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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
管理番号 1339174
異議申立番号 異議2017-700025  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-01-13 
確定日 2018-03-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5950917号発明「センサ素子の温度調整を行うための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5950917号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕、〔14-26〕について訂正することを認める。 特許第5950917号の請求項1ないし26に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5950917号の請求項1ないし26に係る特許についての出願は、2011年(平成23年)9月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年10月6日 独国)を国際出願日として特許出願され、平成28年6月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 平林恭子 により特許異議の申立てがなされ、平成29年3月3日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月7日に意見書の提出があり、平成29年8月25日付けで再度取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月28日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成30年2月2日付けで意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1ないし13、請求項14ないし26をそれぞれ一群の請求項として訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1及び2のとおりである。

(1)請求項1ないし13を一群の請求項とする訂正

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に、選択的発明特定事項の一つとして、「操作量の初期値への設定と、」とあるのを、削除する。

請求項1の訂正に伴い、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし13も同様に訂正される。

(2)請求項14ないし26を一群の請求項とする訂正

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項14に、選択的発明特定事項の一つとして、「操作量の初期値への設定と、」とあるのを、削除する。

請求項14の訂正に伴い、請求項14を直接又は間接的に引用する請求項15ないし26も同様に訂正される。

2 一群の請求項について

訂正前の請求項1ないし請求項13は、上記訂正事項1に係る請求項1の記載を請求項2ないし請求項13がそれぞれ直接又は間接的に引用しているものであるから一群の請求項であり、上記訂正事項1は、この一群の請求項について訂正を請求するものと認められる。
また、訂正前の請求項14ないし請求項26は、上記訂正事項2に係る請求項14の記載を請求項15ないし請求項26がそれぞれ直接又は間接的に引用しているものであるから一群の請求項であり、上記訂正事項2は、この一群の請求項について訂正を請求するものと認められる。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項1は、
「 前記監視ステップにおける前記操作量の作用には、以下の1つ又は複数の作用が含まれている、すなわち、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、
固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、
操作量の初期値への設定と、
操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、
操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、
閉ループ制御の遮断と、
のうち、1つ又は複数の作用が含まれており、」
と記載された「操作量の作用」に係る複数の選択肢の中から、「操作量の初期値への設定」という選択肢を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項1は、選択肢の一つを削除するものであるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項1は、上記アで示したように特許請求の範囲の請求項1を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項2は、
「前記監視手段による前記監視ステップにおける前記操作量の作用には、以下の1つ又は複数の作用が含まれている、すなわち、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、
固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、
操作量の初期値への設定と、
操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、
操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、
閉ループ制御の遮断と、
のうち、1つ又は複数の作用が含まれており、」
と記載された「操作量の作用」に係る複数の選択肢の中から、「操作量の初期値への設定」という選択肢を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項2は、選択肢の一つを削除するものであるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正事項2は、上記アで示したように特許請求の範囲の請求項14を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

4 むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕、〔14-26〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明

本件訂正により訂正された訂正請求項1ないし26に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明26」という。)は、平成29年11月28日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし26に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】
測定ガス空間(112)内のガスの少なくとも1つの特性を検出するための、加熱装置(124)を用いて加熱可能なセンサ素子(118)の温度調整を行うための方法であって、
前記方法は、前記加熱装置(124)の少なくとも1つの閉ループ制御を含んでおり、
前記閉ループ制御には、
a)前記センサ素子(118)の少なくとも1つの閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値を検出するステップと、
b)前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を求めるステップと、
c)前記目標値と前記実際値との比較を用いて前記加熱装置(124)の少なくとも1つの操作量を形成するステップと、
d)少なくとも1つの監視ステップを実行するステップとが含まれ、
前記監視ステップでは、温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータが検査され、当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされ、さらに、
前記監視ステップにおけるパラメータの検査には、以下のような1つ又は複数の検査が含まれている、すなわち、
前記パラメータが、固定的若しくは動的に設定された少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
前記パラメータの時間的経過と前記少なくとも1つの閾値の時間的経過との比較を行う検査と、
のうち、1つ又は複数の検査が含まれ、さらに
前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかについての問合せを含み、
前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかについての問合せを含み、
前記監視ステップにおける前記操作量の作用には、以下の1つ又は複数の作用が含まれている、すなわち、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、
固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、
操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、
操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、
閉ループ制御の遮断と、
のうち、1つ又は複数の作用が含まれており、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の前記作用は、前記パラメータの、時間的に隣接し変動量の大きい測定値の拒否であり、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の前記変更は、閉ループ制御回路の積分成分の遮断である、
ことを特徴とする方法。

【請求項2】
前記方法は、前記加熱装置(124)のさらに1つの開ループ制御を含み、該開ループ制御に前記閉ループ制御が少なくとも一時的に重畳される、請求項1記載の方法。

【請求項3】
さらに少なくとも1つの開ループ制御量が検出され、該開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項2記載の方法。

【請求項4】
前記少なくとも1つの開ループ制御量は、以下のパラメータ、すなわち、
前記センサ素子(118)の周辺温度と、
ガスを含有若しくは生成若しくは利用する装置の作動パラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺で発生するガス流を特徴付けるパラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺に生じる温度を特徴付けるパラメータと、
触媒温度及び/又は管壁温度と、
エンジン回転数と、
エンジン負荷状態と、
から選択される、請求項3記載の方法。

【請求項5】
前記作動パラメータは、内燃機関の作動領域であり、
前記温度を特徴付けるパラメータは、前記温度を定量化するパラメータである、請求項4記載の方法。

【請求項6】
前記内燃機関の前記作動領域は、エンジン作動点であり、
前記温度を定量化するパラメータは、排ガス温度である、請求項5記載の方法。

【請求項7】
前記加熱装置(124)の開ループ制御は、前記開ループ制御量を考慮して行われる、請求項2から6いずれか1項記載の方法。

【請求項8】
前記目標値の算出は、前記開ループ制御量を考慮して行われる、請求項2から7いずれか1項記載の方法。

【請求項9】
前記少なくとも1つの閉ループ制御量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗と、
前記センサ素子(118)の温度と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流と、
導電性構造部の電気抵抗と、
から選択されている、請求項1から8いずれか1項記載の方法。

【請求項10】
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗は、前記センサ素子(118)の少なくとも1つの電気化学的セル(134)の内部抵抗であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の2つの電極(126,130)間の電圧であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流であり、
前記導電性構造部の電気抵抗は、前記センサ素子(118)の導電性構造部の電気抵抗である、請求項9記載の方法。

【請求項11】
前記操作量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電圧と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力と、
前記加熱装置(124)に供給される加熱電流と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力のパルス幅変調のパラメータと、
から選択されている、請求項1から10いずれか1項記載の方法。

【請求項12】
前記監視ステップにおいて検査されるパラメータは以下のパラメータ、すなわち、
前記閉ループ制御量の実際値と、
前記閉ループ制御量の目標値と、
前記操作量と、
開ループ制御量と、
から選択され、前記開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項1から11いずれか1項記載の方法。

【請求項13】
前記少なくとも1つの特性は、前記ガス中の少なくとも1つのガス成分の割合である、請求項1から12いずれか1項記載の方法。

【請求項14】
測定ガス空間(112)内のガスの少なくとも1つの特性を検出するためのセンサ装置(110)であって、
前記センサ装置(110)が、
前記特性を検出するための少なくとも1つのセンサ素子(118)と、
前記センサ素子(118)の少なくとも一部を加熱するための少なくとも1つの加熱装置(124)と、
前記加熱装置(124)を駆動制御するための少なくとも1つの駆動制御装置(114)と、
を備え、
前記駆動制御装置(114)は、前記加熱装置(124)の閉ループ制御を行う閉ループ制御部を備え、
前記閉ループ制御部は、
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値を検出する閉ループ制御量検出手段と、
前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を算出する算出手段と、
前記目標値と前記実際値との比較を用いて前記加熱装置(124)の少なくとも1つの操作量を形成する形成手段と、
少なくとも1つの監視ステップを実行する監視手段と、
を備え、
前記監視手段は、温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータを検査し、当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされるようにし、さらに、
前記監視手段において実施される前記パラメータの検査には、以下のような1つ又は複数の検査が含まれている、すなわち、
前記パラメータが、固定的若しくは動的に設定された少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
前記パラメータの時間的経過と前記少なくとも1つの閾値の時間的経過との比較を行う検査と、
のうち、1つ又は複数の検査が含まれており、さらに
前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかについての問合せを含み、
前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかについての問合せを含み、
前記監視手段による前記監視ステップにおける前記操作量の作用には、以下の1つ又は複数の作用が含まれている、すなわち、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、
固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、
操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、
操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、
閉ループ制御の遮断と、
のうち、1つ又は複数の作用が含まれており、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の前記作用は、前記パラメータの、時間的に隣接し変動量の大きい測定値の拒否であり、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の前記変更は、閉ループ制御回路の積分成分の遮断である、
ことを特徴とするセンサ装置(110)。

【請求項15】
前記駆動制御装置(114)は、前記加熱装置(124)の開ループ制御を行う開ループ制御部をさらに備え、前記開ループ制御部による前記開ループ制御に前記閉ループ制御部による前記閉ループ制御が少なくとも一時的に重畳される、請求項14記載のセンサ装置(110)。

【請求項16】
前記開ループ制御部は、少なくとも1つの開ループ制御量を検出する開ループ制御量検出手段を備え、該開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項15記載のセンサ装置(110)。

【請求項17】
前記少なくとも1つの開ループ制御量は、以下のパラメータ、すなわち、
前記センサ素子(118)の周辺温度と、
前記ガスを含有若しくは生成若しくは利用する装置の作動パラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺で発生するガス流を特徴付けるパラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺に生じる温度を特徴付けるパラメータと、
触媒温度及び/又は管壁温度と、
エンジン回転数と、
エンジン負荷状態と、
から選択される、請求項16記載のセンサ装置(110)。

【請求項18】
前記作動パラメータは、内燃機関の作動領域であり、
前記温度を特徴付けるパラメータは、前記温度を定量化するパラメータである、請求項17記載のセンサ装置(110)。

【請求項19】
前記内燃機関の前記作動領域は、エンジン作動点であり、
前記温度を定量化するパラメータは、排ガス温度である、請求項18記載のセンサ装置(110)。

【請求項20】
前記開ループ制御部は、前記開ループ制御量を考慮して前記加熱装置(124)の開ループ制御を行う、請求項15から19いずれか1項記載のセンサ装置(110)。

【請求項21】
前記算出手段は、前記開ループ制御量を考慮して前記目標値の算出を行う、請求項15から20いずれか1項記載のセンサ装置(110)。

【請求項22】
前記少なくとも1つの閉ループ制御量は、以下のグループから選択されている、すなわ
ち、
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗と、
前記センサ素子(118)の温度と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流と、
導電性構造部の電気抵抗と、
から選択されている、請求項14から21いずれか1項記載のセンサ装置(110)。

【請求項23】
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗は、前記センサ素子(118)の少なくとも1つの電気化学的セル(134)の内部抵抗であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の2つの電極(126,130)間の電圧であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流であり、
前記導電性構造部の電気抵抗は、前記センサ素子(118)の導電性構造部の電気抵抗である、請求項22に記載のセンサ装置(110)。

【請求項24】
前記操作量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電圧と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力と、
前記加熱装置(124)に供給される加熱電流と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力のパルス幅変調のパラメータと、
から選択されている、請求項14から23いずれか1項記載のセンサ装置(110)。

【請求項25】
前記監視手段が前記監視ステップにおいて検査するパラメータは、以下のパラメータ、すなわち、
前記閉ループ制御量の実際値と、
前記閉ループ制御量の目標値と、
前記操作量と、
開ループ制御量と、
から選択され、前記開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項14から24いずれか1項記載のセンサ装置(110)。

【請求項26】
前記少なくとも1つの特性は、前記ガス中の少なくとも1つのガス成分の割合である、請求項14から25いずれか1項記載のセンサ装置(110)。

2 取消理由の概要

(1)訂正前の請求項1、9ないし14、22ないし26に係る特許に対して平成29年3月3日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

ア 取消理由1-1

請求項1、9ないし14、22ないし26に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。よって、その特許は同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 取消理由1-2

請求項1、9ないし14、22ないし26に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)訂正前の請求項1ないし26に係る特許に対して平成29年8月25日付けで特許権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

ア 取消理由2

請求項1ないし26に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、その特許は同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 甲号証の記載事項

甲第1号証:特開2002-48761号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2010-112813号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2000-65784号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2003-166970号公報(以下「甲4」という。)

(1)甲1の記載事項

本件特許に係る出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(甲1-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス濃度センサのヒータ制御装置に係り、詳しくは、内燃機関の排出ガス中の酸素濃度を検出する空燃比センサ等において、同センサを活性化するためのヒータの通電を好適に制御するための技術に関するものである。」

(甲1-イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、検出素子は、ヒータによる長時間の加熱やガソリン成分の被毒などが原因で劣化し、インピーダンス特性が変化するおそれがある。この場合、インピーダンス特性の変化が原因で素子温度が上昇し、この状態でヒータ通電を継続することにより更なる熱劣化を助長するおそれがあった。また、この状態で内燃機関から高温の排出ガスが排出されると、素子温度がより一層上昇するおそれもある。
【0005】本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、検出素子の劣化を好適に検出し、ひいては当該検出素子の保護を図ることができるガス濃度センサのヒータ制御装置を提供することである。」

(甲1-ウ)「【0006】
【課題を解決するための手段】ガス濃度センサは、素子抵抗(検出素子のインピーダンス)が目標値に一致するよう予め規定した通電量の範囲内でヒータ通電量がフィードバック制御される(ヒータ制御手段)。そして、このヒータ通電制御にて検出素子が活性化されることにより、検出素子は、内燃機関の排出ガス中の特定成分濃度にほぼ比例した限界電流を出力する。特に請求項1に記載の発明では、ヒータ通電のフィードバック制御が実施される場合に、ヒータ通電量が規定範囲の上限値又はその近傍にあれば、その状態から検出素子の劣化を判定する(劣化判定手段)。
【0007】要するに、検出素子が劣化すると素子抵抗が大きくなるために目標値との偏差が大きくなり、その偏差をなくすようなフィードバック制御を継続すると、ヒータ通電量が大きくなってフィードバック制御の規定範囲の上限値に達する。それ故に、ヒータ通電量が規定範囲の上限値又はその付近にあれば、検出素子の劣化が好適に検出できる。この場合、検出素子の劣化が正しく検出できれば、それ以降のヒータ通電を制限したりすることにより検出素子の更なる劣化進行が抑制される。従って、検出素子の保護を図ることが可能となる。」

(甲1-エ)「【0018】図1は、本実施の形態における空燃比制御システムの概要を示す全体構成図である。図1において、限界電流式空燃比センサ(以下、A/Fセンサという)30は、エンジン10のエンジン本体11から延びる排気管12に取り付けられており、電子制御ユニット(以下、ECUという)20から指令される電圧の印加に伴い、排ガス中の酸素濃度に比例したリニアな空燃比検出信号(センサ電流信号)を出力する。
【0019】ECU20は、各種制御の中枢をなすマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)21を備えており、マイコン21は、各種の演算プログラムを実行するCPU22と、各種プログラムや制御データを予め記憶するROM23と、演算データを一時的に記憶するNRAM(ノーマルRAM)24と、電源遮断時にも記憶内容を保持するデータバックアップ用のSRAM(スタンバイRAM)25等により構成されている。マイコン21は、エンジン10の燃料噴射制御や点火制御を実施する他に、A/Fセンサ30への印加電圧制御や同センサ30のヒータ通電制御を実施する。
・・・
【0022】更に、マイコン21は、ヒータ制御回路29に対してヒータ制御信号を出力する。これにより、A/Fセンサ30に設けられたヒータ64の通電がデューティ制御される。」

(甲1-オ)「【0021】バイアス制御回路40内の電流検出回路50は、A/Fセンサ30への電圧の印加に伴い流れる電流値を検出する。当該電流検出回路50にて検出された電流値のアナログ信号は、A/D変換器28を介してマイコン21に入力される。マイコン21は、所定の時間周期(例えば数ミリ秒毎)でセンサ電流を取り込み、その電流値をA/Fに変換する。また、A/Fセンサ30のインピーダンス検出に際しては、マイコン21から出力される矩形状のバイアス指令信号Vrにより、単発的で且つ所定の時定数を持った電圧がA/Fセンサ30に印加される。」

(甲1-カ)「【0023】A/Fセンサ30は、積層型のセンサ素子部(セル)60を有するものであって、その構成を図2及び図3を用いて説明する。ここで、図2は、A/Fセンサ30の全体構成を示す断面図、図3は、A/Fセンサ30を構成するセンサ素子部60の断面図である。
・・・
【0026】次に、センサ素子部60の構成を図3を用いて説明する。センサ素子部60は大別して、固体電解質からなる検出素子61、ガス拡散抵抗層62、大気導入ダクト63及びヒータ64からなり、これら各部材を積層して構成されている。また、各部材の周囲には保護層65が設けられている。
【0027】長方形板状の検出素子(固体電解質)61は部分安定化ジルコニア製のシートであり、その上面(ガス拡散抵抗層62側)には白金等からなる多孔質の計測電極66が形成されると共に、下面(大気導入ダクト63側)には同じく白金等からなる多孔質の大気側電極67が形成されている。計測電極66及び大気側電極67には、リード部66a,67aが接続されており、その先はECU20に接続されている。」

(甲1-キ)「【0031】上記構成のA/Fセンサ30は、図4に示す電圧-電流特性を持つ。すなわち、センサ素子部60(検出素子61)は、酸素濃度を直線的特性にて検出し得るものであり、酸素濃度に応じた限界電流を発生する。限界電流(センサ電流)の増減はA/F値の増減(すなわち、リーン・リッチの程度)に対応しており、A/F値がリーン側になるほど限界電流は増大し、A/F値がリッチ側になるほど限界電流は減少する。ここで、検出素子61のインピーダンス(素子抵抗)と同素子61の温度(素子温度)とは相関があり、素子温度が上昇するほど、インピーダンスが低下する傾向にある。この場合、検出素子61のインピーダンスが目標値(例えば30Ω)になるようヒータ通電をF/B制御することにより、素子温度が目標温度(例えば750℃)に保持される。」

(甲1-ク)「【0032】次に、ヒータ通電制御の概要について説明する。ここで、図6?図8は、何れもマイコン21内のCPU22により実施される制御プログラムを示すフローチャートであり、このうち図6は、エンジン始動時にイニシャルルーチンとして実行される。また、図7はヒータ制御量算出ルーチンであり、例えば131ミリ秒毎に実行される。図8は目標インピーダンス更新処理であり、例えば1秒毎に実行される。
【0033】さて、エンジン始動に伴い図6の処理が起動すると、ステップ101では、SRAM25に既に記憶されている目標インピーダンスZtg(前回までの学習値)を読み出し、そのZtgをNRAM24に記憶する。以降、NRAM24のZtg値を用いたヒータ64の通電制御が可能となり、前回運転時までの学習結果を反映したヒータ制御が実施されるようになる。
【0034】一方、図7では、大きくは全通電制御、第1のヒータF/B制御、第2のヒータF/B制御が順次実施されるようになっており、概略として、エンジンの始動当初には全通電制御が実施され、その全通電制御ではヒータ制御量(Duty)が100%で制御される。また、全通電制御に引き続き第1のヒータF/B制御が実施され、この第1のヒータF/B制御では、インピーダンスの偏差に応じてヒータ制御量(Duty)が0?80%の規定範囲内で制御される。更に、第1のヒータF/B制御に引き続き第2のヒータF/B制御が実施され、この第2のヒータF/B制御では、インピーダンスの偏差に応じてヒータ制御量(Duty)が0?60%の規定範囲内で制御される。
【0035】具体的には、センサ新品時のインピーダンス特性を示す図10において、実インピーダンスZreと素子温度とが図の実線の関係にあり、目標インピーダンスZtgが素子温度750℃相当の「30Ω」である場合、インピーダンスの偏差ΔZ(=Zre-Ztg)が所定値K1(例えば、20Ω)よりも大きければ、全通電制御が実施される。また、インピーダンスの偏差ΔZが所定値K2?K1の範囲内(例えば、10?20Ω)にあれば、第1のヒータF/B制御が実施され、ΔZが所定値K2(例えば、10Ω)よりも小さければ、第2のヒータF/B制御が実施される。
【0036】更に、第2のヒータF/B制御が実施されるとき、ヒータ制御量(Duty)がF/B制御範囲の上限値(60%)のまま継続されると、検出素子61が劣化している旨が判定される。つまり、検出素子61が劣化すると目標値に対するインピーダンスの偏差が大きくなり、その偏差をなくすようなF/B制御を継続すると、Dutyが大きくなってF/B制御範囲の上限値に達する。このことから、検出素子61の劣化が検出されるようになっている。
【0037】なおここで、実インピーダンスZreは、周知の掃引法により検出されるようになっており、詳しくは図5に示すように、A/Fセンサ30の印加電圧を一時的に正方向及び負方向に変化させる。そして、この電圧変化時における正負何れか一方の電圧変化量ΔVと電流変化量ΔIとから実インピーダンスZreを算出する(Zre=ΔV/ΔI)。以下、ヒータ通電の詳しい内容を図7に従い説明する。
【0038】先ず図7のステップ201では、検出素子61の劣化判定を行う。ここで、劣化判定は、第2のヒータF/B制御が実施される場合に、ヒータ制御量(Duty)が上限値(60%)のまま所定時間以上継続されているかどうかにより行い、実際には、エンジン始動後300秒が経過していることを前提に、後述するカウンタCmaxの値が所定時間(例えば20秒)以上であれば、検出素子61が劣化している旨を判定する。
【0039】素子劣化でなければ、そのままステップ204に進む。また、素子劣化であればステップ202に進み、目標インピーダンスZtgの補正を行う。つまり、ステップ202では、インピーダンスの偏差ΔZに応じて、NRAM値である目標インピーダンスZtgを補正する。但し、目標インピーダンスZtg(NRAM値)の補正は増加側にのみ限って行うこととしており、その理由については後述する。
【0040】この目標インピーダンスZtgの補正に際し、なまし演算等の手法を用いて補正を行うのが望ましく、一例として、
Ztg=Ztg(i-1)+ΔZ/4
といった演算により目標インピーダンスの前回値Ztg(i-1)を補正し、今回値を算出する。なお、上記補正には、前回処理時のΔZ値を用いればよい。勿論、比較的小さな一定の更新量αで目標インピーダンスZtgを補正する構成でも良い(Ztg=Ztg(i-1)+αとする)。目標インピーダンスZtgの補正後、ステップ203では、カウンタCmaxをクリアする。
【0041】その後、ステップ204では、実インピーダンスZreと目標インピーダンスZtgとから偏差ΔZを算出する(ΔZ=Zre-Ztg)。次に、ステップ205では、ヒータ制御の許可条件が成立するか否かを判別する。この許可条件としては、・エンジン始動後にエンジン回転数が所定値(例えば200rpm)以上に上昇したこと、
・バッテリ電圧が低下していないこと、
・ヒータ制御に関与するその他のセンサの異常がないこと、
等を含み、これらが成立する場合にヒータ制御が許可される。ヒータ制御の許可条件が不成立の場合、ステップ206に進み、ヒータ制御量(Duty)を0%とする。
【0042】また、ヒータ制御の許可条件が成立した場合はステップ207に進み、ヒータ全通電を実施するか否かを判別する。ヒータ全通電の実施条件としては、全通電の開始後の経過時間が所定時間(例えば10秒)以内であり、且つインピーダンス偏差ΔZ(=Zre-Ztg)が所定値K1以上であることを含み、エンジンの低温始動時等においては実インピーダンスZreが非常に大きな値であることから、ステップ207がYESとなり、ヒータ全通電を実施する。つまり、ステップ208に進み、ヒータ制御量(Duty)を100%とする。
【0043】また、ステップ207がNOであればステップ209に進み、インピーダンスの偏差ΔZが所定値K2よりも大きいか否かを判別する。そして、ステップ209がYESであればステップ210に進み、第1のヒータF/B制御を実施する。このとき、前述した通り0?80%の範囲でDutyが設定される。但し実際には、エンジンの始動直後はインピーダンスの偏差ΔZが未だ大きいため、80%付近のDutyが設定されることとなる。
【0044】また、ステップ209がNOの場合、ステップ211に進み、第2のヒータF/B制御を実施する。このとき、前述した通り0?60%の範囲でDutyが設定される。本実施の形態の場合、インピーダンスの偏差ΔZに応じて、ヒータ制御量(Duty)が0%,20%,40%,60%の何れかに設定されるようになっている(但し、第1のヒータF/B制御では、これに80%が加わる)。図10を用いて具体的に説明すれば、・素子温度が目標値よりも高温の場合において、ΔZ<-K4であれば、Duty=0%とし、ΔZ=-K3?-K4であれば、Duty=20%とする。・素子温度が目標値付近にあれば、すなわち、|ΔZ|≦K3であれば、この温度が保持できるようDuty=40%とする。・素子温度が目標値よりも低温の場合において、ΔZ=K3?K2であれば、Duty=60%とする。
【0045】その後、ステップ212では、その時のDutyが上限(60%又はその近傍)にあるか否かを判別する。そして、YESであればステップ213に進み、カウンタCmaxをインクリメントする。また、ステップ212がNOであればステップ214に進み、カウンタCmaxをクリアする(ステップ208,210の処理後も同様)。上記ステップ212,213によれば、第2のヒータF/B制御が実施される場合においてヒータ制御量(Duty)が上限値のまま継続されると、その継続時間が計測される。A/Fセンサ30の劣化時には、ステップ212がYESとなる状態が続くため、カウンタCmaxがカウントアップされていく。
【0046】最後に、ステップ215では、ヒータ制御量の急変を防止すべく、今回設定したヒータ制御量(Duty)になまし処理を実施する。例えば、
Duty=(3×Duty(i-1)+今回Duty)/4
といった演算によりDutyを設定する。」

(甲1-ケ)【図3】




(甲1-コ)【図7】




(2)甲1に記載された発明

(甲1-ア)ないし(甲1-コ)から、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。

「 エンジン10のエンジン本体11から延びる排気管12に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度に比例したリニアな空燃比検出信号を出力する限界電流式空燃比センサ(以下、A/Fセンサという)30におけるヒータ64の通電をデューティ制御する方法であって、
A/Fセンサ30は、センサ素子部60を有し、センサ素子部60は、検出素子61及びヒータ64を含み、
マイコン21がヒータ制御回路29に対してヒータ制御信号を出力し、これにより、A/Fセンサ30に設けられたヒータ64の通電がデューティ制御され、検出素子61のインピーダンスが目標値になるようヒータ通電をF/B制御することにより、素子温度が目標温度に保持されるものであり、
マイコン21が実行する制御プログラムは、
SRAM25に既に記憶されている目標インピーダンスZtg(前回までの学習値)を読み出し、そのZtgをNRAM24に記憶するステップ101と、
掃引法により検出された実インピーダンスZreと目標インピーダンスZtgとから偏差ΔZ(ΔZ=Zre-Ztg)を算出するステップ204と、
インピーダンスの偏差ΔZに応じて0?60%の範囲でヒータ制御量を設定するステップ211と、
ヒータ制御量が上限にあるか否かを判別するステップ212と、
ステップ212の判定がYESであればカウンタCmaxをインクリメントし、継続時間を計測するステップ213と、
検出素子61の劣化判定を、ヒータ制御量が上限値のまま所定時間以上継続されているかどうかにより行うステップ201と、
素子劣化であれば、Ztg=Ztg(i-1)+ΔZ/4といった演算により目標インピーダンスの前回値Ztg(i-1)を補正し、今回値を算出するステップ202と、
を含む方法。」
(以下「甲1方法発明」という。)

「 限界電流式空燃比センサ(以下、A/Fセンサという)30と電子制御ユニット(以下、ECUという)20を備えた空燃比制御システムであって、
A/Fセンサ30は、センサ素子部60を有し、センサ素子部60は、検出素子61及びヒータ64を含み、エンジン10のエンジン本体11から延びる排気管12に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度に比例したリニアな空燃比検出信号を出力し、
ECU20は、各種制御の中枢をなすマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)21と、ヒータ制御回路29とを備えており、
マイコン21がヒータ制御回路29に対してヒータ制御信号を出力し、これにより、A/Fセンサ30に設けられたヒータ64の通電がデューティ制御され、検出素子61のインピーダンスが目標値になるようヒータ通電をF/B制御することにより、素子温度が目標温度に保持されるものであり、
マイコン21は、
SRAM25に既に記憶されている目標インピーダンスZtg(前回までの学習値)を読み出し、そのZtgをNRAM24に記憶するステップ101と、
掃引法により検出された実インピーダンスZreと目標インピーダンスZtgとから偏差ΔZ(ΔZ=Zre-Ztg)を算出するステップ204と、
インピーダンスの偏差ΔZに応じて0?60%の範囲でヒータ制御量を設定するステップ211と、
ヒータ制御量が上限にあるか否かを判別するステップ212と、
ステップ212の判定がYESであればカウンタCmaxをインクリメントし、継続時間を計測するステップ213と、
検出素子61の劣化判定を、ヒータ制御量が上限値のまま所定時間以上継続されているかどうかにより行うステップ201と、
素子劣化であれば、Ztg=Ztg(i-1)+ΔZ/4といった演算により目標インピーダンスの前回値Ztg(i-1)を補正し、今回値を算出するステップ202と、
を含む制御プログラムを実行する、
空燃比制御システム。」
(以下「甲1装置発明」という。)

(3)甲2の記載事項

本件特許に係る出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲2には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(甲2-ア)「【0001】
本発明は、固体電解質体および該固体電解質体に設けられた一対の電極を備えるセルを少なくとも1つ以上有すると共に特定ガスの濃度を検出するガスセンサに接続され、セルの1つのインピーダンスを検出してガスセンサが有するヒータの通電制御を行うセンサ制御装置およびセンサ制御方法に関する。」

(甲2-イ)「【0007】
しかしながら、特許文献2記載の技術の場合、上記した異常を検出するとヒータへの通電を禁止するため、ガスセンサが冷えて被測定ガス(排気ガス)中のカーボン等の異物がセンサ表面(センサ素子の表面)に付着するという問題がある。そのため、セルの配線の異常を検出した後に、セルの配線異常が解消あるいは回復して通常のヒータ制御に戻ったとしても、ヒータの通電を禁止していたときにセンサ素子の表面に付着したカーボン等の異物の影響で、センサ素子が特定ガスの濃度に応じた出力を正常に行えないといった問題を引き起こすことがある。
すなわち、本発明は、セルの配線異常等により検出されるガスセンサのインピーダンスが過大になった状態が継続する場合にも、ヒータが過昇温されてガスセンサが高温になり過ぎることを防止すると共に、ヒータへの通電をオフにせず、ガスセンサが冷えてカーボン等の異物がセンサ表面に付着するのを防止したガスセンサ制御装置及びガスセンサ制御方法の提供を目的とする。」

(甲2-ウ)「【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガスセンサ制御装置(電子制御ユニット;ECU)5を含む、内燃機関制御システム1の構成を示す概略図である。なお、内燃機関制御システム1は、内燃機関(エンジン)の運転状態を制御するための各種制御処理を実行し、被測定ガス(排気ガス)に含まれる特定ガス(酸素)の濃度を検出する処理を実行している。
内燃機関制御システム1は、電子制御ユニット5、ガスセンサ8を備え、ガスセンサ8はエンジンの排気管に取り付けられている。電子制御ユニット5は、ガスセンサ8(センサ素子10)を制御するセンサ制御回路2、エンジン制御装置9(以下、「エンジンCPU」9ともいう)、ヒータ43を制御するヒータ制御回路60を備え、センサ制御回路2はセンサ駆動回路52を含んでいる。エンジン制御装置9は、ヒータ制御回路60に接続され、センサ素子10の温度が作動温度(以降、活性化温度ともいう)となるようにヒータ制御回路60を制御する。又、エンジン制御装置9は、伝送ケーブル71を介してセンサ制御回路2に接続されてセンサ制御回路2を制御する。
【0017】
ガスセンサ8は、被測定ガス(排気ガス)中の酸素濃度を広域にわたって検出するセンサ素子10と、センサ素子10を作動温度に保つためのヒータ43とを備え、いわゆる全領域空燃比センサとして動作する。又、センサ素子10は、酸素ポンプセル14と、多孔質拡散層18と、酸素濃度検知セル24と、補強板30とを備えている。ガスセンサ8の詳細な構成については後述する。
【0018】
センサ制御回路2は、ガスセンサ8に電気的に接続されるセンサ駆動回路52等を備えている。センサ駆動回路52は、ガスセンサ8(酸素ポンプセル14および酸素濃度検知セル24)に通電してこれらの駆動制御を行い、酸素ポンプセル14の出力(ガス検出信号)や素子インピーダンス(実際は、酸素濃度検知セル24の素子インピーダンスに応じて変化するインピーダンス信号Vrpvs)を検出する。センサ制御回路2は、検出されたガス検出信号およびインピーダンス信号をエンジン制御装置9に出力する。
ここで、本実施形態では、酸素濃度検知セル24が素子インピーダンスの検出対象のセルであるので、酸素濃度検知セル24が特許請求の範囲の「インピーダンス検出対象セル」に相当する。」

(甲2-エ)「【0022】
さらに、エンジン制御装置9は、センサ制御回路2から出力されるインピーダンス信号Vrpvsに基づいて酸素濃度測定セル24のインピーダンスRpvsを算出し、算出したインピーダンスRpvsに応じたヒータ43の通電指令をヒータ制御回路60に出力するヒータ通電制御処理も実行している。」

(甲2-オ)「【0046】
次に、図3を参照し、本発明の主な特徴部分である、エンジン制御装置9で実行される過昇温防止処理の概要について説明する。
本発明においては、酸素濃度検知セル24のVs+ラインの断線等により、酸素濃度検知セル24のインピーダンスRpvsが異常閾値(インピーダンス異常閾値)以上になったときに、1)ヒータ43への最大実効電圧の印加時間を所定のヒータ過昇温防止時間以下で打ち切った後、2)最大実効電圧未満でかつ酸素濃度検知セル24の温度が500℃以上となる(換言すれば、酸素濃度検知セル24のインピーダンスRvpsが500℃以上に相当する値となる)低実効電圧でヒータ43を通電する処理を行う。
つまり、図3に示すように、酸素濃度検知セル24のVs+ラインが断線すると、インピーダンスが無限大ないし過度に大きくなるため、酸素濃度検知セル24が低温であると誤認識され、ヒータ43に最大実効電圧が通電され続けてしまう。その結果、ガスセンサ8の温度が異常に上昇して(1000℃を超え)、破損に至るおそれがある(図3における一点鎖線にて示したガスセンサの温度推移参照)。
なお、Vs+ラインがグランド電位に短絡した場合は、信号自体が検出できないので、異常が生じたことが直ちに判明し、別の方法で対応することができる。
【0047】
そこで、酸素濃度検知セル24のインピーダンスRpvsが異常閾値(本実施形態では400Ω)以上になると、ヒータ43への最大実効電圧の印加時間をヒータ過昇温防止時間(TOP、Tcl)内に制限することで、ガスセンサ8が高温になるのを防止する(図3における実線にて示したガスセンサの温度推移参照)。
さらに、ヒータ過昇温防止時間が経過した後は、ヒータ43へ最大実効電圧より低い低実効電圧を印加することで、異常が生じてもヒータ43への通電をオフにせずにガスセンサ8(センサ素子10)が冷えて異物(カーボン等)がセンサ素子10の表面に付着するのを防止する温度で加熱するようにしている。
そして、酸素濃度検知セル24のインピーダンスRpvsが異常閾値未満に低下した場合には、通常のPI演算によるヒータ制御処理に移行する。このPI演算は公知であり、目標とするRpvsと、ステップS18の処理時におけるRpvsの差ΔRpvsから、ガスセンサ8の温度を一定に保つためのヒータ印加電圧が計算される。」

(甲2-カ)「【0057】
次に、図5を参照し、サブルーチンである過昇温防止処理の内容について説明する。過昇温防止処理が開始されると、まず、エンジン制御装置9は酸素濃度測定セル24のインピーダンスRpvsが異常閾値(本実施形態では、400Ωに設定)未満であるか否かを判定する(ステップS50)。インピーダンスRpvsが400Ω未満の場合、エンジン制御装置9は、過昇温防止カウンタを0にすると共に、過昇温防止フラグをオフ(「0」)にし(ステップS52)、処理を終了する。
一方、ステップS50で「No」である場合、エンジン制御装置9は、ヒータ印加電圧(Vhrms)が最大実効電圧であるか否かを判定する(ステップS54)。ステップS54で「No」であれば、処理を終了する。
【0058】
ステップS54で「Yes」である場合、エンジン制御装置9は、ステップS50で異常が判定されたにも関わらず、ヒータ43が最大実効電圧で通電されたものと判断し、図3に示すように最大実効電圧の印加時間をヒータ過昇温防止時間以下で打ち切る時間をスタートするため、過昇温防止カウンタをインクリメントする(ステップS56)。
次に、エンジン制御装置9は、センサ活性経験フラグがオン(「1」)であるか否かを判定する(ステップS58)。ステップS58の判定は、センサ活性経験フラグの状態に応じて、ガスセンサ8の温度が異なることが想定され、ガスセンサ8の温度に応じて最適のヒータ過昇温防止時間(上記したTOP、Tcl)を選択するために行われる。
【0059】
そして、ステップS58で「No」(センサ活性経験フラグがオフ)であればステップS60へ移行する。ステップS60では、センサ活性経験フラグがオフである、つまりガスセンサ8が活性状態の手前で未だ冷えているものと判断し、エンジン制御装置9は、過昇温防止カウンタがTOP以上になったか否かを判定する。
ステップS60で「Yes」(過昇温防止カウンタがTOP以上)の場合、最大実効電圧でのヒータへの印加時間がTOPになったことを意味する。従って、エンジン制御装置9は、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる指令(ヒータオン信号)を所定の通電率(デューティ)でヒータ制御回路60に出力する(この実施形態では、ヒータ43への実効電圧が低実効電圧としての8Vに設定されるように通電率が設定されている)と共に、過昇温防止フラグをオン(「1」)にする(ステップS62)。ヒータ制御回路60は、上記ヒータオン信号に基づいてヒータ43に低実効電圧を印加する。ステップS62を行うと、過昇温防止処理を終了し、メインルーチンに戻る。
なお、ステップS62で過昇温防止フラグをオン(「1」)にすることにより、メインルーチンに戻ったときにステップS14で直ちに過昇温防止処理へ移行し、ヒータの過昇温を引き続き防止することができる。これは、ステップS62まで移行した場合、Vs+ラインの断線異常等が継続して生じている可能性があるからである。
【0060】
一方、ステップS58で「Yes」(センサ活性経験フラグがオン)であればステップS64へ移行する。ステップS64では、センサ活性経験フラグがオンである、つまりガスセンサ8が活性状態でPI制御されており、ガスセンサ8が作動温度(例えば830℃)に加熱されているものと判断し、エンジン制御装置9は、過昇温防止カウンタがTcl以上になったか否かを判定する。
ステップS64で「Yes」(過昇温防止カウンタがTcl以上)の場合、最大実効電圧でのヒータへの印加時間がTclになったことを意味する。従って、エンジン制御装置9は、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる指令(ヒータオン信号)を所定の通電率(デューティ)でヒータ制御回路60に出力する(この実施形態では、ヒータ43への実効電圧が低実効電圧としての8Vに設定されるように通電率が設定されている)と共に、過昇温防止フラグをオン(「1」)にする(ステップS66)。ヒータ制御回路60は、上記ヒータオン信号に基づいてヒータ43に低実効電圧を印加する。ステップS66を行うと、過昇温防止処理を終了し、メインルーチンに戻る。
ステップS66で過昇温防止フラグをオン(「1」)にする理由は、ステップS62で説明したのと同様である。」

(4)甲2に記載された発明

(甲2-ア)ないし(甲2-カ)から、甲2には以下の発明が記載されていると認められる。

「 エンジンの排気管に取り付けられており、排気ガス中の酸素濃度を広域にわたって検出するセンサ素子10と、センサ素子10を作動温度に保つためのヒータ43とを備え、いわゆる全領域空燃比センサとして動作するガスセンサ8と、
ガスセンサ8のセンサ素子10を制御するセンサ制御回路2、エンジン制御装置9、ヒータ43を制御するヒータ制御回路60を備えた電子制御ユニット5と
を備えた内燃機関制御システム1におけるヒータ制御方法であって、
センサ制御回路2はセンサ駆動回路52を含んでおり、センサ駆動回路52は、ガスセンサ8に通電して駆動制御を行い、ガス検出信号やインピーダンス信号Vrpvsを検出し、センサ制御回路2は、検出されたガス検出信号およびインピーダンス信号Vrpvsをエンジン制御装置9に出力し、
エンジン制御装置9は、ヒータ制御回路60に接続されてヒータ制御回路60を制御し、また、エンジン制御装置9は、伝送ケーブル71を介してセンサ制御回路2に接続されてセンサ制御回路2を制御し、
エンジン制御装置9は、センサ制御回路2から出力されるインピーダンス信号Vrpvsに基づいてインピーダンスRpvsを算出し、
a)インピーダンスRpvsが異常閾値未満に低下した場合には、目標とするRpvsと、インピーダンスRpvsの差ΔRpvsから、ガスセンサ8の温度を一定に保つためのヒータ印加電圧が計算され、通常のPI演算によるヒータ制御処理を行い、
b)インピーダンスRpvsが異常閾値以上になったときに、過昇温防止処理を行うものであり、
過昇温防止処理では、ヒータ印加電圧が最大実効電圧であるか否かを判定し、「Yes」である場合、過昇温防止カウンタをインクリメントし、過昇温防止カウンタがヒータ過昇温防止時間以上になったか否かを判定し、「Yes」である場合、最大実効電圧でのヒータへの印加時間がヒータ過昇温防止時間になったことを意味し、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる指令を所定の通電率でヒータ制御回路60に出力する、
内燃機関制御システム1におけるヒータ制御方法。」
(以下「甲2方法発明」という。)

「 エンジンの排気管に取り付けられており、排気ガス中の酸素濃度を広域にわたって検出するセンサ素子10と、センサ素子10を作動温度に保つためのヒータ43とを備え、いわゆる全領域空燃比センサとして動作するガスセンサ8と、
ガスセンサ8のセンサ素子10を制御するセンサ制御回路2、エンジン制御装置9、ヒータ43を制御するヒータ制御回路60を備えた電子制御ユニット5と
を備えた内燃機関制御システム1であって、
センサ制御回路2はセンサ駆動回路52を含んでおり、センサ駆動回路52は、ガスセンサ8に通電して駆動制御を行い、ガス検出信号やインピーダンス信号Vrpvsを検出し、センサ制御回路2は、検出されたガス検出信号およびインピーダンス信号Vrpvsをエンジン制御装置9に出力し、
エンジン制御装置9は、ヒータ制御回路60に接続されてヒータ制御回路60を制御し、また、エンジン制御装置9は、伝送ケーブル71を介してセンサ制御回路2に接続されてセンサ制御回路2を制御し、
エンジン制御装置9は、センサ制御回路2から出力されるインピーダンス信号Vrpvsに基づいてインピーダンスRpvsを算出し、
a)インピーダンスRpvsが異常閾値未満に低下した場合には、目標とするRpvsと、インピーダンスRpvsの差ΔRpvsから、ガスセンサ8の温度を一定に保つためのヒータ印加電圧が計算され、通常のPI演算によるヒータ制御処理を行い、
b)インピーダンスRpvsが異常閾値以上になったときに、過昇温防止処理を行うものであり、
過昇温防止処理では、ヒータ印加電圧が最大実効電圧であるか否かを判定し、「Yes」である場合、過昇温防止カウンタをインクリメントし、過昇温防止カウンタがヒータ過昇温防止時間以上になったか否かを判定し、「Yes」である場合、最大実効電圧でのヒータへの印加時間がヒータ過昇温防止時間になったことを意味し、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる指令を所定の通電率でヒータ制御回路60に出力する、
内燃機関制御システム1。」
(以下「甲2装置発明」という。)

(5)甲3の記載事項

本件特許に係る出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲3には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(甲3-ア)「【0008】それゆえ、本発明は上記問題を解決し、経時変化に伴いセンサ素子が劣化したり、被検出ガスのガス状態が変化したりしても、センサ素子の過加熱によるセンサ素子の劣化やヒータへの過多な電力供給によるヒータ抵抗の劣化を防止する空燃比センサの抵抗検出装置を提供することを目的とする。本発明はまた、空燃比センサの素子の故障を判定する空燃比センサの抵抗検出装置を提供することをその他の目的とする。」

(甲3-イ)「【0041】図15は素子温フィードバック制御ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、所定の周期、例えば128msec毎に実行される。本ルーチンは、特定周波数5KHzに対する空燃比センサのインピーダンスZacと素子温制御目標値Zactgとの偏差Zacerr (=Zactg-Zac)に基づいて、ヒータ通電のデューティ比のPID制御を行う。先ず、ステップ1500では、後述する素子温制御目標値算出ルーチンを実行する。」

(甲3-ウ)「【0045】次に、センサ素子の経時変化を推定し学習する素子温制御目標学習値Zactggに基づき、かつセンサ素子により検出する被検出ガスのガス状態に応じて、素子温制御目標値Zactgを算出するルーチンについて以下に説明する。図16は素子温制御目標値算出ルーチンのフローチャートである。このルーチンは、所定の周期、例えば100msec毎に実行される。先ず、ステップ1601では、センサ素子の劣化を学習して素子温制御目標学習値Zactgg を算出し、これをB.(バックアップ)RAMに記憶する。この素子温制御目標学習値の算出は、後述するように、例えばセンサ素子のヒータへ供給する電力の平均電力量を算出して求めることができる。この学習値は機関始動時のイニシャルセットによりB.RAMに読込まれる。
【0046】ステップ1602では、図17に示す吸入空気量ga(g/sec)からインピーダンスの補正量KLD(Ω)を算出するマップに基づき、エアフローメータにより読取った吸入空気量gaから補正量KLDを算出する。図17に示すように、補正量KLDは吸入空気量が所定量20(g/sec)を境に減量補正値から増量補正値に切り替わる。これは吸入空気量の増大に伴いセンサ素子の電極界面抵抗が増大し、素子インピーダンスが増大するからである。
【0047】他の実施の形態として、ステップ1602では図18に示す機関の負荷状態からインピーダンスの補正量KLD(Ω)を算出するマップに基づき補正量KLDを算出してもよい。図18に示すように、機関の負荷状態は、クランク角センサの検出信号から算出した機関の回転数NE(rpm)と吸気圧センサにより読取った吸入管負圧(mmHg)とから推定する。補正量KLDは中負荷状態を境に、低負荷低回転数側では減量補正値に、高負荷高回転数側では増量補正値に切り替わる。これは高負荷高回転数側程吸入空気量が増大し、センサ素子の電極界面抵抗が増大し、素子インピーダンスが増大するからである。
【0048】なお、機関の負荷は、回転数NE(rpm)とエアフローメータにより読取った吸入空気量ga(g/sec)とからga/NEを算出し、その算出値で代用してもよい。ステップ1603では、図19に示す機関の空燃比(A/F)からインピーダンスの補正量KAF(Ω)を算出するマップに基づき、空燃比センサにより読取った空燃比(A/F)から補正量KAFを算出する。図18に示すように、補正量KAFは機関の理論空燃比(A/F)14.5を境に増量補正値から減量補正値に切り替わる。これは空燃比の増大に伴い酸素量が減少し、センサ素子の電極界面抵抗が減少し、素子インピーダンスが減少するからである。
【0049】ステップ1604では、ステップ1601?1603でそれぞれ算出した素子温制御目標学習値Zactgg 、吸入空気量または負荷による補正量KLD、および空燃比による補正量KAFを用いて、素子温制御目標値Zactgを次式から算出する。
Zactg = Zactgg +KLD+KAF
このように素子温制御目標値を可変することによりセンサ素子およびヒータ抵抗の過加熱を防止できる。」

(6)甲3に記載された技術事項

(甲3-ア)ないし(甲3-ウ)から、甲3には以下の技術事項(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。

「 空燃比センサのインピーダンスZacと素子温制御目標値Zactgとの偏差Zacerr (=Zactg-Zac)に基づいて、ヒータ通電のデューティ比のPID制御を行う素子温フィードバック制御ルーチンにおいて、
素子温制御目標値算出ルーチンを実行し、
センサ素子のヒータへ供給する電力の平均電力量を算出して素子温制御目標学習値Zactggを求め、
エアフローメータにより読取った吸入空気量ga又は機関の負荷状態から補正量KLDを算出し、
空燃比センサにより読取った空燃比(A/F)から補正量KAFを算出し、
素子温制御目標値Zactgを式Zactg=Zactgg+KLD+KAFから算出し、
素子温制御目標値Zactgを可変することにより、経時変化に伴いセンサ素子が劣化したり、被検出ガスのガス状態が変化したりしても、センサ素子の過加熱によるセンサ素子の劣化やヒータへの過多な電力供給によるヒータ抵抗の劣化を防止すること。」

(7)甲4の記載事項

本件特許に係る出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である甲4には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。)。

(甲4-ア)「【請求項1】 チャンバに導入した被検出ガス中の酸素を排出または汲み込むポンプセルと、前記ポンプセルを通過したのちのガスから特定ガス成分の濃度を検出するセンサセルと、前記チャンバ内の残留酸素濃度を検出するモニタセルとを少なくとも有し、各セルを形成する固体電解質の素子抵抗に基づき各セルを活性状態に保持する複合型のガス濃度センサと、
前記ガス濃度センサの少なくとも2つのセルに対して印加する電圧または電流を所定周期で一時的に切換え、そのときの電圧変化及び電流変化から各セルの素子抵抗を検出する素子抵抗検出手段と、
前記素子抵抗検出手段で検出された各セルの素子抵抗が所望の目標素子抵抗に一致するよう各セルに対応して設けられたヒータへの通電を制御するヒータ制御手段と、
前記センサセルに流れる電流を検出し、その検出値から特定ガス成分の濃度を逐次検出するガス濃度検出手段と、
前記ヒータ制御手段により所定のセルの素子抵抗が所望の目標素子抵抗に一致するよう制御する際、他のセルの素子抵抗の変化量に応じて、または他のセルの素子抵抗が所定範囲外となるとき前記所定のセルの素子抵抗または前記ヒータへの通電量を補正する補正手段とを具備することを特徴とする内燃機関のガス濃度検出装置。
・・・
【請求項3】 前記補正手段は、内燃機関の運転条件または排気温に基づき前記所定のセルの素子抵抗または前記ヒータへの通電量を補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のガス濃度検出装置。」

(甲4-イ)「【0011】本実施例のガス濃度検出装置は、限界電流式のガス濃度センサ100を用い、被検出ガスである内燃機関1からの排気ガス中の酸素(O_(2))濃度を検出すると共に、特定ガス成分の濃度としてのNOx (窒素酸化物)濃度を検出する。」

(甲4-ウ)「【0019】また、図2(a)に示すように、固体電解質142の下面には絶縁層149が設けられ、この絶縁層149により大気通路150が形成されている。また、絶縁層149にはセンサ全体を加熱するためのヒータ151が埋設されている。そして、ポンプセル110、モニタセル120及びセンサセル130を含めたセンサ全体を活性状態にすべく、ヒータ151では外部からの給電により熱エネルギが発生される。」

(甲4-エ)「【0031】また、制御回路200内のCPUによって、制御指令値DutyがI/Oポートから出力されMOSFETドライバ251が駆動される。このとき、MOSFET252により電源253(例えば、バッテリ電源)からヒータ151へ供給される電力がPWM制御される。」

(甲4-オ)「【0036】なお、ヒータ151に対する通電制御に関しては、素子インピーダンスZACが所望の目標値に一致するようヒータ151に通電制御されるものであれば、任意の制御手法が適用できる。一例としては、ガス濃度センサ100の素子温が低く、素子インピーダンスZACが比較的大きい場合には、例えば、デューティ比100〔%〕の全通電制御によりヒータ151に通電される。また、素子温が上昇すると、周知のPID制御手法等を用いて制御デューティ比が算出され、このデューティ比によりヒータ151に通電される。」

(甲4-カ)「【0071】次にステップS603に移行して、内燃機関の排気通路に配設された排気温センサ(図示略)によって、ガス濃度センサ100の近傍における排気ガスの排気温TEMPHが検出される。次にステップS604に移行して、図15に示すマップに基づき、ステップS603で算出された排気温TEMPHの定常時からの変化量に応じて、このときの制御セルであるモニタセル120の目標素子抵抗補正量RMSH が算出される。次にステップS605に移行して、ステップS602で算出されたモニタセル120の素子抵抗RmsにステップS604で算出されたモニタセル120の目標素子抵抗補正量RMSH が加算され、補正後におけるモニタセル120の目標素子抵抗RMSHBが算出され、本ルーチンを終了する。」

(8)甲4に記載された技術事項

(甲4-ア)ないし(甲4-カ)から、甲4には以下の技術事項(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。

「 限界電流式のガス濃度センサ100を用い、被検出ガスである内燃機関1からの排気ガス中の酸素(O_(2))濃度を検出すると共に、特定ガス成分の濃度としてのNOx (窒素酸化物)濃度を検出するガス濃度検出装置において、
PID制御手法等を用いて制御デューティ比を算出し、このデューティ比によりセンサ全体を加熱するためのヒータ151に通電することにより、素子インピーダンスZACが所望の目標値に一致するようヒータ151の通電制御を行うとともに、
内燃機関の排気通路に配設された排気温センサによって、ガス濃度センサ100の近傍における排気ガスの排気温TEMPHを検出し、排気温TEMPHに基づきヒータ151への通電量を補正すること。」

4 判断

(1)取消理由通知に記載した取消理由について

ア 取消理由1-1について

(ア)本件発明1について

本件発明1と甲1方法発明とを対比する。

甲1方法発明の「排気管12」、「排ガス中の酸素濃度」、「ヒータ64」及び「検出素子61」は、それぞれ本件発明1の「測定ガス空間」、「ガスの少なくとも1つの特性」、「加熱装置」及び「センサ素子」に相当する。
甲1方法発明の「検出素子61のインピーダンス」、「実インピーダンスZre」及び「目標インピーダンスZtg」は、それぞれ本件発明1の「少なくとも1つの閉ループ制御量」、「閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値」及び「少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値」に相当する。
甲1方法発明の「ヒータ制御量」は、本件発明1の「少なくとも1つの操作量」及び「少なくとも1つのパラメータ」の双方に相当する。

甲1方法発明において、「掃引法により」「実インピーダンスZre」を「検出」することは、本件発明1の「a)前記センサ素子(118)の少なくとも1つの閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値を検出するステップ」に相当する。

甲1方法発明の「SRAM25に既に記憶されている目標インピーダンスZtg(前回までの学習値)を読み出し、そのZtgをNRAM24に記憶するステップ101」及び「素子劣化であれば、Ztg=Ztg(i-1)+ΔZ/4といった演算により目標インピーダンスの前回値Ztg(i-1)を補正し、今回値を算出するステップ202」は、併せて本件発明1の「b)前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を求めるステップ」に相当する。

甲1方法発明の「掃引法により検出された実インピーダンスZreと目標インピーダンスZtgとから偏差ΔZ(ΔZ=Zre-Ztg)を算出するステップ204」及び「インピーダンスの偏差ΔZに応じて0?60%の範囲でヒータ制御量を設定するステップ211」は、併せて本件発明1の「c)前記目標値と前記実際値との比較を用いて前記加熱装置(124)の少なくとも1つの操作量を形成するステップ」に相当する。

甲1方法発明の「上限」は、本件発明1の「閾値」に相当する。

甲1方法発明の「ヒータ制御量が上限にあるか否かを判別するステップ212」、「ステップ212の判定がYESであればカウンタCmaxをインクリメントし、継続時間を計測するステップ213」及び「検出素子61の劣化判定を、ヒータ制御量が上限値のまま所定時間以上継続されているかどうかにより行うステップ201」は、併せて本件発明1の「d)少なくとも1つの監視ステップを実行するステップ」であって、「前記監視ステップでは、温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータが検査され」、「前記監視ステップにおけるパラメータの検査には」、「前記パラメータが、固定的」「に設定された少なくとも1つの閾値に達しているか」「に関する問合せを行う検査」「が含まれ、さらに」、「前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか」「に関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか」「についての問合せを含」むことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1方法発明とは、少なくとも以下の相違点1Aにおいて相違する。

(相違点1A)
温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータが検査される監視ステップにおいて、本件発明1においては、「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされ」るのに対し、甲1方法発明においては、ヒータ制御量(操作量)に作用が及ぼされるのではなく、「素子劣化であれば、Ztg=Ztg(i-1)+ΔZ/4といった演算により目標インピーダンスの前回値Ztg(i-1)を補正し、今回値を算出する」点。

甲1方法発明において、検出素子61のインピーダンスである「目標インピーダンス」は、ヒータ64(加熱装置)のヒータ制御量(操作量)とは異なる概念のものであるから、上記相違点1Aは実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲1方法発明と同一ではなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

(イ)本件発明9ないし13について

本件発明9ないし13は本件発明1を減縮したものであり、上記(ア)で検討した本件発明1と同様の理由で、本件発明9ないし13は甲1に記載された発明ではない。

(ウ)本件発明14について

本件発明14は、方法の発明である本件発明1のカテゴリーを変更してセンサ装置という物の発明としたものに相当する。
また、甲1装置発明は、方法の発明である甲1方法発明のカテゴリーを変更して空燃比制御システムという物の発明としたものに相当するものである。
そうすると、上記(ア)における本件発明1と甲1方法発明との対比と同様の手法により、本件発明14と甲1装置発明とは、少なくとも以下の相違点1Bにおいて相違する。

(相違点1B)
温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータを検査する監視手段が、本件発明14においては、「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされるように」するのに対し、甲1装置発明においては、ヒータ制御量(操作量)に作用が及ぼされるようにするのではなく、「素子劣化であれば、Ztg=Ztg(i-1)+ΔZ/4といった演算により目標インピーダンスの前回値Ztg(i-1)を補正し、今回値を算出する」点。

甲1装置発明において、検出素子61のインピーダンスである「目標インピーダンス」は、ヒータ64(加熱装置)のヒータ制御量(操作量)とは異なる概念のものであるから、上記相違点1Bは実質的な相違点である。
よって、本件発明14は甲1装置発明と同一ではなく、本件発明14は甲1に記載された発明ではない。

(エ)本件発明22ないし26について

本件発明22ないし26は本件発明14を減縮したものであり、上記(ウ)で検討した本件発明14と同様の理由で、本件発明22ないし26は甲1に記載された発明ではない。

イ 取消理由1-2について

(ア)本件発明1について

上記ア(ア)で示したように、本件発明1と甲1方法発明とは、少なくとも上記相違点1Aにおいて相違する。
そこで、上記相違点1Aについて検討する。

本件発明1と甲2方法発明とを対比する。

甲2方法発明の「エンジンの排気管」、「排気ガス中の酸素濃度」、「ヒータ43」及び「センサ素子10」は、それぞれ本件発明1の「測定ガス空間」、「ガスの少なくとも1つの特性」、「加熱装置」及び「センサ素子」に相当する。
甲2方法発明の「センサ素子10」の「インピーダンス」、「インピーダンスRpvs」及び「目標とするRpvs」は、それぞれ本件発明1の「少なくとも1つの閉ループ制御量」、「閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値」及び「少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値」に相当する。
甲2方法発明の「ヒータ印加電圧」は、本件発明1の「少なくとも1つの操作量」及び「少なくとも1つのパラメータ」の双方に相当する。

甲2方法発明において、「センサ制御回路2から出力されるインピーダンス信号Vrpvsに基づいてインピーダンスRpvsを算出」することは、本件発明1の「a)前記センサ素子(118)の少なくとも1つの閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値を検出するステップ」に相当する。

甲2方法発明において、「a)インピーダンスRpvsが異常閾値未満に低下した場合には、目標とするRpvsと、インピーダンスRpvsの差ΔRpvsから、ガスセンサ8の温度を一定に保つためのヒータ印加電圧が計算され、通常のPI演算によるヒータ制御処理を行」うことは、本件発明1の「c)前記目標値と前記実際値との比較を用いて前記加熱装置(124)の少なくとも1つの操作量を形成するステップ」に相当する。

甲2方法発明の「最大実効電圧」は、本件発明1の「閾値」に相当する。

甲2方法発明において、「ヒータ印加電圧が最大実効電圧であるか否かを判定し、「Yes」である場合、過昇温防止カウンタをインクリメントし、過昇温防止カウンタがヒータ過昇温防止時間以上になったか否かを判定」することは、本件発明1の「d)少なくとも1つの監視ステップを実行するステップ」であって、「前記監視ステップでは、温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータが検査され」、「前記監視ステップにおけるパラメータの検査には」、「前記パラメータが、固定的」「に設定された少なくとも1つの閾値に達しているか」「に関する問合せを行う検査」「が含まれ、さらに」、「前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか」「に関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか」「についての問合せを含」むことに相当する。

甲2方法発明において「『Yes』である場合、最大実効電圧でのヒータへの印加時間がヒータ過昇温防止時間になったことを意味し、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる指令を所定の通電率でヒータ制御回路60に出力する」ことは、本件発明1において「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされ」ることに相当する。

そうすると、上記相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項である「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされ」ることは、甲2方法発明が備えている。

なお、甲3及び甲4には、上記相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項である「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされ」ることについては記載されておらず、示唆する記載もない。

そこで、甲1方法発明に甲2方法発明の構成を適用することの容易想到性について検討する。

(甲1-イ)によれば、甲1方法発明は、検出素子のインピーダンス特性の変化に対応してヒータ通電を制御することにより、検出素子の更なる熱劣化を防止しつつ素子温度を目標温度に保持することを、その解決しようとする課題として含むものと認められる。
そして、当該課題を解決するために、目標インピーダンスを補正するものである。
一方、(甲2-イ)によれば、甲2方法発明は、セルの配線異常等の場合に、ヒータへの通電を禁止することによるセンサ表面への異物付着を防止することを、その解決しようとする課題として含むものと認められる。
そして、当該課題を解決するために、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げるものである。
このように、甲1方法発明と甲2方法発明とは、それぞれの解決しようとする課題が異なるものであり、甲1方法発明において、「目標インピーダンスを補正する」ことに代えて甲2方法発明の「ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる」ことを採用することは、甲1方法発明における「素子温度を目標温度に保持する」という課題の解決を妨げることになるから、阻害要因がある。
また、甲1方法発明において、「目標インピーダンスを補正する」ことに加えて甲2方法発明の「ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる」ことを採用することは、「最大実効電圧でのヒータへの印加時間」という1つのパラメータに応じて、「目標インピーダンス」と「ヒータ制御量」という2つのパラメータを制御することになるから、当業者といえども容易になし得ることとはいえない。

仮に、甲1方法発明に甲2方法発明の「ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる」ことを採用したとしても、下記ウ(ア)に示すとおり、甲2方法発明の「ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる」ことは本件発明1の操作量の作用に係る具体的な内容には含まれていないから、本件発明1の構成を得ることはできない。

よって、本件発明1は、甲1方法発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明9ないし13について

本件発明9ないし13は本件発明1を減縮したものであり、上記(ア)で検討した本件発明1と同様の理由で、本件発明9ないし13は、甲1方法発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明14について

上記ア(ウ)で示したように、本件発明14と甲1装置発明とは、少なくとも上記相違点1Bにおいて相違する。
そこで、上記相違点1Bについて検討する。

本件発明14は、方法の発明である本件発明1のカテゴリーを変更してセンサ装置という物の発明としたものに相当する。
また、甲2装置発明は、方法の発明である甲2方法発明のカテゴリーを変更して内燃機関制御システム1という物の発明としたものに相当するものである。
そうすると、上記(ア)における本件発明1と甲2方法発明との対比と同様の手法により本件発明14と甲2装置発明とを対比すると、上記相違点1Bに係る本件発明14の発明特定事項である「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされるように」することは、甲2装置発明が備えている。

なお、甲3及び甲4には、上記相違点1Bに係る本件発明14の発明特定事項である「当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされるように」することについては記載されておらず、示唆する記載もない。

そこで、甲1装置発明に甲2装置発明の構成を適用することの容易想到性について検討するに、上記(ア)で検討した甲1方法発明に甲2方法発明の構成を適用することの容易想到性と同様の理由により、当業者といえども容易になし得ることとはいえない。

よって、本件発明14は、甲1装置発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明22ないし26について

本件発明22ないし26は本件発明14を減縮したものであり、上記(ウ)で検討した本件発明14と同様の理由で、本件発明22ないし26は、甲1装置発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 取消理由2について

(ア)本件発明1について

上記イ(ア)における本件発明1と甲2方法発明との対比を踏まえると、本件発明1と甲2方法発明とは、少なくとも以下の相違点2Aにおいて相違する。

(相違点2A)
監視ステップにおける操作量の作用について、本件発明1においては、「前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、閉ループ制御の遮断と、のうち、1つ又は複数の作用が含まれて」いるのに対し、甲2方法発明においては、「ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる」点。

そこで、上記相違点2Aについて検討する。

甲2方法発明は、セルの配線異常等を、最大実効電圧でのヒータへの印加時間がヒータ過昇温防止時間になったことにより判定し、ヒータへの通電を禁止することによるセンサ表面への異物付着を防止するために、ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げるようにするものである。
セルの配線異常等の場合に、ヒータへの通電を禁止することによるセンサ表面への異物付着を防止するために、ヒータ印加電圧に対して上記相違点2Aに係る本件発明1の発明特定事項のような作用を及ぼすことについては、甲1、甲3及び甲4には記載も示唆もされていないし、本件特許に係る出願の優先権主張日前において周知な事項であったという証拠もない。

そうすると、上記相違点2Aに係る本件発明1の発明特定事項は、甲1ないし甲4に接した当業者といえども、容易に想起することができたとはいえない。

よって、本件発明1は、甲2方法発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2ないし13について

本件発明2ないし13は本件発明1を減縮したものであり、上記(ア)で検討した本件発明1と同様の理由で、本件発明2ないし13は、甲2方法発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明14について

上記イ(ウ)における本件発明14と甲2装置発明との対比を踏まえると、本件発明14と甲2装置発明とは、少なくとも以下の相違点2Bにおいて相違する。

(相違点2B)
監視手段による監視ステップにおける操作量の作用について、本件発明14においては、「前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、閉ループ制御の遮断と、のうち、1つ又は複数の作用が含まれて」いるのに対し、甲2装置発明においては、「ヒータ印加電圧を低実効電圧に下げる」点。

そこで、上記相違点2Bについて検討するに、上記相違点2Bは上記相違点2Aと実質的に同じであるから、上記(ア)で検討した上記相違点2Aに対する判断と同様の理由により、上記相違点2Bに係る本件発明14の発明特定事項は、甲1ないし甲4に接した当業者といえども、容易に想起することができたとはいえない。

よって、本件発明14は、甲2装置発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明15ないし26について

本件発明15ないし26は本件発明14を減縮したものであり、上記(ウ)で検討した本件発明14と同様の理由で、本件発明15ないし26は、甲2装置発明を主たる引用発明として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

ア 特許法第29条第1項に係る特許異議申立理由について

特許異議申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明及び請求項14に係る発明は、甲2に記載された発明であると主張する。
しかしながら、上記(1)ウの(ア)又は(ウ)で示したように、本件発明1は上記相違点2Aにおいて甲2方法発明と相違し、本件発明14は上記相違点2Bにおいて甲2装置発明と相違する。
また、甲2方法発明は、本件発明1に係る「b)前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を求めるステップ」を備えておらず、甲2装置発明は、本件発明14に係る「前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を算出する算出手段」を備えていない。
よって、特許異議申立人の上記主張は理由がない。

イ 特許法第29条第2項に係る特許異議申立理由について

特許異議申立人は、本件訂正前の請求項2ないし13に係る発明及び請求項15ないし26に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3又は甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲2に記載された発明及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張する。
しかしながら、上記(1)イの(ア)又は(ウ)、及び、上記(1)ウの(ア)又は(ウ)で示したように、甲3及び甲4に記載された事項を考慮しても、本件発明1は甲1方法発明又は甲2方法発明を主たる引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明14は甲1装置発明又は甲2装置発明を主たる引用発明として当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明1を減縮した本件発明2ないし13、本件発明14を減縮した本件発明15ないし26に係る特許異議申立人の上記主張は理由がない。

5 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし26に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ガス空間(112)内のガスの少なくとも1つの特性を検出するための、加熱装置(124)を用いて加熱可能なセンサ素子(118)の温度調整を行うための方法であって、
前記方法は、前記加熱装置(124)の少なくとも1つの閉ループ制御を含んでおり、
前記閉ループ制御には、
a)前記センサ素子(118)の少なくとも1つの閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値を検出するステップと、
b)前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を求めるステップと、
c)前記目標値と前記実際値との比較を用いて前記加熱装置(124)の少なくとも1つの操作量を形成するステップと、
d)少なくとも1つの監視ステップを実行するステップとが含まれ、
前記監視ステップでは、温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータが検査され、当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされ、さらに、
前記監視ステップにおけるパラメータの検査には、以下のような1つ又は複数の検査が含まれている、すなわち、
前記パラメータが、固定的若しくは動的に設定された少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
前記パラメータの時間的経過と前記少なくとも1つの閾値の時間的経過との比較を行う検査と、
のうち、1つ又は複数の検査が含まれ、さらに
前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかについての問合せを含み、
前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかについての問合せを含み、
前記監視ステップにおける前記操作量の作用には、以下の1つ又は複数の作用が含まれている、すなわち、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、
固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、
操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、
操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、
閉ループ制御の遮断と、
のうち、1つ又は複数の作用が含まれており、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の前記作用は、前記パラメータの、時間的に隣接し変動量の大きい測定値の拒否であり、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の前記変更は、閉ループ制御回路の積分成分の遮断である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、前記加熱装置(124)のさらに1つの開ループ制御を含み、該開ループ制御に前記閉ループ制御が少なくとも一時的に重畳される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに少なくとも1つの開ループ制御量が検出され、該開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの開ループ制御量は、以下のパラメータ、すなわち、
前記センサ素子(118)の周辺温度と、
ガスを含有若しくは生成若しくは利用する装置の作動パラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺で発生するガス流を特徴付けるパラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺に生じる温度を特徴付けるパラメータと、
触媒温度及び/又は管壁温度と、
エンジン回転数と、
エンジン負荷状態と、
から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記作動パラメータは、内燃機関の作動領域であり、
前記温度を特徴付けるパラメータは、前記温度を定量化するパラメータである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記内燃機関の前記作動領域は、エンジン作動点であり、
前記温度を定量化するパラメータは、排ガス温度である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記加熱装置(124)の開ループ制御は、前記開ループ制御量を考慮して行われる、請求項2から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記目標値の算出は、前記開ループ制御量を考慮して行われる、請求項2から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの閉ループ制御量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗と、
前記センサ素子(118)の温度と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流と、
導電性構造部の電気抵抗と、
から選択されている、請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗は、前記センサ素子(118)の少なくとも1つの電気化学的セル(134)の内部抵抗であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の2つの電極(126,130)間の電圧であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流であり、
前記導電性構造部の電気抵抗は、前記センサ素子(118)の導電性構造部の電気抵抗である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記操作量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電圧と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力と、
前記加熱装置(124)に供給される加熱電流と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力のパルス幅変調のパラメータと、
から選択されている、請求項1から10いずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記監視ステップにおいて検査されるパラメータは以下のパラメータ、すなわち、
前記閉ループ制御量の実際値と、
前記閉ループ制御量の目標値と、
前記操作量と、
開ループ制御量と、
から選択され、前記開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項1から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの特性は、前記ガス中の少なくとも1つのガス成分の割合である、請求項1から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
測定ガス空間(112)内のガスの少なくとも1つの特性を検出するためのセンサ装置(110)であって、
前記センサ装置(110)が、
前記特性を検出するための少なくとも1つのセンサ素子(118)と、
前記センサ素子(118)の少なくとも一部を加熱するための少なくとも1つの加熱装置(124)と、
前記加熱装置(124)を駆動制御するための少なくとも1つの駆動制御装置(114)と、
を備え、
前記駆動制御装置(114)は、前記加熱装置(124)の閉ループ制御を行う閉ループ制御部を備え、
前記閉ループ制御部は、
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの閉ループ制御量の少なくとも1つの実際値を検出する閉ループ制御量検出手段と、
前記少なくとも1つの閉ループ制御量の目標値を算出する算出手段と、
前記目標値と前記実際値との比較を用いて前記加熱装置(124)の少なくとも1つの操作量を形成する形成手段と、
少なくとも1つの監視ステップを実行する監視手段と、
を備え、
前記監視手段は、温度の設定に用いられる少なくとも1つのパラメータを検査し、当該検査に依存して前記少なくとも1つの操作量に作用が及ぼされるようにし、さらに、
前記監視手段において実施される前記パラメータの検査には、以下のような1つ又は複数の検査が含まれている、すなわち、
前記パラメータが、固定的若しくは動的に設定された少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する問合せを行う検査と、
前記パラメータの時間的経過と前記少なくとも1つの閾値の時間的経過との比較を行う検査と、
のうち、1つ又は複数の検査が含まれており、さらに
前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記パラメータが前記少なくとも1つの閾値に達しているか又は前記少なくとも1つの閾値を下回っているか又は前記少なくとも1つの閾値を上回っているかについての問合せを含み、
前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかに関する前記問合せは、どのくらいの期間に亘って、前記測定期間にわたる前記パラメータの時間的変動量が所定の最大変動量を下回っているか又は所定の最大変動量に達しているか又は所定の最大変動量を上回っているかについての問合せを含み、
前記監視手段による前記監視ステップにおける前記操作量の作用には、以下の1つ又は複数の作用が含まれている、すなわち、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値のフィルタリング及びその結果から生じる操作量の作用と、
前記実際値の平均値形成及びその結果から生じる操作量の作用と、
固定的若しくは動的に設定される最小値若しくは最大値による操作量の制限と、
操作量の所定の絶対値分若しくは補正係数分の低減と、
操作量の、少なくとも1つの補正関数を用いて変更された操作量への変換と、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の変更と、
閉ループ制御の遮断と、
のうち、1つ又は複数の作用が含まれており、
前記パラメータの個々若しくは複数の値の拒否及びその結果から生じる操作量の前記作用は、前記パラメータの、時間的に隣接し変動量の大きい測定値の拒否であり、
温度設定のための少なくとも1つの閉ループ制御回路(154)の前記変更は、閉ループ制御回路の積分成分の遮断である、
ことを特徴とするセンサ装置(110)。
【請求項15】
前記駆動制御装置(114)は、前記加熱装置(124)の開ループ制御を行う開ループ制御部をさらに備え、前記開ループ制御部による前記開ループ制御に前記閉ループ制御部による前記閉ループ制御が少なくとも一時的に重畳される、請求項14記載のセンサ装置(110)。
【請求項16】
前記開ループ制御部は、少なくとも1つの開ループ制御量を検出する開ループ制御量検出手段を備え、該開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項15記載のセンサ装置(110)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの開ループ制御量は、以下のパラメータ、すなわち、
前記センサ素子(118)の周辺温度と、
前記ガスを含有若しくは生成若しくは利用する装置の作動パラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺で発生するガス流を特徴付けるパラメータと、
前記センサ素子(118)の周辺に生じる温度を特徴付けるパラメータと、
触媒温度及び/又は管壁温度と、
エンジン回転数と、
エンジン負荷状態と、
から選択される、請求項16記載のセンサ装置(110)。
【請求項18】
前記作動パラメータは、内燃機関の作動領域であり、
前記温度を特徴付けるパラメータは、前記温度を定量化するパラメータである、請求項17記載のセンサ装置(110)。
【請求項19】
前記内燃機関の前記作動領域は、エンジン作動点であり、
前記温度を定量化するパラメータは、排ガス温度である、請求項18記載のセンサ装置(110)。
【請求項20】
前記開ループ制御部は、前記開ループ制御量を考慮して前記加熱装置(124)の開ループ制御を行う、請求項15から19いずれか1項記載のセンサ装置(110)。
【請求項21】
前記算出手段は、前記開ループ制御量を考慮して前記目標値の算出を行う、請求項15から20いずれか1項記載のセンサ装置(110)。
【請求項22】
前記少なくとも1つの閉ループ制御量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗と、
前記センサ素子(118)の温度と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧と、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流と、
導電性構造部の電気抵抗と、
から選択されている、請求項14から21いずれか1項記載のセンサ装置(110)。
【請求項23】
前記センサ素子(118)の少なくとも1つの内部抵抗は、前記センサ素子(118)の少なくとも1つの電気化学的セル(134)の内部抵抗であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電圧は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の2つの電極(126,130)間の電圧であり、
前記センサ素子(118)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流は、前記センサ素子(118)の電気化学的セル(134)の少なくとも2つの電極(126,130)間の電流であり、
前記導電性構造部の電気抵抗は、前記センサ素子(118)の導電性構造部の電気抵抗である、請求項22に記載のセンサ装置(110)。
【請求項24】
前記操作量は、以下のグループから選択されている、すなわち、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電圧と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力と、
前記加熱装置(124)に供給される加熱電流と、
前記加熱装置(124)に印加される加熱電力のパルス幅変調のパラメータと、
から選択されている、請求項14から23いずれか1項記載のセンサ装置(110)。
【請求項25】
前記監視手段が前記監視ステップにおいて検査するパラメータは、以下のパラメータ、すなわち、
前記閉ループ制御量の実際値と、
前記閉ループ制御量の目標値と、
前記操作量と、
開ループ制御量と、
から選択され、前記開ループ制御量は、前記センサ素子(118)の周辺環境が前記センサ素子(118)の温度に及ぼす作用を特徴付けている、請求項14から24いずれか1項記載のセンサ装置(110)。
【請求項26】
前記少なくとも1つの特性は、前記ガス中の少なくとも1つのガス成分の割合である、請求項14から25いずれか1項記載のセンサ装置(110)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-19 
出願番号 特願2013-532114(P2013-532114)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 黒田 浩一  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
登録日 2016-06-17 
登録番号 特許第5950917号(P5950917)
権利者 ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
発明の名称 センサ素子の温度調整を行うための方法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 高橋 佳大  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 久野 琢也  
代理人 高橋 佳大  

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