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審決分類 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張  H01R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01R
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H01R
審判 全部申し立て 発明同一  H01R
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  H01R
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H01R
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H01R
管理番号 1339177
異議申立番号 異議2017-700097  
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-05-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-02 
確定日 2018-03-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5959704号発明「電気コネクタ組立体およびレセプタクルコネクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5959704号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第5959704号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5959704号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年6月10日に出願された特願2013-121740号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年9月4日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月1日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年2月2日に、本件特許について、特許異議申立人奥村一正(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年4月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月7日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、本件訂正請求に対して同年9月7日付けで訂正拒絶理由が通知され、この訂正拒絶理由に対して特許権者から同年10月6日に意見書及び手続補正書が提出され、本件訂正請求に対して異議申立人から同年12月25日付け(同年12月27日差出)で意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求書の補正及びその適否
平成29年10月6日の手続補正書の補正の内容は、訂正前の請求項1の「側肩部」及び「端肩部」並びに訂正前の請求項3の「中央突壁」についての「側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続する」及び「端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続する」並びに「ハウジングの長手方向に延びる」と限定する記載を訂正後の請求項1及び請求項3から削除する、との事項を削除するものであるから、上記補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

したがって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、上記補正を認める。

2 訂正の内容
以上のとおり、訂正請求の補正は認められるから、特許権者が求める補正後の訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。下線は特許権者が付した。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、次のア?コの訂正をする。
ア「回路基板同士の対面方向をコネクタ嵌合方向としてレセプタクルコネクタにプラグコネクタが嵌合接続される電気コネクタ組立体であって、」と記載されているのを、「回路基板同士が対面する上下方向を挿抜方向としてレセプタクルコネクタにプラグコネクタが上方から嵌合接続される電気コネクタ組立体であって、」に訂正する。

イ「レセプタクルコネクタのハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上記コネクタ嵌合方向に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対の側壁と該一対の側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対の端壁とで形成される周壁を有し、」と記載されているのを、「レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上方に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対のレセプタクル側壁と該一対のレセプタクル側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対のレセプタクル端壁とで形成される周壁と、該周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁とを有し、」に訂正する。

ウ「該周壁で囲まれた空間が上記コネクタ嵌合方向でプラグコネクタを受け入れるための受入部として形成され、」と記載されているのを、「該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間が上方からプラグコネクタを受け入れるための受入部として形成され、」に訂正する。

エ「上記ハウジングの長手方向両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しており、」と記載されているのを、「上記レセプタクルハウジングは、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しており、」に訂正する。

オ「プラグコネクタのハウジングは、上記レセプタクルコネクタの受入部に嵌入される嵌合部を有し、」と記載されているのを、「プラグコネクタのプラグハウジングは、上記レセプタクルコネクタの受入部に上方から嵌入される嵌合部を有し、」に訂正する。

カ「該嵌合部は、長手方向両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している」と記載されているのを、「該嵌合部は、上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している」に訂正する。

キ「上記レセプタクル側ガイド金具は、一対の側壁の端部側に位置するガイド部と、端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、」と記載されているのを、「上記レセプタクル側ガイド金具は、一対のレセプタクル側壁の端部側に位置するガイド部と、レセプタクル端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、」に訂正する。

ク「上記プラグ側ガイド金具は、上記レセプタクル側ガイド金具の上記ガイド部に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記嵌合部の両側の外面に位置する側面部および該側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続する側肩部と、上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部および該端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続する端肩部とを一体に有し、」と記載されているのを、「上記プラグ側ガイド金具は、上記レセプタクル側ガイド金具の上記ガイド部に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記嵌合部の両側の外面に位置する側面部と、上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部と、プラグコネクタがコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときのプラグ端壁の下面に位置する下面部と、上記側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される側肩部と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部とを一体に有し、」に訂正する。

ケ「副ガイド面を有している」と記載されているのを、「副ガイド面を有し、
上記プラグ端壁は、上記長手方向全域にわたって中実に形成されており、」に訂正する。

コ「ことを特徴とする電気コネクタ組立体。」と記載されているのを、「該プラグ端壁の下面のうち上記長手方向での外側領域では上記プラグ金具の下面部が位置しているとともに、上記長手方向の内側領域では該プラグ端壁の下面が露呈していることを特徴とする電気コネクタ組立体。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、訂正事項1における請求項1の訂正に伴い、訂正事項1のア?コの訂正と同様の訂正をする。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、訂正事項1における請求項1の訂正に伴い、訂正事項1のア?コの訂正と同様の訂正をするとともに、次のサ?スの訂正をする。

サ「レセプタクルコネクタのハウジングは、」と記載されているのを、「レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、」に訂正する。

シ「周壁内で底壁からコネクタ嵌合方向に起立すると共に」を削除する訂正をする。

ス「上記長手方向での該中央突壁の端面は、」と記載されているのを、「該レセプタクルハウジングの長手方向での該中央突壁の端面が、」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4について、訂正事項1における請求項1の訂正及び訂正事項3における請求項3の訂正に伴い、訂正事項1のア?コの訂正及び訂正事項3のサ?スの訂正と同様の訂正をするとともに、次のセ及びソの訂正をする。

セ「レセプタクル側ガイド金具のガイド面は、レセプタクルコネクタのハウジングの側壁の上面に沿うと共に該ハウジングの短手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしており、」と記載されているのを、「レセプタクル側ガイド金具のガイド面は、レセプタクルハウジングのレセプタクル側壁の上面に沿うと共に該レセプタクルハウジングの短手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしており、」に訂正する。

ソ「レセプタクル側ガイド金具の副ガイド面は、上記ハウジングの端壁の上面に沿うと共に該ハウジングの長手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしている」と記載されているのを、「レセプタクル側ガイド金具の副ガイド面は、上記レセプタクルハウジングのレセプタクル端壁の上面に沿うと共に該レセプタクルハウジングの長手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしている」に訂正する。

3 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1アの「回路基板同士の対面方向をコネクタ嵌合方向として」を「回路基板同士が対面する上下方向を挿抜方向として」に限定し、「プラグコネクタが嵌合接続される」を「プラグコネクタが上方から嵌合接続される」に限定し、訂正事項1イの「上記コネクタ嵌合方向に起立し」を「上方に起立し」に限定し、訂正事項1ウの「嵌合方向でプラグコネクタを受け入れる」を「上方からプラグコネクタを受け入れる」に限定し、訂正事項1オの「嵌入される」を「上方から嵌入される」に限定する訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0042】の「図2においては、コネクタ1にはその底壁の下面に回路基板が位置し、相手コネクタ2には、上方を向いている底壁の上面に回路基板がそれぞれ位置しており、コネクタ1と相手コネクタ2とは、回路基板同士が互いに平行な状態で、互いに嵌合する方向に対面している。」との記載及び願書に添付した図面(以下、「本件特許図面」という。)の【図2】の図示内容から、コネクタの対面・嵌合する方向を「上下方向」及び「挿抜方向」とし、プラグコネクタがレセプタクルコネクタに接近する方向を「上方」と規定することは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1イ、訂正事項1エ及び訂正事項1キの「ハウジング」、「側壁」及び「端壁」を、それぞれ「レセプタクルハウジング」、「レセプタクル側壁」及び「レセプタクル端壁」とする訂正は、レセプタクルコネクタのハウジング、側壁及び端壁であることを明示するための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下、「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1の、当該「ハウジング」、「側壁」及び「端壁」を記載した文節の冒頭に「レセプタクルコネクタの」と記載されているから、「ハウジング」、「側壁」及び「端壁」の前に「レセプタクル」を付加する訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1イの「周壁を有し、」を「周壁と、該周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁とを有し、」とし、訂正事項1ウの「該周壁で囲まれた空間」を「該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0019】の「図1にて、該底壁11から上方へ向けて起立するとともに端子配列方向に延びる島状の中央突壁12と、上記底壁11の周部から上方へ向けて起立するとともに上記中央突壁12を囲む枠状の周壁13とを有している。」との記載、本件特許請求の範囲の請求項3の「周壁内で底壁から上方に起立すると共にハウジングの長手方向に延びる中央突壁が形成されており」との記載及び本件特許図面の【図1】の図示内容から、「周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁」及び「該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間」を規定することは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1エの「ハウジングの長手方向両端部」を「ハウジングは、上記長手方向での両端部」とする訂正は、レセプタクル側ガイド金具を保持する場所を明示するための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0019】に「該ハウジング10は、上記回路基板の実装面に対して平行な底面をもつ底壁11(図2及び図3参照)と、図1にて、該底壁11から上方へ向けて起立するとともに端子配列方向に延びる島状の中央突壁12と、上記底壁11の周部から上方へ向けて起立するとともに上記中央突壁12を囲む枠状の周壁13とを有している。該周壁13は、上記端子配列方向に延びる一対の側壁14と、該端子配列方向に対して直角なコネクタ幅方向に延び上記一対の側壁14の端部同士を連結する一対の端壁15とを有している。」と記載され、段落【0020】に「この端子保持部14Aに対して上記長手方向両端側領域、すなわち端子配列領域外に位置して、ガイド金具30を取り付けるための取付部14Bと有している。」と記載されており、本件特許図面の【図1】ないし【図3】には、ハウジング10の長手方向の両端部でガイド金具30を保持する状態が図示されているから、この訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1オの「ハウジング」を「プラグハウジング」とする訂正は、プラグコネクタのハウジングであることを明示するための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許請求の範囲の請求項1の、当該「ハウジング」が記載された文節の冒頭に「プラグコネクタの」と記載されているから、「ハウジング」を「プラグハウジング」とする訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1カの「該嵌合部は、長手方向両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している」を「該嵌合部は、上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している」とする訂正は、嵌合部について「プラグ側壁」及び「プラグ端壁」を特定することで、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、「長手方向」及び「短手方向」の前に「上記」と記載することで用語の前後関係を明確にし、「長手方向両端部」を「長手方向での両端部」とすることでプラグ側ガイド金具を保持する場所を明示するための訂正でもあるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
そして、本件特許明細書の段落【0034】に「ハウジング40は、既述のコネクタ1のハウジング10に形成された環状の凹部をなす受入部16、すなわち島状の中央突壁12とこれを囲む周壁13との間に形成された空間に嵌合する四角枠状の周壁41と底壁42とを有している。周壁41は側壁43と端壁44とから成っていて、上記コネクタ1の中央突壁12を受け入れる中央凹部45を形成している。」と記載され、段落【0037】に「上記ガイド金具60は、コネクタ1のガイド金具30と同様に、金属板をその板厚方向に屈曲加工して作られており、長手方向端部でのハウジング40の上面側から該ハウジング40に取り付けられ、」と記載されており、本件特許図面の【図1】及び【図5】には、ハウジング40の長手方向に延びる一対の側壁43と、長手方向での端部同士を短手方向で連結する一対の端壁44と、ハウジング40の長手方向での両端部でガイド金具60を保持している構成が図示されているから、「上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している」と規定することは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1クの「側面部および該側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続する側肩部と、上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部および該端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続する端肩部」を「端面部と、プラグコネクタがコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときのプラグ端壁の下面に位置する下面部と、上記側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される側肩部と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0037】に「上記ガイド金具60は、コネクタ1のガイド金具30と同様に、金属板をその板厚方向に屈曲加工して作られており、長手方向端部でのハウジング40の上面側から該ハウジング40に取り付けられ、該上面側に位置する上面部61A、ハウジング40の側壁43の外面に位置する側面部61B、ハウジング40の端壁44の外面に位置する端面部61Cとを一体に有している。」と記載され、段落【0039】に「かかるガイド金具60は、上記上面部61Aと側面部61Bとの境となる丸味をもった肩部から該側面部61Bまでの範囲がコネクタ1のガイド金具30の被取付部31によってガイドされ、上面部61Aと端面部61Cとの境となる丸味をもった肩部から端面部61Cまでの範囲がガイド金具30の副被取付部32によりガイドされる。」と記載されており、上記訂正事項1アの上下方向及び挿抜方向に関する訂正により明細書の「上面部61A」は訂正後の請求項1の「下面部」に対応すると言えるから、訂正事項1クの訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1ケの「副ガイド面を有している」を「副ガイド面を有し、
上記プラグ端壁は、上記長手方向全域にわたって中実に形成されており、」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許図面の【図1】、【図2】及び【図5】に描かれた端壁44の斜視図及び【図6】?【図9】に描かれた端壁44の断面図からは、中実の端壁44が看取できるから、訂正事項1ケの訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項1コの、「ことを特徴とする電気コネクタ組立体。」と記載されているのを、「該プラグ端壁の下面のうち上記長手方向での外側領域では上記プラグ金具の下面部が位置しているとともに、上記長手方向の内側領域では該プラグ端壁の下面が露呈していることを特徴とする電気コネクタ組立体。」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許図面の【図1】及び【図5】に描かれた端壁44及びガイド金具60の斜視図からは、端壁44の上面のうち長手方向での外側領域はプラグ金具60の上面側が位置し、長手方向の内側領域は端壁44の上面が露呈している構成が看取でき、【図1】及び【図5】の端壁44及びプラグ金具60の「上面」は、組み立てる際の【図2】の斜視図の状態では「下面」になるから、訂正事項1コの訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

したがって、訂正事項1の訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。

また、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において電気コネクタ組立体を限定したものといえ、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2の訂正は、請求項2が請求項1を引用することに伴う訂正であるから、訂正事項1と同様に、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において電気コネクタ組立体を限定したものといえ、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3の訂正は、請求項1又は請求項2を引用することに伴う訂正を含むものである。

訂正事項3サの「ハウジング」を「レセプタクルハウジング」とする訂正は、レセプタクルコネクタのハウジングであることを明示するための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許請求の範囲の請求項3の、当該「ハウジング」を記載した文節の冒頭に「レセプタクルコネクタの」と記載されているから、「ハウジング」の前に「レセプタクル」を付加する訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項3シの「周壁内で底壁からコネクタ嵌合方向に起立すると共に」を削除する訂正は、訂正事項1イに伴って、重複する特定事項の記載を削除するものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

訂正事項3スの「長手方向での該中央突壁の端面は、」を「該レセプタクルハウジングの長手方向での該中央突壁の端面が、」とする訂正は、「上記長手方向」が何の長手方向であるかを明確にするためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の段落【0048】に「コネクタ1の中央突壁12の長手方向端面12Aは傾斜面をなしているので、」と記載されており、本件特許図面の【図1】?【図3】、【図8】及び【図9】からは、ハウジングの長手方向での中央突壁12の端面12Aが傾斜面をなしていることが看取できるから、訂正事項3スは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

したがって、訂正事項3の訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。

また、訂正事項3の訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において電気コネクタ組立体を限定したものといえ、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4の訂正は、請求項1ないし請求項3を引用することに伴う訂正を含むものである。

訂正事項4セ及びソの「ハウジング」、「側壁」及び「端壁」を、それぞれ「レセプタクルハウジング」、「レセプタクル側壁」及び「レセプタクル端壁」とする訂正は、訂正事項1イの訂正に伴い用語を請求項1と整合させるための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、請求項1イの「ハウジング」、「側壁」及び「端壁」の前に「レセプタクル」を付加する訂正と同様の理由により、訂正事項4セ及びソの訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。

したがって、訂正事項4の訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項4の訂正は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において電気コネクタ組立体を限定したものといえ、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

そして、訂正事項1ないし4は、一群の請求項〔1-4〕に対して請求されたものである。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立について
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、
平成29年10月6日付け手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
回路基板の実装面上に配されるレセプタクルコネクタと他の回路基板に配されるプラグコネクタとを有し、回路基板同士が対面する上下方向を挿抜方向としてレセプタクルコネクタにプラグコネクタが上方から嵌合接続される電気コネクタ組立体であって、
レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上方に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対のレセプタクル側壁と該一対のレセプタクル側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対のレセプタクル端壁とで形成される周壁と、該周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁とを有し、該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間が上方からプラグコネクタを受け入れるための受入部として形成され、上記レセプタクルハウジングは、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しており、
プラグコネクタのプラグハウジングは、上記レセプタクルコネクタの受入部に上方から嵌入される嵌合部を有し、該嵌合部は、上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している電気コネクタ組立体において、
上記レセプタクル側ガイド金具は、一対のレセプタクル側壁の端部側に位置するガイド部と、レセプタクル端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、
上記プラグ側ガイド金具は、上記レセプタクル側ガイド金具の上記ガイド部に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記嵌合部の両側の外面に位置する側面部と、上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部と、プラグコネクタがコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときのプラグ端壁の下面に位置する下面部と、上記側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される側肩部と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部とを一体に有し、
上記レセプタクル側ガイド金具は、上記ガイド部が、上記短手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドするガイド面を有し、上記副ガイド部が、上記長手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドする副ガイド面を有し、
上記プラグ端壁は、上記長手方向全域にわたって中実に形成されており、該プラグ端壁の下面のうち上記長手方向での外側領域では上記プラグ金具の下面部が位置しているとともに、上記長手方向の内側領域では該プラグ端壁の下面が露呈していることを特徴とする電気コネクタ組立体。

【請求項2】
プラグ側ガイド金具は、側肩部および端肩部が凸湾曲面をなしていることとする請求項
1に記載の電気コネクタ組立体。

【請求項3】
レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、ハウジングの長手方向に延びる中央突壁が形成されており、該レセプタクルハウジングの上記長手方向での該中央突壁の端面が、底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面として形成されており、上記中央突壁は、コネクタ嵌合過程にて、上記傾斜面でプラグコネクタをガイドすることを可能としていることとする請求項1または請求項2に記載の電気コネクタ組立体。

【請求項4】
レセプタクル側ガイド金具のガイド面は、レセプタクルハウジングのレセプタクル側壁の上面に沿うと共に該レセプタクルハウジングの短手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしており、
レセプタクル側ガイド金具の副ガイド面は、上記レセプタクルハウジングのレセプタクル端壁の上面に沿うと共に該レセプタクルハウジングの長手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の電気コネクタ組立体。

【請求項5】
回路基板の実装面上に配され該実装面に対して直角な方向をコネクタ嵌合方向として相手コネクタとしてのプラグコネクタが嵌合接続されるレセプタクルコネクタであって、
該レセプタクルコネクタのハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上記コネクタ嵌合方向に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対の側壁と該一対の側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対の端壁とで形成される周壁を有し、該周壁内で底壁からコネクタ嵌合方向に起立すると共に上記長手方向に延びる中央突壁が形成されており、上記周壁と上記中央突壁との間に上記コネクタ嵌合方向でプラグコネクタを受け入れるための受入部が形成され、上記ハウジングの長手方向両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しているレセプタクルコネクタにおいて、
上記レセプタクル側ガイド金具は、一対の側壁の端部側に位置するガイド部と、端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、上記ガイド部は、上記短手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドするガイド面を有しているととともに、コネクタ嵌合方向での上記受入部の範囲内の位置に、プラグコネクタとのロックのためのロック部を有しており、上記副ガイド部は、上記長手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドする副ガイド面を有しており、
上記中央突壁は、上記長手方向での端面が、底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面として形成されており、コネクタ嵌合過程にて、上記傾斜面でプラグコネクタをガイドすることが可能となっており、該傾斜面は、コネクタ嵌合方向で上記ガイド部のロック部よりも底壁側にまで及んでいることを特徴とするレセプタクルコネクタ。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して平成29年4月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1
本件特許の請求項1、3及び4に係る発明は、下記の刊行物1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

理由2
本件特許の請求項1?4に係る発明は、下記の刊行物1?6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

理由3
本件特許の請求項1?4に係る発明は、下記の先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、発明者が先願1に係る発明をした者と同一でなく、出願の時において、その出願人が先願1の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

刊行物1:特開2013-101909号証(異議申立人提出の甲第2号証)
刊行物2:特開2006-331679号公報(同甲第3号証)
刊行物3:特開2012- 79684号公報(同甲第4号証)
刊行物4:特開2008-210616号公報(同甲第5号証)
刊行物5:特開2007-109522号公報(同甲第6号証)
刊行物6:特開2007-257999号公報(同甲第7号証)
先願1:特願2012-180468号(特開2014-38768号)(同甲第8号証)

3 各刊行物及び先願1の記載
(1)刊行物1及び引用発明
刊行物1(特開2013-101909号公報)には、図面(特に【図1】?【図9】参照。)とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下同様。)

ア「【0024】
図において、1は本実施の形態におけるコネクタである一対の基板対基板コネクタの一方としての第1コネクタであり、実装部材としての図示されない第1基板の表面に実装される表面実装型のコネクタであって、後述される相手方コネクタとしての第2コネクタ101と互いに嵌合される。また、該第2コネクタ101は本実施の形態におけるコネクタである一対の基板対基板コネクタの他方であり、実装部材としての図示されない第2基板の表面に実装される表面実装型のコネクタである。」

イ「【0027】
そして、前記第1コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたコネクタ本体としての第1ハウジング11を有する。該第1ハウジング11は、図に示されるように、概略直方体である概略長方形の厚板状の形状を備え、第2コネクタ101が嵌入される側、すなわち、嵌合面側(図2(b)における上側)には、周囲が囲まれた概略長方形の凹部12が形成されている。前記第1コネクタ1は、例えば、縦約8.0〔mm〕、横約2.5〔mm〕及び厚さ約0.8〔mm〕の寸法を備えるものであるが、寸法は適宜変更することができる。そして、前記凹部12内には島部としての第1凸部13が第1ハウジング11と一体的に形成され、また、前記第1凸部13の両側には該第1凸部13と平行に延在する側壁部14が第1ハウジング11と一体的に形成されている。
【0028】
この場合、前記第1凸部13及び側壁部14は、凹部12の底面から上方に向けて突出し、第1ハウジング11の長手方向に延在する。これにより、前記第1凸部13の両側には、凹部12の一部として、第1ハウジング11の長手方向に延在する細長い凹部である凹溝部12aが第1凸部13と側壁部14との間に形成される。なお、図に示される例において、前記第1凸部13は単数であるが、複数であってもよく、その数はいくつであってもよい。また、前記第1凸部13は、例えば、幅約0.4〔mm〕の寸法を備えるものであるが、寸法は適宜変更することができる。
【0029】
ここで、前記第1凸部13の両側の側面には凹溝状の第1端子収容内側キャビティ15aが形成されている。また、前記側壁部14の内側の側面には凹溝状の第1端子収容外側キャビティ15bが形成されている。そして、前記第1端子収容内側キャビティ15aと第1端子収容外側キャビティ15bとは、凹溝部12aの底面において連結され互いに一体化しているので、第1端子収容内側キャビティ15aと第1端子収容外側キャビティ15bとを統合的に説明する場合には、第1端子収容キャビティ15として説明する。」

ウ「【0037】
さらに、前記第1突出端部21は、側壁部14の長手方向両端から第1ハウジング11の長手方向に延出する側壁延長部21bと、第1ハウジング11の短手方向に延在し、両端が側壁延長部21bに接続された端壁部21cとを備える。各第1突出端部21において、端壁部21cとその両端に接続された側壁延長部21bとは、連続したコ字状の側壁を形成し、略長方形の突出端凹部22の三方を画定する。
【0038】
そして、前記第1突出端部21には、補強金具としての第1補強金具51が取付けられる。該第1補強金具51は、第1突出端部21に形成された第1金具保持凹部26内に収容されて保持される。該第1金具保持凹部26は、嵌合面側(図2(b)における上側)から観て、連続したコ字状であり、第1突出端部21の上面21aに開口し、該上面21aから第1ハウジング11の厚さ方向下向きに延出するスリット状の空間である。
【0039】
本実施の形態において、第1補強金具51は、金属板に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、第1ハウジング11の幅方向に延在する細長い帯状の第1本体部52と、該第1本体部52の左右両端に曲げて接続され、第1ハウジング11の長手方向に延在する第1側板部57と、該第1側板部57の下端に接続された基板接続部としての第1側方基板接続部56と、前記第1側板部57の上端に接続された接触腕部としての第1側方接触腕部58と、前記第1本体部52の中央の下端に接続された基板接続部としての第1中央基板接続部55と、前記第1本体部52の中央の上端に接続された接触腕部としての第1中央接触腕部54とを備える。」

エ「【0041】
また、第1側方接触腕部58は、第1側方基板接続部56の真上において、第1側板部57の上端に接続されている。すなわち、第1側方接触腕部58と第1側方基板接続部56とは、嵌合面側から観てほぼ同一位置において第1側板部57に接続されている。そして、湾曲した帯状の板部材である第1側方接触腕部58は、第1側板部57に接続された基端から先端へ移るにつれて、漸次第1ハウジング11の幅方向内側に向い、さらに、漸次実装面方向(下方向)に向い、さらに、漸次第1ハウジング11の幅方向外側に向い、最終的に、自由端が斜め実装面方向(下方向)向き、かつ、第1ハウジング11の幅方向外側向きとなるように屈曲している。つまり、第1側方接触腕部58は、一端が第1側板部57の上端に接続され、上方に向いた湾曲凸面を備える上方湾曲部58dと、該上方湾曲部58dの他端に上端が接続され、第1ハウジング11の幅方向内側方向斜め下向きに延出する略平板状の接続腕部58cと、該接続腕部58cの下端に上端が接続され、第1ハウジング11の幅方向内側方向に向いた湾曲凸面を備える下方湾曲部58aとに大別される。
【0042】
そして、該下方湾曲部58aは、第1コネクタ1及び第2コネクタ101が嵌合された状態において、該第2コネクタ101が備える後述される第2補強金具151と接触する第1金具接触部として機能する。また、前記接続腕部58cは、第1コネクタ1及び第2コネクタ101の嵌合工程において、前記第2補強金具151をガイドする第1金具ガイド部として機能する。さらに、前記接続腕部58c及び上方湾曲部58dは、柔軟に弾性的に変形可能なフレキシブルばね部として機能し、下方湾曲部58aをフレキシブルに、すなわち、柔軟に変位させることができ、これにより、下方湾曲部58aは、第2補強金具151との接触を確実に維持することができる。」

オ「【0046】
該下方湾曲部54aは、第1コネクタ1及び第2コネクタ101が嵌合された状態において、該第2コネクタ101が備える第2補強金具151と接触する第1金具接触部として機能する。また、前記接続腕部54cは、第1コネクタ1及び第2コネクタ101の嵌合工程において、前記第2補強金具151をガイドする第1金具ガイド部として機能する。さらに、前記接続腕部54c及び上方湾曲部54dは、柔軟に弾性的に変形可能なフレキシブルばね部として機能し、下方湾曲部54aをフレキシブルに、すなわち、柔軟に変位させることができ、これにより、下方湾曲部54aは、第2補強金具151との接触を確実に維持することができる。」

カ「【0052】
第2コネクタ101は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたコネクタ本体としての第2ハウジング111を有する。該第2ハウジング111は、図に示されるように、概略直方体である概略長方形の厚板状の形状を備え、例えば、縦約6.0〔mm〕、横約1.5〔mm〕及び厚さ約0.7〔mm〕の寸法を備えるものであるが、寸法は適宜変更することができる。そして、第2ハウジング111の第1コネクタ1に嵌入される側、すなわち、嵌合側(図5(b)における上側)には、第2ハウジング111の長手方向に延在する細長い凹溝部113と、該凹溝部113の外側を画定するとともに、第2ハウジング111の長手方向に延在する細長い凸部としての第2凸部112とが一体的に形成されている。該第2凸部112は、凹溝部113の両側に沿って、かつ、第2ハウジング111の両側に沿って形成されている。また、各第2凸部112は、第2凸部112の内側の側面、第2凸部112の上面及び第2凸部112の外側の側面に連続して跨(またが)るようにして形成された凹溝状の第2端子収容キャビティ115を備える。そして、該第2端子収容キャビティ115内に、端子としての第2端子161が収容されて装填されている。」

キ「【0057】
そして、前記第2ハウジング111の長手方向両端には第2嵌合ガイド部としての第2突出端部122が各々配設されている。該第2突出端部122は、第2ハウジング111の幅方向に延在し、両端が各第2凸部112の長手方向両端に接続された肉厚の部材であり、その上面は略長方形の形状を備える。そして、前記第2突出端部122は、第1コネクタ1及び第2コネクタ101が嵌合された状態において、前記第1コネクタ1が備える第1突出端部21の突出端凹部22に挿入される挿入凸部として機能する。
【0058】
また、前記第2突出端部122には、補強金具としての第2補強金具151が取付けられる。該第2補強金具151は、第2突出端部122における第2ハウジング111の外側面に沿って配設され、第2突出端部122に形成された第2金具保持凹部126内に収容されて保持される。
【0059】
そして、本実施の形態における第2補強金具151は、金属板に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、第2ハウジング111の幅方向に延在する細長い帯状の第2本体部152と、該第2本体部152の左右両端に曲げて接続され、第2ハウジング111の長手方向に延在する第2側板部157と、該第2側板部157の下端に接続された基板接続部としての第2側方基板接続部156とを備える。
【0060】
前記第2本体部152と該第2本体部152の左右両端に接続された第2側板部157とは、嵌合面側から観て、連続したコ字状の一体的部材であり、第2側板部157の自由端には、凹凸形状の第2ロック掛止部157aが形成されている。また、第2側方基板接続部156は、前記第2側板部157と同一面上に延在する板状部材であって、その下端が第2基板の導電トレースに連結された接続パッドにはんだ付等によって接続される。なお、前記導電トレースは、典型的には、電力ラインである。
【0061】
なお、前記第2補強金具151は、第2突出端部122の外側面の少なくとも一部を覆い、かつ、第2本体部152、第2側板部157及び第2側方基板接続部156の外側面が第2突出端部122の外側に露出するように、第2突出端部122に取付けられる。そして、第2本体部152の中央部の外側面は、第1コネクタ1及び第2コネクタ101が嵌合された状態において、第1補強金具51の第1中央接触腕部54と接触する第2中央接触腕部154として機能する。また、第2側板部157の外側面は、第1コネクタ1及び第2コネクタ101が嵌合された状態において、第1補強金具51の第1側方接触腕部58と接触する第2側方接触腕部158として機能する。なお、前記第2中央接触腕部154及び第2側方接触腕部158を統合的に説明する場合には、接触腕部として説明する。」

ク「【0067】
この状態で、第1コネクタ1及び/又は第2コネクタ101を相手側に接近する方向、すなわち、嵌合方向に移動させると、第2コネクタ101の第2凸部112及び第2突出端部122が第1コネクタ1の凹溝部12a及び突出端凹部22内に挿入される。これにより、図7に示されるように、第1コネクタ1と第2コネクタ101との嵌合が完了すると、第1端子61と第2端子161とが導通した状態となる。」

ケ「【0070】
詳細には、第1補強金具51の内側に第2補強金具151が挿入され、第1補強金具51の左右の第1側方接触腕部58における下方湾曲部58aが第2補強金具151の左右の第2側方接触腕部158に接触し、第1補強金具51の第1中央接触腕部54における下方湾曲部54aが第2補強金具151の第2中央接触腕部154に接触する。この場合、第1側方接触腕部58自体のばね部としての機能、主として、接続腕部58c及び上方湾曲部58dのばね部としての機能により、下方湾曲部58aの表面が第2側方接触腕部158の表面に押圧され、第1中央接触腕部54自体のばね部としての機能、主として、接続腕部54c及び上方湾曲部54dのばね部としての機能により、下方湾曲部54aの表面が第2中央接触腕部154の表面に押圧される。」

コ「【0072】
なお、第1補強金具51及び/又は第2補強金具151が嵌合方向に移動することによって、下方湾曲部58aの表面が第2側方接触腕部158の表面に押圧された状態で摺(しゅう)動し、下方湾曲部54aの表面が第2中央接触腕部154の表面に押圧された状態で摺動する。したがって、下方湾曲部58aと第2側方接触腕部158との間、及び、下方湾曲部54aと第2中央接触腕部154との間における異物の噛(かみ)込みが防止され、接触不良が発生することがない。また、第2側方接触腕部158の表面及び第2中央接触腕部154の表面が平面なので、摺動距離が長い、すなわち、摺動量が大きくなる。したがって、下方湾曲部58aと第2側方接触腕部158との間、及び、下方湾曲部54aと第2中央接触腕部154との間のクリーニング効果が大きく、接触不良を防止することができる。」

サ【図7】の三面図及び【図8】?【図10】の断面図からは、第1基板及び第2基板が対面する上下方向を挿抜方向として第1コネクタ1の凹状の部分に、第2コネクタ101の凸状の部分が上方から挿入されて、嵌合した状態が看取できる。

シ【図1】の斜視図からは、凹部12の底面の周囲に、両側の側壁部14及び側壁延長部21bと、側壁延長部21b同士を長手方向に対して直角な短手方向で連結する両側の端壁部21cとで周壁を形成している構成が看取できる。

ス【図4】の斜視図及び【図8】の断面図からは、「第2突出端部122」が、第1ハウジング11の長手方向について、全域にわたって中実に形成されている構成が看取できる。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「第1基板の表面上に実装される第1コネクタ1と第2基板に実装される第2コネクタ101とを有し、第1基板及び第2基板が対面する上下方向を挿抜方向として第1コネクタ1に第2コネクタ101が上方から嵌合接続される基板対基板コネクタであって、
第1コネクタ1の第1ハウジング11は、第1基板の表面に対面する凹部12の底面の周囲から上方に向けて突出していると共に第1ハウジング11の長手方向に延在する両側の側壁部14及び側壁延長部21bと該両側の側壁部14及び側壁延長部21bの側壁延長部21b同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する両側の端壁部21cとで形成される周壁と、該周壁内で凹部12の底面から上方に向けて突出する第1凸部13とを有し、該周壁と該第1凸部13とで囲まれた凹溝部12a及び突出端凹部22が上方から第2コネクタ101を挿入されるための凹状の部分として形成され、上記第1ハウジング11は、側壁部14の長手方向での両端の第1突出端部21で補強金具51を保持しており、
第2コネクタ101の第2ハウジング111は、上記第1コネクタ1の凹状の部分に上方から嵌入される凸状の部分を有し、該凸状の部分は、上記長手方向に延在する両側の第2凸部112と該両側の第2凸部112の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する両側の第2突出端部122とを有しており、上記長手方向での両端部の第2金具保持凹部126で第2補強金具151を保持している電気コネクタ組立体において、
上記補強金具51は、両側の側壁部14及び側壁延長部21bの端部側に位置する第1側方接触腕部58と、端壁部21cに位置する第1中央接触腕部54とを一体に有し、
上記第2補強金具151は、上記補強金具51の上記第1側方接触腕部58に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記凸状の部分の両側の外側面に位置する第2側板部157と、上記補強金具51の上記第1中央接触腕部54に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記凸状の部分の外側面に位置する第2本体部152とを一体に有し、
上記補強金具51は、上記第1側方接触腕部58が、上記短手方向で凹状の部分側へ向けて上記第2コネクタ101をガイドする接続腕部58cを有し、上記第1中央接触腕部54が、上記長手方向で受入部側へ向けて上記第2コネクタ101をガイドする接続腕部54cを有し、
上記プラグ端壁は、上記長手方向全域にわたって中実に形成されている基板対基板コネクタ。」

(2)刊行物2
刊行物2(特開2006-331679号公報)には、図面(特に【図1】?【図8】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0001】
本発明は、プラグコネクタと、プラグコネクタに嵌合するレセプタクルコネクタに関する。」

イ「【0006】
特許文献1.2のコネクタは、プラグコネクタとレセプタクルコネクタとの嵌合をインシュレータ(ハウジング、モールド)部品同士で嵌合をしている構造であり、インシュレータ同士によって嵌合すると、嵌合、抜去を繰り返していくうちに、インシュレータが削れたり破損したりして、各々の接触がずれたり、短絡してしまうことから接触不良の要因となるという問題がある。」

ウ「【0022】
第1プラグ壁部25,26には、第1プラグ嵌合面25a,26aと第1プラグ内壁面25b,26bとを覆うように金属製のプラグ部材41,42が配設されている。プラグ部材41,42は、プラグハウジング21に保持されており、プラグ部材41,42の表面が第1プラグ壁部25,26の表面と略同一面になるようにプラグハウジング21にモールドインによって一体に保持されている。」

エ「【0036】
一方のプラグ部材41は、第1プラグ壁部25の第1プラグ内壁面25bに対応する平板形状の第1プラグ板部41aと、第1プラグ板部41aの一辺からプラグ嵌合面25a及び第1プラグ外壁面25cに対応するように略逆U字状に曲げられている第2プラグ板部41bとを有する。」

オ「【0038】
第2プラグ板部41bの先端部分41jは、第1プラグ壁部25の第1プラグ外壁面25cに配設される。一対の第3プラグ板部41cは、プラグハウジング21をモールドイン成型する際に第2プラグ壁部27,28に埋め込まれることによってプラグ部材41が保持される。プラグ半田付け部41d,42dは、プラグコンタクト11のプラグ端子部11cと同じ方向へ延びており、図示しない基板に半田によって接続される。なお、プラグ端子部11cは、基板の導電パターン部に半田によって接続される。
【0039】
他方のプラグ部材42は、一方のプラグ部材41と同じ形状となっている。プラグ部材42は、第1プラグ壁部26の第1プラグ内壁面26bに対応する平板形状の第1プラグ板部42aと、第1プラグ板部42aの一辺からプラグ嵌合面26a及び第1プラグ外壁面26cに対応するように略逆U字状に曲げられている第2プラグ板部42bとを有する。」

カ「【0047】
レセプタクル半田付け部141eは、レセプタクルコンタクト111のレセプタクル端子部111cと同じ方向へ延びており、図示しない基板に半田によって接続される。なお、レセプタクル端子部111cは、基板の導電パターン部に半田によって接続される。」

キ「【0080】
また、嵌合の際には、プラグ部材41,42及びレセプタクル部材241,242同士で嵌合が決まることによって繰り返し嵌合、抜去する時のプラグハウジング21及びレセプタクルハウジング121が削れることや破損などを防止できる。」

(3)刊行物3
刊行物3(特開2012-79684号公報)には、図面(特に【図1】?【図8】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0001】
本発明は、基板対基板コネクタに関するものである。」

イ「【0007】
しかしながら、前記従来の基板対基板コネクタにおいては、嵌合作業の際に、第1ハウジング811又は第2ハウジング911が損傷を受けたり、破損したりしてしまうことがある。第1基板に取付けられた第1コネクタ801と第2基板に取付けられた第2コネクタ901とを嵌合する場合、作業条件によっては、オペレータが第1ハウジング811の嵌合面及び第2ハウジング911の嵌合面を目視することができず、手探りで嵌合作業を行わなければならないことがある。特に、近年では、基板対基板コネクタの小型化及び低背化が進んでいるので、オペレータが第1ハウジング811の嵌合面及び第2ハウジング911の嵌合面を目視することが困難である。」

ウ「【0009】
そのため、第1ハウジング811と第2ハウジング911との位置合せが完了しない状態で、第1ハウジング811及び第2ハウジング911に嵌合方向への力が加えられる場合がある。この場合、第1ハウジング811の嵌合面の一部又は第2ハウジング911の嵌合面の一部が大きな押圧力を受け、傷付いたり、破損したりしてしまうことがある。特に、第1ハウジング811の長手方向両端に形成されたガイド部821は、比較的肉薄なので、例えば、第2ハウジング911の長手方向端部が斜めに当接した場合、容易に破損してしまう。
【0010】
本発明は、前記従来の基板対基板コネクタの問題点を解決して、第2コネクタの第2ハウジングが挿入される第1コネクタの第1ハウジングの長手方向両端の嵌合ガイド部に補強金具を配設することによって、嵌合作業中に第1コネクタの第1ハウジングの長手方向の嵌合ガイド部が損傷を受けたり破損したりしてしまうことがなく、操作性が高く、信頼性の高い基板対基板コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明の基板対基板コネクタにおいては、第1端子と、長手方向両端に形成された第1嵌合ガイド部を有する第1ハウジングとを備える第1コネクタと、前記第1端子と接触する第2端子と、長手方向両端に形成され、前記第1嵌合ガイド部と嵌合する第2嵌合ガイド部を有する第2ハウジングとを備える第2コネクタとから成る基板対基板コネクタであって、前記第1嵌合ガイド部は、前記第2嵌合ガイド部が挿入される凹部、及び、前記第1ハウジングの厚さ方向に延在する端壁部であって、その内側面が前記凹部における前記第1ハウジングの長手方向外側を画定する端壁部を含み、前記第1嵌合ガイド部には第1補強金具が取付けられ、該第1補強金具は、前記端壁部の嵌合側面の少なくとも一部を覆う中央部、及び、該中央部に接続され、前記端壁部の内側面の少なくとも一部を覆う舌片部を含み、前記第1ハウジングの幅方向に延在する本体部、並びに、該本体部に接続され、自由端が基板に固定される基板接続部を含む。」

エ「【0036】
そして、前記第1突出端部21には、補強金具としての第1補強金具51が取付けられる。該第1補強金具51は、端壁部21cの嵌合側面としての上面21aの少なくとも一部を覆うように配設され、第1突出端部21の側壁延長部21bに形成された第1金具保持凹部26内に収容されて保持される。
【0037】
本実施の形態において、第1補強金具51は、金属板(例えば、厚さ約0.1〔mm〕)に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、全体として第1ハウジング11の幅方向に延在する本体部としての第1本体部52と、該第1本体部52の左右両端に曲げて接続され、第1ハウジング11の厚さ方向(図2における上下方向)に延在し、前記第1ハウジング11に保持される被保持部としての第1腕部57と、該第1腕部57の下端に接続された基板接続部としての第1基板接続部56とを備える。」

オ「【0039】
前記中央部52aは、典型的には、端壁部21cの上面21a全体を覆う程度の形状及び大きさに形成され、かつ、前記上面21a全体を覆うように配設されるが、必ずしも、前記上面21a全体を覆う必要はなく、前記上面21aの一部のみを覆う程度のものであってもよい。
【0040】
また、前記舌片部52bは、その上端が前記上面21aに曲げて接続され、第1ハウジング11の厚さ方向に延在し、端壁部21cの内側面(第1ハウジング11の長手方向中央に向いた縁)21dの少なくとも一部を覆うように配設される。なお、図に示される例において、前記舌片部52bは、端壁部21cの内側面21dに形成された凹部21e内に収容され、該凹部21eの両側に位置する内側面21dとほぼ面一となるように形成されているが、必ずしも、前記内側面21dに凹部21eを形成して舌片部52bを収容するようにする必要はない。また、該舌片部52bは、前記内側面21d全体を覆うものであってもよい。」

カ「【0064】
しかし、本実施の形態においては、前記端壁部21cの内側面21dが第1補強金具51の第1本体部52の中央部52aに接続された舌片部52bによって覆われ、さらに、第1補強金具51の第1基板接続部56が第1基板上の固定用パッドに固定されているので、第2突出端部122から長手端方向へ向けた大きな押圧力を受けても、該押圧力は、第1補強金具51の第1本体部52の舌片部52bから第1基板接続部56を介して第1基板に伝達されるので、前記端壁部21cにはほとんど伝達されることがない。したがって、前記端壁部21cが損傷を受けたり、破損したりしてしまうことがない。」

キ「【0067】
しかし、本実施の形態においては、前記端壁部21cの上面21aが第1補強金具51の第1本体部52の中央部52aによって覆われ、前記端壁部21cの内側面21dが第1補強金具51の第1本体部52の中央部52aに接続された舌片部52bによって覆われ、さらに、第1補強金具51の第1基板接続部56が第1基板上の固定用パッドに固定されているので、第2突出端部122から大きな斜めの押圧力を受けても、該押圧力は、第1補強金具51の第1本体部52の中央部52aから第1基板接続部56を介して第1基板に伝達されるので、前記端壁部21cにはほとんど伝達されることがない。したがって、前記端壁部21cが損傷を受けたり、破損したりしてしまうことがない。」

ク「【0072】
なお、本実施の形態においては、第2コネクタ101の第2突出端部122には、第1補強金具51に相当する補強金具が配設されていない。これは、第2突出端部122は、第1コネクタ1の端壁部21cと比較すると、第2ハウジング111の幅方向に関する寸法が小さく、かつ、第2ハウジング111の長手方向に関する寸法が大きい、すなわち、肉厚で短い壁状の部材であるから、それ自体の強度が高く、ある程度の押圧力を受けても、損傷を受けたり、破損したりすることがない、と考えられるからである。もっとも、前記第2突出端部122も損傷を受けたり、破損したりすると考えられる場合には、必要に応じて、第1補強金具51に相当する補強金具を前記第2突出端部122に配設することができる。」

(4)刊行物4
刊行物4(特開2008-210616号公報)には、図面(特に【図1】?【図8】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0013】
本発明において、延出部の外壁面は、ハウジングに取付けられた金具で形成されていることができる。金具は、樹脂よりも強度が高いので、相手コネクタから受けるモーメントが大きくとも、十分に対抗でき表面が傷むこともない。又、この金具は、接地部材あるいは補強部材として、グランドあるいは回路基板への取付けの機能も併せもつこともでき、有用性を増す。」

イ「【0021】
雄コネクタ10は回路基板(図示せず)上に配されて、該回路基板と電気的に接続される。該雄コネクタ10は、回路基板上に配されて長く延びるハウジング11に複数の端子12が配列され、又、長手方向両端には金具13が取付けられている。」

ウ「【0027】
上記金具取付部15に取付けられている金具13は、図1に見られるように、金属板を加工して作られており、上記金具取付部15を覆うように、上壁部13A、側壁部13B,13C、端壁部13Dを有し、上壁部13Aからは上記金具取付部15に形成された取付孔15Aに圧入される取付片13Eが下方(図4では、紙面の背面方向)に屈曲されて延びており、上記側壁部13B,13Cの下端には取付脚13F,13GがL字状に延びている。
【0028】
このような金具13は、上壁部13Aと側壁部13B,13Cのそれぞれとの境付近から側壁部13B,13Cの上部にかけてロック突部13B1,13C1が設けられている。このロック突部13B1,13C1は、金具13の内面側から一部切起部を押出し加工して作られていて、上端は傾斜部をなし下端縁が段状となっていて、相手コネクタをこの傾斜部で容易に導入し段状の下端縁でロック係止するようになっている。」

エ「【0032】
このような雄コネクタ10に嵌合される雌コネクタ30は、図1のごとく、端子を保持せるハウジング31にシールドケース31Aが取りつけられており、端子に結線された複数のケーブルCは側方に導出されている。
【0033】
上記雌コネクタ30は、図2及び図3に見られるごとく、雄コネクタ10との嵌合側でハウジング31に嵌合凹部32が形成されている。該嵌合凹部32の平行で互に対向する内側面には、雄コネクタ10の端子12の接触部12Aに対応して、端子33の接触部33Aが配列されており、また、その配列範囲外の、両端には延出部嵌入凹部34が形成されている。当然のことながら、この延出部嵌入凹部34は、端子33が配列されている範囲に対し、上記雄コネクタ10における距離Fと同じだけ、該雄コネクタ10に対応してずれている。このずれの方向は図2及び図3からも判るように、ケーブルCの導出方向である。」

オ「【0036】
(1)雄コネクタ10は、回路基板等の取付対象に対し、端子10の接続部12Bが対応回路部上に、そして金具13の取付脚13F,13Gが対応取付部上にそれぞれ位置するように、上記取付対象に対して配置し、半田等で上記接続部12Bを接続し、上記取付脚13F,13Gを固定する。」

(5)刊行物5
刊行物5(特開2007-109522号公報)には、図面(特に【図1】?【図3】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0001】
本発明は、プリント基板やフレキシブルプリント基板(以下、「FPC」と略記する)などの基板同士を電気的に接続するために用いられる電気コネクタに関する。」

イ「【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の電気コネクタは、基板同士を電気的に接続するために用いられ、リセプタクルコネクタとプラグコネクタとが嵌合してなる電気コネクタにおいて、リセプタクルコネクタとプラグコネクタのいずれか一方にスライドロック部材が設けられ、他方に係止部が設けられ、スライドロック部材がスライドすることによって前記係止部とスライドロック部材とが係合することを特徴とする。」

ウ「【0020】
図2に示すプラグコネクタ11には、左右一対となった導電性のプラグ側端子12が、ピッチ方向に複数組配置されている。また、プラグコネクタ11の側面側端部の2カ所に、プラグ側ホールドダウン13が設けられており、このプラグ側ホールドダウン13の上方の係止部16には突起14が設けられている。
プラグコネクタ11は、図示しない基板又はFPC等に対してプラグ側端子12を半田付けすることなどによって電気的に接続されるとともに、プラグ側ホールドダウン13も、基板又はFPC等に半田付けすることなどによって固定される。」

(6)刊行物6
刊行物6(特開2007-257999号公報)には、図面(特に【図1】?【図4】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0021】
図1において、本実施形態のコネクタ10は相手コネクタ30と嵌合接続される。
【0022】
コネクタ10は、その下面で、回路基板(図示せず)に取りつけられ接続される。該コネクタ10は、全体として薄型で外形が長方形をなし中央部に貫通せる長方形孔部が形成された平面形状を有している。このコネクタ10は中央に、相手コネクタ30を受入れる受入部としての孔部が形成されたハウジング11に端子12が保持され、かつ、このハウジング11の外面に金属シェル13が取りつけられている。
【0023】
ハウジング11は、平面形状にて、外形が長方形で中央に長方形の孔部14が形成されている。かかるハウジング11は、該孔部14の長手方向に延びる対向内壁面に端子12の接触部12B1が上記長手方向に定間隔で配列形成されている。これらの端子12を収めるための端子溝16は、図3、図4にも見られるように、上記孔部14の対向内壁面と上面に開口して形成されており、その端子溝16の内部には島状の固定部16Aが設けられている。又、上記孔部14の対向内壁面は、上記端子溝16の開口縁で縦方向に延びる凹部17Aをなし、隣接する端子溝同士間にはこの凹部と平行な凸部17Bが設けられ、この凹凸部を交互にくり返して、歯状部17を形成している。」

イ「【0028】
ハウジング11の長手方向に延びる外側面は、全域にわたり金属シェル13の側面部21により覆われている。この側面部21には、局所に小孔21Aが穿設されていて、ここにモールド一体成形されたハウジング11の部分11Dが入り込んで、金属シェル13の保持を強固としている。この側面部21は、上記ハウジング11の長手方向に延びる外側面をほぼ全面的に覆っているが、上縁、下縁にて一部極く浅く切り込まれた部分もある。しかし、下縁そして上縁には、コネクタの高さ方向で最低位そして最高位に位置する当接部21B,21Cが形成されている。当接部21Bは当該コネクタ10が回路基板に取りつけられたときにこの回路基板の面に当接する位置に、そして当接部21Cは、相手コネクタ30が他の回路基板に取りつけられこの相手コネクタ30が当該コネクタ10に嵌合したときに、この他の回路基板の面に当接する位置にある。該側面部21は、上記上面部20と屈曲部を介してつながっている。」

ウ「【0031】
かかる金属シェル13は、ハウジング11の孔部14側にロック部23と接触片24が延出形成されている。ロック部23は、該ロック部23の端縁が上記ハウジング11の係止凹部18へその内壁面に密着するように収められ逆L字状をなし高い剛性を有している。接触片24は、ハウジング11の接触片用凹部19に収められるように、略逆L字状に屈曲され斜面24Aを有している。この接触片24は、上記接触片用凹部19の内壁面とは非接触で、撓みを可能とする弾性を有している。」

エ「【0036】
上記ハウジング31には、その長手方向両端近傍に、固定金具37が取りつけられている。この固定金具37は、金属板を屈曲加工して作られており、基部37Aから上方に突出する脚状の二つの接続部37B、基部37Aから該基部37Aと同一面内でJ字状に延びる弾性腕として形成された二つの被ロック部37C、そして上記基部37Aに対して板面方向にJ字状に形成された接触部37Dとを有している。該固定金具37には、図1にて下方からハウジング31へ挿着され、上記接続部37Bが上方へ、被ロック部37Cの自由端部が側方へ、上記接触部37Dが端面側へ、ハウジング31からそれぞれ突出する。」

オ「【0039】
(2)二つの回路基板付きコネクタ10,30を接続するには、互に回路基板を対面させるようにして摘んだ状態で、コネクタ10の孔部14に相手コネクタ30が位置合せされ、次に嵌合される。嵌合により、相手コネクタ30の端子34の接触部35がコネクタ10の端子12の接触部12B1と接触し、相手コネクタ30の固定金具37の被ロック部37Cがコネクタ10の金属シェル13のロック部23と係合し、相手コネクタ30の固定金具37の接触部37Dがコネクタ10の金属シェル13の接触片24と接触するようになる。かくして、二つのコネクタ10,30は、端子12,34同士で接続され、ロック部23と被ロック部37Cとの係合で互に抜けが防止され、金属シェル13の接触片24と固定金具37の接触部37Dとの接触によりグランドがなされる。相手コネクタ30は、嵌合終了時には、その高さ方向にて、コネクタ10の孔部14内に完全に収まる。したがって、コネクタ10の金属シェル13はその当接部21Cそして上面部20にて相手コネクタ30の回路基板と当接している。」

(7)先願1
先願1(特願2012-180468号(特開2014-38768号公報))の願書に最初に添付した明細書には、図面(特に【図1】?【図8】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

ア「【0025】
図において、1は本実施の形態におけるコネクタである一対の基板対基板コネクタの一方としての第1コネクタであり、実装部材としての図示されない第1基板の表面に実装される表面実装型のコネクタである。また、101は本実施の形態におけるコネクタである一対の基板対基板コネクタの他方、すなわち、相手方コネクタとしての第2コネクタであり、実装部材としての図示されない第2基板の表面に実装される表面実装型のコネクタである。
【0026】
本実施の形態におけるコネクタは、典型的には、基板対基板コネクタと称されるものであって、前記第1コネクタ1及び第2コネクタ101を含み、基板としての第1基板及び第2基板を電気的に接続する。なお、前記第1基板及び第2基板は、例えば、電子機器等に使用されるプリント回路基板、フレキシブルフラットケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)、フレキシブル回路基板(FPC:Flexible Printed Circuit)等であるが、いかなる種類の基板であってもよい。」

イ「【0028】
そして、前記第1コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたコネクタ本体としての第1ハウジング11を有する。該第1ハウジング11は、図に示されるように、概略直方体である概略長方形の厚板状の形状を備え、第2コネクタ101が嵌入される側、すなわち、嵌合面側(図1における上側)には、周囲が囲まれた概略長方形の凹部12が形成されている。前記第1コネクタ1は、例えば、縦約10.0〔mm〕、横約2.5〔mm〕及び厚さ約1.0〔mm〕の寸法を備えるものであるが、寸法は適宜変更することができる。そして、前記凹部12内には島部としての第1凸部13が第1ハウジング11と一体的に形成され、また、前記第1凸部13の両側には該第1凸部13と平行に延在する側壁部14が第1ハウジング11と一体的に形成されている。
【0029】
前記第1凸部13及び側壁部14は、凹部12の底面から上方に向けて突出し、第1ハウジング11の長手方向に延在する。これにより、前記第1凸部13の両側には、凹部12の一部として、第1ハウジング11の長手方向に延在する細長い凹部である凹溝部12aが第1凸部13と側壁部14との間に形成される。なお、図に示される例において、前記第1凸部13は単数であるが、複数であってもよく、その数はいくつであってもよい。また、前記第1凸部13は、例えば、幅約0.6〔mm〕の寸法を備えるものであるが、寸法は適宜変更することができる。」

ウ「【0035】
さらに、前記第1突出端部21は、側壁部14の長手方向両端から第1ハウジング11の長手方向に延出する側壁延長部21bを備える。各第1突出端部21は、連続したコ字状の側壁を形成し、略長方形の突出端凹部22の三方を画定する。
【0036】
そして、前記第1突出端部21には、補強金具としての第1補強金具51が取付けられる。該第1補強金具51は、第1突出端部21の嵌合側面としての上面21aの少なくとも一部を覆うように配設され、第1突出端部21の側壁延長部21bに形成された第1金具保持凹部26内に収容されて保持される。
【0037】
本実施の形態において、第1補強金具51は、金属板(例えば、厚さ約0.1〔mm〕)に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、全体として第1ハウジング11の幅方向に延在する本体部としての第1本体部52と、該第1本体部52の左右両端に曲げて接続され、第1ハウジング11の厚さ方向(図1における上下方向)及び長手方向に延在し、前記第1ハウジング11に保持される被保持部としての第1腕部57と、該第1腕部57の下端に接続された基板接続部としての第1基板接続部56と、前記第1本体部52の中央からほぼ90度に屈曲して下方に向けて、すなわち、実装面に向けて延出する係合舌片としての舌片部54とを備える。」

エ「【0040】
さらに、前記第1腕部57の上端には、ほぼ180度に屈曲して下方に向けて、すなわち、実装面に向けて延出するクリップ片55及び接触片58が接続されている。前記クリップ片55は、第1補強金具51を第1ハウジング11に固定するための第1補強金具固定部材として機能し、前記第1腕部57と協働し、前記第1金具保持凹部26において、側壁延長部21bの壁部材21eを両側から挟持する。また、前記接触片58は、端子として機能し得る部材であり、第1補強金具51が第1基板のパワーライン、グランドライン等に電気的に接続されている場合に、第2コネクタ101が備える部材であって、第2基板のパワーライン、グランドライン等に電気的に接続されている部材と接触して、第1基板及び第2基板のパワーライン同士、グランドライン同士等を導通させるようになっている。」

オ「【0044】
第2コネクタ101は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に形成されたコネクタ本体としての第2ハウジング111を有する。該第2ハウジング111は、図に示されるように、概略直方体である概略長方形の厚板状の形状を備え、例えば、縦約8.0〔mm〕、横約1.5〔mm〕及び厚さ約0.8〔mm〕の寸法を備えるものであるが、寸法は適宜変更することができる。そして、第2ハウジング111の第1コネクタ1に嵌入される側、すなわち、嵌合面(図4に示される面)側には、第2ハウジング111の長手方向に延在する細長い凹溝部113と、該凹溝部113の外側を画定するとともに、第2ハウジング111の長手方向に延在する細長い凸部としての第2凸部112とが一体的に形成されている。該第2凸部112は、凹溝部113の両側に沿って、かつ、第2ハウジング111の両側に沿って形成されている。また、各第2凸部112には、端子としての第2端子161が配設されている。」

カ「【0048】
また、前記第2ハウジング111の長手方向両端には第2嵌合ガイド部としての第2突出端部122が各々配設されている。該第2突出端部122は、第2ハウジング111の幅方向に延在し、両端が各第2凸部112の長手方向両端に接続された肉厚の部材である。そして、前記第2突出端部122は、第1コネクタ1及び第2コネクタ101が嵌合された状態において、前記第1コネクタ1が備える第1突出端部21の突出端凹部22に挿入される挿入凸部として機能する。
【0049】
さらに、前記第2突出端部122には、補強金具としての第2補強金具151が取付けられる。該第2補強金具151は、第2突出端部122の嵌合側面としての上面122aの少なくとも一部を覆うように配設され、第2突出端部122に形成された凹部としての第2金具保持側面凹部126a内、第2金具保持端面凹部126b内及び第2金具保持上面凹部126c内に収容されて保持される。
【0050】
本実施の形態において、第2補強金具151は、金属板(例えば、厚さ約0.1〔mm〕)に打抜き、曲げ等の加工を施すことによって一体的に形成された部材であり、全体として第2ハウジング111の幅方向に延在する本体部としての第2本体部152と、該第2本体部152の左右両端に曲げて接続され、第2ハウジング111の厚さ方向(図3における上下方向)及び長手方向に延在し、前記第2ハウジング111に保持される被保持部としての第2腕部157と、前記第2本体部152の凹溝部113寄りの端部における中央からほぼ90度に屈曲して下方に向けて、すなわち、実装面に向けて延出する被保持部としての中央腕部155と、前記第2本体部152の凹溝部113と反対側の端部における中央からほぼ90度に屈曲して下方に向けて、すなわち、実装面に向けて延出する係合板部材としての外板部153とを備える。」

キ「【0053】
なお、前記外板部153の下端は、第2ハウジング111の実装面に突出し、第2補強金具151のはんだテール部として機能し、その下端の下面が第2基板上の固定用パッドにはんだ付等によって固定される。また、前記第2腕部157は、第2ハウジング111の厚さ方向かつ長手方向に延在するように第2突出端部122の側面に形成された前記第2金具保持側面凹部126a内に、収容されて保持される。さらに、前記中央腕部155は、第2突出端部122の上面122aに開口する第2金具保持上面凹部126c内に挿入されて保持される。なお、前記第2腕部157を、第1補強金具51の接触片58と接触させてもよい。これにより、前記第2補強金具151が第2基板のパワーライン、グランドライン等に電気的に接続され、かつ、前記第1補強金具51が第1基板のパワーライン、グランドライン等に電気的に接続されている場合には、第1基板及び第2基板のパワーライン同士、グランドライン同士等が導通する。」

ク「【0067】
図6には、前記第2突出端部122の突出端凹部22内への挿入が開始された状態が示されている。前述のように、第1補強金具51の舌片部54の幅狭部54aは屈曲部分を含み、該屈曲部分の外側曲面は、突出端凹部22内に進入する第2突出端部122の外側面122b乃至第2補強金具151の第2本体部152と摺接し、これらをスムーズに案内する。また、前記幅狭部54aが溝部154の幅広部154bよりも幅狭なので、前記幅狭部54aの両側縁は、第1コネクタ1と第2コネクタ101との嵌合工程において、舌片部54が溝部154内に進入する際に、進入を容易にする。さらに、第1補強金具51のクリップ片55及び接触片58は、第1腕部57の上端に屈曲して接続されて、下方に向けて延出している。そのため、その屈曲部分の外側曲面は、突出端凹部22内に進入する第2突出端部122の上面122a乃至第2補強金具151の第2腕部157と摺接し、これらをスムーズに案内する。」

ケ 上記記載事項クに照らせば、【図5】?【図7】の斜視図からは、クリップ片55及び接触片58が短手方向で第1コネクタ1の凹状の部分側へ向けて第2コネクタ101をガイドするガイド面を有していること、舌片部54が、長手方向で凹状の部分側へ向けて第2コネクタ101をガイドする副ガイド面を有していること、第1基板及び第2基板が対面する上下方向を挿抜方向としていること、及び、コネクタ嵌合直前の姿勢から、第1コネクタ1の凹状の部分に第2コネクタ101の凸状の部分が上方から挿入されて、嵌合が完了することが看取できる。

コ 【図1】の斜視図からは、凹部12の底面の周囲に、両側の側壁部14及び側壁延長部21bと、側壁延長部21b同士を長手方向に対して直角な短手方向で連結する内側面21cの位置の側壁とで周壁を形成している構成が看取できる。

サ 【図4】の斜視図からは、第2金具保持上面凹部126cを境にして、第2突出端部122の下面のうち長手方向での外側領域では第2補強金具151の下面部が位置しているとともに、長手方向の内側領域では第2突出端部122の下面が露呈している構成が看取できる。


上記記載事項及び図示内容を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、先願1の願書に最初に添付した明細書又は図面には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

[先願発明]
「第1基板の表面上に実装される第1コネクタ1と第2基板に実装される第2コネクタ101とを有し、第1基板及び第2基板が対面する上下方向を挿抜方向として第1コネクタ1に第2コネクタ101が上方から嵌合接続される基板対基板コネクタであって、
第1コネクタ1の第1ハウジング11は、第1基板の表面に対面する凹部12の底面の周囲から上方に向けて突出していると共に第1ハウジング11の長手方向に延在する両側の側壁部14及び側壁延長部21bと該両側の側壁部14及び側壁延長部21bの側壁延長部21b同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する両側の内側面21cの位置の側壁とで形成される周壁と、該周壁内で凹部12の底面から上方に向けて突出する第1凸部13とを有し、該周壁と該第1凸部13とで囲まれた凹溝部12a及び突出端凹部22が上方から第2コネクタ101を挿入されるための凹状の部分として形成され、上記第1ハウジング11は、側壁部14の長手方向での両端の第1突出端部21で第1補強金具51を保持しており、
第2コネクタ101の第2ハウジング111は、上記第1コネクタ1の凹状の部分に上方から嵌入される凸状の部分を有し、該凸状の部分は、上記長手方向に延在する両側の第2凸部112と該両側の第2凸部112の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する両側の第2突出端部122とを有しており、上記長手方向での両端の第2金具保持凹部126aで第2補強金具151を保持している電気コネクタ組立体において、
上記第1補強金具51は、両側の側壁部14及び側壁延長部21bの端部側に位置するクリップ片55及び接触片58と、内側面21cの位置の側壁に位置する舌片部54とを一体に有し、
上記第2補強金具151は、上記第1補強金具51の上記クリップ片55及び接触片58に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記凸状の部分の両側の外側面に位置する第2腕部157と、上記第1補強金具51の上記舌片部54に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記凸状の部分の外側面に位置する溝部154と、第2コネクタ101がコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときの第2突出端部122の下面に位置する第2本体部152と、上記第2腕部157に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記第2本体部152に連結される側肩部と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部とを一体に有し、
上記第1補強金具51は、上記クリップ片55及び接触片58が、上記短手方向で凹状の部分側へ向けて上記第2コネクタ101をガイドするガイド面を有し、上記舌片部54が、上記長手方向で凹状の部分側へ向けて上記第2コネクタ101をガイドする副ガイド面を有し、
上記第2突出端部122は、第2金具保持凹部126を有し、該第2突出端部122の下面のうち上記長手方向での外側領域では上記第2補強金具151の下面部が位置しているとともに、上記長手方向の内側領域では該第2突出端部122の下面が露呈している基板対基板コネクタ。」

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件発明1について
(ア)引用発明との対比
本件発明1と引用発明を対比すると、引用発明の「第1基板」は、その技術的意義及び機能からみて本件発明1の「回路基板」に相当し、以下同様に、「表面」は「実装面」に、「実装される」ことは「配される」ことに、「第1コネクタ1」は「レセプタクルコネクタ」に、「第2基板」は「他の回路基板」に、「第2コネクタ101」は「プラグコネクタ」に、「第1基板及び第2基板」は「回路基板同士」に、「基板対基板コネクタ」は「電気コネクタ組立体」に、「第1ハウジング11」は「レセプタクルハウジング」に、「凹部12の底面」は「底壁」に、「周囲」は「周囲部」に、「上方に向けて突出」することは「上方に起立」することに、「延在する」ことは「延びる」ことに、「両側」は「一対」に、「側壁部14及び側壁延長部21b」は「レセプタクル側壁」に、「側壁延長部21b」は「上記長手方向端部」に、「端壁部21c」は「レセプタクル端壁」に、「第1凸部13」は「中央突壁」に、「凹溝部12a及び突出端凹部22」は「空間」に、「挿入される」ことは「受け入れる」ことに、「凹状の部分」は「受入部」に、「側壁部14の長手方向での両端」は「上記長手方向での両端部」に、「第1突出端部21」は「端子保持領域外」に、「補強金具51」は「レセプタクル側ガイド金具」に、「第2ハウジング111」は「プラグハウジング」に、「凸状の部分」は「嵌合部」に、「第2凸部112」は「プラグ側壁」に、「第2突出端部122」は「プラグ端壁」に、「第2金具保持凹部126a」は「端子保持領域外」に、「第1側方接触腕部58」は「ガイド部」に、「第1中央接触腕部54」は「副ガイド部」に、凸状の部分の「外側面」は嵌合部の「外面」に、「第2側板部157」は「側面部」に、「第2本体部152」は「端面部」に、「接続腕部58c」は「ガイド面」に、「接続腕部54c」は「副ガイド面」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「第2補強金具151」と本件発明1の「プラグ側ガイド金具」とは、「プラグ側金具」という限りで共通する。

したがって、本件発明1と引用発明とは、次の一致点1で一致し、相違点1及び相違点2で相違する。

[一致点1]
回路基板の実装面上に配されるレセプタクルコネクタと他の回路基板に配されるプラグコネクタとを有し、回路基板同士が対面する上下方向を挿抜方向としてレセプタクルコネクタにプラグコネクタが上方から嵌合接続される電気コネクタ組立体であって、
レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上方に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対のレセプタクル側壁と該一対のレセプタクル側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対のレセプタクル端壁とで形成される周壁と、該周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁とを有し、該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間が上方からプラグコネクタを受け入れるための受入部として形成され、上記レセプタクルハウジングは、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しており、
プラグコネクタのプラグハウジングは、上記レセプタクルコネクタの受入部に上方から嵌入される嵌合部を有し、該嵌合部は、上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側金具を保持している電気コネクタ組立体において、
上記レセプタクル側ガイド金具は、一対のレセプタクル側壁の端部側に位置するガイド部と、レセプタクル端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、
上記プラグ側金具は、上記レセプタクル側ガイド金具の上記ガイド部に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記嵌合部の両側の外面に位置する側面部と、上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部とを一体に有し、
上記レセプタクル側ガイド金具は、上記ガイド部が、上記短手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドするガイド面を有し、上記副ガイド部が、上記長手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドする副ガイド面を有し、
上記プラグ端壁は、上記長手方向全域にわたって中実に形成されている電気コネクタ組立体。」

[相違点1]
本件発明1の「プラグ側ガイド金具」は、「プラグコネクタがコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときのプラグ端壁の下面に位置する下面部と、上記側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される側肩部と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部とを一体に有し」ているのに対し、引用発明の「第2補強金具151」は、このような構成を有しない点。

[相違点2]
本件発明1は、プラグ端壁の下面のうち長手方向での外側領域ではプラグ金具の下面部が位置しているとともに、長手方向の内側領域ではプラグ端壁の下面が露呈しているのに対し、引用発明は、このような構成を有しない点。

(イ)引用発明との相違点の検討
上記相違点1及び相違点2について検討する。

本件発明1において、プラグ側ガイド金具は、プラグ端壁の下面に位置する「下面部」と、プラグ側ガイド金具の側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される「側肩部」と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される「端肩部」とを一体に有する構成となっていて、プラグ端壁の外側領域はプラグ側ガイド金具の下面側が位置する構成であるため、レセプタクル側ガイド金具の「ガイド部」及び「副ガイド部」と組み合わされることにより、長手方向及び短手方向のいずれの方向であっても、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際のコネクタ同士の当接が、金属同士となる構成である。

これに対し、刊行物2に記載されたプラグ部材41は、側面側の一対の第3プラグ板材41cがプラグハウジング21にモールドイン成形する際に埋め込まれるものであるから、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、短手方向については、金属同士の当接とならない。
刊行物3に記載された第1補強金具51は、引用発明の「補強金具51」あるいは本件発明1の「レセプタクル側ガイド金具」に相当する金具であるが、第1補強金具51は、短手方向での位置合わせを行う構成を有しないので、仮に第1補強金具51に相当する補強金具を第2突出端部122に配設しても、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、短手方向については、金属同士の当接とならない。
刊行物4に記載された金具13のロック突部13B1,13C1の上端の傾斜部は、上記刊行物4の記載事項及び図示内容から、雌コネクタ30に取り付けられたシールドケース31Aの、延出部嵌入凹部34内に嵌合するものと認められるが、この延出部嵌入凹部34自体はシールドケース31Aの外に露出した構成ではなく、ガイド金具としての機能を有しているとまでは認められないので、刊行物4に記載された金具13は、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、長手方向及び短手方向について、金属同士の当接をさせるものではない。
刊行物5に記載されたプラグ側ホールドダウン13は、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、短手方向について、金属同士の当接をさせるものではない。
刊行物6に記載された固定金具37には、本件発明1の「端肩部」に相当する構成が備わっていないから、この固定金具37は、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、短手方向について、金属同士の当接をさせるものではない。

したがって、刊行物2?6のいずれにも、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、長手方向及び短手方向について、金属同士を当接させる構成は、開示されていない。
そうすると、引用発明及び刊行物2?6の記載事項を組み合わせても、本件発明1の上記相違点1及び2の構成とはならない。

そして、本件発明1は、長手方向及び短手方向のいずれであっても、コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際、金属同士の当接となるから、「耐摩耗性の向上」(本件特許明細書の段落【0047】参照。)という特有の効果を奏すると認められる。

したがって、本件発明1は、引用発明と同一でなく、引用発明及び刊行物2?6の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(ウ)先願発明との対比
本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の「第1基板」は、その技術的意義及び機能からみて本件発明1の「回路基板」に相当し、以下同様に、「表面」は「実装面」に、「実装される」ことは「配される」ことに、「第1コネクタ1」は「レセプタクルコネクタ」に、「第2基板」は「他の回路基板」に、「第2コネクタ101」は「プラグコネクタ」に、「第1基板及び第2基板」は「回路基板同士」に、「基板対基板コネクタ」は「電気コネクタ組立体」に、「第1ハウジング11」は「レセプタクルハウジング」に、「凹部12の底面」は「底壁」に、「周囲」は「周囲部」に、「上方に向けて突出」することは「上方に起立」することに、「延在する」ことは「延びる」ことに、「両側」は「一対」に、「側壁部14及び側壁延長部21b」は「レセプタクル側壁」に、「側壁延長部21b」は「上記長手方向端部」に、「内側面21cの位置の側壁」は「レセプタクル端壁」に、「第1凸部13」は「中央突壁」に、「凹溝部12a及び突出端凹部22」は「空間」に、「挿入される」ことは「受け入れる」ことに、「凹状の部分」は「受入部」に、「側壁部14の長手方向での両端」は「上記長手方向での両端部」に、第1ハウジング11の「第1突出端部21」はレセプタクルハウジングの「端子保持領域外」に、「第1補強金具51」は「レセプタクル側ガイド金具」に、「第2ハウジング111」は「プラグハウジング」に、「凸状の部分」は「嵌合部」に、「第2凸部112」は「プラグ側壁」に、「第2突出端部122」は「プラグ端壁」に、第2ハウジング111の「第2金具保持凹部126a」はプラグハウジングの「端子保持領域外」に、「クリップ片55及び接触片58」は「ガイド部」に、「舌片部54」は「副ガイド部」に、凸状の部分の「外側面」は嵌合部の「外面」に、「第2腕部157」は「側面部」に、それぞれ相当する。

したがって、本件発明1と先願発明とは、以下の一致点2で一致し、相違点3及び相違点4で相違する。

[一致点2]
「回路基板の実装面上に配されるレセプタクルコネクタと他の回路基板に配されるプラグコネクタとを有し、回路基板同士が対面する上下方向を挿抜方向としてレセプタクルコネクタにプラグコネクタが上方から嵌合接続される基板対基板コネクタであって、
レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上方に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対のレセプタクル側壁と該一対のレセプタクル側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対のレセプタクル端壁とで形成される周壁と、該周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁とを有し、該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間が上方からプラグコネクタを受け入れるための受入部として形成され、上記レセプタクルハウジングは、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しており、
プラグコネクタのプラグハウジングは、上記レセプタクルコネクタの受入部に上方から嵌入される嵌合部を有し、該嵌合部は、上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している電気コネクタ組立体において、
上記レセプタクル側ガイド金具は、一対のレセプタクル側壁の端部側に位置するガイド部と、レセプタクル端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、
上記プラグ側ガイド金具は、上記レセプタクル側ガイド金具の上記ガイド部に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記嵌合部の両側の外面に位置する側面部と、プラグコネクタがコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときのプラグ端壁の下面に位置する下面部と、側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される側肩部とを一体に有し、
上記レセプタクル側ガイド金具は、上記ガイド部が、上記短手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドするガイド面を有し、上記副ガイド部が、上記長手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドする副ガイド面を有し、
上記プラグ端壁の下面のうち上記長手方向での外側領域では上記プラグ金具の下面部が位置しているとともに、上記長手方向の内側領域では該プラグ端壁の下面が露呈している電気コネクタ組立体。」

[相違点3]
本件発明1の「プラグ側ガイド金具」は、「上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部」を有し、「上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部」を一体に有するのに対し、先願発明の「第2補強金具151」は、「上記第1補強金具51の上記舌片部54に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記凸状の部分の外側面に位置する溝部154」を有する構成である点。

[相違点4]
本件発明1の「プラグ端壁」は、「長手方向全域にわたって中実に形成されて」いるのに対し、先願発明の「第2突出端部122」は、「第2金具保持凹部126」を有する点。

(エ)先願発明との相違点の検討
本件発明1の「プラグ側ガイド金具」の「上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置」は、先願発明の「第2補強金具151」の「上記第1補強金具51の上記舌片部54に対応した位置」に相当する。 そして、本件発明1の「端面部」又は「端肩部」と同じ位置において、当該「端面部」及び「端肩部」と明らかに構成が異なる「溝部154」を有する先願発明は、相違点3において本件発明1と実質的に相違する。

また、先願発明の「第2突出端部122」は、「第2金具保持凹部126」という空所を有するため、本件発明1の「プラグ端壁」のように、長手方向全域にわたって中実とすることができないから、先願発明は本件発明1と相違点4において実質的に相違する。

したがって、上記相違点3及び相違点4は実質的なものであるから、本件発明1は、先願発明と同一ではない。

(オ)小括
上記(イ)及び(エ)のとおり、本件発明1は、引用発明または先願発明と同一ではなく、引用発明及び刊行物2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、特許法第29条第1項第3号、同条第2項または同法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

イ 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1を更に減縮したものであるから、本件発明1につての判断と同様の理由により、本件発明2?4は、引用発明または先願発明と同一ではなく、引用発明及び刊行物2?6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないので、特許法第29条第1項第3号、同条第2項または同法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 分割要件違反
本件発明1?5の構成は、原出願の願書に最初に添付された明細書(以下、「原出願当初明細書」という。)、特許請求の範囲又は図面に記載されたものである。

そして、本件発明1?5は、従来の電気コネクタ組立体やレセプタクルコネクタに比べて「コネクタ嵌合開始時におけるガイドの際のコネクタ同士の当接による衝撃力、そしてコネクタ嵌合過程におけるガイドの際のコネクタ同士の摩擦力」に対抗できる電気コネクタ組立体やレセプタクルコネクタを提供することを課題(本件特許明細書の段落【0007】)としていると認められるが、この課題は、原出願当初明細書の「相手コネクタの嵌合時のガイドを行いつつ、ハウジングの保護を行う相手コネクタの繰り返しの挿抜によっても摩耗そして損傷が極力低く十分な強度をもつガイド金具を備えた電気コネクタを提供することを課題とする。」(段落【0008】)、「ガイド金具60は、上記コネクタ1へ嵌合する際に該コネクタ1のガイド金具30にガイドされて正規位置へ誘導されるのに機能する。両金具30,60は、嵌合開始直前では、相対的に正規の嵌合位置から少なからずずれていることが多く、嵌合開始時には、互いに当接し、特にコネクタの端部、角部で当接力は比較的大きい。したがって、当接する衝撃力、そして嵌合過程での摩擦力に十分対抗するという点で、同じ金具であることの意味がある。」(段落【0041】)及び「【0052】
このような、長手方向一端側からの嵌合開始は、通常、よく行われ、上記一端側に集中して大きい当接力が作用する。本発明では、この大きい当接力が作用する部位にガイド金具30が位置しており、しかもこのガイド金具30はハウジングに対して固定的に取り付けられているので、相手コネクタのガイド金具との金属接触により、耐摩耗性の向上、ガイド金具自体の強度の向上そしてガイド金具の取付強度の確保が図れる。
【0053】
相手コネクタ2の上記長手方向一端側での嵌合が或る程度進んでから、他端側が降下され始まると、上記一端側で、コネクタ1の中央突壁12の長手方向端面12Aは傾斜面をなしているので、相手コネクタ2の中央凹部45で同様に形成された傾斜面45Aへ向け楽に上記中央凹部45内へ進入し、相手コネクタ2は、上記一端側を中心として回転するように他端側が降下される際、上記中央突壁12の長手方向端面12Aと上記中央凹部45の傾斜面45Aは円滑に嵌合度を深める。
【0054】
コネクタの嵌合後の使用状態において、コネクタ組立体が不用意に落下したりコネクタ抜出時に無理してこじりを受けたとき、上記コネクタのハウジング10に設けられた中央突壁12は比較的肉薄に作られて補強金属板などを設けることができないので、その長手方向での外力を小さな断面積で受けなくてはならない。しかし、本発明では、上記コネクタ1の中央突壁12の長手方向端面12Aが長手方向に肉厚になっていると共にこれに対応する相手コネクタの中央凹部45の傾斜面45Aが互いに、対応する傾斜面で当接するので、傾斜していることで傾斜面、すなわち、当接面がその分大きくなって当接応力が小さくなること、外力は横方向、すなわち長手方向に加わるので、その外力が当接面に直角な方向の分力として作用する際、その分力自体が、上記傾斜により低減されていることに起因して上記長手方向端面12Aは、ガイドのみならず強度上においても大きく貢献する。また、抜出時に無理して幅方向のこじりを受けたとき、上記コネクタ1の中央突壁12の長手方向端面12Aが長手方向に肉厚になっているので、相手コネクタ2のハウジング40の長手方向端部によって、上記コネクタ1中央突壁12の長手方向端の幅方向に力が作用しても強度上において大きく貢献する。」(段落【0052】?【0054】)等の記載から自明なものである。

さらに、本件発明1?5は、「逆U字形状に形成され、ハウジングの側壁の取付部へ上方から跨ぐように被取付部を取り付け、側壁の内外壁面で被取付部を保持する」及び「2つの被取付部を、ハウジングの端壁内面に位置している連結部で連結する」という、ガイド金具の被取り付け部の構成を前提とせずに、上記課題を解決できるものであることは、原出願当初明細書の段落【0052】?【0054】の記載や、本件特許明細書等の記載から明らかである。

そうであれば、本件発明1?5は、原出願に包含された複数の発明のうちの一部であると認められ、「逆U字形状に形成され、ハウジングの側壁の取付部へ上方から跨ぐように被取付部を取り付け、側壁の内外壁面で被取付部を保持する」及び「2つの被取付部を、ハウジングの端壁内面に位置している連結部で連結する」という構成を前提としたものではない。

したがって、本件発明1?5に係る特許出願は、特許法第44条第2項の規定により平成25年6月10日に出願されたものとみなされるから、平成26年12月18日に公開された甲第1号証(特開2014-239001号公報)に記載された発明と本件発明1?5が同一であっても、本件発明1?5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反して特許されたものとはいえない。

イ 特許法第36条第6項第2号
(ア)本件発明1及び2
本件発明1の「側肩部」及び「端肩部」並びに本件発明2の「凸湾曲面」は明確である。本件発明1は物の発明であるから、「金属板の屈曲加工によって形成された」といった加工方法に依存しないことは明らかである。

(イ)本件発明3
本件発明3の「傾斜面」は明確である。請求項3には傾斜面に関し「底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面」及び「上記傾斜面でプラグコネクタをガイドすることを可能としている」との事項が記載されており、これらの事項に該当しない傾斜面、例えば、プラグコネクタをガイドすることが不可能であるような、垂直な面に設けられる抜き勾配は、本件発明3の「傾斜面」に該当しない。

(ウ)本件発明4
本件発明4の「側壁の上面に沿う」あるいは「端壁の上面に沿う」との記載は、側壁あるいは端壁の上面と非平行でもかまわないことは、【図6】の上面部31cあるいは【図8】のガイド金具30の上板部32c相当の部分の、側壁あるいは端壁の上面との隙間の非平行な描かれかたからも明らかである。
また、本件発明4の「下り勾配をなしている」との記載の勾配が湾曲しているものを含むことは自明である。

(エ)本件発明5
本件発明5の「傾斜面」は明確である。請求項5には傾斜面に関し「底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面」、「上記傾斜面でプラグコネクタをガイドすることを可能となっており」及び「コネクタ嵌合方向で上記ガイド部のロック部よりも底壁側にまで及んでいる」との事項が記載されており、これらの事項に該当しない傾斜面、例えば、プラグコネクタをガイドすることが不可能であるような、垂直な面に設けられる抜き勾配は、本件発明5の「傾斜面」に該当しない。

(オ)小括
上記のとおり、本件発明1?5は明確であるから、本件発明1?5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反して特許されたものではない。

ウ 特許法第29条第2項について(本件発明5)
本件発明5は、「上記中央突壁は、上記長手方向での端面が、底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面として形成されており、・・・中略・・・、該傾斜面は、コネクタ嵌合方向で上記ガイド部のロック部よりも底壁側にまで及んでいる」との構成を有している。

これに対し、上記刊行物1?6には、本件発明5の「傾斜面は、コネクタ嵌合方向で上記ガイド部のロック部よりも底壁側にまで及んでいる」ことに相当する構成は開示されていない。

特に、刊行物5(特開2007-109522号公報、異議申立人提出の甲第6号証)の、【図1】(a)では左右対象に描かれているリセプタクルコネクタ1の、中心で長手方向に延びている凸部の、長手方向端部に注目すると、【図3】(b)の左下側では、かなり低い位置まで傾斜面を構成しているように描かれている一方で、左上側では、ずいぶん高い位置までしか傾斜面が構成されていないように描かれている。
そうすると、この刊行物5の図面は、リセプタクルコネクタ1の、中心で長手方向に延びている凸部の、長手方向端部の傾斜面に関し、【図1】(a)及び【図3】(b)で矛盾する程度に不明確に記載されているから、刊行物5の図面に、傾斜面の深さがロック部7より深いことが記載されいるとまではいえない。

したがって、本件発明5は、刊行物1?6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、本件発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板の実装面上に配されるレセプタクルコネクタと他の回路基板に配されるプラグコネクタとを有し、回路基板同士が対面する上下方向を挿抜方向としてレセプタクルコネクタにプラグコネクタが上方から嵌合接続される電気コネクタ組立体であって、
レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上方に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対のレセプタクル側壁と該一対のレセプタクル側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対のレセプタクル端壁とで形成される周壁と、該周壁内で底壁から上方に起立する中央突壁とを有し、該周壁と該中央突壁とで囲まれた空間が上方からプラグコネクタを受け入れるための受入部として形成され、上記レセプタクルハウジングは、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しており、
プラグコネクタのプラグハウジングは、上記レセプタクルコネクタの受入部に上方から嵌入される嵌合部を有し、該嵌合部は、上記長手方向に延びる一対のプラグ側壁と該一対のプラグ側壁の上記長手方向での端部同士を上記短手方向で連結する一対のプラグ端壁とを有しており、上記長手方向での両端部の端子保持領域外でプラグ側ガイド金具を保持している電気コネクタ組立体において、
上記レセプタクル側ガイド金具は、一対のレセプタクル側壁の端部側に位置するガイド部と、レセプタクル端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、
上記プラグ側ガイド金具は、上記レセプタクル側ガイド金具の上記ガイド部に対応した位置に設けられた、上記短手方向での上記嵌合部の両側の外面に位置する側面部と、上記レセプタクル側ガイド金具の上記副ガイド部に対応した位置に設けられた、上記長手方向での上記嵌合部の外面に位置する端面部と、プラグコネクタがコネクタ嵌合直前の姿勢にあるときのプラグ端壁の下面に位置する下面部と、上記側面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される側肩部と、上記端面部に対してコネクタ嵌合方向先方に連続し上記下面部に連結される端肩部とを一体に有し、
上記レセプタクル側ガイド金具は、上記ガイド部が、上記短手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドするガイド面を有し、上記副ガイド部が、上記長手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドする副ガイド面を有し、
上記プラグ端壁は、上記長手方向全域にわたって中実に形成されており、該プラグ端壁の下面のうち上記長手方向での外側領域では上記プラグ金具の下面部が位置しているとともに、上記長手方向の内側領域では該プラグ端壁の下面が露呈していることを特徴とする電気コネクタ組立体。
【請求項2】
プラグ側ガイド金具は、側肩部および端肩部が凸湾曲面をなしていることとする請求項1に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項3】
レセプタクルコネクタのレセプタクルハウジングは、ハウジングの長手方向に延びる中央突壁が形成されており、該レセプタクルハウジングの長手方向での中央突壁の端面が、底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面として形成されており、上記中央突壁は、コネクタ嵌合過程にて、上記傾斜面でプラグコネクタをガイドすることを可能としていることとする請求項1または請求項2に記載の電気コネクタ組立体。
【請求項4】
レセプタクル側ガイド金具のガイド面は、レセプタクルハウジングのレセプタクル側壁の上面に沿うと共に該レセプタクルハウジングの短手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしており、
レセプタクル側ガイド金具の副ガイド面は、上記レセプタクルハウジングのレセプタクル端壁の上面に沿うと共に該レセプタクルハウジングの長手方向で受入部側へ向けて下り勾配をなしていることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の電気コネクタ組立体。
【請求項5】
回路基板の実装面上に配され該実装面に対して直角な方向をコネクタ嵌合方向として相手コネクタとしてのプラグコネクタが嵌合接続されるレセプタクルコネクタであって、
該レセプタクルコネクタのハウジングは、回路基板の実装面に対面する底壁の周囲部から上記コネクタ嵌合方向に起立していると共にハウジングの長手方向に延びる一対の側壁と該一対の側壁の上記長手方向端部同士を上記長手方向に対して直角な短手方向で連結する一対の端壁とで形成される周壁を有し、該周壁内で底壁からコネクタ嵌合方向に起立すると共に上記長手方向に延びる中央突壁が形成されており、上記周壁と上記中央突壁との間に上記コネクタ嵌合方向でプラグコネクタを受け入れるための受入部が形成され、上記ハウジングの長手方向両端部の端子保持領域外でレセプタクル側ガイド金具を保持しているレセプタクルコネクタにおいて、
上記レセプタクル側ガイド金具は、一対の側壁の端部側に位置するガイド部と、端壁に位置する副ガイド部とを一体に有し、上記ガイド部は、上記短手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドするガイド面を有しているととともに、コネクタ嵌合方向での上記受入部の範囲内の位置に、プラグコネクタとのロックのためのロック部を有しており、上記副ガイド部は、上記長手方向で受入部側へ向けて上記プラグコネクタをガイドする副ガイド面を有しており、
上記中央突壁は、上記長手方向での端面が、底壁に向かうにつれて端壁に近づく傾斜面として形成されており、コネクタ嵌合過程にて、上記傾斜面でプラグコネクタをガイドすることが可能となっており、該傾斜面は、コネクタ嵌合方向で上記ガイド部のロック部よりも底壁側にまで及んでいることを特徴とするレセプタクルコネクタ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-02-22 
出願番号 特願2015-174480(P2015-174480)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (H01R)
P 1 651・ 121- YAA (H01R)
P 1 651・ 855- YAA (H01R)
P 1 651・ 161- YAA (H01R)
P 1 651・ 854- YAA (H01R)
P 1 651・ 537- YAA (H01R)
P 1 651・ 841- YAA (H01R)
P 1 651・ 851- YAA (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
登録日 2016-07-01 
登録番号 特許第5959704号(P5959704)
権利者 ヒロセ電機株式会社
発明の名称 電気コネクタ組立体およびレセプタクルコネクタ  
代理人 藤岡 努  
代理人 藤岡 努  
代理人 藤岡 徹  
代理人 藤岡 徹  

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