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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 F25B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F25B |
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管理番号 | 1339141 |
異議申立番号 | 異議2017-700757 |
総通号数 | 221 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-05-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-01 |
確定日 | 2018-02-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6072559号発明「冷凍装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6072559号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第6072559号の請求項1、2、4?7に係る特許を維持する。 特許第6072559号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6072559号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成25年2月13日の出願であって、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人淺野文雄により特許異議の申立てがなされ、当審において平成29年9月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年12月4日に訂正の請求及び意見書の提出がされ、その後、当該訂正の請求に対して特許異議申立人より平成30年1月10日に意見書が提出されたものである。 第2 訂正の請求についての判断 1.訂正の内容 平成29年12月4日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6072559号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。 (訂正事項1) 特許請求の範囲の請求項1に「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を受けつける設定装置と、」とあるのを、「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、」と訂正する。 (訂正事項2) 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (訂正事項3) 特許請求の範囲の請求項4に「ことを特徴とする請求項2又は3に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。」と訂正する。 (訂正事項4) 特許請求の範囲の請求項5に「ことを特徴とする請求項2?4のいずれか一項に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項2又は4に記載の冷凍装置。」と訂正する。 (訂正事項5) 特許請求の範囲の請求項6に「ことを特徴とする請求項2?5のいずれか一項に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項2、4、5のいずれか一項に記載の冷凍装置。」と訂正する。 (訂正事項6) 特許請求の範囲の請求項7に「ことを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項1、2、4?6のいずれか一項に記載の冷凍装置。」と訂正する。 (訂正事項7) 明細書の【0008】に「熱源装置と負荷装置とを接続している冷媒配管が凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を受けつける設定装置と、」とあるのを、「熱源装置と負荷装置とを接続している冷媒配管が凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を結露抑制優先モードにおいて凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、」と訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の冷凍能力優先モードの凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度について「前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きく」することを限定し、結露抑制優先モード及び冷凍能力優先モードの設定を受けつける設定装置について「手動で」受けつけるものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0020】、【0021】、【0023】、【0025】、【0030】、【0032】、【0035】、【0036】等の記載から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 上記訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3?6について ア 訂正の目的 上記訂正事項3?6は、上記訂正事項2の請求項3の削除に伴い、請求項3を引用する請求項4?7において請求項3を引用するものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項3?6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項3?6は、請求項3を引用するものを削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項7について ア 訂正の目的 上記訂正事項7は、上記訂正事項1に伴い、本件特許明細書の【0008】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。 3.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕についての訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1?7に係る発明(以下「本件発明1?7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された以下の事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置において、 前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置と、 前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、 前記設定装置において設定された前記結露抑制優先モード、又は前記冷凍能力優先モードに応じて、前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置と、 を有する ことを特徴とした冷凍装置。 【請求項2】 一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記過冷却装置と前記第1膨張装置との間に接続されているインジェクション配管と、 前記インジェクション配管を流れる冷媒を減圧させる第2膨張装置と、 を有し、 前記過冷却装置は、 上流側が前記凝縮器に接続され、下流側が前記第1膨張装置及び前記インジェクション配管の他端に接続される第1流路と、 前記第2膨張装置の下流側の前記インジェクション配管に接続される第2流路とを有し、 前記第1流路を流れる冷媒と前記第2流路を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器で構成した ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記制御装置は、 前記結露抑制優先モード時において、 前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される下限値以上である場合には、 前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される下限値未満である場合よりも、 前記第2膨張装置の開度を大きくする ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。 【請求項5】 前記制御装置は、 前記冷凍能力優先モード時には、前記結露抑制優先モード時よりも前記第2膨張装置の開度を小さくする ことを特徴とする請求項2又は4に記載の冷凍装置。 【請求項6】 前記制御装置は、 前記結露抑制優先モード時において、 前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度が、 前記熱源装置と前記負荷装置とを接続する前記冷媒配管が設置される空間温度より大きい場合には、 前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度が、前記空間温度を下回らない範囲内で前記第2膨張装置の開度を小さくする ことを特徴とする請求項2、4、5のいずれか一項に記載の冷凍装置。 【請求項7】 前記凝縮器に付設され、前記凝縮器に空気を送風する送風機を有し、 前記制御装置は、 前記送風機の回転数を制御して前記凝縮器における空気と冷媒との熱交換量を調整し、前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度を調整する ことを特徴とする請求項1、2、4?6のいずれか一項に記載の冷凍装置。」 第4 当審の判断 1.取消理由の概要 平成29年9月29日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。 甲1:特開2007-225260号公報 甲2:特開平4-98049号公報 甲3:特開2005-188765号公報 甲4:特開2010-54186号公報 甲5:特開平6-265232号公報 甲6:特開平7-4756号公報 甲7:国際公開第2009/150761号 (理由1)本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された上記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (1)本件発明1について 本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2ないし甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について 本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術的事項に基いて、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲4に記載された技術的事項に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3について 本件発明3は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について 本件発明4は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明5について 本件発明5は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)本件発明6について 本件発明6は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)本件発明7について 本件発明7は、甲1に記載された発明、甲4及び甲7に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2、甲4及び甲7に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明、甲4及び甲7に記載された技術的事項並びに甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (理由2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 本件発明3は、「前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される上限値以下であって、前記第2膨張装置の開度が予め設定される下限値以上である場合」の第2膨張装置の開度を「前記第2膨張装置の開度が予め設定される下限値未満である場合よりも」小さくするものと解されるが、第2膨張装置の開度が予め設定される下限値未満であるにも関わらずさらに第2膨張装置の開度を小さくすること、すなわち予め設定される下限値よりさらに小さい開度とすることの技術的意義が、発明の詳細な説明や技術常識を参酌しても不明確である。 また、請求項3を直接又は間接に引用する請求項4?7についても同様である。 2.取消理由についての判断 (1)本件発明1係る進歩性について ア 甲1の記載事項 甲1には、以下の記載がある。 (ア)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上記のように、主冷媒回路の液管に過冷却を付加する場合、過冷却の付加量を多くすることによって冷却または冷凍能力は増大するが、液管の温度が周囲の温度より低下してその表面に結露が発生しやすくなる。結露すると天井裏にカビ等が繁殖したり、場合によっては天井からの水漏れが発生するため、液管に断熱処理等を施す必要がある。しかしながら、冷凍サイクル装置が多く利用されているコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、冷凍サイクル装置の冷媒回路液管は、天井裏などに配置される場合が多く、また、その長さは店舗より100m程度もある場合があり、従ってその断熱処理は簡単ではなく工事費増大等の問題がある。また、既に工事が完了した店舗において、天井裏などの配管に断熱処理を追加するのは、施工性が悪く、工事に多くの時間やコストを費やしてしまう等の問題もある。 【0005】 この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、冷凍サイクル装置の冷媒回路を構成する液管に冷却能力を増大させる過冷却を付加した場合において、該液管に断熱処理を施すなどの大がかりな工事を施すことなく、より簡単に該液管の結露を防止することができる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。」 (イ)「【0008】 実施の形態1. 図1はこの発明の実施の形態1における冷凍サイクル装置の冷媒回路の概略構成を示す図である。この冷凍サイクル装置は、主冷媒回路として、第1圧縮機1、第1凝縮器2、減圧装置としての第1膨張弁3、及び第1蒸発器4が配管で順に接続された第1冷媒循環回路(主冷媒回路)を備えている。 【0009】 また、第1凝縮器2と第1膨張弁3との間には、その間を流れる冷媒を冷却する冷却装置5が配置されている。なお、第1冷媒循環回路の第1凝縮器2と第1膨張弁3との間は、第1圧縮機1で圧縮され第1凝縮器2で液化された高圧の液冷媒が通るので、この明細書では、第1凝縮器2と第1膨張弁3との間の配管を液管15とも呼ぶ。 【0010】 また、冷却装置5と第1膨張弁3との間には、その部分の配管温度(液管15の温度)を検出する配管温度検出手段としての液管温度センサ6、その部分の周囲温度を検出する周囲温度検出手段としての周囲温度センサ7、及びその部分の周囲湿度を検出する周囲湿度検出手段としての周囲湿度センサ9が備えられている。なお、周囲湿度センサ9は、後述する実施の形態2で使用されるものであり、実施の形態1においてはなくてもよい。 さらに、液管温度センサ6、周囲温度センサ7、及び周囲湿度センサ9の検出値を取り込み、それらの値に基づいて、冷却装置5の冷却量を制御する制御器8が備えられている。なお、ここでは、液管温度センサ6、周囲温度センサ7、及び周囲湿度センサ9をそれぞれ1個使用した例を示しているが、それらを複数個利用する構成としてもよい。 【0011】 次に図1の冷凍サイクル装置の動作を説明する。第1冷媒循環回路内の冷媒は第1圧縮機1にて高温高圧の過熱ガスに圧縮された後、第1凝縮器2にて空気や水などの媒体と熱交換を行うことで、高温高圧の液冷媒に凝縮される。第1凝縮器2を出た液冷媒は、冷却装置5により、高圧で過冷却が付加された液冷媒とされる。そして、その冷媒は第1膨張弁3に通されて低温低圧の気液2相冷媒となり、その冷媒は第1蒸発器4内で周囲の空気や水と熱交換されて低温低圧の過熱ガスの状態となり、再度第1圧縮機1に吸入される。 【0012】 このように、上記冷凍サイクル装置では、液管15を流れる冷媒に対して、冷却装置5により過冷却を付加することで、冷凍サイクル装置の能力を増大させることが可能となっている。ただし、液管15の過冷却によって、その液管温度が周囲の露点温度を下回ると、液管15の表面から結露が発生し、液管15が配置されている天井裏などに結露水が垂れることになる。これを回避するために、実施の形態1の冷凍サイクル装置には、以下のような手段が採用されている。 【0013】 図2は実施の形態1における制御器8の作用の一例を示すフローチャートである。これによれば、制御器8は、冷凍サイクル装置が起動すると(S1)、その動作中、液管温度センサ6及び周囲温度センサ7の各検出値を取り込んで(S2)、それらの値を比較する(S3)。そして、液管15の温度がその周囲の温度と等しい場合には、冷却装置5に対して特別な制御を行わず、現状のまま運転を継続する(S4-1)。これに対して、液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御する(S4-2)。一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する(S4-3)。 なお、図2では、冷却装置5の冷却量制御の判断を3つの場合に分けて行ったが、液管温度≦周囲温度の場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行い、液管温度>周囲温度の場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御してもよい。 また、冷却装置5のハンチングを避けるため、現状維持の条件として、 周囲温度<液官温度<周囲温度+α、と裕度を持たせるようにしてもよい(αは予め定めた温度)。 【0014】 以上の様に制御される実施の形態1の冷凍サイクル装置によれば、液管15に結露を発生させずに、過冷却を確保することができる。このため、天井裏にカビ等が繁殖することや、天井からの水漏れが発生することを防止できる。また、液管15に結露が発生しない範囲内で過冷却を取ることができるので、天井裏などに配置された液管に断熱処理を施すなどの大がかりな工事も不要となり、装置の設置工事費を安価にすることが可能となる。さらに、既に配管が施工された既存店舗の冷凍サイクル装置に対しても、過冷却用の冷却装置5の適用が容易に可能となる。」 (ウ) (エ) イ 甲1記載の発明 上記記載事項を総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「第1圧縮機1、第1凝縮器2、減圧装置としての第1膨張弁3、及び第1蒸発器4が配管で順に接続された第1冷媒循環回路(主冷媒回路)を備える冷凍サイクル装置において、 第1凝縮器2と第1膨張弁3との間には、その間を流れる冷媒に過冷却を付加する冷却装置5が配置され、 液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御し、一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する制御器8と、 を有する冷凍サイクル装置。」 ウ 対比 (ア)本件発明1と甲1発明とを対比するに、甲1発明の「第1圧縮機1」は、その機能から、本件発明1の「圧縮機」に相当し、以下同様に「第1凝縮器2」は「凝縮器」に、「減圧装置としての第1膨張弁3」は「第1膨張装置」に、「第1蒸発器4」は「蒸発器」に、「冷却装置5」は「過冷却装置」に、「制御器8」は「制御装置」に、「冷凍サイクル装置」は「冷凍装置」にそれぞれ相当する。 (イ)甲1発明の「第1圧縮機1、第1凝縮器2、減圧装置としての第1膨張弁3、及び第1蒸発器4が配管で順に接続された第1冷媒循環回路(主冷媒回路)を備える冷凍サイクル装置」は、第1冷媒循環回路が冷媒配管で接続されるものであり、冷凍サイクル装置であるから第1圧縮機1及び第1凝縮器2が熱源装置、第1蒸発器4が負荷装置として用いられるものである。 したがって、甲1発明の当該事項は、本件発明1の「圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置」に相当する。 (ウ)甲1発明の「第1凝縮器2と第1膨張弁3との間」「を流れる冷媒に過冷却を付加する冷却装置5」は、冷媒が第1凝縮器2から第1膨張弁3に流れるから、本件発明1の「前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置」に相当する。 (エ)甲1発明の「冷却装置5の運転」を制御する「制御器8」は、本件発明の「前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置において、 前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置と、 前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置と、 を有する冷凍装置。」 <相違点1> 本件発明1では、「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モード」を有し、制御装置が「前記設定装置において設定された前記結露抑制優先モード、又は前記冷凍能力優先モードに応じて、」過冷却装置の過冷却量を調整するのに対して、甲1発明では、制御器8が、液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御し、一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する点。 <相違点2> 本件発明1では、結露抑制優先モード及び冷凍能力優先モードの設定を「手動で受けつける設定装置」を有しているのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。 エ 当審の判断 <相違点1について> 本件発明1は、高圧液管の結露を抑制すること、及び過冷却度が小さくならないようにして冷却能力の低下を抑制することを目的とするものであり(【0007】)、「すなわち、冷凍装置500は、結露抑制優先モードを実施した場合には、冷凍能力優先モードの場合と比較すると、冷凍能力は小さくなるが、配管300での温度はより外気温度に近い温度、もしくは外気温度以上となるように制御を行うことができ、配管300が結露してしまうことを抑制することができる。 また、冷凍装置500は、冷凍能力優先モードを実施した場合には、結露抑制優先モードの場合と比較すると、配管300の結露抑制の効果は小さくなるが、過冷却装置4で冷媒を冷却して過冷却度を大きくすることができ、冷凍能力が低下することを抑制することができる。」(【0039】)と記載されていることから、結露抑制優先モードは、高圧液管の結露を抑制することを目的とし、基本的に、配管が結露しない程度の過冷却を行うモードであり、冷凍能力優先モードは、過冷却度が小さくならないようにして冷却能力の低下を抑制することを目的とし、液管の温度及びその周囲の温度に関係なく、結露抑制優先モードより過冷却度を大きくし、冷凍能力を十分に確保するものであり、その結果、液管の結露が生じることもあるものである。 これに対して、甲1発明は、液管の結露を防止することのみを課題とするものであり(【0004】、【0005】)、液管15の温度とその周囲の温度との関係において、液管15に結露が発生しない範囲内で過冷却をとるものである(【0014】)。 そうすると、甲1発明の「液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御し、一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する」態様は、液管15に結露が発生しない範囲内の制御であるから、本件発明1の「結露抑制優先モード」の範囲内のものである。 したがって、甲1発明は、本件発明1の「冷凍能力優先モード」を有しているとはいえない。 また、甲2?7には、結露を防止することや冷却能力を切り換えることについての記載はあるが、配管が結露するかどうかにかかわらず、冷凍能力を十分に確保するために、過冷却度を大きくすること、すなわち「冷凍能力優先モード」を示唆する記載はない。 ゆえに、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明に記載されておらず、甲2?7に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 <相違点2について> 甲1発明は、液管15の結露を防止するために、制御器8が、液管15の温度とその周囲の温度とを計測し、自動的に冷却装置の運転を切り換えるものである。 そうすると、冷凍装置において、モードの切換を手動で行うことが甲2?7から周知であるとしても、甲1発明は、自動で切り換えることで課題を解決するものであるから、甲1発明において、その切換を手動で行うようにする動機付けがない。 したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、甲2?7に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 <本件発明1の奏する効果について> そして、本件発明1は、上記相違点1及び2に係る発明特定事項を有することで、高圧液管の結露を抑制すること、及び過冷却度が小さくならないようにして冷却能力の低下を抑制することの両方を実現できるという効果を奏するものである。 <特許異議申立人の主張について> 特許異議申立人は、甲1発明の「液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御」することは、本件発明1の「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード」に相当し、同様に、「液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する」ことは「前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モード」に相当する旨、及び甲2、3には、結露抑制運転モードと冷凍能力優先モードとをスイッチで切り換える点が記載されており、引用発明1に甲2、3記載の事項を適用することは当業者が容易に想到し得る旨主張する。 しかし、上記<相違点1について>で検討したとおり、甲1発明は「冷凍能力優先モード」を有しているとはいえない。また、甲2は、「その目的は、吐出冷媒温度を最適値に制御することにより高い冷凍効率を確保しながら、露付が生じ易いような条件下では、冷媒の状態を制御して室内熱交換器の冷房能力を低減させる手段を講ずることにより、コストの増大や設計上の制約を招くことなく、露付を防止することにある。」(2頁左下欄5?10行)と記載されているから、結露を防止する制御の範囲内のものであり、甲3は、「省エネルギーを重視した運転」と「能力を重視した運転」であり(【0042】、【0043】)、結露とは関係しない運転であるから、共に本件発明1の「冷凍能力優先モード」を示唆するものでない。 また、甲1発明は、上記<相違点2について>で検討したとおり、自動で切り換えることで課題を解決するものであるから、甲2、3のスイッチで切り換えることを適用する動機付けがない。 ゆえに、特許異議申立人の主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2?7に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2) 本件発明2、4?7の進歩性について 本件発明2、4?7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付した発明であるから、少なくとも、上記(1)エと同じ理由で、本件発明2、4?7は、甲1発明及び甲2?7に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1、2、4?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 冷凍装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、冷凍装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来の冷凍装置には、放熱器から流出する冷媒を過冷却させる過冷却熱交換器を備え、放熱器から流出する液冷媒がフラッシュガスとなることを抑制しているものが各種提案されている(たとえば、特許文献1参照)。なお、フラッシュガスが発生すると、その分、放熱器の下流側の絞り装置に流入する冷媒の流量が低減し、冷凍装置の冷凍能力が低下してしまう。 そこで、特許文献1に記載の技術は、冷凍能力が低下してしまうことを抑制するため、二重管熱交換器などで構成した過冷却熱交換器を放熱器の下流側に設置し、放熱器で凝縮液化した冷媒の温度を小さくして過冷却をつけるようにしている。 すなわち、特許文献1に記載の技術では、過冷却熱交換器で冷媒を冷却することで、その冷却分の過冷却度をとり、室内機(負荷装置)に搭載された蒸発器に流入する冷媒と蒸発器から流出する冷媒とのエンタルピ差を確保して、予め設定された冷凍能力を出すことができるようにしている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特許第3858276号公報(たとえば、図1参照) 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載の技術のように、冷媒を冷却して過冷却をつけると、放熱器から流出した液冷媒の温度が、外気温度以下になる場合がある。 すなわち、特許文献1に記載の技術は、この液冷媒の温度が、外気温度以下となっていると、液冷媒の熱が外気に伝達されて、冷媒の温度が上昇して過冷却度の値が小さくなり、冷凍装置の冷凍能力が低下してしまうという課題があった。 【0005】 また、特許文献1に記載の技術では、この液冷媒の温度が外気温度以下となっていると、この液冷媒が流れる高圧液配管の温度も外気温度以下となり、高圧液配管の表面に結露が生じてしまう可能性がある。 すなわち、特許文献1に記載の技術では、室外機(熱源装置)と室内機(負荷装置)とを接続する高圧液配管の配管表面が結露し、結露が室内などに滴下してしまい、ユーザーの快適性を損ねてしまう可能性がある。 【0006】 なお、この結露が生じてしまうこと、及び、上述の液冷媒の熱が外気に伝達されて過冷却度の値が小さくなることを抑制するために高圧液配管に断熱材を巻く方法がある。しかし、この方法では、断熱材を巻く分、冷凍装置を設置するサービスマンの作業負担が大きくなったり、コストアップしてしまうという課題があった。 【0007】 本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、過冷却した液冷媒が流れる配管に断熱施工をせずに、この配管に生じる結露を抑制すること、及び、過冷却度が小さくならないようにして冷凍能力の低下を抑制することを実現する冷凍装置を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明に係る冷凍装置は、圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、圧縮機及び凝縮器が搭載される熱源装置と、蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置において、凝縮器の下流側であって第1膨張装置の上流側に接続され、凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置と、熱源装置と負荷装置とを接続している冷媒配管が凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を結露抑制優先モードにおいて凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、設定装置において設定された結露抑制優先モード、又は冷凍能力優先モードに応じて、過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置と、を有するものである。 【発明の効果】 【0009】 本発明に係る冷凍装置によれば、上記構成を有しているため、過冷却した液冷媒が流れる配管に断熱施工をせずに、この配管に生じる結露を抑制すること、及び、過冷却度が小さくならないようにして冷凍能力の低下を抑制することを実現することができる。 【図面の簡単な説明】 【0010】 【図1】本発明の実施の形態1に係る冷凍装置の冷媒回路構成の一例である。 【図2】本発明の実施の形態1に係る冷凍装置の制御フローの一例である。 【図3】本発明の実施の形態1に係る冷凍装置のモリエル線図である。 【図4】本発明の実施の形態2に係る冷凍装置の冷媒回路構成の一例である。 【図5】本発明の実施の形態2に係る冷凍装置のモリエル線図である。 【図6】本発明の実施の形態2に係る冷凍装置の冷凍能力優先モードの制御フローの一例である。 【図7】本発明の実施の形態2に係る冷凍装置の結露抑制優先モードの制御フローの一例である。 【図8】本発明の実施の形態3に係る冷凍装置の制御フローの一例である。 【発明を実施するための形態】 【0011】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 実施の形態1. 図1は、実施の形態1に係る冷凍装置500の冷媒回路構成の一例である。 冷凍装置500は、過冷却した液冷媒が流れる配管300に断熱施工をせずに、この配管300に生じる結露を抑制すること、及び、過冷却度が小さくならないようにして冷凍能力の低下を抑制することができる改良が加えられたものである。 【0012】 [構成説明] 冷凍装置500は、たとえば冷蔵庫などに該当するものであり、たとえば室内などに設置され、庫内に食品などの貯蔵品を載置する空間を冷却する負荷装置200と、たとえば室外などに設置される熱源装置100と、負荷装置200と熱源装置100とを接続する配管300及び配管400を有している。 なお、本実施の形態1では、冷凍装置500が冷蔵庫である場合を一例に説明するが、たとえばヒートポンプ装置などに採用してもよい。 【0013】 冷凍装置500は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機1と、冷媒を凝縮させる熱交換器2(放熱器)と、液冷媒とガス冷媒とに分離する液溜め3と、液溜め3から流出した冷媒を冷却して過冷却する過冷却装置4と、冷媒を減圧させる膨張装置5と、冷媒を蒸発させる熱交換器6(蒸発器)とを有している。そして、冷凍装置500は、圧縮機1、熱交換器2、液溜め3、過冷却装置4、膨張装置5、及び熱交換器6が冷媒配管で接続されて構成された第1冷凍サイクルを有している。 また、冷凍装置500は、冷媒温度を検出する温度センサー及び圧力センサー(図示省略)などの各種センサーと、配管300を流れる冷媒温度を変化させるのに利用される設定装置91と、上述のセンサーの検出結果及び設定装置91などの出力に基づいて、過冷却装置4及び圧縮機1の回転数などを制御する制御装置90とを有している。 【0014】 (熱源装置100) 熱源装置100は、圧縮機1、熱交換器2、液溜め3、過冷却装置4、設定装置91及び制御装置90が搭載されているものである。熱源装置100は、配管400及び配管300を介して負荷装置200に接続されている。また、熱源装置100には、熱交換器2に空気を供給し、当該供給した空気と熱交換器2を流れる冷媒との熱交換を促進させる送風機(図示省略)などが搭載される。 【0015】 (配管300及び配管400) 配管300は、過冷却装置4の冷媒流出側から膨張装置5の冷媒流入側までを接続する配管である。配管400は、熱交換器6の冷媒流出側から圧縮機1の吸入側までを接続する配管である。 【0016】 (圧縮機1及び熱交換器2) 圧縮機1は、冷媒を吸入し、その冷媒を圧縮して高温・高圧の状態にして吐出するものである。圧縮機1は、冷媒吐出側が熱交換器2に接続され、冷媒吸入側が配管400に接続されている。なお、圧縮機1は、たとえばインバーター圧縮機などで構成するとよい。 なお、本実施の形態1では、圧縮機1が一台設置された場合を例に説明したが、それに限定されるものではなく、複数台の圧縮機が直列又は並列に設けられていてもよい。 熱交換器2は、圧縮機1から吐出された冷媒と空気との間で熱交換を行わせるものである。熱交換器2は、上流側が圧縮機1の吐出側に接続され、下流側が液溜め3に接続されている。なお、熱交換器2は、たとえば、熱交換器2を流れる冷媒とフィンを通過する空気との間で熱交換ができるようなプレートフィンアンドチューブ型熱交換器で構成するとよい。 【0017】 (液溜め3) 液溜め3は、冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離するものであり、上流側が熱交換器2に接続され、下流側が過冷却装置4に接続されている。より詳細には、液溜め3は、熱交換器2から流出する気液2相冷媒を、液冷媒とガス冷媒とに分離する。そして、液溜め3は、過冷却装置4に液冷媒を供給し、ガス冷媒については液溜め3内に留まるように構成されている。 【0018】 (過冷却装置4) 過冷却装置4は、液溜め3から供給された冷媒を冷却して配管300に流す機能を有するものであり、冷媒の過冷却度をとって冷凍装置500の冷凍能力を確保するのに利用されるものである。過冷却装置4は、上流側が液溜め3に接続され、下流側が配管300を介して膨張装置5に接続されている。 過冷却装置4は、熱源装置100及び負荷装置200を循環する冷媒の冷却方法については特に限定されるものではないが、たとえば、2重管熱交換器、プレート型熱交換器、空冷式熱交換器、水冷式熱交換器などを採用するとよい。なお、本実施の形態1では、一例として、過冷却装置4がプレート型熱交換器を有している場合を例に説明する。 【0019】 過冷却装置4のプレート型熱交換器には、2つの冷媒が流れる流路が形成されている。すなわち、熱源装置100及び負荷装置200を循環する冷媒が流れる第1流路と、この流路を流れる冷媒を冷却する冷媒が流れる第2流路である。 なお、第2流路については、図1では図示を省略しているが、たとえば、圧縮機、凝縮器、及び膨張装置などに接続されて構成された第2冷凍サイクルに接続されており、この第2冷凍サイクルにおいて蒸発器として機能している。 このように、過冷却装置4は、第2冷凍サイクルの第2流路を流れる冷媒の冷熱が、第1冷凍サイクルの第1流路を流れる冷媒に供給することができるプレート型熱交換器を有するため、第1冷凍サイクルを流れる冷媒に過冷却度をつけることができるようになっている。 【0020】 過冷却装置4は、第1冷凍サイクルを流れる冷媒に対して、液溜め3から流出した冷媒の有する過冷却度より過冷却度を大きくつけるように制御装置90から出力がなされた場合(後述の図2のS2参照)には、たとえば、次のように動作する。 すなわち、制御装置90は、たとえば、第2流路を流れる冷媒の温度が、第1流路を流れる冷媒の温度よりも予め設定された温度だけ小さくなるように、第2冷凍サイクルの圧縮機の回転数及び膨張装置の開度を設定する。これにより、第2冷凍サイクルの冷媒の冷熱が、第1冷凍サイクルの冷媒に伝達されて第1冷凍サイクルの冷媒が冷却され、その冷却された分だけ、過冷却度を大きくつけることができる。 なお、以下の説明では、冷凍装置500が、このように過冷却度を大きくつける運転モードを、冷凍能力優先モードと称する。 【0021】 過冷却装置4は、第1冷凍サイクルを流れる冷媒に対して、過冷却装置4で過冷却度をとらないように制御装置90から出力がなされた場合(後述の図2のS3参照)には、たとえば、次のように動作する。 すなわち、過冷却装置4は、たとえば、第2流路を流れる冷媒の温度が、第1流路を流れる冷媒の温度と等しくなるように、第2冷凍サイクルの圧縮機の回転数及び膨張装置の開度を設定する。これにより、第1冷凍サイクルの冷媒が過冷却装置4で冷却されることはないので、その分、過冷却度を大きくつけることはない。しかし、第1冷凍サイクルの冷媒が過冷却装置4で冷却されない分だけ、配管300の冷却が抑制されるため、配管300に結露が生じてしまうことを抑制することができる。 なお、以下の説明では、冷凍装置500が、このように過冷却度を大きくつけることはしない運転モードを、結露抑制優先モードと称する。 【0022】 なお、本実施の形態1では、結露抑制優先モードを実施した際において、第2流路を流れる冷媒の温度が、第1流路を流れる冷媒の温度と等しくなるように、第2冷凍サイクルの圧縮機の回転数及び膨張装置の開度を設定するものとして説明するが、それに限定されるものではない。たとえば、第1冷凍サイクルの冷媒の温度が外気温度よりも低く、第1冷凍サイクルの冷媒の温度を上昇させないと、配管300に結露が生じてしまう場合などには、第2流路を流れる冷媒の温度を、第1流路を流れる冷媒の温度よりも大きくなるように、第2冷凍サイクルの圧縮機の回転数及び膨張装置の開度を設定してもよい。 なお、第1冷凍サイクルの冷媒の温度を上昇させるのにあたり、過冷却装置4のプレート型熱交換器における第1流路の冷媒と第2流路の冷媒との熱交換だけでは足りない場合も考えられる。この場合には、第1流路を流れる冷媒を加熱するヒーターなどを過冷却装置4に設置すればよい。 【0023】 (設定装置91) 設定装置91は、冷凍能力優先モードと、結露抑制優先モードとを切り替えるのに利用されるものであり、たとえば、スイッチなどで構成されるものである。設定装置91は、たとえば、ユーザーがスイッチを押圧できるように、室外機である熱源装置100に取り付けられるものである。設定装置91は、制御装置90と電気的に接続されており、設定装置91の出力が制御装置90に出力されるように構成されている。 なお、設定装置91は、スイッチであるものとして説明したが、それに限定されるものではなく、ボタンでもよいし、タッチ式のパネルなどで構成してよい。 また、設定装置91は、熱源装置100に設置される制御基板92上に設置されている場合を例に説明するが、それに限定されるものではなく、負荷装置200に設置してもよいし、或いはリモコンなど別装置に備え付けていてもよい また、設定装置91及び制御装置90は、制御基板92に設置されている同体であるものとして説明するがそれに限定されるものではなく、別々の基板に設置してもよい。たとえば、設定装置91は負荷装置200に設けられた基板に設置し、制御装置90は熱源装置100に設けられた基板に設置し、設定装置91と制御装置90とを電気的に接続する構成を採用してもよい。 【0024】 (制御装置90) 制御装置90は、図示省略の温度センサー、圧力センサーなどの検出結果及び設定装置91の出力などに基づいて、圧縮機1の回転数(運転及び停止含む)、熱交換器2や熱交換器6に付設される図示省略の送風機の回転数(運転及び停止含む)、膨張装置5の開度、及び過冷却装置4などを制御するものである。なお、この制御装置90は、たとえばマイコンなどで構成されるものである。 なお、制御装置90は、設定装置91とともに熱源装置100の制御基板92に搭載されているものとして説明したが、それに限定されるものではなく、たとえば、熱源装置100に搭載されていてもよい。 【0025】 制御装置90には、設定装置91における設定内容が出力され、過冷却装置4から配管300に供給される冷媒の過冷却度を大きくするか否かを切り替えるものである。 すなわち、制御装置90は、設定装置91で冷凍能力優先モードが設定されたか、或いは結露抑制優先モードが設定されたか、に応じて過冷却装置4を制御し、過冷却装置4から配管300に供給される冷媒の過冷却度を大きくするか否かを切り替えるものである。 より詳細には、制御装置90は、冷凍能力優先モードが設定装置91において設定されている場合には、過冷却装置4に流れ込む第1冷凍サイクルの冷媒を冷却するように過冷却装置4を制御する。また、制御装置90は、結露抑制優先モードが設定されている場合には、過冷却装置4に流れ込んだ冷媒を冷却しないように過冷却装置4を制御する。 このように、制御装置90は、過冷却装置4を制御して、配管300に流入する冷媒の温度を調整することで、液溜め3から流出して配管300に流れる冷媒の過冷却度の大小を調整することができ、冷凍装置500の冷凍能力の低下を抑制と、配管300の結露の抑制とを両立することができるようになっている。 【0026】 (負荷装置200) 負荷装置200は、膨張装置5及び熱交換器6が搭載されているものである。負荷装置200は、熱源装置100と配管300及び配管400を介して接続されている。また、負荷装置200には、熱交換器6に空気を供給し、当該供給した空気と熱交換器6を流れる冷媒とを熱交換させて庫内に供給する送風機(図示省略)が搭載される。 【0027】 (膨張装置5及び熱交換器6) 膨張装置5は、冷媒を膨張させるためのものであり、上流側が配管300を介して過冷却装置4に接続され、下流側が熱交換器6に接続されている。なお、膨張装置5は、たとえば開度が可変である電子膨張弁、キャピラリーチューブなどで構成するとよい。 熱交換器6は、膨張装置5で減圧された冷媒と、空気との間で熱交換を行わせるものである。なお、熱交換器6は、熱交換器2と同様に、たとえば、熱交換器6を流れる冷媒とフィンを通過する空気との間で熱交換ができるようなプレートフィンアンドチューブ型熱交換器で構成するとよい。 【0028】 なお、図1では図示を省略しているが、冷凍装置500の第1冷凍サイクルには、たとえば、冷媒に含まれる冷凍機油を分離して圧縮機1に戻すのに利用される油分離器、液冷媒とガス冷媒とを分離する気液分離器などを設置してもよい。 【0029】 [冷凍装置500の第1冷凍サイクルの冷媒の流れ] 図1を参照しながら、同図で示される冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。 圧縮機1によって圧縮され吐出された気体の冷媒は、熱交換器2へ流入する。この熱交換器2に流入した気体の冷媒は、熱交換器2に付設された送風機から供給される空気と熱交換がなされて凝縮し、高圧の液冷媒となって熱交換器2から流出する。この熱交換器2から流出した高圧の液冷媒は、液溜め3に流入して液冷媒とガス冷媒とに分離させられる。 【0030】 冷凍能力優先モード時においては、液溜め3から流出した液冷媒が、過冷却装置4に流入して冷却されて過冷却度が大きくなる。すなわち、液溜め3から流出した液冷媒が、流出した時点で過冷却度を有していたならば、その過冷却度がさらに大きくなるということである。 結露抑制優先モード時においては、液溜め3から流出した液冷媒が、過冷却装置4に流入しても、冷却されることなく、過冷却装置4から流出する。すなわち、液溜め3から流出した液冷媒は、流出した時点で有している過冷却度のまま、過冷却装置4から流出するということである。 【0031】 過冷却装置4から流出した液冷媒は、配管300を介して膨張装置5に流入して減圧される。そして、膨張装置5で減圧された冷媒は、熱交換器6に付設された送風機から供給される空気と熱交換を実施して蒸発し、熱交換器6から流出する。熱交換器6から流出した冷媒は、配管400を介して圧縮機1に吸引される。 【0032】 [冷凍装置500の制御フロー] 図2は、実施の形態1に係る冷凍装置500の制御フローの一例である。図2を参照して、制御装置90などの動作について説明する。 ユーザーは、設定装置91のスイッチを切り替えることにより、過冷却装置4における過冷却量を調整することができる。すなわち、ユーザーは、ユーザーの使用状況に応じて設定装置91のスイッチを切り替えて、冷凍装置500の冷凍能力を優先する冷凍能力優先モードと、冷凍装置500の液側配管である配管300の結露を抑制することを優先する結露抑制優先モードとを切り替えることができる。この冷凍能力優先モードと結露抑制優先モードとの切り替え時の制御装置90の制御フローは次の通りである。 【0033】 (ステップS0) 制御装置90は、冷凍能力優先モードと結露抑制優先モードとの切り替えを行う制御フローを開始する。 【0034】 (ステップS1) 制御装置90は、設定装置91においてなされた設定が冷凍能力優先モードであるか、結露抑制優先モードであるかを判定する。 冷凍能力優先モードの設定である場合には、ステップS2に移行する。 結露抑制優先モードの設定である場合には、ステップS3に移行する。 【0035】 (ステップS2) 制御装置90は、冷凍能力優先モードを実施するように、過冷却装置4を制御する。 本実施の形態1においては、制御装置90は、過冷却装置4に対して、図示省略の第2冷凍サイクルの圧縮機の回転数及び膨張装置の開度などを制御させるように出力する。これにより、過冷却装置4において、第1流路の第1冷凍サイクルの冷媒が、第2流路の第2冷凍サイクルの冷媒によって冷却されるようにし、過冷却度をつける。 【0036】 (ステップS3) 制御装置90は、結露抑制優先モードを実施するように、過冷却装置4を制御する。 本実施の形態1においては、第1流路の第1冷凍サイクルの冷媒の温度と、第2流路の第2冷凍サイクルの冷媒の温度とが等しくなるように、過冷却装置4を制御する。 【0037】 [冷凍装置500のモリエル線図] 図3は、実施の形態1に係る冷凍装置500のモリエル線図である。 図3には、冷凍能力優先モードおよび結露抑制優先モードのそれぞれの制御を実施した場合のモリエル線図(圧力p-エンタルピhの相関線図)を示している。 たとえば、冷凍能力優先モードの過冷却度を多くつける制御を実施した場合には、過冷却装置4出口での冷媒温度が低下することで、蒸発器として機能する熱交換器6の冷媒流入側と冷媒流出側とでのエンタルピ差が大きくなる。 冷凍装置500の冷凍能力は、熱交換器6の冷媒流入側と冷媒流出側とのエンタルピ差×冷媒循環量で表される。このため、熱交換器6の冷媒流入側と冷媒流出側とのエンタルピ差が大きくなるということは冷凍能力の向上につながるということを意味している。 【0038】 一方で過冷却装置4の冷媒流出側の冷媒温度が低下するということは、図1で示す配管300の温度が低下するということになる。この温度が外気温度以下である場合には、配管300が結露する可能性があることを意味している。 また、せっかく過冷却装置4でとった過冷却が配管300内で小さくなってしまい、冷凍装置500の冷凍能力の向上につながらなくなる可能性がある。 そのため、従来の冷凍装置では、配管300に対応する液配管の結露の抑制と、冷凍能力の低下の抑制との両方を実現するためには、この液配管に断熱材などを巻くなどの措置が必要となっており、サービスマンの作業負担及びユーザーの負担するコストの増大などが生じていた。 【0039】 冷凍装置500においては、冷凍能力優先モード及び結露抑制優先モードを実施することができるため、配管300に断熱材などを巻くなどの措置を行わないでも、配管300の結露の抑制と、冷凍能力の低下の抑制との両方を実現することができる。 すなわち、冷凍装置500は、結露抑制優先モードを実施した場合には、冷凍能力優先モードの場合と比較すると、冷凍能力は小さくなるが、配管300での温度はより外気温度に近い温度、もしくは外気温度以上となるように制御を行うことができ、配管300が結露してしまうことを抑制することができる。 また、冷凍装置500は、冷凍能力優先モードを実施した場合には、結露抑制優先モードの場合と比較すると、配管300の結露抑制の効果は小さくなるが、過冷却装置4で冷媒を冷却して過冷却度を大きくすることができ、冷凍能力が低下することを抑制することができる。 【0040】 [実施の形態1に係る冷凍装置500の有する効果] 本実施の形態1に係る冷凍装置500は、冷凍能力優先モード及び結露抑制優先モードを実施することができるため、配管300に断熱施工をせずに、配管300に生じる結露を抑制すること、及び、過冷却度が小さくならないようにして冷凍装置500の冷凍能力の低下を抑制することができる。 【0041】 実施の形態2. 図4は、実施の形態2に係る冷凍装置501の冷媒回路構成の一例である。なお、実施の形態2では、実施の形態1に対する相違点を中心に説明するものとする。 実施の形態2に係る冷凍装置501は、実施の形態1の過冷却装置4の代わりに、二重管熱交換器4Aと、二重管熱交換器4Aと圧縮機1とを接続する配管43と、配管43に設けられた膨張装置42とを備えた点で実施の形態1に係る冷凍装置500の構成とは異なっている。 【0042】 (二重管熱交換器4A) 二重管熱交換器4Aは、液溜め3から流れてきた冷媒が流れる第1流路と、膨張装置42から流れてきた冷媒が流れる第2流路とを有し、第1流路と第2流路とが熱交換できるように構成されたものである。 二重管熱交換器4Aの第1流路は、上流側が液溜め3に接続され、下流側が配管300及び配管43に接続されている。二重管熱交換器4Aの第2流路は、上流側が膨張装置42に接続され、下流側が圧縮機1に接続されている。 【0043】 (配管43) 配管43は、上流側の端部が配管300に接続され、下流側の端部が圧縮機1に接続されている配管である。すなわち、配管43は、二重管熱交換器4Aの第1流路、膨張装置42、及び二重管熱交換器4Aの第2流路を介して圧縮機1に冷媒をインジェクションする配管である。配管43には、上流側から順番に、膨張装置42及び二重管熱交換器4Aの第2流路が接続されている。 なお、圧縮機1は、圧縮機1の吸入側から取り入れたときにおける圧力である低圧から、この低圧よりも高い圧力である高圧へと圧縮する途中の工程となる中間ポートを有しており、配管43の下流側の端部はこの中間ポートに接続されている。 【0044】 (膨張装置42) 膨張装置42は、冷媒を膨張させるためのものであり、上流側が配管300に接続され、下流側が二重管熱交換器4Aの第2流路に接続されているものである。膨張装置42は、たとえば開度が可変である電子膨張弁などで構成するとよい。 なお、膨張装置42の開度は、制御装置90により制御される。 【0045】 なお、本実施の形態2では、膨張装置42が電子膨張弁であるものとして説明するが、それに限定されるものではなく、複数個並列に接続されたキャピラリーチューブにおいてキャピラリーの上流もしくは下流に電磁弁などの流路を制御する弁などを設置し、キャピラリーチューブを通過するパス数を制御することにより、膨張装置における絞り量を制御する構成を採用してもよい。 【0046】 [冷凍装置501の第1冷凍サイクルの冷媒の流れ] 図4を参照しながら、二重管熱交換器4Aなどを流れる冷媒の流れについて説明する。 液溜め3から流出した高圧の冷媒は、二重管熱交換器4Aの第1流路に流入する。そして、この第1流路に流入した冷媒は、第2流路に流入した冷媒と熱交換を行って冷却され、過冷却をつける。 【0047】 二重管熱交換器4Aの第1流路から流出し、過冷却がとられた冷媒の一部は、配管300を介して熱源装置100から流出し、負荷装置200へと流入する。 二重管熱交換器4Aの第1流路から流出した冷媒の残りは、配管43に流入して配管300の流れから分岐し、膨張装置42を通り減圧されて温度が低下する。そして、この温度が低下した冷媒は、二重管熱交換器4Aの第2流路に流入し、第1流路の冷媒と熱交換する。 【0048】 二重管熱交換器4Aの第2流路から流出した冷媒は、配管43を通って、圧縮機1の中間ポートに流入し圧縮機1から吐出するガス冷媒の温度を下げるのに利用される。すなわち、二重管熱交換器4Aの第2流路から流出した冷媒は、圧縮機1にインジェクションされて、圧縮機1から吐出されるガス冷媒の温度上昇を抑制し、冷凍機油の劣化の抑制などに利用される。 【0049】 膨張装置42の開度を大きくすると、配管300から分岐して配管43に供給される冷媒の流量が多くなる一方で、減圧量が小さいため冷媒圧力(中間圧圧力)は高くなり、冷媒温度も高くなる傾向にある。それに伴い、圧縮機1から吐出されるガスの圧力(高圧圧力)も上昇する。 逆に、膨張装置42の開度を小さくすると、配管300から分岐して配管43に供給される冷媒の流量が小さくなり、冷媒圧力(中間圧圧力)は低くなり冷媒温度も小さくなる。それに伴い、圧縮機1から吐出されるガスの圧力(高圧圧力)も低下する。 【0050】 [冷凍装置501のモリエル線図] 図5は、実施の形態2に係る冷凍装置501のモリエル線図である。図5のモリエル線図を参照して膨張装置42の開度に応じた冷媒状態を説明する。 なお、図5の説明では、膨張装置42の開度を(1)小さくした場合、及び(2)この(1)よりも相対的に大きくした場合、について定性的な説明をするものとする。 また、(1)及び(2)のいずれの場合においても、膨張装置5で減圧した後の圧力である「低圧圧力」が同じとした場合について説明する。 なお、(1)の場合が、図5の実線に対応しており、(2)の場合が、図5の点線に対応している。 【0051】 まず、(1)の場合について説明する。 膨張装置42の開度を(2)の場合よりも小さくすると、図5の実線に示すように、中間圧圧力及び高圧圧力(冷媒凝縮温度=冷媒飽和液温度)は低くなる。 この(1)の場合には、凝縮器として機能する熱交換器2に流入する冷媒及び流出する冷媒の圧力である「高圧圧力」が、(2)の場合よりも相対的に低くなる。このため、熱交換器2での放熱性能が同じである場合には、熱交換器2から流出する冷媒温度(≒冷媒凝縮温度=冷媒飽和液温度となる)は、(2)の場合よりも相対的に低くなる。 【0052】 また、(1)の場合には、膨張装置42を通過し、配管43を流れる冷媒の圧力である「中間圧圧力」も、(2)の場合よりも相対的に低くなる。 すなわち、(2)の場合と比較すると、(1)の場合には、「高圧圧力の低下」及び「二重管熱交換器4Aの第1流路を通過し、膨張装置42に流入する前の冷媒温度の低下(高圧液冷媒の温度の低下)」をしており(P1参照)、膨張装置42で減圧される「中間圧圧力」の冷媒の温度も低下する(P2参照)。 したがって、(1)の場合には、二重管熱交換器4Aで熱交換された後の液冷媒が、(2)の場合と比較すると、低い温度で流出することとなる。すなわち、膨張装置5には、低い温度の冷媒が流れることになり、蒸発器として機能する熱交換器6の冷媒流入側と冷媒流出側とでのエンタルピ差が大きくすることができ、冷凍装置501の冷凍能力が向上する。 【0053】 さらに、(1)の場合には、「高圧圧力」が低下することにより、圧縮機1の必要動力も小さくなることから、消費電力も低下する。したがって、COP(冷凍能力と消費電力の比)が大きくなり省エネルギーとなる。 【0054】 なお、(1)の場合のように、膨張装置42の開度を小さくすると、(2)の場合と比較すると、「高圧液冷媒の温度の低下」をすると述べたが、必要以上に膨張装置42の開度を小さくしすぎると、配管43における冷媒流量が小さくなりすぎ、二重管熱交換器4Aで熱交換が行われなくなり、高圧液冷媒の温度が逆に高くなる場合があることに注意する必要がある。 また、膨張装置42は、圧縮機1の吐出冷媒の温度を下げるインジェクションとしての役割も兼ねている。このため、必要以上に膨張装置42の開度を小さくしすぎると、圧縮機1の吐出冷媒温度が上昇し圧縮機1が故障にいたる可能性もある。そこで、圧縮機1が故障しない最低限の開度を維持しておく必要があることにも注意する。 【0055】 次に、(2)の場合について説明する。 膨張装置42の開度を大きくした場合は、(1)とは逆となる。すなわち、(1)と比較して、「高圧圧力の上昇」及び「二重管熱交換器4Aの第1流路を通過し、膨張装置42に流入する前の冷媒温度の上昇」をしており(Q1参照)、膨張装置42で減圧される「中間圧圧力」の冷媒の温度も上昇している(Q2参照)。 なお、(2)の場合の注意点としては、圧縮機1の中間ポートに流入する冷媒流量が、(1)と比較すると相対的に多くなり、吐出冷媒温度が低くなり、圧縮機1の故障の原因となることである。 【0056】 このように、膨張装置42の開度に応じて冷媒状態を変化させることができる。 冷凍装置501の冷凍能力優先モードを実行することは、図5の実線に示すモリエル線図に近づけることに対応し、冷凍装置501の結露抑制優先モードを実行することは、図5の点線に示すモリエル線図に近づけることに対応している。 図5に基づいて冷凍能力優先モード及び結露抑制優先モードの定性的な説明をしたが、次に、具体的な制御方法について説明する。 【0057】 [冷凍装置501の制御フロー] 図6は、実施の形態2に係る冷凍装置501の冷凍能力優先モードの制御フローの一例である。なお、図6の制御開始(START)は、図2のステップS2から移行する制御である。図6を参照して、冷凍装置501の冷凍能力優先モードの動作について説明する。 【0058】 (ステップT0) 制御装置90は、冷凍能力優先モードの制御に移行する。 【0059】 (ステップT1) 制御装置90は、圧縮機1の吐出冷媒温度が、予め設定された値(規定値)以下であるか否かを判定する。なお、予め設定された値は、たとえば、120℃などに設定される。 予め設定された値以下である場合には、ステップT2に移行する。 予め設定された値以下でない場合には、ステップT4に移行する。 【0060】 (ステップT2) 制御装置90は、膨張装置42の開度が、予め設定された開度(最低開度)以上であるか否かを判定する。 予め設定された開度以上である場合には、ステップT3に移行する。 予め設定された開度以上でない場合には、ステップT4に移行する。 【0061】 (ステップT3) 制御装置90は、膨張装置42の開度を小さくする。 圧縮機1の吐出冷媒温度が規定値(たとえば120℃)以下の場合であって、膨張装置42の開度が最低開度以下の場合には、膨張装置42の開度を小さくすることで、「高圧圧力の低下」及び「二重管熱交換器4Aの第1流路を通過し、膨張装置42に流入する前の冷媒温度の低下(高圧液冷媒の温度の低下)」をさせ、膨張装置42で減圧される「中間圧圧力」の冷媒の温度も低下させる。 これにより、二重管熱交換器4Aで熱交換された後の高圧液冷媒の温度を低下させ、蒸発器として機能する熱交換器6の冷媒流入側と冷媒流出側とのエンタルピ差が大きくし、冷凍装置501の冷凍能力を向上させることができる。 なお、本ステップT3における膨張装置42の開度は、後述のステップT4における膨張装置42の開度よりも小さい。 【0062】 (ステップT4) 制御装置90は、膨張装置42の開度を大きくする。 圧縮機1の吐出冷媒温度が規定値以下の場合であって、膨張装置42の開度が最低開度以下の場合には、膨張装置42の後の冷媒流量が小さく、二重管熱交換器4Aにて十分な熱交換ができない。そこで、制御装置90は、膨張装置42の開度を大きくするということである。 また、圧縮機1の吐出冷媒温度が、規定値(たとえば120℃)以上の場合には、圧縮機1の吐出冷媒温度が上昇し圧縮機1が故障にいたる可能性もある。そこで、制御装置90は、膨張装置42の開度を大きくし、圧縮機1にインジェクションする冷媒の流量を大きくすることにより、吐出冷媒温度を低下させている。 ただし、本ステップT4では、たとえば、結露抑制優先モード時よりも、開度が大きくならない範囲で、開度を大きくするとよい。これにより、冷凍能力を向上の効果を得ながらも、吐出冷媒温度を低下させることができるからである。 【0063】 図7は、実施の形態2に係る冷凍装置501の結露抑制優先モードの制御フローの一例である。また、図7の制御開始(START)は、図2のステップS3から移行する制御である。図7を参照して、結露抑制優先モードについて説明する。 【0064】 (ステップU0) 制御装置90は、結露抑制優先モードの制御に移行する。 【0065】 (ステップU1) 制御装置90は、圧縮機1の吐出冷媒温度が、予め設定された値(規定値)以上であるか否かを判定する。なお、予め設定された値は、たとえば、70℃などに設定される。 予め設定された値以上である場合には、ステップU2に移行する。 予め設定された値以上でない場合には、ステップU3に移行する。 【0066】 (ステップU2) 制御装置90は、膨張装置42の開度を大きくする。 圧縮機1の吐出冷媒温度が規定値(たとえば70℃)以上の場合には、膨張装置42の開度を大きくし、「高圧圧力」及び「中間圧圧力」を大きくすることで、「高圧液冷媒」の温度を大きくする。この「高圧液冷媒」が配管300を流れる冷媒であるが、「高圧液冷媒」の温度が大きくなる分、配管300の温度も上昇し、結露が抑制される。 なお、本ステップU2における膨張装置42の開度は、後述のステップU3における膨張装置42の開度よりも大きい。 【0067】 (ステップU3) 制御装置90は、膨張装置42の開度を小さくする。 圧縮機1の吐出冷媒温度が規定値以下の場合には、圧縮機1の吐出冷媒温度が低すぎて故障の原因となる。そこで、膨張装置42の開度を小さくし、圧縮機1にインジェクションされる冷媒の流量を小さくし、吐出冷媒温度を上昇させる。 ただし、本ステップU3では、たとえば、冷凍能力優先モード時よりも、開度が小さくならない範囲で、開度を小さくするとよい。これにより、配管300の結露の抑制の効果を得ながらも、吐出冷媒温度を上昇させることができるからである。 【0068】 なお、図6及び図7における膨張装置42の開度について整理すると、開度の小さい順番に並べると、ステップT3の開度、ステップT4の開度、ステップU3の開度、及びステップU2の開度とするとよい。 ただし、圧縮機1の吐出冷媒温度が高すぎるというような場合などには、圧縮機1の保護を優先するように膨張装置42の開度を変更してもよい。すなわち、ステップT3の開度、ステップT4の開度、ステップU3の開度、及びステップU2の開度の大小関係よりも、圧縮機1の保護を優先する開度設定としてもよい。 【0069】 [実施の形態2に係る冷凍装置501の有する効果] 実施の形態2に係る冷凍装置501は、実施の形態1に係る冷凍装置501の有する効果と同様の効果を奏する。 【0070】 実施の形態3. 図8は、実施の形態3に係る冷凍装置の制御フローの一例である。なお、実施の形態3では、実施の形態1、2に対する相違点を中心に説明するものとする。 実施の形態3に係る冷凍装置は、結露抑制優先モードにおいて、高圧液冷媒温度、すなわち熱源装置100から負荷装置200へと冷媒を流す配管300の配管温度が外気温度よりも高い場合についても考慮に入れたものである。 【0071】 実施の形態3に係る冷凍装置は、図示省略であるが、配管300が設置される室外などの温度(以下、外気温度とも称する)を検出する外気温度センサーと、配管300を流れる高圧液冷媒の温度を検出する冷媒温度センサーとを有している。 そして、制御装置90は、この外気温度センサー及び冷媒温度センサーが接続されており、外気温度センサー及び冷媒温度センサーの検出結果に基づいて膨張装置42の開度を制御する。 以下に、実施の形態3の結露抑制優先モードについて説明する。 【0072】 (ステップV0) 制御装置90は、結露抑制優先モードの制御に移行する。 【0073】 (ステップV1) 制御装置90は、外気温度センサーの検出温度よりも、冷媒温度センサーの検出温度の方が高いか否かを判定する。 高い場合には、ステップV2に移行する。 高くない場合には、ステップV4に移行する。 【0074】 (ステップV2) 制御装置90は、圧縮機1の吐出冷媒温度が、予め設定された値(規定値)以下であるか否かを判定する。なお、予め設定された値は、たとえば、120℃などに設定される。 予め設定された値以下である場合には、ステップV3に移行する。 予め設定された値以下でない場合には、ステップV6に移行する。 【0075】 (ステップV3) 制御装置90は、膨張装置42の開度が、予め設定された開度(最低開度)以上であるか否かを判定する。 予め設定された開度以上である場合には、ステップV5に移行する。 予め設定された開度以上でない場合には、ステップV6に移行する。 【0076】 (ステップV4) 制御装置90は、圧縮機1の吐出冷媒温度が、予め設定された値(規定値)以上であるか否かを判定する。なお、予め設定された値は、たとえば、70℃などに設定される。 予め設定された値以上である場合には、ステップV6に移行する。 予め設定された値以上でない場合には、ステップV7に移行する。 【0077】 (ステップV5) 制御装置90は、膨張装置42の開度を小さくする。 これにより、二重管熱交換器4Aで熱交換された後の高圧液冷媒の温度を低下させ、蒸発器として機能する熱交換器6の冷媒流入側と冷媒流出側とのエンタルピ差が大きくし、冷凍装置501の冷凍能力を向上させることができる。 ただし、本ステップV5の膨張装置42の開度は、配管300を流れる冷媒温度が、外気温度を下回らないように過冷却度を確保する開度としている。これにより、冷凍能力の向上の効果を得ながらも、結露抑制優先モードの本来的な目的である結露の抑制も維持することができる。 【0078】 (ステップV6) 制御装置90は、膨張装置42の開度を大きくする。 圧縮機1の吐出冷媒温度が、規定値以上の場合(ステップV2)及び圧縮機1の吐出冷媒温度が規定値以上の場合(ステップV4)には、圧縮機1の吐出冷媒温度が上昇し圧縮機1が故障にいたる可能性もある。 そこで、制御装置90は、膨張装置42の開度を大きくし、圧縮機1にインジェクションする冷媒の流量を大きくすることにより、吐出冷媒温度を低下させる。 ただし、ステップV1からステップV4を経由して本ステップV6に至った場合には、高圧液冷媒温度が外気温度以下の状態となっている。この場合には、高圧液冷媒温度が外気温度よりも高くなるように、膨張装置42の開度を設定する。これにより、配管300の結露を抑制することができる。 なお、ステップV1からステップV2を経由して本ステップV6に至った場合には、高圧液冷媒温度が、既に外気温度より高い状態であるので、上述のような膨張装置42の開度を設定の制約はなくてもよい。 【0079】 (ステップV7) 制御装置90は、膨張装置42の開度を小さくする。 圧縮機1の吐出冷媒温度が規定値以下の場合には、圧縮機1の吐出冷媒温度が低すぎて故障の原因となる。そこで、膨張装置42の開度を小さくし、圧縮機1にインジェクションされる冷媒の流量を小さくし、吐出冷媒温度を上昇させる。 ただし、本ステップV7では、たとえば、冷凍能力優先モード時よりも、開度が小さくならない範囲で、開度を小さくするとよい。これにより、配管300の結露の抑制の効果を得ながらも、吐出冷媒温度を上昇させることができるからである。 また、本ステップV7では、高圧液冷媒温度が外気温度以下の状態となっているにもかかわらず、膨張装置42の開度を小さくしている。すなわち、結露が生じやすい状態であるが、膨張装置42の開度を小さくして高圧液冷媒温度を下げる方向に作用させている。これは、圧縮機1が故障してしまわないようにすることの方が、結露の抑制よりも優先度が高いためである。 【0080】 ただし、圧縮機1の吐出冷媒温度が高すぎるというような場合などには、圧縮機1の保護を優先するように膨張装置42の開度を変更してもよい。すなわち、ステップV5の開度、ステップV6の開度、及びステップV7の開度の大小関係よりも、圧縮機1の保護を優先する開度設定としてもよい。 【0081】 なお、実施の形態2及び実施の形態3においては、膨張装置42の開度を制御することにより、中間圧圧力(配管43内の圧力)を変化させ、それにより高圧圧力(凝縮温度)を変化させているが、それに限定されるものではない。 たとえば、高圧圧力(凝縮温度)を変化させる手段としては、熱交換器(凝縮器)に付設された送風機の風量を調整して熱交換量を制御することによっても実施することができる。 【0082】 [実施の形態3に係る冷凍装置の有する効果] 実施の形態3に係る冷凍装置は、実施の形態1、2に係る冷凍装置500、501の有する効果と同様の効果を奏する。 【符号の説明】 【0083】 1 圧縮機、2 熱交換器(凝縮器)、3 液溜め、4 過冷却装置、4A 二重管熱交換器、5 膨張装置(第1膨張装置)、6 熱交換器(蒸発器)、42 膨張装置(第2膨張装置)、43 配管(インジェクション配管)、90 制御装置、91 設定装置、92 制御基板、100 熱源装置、200 負荷装置、300 配管、400 配管、500 冷凍装置、501 冷凍装置。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置において、 前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置と、 前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、 前記設定装置において設定された前記結露抑制優先モード、又は前記冷凍能力優先モードに応じて、前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置と、 を有する ことを特徴とした冷凍装置。 【請求項2】 一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記過冷却装置と前記第1膨張装置との間に接続れているインジェクション配管と、 前記インジェクション配管を流れる冷媒を減圧させる第2膨張装置と、 を有し、 前記過冷却装置は、 上流側が前記凝縮器に接続され、下流側が前記第1膨張装置及び前記インジェクション配管の他端に接続される第1流路と、 前記第2膨張装置の下流側の前記インジェクション配管に接続される第2流路とを有し、 前記第1流路を流れる冷媒と前記第2流路を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器で構成した ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記制御装置は、 前記結露抑制優先モード時において、 前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される下限値以上である場合には、 前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される下限値未満である場合よりも、 前記第2膨張装置の開度を大きくする ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。 【請求項5】 前記制御装置は、 前記冷凍能力優先モード時には、前記結露抑制優先モード時よりも前記第2膨張装置の開度を小さくする ことを特徴とする請求項2又は4に記載の冷凍装置。 【請求項6】 前記制御装置は、 前記結露抑制優先モード時において、 前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度が、 前記熱源装置と前記負荷装置とを接続する前記冷媒配管が設置される空間温度より大きい場合には、 前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度が、前記空間温度を下回らない範囲内で前記第2膨張装置の開度を小さくする ことを特徴とする請求項2、4、5のいずれか一項に記載の冷凍装置。 【請求項7】 前記凝縮器に付設され、前記凝縮器に空気を送風する送風機を有し、 前記制御装置は、 前記送風機の回転数を制御して前記凝縮器における空気と冷媒との熱交換量を調整し、前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度を調整する ことを特徴とする請求項1、2、4?6のいずれか一項に記載の冷凍装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-02-09 |
出願番号 | 特願2013-25815(P2013-25815) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(F25B)
P 1 651・ 121- YAA (F25B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲高▼藤 啓 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 紀本 孝 |
登録日 | 2017-01-13 |
登録番号 | 特許第6072559号(P6072559) |
権利者 | 三菱電機株式会社 |
発明の名称 | 冷凍装置 |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |
代理人 | 特許業務法人きさ特許商標事務所 |