアルミ箔を一昼夜常温放置した。
・・・・・・
【0137】
・・・・・・
<アルミ箔とPPフィルムの試験片-2>
上記のアルミ箔とPPフィルムの試験片-1で作成した接着剤を塗工したアルミ箔に、同形状に切り出したポリプロピレンフィルム(厚さ300μm、住友ベークライト株式会社製、商品名:スミライト)を重ね合わせ、200℃の温度で、1kg/cm^(2)の圧力、1秒の時間で熱シールを行い、15mm幅の短冊状に切り出した。
・・・・・・
【0141】
【表4】

【0142】
【表5】



(3)引用例3
引用例3(国際公開第2012/090646号)(申立人Bの甲第6号証、申立人Cの甲第3号証)には、次の記載がある。
(3-1)「[請求項1]
有機溶剤と、該有機溶剤に溶解されており、且つ、130℃で測定したメルトフローレートが5?40g/10minのカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物とを含有することを特徴とする接着剤組成物。
[請求項2]
上記ポリオレフィン樹脂(A)に含まれるカルボキシル基の含有量が、該ポリオレフィン樹脂(A)1gあたり0.01?2.0mmolであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。」(請求の範囲)

(3-2)「[0009]
上記ポリオレフィン樹脂(A)は、130℃で測定したメルトフローレート(MFR)が5?40g/10minの、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂であれば、特に限定されない。このポリオレフィン樹脂(A)としては、未変性ポリオレフィン樹脂にエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合させてなる変性ポリオレフィン樹脂(A1)、及びオレフィンモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸とを重合させてなる共重合樹脂(A2)が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。このようなポリオレフィン樹脂(A)は、公知の方法で製造することができ、例えば、国際公開WO2005/82963号公報、国際公開WO2008/13085号公報に記載されている方法で製造することができる。
[0010]
上記変性ポリオレフィン樹脂(A1)を形成するための未変性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンモノマーの単独重合体又は共重合体、これらのオレフィンモノマーと、ジシクロペンタジエン、4-メチルペンテン-1、酢酸ビニル等との共重合体等を用いることができる。好ましい未変性ポリオレフィン樹脂は、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンとの共重合体、及びプロピレンと1-ブテンとの共重合体である。未変性ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、プロピレンモノマー単位の含有量は、共重合体を構成するすべてのモノマー単位の合計量を100質量%とした場合に、好ましくは50?90質量%である。
また、上記変性ポリオレフィン樹脂(A1)又は共重合樹脂(A2)を形成するためのエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。」

(3-3)「[0013]
また、上記ポリオレフィン樹脂(A)におけるカルボキシル基の含有量は、接着性の観点から、ポリオレフィン樹脂(A)1g当たり、好ましくは0.10?2.0mmol、特に好ましくは0.15?1.0mmolである。カルボキシル基の含有量が0.10mmol未満では、例えば、アルミニウム等の極性の高い物質をその表面に含む被着体への接着性が低下する場合がある。一方、カルボキシル基の含有量が2.0mmolを超えると、ポリオレフィン等の極性の低い物質をその表面に含む被着体への接着性が低下する場合がある。また、被着体がアルミニウム等を含む場合に、接着剤組成物が、この被着体を腐食させる可能性がある。
[0014]
上記ポリオレフィン樹脂(A)の融点は、好ましくは50℃?90℃、より好ましくは60℃?85℃である。融点が50℃未満では、80℃以上の温度における接着部の接着強さが低下する場合がある。一方、融点が90℃を超えると、接着剤組成物の粘度が上昇し、貯蔵安定性が低下する場合がある。
好ましい融点を有するポリオレフィン樹脂(A)は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂(A1)を製造する前の未変性ポリオレフィン樹脂の製造条件、又は共重合樹脂(A2)の製造条件を調整することにより得ることができる。」

(3-4)「[0027]
本発明の接着剤組成物には、ポリオレフィン樹脂、多官能イソシアネート化合物の他に、反応促進剤、粘着付与樹脂、酸変性されていない熱可塑性エラストマー、酸変性されていない熱可塑性樹脂、可塑剤等を含有させることもできる。
[0028]
上記反応促進剤は、ポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物との反応を促進する作用を有する。この反応促進剤としては、有機スズ化合物及び第3級アミンが挙げられる。
・・・・・・
[0029]
粘着付与剤としては、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂及び水添石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
・・・・・・
[0030]
酸変性されていない熱可塑性エラストマーとしては、好ましくはSEBS、SEPS等が挙げられる。また、酸変性されていない熱可塑性樹脂としては、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂、ワックス等が挙げられる。更に、可塑剤としては、好ましくはポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴム、プロセスオイル等が挙げられる。」

(3-5)「[0037]
本発明の熱融着性部材は、本発明の接着剤組成物が硬化してなる接着剤層と、接着剤層の一面側に接合された金属層と、接着剤層の他面側に接合された熱融着性樹脂層とを備える。
本発明の熱融着性部材の概略図は、図1及び図2に示される。即ち、図1の熱融着性部材1は、熱融着性樹脂層11と、接着剤層12と、金属層13と、を、順次、備える。また、図2の熱融着性部材1は、熱融着性樹脂層11と、接着剤層12と、金属層13と、他の層14と、を、順次、備える。本発明の熱融着性部材の形状は、用途等に応じて、適宜、選択され、図1及び図2に示されるように、シート状であってよいし、線状、点状、格子状、市松模様状等であってもよい。」と




(3-6)「[0043]
図1に示される熱融着性部材の製造方法は、以下の通りである。
(1)接着剤組成物を、金属層13形成用の金属箔、金属製フィルム等の表面に塗布し、その後、組成物中の有機溶剤を除去して接着剤層12を形成し、次いで、接着剤層12が形成された面に、熱融着性樹脂層11形成用樹脂フィルム(熱融着性樹脂フィルム)を接触させて、加熱しながら、圧着する方法。
(2)接着剤組成物を、熱融着性樹脂層11形成用樹脂フィルム(熱融着性樹脂フィルム)の表面に塗布し、その後、組成物中の有機溶剤を除去して接着剤層12を形成し、次いで、接着剤層12が形成された面に、金属層13形成用の金属箔等を接触させて、加熱しながら、圧着する方法。」

(4)引用例4
引用例4(特開2010-92703号公報)(申立人Aの甲第3号証、申立人Bの甲第3号証、申立人Cの甲第4号証)には、次の記載がある。
(4-1)「【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と、これら両フィルム層間に配設されたアルミニウム箔層とを含む電池ケース用包材において、前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層と前記アルミニウム箔層とが、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有してなる接着剤層を介して接着されていることを特徴とする電池ケース用包材。」(特許請求の範囲)

(4-2)「【0017】
この発明に係る電池ケース用包材(1)の一実施形態を図1に示す。この包材は、非水電解質系リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられるものである。前記電池ケース用包材(1)は、アルミニウム箔層(4)の一方の面(下面)に第1接着剤層(6)を介して熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)(3)が積層一体化されると共に、前記アルミニウム箔層(4)の他方の面(上面)に第2接着剤層(5)を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)(2)が積層一体化された構成からなる。
【0018】
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)(2)は、包材として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である、即ち成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止する役割を担うものである。前記耐熱性樹脂延伸フィルム(2)としては、特に限定されるものではないが、ポリアミドまたはポリエステルからなる延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(2)の厚さは、12?50μmに設定されるのが好ましい。
【0019】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)(3)は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0020】
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(3)は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成されるのが好ましい。」

(4-3)「【0057】
【図1】この発明の電池ケース用包材の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1…電池ケース用包材
2…外側層(耐熱性樹脂延伸フィルム層)
3…内側層(熱可塑性樹脂未延伸フィルム層)
4…アルミニウム箔層
6…第1接着剤層
【図1】



(5)引用例5
引用例5(国際公開第2008/093778号)(申立人Cの甲第5号証)には、次の記載がある。
(5-1)「[1] 基材層の一方の面に、第1の接着剤層、アルミニウム箔層、コーティング層、接着樹脂層又は第2の接着剤層、及びシーラント層が順次積層されてなるリチウム電池用包材であって、前記コーティング層が、希土類元素系酸化物100質量部に対してリン酸またはリン酸塩が1?100質量部配合された層(A)を含むリチウム電池用包材。」(請求の範囲)

(5-2)「[0018]
本発明によれば、環境面的に負荷を与えることなく、かつ、工程簡素化を果たすことが可能で、耐電解液性、耐フッ酸性、耐水性に優れたリチウム電池用包材およびその製造方法が実現できる。」

(5-3)「[0020]
10、20、30:リチウム電池用包材 11:基材層 12:第1の接着剤層 13:アルミニウム箔層 14:コーティング層 14a:層(A) 14b:層(B) 14c:層(C) 15:接着樹脂層 15a:第2の接着剤層 16:シーラント層」及び
「図1



(6)引用例6
引用例6(特公昭61-42626号公報)(申立人Aの甲第2号証)には、次の記載がある。
(6-1)「1 アイソタクチツクポリプロピレン層からなる基材層の少なくとも片面上に、プロピレン含有率55ないし80重量%、示差走査型熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量が20ないし80Joule/gのプロピレン・1-ブテンランダム共重合体10ないし40重量%と、プロピレン含有率99ないし93重量%の結晶性プロピレン・α-オレフインランダム共重合体90ないし60重量%とからなるポリオレフイン組成物が積層されていることを特徴とするポリプロピレン複合フイルム。」(1頁第1欄【特許請求の範囲】)

(6-2)「本発明で用いるプロピレン・1-ブテンランダム共重合体においては、プロピレン含有率と融点とはほぼ相関があり、例えばプロピレン含有率が80重量%を越えた共重合体は融点が高く、単体ではともかく結晶性プロピレン・α-オレフインランダム共重合体との組成物による複合フイルムの低温ヒートシール性の改良効果はない。一方、プロピレン含有率が55重量%未満であると共重合体の融点が低くなり過ぎる結果、結晶性プロピレン・α-オレフインランダム共重合体との組成物による複合フイルムはブロツキングを生じたりする。またこの組成物はプロピレン・1-ブテンランダム共重合体と結晶性プロピレン・α-オレフインランダム共重合体との相溶性がさほど良くないため、複合フイルムの透明性が劣つたものとなる。また基材であるポリプロピレンに対する接着性も低下してくる。
結晶融解熱量は重合体の結晶化度と相関する値であるが、融解熱量が80Joule/gを越えたプロピレン・1-ブテン共重合体は共重合成分である1-ブテンの量が少ないか、あるいは1-ブテンがブロツク的に共重合したものであるため、透明性が劣り、かつ低温ヒートシール性も劣つたものとなるため採用できない。一方、融解熱量が20Joule/g未満のプロピレン・1-ブテンランダム共重合体は機械的特性および耐熱性が劣り、共重合体がブロツキングし、かつべたついた感触を持つ。そのような樹脂は結晶性プロピレン・α-オレフインランダム共重合体と配合しても性能が実用しうるまでには改質され得ない。従つてヒートシール層の耐スクラツチ性が不足し、ブロツキングしやすく、かつべたついた感触になるため使用できない。」(2頁第4欄39行?3頁5欄27行)

(7)引用例7
引用例7(特表2008-524431号公報)(申立人Bの甲第4号証)には、次の記載がある。
(7-1)「【0148】
(実施例1(サンプル1?32))
ポリマーの調製
一連のP/E*コポリマーは、5リットル用のオイルジャケット付きオートクレーブ連続攪拌タンク反応器(CSTR)内で調製された。Ekatoインペラーと磁気的にカップリングされた攪拌機がこの混合をもたらした。反応器は28バールで液を充満して運転された。プロセスの流れは、底部で流入し、上部で流出した。幾分かの反応熱を取り除くため、反応器のジャケットを通じて伝熱オイルを循環させた。反応器の出口にMicro-Motion(商標)質量流量計を設け、この質量流量計により溶液の密度をモニタリングした。反応器の出口にあるすべてのラインは、30バールの蒸気でトレース(traced)され、絶縁(insulated)された。
【0149】
ShellsSol(商標)100-140溶媒(C_(8)異性体の溶媒)、コモノマー、プロピレンおよび水素を反応器に供給した。反応器に送り込まれた溶媒はMicro-Motion(商標)質量流量計で測定された。送り込まれた溶媒は、すべてのサンプルに対して、13kg/hrであった。可変速度隔膜ポンプが溶媒の流量を調節し、溶媒圧力を反応器圧力にまで高めた。プロピレンおよびコモノマーはRheomic(商標)質量流量計で計量され、溶媒の流れに送り込まれた。モノマーの流量は、サンプル28?30を除き、すべてのサンプルで4kg/hrであり、それらの例外的なサンプルでの流量は2.5kg/hrおよびサンプル30での3.5kg/hrであった。2台のBrooks(商標)流量計/制御装置(1?50sccmおよび10?400sccm)を用いて水素の流量を測定および調節し、この流れを溶媒の流れに送り込んだ。グリコール充填熱交換器を用いて全体の流れを冷却した。
【0150】
完全に自動化された希釈システムを用いて、その送給された触媒錯体を所望の濃度に希釈した。溶媒、ならびに濃縮触媒錯体は、この希釈プロセスの間にMicro-Motion(商標)質量流量計を通じて送り込まれた。同様なシステムを用いて、一次共触媒および二次共触媒を希釈した。反応器への別々な流れの調節により、この共触媒/触媒比が制御された。触媒および二次共触媒は、キャットフラッシュ溶媒流(cat-flush solvent stream)(即ち、全体的な溶媒の流れの一部であって、反応器に送り込まれる別々のフローフィード(flow feed);この流れに、希釈された触媒錯体および二次共触媒が加えられる)により反応器に送り込まれ、その共触媒成分が、溶媒、コモノマー、プロピレンおよび水素を含有するメインのフィードストリームに送り込まれた。サンプル1?18は図6Aに記述されている触媒錯体を用いて調製され、サンプル19?46は図6Bに記述されている触媒錯体を用いて調製された。図6Aの触媒は、ハフニウム、[N-[2,6-ビス(1-メチルエチル)フェニル]-α-[2-(1-メチル)フェニル]-6-(1-ナフタンレニル(naphthanlenyl)-κ-C2)-2-ピリジンメタンアミナート(2-)-κN1,κN2]ジメチル-であり、図6Bの触媒は、ハフニウム、[N-[2,6-ビス(1-メチルエチル)フェニル]-α-[2-(1-メチルエチル)フェニル]-6-(1-ナフタンレニル-κ-C2)-2-ピリジンメタンアミナート(2-)-κN1,κN2]ジメチル-である。これらの両触媒錯体に対する一次および二次共触媒は、それぞれ、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル(アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよび修飾アルモキサンであった。」

(7-2)「【0165】
特性表の説明:
表1-Bは、177Cおよび190Cの温度におけるブルックフィールド粘度、密度、ショアA硬度、軟化点、25Cにおける針入度、ならびにコモノマーのwt%およびmol%、分子量分布(重量平均分子量M_(w)、数平均分子量M_(n)、および分子量分布M_(w)/M_(n)を含む)、熱挙動(融点T_(m)、融解終了点T_(me)を含む)、融解熱を165J/gで割り算して100を掛けることにより決定された結晶化度(パーセント)、結晶化温度T_(c)および結晶化発現温度T_(co)、ならびにガラス転移温度T_(g)(すべてDSCにより決定)、機械的特性(破断強度、降伏強度、破断時の伸長率(%)、ヤング率および破断エネルギーを含む)、ならびに上で説明されている手順および表1-Aに示されている条件により調製されたポリマーの歪度指数を示している。」

(7-3)「【0170】
これらの材料のガラス転移温度または相対的可撓性も、コモノマーの含有量およびタイプを変更することにより変えることができる。同様に、機械的な特性も、粘度、ならびにコモノマーのタイプおよび含有量を変更することにより、変えることができる。これらの材料の歪度指数は-1.2より大きい。
【表1-A-1】

【表1-A-2】

・・・・・・
【表1-B-5】

【表1-B-6】



(8)引用例8
引用例8(特開平8-319324号公報)(申立人Bの甲第5号証)には、次の記載がある。
(8-1)「【0161】
【製造例1】充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm^(2)Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、上記製造例と同様の方法で製造されたrac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm^(2)Gに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
【0162】得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は39.7gであり、重合活性は79kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーは、1-ブテンから導かれる単位を26.4モル%含有していた。極限粘度[η]は1.60dl/g、融点は88.4℃であった。2,1-挿入に基づく異種結合の割合は、約0.02%であった。得られたポリマーについて測定した物性を表1に示す。」

(8-2)「【0167】
【表2】

【0168】
【実施例1】
[変性プロピレン系エラストマーの調製]反応溶媒としてトルエンを用い、このトルエン5.7リットルあたり825gの上記製造例1で得られたプロピレン系エラストマーを160℃で溶解させた。
【0169】次いで、この溶液に無水マレイン酸のトルエン溶液(4.13g/250ml)およびジクミルペルオキシドのトルエン溶液(0.33g/50ml)を別々の導管から4時間かけて徐々に供給した。
【0170】供給終了後、さらに160℃で30分間反応を続け、次いで室温まで冷却し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾過し、さらにアセトンで繰り返し洗浄し、80℃で一昼夜減圧乾燥して目的とする変性プロピレン系エラストマーを得た。
【0171】この変性プロピレン系エラストマーについて元素分析を行い、無水マレイン酸のグラフト量を測定したところ、変性プロピレン系エラストマー100gあたり0.2gに相当する無水マレイン酸がグラフト重合していることがわかった。また、この変性重合体の密度は0.923g/cm^(3)、MFRは1.0g/10分であった。得られた変性プロピレン系エラストマーの溶融物性などの特性を測定した。結果を表2に示す。」

(8-3)「【0179】
【表3】



(9)引用例9
引用例9(三井化学株式会社ホームページ「コーティング用途 コーティング用ポリウレタン」(URL「http://jp.mitsuichem.com/service/packaging/coatings/coating/2-component.htm」))(申立人Bの甲第7号証)には、次の記載がある。
「コーティング用途
コーティング用ポリウレタン
・・・
■2液型
・・・・・・
■水分散可能タイプ
タケネートWDシリーズは、ポリイソシアネート化合物にノニオン性の親水性基を付与することにより容易に水に分散するソープフリー型水分散性ポリイソシアネートです。室温において水中で活性水素基と反応し、架橋構造を形成することができます。タケラックシリーズやその他アクリル樹脂などとの組み合わせにより架橋構造を形成し、耐水性、耐薬品性、基材との密着性が向上します。」

(10)引用例10
引用例10(特開2000-345098号公報)(申立人Cの甲第1号証) には、次の記載がある。
(10-1)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような問題点を解決することを目的としており、具体的には接着剤としては、塗膜のべたつきがなく、特に低温ヒートシール性に優れ、プライマー、塗料原料としては非塩素系でありながら、ポリプロピレン等のポリオレフィンと良好な密着性を有する変性プロピレン系エラストマーを含有するコーティング剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のコーティング剤は、極性モノマーによりグラフト変性されたプロピレン系エラストマーと有機溶剤から構成される。すなわち、極性モノマーによってグラフト変性されたプロピレン系エラストマーが、有機溶剤に溶解または分散してなるコーティング剤において、該変性プロピレン系エラストマーが、(a)プロピレンを50?95モル%、1-ブテンを5?50モル%含有し、(b)135℃、デカリン中で測定される極限粘度が0.1?12dl/gであり、(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布(Mw/Mn)が3以下であり、(d)共重合モノマー連鎖分布のランダム性を示すパラメータB値が1.0?1.5であるプロピレン系エラストマー(I)に、グラフト量が0.1?15重量%となるように、極性モノマーをグラフトしたものであることを特徴とするコーティング剤である。
【0010】好ましい本発明は、プロピレン系エラストマー(I)が、前記特性(a)?(c)に加えて、前記(d)パラメーターB値が1.0?1.3であり、かつ(e)示差走査型熱量計による融点Tmが60?140℃であり、かつ該融点Tmと、1-ブテン含量M(モル%)との関係が、
-2.6M+130≦Tm≦-2.3M+155
であり、(f)X線回折法による結晶化度Cと、1-ブテン含量M(モル%)との関係が、
C≧-1.5M+75
であることを特徴とするコーティング剤である。」

(10-2)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明に係わる変性プロピレン系エラストマーは、下記の特定のプロピレン系エラストマー(I)に、極性モノマーがグラフト共重合してなるものである。このプロピレン系エラストマー(I)は、プロピレンと1-ブテンとのランダム共重合体であるが、まずこれについて説明する。
【0015】(1) プロピレン系エラストマーは、プロピレンを50?95モル%、好ましくは60?93モル%、より好ましくは70?90モル%の量で、1-ブテンを5?50モル%、好ましくは7?40モル%、より好ましくは10?30モル%の量で含有している。
【0016】このプロピレン系エラストマーは、プロピレンおよび1-ブテン以外のオレフィンから導かれる単位を、少量、例えば10モル%以下、望ましくは5モル%以下の量で含んでいてもよい。
・・・・・・
【0022】(5) プロピレン系エラストマーの示差走査型熱量計によって測定される融点Tmは、60?140℃、好ましくは80?130℃である。またこの融点Tmと、前記1-ブテン構成単位含量M(モル%)との関係が
-2. 6M+130≦Tm≦-2. 3M+155
であることが望ましい。」

(10-3)「【0115】本発明において、変性プロピレン系エラストマーを得るために、プロピレン系エラストマーに極性モノマーをグラフト共重合する。極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸とその無水物およびその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル等を挙げることができるが、不飽和カルボン酸およびその無水物が好ましい。
・・・・・・
【0120】不飽和カルボン酸類としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸またはこれらの誘導体(例えば酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等)を挙げることができる。
【0121】この誘導体としては、例えば、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプトー2-エンー5,6-ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピル等を挙げることができる。
・・・・・・
【0123】これらの極性モノマーは単独あるいは複数で使用することができる。また、上記極性モノマーはプロピレン系エラストマーに対し、0.1?15重量%、好ましくは0.5?10重量%グラフト共重合されるのが好ましい。」

(10-4)「【0135】本発明のコーティング剤は、融点が低く、分子量分布が狭く、ランダム性が大きいプロピレン系エラストマーに、極性モノマーをグラフトした変性プロピレン系エラストマーをベースにしているので、金属同士、ポリオレフィン同士、あるいは金属とポリオレフィンとの接着剤やヒートシール剤として、塗膜のべたつきがなく、優れた接着性能および密着性能を示す。このため、特にPTP包装用接着剤、ラミネート用接着剤、塗料用原料またはプライマー原料としても有効に使用できる。」

(10-5)「【0140】(5) 融点(Tm)
試料約5mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。測定は、パーキンエルマー(株)製DSC-7型装置を用いた。」

(10-6)「【0159】(製造例1)充分に窒素置換した2リットルのオートクレーブに、ヘキサンを900ml、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm^(2)Gにし、メチルアルミノキサン0. 30ミリモル、上記製造例と同様の方法で製造されたrac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0. 001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm^(2)Gに保ちながら30分間重合を行った。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。
【0160】得られたポリマー(プロピレン系エラストマー)は39. 7gであり、重合活性は79kg・ポリマー/ミリモルZr・hrであった。このポリマーの1-ブテン含量Mは26. 4モル%であった。極限粘度[η]は1. 60dl/g、融点Tmは88. 4℃であった。2,1-挿入に基づく異種結合の割合は約0. 02%であった。得られたポリマーについて測定した物性を表2に示す。TmとMの関係式による値は下限が61.66で、上限が94.28であり、結晶化度CとMの関係式の右辺は35.4であった。
【0161】
(表2)
表 2
┌───────────────┬───────┬────────┐
│ │ 製造例 1 │ 比較製造例 1│
├───────────────┼───────┼────────┤
│1-ブテン含有量M(モル%) │ 26.4 │ 25.3 │
├───────────────┼───────┼────────┤
│極限粘度[η](dl/g) │ 1.80 │ 1.89 │
├───────────────┼───────┼────────┤
│分子量分布(Mw/Mn) │ 2.0 │ 3.5 │
├───────────────┼───────┼────────┤
│ランダム性B値 │ 1.0 │ 0.94 │
├───────────────┼───────┼────────┤
│融点Tm(℃) │ 88.4 │ 110.0 │
├───────────────┼───────┼────────┤
│結晶化温度C(℃) │ 40 │ 48 │
└───────────────┴───────┴────────┘
【0162】次に、得られたプロピレン系エラストマー110g、トルエン350mlを攪拌機付きの1リットルのオートクレーブに入れ、充分な窒素置換をした後、攪拌しながら130℃/分間で昇温し、完全に溶解させた。ついで、前記温度を保ったまま、無水マレイン酸8.8g(トルエン50mlに溶解)とジクミルパーオキサイド2.4g(トルエン40mlに溶解)をそれぞれ4時間かけて滴下した。滴下終了後、130℃のまま3時間攪拌し、後反応を行い変性プロピレン系エラストマーを得た。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、溶液にアセトンを加えて変性プロピレン系エラストマーを析出した。析出した変性プロピレン系エラストマーを繰り返しアセトンで洗浄した後、乾燥し、試料を得た。この変性プロピレン系エラストマーの物性を表3に記した。
【0163】
(表3)
表 3
┌────────────┬─────────┬─────────┐
│ │ 製造例 1 │ 比較製造例 1 │
├────────────┼─────────┼─────────┤
│グラフト量(重量%) │ 1.7 │ 1.8 │
├────────────┼─────────┼─────────┤
│[η](dl/g) │ 0.81 │ 1.03 │
├────────────┼─────────┼─────────┤
│分子量分布(Mw/Mn)│ 1.9 │ 3.3 │
├────────────┼─────────┼─────────┤
│融点(℃) │ 86.0 │ 97.5 │
├────────────┼─────────┼─────────┤
│結晶化温度(℃) │ 35 │ 43 │
└────────────┴─────────┴─────────┘
変性プロピレン系エラストマーのB値は、それぞれ変性前のプロピレン系 エラストマーと同値
・・・・・・・
【0167】(実施例1)製造例1で得た変性プロピレン系エラストマーをトルエンに溶解し、固形分濃度10%の溶液を得た。該溶液をバーコーターを使用して、アルミ箔に塗布、風乾した後、200℃にセットしたエア・オーブン中で20秒間加熱し、均一透明な塗工箔を得た。この塗工箔とポリプロピレンシート(東セロ(株):#500T-T)をJIS Z1707に準拠した方法により110?140℃で1秒間、1kg/cm^(2) の圧力をかけてヒートシールして試料とした。この試料の180°剥離強度を常温で測定した結果を表4に記した。」

(10-7)「【0176】
【発明の効果】本発明に使用される変性プロピレン系エラストマーは、低融点で、分子量分布が狭く、ランダム性が大きいプロピレン系エラストマーをベースにしているので、これを用いて得られるコーティング剤は、塗膜のべたつきがなく、低温ヒートシール性に優れている。また非塩素系なので、環境問題がない、無公害型コーティング剤である。」

(11)引用例11
引用例11(国際公開第2009/041077号)(申立人Cの甲第6号証) には、次の記載がある。
(11-1)「[0008]
・・・・・・
発明が解決しようとする課題
[0009]
本発明は上記事情を考慮したものであり、環境面的に負荷を与えることなく、かつ、工程簡素化を果たすことが可能で、耐電解液性、耐フッ酸性、耐水性に優れたリチウム電池用包材およびその製造方法の実現を目的とする。
課題を解決するための手段
[0010]
本発明のリチウム電池用包材は、基材層の一方の面に、第1の接着剤層、アルミニウム箔層、コーティング層、接着樹脂層又は第2の接着剤層、及びシーラント層が順次積層されてなるリチウム電池用包材であって、前記コーティング層が、希土類元素系酸化物100質量部に対してリン酸またはリン酸塩が1?100質量部配合された層(A)と、アニオン性ポリマーおよび該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤を有する層(X)とを含む。
本発明においては、前記層(A)の単位面積当たりの質量a(g/m^(2))と、前記層(X)の単位面積当たりの質量x(g/m^(2))との関係が、2≧x/aであることが好ましい。」

(11-2)「[0022]
・・・・・・
発明の効果
[0023]
本発明によれば、環境面的に負荷を与えることなく、かつ、工程簡素化を果たすことが可能で、耐電解液性、耐フッ酸性、耐水性に優れたリチウム電池用包材およびその製造方法が実現できる。」

(11-3)「[0050]
<接着樹脂層>
図1?図4に示す構成はコーティング層14とシーラント層16の間に接着樹脂層15を設けた構成であり、押出ラミネーションや熱ラミネーションなどの手法によって製造される。接着樹脂層15は、下記(i)または(ii)であることが好ましい。また、接着樹脂層15の厚さは、1?40μmであることが好ましく、5?20μmであることがより好ましい。
(i):酸変性ポリオレフィン系樹脂(α)。
(ii):酸変性ポリオレフィン系樹脂(α)(30?99質量%)に、イソシアネート化合物またはその誘導体(β)とシランカップリング剤(γ)と((β)+(γ):1?70質量%)を配合した樹脂組成物。ただし、イソシアネート化合物またはその誘導体(β)とシランカップリング剤(γ)の質量比が、(β)+(γ)=100において、(β):(γ)=10?90:90?10である。なお、(α)+{(β)+(γ)}=100質量%とする。
・・・・・・
[0052]
酸変性ポリオレフィン系樹脂(α)としては、ポリオレフィン樹脂に無水マレイン酸などをグラフト変成させた酸変成ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体などが挙げられる。これらポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述した樹脂を有機溶媒に分散させたディスパージョンタイプを用いてもよく、これにより各種接着に有効な添加剤や、後述するイソシアネート化合物またはその誘導体(β)およびシランカップリング剤(γ)を配合することが可能になる。」

(11-4)「[0095]
[使用材料]
以下の試験例に用いた共通材料は下記の通りである。
・・・・・・
<接着樹脂層およびシーラント層>
F-1:多層ポリプロピレンフィルム(キャスト製膜フィルム30μm)。
F-2:無水マレイン酸変成ポリプロピレン樹脂(MFR=12押出ラミネートグレード)。
F-3:トルエン分散型無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(固形分17wt%焼き付けタイプ)に、トリレンジイソシアネートのアダクト体(固形分75wt%)と、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(固形分100wt%)を、72/6/22になるように配合した組成物。」

(11-5)「[0108]
[実施例7、比較例6]
上記実施例1?6、比較例1?5は熱圧着(熱処理)や熱ラミネートなどの手法を用いることで、リチウム電池としての性能を発現しうる構成であり、その特徴として接着樹脂(酸変性ポリオレフィン樹脂)を用いることが挙げられる。実施例7、比較例6では、このような接着樹脂ではなく、ドライラミネート用のポリウレタン系接着剤を用いた事例について記載する。」

3.取消理由1について
(1)引用発明
ア 引用発明1-1(接着剤組成物について)
引用例1には、上記2.(1-1)より「有機溶媒と、該有機溶媒に溶解又は分散されているカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂と、該有機溶媒に含有されている多官能イソシアネート化合物と、を有し、上記カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂のJIS K7121に準拠して測定された融解エネルギーが40mJ/mg以下である、ポリオレフィン素材の接着に用いられることを特徴とする接着剤組成物。」が記載されている。
そして、前記カルボキシル基を有するポリオレフィンとして、上記2.(1-5)には、「ポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂・・・が挙げられる。ポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィンモノマーの単独重合体又は共重合体・・・を用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられ、接着剤組成物の硬化後の特性及びコストの点からマレイン酸が好ましい。」と記載されていることから、ポリオレフィンについて、プロピレンとブテンを組み合わせた共重合体が、それを変性するものとしてマレイン酸を用いることも開示されていると認められる。
さらに、前記「カルボキシル基」の含有量について、上記2.(1-3)及び2.(1-5)に「ポリオレフィン樹脂1g当たり0.10?0.70mmolであること」、上記2.(1-5)に前記「カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂」が上記の融解エネルギーを有し、且つ融解温度が80℃以下・・・。このようなポリオレフィン樹脂であれば、低温接着性に優れ、硬化後の接着剤層が十分な耐温水性、耐薬品性等の接着耐久性を有する接着剤組成物とすることができる。」ことも、それぞれ記載されている。
多官能イソシアネート化合物については、上記2.(1-6)に、種々の多官能イソシアネート化合物が記載されている。
そうすると、引用例1には、「有機溶媒と、該有機溶媒に溶解又は分散されているカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂であって、ポリオレフィンがプロピレン/ブテン共重合体であり、カルボキシル基が無水マレイン酸でグラフト重合され、カルボキシル基の含有量がポリオレフィン樹脂1g当たり0.10?0.70mmolであり、該有機溶媒に含有されている多官能イソシアネート化合物と、を有し、上記カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂のJIS K7121に準拠して測定された融解エネルギーが40mJ/mg以下、且つ融解温度が80℃以下である、接着剤組成物。」の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用発明1-2(積層体について)
引用例1には、上記2.(1-3)より、「本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィン樹脂フィルム等のポリオレフィン樹脂成形体と他部材との接着、例えば、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂からなるフィルムとポリオレフィン樹脂フィルムとの接着に好適であり、硬化後の接着剤層は、優れた耐温水性、耐薬品性等を有する。」こと、及び上記2.(1-4)及び2.(1-8)より、当該接着剤組成物がバーコーター等により塗布することによって形成された接着剤層により樹脂層等が積層された熱融着性部材が記載されている。
そして、接着剤層を形成する接着剤組成物は、上記3.(1)アで指摘した引用発明1-1に記載の接着剤組成物であることも記載されている。
そうすると、引用例1には、「ポリオレフィン樹脂成形体とその一方に設けられた接着剤組成物から形成される接着剤層とを備え、前記接着剤層は、引用発明1-1に記載の接着剤組成物からなる、積層体。」の発明(以下、「引用発明1-2」という。)も記載されていると認められる。

ウ 引用発明2-1(接着剤組成物について)
引用例2には、上記2.(2-1)?2.(2-5)、2.(2-7)及び2.(2-8)より、「プロピレン・1-ブテン共重合体(A)とα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体およびその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)とを(A)/(B)=5/95?90/10の重量比で重合して得られる酸価が25以上の樹脂(D)と、塩基性物質と、水とを含有する水性樹脂組成物であって、該プロピレン・1-ブテン共重合体(A)が、(a)プロピレンから導かれる構成単位を50?95モル%の量で、1-ブテンから導かれる構成単位を5?50モル%の量で含有する水性樹脂組成物」であること、α,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、・・・などのカルボキシル基含有ビニル類およびこれらのモノエステル化物・・・などが挙げられる。」こと、「分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有する塗料、プライマーおよび接着剤として用いることができる。」こと、「本発明の水性樹脂組成物、あるいは本発明で用いられる共重合性モノマー(B)の活性水素および/または水酸基と反応可能な硬化剤を混合した塗料は、プラスチック、金属、紙、木材、繊維、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリート、アスファルトなどの各種材料への塗料およびプライマーまたは接着剤として使用することができる。」こと、及びこれらの具体的な製造例(【表2】には、プロピレン/1-ブテン共重合体の融点が80.6℃(製造例1)、86.3℃(製造例2)、66.5℃(製造例3)、88.4℃(製造例4)、69.5℃(製造例5)であること、45℃における1/2結晶化時間が5.2分(製造例3)、33.1分(製造例5))などが、それぞれ、記載されている。
そうすると、引用例2には、「プロピレンから導かれる構成単位を50?95モル%の量で、1-ブテンから導かれる構成単位を5?50モル%の量で含有するプロピレン・1-ブテン共重合体(A)とマレイン酸であるα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体(B)とを(A)/(B)=5/95?90/10の重量比で重合して得られる酸価が25以上の樹脂(D)と、分子内にイソシアナート基を有する硬化剤、塩基性物質と、水とを含有する水性樹脂組成物からなる接着剤」の発明(以下、「引用発明2-1」という。)が記載されていると認められる。

エ 引用発明2-2(積層体について)
引用例2には、上記2.(2-8)より、接着剤を塗工したアルミ箔にポリプロピレンフィルムを重ね合わせて試験片(積層体)を作ったこと、当該接着剤は、上記3.(1)ウで指摘した引用発明2-1に記載の接着剤を用いたことが、それぞれ記載されている。
そうすると、引用例2には、「接着剤を塗工したアルミ箔とポリプロピレンフィルムを重ね合わせた試験片(積層体)において、接着剤として、引用発明2-1に記載の接着剤を使用する試験片(積層体)」の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。

オ 引用発明3-1(接着剤組成物について)
引用例3には、上記2.(3-1)から、「有機溶剤と、該有機溶剤に溶解されており、且つ、130℃で測定したメルトフローレートが5?40g/10minのカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、多官能イソシアネート化合物とを含有し、上記ポリオレフィン樹脂(A)に含まれるカルボキシル基の含有量が、該ポリオレフィン樹脂(A)1gあたり0.01?2.0mmolである接着剤組成物。」が記載されている。
そして、上記2.(3-2)には、「上記ポリオレフィン樹脂(A)は、130℃で測定したメルトフローレート(MFR)が5?40g/10minの、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂であれば、特に限定されない」こと、「このポリオレフィン樹脂(A)としては、未変性ポリオレフィン樹脂にエチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合させてなる変性ポリオレフィン樹脂(A1)・・・が挙げられる。」こと、これらは、公知の方法で重合できること、「未変性ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンモノマーの単独重合体又は共重合体・・・・好ましい未変性ポリオレフィン樹脂は、プロピレンの単独重合体、プロピレンとエチレンとの共重合体、及びプロピレンと1-ブテンとの共重合体である。」こと、「プロピレンモノマー単位の含有量は、共重合体を構成するすべてのモノマー単位の合計量を100質量%とした場合に、好ましくは50?90質量%である。」こと、「エチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸・・・等が挙げられる。」ことが、それぞれ記載されている。
また、上記2.(3-3)には、「上記ポリオレフィン樹脂(A)の融点は、好ましくは50℃?90℃、・・・融点が50℃未満では、80℃以上の温度における接着部の接着強さが低下する場合がある。一方、融点が90℃を超えると、接着剤組成物の粘度が上昇し、貯蔵安定性が低下する場合がある。」こと、が記載されている。
そうすると、引用例3には、「有機溶媒と、該有機溶媒に溶解された、130℃で測定したメルトフローレートが5?40g/10minのカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)であって、ポリオレフィンがプロピレン/1-ブテン共重合体であり、カルボキシル基が無水マレイン酸でグラフト重合され、カルボキシル基の含有量がポリオレフィン樹脂1g当たり0.01?2.0mmolであり、該有機溶媒に含有されている多官能イソシアネート化合物と、を有し、前記ポリオレフィン樹脂(A)の融点が50?90℃である、接着剤組成物。」の発明(以下、「引用発明3-1」という。)が記載されていると認められる。

カ 引用発明3-2(積層体について)
引用例3には、上記2.(3-5)より、「本発明の熱融着性部材は、本発明の接着剤組成物が硬化してなる接着剤層と、接着剤層の一面側に接合された金属層と、接着剤層の他面側に接合された熱融着性樹脂層とを備える。」こと、当該接着剤組成物が上記3.(1)オで指摘した引用発明3-1に記載の接着剤組成物であること、図1及び図2において、接着剤層を有する熱融着性部材が、それぞれ記載されている。
そうすると、引用例3には、「接着剤層の一面側に接合された金属層と、接着剤層の他面側に接合された熱融着性樹脂層とを備え、前記接着剤層は、引用発明3-1に記載の接着剤組成物からなる、積層体。」の発明(以下、「引用発明3-2」という。)が記載されていると認められる。


(2)本件発明1と各引用発明との対比
ア 本件発明1と引用発明1-1について
引用発明1-1の「有機溶媒」は、本件発明1の「溶媒(水を除く)」に相当し、引用発明1-1の「該有機溶媒に溶解又は分散されているカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂であって、ポリオレフィンがプロピレン/ブテン共重合体であり、カルボキシル基が無水マレイン酸でグラフト重合され」は、本件発明1の「プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性され」た変性オレフィン重合体(A)に相当する。
引用発明1-1の「該有機溶媒に含有されている多官能イソシアネート化合物」は、本件発明1の「ポリイソシアネート(B)」に相当し、引用発明1-1の「有機溶媒」は、「カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂」を溶解しており、さらに「多官能イソシアネート化合物」も含有していることから、本件発明1の「前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解しており、」にも相当する。
また、引用発明1-1の「接着剤組成物」は、本件発明1の「接着剤組成物」に相当する。

そこで、本件発明1と引用発明1-1とを対比すると、両者は、「プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性された変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)と、溶媒(水を除く)とを含み、前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解している接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
接着剤組成物において、本件発明1は、「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることを特定しているのに対して、引用発明1-1にはそのような特定がない点。

<相違点2>
プロピレン/1-ブテン共重合体において、本件発明1は、「プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上」であることを特定しているのに対して、引用発明1-1にはそのような特定がない点。

<相違点3>
変性オレフィン重合体(A)の物性について、本件発明1は「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下」、「酸価が、0.1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以下」、「融点が、40℃以上100℃未満」、「50℃における半結晶化時間が、100秒以上」、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算」される「重量平均分子量(Mw)が、1×10^(4)以上、1000×10^(4)以下」であることを特定しているのに対して、引用発明1-1は「カルボキシル基の含有量がポリオレフィン樹脂1g当たり0.10?0.70mmol」、「JIS K7121に準拠して測定された融解エネルギーが40mJ/mg以下」、「融解温度が80℃以下」であることを特定している点。

そこで、相違点1について検討する。
引用例1には、接着剤組成物に添加できる成分として、上記2.(1-7)に「(c)その他」成分に「酸変性されていない熱可塑性エラストマー」、「酸変性されていない熱可塑性樹脂」、及び「可塑剤」が具体例も含め記載されており、特に「可塑剤」には、「好ましくはポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴム、プロセスオイル等」との記載がある。
しかしながら、「プロセスオイル」とは、化学技術の分野において、合成ゴムの加工用に用いられる石油由来のオイルであることが当業者に周知の事項として知られている(必要なら、「化学大辞典 8 縮刷版」、共立出版株式会社、1993年6月1日発行、92頁右欄?93頁左欄の「プロセスオイル」の項参照)。
そうすると、引用例1には、プロセスオイルを含有させてもよいことが記載されているとしても、それは、石油由来、すなわち、天然物由来のものであり、引用例1には、本件発明1の「炭化水素系合成油(D)」、まして、その構成成分まで特定したものが記載も示唆もされていないから、この点は、実質的な相違点といえる。
したがって、相違点2?3を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-1(引用例1)に記載された発明ではない。

イ 本件発明1と引用発明2-1について
引用発明2-1の「プロピレン・1-ブテン共重合体(A)」は、本件発明1の「プロピレン/1-ブテン共重合体」に相当し、その構成単位についても、引用発明2-1の「プロピレンから導かれる構成単位を50?95モル%の量で、1-ブテンから導かれる構成単位を5?50モル%の量」で含有するは、本件発明1の「プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上であり、」と含有割合が重複する。
引用発明2-1の「マレイン酸であるα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体(B)とを(A)/(B)=5/95?90/10の重量比で重合して得られる」は、本件発明1の「無水マレイン酸で変性され」に相当し、引用発明2-1の「樹脂(D)」は、本件発明1の「変性オレフィン重合体(A)」に相当する。
また、引用発明2-1の「分子内にイソシアナート基を有する硬化剤」は、本件発明1の「ポリイソシアネート(B)」に相当し、引用発明2-1の「水性樹脂組成物からなる接着剤」は、本件発明1の「接着剤組成物」に相当する。
そこで、本件発明1と引用発明2-1とを対比すると、両者は、「プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性された変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含み、前記プロピレン/1-ブテン共重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上である接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点4>
接着剤組成物において、本件発明1は、「溶媒(水を除く)」を含有することを特定しているのに対して、引用発明2-1は「水」を含有する点。

<相違点5>
接着剤組成物において、本件発明1は、「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることを特定しているのに対して、引用発明2-1にはそのような特定がない点。

<相違点6>
本件発明1は、「前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解して」いることを特定しているのに対して、引用発明2-1にはそのような特定がない点。

<相違点7>
変性オレフィン重合体(A)の物性について、本件発明1は「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下」、「酸価が、0.1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以下」、「融点が、40℃以上100℃未満」、「50℃における半結晶化時間が、100秒以上」、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算」される「重量平均分子量(Mw)が、1×10^(4)以上、1000×10^(4)以下」であることを特定しているのに対して、引用発明2-1は、変性前のオレフィン重合体の物性が示されているにとどまり、そのような特定がない点。

相違点4について検討する。
引用例2には、上記2.(2-7)より、「プロピレン/1-ブテン共重合体」及び「マレイン酸であるα,β-モノエチレン性不飽和基を有する単量体(B)」をヘキサンやシェルゾールTG(イソパラフィン系有機溶剤)のような有機溶剤を用い重合し、その重合後にこれらの溶剤を減圧下で除去した後、重合体をブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエ-テル)に溶解後、水を添加して水性樹脂組成物としている。
そして、引用例2の上記2.(2-8)では、水性樹脂組成物にタケネートWD-720を混合し、水性樹脂組成物を得たことが記載されている。
そうすると、引用例2には、溶媒として水が存在する接着剤組成物しか記載されていないことになる。
一般に、本件発明1のような溶媒に水を含まない非水溶媒系の接着剤組成物と、引用例2のような溶媒に水を含む水性溶媒系の接着剤組成物は、技術的課題が異なるものであるから、相違点4は、実質的な相違点といえる。
したがって、相違点5?7を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2-1(引用例2)に記載された発明ではない。

ウ 本件発明1と引用発明3-1について
引用発明3-1の「有機溶媒」は、本件発明1の「溶媒(水を除く)」に相当し、引用発明3-1の「該有機溶媒に溶解されたカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)であって、ポリオレフィンがプロピレン/1-ブテン共重合体であり、カルボキシル基が無水マレイン酸でグラフト重合され」は、本件発明1の「プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性され」た変性オレフィン重合体(A)に相当する。
引用発明3-1の「該有機溶媒に含有されている多官能イソシアネート化合物」は、本件発明1の「ポリイソシアネート(B)」に相当し、引用発明3-1の「有機溶媒」は、「カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂」を溶解しており、さらに「多官能イソシアネート化合物」も含有していることから、本件発明1の「前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解しており、」にも相当する。
また、引用発明3-1の「接着剤組成物」は、本件発明1の「接着剤組成物」に相当する。

そこで、本件発明1と引用発明3-1とを対比すると、両者は、「プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性された変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)と、溶媒(水を除く)とを含み、前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解している接着剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点8>
接着剤組成物において、本件発明1は、「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることを特定しているのに対して、引用発明3-1にはそのような特定がない点。

<相違点9>
プロピレン/1-ブテン共重合体において、本件発明1は、「プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上」であることを特定しているのに対して、引用発明3-1にはそのような特定がない点。

<相違点10>
変性オレフィン重合体(A)の物性について、本件発明1は「JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下」、「酸価が、0.1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以下」、「融点が、40℃以上100℃未満」、「50℃における半結晶化時間が、100秒以上」、「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算」される「重量平均分子量(Mw)が、1×10^(4)以上、1000×10^(4)以下」であることを特定しているのに対して、引用発明3-1は「130℃で測定したメルトフローレートが5?40g/10min」、「カルボキシル基の含有量がポリオレフィン樹脂1g当たり0.01?2.0mmol」、「融点が50?90℃」であることを特定している点。

そこで、相違点8について検討する。
引用例3には、接着剤組成物に添加できる成分として、上記2.(3-4)に「他に、反応促進剤、粘着付与樹脂、酸変性されていない熱可塑性エラストマー、酸変性されていない熱可塑性樹脂、可塑剤等を含有させること」([0027])が記載され、特に「可塑剤」には、「好ましくはポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴム、プロセスオイル等」([0030])との記載がある。
しかしながら、「プロセスオイル」とは、化学技術の分野において、合成ゴムの加工用に用いられる石油由来のオイルであることが当業者に周知の事項として知られている(上記3.(2)アの相違点1の検討箇所を参照)。
そうすると、引用例3には、プロセスオイルを含有させてもよいことが記載されているとしても、それは、石油由来、すなわち、天然物由来のものであり、引用例3には、本件発明1の「炭化水素系合成油(D)」、まして、その構成成分まで特定したものが記載も示唆もされていないから、この点は、実質的な相違点といえる。
したがって、相違点9?10を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3-1(引用例3)に記載された発明ではない。

進歩性について
上記3.(2)ア?ウで検討したとおり、本件発明1と引用発明1-1、引用発明2-1または引用発明3-1をそれぞれ対比した場合、各引用発明の相違点1、相違点5及び相違点8は、いずれも、接着剤組成物において、本件発明1は、「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることを特定しているのに対して、当該各引用発明にはそのような特定がない点で共通している。
この相違点について、引用発明1-1及び引用発明3-1は、上記3.(2)ア及びウで指摘したとおりであり、引用例1及び引用例3には、接着剤組成物に「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることは、記載ないし示唆があるとはいえない。
また、引用発明2-1について、引用例2の上記2.(2-1)?(2-8)の記載を参酌しても、引用例2には、接着剤組成物に「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることの記載ないし示唆がない。
さらに、引用発明2-1は、水を含有する水性樹脂組成物からなる接着剤であり、一方、引用発明1-1及び引用発明3-1は、有機溶媒を含有する接着剤組成物、いわゆる非水系接着剤であり、接着剤の技術分野において、水を含む水系接着剤と非水系接着剤とは、当業者において技術的課題が異なるものと認識されているものであり、水系接着剤と非水系接着剤の技術要素を組み合わせることは、一般に行われることがないといえる。
そうすると、そもそも、引用例1及び3と引用例2とは、接着剤における技術的課題が異なる引用例であり、これらを組み合わせる動機付けがないことに加え、引用例1?3のいずれを主引例とした場合でも、接着剤組成物に「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、及び当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることが何ら記載も示唆もされていないことから、引用例1?3の記載から、これらの構成を導き出すことは到底できない。
さらに、接着剤組成物において、「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」である「炭化水素系合成油」を使用することが当業者における技術常識であるという根拠に足る事実を認めることもできない。
そして、本件発明1の効果は、本件特許明細書(【0218】の【表1】)の実施例3?4に本件発明1に含まれる接着剤組成物を硬化させた場合、「炭化水素系合成油(D)」を含まないものよりも、接着強度が向上することが示されている。
そうすると、本件発明1は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)本件発明6について
本件発明6は、本件発明1を直接引用し、「前記無水マレイン酸の含有割合」を特定している。
しかしながら、本件発明6が引用している本件発明1は、上記3.(2)で検討したとおり、いずれも引用発明1-1(引用例1)、引用発明2-1(引用例2)又は引用発明3-1(引用例3)に記載された発明ではなく、また、引用例1?3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものでもないことから、本件発明6についても、本件発明1と同様に、引用例1、引用例2又は引用例3にそれぞれ記載された発明ではなく、また、引用例1?3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものでもない。

(4)本件発明9と各引用発明との対比
ア 本件発明9と引用発明1-2について
引用発明1-2の「ポリオレフィン樹脂成形体とその一方に設けられた接着剤組成物から形成される接着剤層とを備え、」は、本件発明9の「基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え」に相当し、引用発明1-2の「前記接着剤層は、引用発明1-1に記載された接着剤組成物からなる」は、本件発明9の「接着剤から形成される接着剤層」と「前記接着剤は、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されていること」に対応し、引用発明1-2の「積層体」は、本件発明9の「積層体」に相当する。
そこで、本件発明9と引用発明1-2とを対比すると、両者は、「基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え、前記接着剤は、接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されている積層体。」である点で一致し、当該「接着剤組成物」について、上記3.(2)アで摘示した相違点1?相違点3の点で相違している。
当該相違点1?相違点3についての検討は、すでに、上記3.(2)アで検討したとおりであるから、本件発明9は、本件発明1と同様に、引用発明1-2(引用例1)に記載された発明とはいえない。

イ 本件発明9と引用発明2-2について
引用発明2-2の「接着剤を塗工したアルミ箔とポリプロピレンフィルムを重ね併せた」は、本件発明9の「基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え」に相当し、引用発明2-2の「接着剤を塗工したアルミ箔とポリプロピレンフィルムを重ね合わせた試験片(積層体)において・・・・・接着剤を使用する」は、使用形態としてアルミ箔とポリプロピレンフィルムに接着剤を塗工していることから、本件発明9の「前記接着剤は、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されている」に相当し、引用発明2-2の「試験片(積層体)」は、本件発明9の「積層体」に相当する。
そこで、本件発明9と引用発明2-2とを対比すると、両者は、「基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え、前記接着剤層は、接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されている積層体。」である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)イで摘示した相違点4?相違点7の点で相違している。
当該相違点4?相違点7についての検討は、すでに、上記3.(2)イで検討したとおりであるから、本件発明9は、本件発明1と同様に、引用発明2-2(引用例2)に記載された発明とはいえない。

ウ 本件発明9と引用発明3-2について
引用発明3-2の「接着剤層の一面側に接合された金属層と、接着剤層の他面側に接合された熱融着性樹脂層とを備え、」は、本件発明9の「基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え」に相当する。
また、引用発明3-2の「前記接着剤層は、・・・・である、接着剤組成物」は、本件発明9の「請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されている」に相当する。
そこで、本件発明9と引用発明3-2とを対比すると、両者は、「基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え、前記接着剤が、接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されている積層体。」である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)ウで摘示した相違点8?相違点10の点で相違している。
当該相違点8?相違点10についての検討は、すでに、上記3.(2)ウで検討したとおりであるから、本件発明9は、本件発明1と同様に、引用発明3-2(引用例3)に記載された発明とはいえない。

進歩性について
本件発明9と引用発明1-2、引用発明2-2又は引用発明3-2との相違点は、上記3.(4)ア?ウで指摘したとおり、本件発明1と同じであることから、これらの点は、既に、上記3.(2)エで検討したとおりである。
したがって、本件発明9は、引用例1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(5)本件発明10?11について
本件発明10?11は、本件発明9を直接引用し、本件発明10は、「前記接着剤層は、前記基材の一方面に直接積層されていること」を、本件発明11は、「前記基材の一方側に前記接着剤層を介して接着される被着体をさらに備えること」を、それぞれ特定している。
しかしながら、本件発明10?11が引用している本件発明9は、上記3.(4)で検討したとおり、いずれも引用発明1-2(引用例1)、引用発明2-2(引用例2)又は引用発明3-2(引用例3)に記載された発明ではなく、また、引用例1?引用例3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものでもないことから、本件発明10?11についても、本件発明9と同様に、引用例1、引用例2又は引用例3にそれぞれ記載された発明ではなく、また、引用例1?引用例3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものでもない。

(6)小括
上記のとおり、本件発明1、6、9?11は、引用例1、引用例2又は引用例3にそれぞれ記載された発明ではなく、また、引用例1?引用例3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明できたものでもない。

4.取消理由2について
(1)本件発明12?13と各引用発明について
ア 本件発明12と引用発明1-2について
本件発明12と引用発明1-2を対比すると、基材と所定の接着剤層を有する点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)アで摘示した相違点1?相違点3の点で相違するのに加えて、以下の点でも相違している。

<相違点11>
本件発明12は、「基材と、前記基材の内側に接着される内側層と、前記基材の外側に接着される外側層と、前記基材および前記内側層の間に介在され、内側接着剤層と、前記基材および前記外側層の間に介在される外側接着剤層とを備える」電池ケース用包材であるのに対して、引用発明1-2には、明記されていない点。

確かに、上記相違点11の5層構造を有し、2番目の層と4番目の層が接着剤層であり、残りの層に基材が配置された電池ケース用包材は、引用例4(上記2.(4-3))及び引用例5(上記2.(5-3))に記載されているように、当業者によく知られたものであったとしても、当該相違点1?相違点3に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明12についても、引用発明1-2(引用例1)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件発明12と引用発明2-2について
本件発明12と引用発明2-2を対比すると、基材と所定の接着剤層を有する点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)イで摘示した相違点4?相違点7の点で相違するのに加えて、上記4.(1)アの相違点11の点でも相違している。
確かに、引用例4(上記2.(4-3))及び引用例5(上記2.(5-3))には、相違点11の所定の電池ケース用包材が記載されているが、当該相違点4?相違点7に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明12についても、引用発明2-2(引用例2)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明12と引用発明3-2について
本件発明12と引用発明3-2を対比すると、基材と所定の接着剤層を有する点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)ウで摘示した相違点8?相違点10の点で相違するのに加えて、上記4.(1)アの相違点11の点でも相違している。
確かに、引用例4(上記2.(4-3))及び引用例5(上記2.(5-3))には、相違点11の所定の電池ケース用包材が記載されているが、当該相違点8?相違点10に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明12についても、引用発明3-2(引用例3)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

エ 本件発明13について
本件発明13は、本件発明12を引用し、さらに、前記電池ケース用包材に包装される電解液を備え、前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特定した電池が記載されている。
しかし、 前記特定事項が、引用例4(上記2.(4-2))、引用例5(上記2.(5-2))に記載されていたとしても、本件発明12が、上記4.(1)ア?ウで検討したとおり、引用発明1-2、引用発明2-2または引用発明3-2のいずれかと、引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでない以上、本件発明12を引用する本件発明13についても、同様に、引用例1、引用例2または引用例3のいずれかと、引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)本件発明14?15と各引用発明について
ア 本件発明14と引用発明1-2について
本件発明14と引用発明1-2を対比すると、外層と内層からなる基材と所定の接着剤層を有する包材である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)アで摘示した相違点1?相違点3の点で相違するのに加えて、以下の点でも相違している。

<相違点12>
包材により包装される対象について、本件発明14は、「高アルカリ溶液用包材」であるのに対して、引用発明1-2には、明記されていない点。

確かに、上記相違点12に関し、引用例4(上記2.(4-2))には、「前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)(3)は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させる」ことが、引用例5(上記2.(5-2))には、「耐電解液性、耐フッ酸性、耐水性に優れたリチウム電池用包材およびその製造方法が実現できる。」ことが、それぞれ記載されている。
しかし、当該相違点1?相違点3に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明14についても、引用発明1-2(引用例1)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件発明14と引用発明2-2について
本件発明14と引用発明2-2を対比すると、外層と内層からなる基材と所定の接着剤層を有する包材である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)イで摘示した相違点4?相違点7の点で相違するのに加えて、上記4.(2)アの相違点12の点でも相違している。
確かに、引用例4及び引用例5には、上記4.(2)アで指摘した点が記載されているが、当該相違点4?相違点7に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明14についても、引用発明2-2(引用例2)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明14と引用発明3-2について
本件発明14と引用発明3-2を対比すると、外層と内層からなる基材と所定の接着剤層を有する包材である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)ウで摘示した相違点8?相違点10の点で相違するのに加えて、上記4.(2)アの相違点12の点でも相違している。
確かに、引用例4及び引用例5には、上記4.(2)アで指摘した点が記載されているが、当該相違点8?相違点10に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明14についても、引用発明3-2(引用例3)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

エ 本件発明15について
本件発明15は、本件発明14を引用し、包材と、この包材に包装されるpH9以上の溶液とを備える包装体の発明が記載されている。
しかし、本件発明15のpH9以上の溶液が高アルカリ溶液に含まれることが当業者によく知られた技術常識であったとしても、本件発明14が、上記4.(2)ア?ウで検討したとおり、引用発明1-2、引用発明2-2または引用発明3-2のいずれかと、引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでない以上、本件発明14を引用する本件発明15についても、同様に、引用例1、引用例2または引用例3のいずれかと、引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(3)本件発明16?17と各引用発明について
ア 本件発明16と引用発明1-2について
本件発明16と引用発明1-2を対比すると、外層と内層からなる基材と所定の接着剤層を有する包材である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)アで摘示した相違点1?相違点3の点で相違するのに加えて、以下の点でも相違している。

<相違点13>
包材により包装される対象について、本件発明14は、「アルコール含有溶液用包材」であるのに対して、引用発明1-2には、明記されていない点。

確かに、上記相違点13に関し、引用例4(上記2.(4-2))には、「前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(内側層)(3)は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させる」ことが、引用例5(上記2.(5-2))には、「耐電解液性、耐フッ酸性、耐水性に優れたリチウム電池用包材およびその製造方法が実現できる。」ことが、それぞれ記載され、これらのことから、この分野における積層体が耐薬品性を有していることは、当業者によく知られたことといえるが、当該相違点1?相違点3に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明16についても、引用発明1-2(引用例1)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件発明16と引用発明2-2について
本件発明16と引用発明2-2を対比すると、外層と内層からなる基材と所定の接着剤層を有する包材である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)イで摘示した相違点4?相違点7の点で相違するのに加えて、上記4.(3)アの相違点13の点でも相違している。
確かに、引用例4及び引用例5には、上記4.(3)アで指摘した点が記載されており、そのことから、この分野における積層体が耐薬品性を有していることは、当業者によく知られたことといえるが、当該相違点4?相違点7に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明16についても、引用発明2-2(引用例2)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ウ 本件発明16と引用発明3-2について
本件発明16と引用発明3-2を対比すると、外層と内層からなる基材と所定の接着剤層を有する包材である点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)ウで摘示した相違点8?相違点10の点で相違するのに加えて、上記4.(3)アの相違点13の点でも相違している。
確かに、引用例4及び引用例5には、上記4.(3)アで指摘した点が記載されており、そのことから、この分野における積層体が耐薬品性を有していることは、当業者によく知られたことといえるが、当該相違点8?相違点10に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記3.(2)エで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明14についても、引用発明3-2(引用例3)及び引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

エ 本件発明17について
本件発明17は、本件発明16を引用し、包材と、この包材に包装されるアルコール含有溶液とを備える包装体の発明が記載されている。
しかし、引用例4?5に記載されているように、前記のような包材が耐薬品性を有していることが当業者によく知られた技術常識であったとしても、本件発明16が、上記4.(3)ア?ウで検討したとおり、引用発明1-2、引用発明2-2または引用発明3-2のいずれかと、引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでない以上、本件発明16を引用する本件発明17についても、同様に、引用例1、引用例2または引用例3のいずれかと、引用例4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(4)小括
上記のとおり、本件発明12?17は、引用例1、引用例2又は引用例3のいずれかと、引用例4?引用例5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

5.取消理由3について
取消理由3は、本件発明の課題(本件発明明細書【0009】)に関連する「変性オレフィン重合体(A)」の「接着強度」について、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明で特定された「変性オレフィン重合体(A)」の場合についてまで、本件発明の課題を解決できるものとして当業者が認識できるとはいえないから、サポート要件を満たさないというものであった。
しかしながら、上記第2で判断したとおり本件訂正請求が認められた結果、本件発明では、本件発明の「変性オレフィン重合体(A)」の「接着強度」に影響を与える、プロピレン/1-ブテン共重合体(含有割合67?78モル%/33?22モル%)が無水マレイン酸で変性されたこと、所定の「融解熱」及び「融点」、「重量平均分子量」、「50℃における半結晶化時間」の物性を有する変性オレフィン重合体を用いること等が特定されたことにより、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できるものとなった。
よって、本件発明の特許請求の範囲は、本件明細書の発明の詳細な説明の課題を解決できると当業者が認識できるように発明が記載されているから、サポート要件を満たしている。
したがって、本件発明1、6、9?17の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

6.申立理由1について
(1)本件発明12?13について
ア 本件発明12と引用発明1-2について
本件発明12と引用発明1-2を対比すると、基材と所定の接着剤層を有する点で一致し、接着剤組成物について、上記3.(2)アで摘示した相違点1?相違点3の点で相違するのに加えて、上記4.(1)アで摘示した相違点11の点でも相違している。
しかしながら、これらの相違点については、既に上記4.(1)アで検討したとおりであり、本件発明12についても、引用発明1-2(引用例1)及び引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件発明13について
本件発明13は、本件発明12を引用し、さらに、前記電池ケース用包材に包装される電解液を備え、前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特定した電池が記載されている。
しかしながら、 これらの相違点については、既に上記4.(1)エで検討したとおりであるから、本件発明13についても、同様に、引用発明1-2(引用例1)及び引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)小括
上記のとおり、本件発明12?13の特許は、引用発明1-2(引用例1)及び引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

7.申立理由2について
(1)本件発明1、6、9?17について
ア 本件発明1と引用発明2-1について
本件発明1と引用発明2-1とを対比すると、上記3.(2)イで検討したとおりであり、相違点4?7の点で相違している。
しかしながら、引用発明2-1(引用例2)は、水を含有する水性樹脂組成物からなる接着剤であり、引用例1は、有機溶媒を含有する接着剤組成物、いわゆる非水系接着剤であり、接着剤の技術分野において、水を含む水系接着剤と非水系接着剤とは、当業者において技術的課題が異なるものと認識されているものであり、水系接着剤と非水系接着剤の技術要素を組み合わせることは、一般に行われることがないといえる。
また、引用例2の上記2.(2-1)?(2-8)の記載を参酌しても、引用例2には、接着剤組成物に「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることについて記載ないし示唆もない。
加えて、引用例1には、3.(2)アの相違点1の検討で検討したとおり、プロセスオイルを含有させてもよいことが記載されているとしても、それは、石油由来、すなわち、天然物由来のものであり、引用例1には、本件発明1の「炭化水素系合成油(D)」、まして、その構成成分まで特定したものについて記載も示唆もされていない。
そうすると、そもそも、引用例2と引用例1とは、接着剤における技術的課題が異なる引用例であり、これらを組み合わせる動機付けがないことに加え、引用例2及び1を組み合わせたとしても、接着剤組成物に「炭化水素系合成油(D)」を含むこと、及び当該「炭化水素系合成油(D)」が「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」であることが何ら記載も示唆もされていないことから、これらの構成を導き出すことは到底できない。
さらに、接着剤組成物において、「エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体」を「炭化水素系合成油」として使用することが当業者における技術常識であるという根拠に足る事実を認めることもできない。
そして、本件発明1の効果は、本件特許明細書(【0218】の【表1】)の実施例3?4に本件発明1に含まれる接着剤組成物を硬化させた場合、「炭化水素系合成油(D)」を含まないものよりも、接着強度が向上することが示されている。
そうすると、本件発明1は、引用例2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

イ 本件発明6について
本件発明6は、本件発明1を直接引用し、「前記無水マレイン酸の含有割合」を特定している。
しかしながら、本件発明6が引用している本件発明1は、上記7.(1)アで検討したとおり、引用例2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもないことから、本件発明6についても、本件発明1と同様に、引用例2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない。

ウ 本件発明9と引用発明2-2について
本件発明9と引用発明2-2とを対比すると、上記3.(4)イで検討したとおりであり、両者は、接着剤組成物について、上記3.(2)イで摘示した相違点4?相違点7の点で相違している。
当該相違点4?相違点7についての検討は、すでに、上記7.(1)アで検討したとおりであり、本件発明9は、引用例2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

エ 本件発明10?11について
本件発明10?11は、本件発明9を直接引用し、本件発明10は、「前記接着剤層は、前記基材の一方面に直接積層されていること」を、本件発明11は、「前記基材の一方側に前記接着剤層を介して接着される被着体をさらに備えること」を、それぞれ特定している。
しかしながら、本件発明10?11が引用している本件発明9は、上記7.(1)ウで検討したとおりであるから、本件発明10?11についても、本件発明9と同様に、引用例2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

オ 本件発明12と引用発明2-2について
本件発明12と引用発明2-2を対比すると、上記4.(1)イで検討したとおりであり、両者は、接着剤組成物について、相違点4?相違点7の点で相違するのに加えて、相違点11の点でも相違している。
確かに、引用例4(上記2.(4-3))には、相違点11の所定の電池ケース用包材が記載されているが、当該相違点4?相違点7に係る本件発明1の接着剤組成物については、すでに、上記7.(1)アで検討したとおりであるから、本件発明12についても、引用例2、1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

カ 本件発明13について
本件発明13は、本件発明12を引用し、さらに、前記電池ケース用包材に包装される電解液を備え、前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特定した電池が記載されている。
しかしながら、 前記特定事項が、引用例4(上記2.(4-2))に記載されていたとしても、本件発明12が、上記7.(1)オで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明12を引用する本件発明13についても、同様に、引用例2、1及び4の記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

キ 本件発明14と引用発明2-2について
本件発明14と引用発明2-2を対比すると、上記4.(2)イで検討したとおりであり、両者は、接着剤組成物について、相違点4?相違点7の点で相違するのに加えて、相違点12の点でも相違している。
確かに、引用例4には、上記4.(2)アで指摘した点が記載されているが、当該相違点4?相違点7に係る本件発明1の接着剤組成物については、すでに、上記7.(1)アで検討したとおりであるから、本件発明14についても、引用発明2、1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ク 本件発明15について
本件発明15は、本件発明14を引用し、包材と、この包材に包装されるpH9以上の溶液とを備える包装体の発明が記載されている。
しかし、本件発明15のpH9以上の溶液が高アルカリ溶液に含まれることが当業者によく知られた技術常識であったとしても、本件発明14が、上記7.(1)キで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明14を引用する本件発明15についても、同様に、引用例2、1及び4の記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

ケ 本件発明16と引用発明2-2について
本件発明16と引用発明2-2を対比すると、上記4.(3)イで検討したとおりであり、両者は、接着剤組成物について、相違点4?相違点7の点で相違するのに加えて、相違点13の点でも相違している。
確かに、引用例4には、上記4.(3)アで指摘した点が記載されており、そのことから、この分野における積層体が耐薬品性を有していることは、当業者によく知られたことといえるが、当該相違点4?相違点7に係る本件発明1の接着剤組成物について、すでに、上記7.(1)アで検討したとおりであるから、本件発明16についても、引用発明2、1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

コ 本件発明17について
本件発明17は、本件発明16を引用し、包材と、この包材に包装されるアルコール含有溶液とを備える包装体の発明が記載されている。
しかし、前記のような包材が耐薬品性を有していることも引用例4に記載されているように、当業者によく知られた技術常識であったとしても、本件発明16が、上記7.(1)ケで検討したとおり、当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明16を引用する本件発明17についても、同様に、引用発明2、1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)小括
上記のとおり、本件発明1、6、9?17は、引用例2、1及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

8.申立理由3について
(1)引用例10を主引例とする場合について
引用例10には、上記2.(10-1)より「本発明は、上記のような問題点を解決することを目的としており、具体的には接着剤としては、塗膜のべたつきがなく、特に低温ヒートシール性に優れ、プライマー、塗料原料としては非塩素系でありながら、ポリプロピレン等のポリオレフィンと良好な密着性を有する変性プロピレン系エラストマーを含有するコーティング剤を提供する」ことを課題として、上記2.(10-2)?(10-6)より、「1-ブテンに由来する構成単位を含むプロピレン系エラストマーに、無水マレイン酸で変性した変性プロピレン系エラストマー及び当該エラストマーの物性として融解熱、融点、極限粘度等」が具体的に記載され、その使用形態として、当該変性プロピレン系エラストマーを有機溶媒に含有するコーティング剤とし、当該コーティング剤を塗布、乾燥後、加熱・加圧し、ヒートシールすることが記載されると共に、接着剤としても有用であることが記載されている。
そうすると、引用例10には、プロピレン/1-ブテンエラストマーを無水マレイン酸で変性した変性プロピレン系エラストマーが記載されているが、当該変性プロピレン系エラストマーは、塗布した後、ヒ-トシールするものであり、本件発明のように変性ポリオレフィン樹脂とポリイソシアネート化合物などと反応させる接着剤組成物ではない。
そうすると、引用例10には、接着剤として有用であることが記載されていたとしても、例えば、引用例3等で変性ポリオレフィン樹脂と多官能性イソシアネート化合物を反応させる接着剤組成物が当業者に周知であったとしても、そもそも、技術的課題が異なる引用例10と引用例3等を組み合わせる動機付けを到底見出すことができない。
また、引用例4?5及び11は、リチウム電池等の包装体に関する引用例に過ぎない。
したがって、本件発明1は、引用例10ならびに引用例3?5及び引用例11に記載された発明を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
また、本件発明6、9?17は、いずれも本件発明1を直接、あるいは間接的に引用していることから、同様に、引用例10ならびに引用例3?5及び引用例11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2)引用例1を主引例とする場合について
引用例1を主引例とする場合は、上記「3.取消理由1について」、「4.取消理由2について」及び「6.申立理由1について」で検討したとおりであり、上記8.(1)で検討した引用例10?11の点を考慮したとしても、本件発明1、6、9?17は、引用例1ならびに引用例3?5及び10?11に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないという結論に影響を与えるものではない。

(3)小括
したがって、本件発明1、6、9?17の特許は、下記引用例10に記載された発明を主引例として、上記引用例3?5及び下記引用例11に記載された事項に基づいて、あるいは、上記引用例1に記載された発明を主引例として、上記引用例3?5及び下記引用例10,11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

9.申立人Bの平成29年11月17日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)における主張について
申立人Bは、上記意見書において、本件発明1、6、9?17について、引用例1(申立人Bの甲第2号証)、引用例2(申立人Bの甲第1号証)に記載されている事項か、あるいは、引用例に記載されている事項に基づいて当業者が容易になし得る事項にすぎず、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。
しかしながら、この点は、上記3.、4.及び7.などで、既に検討したとおりであり、申立人Bの主張は、採用することができない。


第6 むすび
上記第5で検討したとおり、本件発明1、6、9?17の特許は、特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第2号または第4号に該当するものではないから、上記取消理由1?3及び上記申立理由1?3によっては、本件発明1、6、9?17の特許を取り消すことはできない。
また、本件発明2?5、7?8の特許に対する特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
さらに、他に本件発明1、6、9?17の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
接着剤、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、接着剤およびそれから形成される接着剤層を備える積層体に関する。また、本発明は、接着剤から形成される内側接着剤層を備える電池ケース用包材およびそれを備える電池に関する。また、本発明は、接着剤から形成される内側接着剤層を備える高アルカリ溶液用包材およびそれを備える包装体に関する。また、本発明は、接着剤から形成される内側接着剤層を備えるアルコール含有溶液用包材およびそれを備える包装体に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、アルミニウム箔層と、その内面に接着される熱可塑性樹脂フィルム層(内側層)と、それらの間に介在される接着剤層とを備える積層体を、リチウムイオン2次電池の包材(電池ケース用包材)として用いることが知られている。
【0004】
上記した積層体に備えられる接着剤層として、例えば、プロピレンの単独重合体またはプロピレンとエチレンとの共重合体にエチレン性不飽和カルボン酸またはその酸無水物をグラフト重合させて得られる、カルボキシル基を有する変性ポリオレフィン樹脂と、多官能イソシアネート化合物とを含有する接着剤層が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
下記特許文献1の接着剤層は、リチウムイオン2次電池の電解液との接触に起因するアルミニウム箔層と熱可塑性樹脂フィルム層との間の接着強度の経時的な低下を抑制する耐電解液性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-92703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、上記した耐電解液性のさらなる向上が要求されるとともに、アルミニウム箔層と熱可塑性樹脂フィルム層との優れた接着強度の向上も要求されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の接着剤層では、上記した要求を十分に満足することができないという不具合がある。
【0009】
本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤およびそれから形成される接着剤層を備える積層体を提供することにある。また、本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤から形成される内側接着剤層を備える電池ケース用包材およびそれを備える電池を提供することにある。また、本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤から形成される内側接着剤層を備える高アルカリ溶液用包材およびそれを備える包装体を提供することにある。また、本発明の目的は、接着強度に優れる接着剤から形成される内側接着剤層を備えるアルコール含有溶液用包材およびそれを備える包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接着剤は、炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の接着剤では、前記重合体が、プロピレンに由来する構成単位を含むことが好適である。
【0012】
また、本発明の接着剤では、前記プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、前記炭素数2?20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、40モル%以上、95モル%以下であることが好適である。
【0013】
また、本発明の組成物では、前記重合体において、前記プロピレンに由来する構成単位を除く構成単位が、すべて前記炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位であることが好適である。
【0014】
また、本発明の接着剤では、前記炭素数4?20のα-オレフィンが、1-ブテンであることが好適である。
【0015】
また、本発明の接着剤では、前記単量体の含有割合が、前記変性オレフィン重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下であることが好適である。
【0016】
また、本発明の接着剤では、前記官能基が、カルボキシル基および/または酸無水物基であることが好適である。
【0017】
また、本発明の接着剤は、炭化水素系合成油をさらに含むことが好適である。
【0018】
また、本発明の積層体は、基材と、前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層とを備え、前記接着剤層は、炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位を含む、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含む組成物を含むコーティング剤からなることを特徴としている。
【0019】
また、本発明の積層体では、前記接着剤層は、前記基材の一方面に直接積層されていることが好適である。
【0020】
また、本発明の積層体は、前記基材の一方側に前記接着剤層を介して接着される被着体をさらに備えることが好適である。
【0021】
また、本発明の電池ケース用包材は、基材と、前記基材の内側に接着される内側層と、前記基材の外側に接着される外側層と、前記基材および前記内側層の間に介在され、上記した接着剤の硬化物を含む内側接着剤層と、前記基材および前記外側層の間に介在される外側接着剤層とを備えることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の電池は、上記した電池ケース用包材と、前記電池ケース用包材に包装される電解液とを備え、前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特徴としている。
【0023】
また、本発明の高アルカリ溶液用包材は、基材と、前記基材の内側に接着される内側層と、前記基材および前記内側層の間に介在され、上記した接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴としている。
【0024】
また、本発明の包装体は、上記した高アルカリ溶液用包材と、前記高アルカリ溶液用包材に包装されるpH9以上の溶液とを備えることを特徴としている。
【0025】
また、本発明のアルコール含有溶液用包材は、基材と、前記基材の内側に接着される内側層と、前記基材および前記内側層の間に介在され、上記した接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴としている。
【0026】
また、本発明の包装体は、上記したアルコール含有溶液用包材と、前記アルコール含有溶液用包材に包装されるアルコール含有溶液とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の接着剤と、これから形成される接着剤層を備える本発明の積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体は、耐久性に優れ、接着強度の低下を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の積層体の一実施形態である電池ケース用包材の断面図を示す。
【図2】図2は、本発明の電池の一実施形態の断面図を示す。
【図3】図3は、本発明の高アルカリ溶液用包材またはアルコール含有溶液用包材の一実施形態の断面図を示す。
【図4】図4は、本発明の包装体の一実施形態の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の接着剤を調製するための組成物は、変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とを含む。
【0030】
以下、変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)とのそれぞれについて詳述する。
【0031】
1.変性オレフィン重合体(A)
変性オレフィン重合体(A)は、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体(a)が、イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体(b)によって変性されることにより得られる。
【0032】
1-1.炭素数2?20のα-オレフィンの重合体(a)
炭素数2?20のα-オレフィンの重合体(a)は、具体的には、炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位を含んでいる。
【0033】
つまり、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体(a)は、炭素数4?20のα-オレフィンからなる単独重合体か、または、炭素数4?20のα-オレフィンと炭素数2?3のα-オレフィンとからなる共重合体である。
【0034】
炭素数4?20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの直鎖状または分岐状のα-オレフィンが挙げられる。
【0035】
炭素数4?20のα-オレフィンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0036】
炭素数4?20のα-オレフィンとして、好ましくは、炭素数4?10の直鎖状のオレフィン、より好ましくは、炭素数4?6の直鎖状のオレフィン、さらに好ましくは、1-ブテンが挙げられる。炭素数4?20のα-オレフィンとして1-ブテンを用いれば、良好な溶剤溶解性と優れた樹脂強度とを両立することができる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0037】
炭素数2?20のα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、上記した炭素数4?20のα-オレフィンが挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0038】
炭素数2?20のα-オレフィンとして、好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテンが挙げられ、より好ましくは、プロピレンおよび1-ブテンの併用が挙げられる。
【0039】
炭素数2?20のα-オレフィンとして、具体的には、例えば、炭素数4?20のα-オレフィンから選ばれる1種以上と、炭素数2?3のα-オレフィンから選ばれる1種以上との共重合体、例えば、炭素数4?20のα-オレフィンから選ばれる1種以上の単独重合体または共重合体などが挙げられる。好ましくは、共重合体が挙げられ、より好ましくは、炭素数4?20のα-オレフィンから選ばれる1種以上のα-オレフィンと、エチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体が挙げられ、さらに好ましくは、1-ブテンとプロピレンとの共重合体が挙げられる。1-ブテンとプロピレンとの共重合体であれば、良好な溶剤溶解性と優れた樹脂強度とを両立することができる。
【0040】
共重合体としては、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体が挙げられる。好ましくは、ランダム共重合体が挙げられる。
【0041】
炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位の含有割合は、炭素数2?20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上、より好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、30モル%以上であり、また、例えば、100モル%以下、好ましくは、60モル%以下、より好ましくは、さらに好ましくは、50モル%以下、とりわけ好ましくは、40モル%以下である。上記含有割合が上記上限以下であれば、優れた樹脂強度を担保することができる。一方、上記含有割合が上記下限以上であれば、優れた溶剤溶解性を担保することができる。
【0042】
なお、炭素数2?20のα-オレフィンの重合体は、炭素数2?20(炭素数4?20を含む)のα-オレフィンに由来する構成単位を必須の構成単位として含み、必要により、α-オレフィン以外の不飽和単量体(他の不飽和単量体という。)に由来する構成単位を任意の構成単位として含むこともできる。他の不飽和単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどの共役ポリエン類や、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エトリデン-2ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、2,5-ノルボナジエンなどの非共役ポリエン類が挙げられる。
【0043】
一方、重合体において、炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位を除く構成単位としては、好ましくは、すべて炭素数2?3のα-オレフィンに由来する構成単位、より好ましくは、すべてプロピレンに由来する構成単位が挙げられる。
【0044】
換言すれば、重合体において、炭素数2?3のα-オレフィン(好ましくは、プロピレン)に由来する構成単位を除く構成単位が、すべて炭素数4?20のα-オレフィンに由来する構成単位である。好ましくは、重合体が、炭素数4?20のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種と、炭素数2?3のα-オレフィン(具体的には、プロピレン)との共重合体であり、かつ、上記した他の不飽和単量体に由来する構成成分を含まない。
【0045】
この場合には、炭素数2?3のα-オレフィン(好ましくは、プロピレン)に由来する構成単位の含有割合は、炭素数2?20のα-オレフィンに由来する構成単位100モル%に対して、例えば、40モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、60モル%以上、さらに好ましくは、65モル%以上であり、また、例えば、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下、より好ましくは、80モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以下である。上記含有割合が上記上限以下であれば、共重合体の融点(Tm)および融解熱(ΔH)を低下させることができる。一方、上記含有割合が上記下限以上であれば、優れた樹脂強度を担保することができる。
【0046】
上記した重合体(a)は、α-オレフィンの重合体の製造に通常用いられる公知の固体状Ti触媒やメタロセン触媒などの存在下で、炭素数2?20のα-オレフィンを重合させることにより得られる。メタロセン触媒は、例えば、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドなどのメタロセン化合物と、メチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物と、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物とからなる。より具体的には、重合体(a)は、例えば、国際公開第2004/87775号パンフレットに記載されている方法などによって得られる。
【0047】
得られた重合体(a)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、例えば、10,000以上、1,000,000以下であり、また、分子量分布(分散度)(は、1以上、3以下である。なお、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)である。
【0048】
また、重合体の融点(Tm)は、例えば、120℃未満、好ましくは100℃未満である。
【0049】
1-2.イソシアネート基と反応することができる官能基を有する単量体(b)
イソシアネート基と反応することができる官能基は、活性水素を有する基であって、そのような基としては、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、下記式(1)で示される酸無水物基などが挙げられる。これら官能基は、単独使用または併用することができ、好ましく、カルボキシル基、酸無水物基、より好ましくは、酸無水物基が挙げられる。
【0050】
なお、本発明において酸無水物基という場合、当該酸無水物基の一部または全部が加水分解などを受けて二塩基酸(具体的には、ジカルボン酸)の形になっていてもよい。
【0051】
とりわけ好ましくは、官能基のすべてがカルボキシル基および/または酸無水物基、最も好ましくは、酸無水物基である。官能基がカルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物である場合(具体的には、官能基のすべてがカルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物基である場合)には、組成物から接着剤層を形成して硬化させる際に、カルボキシル基および/または酸無水物基、好ましくは、酸無水物基がイソシアネート基と効率的に反応しながら、変性ポリオレフィン重合体(A)の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する親和性を高めて、接着剤層の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する密着力をより一層向上させることができる。また、耐電解液性を向上させることができる。
:式(1)
【0052】
【化1】

【0053】
上記した官能基を有する単量体(b)としては、例えば、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、ビニルエステル化合物、および、それらの誘導体(不飽和カルボン酸無水物を除く)などが挙げられる。
【0054】
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシープロピル(メタ)アクリレート、3-クロロー2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(6-ヒドロヘキサノイルオキシ)エチルアクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、さらには、10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン1,4-ジオール、グリセリンモノアルコールなどが挙げられる。
【0055】
アミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、下式で表されるアミノ基または置換アミノ基を少なくとも1種類有するビニル系単量体が挙げられる。
【0056】
-NHR_(1)-
式中、R_(1)は、例えば、水素原子、例えば、炭素数1?12、好ましくは、炭素数1?8のアルキル基、例えば、炭素数8?12、好ましくは、6?9のシクロアルキル基である。なお、上記のアルキル基、シクロアルキル基は、さらに置換基を有してもよい。
【0057】
具体的には、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノメチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、例えば、N-ビニルジエチルアミン、N-アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体、例えば、p-アミノヘキシルコハク酸イミド、2-アミノエチルコハク酸イミドなどのイミド類が挙げられる。
【0058】
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、1分子中に重合可能な不飽和結合基およびエポキシ基を少なくとも1個以上有するモノマーが用いられる。
【0059】
このようなエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、あるいはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2、3-ジカルボン酸(ナジック酸^(TM))、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸^(TM))などの不飽和ジカルボン酸のモノグリシジルエステル(モノグリシジルエステルの場合のアルキル基の炭素数1?12)、p-スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどが挙げられる。
【0060】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0061】
不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0062】
誘導体としては、例えば、塩化マレニル、マレニルイミド、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピルなどの、不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。
【0063】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどが挙げられる。
【0064】
単量体(b)は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0065】
単量体(b)として、好ましくは、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物、より好ましくは、不飽和カルボン酸無水物、さらに好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。また、好ましくは、単量体(b)のすべてが不飽和カルボン酸無水物、より好ましくは、単量体(b)のすべてが無水マレイン酸である。
【0066】
単量体(b)が不飽和カルボン酸無水物(具体的には、無水マレイン酸)である場合(好ましくは、単量体(b)のすべてが不飽和カルボン酸無水物(具体的には、無水マレイン酸)である)場合には、組成物から接着剤層を形成して硬化させる際に、不飽和カルボン酸無水物(より具体的には、無水マレイン酸)がポリイソシアネートと反応しながら、変性ポリオレフィン重合体(A)の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する親和性を高めて、接着剤層の基材(例えば、アルミニウム箔など)に対する密着力をより一層向上させることができる。
【0067】
なお、本発明において、例えば、上記した官能基を有する単量体(b)と、上記した官能基を有しない単量体(b’)(例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどのエチレン性不飽和化合物など)とを併用して、重合体(a)を変性することもできる。好ましくは、官能基を有しない単量体(b’)を併用せず、上記した官能基を有する単量体(b)のみによって、重合体(a)を変性する。このように変性すれば、重合体(a)が、官能基を有しない単量体(b’)が存在することなく、官能基を有する単量体(b)で変性される。これによって、変性オレフィン重合体(A)とポリイソシアネートとを効率的に反応させることができ、そのため、耐電解液性を向上させることができる。
【0068】
1-3.変性オレフィン重合体(A)の調製
変性オレフィン重合体(A)を調製するには、単量体(b)を、重合体(a)の存在下で重合反応させればよく、これによって、重合体(a)が、単量体(b)またはその重合体によって、変性される。具体的には、変性オレフィン重合体(A)を調製するには、下記(1)?(4)の方法が挙げられる。
(1)重合体(a)を有機溶媒に溶解し、単量体(b)およびラジカル重合開始剤を添加して加熱、攪拌することにより、重合体(a)を単量体(b)で変性して反応させる方法。
(2)重合体(a)を加熱溶融して、得られる溶融物に単量体(b)およびラジカル重合開始剤を添加し、攪拌することにより、重合体(a)を単量体(b)で変性して反応させる方法。
(3)重合体(a)、単量体(b)およびラジカル重合開始剤を予め混合し、得られる混合物を押出機に供給して加熱混練しながら、重合体(a)を単量体(b)で変性して反応させる方法。
(4)重合体(a)に、単量体(b)およびラジカル重合開始剤を有機溶媒に溶解してなる溶液を含浸させた後、重合体(a)が溶解しない最高の温度まで加熱することにより、重合体(a)を単量体(b)で変性して反応させる方法。
【0069】
単量体(b)の配合割合は、最終的に必要な単量体(b)の変性量が得られるように配合すれば特に制限はなく、重合体(a)および単量体(b)の総量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、4質量部以下、とりわけ好ましくは、2質量部以下である。
【0070】
反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、また、例えば、200℃以下であり、反応時間は、例えば、1分?10時間程度である。
【0071】
反応方式としては、回分式、連続式が挙げられ、変性反応を均一に実施するためには、好ましくは、回分式が挙げられる。
【0072】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機パーオキシド、有機パーエステルなどが挙げられる。
【0073】
有機パーオキシドとしては、例えば、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジクロルベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシド)ヘキサン、tert-ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。また、有機パーエステルとしては、例えば、tert-ブチルパーアセテート、tert-ブチルパーフェニルアセテート、tert-ブチルパーイソブチレート、tert-ブチルパーsec-オクトエート、tert-ブチルパーピバレート、クミルパーピバレート、tert-ブチルパージエチルアセテートなどが挙げられる。さらに、ラジカル重合開始剤として、その他のアゾ化合物、例えば、アゾビス-イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチルニトリルも挙げられる。
【0074】
ラジカル重合開始剤のうち、好ましくは、有機パーオキシド、より好ましくは、ジクミルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,4-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキシドが挙げられる。
【0075】
ラジカル重合開始剤の配合割合は、変性オレフィン重合体(A)100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、10質量部以下である。
【0076】
また、変性オレフィン重合体(A)の調製は、上記(1)?(4)の方法において、溶媒の存在下、あるいは、無溶媒で実施する。
【0077】
溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンなどのケトン、例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブなどのセルソルブ、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチルなどのエステル、例えば、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素などが挙げられる。これらの中では、好ましくは、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ケトンが挙げられる。溶媒は、1種単独あるいは2種以上併用して使用することができる。
【0078】
α-オレフィンの重合体(a)の変性を溶媒の存在下で実施する場合には、得られた変性オレフィン重合体(A)は、その溶液、具体的には、ワニスとして調製される。
【0079】
1-4.変性オレフィン重合体(A)の物性
変性オレフィン重合体(A)の、GPCによって測定され、標準ポリスチレンで換算される重量平均分子量(Mw)は、例えば、1×10^(4)以上、好ましくは、2×10^(4)以上、より好ましくは、3×10^(4)以上であり、また、例えば、1000×10^(4)以下、好ましくは、100×10^(4)以下、より好ましくは、50×10^(4)以下である。
【0080】
重量平均分子量が上記下限以上であると、塗膜の強度を十分高くすることができ、また密着強度が良好となる。一方、重量平均分子量が上記上限以下であれば、溶剤への溶解性が良好であり、固化、析出が起こりにくい。とりわけ、変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量が50×10^(4)以下であれば、特に、接着性能が優れる傾向にある。
【0081】
変性オレフィン重合体(A)の融点(Tm)は、例えば、120℃未満、好ましくは100℃未満、より好ましくは、90℃以下、さらに好ましくは、80℃以下であり、また、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上である。
【0082】
変性オレフィン重合体(A)の融点(Tm)は、JIS K 7122に従って、差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/minで30℃から180℃まで昇温後、3分間その温度で保持し、次いで、10℃/minで0℃まで降温し、3分間その温度で保持し、次いで、再度10℃/minで150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に準じて求められる。
【0083】
変性オレフィン重合体(A)の融点(Tm)が上記上限以下であれば、組成物を塗布後、低温で養生して接着剤層を形成しても(後述)、接着強度の低下を防止することができる。また、変性オレフィン重合体(A)の融点(Tm)が上記下限以上であれば、優れた樹脂強度を担保することができる。
【0084】
変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)は、0J/g以上、好ましくは、3J/g以上、より好ましくは、5J/g以上であり、また、50J/g以下、好ましくは、40J/g以下、より好ましくは、30J/g以下である。
【0085】
変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)が上記上限以下であれば、組成物からなるコーティング剤(後述)を塗布後、低温で養生して接着剤層を形成しても(後述)、接着強度の低下を防止することができる。一方、変性オレフィン重合体(A)の融解熱(ΔH)が上記下限以上であれば、組成物からなるコーティング剤(後述)を基剤に塗布し、その後、塗膜を形成する際、塗膜に優れた強度を付与することができる。
【0086】
融解熱(ΔH)は、JIS K 7122に従って、示差走査熱量測定(DSC測定)によって求められ、具体的には、10℃/分の昇温過程で得られるサーモグラムのピーク面積から算出される。その測定に際して、本発明においては、測定前の熱履歴をキャンセルする目的で、測定前に10℃/分で180℃に昇温し、その温度で3分保持し、次いで10℃/分で0℃まで降温し、その温度で3分間保持した後に、融解熱(ΔH)を測定する。
【0087】
また、変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間は、例えば、100秒以上、好ましくは、300秒以上、より好ましくは、500秒以上、さらに好ましくは、700秒以上である。また、変性オレフィン重合体(A)の好ましい範囲には、実質的に結晶化が起こらず、すなわち半結晶化時間の値が大きすぎて求められない、すなわち半結晶化時間が無限大となるような場合も含まれる。
【0088】
半結晶化時間は、示差走査熱量計による等温結晶化測定によって求められ、等温結晶化過程でのDSC熱量曲線とベースラインとの間の面積を全熱量とした場合の、50%熱量に到達した時間を意味する〔新高分子実験講座8 高分子の物性(共立出版社)参照〕。
【0089】
変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間が上記下限以上であれば、組成物を接着剤として用いる場合に、変性オレフィン重合体(A)が基材や被着体の表面の凹凸に浸入しながら、または、浸入した後に、ポリイソシアネート(B)と反応することができる(アンカー効果)。そのため、このような接着剤のアンカー効果に基づいて、接着剤層の接着強度をより一層向上させることができる。
【0090】
なお、変性オレフィン重合体(A)の40℃における動粘度は、好ましくは、500000cStを超える。ここで、動粘度が500000cStを超える、とは流動性が低く動粘度が測定できないような場合を含む概念である。
【0091】
また、変性オレフィン重合体(A)における単量体(b)の変性量(導入量)、すなわち、変性オレフィン重合体(A)において単量体(b)に由来する構成単位の含有割合は、変性オレフィン重合体(A)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、4質量部以下、とりわけ好ましくは、2質量部以下である。
【0092】
単量体(b)の含有割合を上記の範囲にすることにより変性オレフィン重合体(A)とポリイソシアネート(B)とを効率的に反応させることができ、そのため、耐電解液性を向上させることができる。一方、単量体(b)の配合割合が上記上限を超えると極性基(官能基)の量が多くなって耐電解液性が低下する場合がある。また、単量体(b)の配合割合が上記下限未満だと、基材との接着性が確保できず、接着強度が低下し、耐電解液性が低下する場合がある。
【0093】
上記した変性量は、例えば、^(1)H-NMR測定などの公知の手段で設定される。具体的な^(1)H-NMR測定条件としては、以下の様な条件を例示できる。
【0094】
すなわち、日本電子社製ECX400型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核は^(1)H(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件である。基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素を0ppmとするが、例えば、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素に由来するピークを7.10ppmとしてケミカルシフトの基準値とすることでも同様の結果を得ることができる。単量体(b)に由来する^(1)Hなどのピークは、常法によりアサインできる。
【0095】
なお、変性オレフィン重合体(A)に導入された官能基の量の目安となる量として、単量体(b)として、不飽和カルボン酸およびその無水物などを用いた場合には、例えば、酸価を用いることも可能である。
【0096】
変性オレフィン重合体(A)の酸価は、例えば、0.1mgKOH/g以上、好ましくは、0.5mgKOH/g以上であり、また、例えば、100mgKOH/g以下、好ましくは、30mgKOH/g以下、より好ましくは、10mgKOH/g以下である。
【0097】
ここで、酸価の測定方法としては、以下のものが挙げられる。
【0098】
つまり、基本操作はJIS K-2501-2003に準ずる。具体的には、変性オレフィン重合体約10gを正確に測り取り、200mLトールビーカーに投入する。そこに滴定溶剤として、キシレンとジメチルホルムアミドとを1:1(体積比)で混合してなる混合溶媒を150mL添加する。指示薬として1w/v%のフェノールフタレインエタノール溶液(和光純薬工業社製)を数滴加え、液温を80℃に加熱して、試料を溶解させる。液温が80℃で一定になった後、0.1mol/Lの水酸化カリウムの2-プロパノール溶液(和光純薬工業社製)を用いて滴定を行い、滴定量から酸価を求める。
【0099】
計算式は
酸価(mgKOH/g)=(EP1-BL1)×FA1×C1/SIZE
である。
【0100】
ここで、上記計算式において、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL:0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。
【0101】
この測定を3回繰り返して平均値を酸価とする。
【0102】
変性オレフィン重合体(A)は、1種単独使用することができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0103】
なお、変性オレフィン重合体(A)を、上記(i)の方法で調製した変性オレフィン重合体(A)と、変性前の炭素数2?20のα-オレフィンの重合体(a)(つまり、未変性の重合体(a))とを含む組成物、つまり、変性オレフィン重合体組成物として調製することもできる。
【0104】
未変性の重合体(a)は、変性オレフィン重合体組成物100質量部、つまり、変性オレフィン重合体(A)と、未変性の重合体(a)との合計100質量部に対して、変性オレフィン重合体(A)の配合割合が、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、例えば、15質量部以下、好ましくは、10質量部以下となるように、変性オレフィン重合体(A)に混合される。
【0105】
変性オレフィン重合体組成物の物性は、全体として、上記した変性オレフィン重合体(A)の物性と同様となる。
【0106】
2.ポリイソシアネート(B)
ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート変性体などが挙げられる。
【0107】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0108】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0109】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0110】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0111】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H_(12)MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H_(6)XDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0112】
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0113】
ポリイソシアネート変性体としては、平均官能基数が2を超過し、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、モノオール(例えば、オクタデカノールなど)との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ポリイソシアネート単量体と低分子量ポリオール(例えば、3価アルコールなど)との反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0114】
モノオールとしては、例えば、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール(ラウリルアルコール)、トリデシルアルコール、テトラデシルアルール(ミリスチルアルコール)、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール(セチルアルコール)、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール(ステアリルアルコール、オクタデカノール)、ノナデシルアルコール、およびそれらの異性体(2-メチル-1-プロパノール(iso-ブタノール)を含む)、さらには、その他のアルカノール(C20?50アルコール)や、例えば、オレイルアルコールなどのアルケニルアルコール、例えば、オクタジエノールなどのアルカジエノール、例えば、ポリエチレンブチレンモノオールなどの脂肪族モノオールが挙げられる。また、モノオールとして、例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどの脂環族モノオール、例えば、ベンジルアルコールなどの芳香脂肪族モノオールなども挙げられる。
【0115】
さらに、ポリイソシアネート変性体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
【0116】
これらポリイソシアネート変性体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0117】
これらポリイソシアネート(B)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0118】
3.炭化水素系合成油(D)
組成物は、さらに、炭化水素系合成油(D)を含むこともできる。
【0119】
炭化水素系合成油(D)は、例えば、炭素数2?20のオレフィンの重合体が挙げられる。その中でも、好ましくは、炭素数2?20のオレフィンを単独重合させて得られるオリゴマー、または、2種以上のこれらのオレフィンの任意の混合物を共重合させて得られるオリゴマーが挙げられる。上記炭素数2?20のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、1-デセン、および1-ドデセンなどが用いられる。
【0120】
ここで、炭化水素系合成油(D)として、エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体を好適に用いることができる。この場合、エチレンに由来する構成単位量は、エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位との合計100モル%に対し、例えば、30モル%以上、好ましくは、40モル%以上であり、例えば、70モル%以下、好ましくは、60モル%以下である。
【0121】
炭化水素系合成油(D)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
炭化水素系合成油(D)は40℃における動粘度が、例えば、30cSt以上、好ましくは、300cSt以上、より好ましくは、5,000cSt以上であり、また、例えば、さらに好ましくは、500,000cSt以下、好ましくは、400,000cSt以下、より好ましくは、300,000cSt以下である。
【0123】
4.組成物の調製方法
組成物を調製するには、上記した変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)と、必要により配合される炭化水素系合成油(D)とを、イソシアネート基の、イソシアネート基と反応することができる官能基に対する当量比(NCO/官能基)が、例えば、0.01以上、好ましくは、0.1以上となり、また、例えば、50以下、好ましくは、30以下、より好ましくは、1.7以下、さらに好ましくは、0.99以下となるように、配合する。
【0124】
イソシアネートインデックスは、後の実施例にて詳述する。
【0125】
上記した変性オレフィン重合体(A)と、ポリイソシアネート(B)との比((A)/(B))は、上記したイソシアネートインデックスとなるように適宜選択され、具体的には、質量換算で、例えば、80/1以下、好ましくは、60/1以下であり、また、例えば、1/10以上、好ましくは、1/5以上である。
【0126】
また、必要に配合される炭化水素系合成油(D)の配合割合は、好ましくは、変性オレフィン重合体(A)と炭化水素系合成油(D)との合計100質量%に対し、例えば、1質量%以上、80質量%以下である。
【0127】
また、組成物、あるいは、それを構成する各成分、具体的には、変性オレフィン重合体(A)、ポリイソシアネート(B)、炭化水素系合成油(D)には、必要に応じて、そのいずれかまたは全てに、エポキシ樹脂、硬化触媒、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤(光安定剤、熱安定剤を含む)、可塑剤、界面活性剤、顔料、揺変剤、増粘剤、粘着付与剤、表面調整剤、沈降防止剤、耐候剤、顔料分散剤、帯電防止剤、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。
【0128】
また、上記調製において、上記した溶媒を配合して、ワニスとして調製することもできる。
【0129】
溶媒としては、上記と同様の溶媒が挙げられ、好ましくは、トルエン、メチルシクロヘキサン/メチルイソブチルケトン混合溶剤、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶剤、シクロヘキサン/メチルエチルケトン混合溶剤、セルソルブ類/シクロヘキサノン混合溶剤が挙げられる。なお、水を分散媒として用いることもできる。
【0130】
好ましくは、組成物を、加工性の点から、溶媒を配合してワニスとして使用する。より好ましくは、組成物を溶媒に溶解させて使用する。
【0131】
溶媒は、ワニス100質量部に対する不揮発分の含有割合が、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上となり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下となるように、組成物に配合される。
【0132】
なお、変性オレフィン重合体(A)はワニスとして調製されている場合には、ワニスを構成する溶媒をそのまま、上記調製のために溶媒として用いることもできる。
【0133】
5.コーティング剤
このようにして調製される組成物を、コーティング剤として用いることができる。
【0134】
このコーティング剤は、プライマーや塗料、ホットメルト接着剤、光学透明両面テープとして用いるのに好適である。また、該コーティング剤から得られる層を少なくとも1層有している積層体は、加飾フィルムとして好適に用いられる。
【0135】
また、コーティング剤として使用する際、必要により、添加剤を適宜の割合で添加することもできる。添加剤としては、例えば、酸化チタン(ルチル型)、酸化亜鉛、カーボンブラックなどの顔料、例えば、揺変剤、例えば、増粘剤、例えば、ロジン樹脂・テルペン樹脂などの粘着付与剤、さらには、消泡剤、表面調整剤、沈降防止剤、酸化防止剤、耐候剤、熱安定剤、光安定剤、顔料分散剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0136】
コーティング剤から塗膜を形成する方法としては特に制限がなく、公知の方法で実施ことができる。例えば、ダイコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法およびディッピングコート法などの塗布方法で、コーティング剤を基材に塗布した後、自然乾燥あるいは加熱強制乾燥など、適宜の方法によって乾燥させる。これによって、塗膜を得る。
【0137】
乾燥後の塗膜の厚みは、例えば、0.2μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0138】
コーティング剤から形成される塗膜を少なくとも1層有している積層体を加飾フィルムとして用いる場合、公知の意匠性を有するフィルムと組み合わせて用いることができる。例えば、予め印刷・塗装・蒸着などで加飾されたフィルム、もしくはこれらの組み合わせによって加飾されたフィルムを意匠層とし、これと、コーティング剤から形成される塗膜とを積層させる。
【0139】
ここで、意匠層を有するフィルムとしては、アクリルフィルム、PETフィルム、ポリカーボネートフィルム、COC(環状オレフィンコポリマー)フィルム、塩化ビニルフィルム、ABSなどの熱可塑性フィルムが挙げられる。
【0140】
コーティング剤から形成される塗膜を少なくとも1層有している積層体を加飾フィルムとして用いる場合、加飾フィルムの製造方法としては特に制限はなく、意匠層を有する加飾フィルムの被着体と対向する面に、塗膜を転写によりドライラミネートする方法、塗膜に印刷などで直接意匠層を設ける方法、上記フィルムにクリア層、別の塗料層、塗膜を順次印刷などで形成していく方法などが挙げられる。
【0141】
コーティング剤から形成される塗膜を少なくとも1層有している積層体を加飾フィルムとして用いる場合、例えば、真空成形法、圧空真空成形法などの既存の真空成形方法、インサート成形法およびインモールド成形法、また、特許第3733564号に記載の「真空成形装置」によるTOM工法などを利用することで、複雑な三次元構造を有する成形体に加飾を施すことができる。加飾フィルムの被着体としては、例えば、PPなどのポリオレフィン材料、ナイロンなどのポリアミド樹脂、例えば、ABS、PC、PET、PPS、アクリル樹脂などの極性樹脂、例えば、ED鋼板、Mg合金、SUS(ステンレス)、アルミニウム、アルミニウム合金、ガラスなどの無機材料が挙げられる。また、上記樹脂と上記無機材料が複合化された被着体も挙げられる。当該加飾フィルムにおいては、例えば、コーティング剤から得られる塗膜が、被着体と接着する。
【0142】
上記した加飾方法によって得られる成形体としては、例えば、自動車内外装用部材、例えば、AV機器などの各種フロントパネル、例えば、ボタン、エンブレムなどの表面化粧材、例えば、携帯電話、カメラなど情報家電の筐体、ハウジング、表示窓、ボタンなどの各種部品、例えば、家具用外装材、例えば、浴室、壁面、天井、床などの建築用内装材、例えば、サイディングなどの外壁、塀、屋根、門扉、破風板などの建築用外装材、例えば、窓枠、扉、手すり、敷居、鴨居などの家具類の表面化粧材、例えば、各種ディスプレイ、レンズ、ミラー、ゴーグル、窓ガラスなどの光学部材、例えば、電車、航空機、船舶などの自動車以外の各種乗り物の内外装用部材、例えば、および瓶、化粧品容器、小物入れなどの各種包装容器、包装材料、景品、小物などの雑貨などのその他各種用途などが挙げられる。
【0143】
6.コーティング剤の接着剤としての使用
また、コーティング剤は、接着剤層を形成するための本発明の接着剤として用いられる。
【0144】
コーティング剤を接着剤として用いる場合、必要に応じて、例えば、エポキシ樹脂、硬化触媒、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、充填剤、有機または無機微粒子、防黴剤、シランカップリング剤などの添加剤を配合してもよい。
【0145】
以下、接着剤としての使用をする際の具体例を説明する。すなわち、具体的には、接着剤層は、基材の表面(一方側面)に積層されており、この基材と接着剤層とから積層体(例えば、接着シート)を形成する。
【0146】
基材としては、例えば、PPなどのポリオレフィン材料からなるフィルム、例えば、ABS、PC、PET、PPS、ポリアミド、アクリル樹脂などの極性樹脂からなるフィルム、例えば、ED鋼板、Mg合金、SUS(ステンレス)、アルミニウム、アルミニウム合金からなる金属箔、より好ましくは、金属箔、さらに好ましくは、アルミニウム箔が挙げられる。基材の厚みは、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0147】
接着剤層を基材の表面に積層するには、例えば、上記した塗布方法によって、コーティング剤を塗布する。その後、コーティング剤が溶剤を含む場合には、塗布されたコーティング剤を、加熱により、溶媒を留去する。これによって、接着剤層を形成する。
【0148】
接着剤層の厚みは、例えば、0.2μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0149】
これによって、基材および接着剤層を備える積層体を製造する。
【0150】
さらに、上記した接着剤層の表面(一方側面)に被着体を設けて、それらからなる積層体を構成することもできる。
【0151】
被着体としては、例えば、PPなどのポリオレフィン材料、例えば、ABS、PC、PET、PPS、ポリアミド、アクリル樹脂などの極性樹脂、例えば、ED鋼板、Mg合金、SUS(ステンレス)、アルミニウム、アルミニウム合金、ガラスなどの無機材料が挙げられる。また、上記樹脂と上記無機材料が複合化された被着体も挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン材料からなるフィルムや成形体が挙げられる。なお、被着体の接着面(接着剤層と接触する面)には、コロナ処理などの処理を施すこともできる。
【0152】
接着剤層の表面に被着体を設けるには、被着体を接着剤層の表面に接触させる。これによって、基材と被着体との間に接着剤層が介在される。つまり、基材と被着体と接着剤層とを備える積層体を製造する。
【0153】
その後、積層体を加熱することにより、接着剤層を硬化させる。これにより、接着剤層によって、基材と被着体とが互いに接着する。
【0154】
加熱条件としては、適宜の条件が選択され、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下で、また、例えば、40℃以上の低温で、例えば、1日間以上、好ましくは、3日間以上で、例えば、7日間以下の長時間、養生する方法(低温養生法)、あるいは、100℃以上、好ましくは、120℃以上で、また、例えば、200℃以下の高温で、例えば、0.1秒間以上、好ましくは、0.5秒間以上で、また、例えば、60秒間以下の短時間、熱圧着する方法(高温熱圧着法)が選択される。高温熱圧着法における圧力は、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、0.2MPa以上であり、また、2MPa以下である。
【0155】
好ましくは、低温養生法が選択される。
【0156】
上記した加熱によって、接着剤層が硬化する。つまり、変性オレフィン重合体(A)の官能基と、ポリイソシアネート(B)のイソシアネート基とが反応する。これによって、基材と被着体とが接着剤層を介して強固に接着される。接着剤層の厚みは、例えば、0.2μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、20μm以下である。
7. 積層体の用途
このような積層体は、接着強度および耐電解液性に優れる電池ケース用包材や、接着強度および耐アルカリ性に優れる高アルカリ溶液用包材、さらには、接着強度および耐アルコール性に優れるアルコール含有溶液用包材として好適に用いられる。
7-1.電池ケース用包材および電池
次に、電池ケース用包材について図1を参照して説明する。なお、図1において、紙面上側を外側、紙面下側を内側として説明する。
【0157】
この電池ケース用包材1は、図1に示すように、基材2と、基材2の内側に接着される内側層3と、基材2の外側に接着される外側層4と、基材2および内側層3の間に介在される内側接着剤層5と、基材2および外側層4の間に介在される外側接着剤層6とを備えている。
【0158】
基材2は、上記した基材に相当し、特に限定されるものではないが、好ましくは金属箔、さらに好ましくは、アルミニウム箔、SUS箔が使用される。また、基材表面は耐食性の観点から化成処理を施してもよい。
【0159】
内側層3は、上記した被着体に相当し、特に限定されるものではないが、電池ケース用包材に耐薬品性、ヒートシール性を付与するために、好ましくは、未延伸ポリプロピレンフィルムなどの熱可塑性のポリオレフィンフィルムなどが使用される。
【0160】
内側接着剤層5は、上記した接着剤層に相当する。
【0161】
外側層4は、特に限定されないが、電池製造時のヒートシール工程における耐熱性や加工時の成形性、耐ピンホール性、流通時の絶縁性を付与するために、好ましくは、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの延伸もしくは未延伸フィルムを単層または2層以上積層した多層フィルムが使用される。
【0162】
電池ケース用包材1の厚みは、例えば、60?160μmである。
【0163】
そして、本発明の接着剤は、少なくとも内側接着剤層5で用いられていればよく、外側接着剤層6の接着剤は、外側層4と基材2との接着性を確保できれば、本発明の接着剤のみならず、ドライラミネート用接着剤、無溶剤型接着剤など、他の任意の接着剤を用いることができる。
【0164】
次に、上記した接着剤が内側接着剤層に用いられた電池ケース用包材を備える電池を図2を参照して説明する。
【0165】
図2に示すように、電池10は、電池ケース用包材1と、電池ケース用包材1に包装される電解液11とを備える。また、電池10は、電池ケース用包材1内に収容される正極17、負極18、および、セパレータ19を備える。
【0166】
電池ケース用包材1は、電池ケース用包材1における内側層3の内面に次に説明する電解液11が接触するように、袋状に構成されている。具体的には、電池ケース用包材1は、内側層3が電解液11に接触するように、電解液11を包装している。
【0167】
電解液11は、特に限定されず、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネート、6フッ化リン酸リチウムなどのリチウム塩などを含有する。
【0168】
正極17および負極18は、電解液11に接触するように、かつ、互いに間隔を隔てて対向配置されている。セパレータ19は、正極17および負極18によって挟まれるように配置されている。
【0169】
そして、上記した電池10は、例えば、リチウムイオン2次電池として用いられ、その場合には、電池ケース用包材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられる。
7-2.高アルカリ溶液用包材および包装体
次に、高アルカリ溶液用包材について図3を参照して説明する。なお、図3において、紙面上側を外側、紙面下側を内側として説明する。
【0170】
この高アルカリ溶液用包材7は、基材2と、基材2の内側に接着される内側層3と、基材2および内側層3の間に介在される内側接着剤層5とを備えている。
【0171】
基材2は、特に限定されず、例えば、ナイロンなどのポリアミド樹脂、PETなどのポリエステル樹脂、アルミニウム箔などの金属箔、透明蒸着PETなどのバリアフィルムなどから形成される。また、基材2がナイロンの場合、内側層3に対する接着性を向上させるために、好ましくは、表面(特に、内側接着剤層5と接触する基材2の内面)にコロナ放電やコーティングなどによる表面処理が施されている基材2を用いる。高アルカリ溶液用包材7に適用する際には、基材2の内面にコロナ処理を施すことが好ましい。コーティング剤をコートして易接着化したときは、接着強度が低下する恐れがあるからである。
【0172】
内側層3は、上記した被着体に相当し、特に限定されるものではないが、高アルカリ溶液用包材7に耐薬品性、ヒートシール性を付与するために、好ましくは、未延伸ポリプロピレンフィルム、低密度リニアポリエチレンなどの熱可塑性のポリオレフィンフィルムなどが使用される。
【0173】
内側接着剤層5は、上記した接着剤層に相当する。
【0174】
高アルカリ溶液用包材7の厚みは、例えば、30μm以上、200μm以下である。
【0175】
次に、上記した高アルカリ溶液用包材を備える包装体を図4を参照して説明する。
【0176】
図4に示すように、この包装体15は、高アルカリ溶液用包材7と、高アルカリ溶液用包材7に包装される高アルカリ溶液12とを備える。
【0177】
高アルカリ溶液用包材7は、高アルカリ溶液用包材7における内側層3の内面に次に説明する高アルカリ溶液12が接触するように、袋状に設けられている。
【0178】
高アルカリ溶液12は、pHが、例えば、9以上、好ましくは、10以上であり、また、例えば、14以下である溶液である。高アルカリ溶液としては、例えば、アルカリ洗剤や毛髪処理剤などが挙げられる。
7-3.アルコール含有溶液用包材および包装体
次に、アルコール含有溶液用包材について図3を参照して説明する。
【0179】
このアルコール含有溶液用包材8は、基材2と、基材2の内側に接着される内側層3と、基材2および内側層3の間に介在される内側接着剤層5とを備えている。
【0180】
基材2は、特に限定されず、例えば、ナイロンなどのポリアミド樹脂、PETなどのポリエステル樹脂、アルミニウム箔などの金属箔、透明蒸着PETなどのバリアフィルムなどから形成される。また、基材2がナイロンの場合、内側層3に対する接着性を向上させるために、好ましくは、表面(特に、内側接着剤層5と接触する基材2の内面)にコロナ放電やコーティングなどによる表面処理が施されている基材2を用いる。アルコール含有溶液用包材8に適用する際には、基材2の内面にコロナ処理を施すことが好ましい。コーティング剤をコートして易接着化したときは、接着強度が低下する恐れがあるからである。
【0181】
内側層3は、上記した被着体に相当し、特に限定されるものではないが、アルコール含有溶液用包材8に耐薬品性、ヒートシール性を付与するために、好ましくは、未延伸ポリプロピレンフィルム、低密度リニアポリエチレンなどの熱可塑性のポリオレフィンフィルムなどが使用される。
【0182】
内側接着剤層5は、上記した接着剤層に相当する。
【0183】
アルコール含有溶液用包材8の厚みは、例えば、30μm以上、200μm以下である。
【0184】
次に、アルコール含有溶液用包材を備える包装体を図4を参照して説明する。
【0185】
図4に示すように、この包装体15は、アルコール含有溶液用包材8と、アルコール含有溶液用包材8に包装されるアルコール含有溶液13とを備える。
【0186】
アルコール含有溶液用包材8は、アルコール含有溶液用包材8における内側層3の内面に次に説明するアルコール含有溶液13が接触するように、袋状に設けられている。
【0187】
アルコール含有溶液13に含有されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。アルコールのアルコール含有溶液13に対する含有割合は、例えば、3質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0188】
8. 実施形態の効果
上記した組成物を含むコーティング剤は、塗膜の強度に優れ、また、上記したコーティング剤からなる接着剤およびこれから形成される接着剤層を備える積層体は、耐久性に優れ、接着強度の低下を十分に抑制することができる。
【0189】
そのため、組成物を、信頼性に優れる組成物として、接着剤用途などのコーティング用途を含む各種用途に好適に用いることができる。
【0190】
例えば、図1および図2に示すように、電池ケース用包材1および電池10において、基材2と内側層3との接着強度および耐電解液性に優れる。
【0191】
具体的には、図1に示すように、電池ケース用包材1における内側接着剤層5は、優れた耐電解液性を有する。つまり、電池ケース用包材1を長期間にわたって使用しても、とりわけ、内側接着剤層5の接着強度の低下を有効に防止することができる。この電池ケース用包材1は、長期信頼性に優れる。
【0192】
上記した組成物は、電池ケース用包材に限らず、電解液のような高極性溶媒への耐性や耐アルカリ性を備え、フィルムおよび接着剤層間における優れた接着強度を有するラミネート用接着剤として使用できる。
【0193】
すなわち、図3および4に示すように、高アルカリ溶液用包材7またはアルコール含有溶液用包材8およびそれを備える包装体15において、基材2と内側層3との接着強度、および、高アルカリ溶液用包材7の耐アルカリ性またはアルコール含有溶液用包材8の耐アルコール性に優れる。
【0194】
具体的には、高アルカリ溶液用包材7またはアルコール含有溶液用包材8における内側接着剤層5は、優れた耐アルカリ性または耐アルコール性を有する。つまり、包装体15に高アルカリ溶液用包材7またはアルコール含有溶液用包材8を長期間にわたって使用しても、とりわけ、内側接着剤層5の接着強度の低下を有効に防止することができる。この高アルカリ溶液用包材7またはアルコール含有溶液用包材8およびそれを備える包装体15は、長期信頼性に優れる。
【0195】
なお、図1および図3では、内側接着剤層5を、基材2の表面(一方面)に直接設けている(積層している)が、例えば、図1および図3において図示しないが、基材2の一方側(内側あるいは外側)に、印刷層などを設けることにより、内側接着剤層5を基材2の一方側(内側あるいは外側)に印刷層を介して設けることもできる。
【実施例】
【0196】
以下に示す実施例などの数値は、上記の実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
1.化合物の物性
各化合物の物性などは、下記に従って、評価した。
【0197】
[プロピレン、エチレンおよび1-ブテンに由来する構成単位の含有割合]
プロピレン、エチレンおよび1-ブテンのそれぞれに由来する構成単位の含有割合を、^(13)C-NMRを利用して求めた。
【0198】
[融点(Tm)、融解熱(ΔH)]
示差走査熱量計(TA Instruments製;DSC-Q1000)を用いて、融点(Tm)および融解熱(ΔH)を求めた。
【0199】
具体的には、示差走査熱量計において、10℃/minで30℃から180℃まで昇温後、その温度で3分間保持し、次いで、10℃/minで0℃まで降温し、その温度で3分間保持し、再度10℃/minで150℃まで昇温する過程において、2度目の昇温時のサーモグラムより、JIS K 7122に準じて融点(Tm)と融解熱(ΔH)を求めた。
【0200】
[40℃における動粘度]
40℃における動粘度は、ASTM D 445に基づいて測定した。
【0201】
[重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)]
重量平均分子量(Mw)および分子量分布(分散度)(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(島津製作所社製;LC-10 series)を用いて、以下の条件で測定した。
【0202】
・検出器: 島津製作所社製;C-R4A
・カラム: TSKG 6000H-TSKG 4000H-TSKG 3000H-TSKG 2000H(東ソー社製)
・移動層: テトラヒドロフラン
・温度: 40℃
・流量: 0.8mL/min
単分散標準ポリスチレンにより作成した検量線を用いて、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0203】
[無水マレイン酸の変性量]
無水マレイン酸の含有割合(変性量)を^(1)H-NMRによる測定から求めた。
【0204】
[無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体の半結晶化時間]
無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体5mg程度を専用アルミニウムパンに詰め、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製;Diamond DSC)を用い、30℃から150℃まで320℃/minで昇温し、150℃で5分間保持した後、50℃まで320℃/minで降温し、その温度で保持した時に得られるDSC曲線を解析した。具体的には、DSC熱量曲線とベースラインとの間の面積から全熱量を算出し、その全熱量の50%に到達した時間を、50℃に到達した時刻を基準(t=0)として半結晶化時間を求めた。
[NCO/COOHの比率]
NCO/COOHの比率を以下の式によって算出した。
NCO/COOH=(W×N/100÷42)÷(W´×M/100÷98.06×2)
W:ポリイソシアネートの質量
N:ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量
W´:変性重合体の質量
M:変性重合体における単量体(無水マレイン酸)に由来する構成単位の含量
<重合体の合成>
[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]
充分に窒素置換した2Lのオートクレーブに、ヘキサンを900mL、1-ブテンを90g仕込み、トリイソブチルアルミニウムを1ミリモル加え、70℃に昇温した後、プロピレンを供給して全圧7kg/cm^(2)Gにし、メチルアルミノキサン0.30ミリモル、rac-ジメチルシリレン-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロライドをZr原子に換算して0.001ミリモル加え、プロピレンを連続的に供給して全圧を7kg/cm^(2)Gに保ちながら30分間重合した。重合後、脱気して大量のメタノール中でポリマーを回収し、110℃で12時間減圧乾燥した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(1)の融点(Tm)は78℃、融解熱(ΔH)は29J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(分散度)(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は67モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は33モル%であった。
【0205】
[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]
上記プロピレン/1-ブテン共重合体(1)3kgを10Lのトルエンに加え、窒素雰囲気下で145℃に昇温し、プロピレン/1-ブテン共重合体(1)をトルエンに溶解させた。さらに、攪拌下で無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを4時間かけて系に供給し、続けて145℃で2時間攪拌した。冷却後、多量のアセトンを投入して、無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)を沈殿させ、ろ過し、アセトンで洗浄した後、真空乾燥した。
【0206】
得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の融点(Tm)は76℃、融解熱(ΔH)は29J/g、50℃での半結晶化時間は946秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100質量部に対し、1質量部であった。
[製造例3:エチレン/プロピレン共重合体(1)の合成]
充分窒素置換した攪拌翼付連続重合反応器に、脱水精製したヘキサン1Lを加え、96mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C_(2)H_(5))1.5・Cl_(1.5))のヘキサン溶液を500mL/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として16mmol/lに調整したVO(OC_(2)H_(5))Cl_(2)のヘキサン溶液を500mL/h、ヘキサンを500mL/h連続的に供給した。一方重合反応器上部から、重合反応器内の重合液が常に1Lになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンガスを27L/h、プロピレンガスを26L/h、水素ガスを100L/hの量で供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷媒を循環させることにより35℃で実施した。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、大量のメタノールに投入して析出させた後、130℃で24時間減圧乾燥した。これにより、エチレン/プロピレン共重合体(1)を得た。
【0207】
得られたエチレン/プロピレン共重合体(1)におけるエチレンに由来する構成成分の含有割合が56モル%、プロピレンに由来する構成成分の含有割合が44モル%、40℃における動粘度は37,500cStであった。なお、動粘度は、ASTM D 445に準拠して測定した。また、エチレン/プロピレン共重合体(1)の重量平均分子量(Mw)は、14,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
[製造例4:無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)の合成]
プロピレン含量67モル%、重量平均分子量(Mw)330,000であるプロピレン/エチレン共重合体3kgを10Lのトルエンに加え、系内の窒素置換を1時間実施した。
【0208】
系の温度を145℃に上げ、プロピレン/エチレン共重合体をトルエンに完全に溶解した後、系の撹拌を継続しながら、無水マレイン酸382g、ジ-tert-ブチルパーオキシド175gを別々の供給口から4時間かけて、系に供給し、さらに後反応として145℃で2時間撹拌を続けた後、系を室温まで冷却した。
【0209】
冷却後反応液の一部を採取し、大量のアセトン中に投入することにより、クラム状(くず状)の無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体を沈殿させた。
得られた沈殿物を採取し、アセトンで繰返し洗洗した後、常温で2昼夜真空乾燥することにより精製された無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)を得た。無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)100質量部に対し、5.3質量%であった。また、融解熱(ΔH)は1.6J/g、重量平均分子量(Mw)は140,000であった。
【0210】
[製造例5:プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の合成]
1-ブテンの仕込み量90gを75gにした以外は[製造例1:プロピレン/1-ブテン共重合体]の合成と同様に処理した。得られたプロピレン/1-ブテン共重合体(2)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、重量平均分子量(Mw)は330,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、プロピレンに由来する構成単位の含有割合は78モル%、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合は22モル%であった。
【0211】
[製造例6:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の合成]
製造例1のプロピレン/1-ブテン共重合体(1)に代えて製造例5のプロピレン/1-ブテン共重合体(2)を用いた以外は[製造例2:無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)の合成]と同様に処理した。得られた無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)の融点(Tm)は84℃、融解熱(ΔH)は32J/g、50℃での半結晶化時間は276秒、重量平均分子量(Mw)は110,000、分子量分布(Mw/Mn)は2、無水マレイン酸の変性量は無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)100質量部に対し、1質量部であった。
<変性オレフィン重合体(1)ワニスの調製>
[調製例1:変性オレフィン重合体ワニス(1)]
製造例2で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)100gを400gのトルエンに溶解させ変性オレフィン重合体ワニス(1)を調製した。
[調製例2:変性オレフィン重合体ワニス(2)]
製造例2で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(1)80gと製造例3で製造したエチレン/プロピレン共重合体(1)20gとを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(2)を調製した。
【0212】
[調製例3:変性オレフィン重合体ワニス(3)]
製造例4で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/エチレン共重合体(1)50gを450gのトルエンに溶解させ変性オレフィン重合体ワニス(3)を調製した。
【0213】
[調製例4:変性オレフィン重合体ワニス(4)の調製]
製造例6で製造した無水マレイン酸変性プロピレン/1-ブテン共重合体(2)80gと製造例3で製造したエチレン/プロピレン共重合体(1)20gとを400gのトルエンに溶解させて、変性オレフィン重合体ワニス(4)を調製した。
<ポリイソシアネートの準備>
[準備例1:ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体の準備]
ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体(「タケネートD-165N」、平均官能基数3以上、イソシアネート基含有量23.5%、三井化学社製)を、準備例1のポリイソシアネートとして準備した。
[準備例2:トリマー変性体の準備]
ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー変性体(「タケネートD-170N」、3量体、平均官能基数3以上、イソシアネート基含有量21.0%、三井化学社製)を、準備例2のポリイソシアネートとして準備した。
<複合フィルム(Al箔/接着剤層/PPフィルム積層体)の作製>
参考例1
調製例1の変性オレフィン重合体ワニス(1)の不揮発分と準備例1のビウレット変性体とが質量基準で表1に記載の比率になるように混合し、ラミネート用接着剤を調製した。次いで、ラミネート用接着剤をトルエンで希釈し、バーコーターを用いて、坪量3.3g/m^(2)(固形分)となるように厚さ40μmのアルミニウム箔(表面未処理)のツヤ面上に常温下において塗布し、溶媒を揮散させた。その後、アルミニウム箔におけるラミネート用接着剤の塗布面と、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(片面コロナ処理品)におけるコロナ処理面とを貼り合わせ、60℃で3日間養生することにより、ラミネート用接着剤を硬化させて、アルミニウム箔および未延伸ポリプロピレンフィルム間を接着させて、複合フィルムを、アルミニウム箔、接着剤層および未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体として得た。
【0214】
参考例2、実施例3?5、参考例6、7および比較例1?2
表1に示す処方に従って各成分を混合して、ラミネート用接着剤を調製した以外は、参考例1と同様にして、複合フィルムを得た。
<積層体(ガラス/接着剤層/アルミニウム積層体)の作製および評価>
参考例8
調製例4の変性オレフィン重合体ワニス(4)45gと、準備例2のトリマー変性体1gとを混合して、接着剤ワニスを調製した。次いで、硬質アルミニウム(30μm厚)上に塗工し、200℃で1分間乾燥して、乾燥膜厚20μmの塗膜を得た。得られた接着皮膜付き硬質アルミニウムをガラス被着体(テストピース社製;25×50×2mm)にヒートシーラー(テスター産業社製 TP-701-B)を用いて、230℃、0.3MPa、1秒の条件で圧着させた。得られた試験片は150℃のオーブン中で30分間保持し、熱処理を施した。
【0215】
これにより、硬質アルミニウム、接着剤層およびガラス被着体からなる積層体を得た。
【0216】
比較例3
準備例2のポリイソシアネートを混合しなかった以外は、参考例8と同様に処理して積層体を製造し、続いて、剥離強度を測定した。
【0217】
<評価>
[参考例2、実施例3?5、参考例6、7および比較例1および2]
(1)接着強度(常態強度)
参考例2、実施例3?5、参考例6、7の複合フィルムを、長さ150mm、幅15mmの大きさに切り出して試験片を作製し、この試験片について、万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度300mm/分にて、T型剥離試験を実施して、複合フィルムの接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
(2)耐電解液性試験
複合フィルムを、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびジメチルカーボネートを1/1/1の質量比で含有する混合溶剤(電解液)に、85℃で、168時間、浸漬した。浸漬後、複合フィルムを取り出し、混合溶剤を拭き取った。その後、直ちに万能引張測定装置を用いて、クロスヘッド速度300mm/分にて、T型剥離試験を実施して、浸漬後の複合フィルムの接着強度を測定した。その結果を表1に示す。
[参考例8および比較例3]
(3)接着強度(加熱後の強度)
参考例8および比較例3の積層体を60℃、相対湿度90%の恒温恒湿機内で2日間保管した。保管後、恒温高湿機から積層体を取り出した後、一晩室温で静置した後に幅1cmの短冊状にカッターで切り目を入れて試験片を作製し、この試験片について、オートグラフ(島津製作所社製 AGS-500B)を用いて、100mm/minの条件で硬質アルミニウムをガラス被着体から180°で剥離する180°剥離試験を実施して、接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0218】
【表1】

【0219】
表1中、各成分の数値は、質量部数を示す。
【0220】
【表2】

【0221】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0222】
接着剤は、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体に用いられる。
【符号の説明】
【0223】
1 電池ケース用包材
2 基材
3 内側層
4 外側層
5 内側接着剤層
6 外側接着剤層
7 高アルカリ溶液用包材
8 アルコール含有溶液用包材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン/1-ブテン共重合体が、無水マレイン酸で変性され、JIS K7122に従って測定される融解熱が、0J/g以上、50J/g以下である変性オレフィン重合体(A)と、
ポリイソシアネート(B)と、
炭化水素系合成油(D)と
溶媒(水を除く)とを含み、
前記変性オレフィン重合体(A)および前記ポリイソシアネート(B)が、前記溶媒に溶解しており、
前記変性オレフィン重合体(A)の酸価が、0.1mgKOH/g以上、10mgKOH/g以下であり、
前記変性オレフィン重合体(A)の融点が、40℃以上100℃未満であり、
前記変性オレフィン重合体(A)の50℃における半結晶化時間が、100秒以上であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定され、標準ポリスチレンで換算される前記変性オレフィン重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が、1×10^(4)以上、1000×10^(4)以下であり、
前記プロピレン/1-ブテン共重合体において、プロピレンに由来する構成単位の含有割合が、67モル%以上、80モル%以下であり、1-ブテンに由来する構成単位の含有割合が、33モル%以下、20モル%以上であり、
前記炭化水素系合成油(D)が、エチレンに由来する構成単位と炭素数3?20のα-オレフィンに由来する構成単位とを含むエチレン系共重合体であることを特徴とする、接着剤組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記無水マレイン酸の含有割合が、前記変性オレフィン重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上、15質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
基材と、
前記基材の一方側に設けられ、接着剤から形成される接着剤層と
を備え、
前記接着剤は、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製されていることを特徴とする、積層体。
【請求項10】
前記接着剤層は、前記基材の一方面に直接積層されている
ことを特徴とする、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記基材の一方側に前記接着剤層を介して接着される被着体
をさらに備えることを特徴とする、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材の外側に接着される外側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤の硬化物を含む内側接着剤層と、
前記基材および前記外側層の間に介在される外側接着剤層とを備えることを特徴とする、電池ケース用包材。
【請求項13】
請求項12に記載の電池ケース用包材と、
前記電池ケース用包材に包装される電解液とを備え、
前記電池ケース用包材の前記内側層の少なくとも一部が、前記電解液に接触していることを特徴とする、電池。
【請求項14】
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴とする、高アルカリ溶液用包材。
【請求項15】
請求項14に記載の高アルカリ溶液用包材と、
前記高アルカリ溶液用包材に包装されるpH9以上の溶液とを備えることを特徴とする、包装体。
【請求項16】
基材と、
前記基材の内側に接着される内側層と、
前記基材および前記内側層の間に介在され、請求項1に記載の接着剤組成物からなるコーティング剤から調製された接着剤の硬化物を含む内側接着剤層とを備えることを特徴とする、アルコール含有溶液用包材。
【請求項17】
請求項16に記載のアルコール含有溶液用包材と、
前記アルコール含有溶液用包材に包装されるアルコール含有溶液とを備えることを特徴とする、包装体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-01-26 
出願番号 特願2014-560798(P2014-560798)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C09J)
P 1 651・ 113- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 天野 宏樹
佐々木 秀次
登録日 2016-08-05 
登録番号 特許第5982503号(P5982503)
権利者 三井化学株式会社
発明の名称 接着剤、積層体、電池ケース用包材、電池、高アルカリ溶液用包材、アルコール含有溶液用包材および包装体  
代理人 宇田 新一  
代理人 岡本 寛之  
代理人 岡本 寛之  
代理人 宇田 新一  

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